基板処理方法
【課題】深さの異なるビアホールの内部に、無電解めっきによって、コンタクト配線を連続的に形成でき、しかもコンタクト配線(めっき膜)が絶縁膜の表面にバンプ状に盛り上がることがないようする。
【解決手段】半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、第1ビアホール及び第2ビアホールの内部に、基板表面をめっき液に接触させた第1の無電解めっきによって、第1ビアホールがほぼ埋まるまでコンタクト配線を形成し、しかる後、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を速めて第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に成膜されるめっき膜の成長を抑制した第2の無電解めっきを行う。
【解決手段】半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、第1ビアホール及び第2ビアホールの内部に、基板表面をめっき液に接触させた第1の無電解めっきによって、第1ビアホールがほぼ埋まるまでコンタクト配線を形成し、しかる後、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を速めて第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に成膜されるめっき膜の成長を抑制した第2の無電解めっきを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理方法に関し、特に、半導体ウエハ等の基板の表面に設けた深さが異なるビアホールの内部に、無電解めっきによるめっき膜でコンタクト配線を形成するのに使用される基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に伴って、絶縁膜の内部に形成される配線接続用のビアホールの径と深さとの比(アスペクト比:AR(Aspect Ratio))は益々大きくなってきている。高アスペクト比のビアホールの内部にコンタクト配線を埋込む方法としては、CVDや無電解めっきが一般に知られている。
【0003】
例えば、図1に示すように、銅等からなる下層配線(導電膜)710を有する半導体基材712上に形成した絶縁膜714の内部に、リソグラフィ・エッチング技術により、下層配線710に達するビアホール716を形成し、このビアホール716の内表面を含む絶縁膜714の全表面に、CVDによって、TiN等からなるバリア層718を成膜する。そして、CVDによって、W等からなるコンタクト配線720をビアホール716の内部に埋込む。しかし、CVDは、コンフォーム成膜性を有するため、図1に示すように、高アスペクト比のビアホール716内に、CVDによってW等のコンタクト配線720を埋込むと、コンタクト配線720の内部にシームやボイド等の欠陥720aが残りやすくなって、コンタクト配線720の品質不良を引き起こしてしまう。
【0004】
これに対して、無電解めっき法は、ボトムアップ性に優れているため、高アスペクト比のビアホールの内部にシームやボイド等の欠陥のない高品質のコンタクト配線(めっき膜)を形成することができる。
【0005】
ここで、例えば、図2(a)に示すように、銅等からなるビット線722を有する半導体基材712上に、絶縁層724を挟んで上下に配置した一対の電極726,728からなるコンデンサ730を内部に埋設しながら絶縁膜714を形成した、DRAMのようなメモリデバイスにあっては、絶縁膜714の内部に、コンデンサ730の電極726に達する深さの浅い第1ビアホール732と、ビット線722に達する深さの深い第2ビアホール734を形成し、この両ビアホール732,734の内部にコンタクト配線を埋込む必要がある。このコンタクト配線の埋込みを無電解めっきで行う時には、深さの異なる両ビアホール732,734の内部へのコンタクト配線(めっき膜)の埋込みが同時に終了することが望まれる。
【0006】
通常の無電解めっきでは、ビアホールの径が同じであれば、ビアホール内に成膜されるめっき膜の成膜レート(めっきレート)はほぼ同じである。このため、深いビアホール内にコンタクト配線(めっき膜)が完全に充填されるまでめっき処理を続けると、浅いビアホール内に埋込まれたコンタクト配線(めっき膜)は、絶縁膜の表面と面一になっても更に成長を続けて絶縁膜の表面にバンプ状に盛り上がる。このバンプ状に盛り上がったコンタクト配線(めっき膜)は、次のCMP工程などの平坦化処理で除去できるが、研磨等の負荷が大きくなって、処理コストの増大に繋がる。また、配線間ピッチが狭い構造では、バンプ状に盛り上がったコンタクト配線(めっき膜)が隣のビアホールの近傍まで拡がってビアホールの入口を閉じてしまうことがある。
【0007】
このため、浅いビアホールの深さを深いビアホールと同じ深さまで延長し、延長したビアホールの底部に配線下地となるダミ電極を作成して無電解めっきを行うことで、深さの異なるビアホールの内部へのコンタクト配線(めっき膜)の埋込みを同時に行うようにしたり、深いビアホールの内部に成膜されるコンタクト配線(めっき膜)が所定の高さまで達した時に、無電解めっきを一時中断し、浅いビアホール底部に露出する金属(配線下地)に触媒処理を施した後、無電解めっきを再開したりする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許第7005379号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、浅いビアホールの深さを深いビアホールと同じ深さまで延長して、延長したビアホールの底部にダミ電極を作成する方法は、工程が追加されてプロセスが複雑化するばかりでなく、コンタクト配線と電極等との間に接触不良が生じやすくなる。また、深いビアホールの内部に成膜されるコンタクト配線(めっき膜)が所定の高さまで達した時に、無電解めっきを一時中断し、浅いビアホール底部に露出する金属(配線下地)に触媒処理を施した後、無電解めっきを再開する方法は、両ビアホールの底部で露出する金属(配線下地)が異なることが必須条件となり、適用範囲がかなり限定されてしまうばかりでなく、深いビアホールの内部には、3段階の処理でコンタクト配線(めっき膜)の埋込みが行われるため、均一な膜質のコンタクト配線を得ることが困難であると考えられる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、深さの異なるビアホールの内部に、無電解めっきによって、コンタクト配線を連続的に形成でき、しかもコンタクト配線(めっき膜)が絶縁膜の表面にバンプ状に盛り上がることがないようした基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、前記第1ビアホール及び前記第2ビアホールの内部に、基板表面をめっき液に接触させた第1の無電解めっきによって、前記第1ビアホールがほぼ埋まるまでコンタクト配線を形成し、しかる後、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を速めて前記第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に成膜されるめっき膜の成長を抑制しながら、第2の無電解めっきを行うことを特徴とする基板処理方法である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第1相対速度で相対的に移動させて第1の無電解めっきを行い、しかる後、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第2相対速度で相対的に移動させて第2の無電解めっきを行うことを特徴とする基板処理方法である。
【0012】
無電解めっきの電極反応は非定常現象であり、電気二重層の充電、反応中間体の蓄積、及び拡散層の形成などに一定の時間を要する。基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度をある程度以下に抑えると、基板表面の近傍に薄い濃度境界層が形成され、反応種の供給や析出が促進される。しかし、この相対速度がある限界を超えると、基板表面にめっきが開始できる電気化学的な条件が揃わず、めっき反応が急激に低下または停止する。このように、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度がある限界を超えても、コンタクト配線の埋込みが終了していないビアホールにあっては、該ビアホールの内部に滞在しためっき液とコンタクト配線表面との相対速度は小さく、濃度拡散による反応種の供給が続く限り、めっき反応は停止しない。
【0013】
従って、深さの浅い第1ビアホールがほぼ埋まるまで第1の無電解めっきでコンタクト配線(めっき膜)を形成し、第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面が絶縁膜の表面とほぼ面一となった時点で、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を速めた第2の無電解めっきを行うことで、第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に成膜されるめっき膜の成長を極めて遅くするか、または完全に停止させることができる。一方、絶縁膜表面と面一レベルに到達していない深さの深い第2ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面ではめっき析出反応が続けられ、このコンタクト配線の表面が絶縁膜表面と面一レベルに達すると、第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線と同じようにめっき析出が抑制される。これによって、ビアホールの深さが異なっても、コンタクト配線(めっき膜)が絶縁膜の表面にバンプ状に盛り上がること防止しつつ、コンタクト配線の連続的した形成が可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第1相対速度で相対的に移動させて第1の無電解めっきを行い、しかる後、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第2相対速度で相対的に移動させて第2の無電解めっきを行い、さらに、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第3相対速度で相対的に移動させて第3の無電解めっきを行うことを特徴とする基板処理方法である。
請求項4に記載の発明は、前記第3相対速度は前記第2相対速度より小さいことを特徴とする請求項3記載の基板処理方法である。
【0015】
コンタクト配線の表面に成膜されるめっき膜の成膜レート(めっきレート)は、コンタクト配線の表面が基板(絶縁膜)表面に近づけば近づく程、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度の影響を受けやすくなる。基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度が高いままであると、コンタクト配線の表面が基板表面に到達する直前に成膜レートが急激に低下する。そのため、最終処理段階で基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を遅くすることで、ビアホール内にコンタクト配線(めっき膜)を確実に埋込み、コンタクト配線の表面に平坦な膜厚の余剰めっき膜を成膜することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記第1相対速度は前記第2相対速度より小さいか、または同じであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の基板処理方法である。
成膜初期段階では、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を遅くすることで、下地金属にめっき金属が析出しやすくすることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記第2の無電解めっきを、めっき液中に浸漬させた基板を150rpm以上の回転速度で回転させて行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法である。
例えば、回転自在な基板ホルダで保持した基板をめっき液中に浸漬させ、基板を回転させながら該基板の表面に無電解めっきを行う場合、基板を150rpm以上の回転速度で回転させながら第2の無電解めっきを行うことで、絶縁膜の表面とほぼ面一となる第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させることができる。
【0018】
請求項9に記載の発明は、前記第2の無電解めっきを、めっき液が基板表面に沿って2m/s以上の流速で流れるようにして行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法である。
例えば、固定した基板の表面に沿ってめっき液を流しながら無電解めっきを行う場合、めっき液の流速を通常(<0.4m/s)の5倍以上の2m/s以上に上げて第2の無電解めっきを行うことで、絶縁膜の表面とほぼ面一となる第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させることができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、前記第2の無電解めっきを、めっき液中に浸漬させた基板を、周波数100Hz以上、振幅0.1〜1mmで基板表面に沿った方向に往復振動させて行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法である。
無電解めっきは、微小領域での局部電池作用で電子の授受を行うため、基板を0.1mm以上の振幅で基板表面に沿った方向に振動させると、基板表面とめっき液の間にめっき開始の条件を作れなくなる。このため、めっき液中に浸漬させた基板を、周波数100Hz以上、振幅0.1mm以上で基板表面に沿った方向に往復振動させながら第2の無電解めっきを行うことで、絶縁膜の表面とほぼ面一となる第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成膜レートをほぼ0にすることができる。なお、基板を1mm以上の振幅で基板表面に沿って振動させると、装置が大型化してしまうばかりでなく、構造の安定性からも好ましくない。
【0020】
請求項9に記載の発明は、前記第2の無電解めっきを、めっき液に浸漬させた基板表面の近傍に設置した攪拌体の移動速度を前記第1の無電解めっき時よりも増大させて行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法である。
基板をめっき液中に浸漬させ、基板表面の近傍に配置した攪拌体を回転させてめっき液を攪拌しながら基板表面に無電解めっきを行う場合、攪拌体を、例えば10〜100rpm程度の回転速度で回転させながら第1の無電解めっきを行い、攪拌体を第1の無電めっき時より速い、例えば300rpmの回転速度で回転させながら第2の無電解めっきを行うことで、絶縁膜の表面とほぼ面一となる第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させることができる。
【0021】
請求項10に記載の発明は、前記攪拌体と基板表面との最短距離は0〜3mmであることを特徴とする請求項9記載の基板処理方法である。
めっき液中反応種の拡散境界層は一般に数mm以下である。したがって、攪拌体と基板表面との最短距離を0〜3mmにすることで、絶縁膜の表面とほぼ面一となる第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、深さの浅い第1ビアホール内に第1の無電解めっきで形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を極めて遅くするか、または完全に停止させながら、深さの深い第2ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面でのめっき析出反応を続けることで、ビアホールの深さが異なっても、コンタクト配線(めっき膜)が絶縁膜の表面にバンプ状に盛り上がること防止しつつ、コンタクト配線の連続的した形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下の例では、図2(a)に示すように、ビット線722を有する半導体基材712上に、絶縁層724を挟んで上下に配置した一対の電極726,728からなるコンデンサ730を内部に埋設しながら絶縁膜714を形成し、絶縁膜714の内部に、コンデンサ730の電極726に達する深さの浅い第1ビアホール732とビット線722に達する深さの深い第2ビアホール734を形成した基板Wを用意する。そして、この両ビアホール732,734の内部に、無電解めっきでコンタクト配線を埋込むようにした例を示す。
【0024】
第1ビアホール732の底部に露出する配線下地としての電極726は、例えばWN膜で、第2ビアホール734の底部に露出する配線下地としてのビット線722は、例えば銅膜である。そして、無電解めっきで成膜されるコンタクト配線材料は、例えばNiPである。第1ビアホール732の深さは、例えば1μmで、第2ビアホール734の深さは、例えば3μmである。ビアホール732,734の直径は、共に約0.1μmである。なお、この例では、第1ビアホール732の配線下地をWNとしているが、TiNやWSiなどの金属、またはSiのような導電体であってもよい。コンタクト配線材質としては、NiP以外に、NiWB,NiWP,NiB,CoWB,CoWP,CoB,CoP,CoBPW,またはCoBP等が挙げられる。
【0025】
図3は、本発明の基板処理方法に使用される無電解めっき装置の平面配置図を示す。図3に示すように、この無電解めっき装置には、図2(a)に示す、表面の絶縁膜714に異なる深さのビアホール732,734を有する半導体ウエハ等の基板Wを収容した基板カセットを載置収容するロード・アンロードユニット11が備えられている。そして、排気系統を備えた矩形状の装置フレーム12の内部に、基板の表面を前洗浄する前洗浄ユニット14、前洗浄後の基板の表面に触媒付与液を接触させて、ビアホールの底部に露出する金属下地(電極726及びビット線722)表面に、例えばPd等の触媒を付与する触媒付与ユニット15が配置されている。
【0026】
ここでの前洗浄液は、例えばクエン酸とリン酸を含む酸性混合液であり、使用温度は20〜60℃である。洗浄の方式は、処理槽に洗浄液を循環させる浸漬式である。また、前洗浄ユニット14は、2種類の薬液処理に対応出来、その場合、第1ステップの処理は、アルカリ性の薬液のスプレー方式を採用し、第2ステップの処理は、前述の混合酸性薬液の浸漬式を採用する。Pdの触媒付与液は、PdCl2をHCl水溶液に溶かしたもので、室温で浸漬方式、またはスプレー方式で触媒付与処理を行う。
【0027】
装置フレーム12の内部には、基板の表面に無電解めっきを行う2基の無電解めっきユニット16、その後の基板を乾燥させる2基の乾燥ユニット20、及び仮置台22が配置されている。更に、装置フレーム12の内部には、ロード・アンロードユニット11に搭載された基板カセットと仮置台22との間で基板の受渡し行う第1基板搬送ロボット24と、仮置台22と各ユニット14,15,16,20との間で基板の受渡しを行う第2基板搬送ロボット26が、それぞれ走行自在に配置されている。
【0028】
次に、図3に示す無電解めっき装置に備えられている各ユニットの詳細を以下に説明する。前洗浄ユニット14は、触媒付与処理に先立って、基板Wの表面に残った金属酸化物及び/または金属錯体等を除去するようにしたユニットである。このユニットは、二重槽構造となっており、内槽に保持する洗浄液を加熱する手段を備え、基板を洗浄液に浸漬させて処理を行う。薬液洗浄後のリンス洗浄は、基板を引上げた位置で内槽のカバーを閉じ、カバーの上面に設置されたスプレーノズルからの超純水を供給して行う。前洗浄に2ステップが必要となる場合には、カバー上に設置されたスプレーノズルを2系統に分離し、1つの系統から超純水を、もう1つの系統から第2洗浄液を供給する。
【0029】
前処理ユニット14は、図4乃至図6に詳細に示すように、フレーム50の上部に取付けた固定枠52と、この固定枠52に対して相対的に上下動する移動枠54を備えており、図7に示すように、この移動枠54に、下方に開口した有底円筒状のハウジング部56と基板ホルダ58とを有する処理ヘッド60が懸架支持されている。つまり、移動枠54には、ヘッド回転用サーボモータ62が取付けられ、このサーボモータ62の下方に延びる出力軸(中空軸)64の下端に処理ヘッド60のハウジング部56が連結されている。
【0030】
この出力軸64の内部には、図7に示すように、スプライン66を介して該出力軸64と一体に回転する鉛直軸68が挿着され、この鉛直軸68の下端に、ボールジョイント70を介して処理ヘッド60の基板ホルダ58が連結されている。基板ホルダ58は、ハウジング部56の内部に位置している。また鉛直軸68の上端は、軸受72及びブラケットを介して、移動枠54に固定した固定リング昇降用シリンダ74に連結されている。これにより、この昇降用シリンダ74の作動に伴って、鉛直軸68が出力軸64とは独立に上下動する。
【0031】
図4乃至図6に示すように、固定枠52には、上下方向に延びて移動枠54の昇降の案内となるリニアガイド76が取付けられ、ヘッド昇降用シリンダ(図示せず)の作動に伴って、移動枠54がリニアガイド76を案内として昇降する。これにより、基板を保持した処理ヘッド60を下降させ、内槽100bに保持された洗浄液に基板を浸漬させて所定時間処理する。
【0032】
しかる後、処理ヘッド60を上昇させ、処理槽100の内槽100bの上端開口部を蓋体102で閉塞した状態で、処理ヘッド60で保持した基板Wに向けて、蓋体102の上面に配置したノズル板112の噴射ノズル112aから第2処理液を噴射することで、基板Wの下面(処理面)の全面に亘って第2処理液を均一に噴射する。この第2処理液は、外槽100aと内槽100bの間を通って、排水管(図に示せず)を介して排出されるので、内槽100bの内部に流入することが防止されて、第1処理液に混ざることが防止される。
【0033】
この前処理ユニット14によれば、図4に示すように、処理ヘッド60を上昇させた状態で、この内部に基板Wを挿入して保持し、しかる後、図5に示すように、処理ヘッド60を下降させて処理槽100の内槽100bの上端開口部を覆う位置に位置させる。そして、処理ヘッド60を回転させて、処理ヘッド60で保持した基板Wを回転させながら処理液に浸漬させる。そして、処理ヘッド60を上昇させて所定位置で停止させ、図6に示すように、待避位置にあった蓋体102を処理槽100の内槽100bの上端開口部を覆う位置まで移動させる。そして、この状態で、処理ヘッド60で保持して回転させた基板Wに向けて、蓋体102の上面に配置したノズル板112の噴射ノズル112aから第2処理液を噴射する。これにより、基板Wの第1処理液と第2処理液による処理を、2つの液体が混ざらないようにしながら行うことができる。
【0034】
触媒付与ユニット15の構造は前洗浄ユニット14と基本的に同じである。異なる点は、常温の触媒付与液を使う場合、内槽に加熱手段を省くことができる点である。また、触媒付与処理によって金属下地の表面が損傷するのを軽減するために、触媒付与液にN2のような不活性ガスを導入する手段を設けている。
【0035】
無電解めっきユニット16を図8乃至図13に示す。この無電解めっきユニット16は、めっき槽200(図12及び図14参照)と、このめっき槽200の上方に配置されて基板Wを着脱自在に保持する基板ヘッド204(図8参照)を有している。
【0036】
基板ヘッド204は、図8に詳細に示すように、ハウジング部230とヘッド部232とを有し、ヘッド部232は、吸着ヘッド234と該吸着ヘッド234の周囲を囲繞する基板受け236から主に構成されている。そして、ハウジング部230の内部には、基板回転用モータ238と基板受け駆動用シリンダ240が収納され、この基板回転用モータ238の出力軸(中空軸)242の上端はロータリジョイント244に、下端はヘッド部232の吸着ヘッド234にそれぞれ連結され、基板受け駆動用シリンダ240のロッドは、ヘッド部232の基板受け236に連結されている。ハウジング部230の内部には、基板受け236の上昇を機械的に規制するストッパ246が設けられている。
【0037】
ここで、吸着ヘッド234と基板受け236との間には、スプライン構造が採用され、基板受け駆動用シリンダ240の作動に伴って基板受け236は吸着ヘッド234と相対的に上下動するが、基板回転用モータ238の駆動によって出力軸242が回転すると、この出力軸242の回転に伴って、吸着ヘッド234と基板受け236が一体に回転するように構成されている。
【0038】
吸着ヘッド234の下面周縁部には、図9乃至図11に詳細に示すように、下面をシール面として基板Wを吸着保持する吸着リング250が押えリング251を介して取付けられ、この吸着リング250の下面に円周方向に連続させて設けた凹状部250aと吸着ヘッド234内を延びる真空ライン252とが吸着リング250に設けた連通孔250bを介して互いに連通するようになっている。これにより、凹状部250a内を真空引きすることで、基板Wを吸着保持するのであり、このように、小さな幅(径方向)で円周状に真空引きして基板Wを保持することで、真空による基板Wへの影響(たわみ等)を最小限に抑え、しかも吸着リング250をめっき液中に浸すことで、基板Wの表面(下面)のみならず、エッジについても、全てめっき液に浸すことが可能となる。基板Wのリリースは、真空ライン252にN2を供給して行う。
【0039】
一方、基板受け236は、下方に開口した有底円筒状に形成され、その周壁には、基板Wを内部に挿入する基板挿入窓236aが設けられ、下端には、内方に突出する円板状の爪部254が設けられている。更に、この爪部254の上部には、基板Wの案内となるテーパ面256aを内周面に有する突起片256が備えられている。
【0040】
これにより、図9に示すように、基板受け236を下降させた状態で、基板Wを基板挿入窓236aから基板受け236の内部に挿入する。すると、この基板Wは、突起片256のテーパ面256aに案内され、位置決めされて爪部254の上面の所定位置に載置保持される。この状態で、基板受け236を上昇させ、図10に示すように、この基板受け236の爪部254上に載置保持した基板Wの上面を吸着ヘッド234の吸着リング250に当接させる。次に、真空ライン252を通して吸着リング250の凹状部250aを真空引きすることで、基板Wの上面の周縁部を該吸着リング250の下面にシールしながら基板Wを吸着保持する。そして、無電解めっき処理を行う際には、図11に示すように、基板受け236を数mm下降させ、基板Wを爪部254から離して、吸着リング250のみで吸着保持した状態となす。これにより、基板Wの表面(下面)の周縁部が、爪部254の存在によってめっきされなくなることを防止することができる。
【0041】
図12は、めっき槽200の詳細を示す。このめっき槽200は、底部において、めっき液供給管308(図13参照)に接続され、周壁部にめっき液回収溝260が設けられている。めっき槽200の内部には、ここを上方に向かって流れるめっき液の流れを安定させる2枚の整流板262,264が配置され、更に底部には、めっき槽200の内部に導入されるめっき液の液温を測定する温度測定器266が設置されている。また、めっき槽200の周壁外周面のめっき槽200で保持しためっき液の液面よりやや上方に位置して、直径方向のやや斜め上方に向けてめっき槽200の内部に、pHが6〜7.5の中性液からなる停止液、例えば純水を噴射する噴射ノズル268が設置されている。これにより、無電解めっき終了後、ヘッド部232で保持した基板Wをめっき液の液面よりやや上方まで引上げて一旦停止させ、この状態で、基板Wに向けて噴射ノズル268から純水(停止液)を噴射して基板Wを直ちに冷却し、これによって、基板Wに残っためっき液によって無電解めっきが進行してしまうことを防止することができる。
【0042】
更に、めっき槽200の上端開口部には、アイドリング時等のめっき処理の行われていない時に、めっき槽200の上端開口部を閉じて該めっき槽200内のめっき液の無駄な蒸発と放熱を防止するめっき槽カバー270が開閉自在に設置されている。
【0043】
このめっき槽200は、図14に示すように、底部において、めっき液貯槽302から延び、途中にめっき液供給ポンプ304、フィルタ305及び三方弁306を介装しためっき液供給管308に接続されている。更に、めっき槽200のめっき液回収溝260は、めっき液貯槽302から延びるめっき液回収管に接続されている。これにより、無電解めっき処理中にあっては、めっき槽200の内部に、この底部からめっき液を供給し、めっき槽200を溢れるめっき液をめっき液回収溝260からめっき液貯槽302へ回収することで、めっき液が循環できるようになっている。また、三方弁306の一つの出口ポートには、めっき液貯槽302に戻るめっき液戻り管312が接続されている。これにより、めっき待機時にあっても、めっき液を循環させることができる。
【0044】
特に、この例では、めっき液供給ポンプ304を制御することで、めっき待機時及び無電解めっき処理時に循環するめっき液の流量を個別に設定できるようになっている。すなわち、めっき待機時のめっき液の循環流量は、例えば2〜20L/minで、無電解めっき処理時のめっき液の循環流量は、例えば0〜10L/minに設定される。これにより、めっき待機時にめっき液の大きな循環流量を確保して、セル内のめっき浴の液温を一定に維持し、無電解めっき処理時には、めっき液の循環流量を小さくして、より均一な膜厚の保護膜(めっき膜)を成膜することができる。
【0045】
めっき槽200の底部付近には、めっき槽200の内部に導入されるめっき液の液温を測定して、この測定結果を元に、下記のヒータ316及び流量計318を制御する温度測定器266が設けられている。
【0046】
この例では、別置きのヒータ316を使用して昇温させ、流量計318を通過させた水を熱媒体に使用し、熱交換器320をめっき液貯槽302内のめっき液中に設置して該めっき液を間接的に加熱する加熱装置322と、めっき液貯槽302内のめっき液を循環させて攪拌する攪拌ポンプ324が備えられている。これは、無電解めっきにあっては、めっき液を高温(約80℃程度)にして使用することがあり、これと対応するためであり、この方法によれば、インライン・ヒーティング方式に比べ、非常にデリケートなめっき液に不要物等が混入するのを防止することができる。
【0047】
この例によれば、めっき液は、基板Wと接触して無電解めっきを行うときに、基板Wの温度が70〜90℃となるように液温が設定され、液温のばらつき範囲が±2℃以内となるように制御される。
【0048】
無電解めっきユニット16には、めっき液貯槽302内のめっき液を抽出するめっき液抽出部330と、この抽出された無電解めっきユニット16が保有するめっき液の組成を、例えば吸光光度法、滴定法、電気化学的測定などで分析するめっき液組成分析部332が備えられている。このめっき液組成分析部332は、例えばニッケルイオン濃度をめっき液の吸光度分析、イオンクロマトグラフ分析、キャピラリー電気泳動分析またはキレート滴定分析により測定する。
【0049】
めっき液の液温は、高くなるほどめっき速度が速くなり、低すぎるとめっき反応が起こらないことから、一般的には60〜95℃で、65〜85℃であることが好ましく、70〜75℃であることがより好ましい。基本的には、無電解めっきを実際に行っているか否かに関わらず、一度温度を上げたら下げないことが望ましく、55℃以上にしておくことが望まれる。
【0050】
図13は、めっき槽200の側方に付設されている洗浄槽202の詳細を示す。この洗浄槽202の底部には、純水等のリンス液を上方に向けて噴射する複数の噴射ノズル280がノズル板282に取付けられて配置され、このノズル板282は、ノズル上下軸284の上端に連結されている。更に、このノズル上下軸284は、ノズル位置調整用ねじ287と該ねじ287と螺合するナット288との螺合位置を変えることで上下動し、これによって、噴射ノズル280と該噴射ノズル280の上方に配置される基板Wとの距離を最適に調整できるようになっている。
【0051】
更に、洗浄槽202の周壁外周面の噴射ノズル280より上方に位置して、直径方向のやや斜め下方に向けて洗浄槽202の内部に純水等の洗浄液を噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくともめっき液に接液する部分に洗浄液を吹き付けるヘッド洗浄ノズル286が設置されている。
【0052】
この洗浄槽202にあっては、基板ヘッド204のヘッド部232で保持した基板Wを洗浄槽202内の所定の位置に配置し、噴射ノズル280から純水等の洗浄液(リンス液)を噴射して基板Wを洗浄(リンス)するのであり、この時、ヘッド洗浄ノズル286から純水等の洗浄液を同時に噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくともめっき液に接液する部分を該洗浄液で洗浄することで、めっき液に浸された部分に析出物が蓄積してしまうことを防止することができる。
無電解めっきユニットは、図4乃至図6に示す前処理ユニットと同様な構造で、めっき処理を内槽で行い、リンス洗浄を外槽でスプレーノズルにより行うようにしている。
【0053】
次に、無電解めっきユニット16を使用した無電解めっきによって、図2(a)に示す第1ビアホール732及び第2ビアホール734の内部に、NiP合金からなるコンタクト配線を連続的に形成する方法について説明する。この例の場合、第1ビアホール732の底部に露出したWNからなる電極723及び第2ビアホール734の底部に露出した銅からなるビット線722が配線下地となって、この表面がめっき膜成長の起点となる。
【0054】
無電解めっき処理に使用するめっき液(NiP合金無電解めっき液)の組成例を以下に示す。
硫酸ニッケル6水和物: 35g/L
クエン酸アンモニウム: 20g/L
88%乳酸: 50ml/L
次亜リン酸ナトリウム: 30g/L
プロピオン酸: 2g/L
安定剤: 適量
pH調整剤: 適量
pH:6.9
温度:80℃
めっきレート:約500nm/min
【0055】
先ず、基板ヘッド204を上昇させた位置で、第1ビアホール732の底部に露出した電極723及び第2ビアホール734の底部に露出したビット線722の表面にPd触媒を付与した基板Wを、前述のようにして、基板ヘッド204のヘッド部232で吸着保持する。この時、めっき槽200のめっき液を循環させておく。
【0056】
そして、めっき槽200のめっき槽カバー270を開き、基板ヘッド204を回転させながら下降させ、ヘッド部232で保持した基板Wを回転させながらめっき槽200内のめっき液に浸漬させて第1の無電解めっき処理を行う。この第1無電解めっき時に、基板Wを通常の無電解めっき時と同じ1〜50rpmの回転速度、例えば15rpmの回転速度で回転させる。これにより、図2(b)に示すように、第1ビアホール732の底部に露出した電極723及び第2ビアホール734の底部に露出したビット線722を起点として、これらの表面にNiP合金めっき膜を成長させ、このめっき膜で第1ビアホール732内に埋込まれる第1コンタクト配線736及び第2ビアホール734内に埋込まれる第2コンタクト配線738を形成する。
【0057】
そして、深さの浅い第1ビアホール732の内部が第1コンタクト配線(めっき膜)736でほぼ埋まって、第1コンタクト配線736の表面が絶縁膜714の表面とほぼ面一となった時点、つまり、この例では、第1ビアホール732の深さが1μmで、めっきレートが500nm/minであるので、基板Wを、例えば15rpmの回転速度で回転させながら、第1の無電解めっきを約2分間行った時点で、基板Wの回転速度を、15rpmから150rpm以上、例えば300rpmに上げて、第2の無電解めっき処理を行う。この第2の無電解めっきでは、図2(c)に示すように、第1ビアホール732内に形成された第1コンタクト配線736の表面にめっき膜が成膜されるのを抑制しつつ、第2ビアホール734内に形成された第2コンタクト配線738の表面にめっき膜を成膜して、第2コンタクト配線738の高さを高くする。
【0058】
つまり、このように、基板Wの回転速度を150rpm以上、例えば300rpmに上げ、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を上げると、基板表面にめっきが開始できる電気化学的な条件が揃わず、めっき反応が急激に低下または停止する。つまり、第1コンタクト配線736の表面にあっては、絶縁膜714の表面とほぼ面一となっているので、第1コンタクト配線736の表面に沿って流れるめっき液の流速が速くなって、第1コンタクト配線736の表面にめっき膜が成膜されることが抑制される。
【0059】
一方、深さが深く、第2コンタクト配線738の埋込みが完了していない第2ビアホール734の内部にあっては、第2ビアホル734内に滞在しためっき液と第2コンタクト配線738との相対速度は小さく、濃度拡散による反応種の供給が続く限り、めっき反応は停止しない。このため、第2コンタクト配線738の表面にめっき膜が成膜される。
【0060】
そして、深さの深い第2ビアホール734の内部が第2コンタクト配線(めっき膜)738でほぼ埋まって、第2コンタクト配線738の表面が絶縁膜714の表面とほぼ面一となった時点、つまり、この例では、第2ビアホール734の深さが3μmで、めっきレートが500nm/minであるので、基板Wを、例えば300rpmの回転速度で回転させながら、第2の無電解めっきを約4分間行った時点で、基板Wの回転速度を、300rpmから、通常の無電解めっき時と同じ1〜50rpm、例えば15rpmに下げて、第3の無電解めっき処理を、例えば12秒間行う。
【0061】
この第3の無電解めっきでは、図2(d)に示すように、第2ビアホール734内に第2コンタクト配線(めっき膜)738を確実に埋込み、更にコンタクト配線736,738の表面に平坦な膜厚の余剰めっき膜740を成膜する。つまり、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度が高いままであると、コンタクト配線の表面が基板表面に到達する直前に成膜レートが急激に低下するが、基板の回転速度を落として、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を落とした第3の無電解めっきを行うことで、第2ビアホール734内に第2コンタクト配線(めっき膜)738を確実に埋込み、更にコンタクト配線736,738の表面に平坦な膜厚の余剰めっき膜740を成膜することができる。
【0062】
無電解めっきを終了した後、基板ヘッド204を上昇させて、基板Wをめっき槽200内のめっき液から引上げ、必要に応じて、前述のように、基板Wに向けて噴射ノズル268から純水(停止液)を噴射して基板Wを直ちに冷却し、更に基板ヘッド204を上昇させ、基板Wをめっき槽200の上方位置まで引上げて、基板ヘッド204の回転を停止させる。
【0063】
次に、基板ヘッド204のヘッド部232で基板Wを吸着保持したまま、基板ヘッド204を洗浄槽202の直上方位置に移動させる。そして、基板ヘッド204を回転させながら洗浄槽202内の所定の位置まで下降させ、噴射ノズル280から純水等の洗浄液(リンス液)を噴射して基板Wを洗浄(リンス)し、同時に、ヘッド洗浄ノズル286から純水等の洗浄液を噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくともめっき液に接液する部分を該洗浄液で洗浄する。
【0064】
この基板Wの洗浄が終了した後、基板ヘッド204の回転を停止させ、基板ヘッド204を上昇させて基板Wを洗浄槽202の上方位置まで引上げ、更に基板ヘッド204を第2基板搬送ロボット26との受渡し位置まで移動させ、この第2基板搬送ロボット26に基板Wを受渡して次工程に搬送する。
【0065】
この例によれば、深さの浅い第1ビアホール732内に第1の無電解めっきで形成された第1コンタクト配線736の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を極めて遅くするか、または完全に停止させながら、深さの深い第2ビアホール734内に形成された第2コンタクト配線738の表面でのめっき析出反応を続けることで、第1コンタクト配線(めっき膜)736が絶縁膜714の表面にバンプ状に盛り上がること防止しつつ、コンタクト配線736,738の連続的した形成が可能となる。
【0066】
図15は、無電解めっき装置の他の例を示す。この無電解めっき装置は、表面Sにビアホール732,734(図2(a)参照)を形成した半導体ウエハ等の基板Wを下向き(フェイスダウン)にして吸着保持する基板保持部410を有している。この基板保持部410は、円板状の保持体412と、この保持体412の下面の外周部に取付けたリング状の真空シール材414とを備えている。この真空シール材414は、例えばゴム等の弾性体から構成され、U字状の凹部を有する形状に形成されている。更に、保持体412は、回転モータから延びる回転軸の下端に連結されている。真空シール材414の凹部は、保持体412の内部を延びる真空経路420に連通し、この真空経路420は、図示しない真空源に接続されている。
【0067】
これによって、真空シール材414の凹部と基板Wの表面で区画させた空間を真空引きすることで、基板Wをその外周部を真空シール材414でシールした状態で吸着保持し、更に、このように基板Wを保持した状態で、回転モータを駆動することで、基板Wを保持体412と一体に回転させることができる。
【0068】
更に、保持体412の内部を延び、保持体412の真空シール材414で囲まれた下面で開口する不活性ガス導入路422が備えられている。これにより、基板Wをその外周部を真空シール材414でシールした状態で吸着保持した時に、この真空シール材414で囲まれた領域に、N2ガス等の不活性ガスを導入することで、この真空シール材414で囲まれた領域に浸入しようとするめっき液をこの不活性ガスで強制的に外方に押し戻し、これによって、めっき液の真空シール材414で囲まれた領域内への浸入をより確実に確実に防止できるようになっている。
【0069】
基板保持部410の周囲を包囲するように、ハウジング430が配置され、このハウジング430の下端に、内方に突出して基板Wの周縁部を下から支えるリング状の支持部432が設けられている。更に、ハウジング430の周壁には、基板Wの出し入れを行う開口が設けられている。ハウジング430は、シリンダ(図示せず)の作動に伴って基板保持部410と相対的に上下動し、また支持部432と真空シール材414で基板の周縁部を挟持して保持した状態で、基板保持部410と一体に回転する。
【0070】
ハウジング430の下方に位置して、めっき液442を保持するめっき槽444が配置されている。このめっき槽444は、めっき液442との摩擦を低減するため、例えばテフロン(登録商標)製で、内部には、底部中央から上方に延びるめっき液供給路446に連通してめっき液442を保持するめっき室448が形成されている。このめっき室448は、周囲を溢流堰450で囲われ、この溢流堰450の外側に、めっき液排出路452が形成されている。これにより、めっき液442は、めっき液供給路446から上向きでめっき室448内に導入され、溢流堰450をオーバーフローしてめっき液排出路452から外部に排出される。
【0071】
この例の無電解めっき装置にあっては、ハウジング430を基板保持部410に対して相対的に下降させた状態で、基板Wをハウジング430の内部に入れ、支持部432の上に載置保持する。この状態で、ハウジング430を上昇させ、基板保持部410の真空シール材414の下端に基板Wを圧接させる。そして、真空シール材414の凹部と基板Wの表面で区画された空間を真空引きすることで、基板Wをその外周部を真空シール材414でシールした状態で吸着保持し、更に、この真空シール材414で囲まれた領域に、N2ガス等の不活性ガスを導入する。この状態で、基板保持部410に内蔵した加熱部で基板Wをその全域に亘ってめっき室448内に導入されるめっき液442の温度と同じ一定の温度に加熱する。一方、めっき液供給路446から一定の温度に加熱しためっき液442をめっき室448内に導入し、溢流堰450からオーバーフローさせておく。
【0072】
この状態で、基板Wを、例えば0〜100rpm、好ましくは0〜50rpm、更に好ましくは0〜20rpm程度の回転速度で回転させつつ下降させて、基板Wをめっき室448内のめっき液442内に浸漬させ、更にハウジング430のみを下降させて、支持部432を基板Wの裏面から離し、基板Wを基板保持部410のみで吸着保持する。
【0073】
これによって、前述の同様に、基板Wを、好ましくは0〜20rpm程度の回転速度で回転させながら第1の無電解めっきを行い、次に、基板を150rpm以上、例えば300rpmの回転速度で回転させながら第2の無電解めっきを行い、更に基板を好ましくは0〜20rpm程度の回転速度で回転させながら第3の無電解めっきを行う。
【0074】
図15に示す無電解めっき装置を用い、前述のめっき液(NiP合金無電解めっき液)を使用して、基板の回転速度と成膜されるめっき膜の膜厚との関係を調べた。つまり、試料(基板)として300mmの銅ブランケットウエハを用い、めっき液の循環流量を5L/minの一定に設定した条件の下で、試料を0rpm、10rpm、50rpm、100rpm、150rpm、及び300rpmの回転速度で回転させながら、140secの無電解めっきを行って、試料の銅表面にNiP合金めっき膜を成膜した。めっき前処理、及びめっき後処理は全て同じ条件で行った。そして、光学式の膜厚測定器を用い、各試料表面の49点でNiP合金めっき膜の膜厚を測定し、その平均値を膜厚値とした。めっき膜厚と試料の回転速度の関係を図16に示す。
【0075】
図16から、試料を0〜100rpmの回転速度で回転させながら無電解めっきを行うと、試料の回転速度の上昇とともに、成膜されるめっき膜の膜厚が厚くなってめっきレートは上昇し、試料の回転速度が150rpmを超える条件では、成膜されるめっき膜の膜厚が急激に薄くなってめっきレートが激減して、試料の回転速度を300rpmにすると、成膜が停止することが判る。このことから、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度がある閾値を超えるとめっき析出が停止することが判る。
【0076】
なお、上記の例では、基板の回転速度を、例えば15rpmから300rpmに上げることで、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を速めるようにしているが、めっき液中に浸漬させた基板を、周波数100Hz以上、振幅0.1〜1mmで基板表面に沿った方向に往復振動させることによって、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を速めるようにしてもよい。
【0077】
無電解めっきは、微小領域での局部電池作用で電子の授受を行うため、基板を0.1mm以上の振幅で基板表面に沿った方向に振動させると、基板表面とめっき液の間にめっき開始の条件を作れなくなる。このため、めっき液中に浸漬させた基板を、周波数100Hz以上、振幅0.1mm以上で基板表面に沿った方向に往復振動させながら第2の無電解めっきを行うことで、第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成膜レートをほぼ0にすることができる。なお、基板を1mm以上の振幅で基板表面に沿って振動させると、装置が大型化してしまうばかりでなく、構造の安定性からも好ましくない。
【0078】
図17及び図18は、無電解めっき装置の更に他の例を示す。このめっき装置は、基板Wを載置保持する円形の基板保持面510aとその周囲のめっき液流通面510bとを有する基台510と、この基台510の上面を水密的に覆い、該基台510との間で水平方向に拡がるほぼ矩形のめっき室512を形成する天板(キャップ)514とから構成されるめっき容器515を備えている。この天板514は、基台510に対して、例えば、蝶番等によってめっき室512を開閉可能なように設けられ、基板Wの出し入れやメンテナンスの便宜を図っている。
【0079】
キャップ514には、中央下面に矩形の凹部514aが設けられ、この凹部514aと基板保持面510aの間にめっき室512が形成される。キャップ514には、めっき容器515の長手方向(図17及び図18において左右方向)の両端部にめっき液貯液部516a,516bが設けられ、めっき液貯液部516a,516bはめっき室512と隔壁518a,518bによって区画されている。そして、これら隔壁518a,518bには、めっき液貯液部516a,516bとめっき室512とを連通する多数の流通孔520a,520bが所定のピッチP1で設けられている。
【0080】
めっき容器515の外部には、めっき室512にめっき液を供給するめっき液供給手段522が備えられている。このめっき液供給手段522は、第1のめっき液循環ライン524aと第2のめっき液循環ライン524bとを有し、これらの両ライン524a,524bは、互いに合流して循環ポンプ526の吸込側と吐出側、及び各めっき液貯液部516a,516bにそれぞれ接続されている。そして、第1のめっき液循環ライン524aには、ポンプ526を挟んで開閉弁528a,528bが、第2のめっき液循環ライン524bにも、ポンプ526を挟んで開閉弁528c,528dがそれぞれ設置されている。
【0081】
これにより、第1のめっき液循環ライン524aの各開閉弁528a,528bを開き、第2のめっき液循環ライン524bの各開閉弁528c,528dを閉じることで、めっき液が第1のめっき液循環ライン524a内を実線の矢印に沿って流れる。逆に、第1のめっき液循環ライン524aの各開閉弁528a,528bを閉じ、第2のめっき液循環ライン524bの各開閉弁528c,528dを開くと、めっき液が第2のめっき液循環ライン524b内を破線の矢印に沿って流れる。
【0082】
めっき室512内には、正方形状の整流板530が配置されている。この整流板530の下面には、めっき容器515の長手方向に直線状に延びる複数の仕切壁532が所定のピッチで平行に垂設されている。一方、整流板530の上面中央には、上方に突出する軸体534が設けられている。この軸体534は、キャップ514の中央に長手方向に直交する方向に長く延びて設けられた長穴536に挿入され、軸体534と長穴536の間はベローズ538のような柔軟性部材で覆われている。
【0083】
軸体534は、長穴536よりキャップ514の上面に突出し、これには、軸体534を長穴536に沿って往復動させる駆動手段が連結されている。従って、整流板530は軸体534を介して仕切壁532と直交する方向、すなわち、隔壁518a,518bと平行な方向に揺動する。
【0084】
この無電解めっき装置においては、基板Wを基台510の基板保持面510a上に載置し、キャップ514を閉じた後、例えば第1のめっき液循環ライン524aを開き、第2のめっき液循環ライン524bを閉じた状態で、ポンプ526を作動させる。すると、めっき液は、一方のめっき液貯液部516aから隔壁518aの流通孔520aよりめっき室512内に流入し、基板Wの上面に全面に亘る均一な平行流を形成して基板Wのめっきを行った後、他方の隔壁518bの流通孔520bからめっき液貯液部516bに排出され、これによって、無電解めっきが行われる。この時、必要に応じて、整流板530を仕切壁532と直交する方向に揺動させる。
【0085】
次に、この無電解めっき装置を使用した無電解めっきによって、図2(a)に示す第1ビアホール732及び第2ビアホール734の内部に、前述の同様な組成のめっき液(NiP合金無電解めっき液)を使用して、NiP合金からなるコンタクト配線を連続的に形成する方法について説明する。この場合、第1ビアホール732の底部に露出したWNからなる電極723及び第2ビアホール734の底部に露出した銅からなるビット線722が配線下地となって、この表面がめっき膜成長の起点となることは前述と同様である。
【0086】
先ず、ポンプ526を介して、めっき液が通常の無電解めっき時における0.4m/s以下の流速で基板Wの表面に沿って流れるようにして、第1の無電解めっきを行う。そして、図2(b)に示すように、深さの浅い第1ビアホール732の内部が第1コンタクト配線(めっき膜)736でほぼ埋まって、第1コンタクト配線736の表面が絶縁膜714の表面とほぼ面一となった時点で、ポンプ526を介して、めっき液が2m/s以上、例えば3m/sの流速で基板Wの表面に沿って流れるようにして、第1ビアホール732内に形成された第1コンタクト配線736の表面にめっき膜が成膜されるのを抑制しつつ、第2ビアホール734内に形成された第2コンタクト配線738の表面にめっき膜を成膜する、第2の無電解めっきを行う。
【0087】
このように、固定した基板の表面に沿ってめっき液を流しながら無電解めっきを行う場合、めっき液の流速を通常(<0.4m/s)の5倍以上の2m/s以上、例えば3m/sに上げて第2の無電解めっきを行うことで、第1ビアホール732内に形成された第1コンタクト配線736の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させながら、第2ビアホール734内に形成された第2コンタクト配線738の表面にめっき膜を成膜することができる。
【0088】
そして、図2(c)に示すように、深さの深い第2ビアホール734の内部が第2コンタクト配線(めっき膜)738でほぼ埋まって、第2コンタクト配線738の表面が絶縁膜714の表面とほぼ面一となった時点で、めっき液が通常の無電解めっき時における、例えば0.4m/s以下の流速で基板Wの表面に沿って流れるようにして、第3の無電解めっきを行う。これによって、図2(d)に示すように、第2ビアホール734内に第2コンタクト配線(めっき膜)738を確実に埋込み、コンタクト配線736,738の表面に平坦な膜厚の余剰めっき膜740を成膜する。
【0089】
図17及び図18に示す無電解めっき装置を使用し、前述のめっき液((NiP合金無電解めっき液)を使用して、めっき液の平均流速と成膜されるめっき膜の膜厚との関係を調べた。試料(基板)として300mmの銅ブランケットウエハを用い、めっき液を0m/s,0.1m/s、0.3m/s、1m/s、2m/s、及び3m/sの平均流速で基板の表面に沿って流しながら、140secの無電解めっきを行って、試料の銅表面にNiP合金めっき膜を成膜した。めっき前処理、及びめっき後処理は全て同じ条件で行った。めっき液の平均流速は、入口流量と断面積の比で算出した。めっき液の循環流量によるめっき容器内のめっき液度の影響を無くすために、試料下の基台に補助ヒータを設置した(図に示せず)。めっき液の平均流速とめっき膜厚との関係を図19に示す。
【0090】
図19から、めっき液を0〜1m/sの平均流速で基板の表面に沿って流しながら無電解めっきを行った場合には、めっき膜厚(めっきレート)に変動は認められないが、めっき液を平均流速が2m/sを超える条件で基板の表面に沿って流す場合に、成膜されるめっき膜の膜厚が急激に薄くなってめっきレートが激減し、めっき液の平均流速を3m/sにすると、成膜が停止することが判る。これによっても、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度がある閾値を超えるとめっき析出が停止することが判る。
【0091】
図20は、無電解めっき装置の更に他の例を示す。この無電解めっき装置610は、上方に開口し、内部にめっき液612を保持してめっき処理を施すめっき槽614と、このめっき槽614の上端開口部に配置され、半導体ウエハ等の基板Wを該基板Wの表面を下向き(フェィスダウン)にして保持する基板ホルダ616を備えた処理ヘッド618を有している。
【0092】
めっき槽614は、内壁620で区画形成され、この内壁620の側部及び底部は、所定間隔離間して配置された外壁622で覆われており、これによって、内壁620と外壁622との間に外槽624が区画形成されている。内壁620には、めっき槽614と外槽624とを連通させる多数の連通孔620aがその全面に亘って形成され、これによって、めっき槽614内のめっき液612と外槽624内のめっき液612が直に連通して、これらのめっき液612の水位が常に同じになるようになっている。
【0093】
外槽624の内部には、この例では、温水ヒータ626から供給される熱媒体(温水)を内部に通して、外槽624内のめっき液612を外槽624内において、例えば70℃に加熱し、これによって、めっき槽614内のめっき液612も同時に加熱する加熱チューブを有する加熱部630が配置されている。
【0094】
更に、めっき槽614内のめっき液612を循環させるめっき液循環系632が備えられている。このめっき液循環系632は、循環ポンプ634と、この循環ポンプ634の吐出し口とめっき槽614とを接続する、内部にフィルタ636を介装しためっき液吐出し管638と、循環ポンプ634の吸込口と外槽624とを接続するめっき液吸込管640とを有している。これにより、循環ポンプ634の駆動に伴って、外槽624内のめっき液612を循環ポンプ634で吸込み、フィルタ636を通過させてめっき槽614に戻すことで、めっき槽614内のめっき液612を循環させて、めっき槽614内のめっき液612の温度を均一に維持できるようになっている。
【0095】
処理ヘッド618には、基板ホルダ616の周囲を囲繞して下方に延びるハウジング642が備えられ、このハウジング642の下端の基板ホルダ616の下方に位置して、板状の攪拌板から構成された攪拌体644が取付けられている。このハウジング642は、中空の回転軸646に取付けられて、この回転軸646と一体に回転するように構成されている。この回転軸646の内部に固定軸648が挿通されており、この固定軸648の下端に基板ホルダ616が連結されている。ここで、回転軸646は固定軸648とは独立に回転し、固定軸648は回転軸646と一体に昇降する。
【0096】
この無電解めっき装置610にあっては、循環ポンプ634を駆動させてめっき槽614内のめっき液612を循環させ、同時に加熱チューブ内に熱媒体(温水)を導入することで、めっき液612を外槽624の内部で加熱し、更にこの加熱しためっき液612をめっき槽614内に導入することで、めっき槽614内のめっき液612を、例えば70℃の一定の温度に制御する。一方、処理ヘッド618の基板ホルダ616で基板Wを吸着保持する。
【0097】
そして、加熱チューブ内に熱媒体を導入することでめっき液612の加熱を継続したまま、循環ポンプ634の駆動を停止させて、めっき槽614内のめっき液612の循環を止め、この状態で、基板ホルダ616とハウジング642とを下降させ、この基板ホルダ616で保持した基板W及びハウジング642の下端に取付けた攪拌体644をめっき槽614内のめっき液612に浸漬させて、基板Wの表面に無電解めっきを行う。
【0098】
次に、この無電解めっき装置610を使用した無電解めっきによって、図2(a)に示す第1ビアホール732及び第2ビアホール734の内部に、前述の同様な組成のめっき液(NiP合金無電解めっき液)を使用して、NiP合金からなるコンタクト配線を連続的に形成する方法について説明する。この場合、第1ビアホール732の底部に露出したWNからなる電極723及び第2ビアホール734の底部に露出した銅からなるビット線722が配線下地となって、この表面がめっき膜成長の起点となることは前述と同様である。
【0099】
先ず、基板ホルダ616を停止させたまま、攪拌体644を、通常の無電解めっき時と同じ、例えば、10〜100rpm、好ましくは10〜20rpmの低速で回転させて第1の無電解めっきを行う。そして、図2(b)に示すように、深さの浅い第1ビアホール732の内部が第1コンタクト配線(めっき膜)736でほぼ埋まって、第1コンタクト配線736の表面が絶縁膜714の表面とほぼ面一となった時点で、攪拌体644の回転速度を、例えば10〜20rpmから、例えば300rpm以上に上げて、第1ビアホール732内に形成された第1コンタクト配線736の表面にめっき膜が成膜されるのを抑制しつつ、第2ビアホール734内に形成された第2コンタクト配線738の表面にめっき膜を成膜する、第2の無電解めっきを行う。
【0100】
このように、基板をめっき液中に浸漬させ、基板表面の近傍に配置した攪拌体644を回転させてめっき液を攪拌しながら基板表面に無電解めっきを行う場合に、攪拌体644を、例えば10〜100rpm程度の回転速度で回転させながら第1の無電解めっきを行い、攪拌体644を第1の無電めっき時より速い、例えば300rpmの回転速度で回転させながら第2の無電解めっきを行うことで、第1ビアホール732内に形成された第1コンタクト配線736の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させるながら、第2ビアホール734内に形成された第2コンタクト配線738の表面にめっき膜を成膜することができる。
【0101】
そして、図2(c)に示すように、深さの深い第2ビアホール734の内部が第2コンタクト配線(めっき膜)738でほぼ埋まって、第2コンタクト配線738の表面が絶縁膜714の表面とほぼ面一となった時点で、攪拌体644の回転速度を、例えば300rpmから通常の無電解めっき時における、例えば10〜100rpmに落として、第3の無電解めっきを行う。これによって、図2(d)に示すように、第2ビアホール734内に第2コンタクト配線(めっき膜)738を確実に埋込み、更にコンタクト配線736,738の表面に平坦な膜厚の余剰めっき膜740を成膜する。
【0102】
なお、攪拌体644と基板表面との最短距離は0〜3mmであることが好ましい。めっき液中反応種の拡散境界層は一般に数mm以下である。したがって、攪拌体644と基板表面との最短距離を0〜3mmにすることで、第1ビアホール732内に形成されたコンタクト配線736の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させることができる。
【0103】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】高アスペクト比のビアホール内にCVDによってコンタクト配線を形成した時の状態を示す断面図である。
【図2】本発明において、ビアホール内にコンタクト配線を形成する時の状態を工程順に示す断面図である。
【図3】本発明の基板処理方法に使用される無電解めっき装置の平面配置図である。
【図4】図3の兼触媒付与ユニットの外槽を省略した基板受渡し時における正面図である。
【図5】触媒付与ユニットの外槽を省略した薬液処理時における正面図である。
【図6】触媒付与ユニットの外槽を省略したリンス時における正面図である。
【図7】触媒付与ユニットの基板受渡し時における処理ヘッドを示す断面図である。
【図8】図3の無電解めっきユニットの基板受渡し時における基板ヘッドを示す断面図である。
【図9】図8のB部拡大図である。
【図10】無電解めっきユニットの基板固定時における基板ヘッドを示す図9相当図である。
【図11】無電解めっきユニットのめっき処理時における基板ヘッドを示す図9相当図である。
【図12】無電解めっきユニットのめっき槽カバーを閉じた時のめっき槽を示す一部切断の正面図である。
【図13】無電解めっきユニットの洗浄槽を示す断面図である。
【図14】無電解めっきユニットの系統図である。
【図15】無電解めっき装置の他の例を示す縦断面図である。
【図16】試料の回転速度を変化させて無電解めっきを行った時の試料の回転速度とめっき膜の膜厚の関係を示すグラフである。
【図17】無電解めっき装置の更に他の例を示す平面図である。
【図18】図17の縦段正面図である。
【図19】基板を固定し、基板表面に沿って流れるめっき液の平均流速を変化させて無電解めっきを行った時のめっき液の平均流速とめっき膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図20】無電解めっき装置の更に他の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0105】
14 前洗浄ユニット
15 触媒付与ユニット
16 無電解めっきユニット
712 半導体基材
714 絶縁膜
722 ビット線
724 絶縁層
726,728 電極
730 コンデンサ
732 第1ビアホール
734 第2ビアホール
736 第1コンタクト配線
738 第2コンタクト配線
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理方法に関し、特に、半導体ウエハ等の基板の表面に設けた深さが異なるビアホールの内部に、無電解めっきによるめっき膜でコンタクト配線を形成するのに使用される基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に伴って、絶縁膜の内部に形成される配線接続用のビアホールの径と深さとの比(アスペクト比:AR(Aspect Ratio))は益々大きくなってきている。高アスペクト比のビアホールの内部にコンタクト配線を埋込む方法としては、CVDや無電解めっきが一般に知られている。
【0003】
例えば、図1に示すように、銅等からなる下層配線(導電膜)710を有する半導体基材712上に形成した絶縁膜714の内部に、リソグラフィ・エッチング技術により、下層配線710に達するビアホール716を形成し、このビアホール716の内表面を含む絶縁膜714の全表面に、CVDによって、TiN等からなるバリア層718を成膜する。そして、CVDによって、W等からなるコンタクト配線720をビアホール716の内部に埋込む。しかし、CVDは、コンフォーム成膜性を有するため、図1に示すように、高アスペクト比のビアホール716内に、CVDによってW等のコンタクト配線720を埋込むと、コンタクト配線720の内部にシームやボイド等の欠陥720aが残りやすくなって、コンタクト配線720の品質不良を引き起こしてしまう。
【0004】
これに対して、無電解めっき法は、ボトムアップ性に優れているため、高アスペクト比のビアホールの内部にシームやボイド等の欠陥のない高品質のコンタクト配線(めっき膜)を形成することができる。
【0005】
ここで、例えば、図2(a)に示すように、銅等からなるビット線722を有する半導体基材712上に、絶縁層724を挟んで上下に配置した一対の電極726,728からなるコンデンサ730を内部に埋設しながら絶縁膜714を形成した、DRAMのようなメモリデバイスにあっては、絶縁膜714の内部に、コンデンサ730の電極726に達する深さの浅い第1ビアホール732と、ビット線722に達する深さの深い第2ビアホール734を形成し、この両ビアホール732,734の内部にコンタクト配線を埋込む必要がある。このコンタクト配線の埋込みを無電解めっきで行う時には、深さの異なる両ビアホール732,734の内部へのコンタクト配線(めっき膜)の埋込みが同時に終了することが望まれる。
【0006】
通常の無電解めっきでは、ビアホールの径が同じであれば、ビアホール内に成膜されるめっき膜の成膜レート(めっきレート)はほぼ同じである。このため、深いビアホール内にコンタクト配線(めっき膜)が完全に充填されるまでめっき処理を続けると、浅いビアホール内に埋込まれたコンタクト配線(めっき膜)は、絶縁膜の表面と面一になっても更に成長を続けて絶縁膜の表面にバンプ状に盛り上がる。このバンプ状に盛り上がったコンタクト配線(めっき膜)は、次のCMP工程などの平坦化処理で除去できるが、研磨等の負荷が大きくなって、処理コストの増大に繋がる。また、配線間ピッチが狭い構造では、バンプ状に盛り上がったコンタクト配線(めっき膜)が隣のビアホールの近傍まで拡がってビアホールの入口を閉じてしまうことがある。
【0007】
このため、浅いビアホールの深さを深いビアホールと同じ深さまで延長し、延長したビアホールの底部に配線下地となるダミ電極を作成して無電解めっきを行うことで、深さの異なるビアホールの内部へのコンタクト配線(めっき膜)の埋込みを同時に行うようにしたり、深いビアホールの内部に成膜されるコンタクト配線(めっき膜)が所定の高さまで達した時に、無電解めっきを一時中断し、浅いビアホール底部に露出する金属(配線下地)に触媒処理を施した後、無電解めっきを再開したりする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許第7005379号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、浅いビアホールの深さを深いビアホールと同じ深さまで延長して、延長したビアホールの底部にダミ電極を作成する方法は、工程が追加されてプロセスが複雑化するばかりでなく、コンタクト配線と電極等との間に接触不良が生じやすくなる。また、深いビアホールの内部に成膜されるコンタクト配線(めっき膜)が所定の高さまで達した時に、無電解めっきを一時中断し、浅いビアホール底部に露出する金属(配線下地)に触媒処理を施した後、無電解めっきを再開する方法は、両ビアホールの底部で露出する金属(配線下地)が異なることが必須条件となり、適用範囲がかなり限定されてしまうばかりでなく、深いビアホールの内部には、3段階の処理でコンタクト配線(めっき膜)の埋込みが行われるため、均一な膜質のコンタクト配線を得ることが困難であると考えられる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、深さの異なるビアホールの内部に、無電解めっきによって、コンタクト配線を連続的に形成でき、しかもコンタクト配線(めっき膜)が絶縁膜の表面にバンプ状に盛り上がることがないようした基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、前記第1ビアホール及び前記第2ビアホールの内部に、基板表面をめっき液に接触させた第1の無電解めっきによって、前記第1ビアホールがほぼ埋まるまでコンタクト配線を形成し、しかる後、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を速めて前記第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に成膜されるめっき膜の成長を抑制しながら、第2の無電解めっきを行うことを特徴とする基板処理方法である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第1相対速度で相対的に移動させて第1の無電解めっきを行い、しかる後、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第2相対速度で相対的に移動させて第2の無電解めっきを行うことを特徴とする基板処理方法である。
【0012】
無電解めっきの電極反応は非定常現象であり、電気二重層の充電、反応中間体の蓄積、及び拡散層の形成などに一定の時間を要する。基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度をある程度以下に抑えると、基板表面の近傍に薄い濃度境界層が形成され、反応種の供給や析出が促進される。しかし、この相対速度がある限界を超えると、基板表面にめっきが開始できる電気化学的な条件が揃わず、めっき反応が急激に低下または停止する。このように、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度がある限界を超えても、コンタクト配線の埋込みが終了していないビアホールにあっては、該ビアホールの内部に滞在しためっき液とコンタクト配線表面との相対速度は小さく、濃度拡散による反応種の供給が続く限り、めっき反応は停止しない。
【0013】
従って、深さの浅い第1ビアホールがほぼ埋まるまで第1の無電解めっきでコンタクト配線(めっき膜)を形成し、第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面が絶縁膜の表面とほぼ面一となった時点で、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を速めた第2の無電解めっきを行うことで、第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に成膜されるめっき膜の成長を極めて遅くするか、または完全に停止させることができる。一方、絶縁膜表面と面一レベルに到達していない深さの深い第2ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面ではめっき析出反応が続けられ、このコンタクト配線の表面が絶縁膜表面と面一レベルに達すると、第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線と同じようにめっき析出が抑制される。これによって、ビアホールの深さが異なっても、コンタクト配線(めっき膜)が絶縁膜の表面にバンプ状に盛り上がること防止しつつ、コンタクト配線の連続的した形成が可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第1相対速度で相対的に移動させて第1の無電解めっきを行い、しかる後、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第2相対速度で相対的に移動させて第2の無電解めっきを行い、さらに、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第3相対速度で相対的に移動させて第3の無電解めっきを行うことを特徴とする基板処理方法である。
請求項4に記載の発明は、前記第3相対速度は前記第2相対速度より小さいことを特徴とする請求項3記載の基板処理方法である。
【0015】
コンタクト配線の表面に成膜されるめっき膜の成膜レート(めっきレート)は、コンタクト配線の表面が基板(絶縁膜)表面に近づけば近づく程、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度の影響を受けやすくなる。基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度が高いままであると、コンタクト配線の表面が基板表面に到達する直前に成膜レートが急激に低下する。そのため、最終処理段階で基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を遅くすることで、ビアホール内にコンタクト配線(めっき膜)を確実に埋込み、コンタクト配線の表面に平坦な膜厚の余剰めっき膜を成膜することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記第1相対速度は前記第2相対速度より小さいか、または同じであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の基板処理方法である。
成膜初期段階では、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を遅くすることで、下地金属にめっき金属が析出しやすくすることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記第2の無電解めっきを、めっき液中に浸漬させた基板を150rpm以上の回転速度で回転させて行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法である。
例えば、回転自在な基板ホルダで保持した基板をめっき液中に浸漬させ、基板を回転させながら該基板の表面に無電解めっきを行う場合、基板を150rpm以上の回転速度で回転させながら第2の無電解めっきを行うことで、絶縁膜の表面とほぼ面一となる第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させることができる。
【0018】
請求項9に記載の発明は、前記第2の無電解めっきを、めっき液が基板表面に沿って2m/s以上の流速で流れるようにして行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法である。
例えば、固定した基板の表面に沿ってめっき液を流しながら無電解めっきを行う場合、めっき液の流速を通常(<0.4m/s)の5倍以上の2m/s以上に上げて第2の無電解めっきを行うことで、絶縁膜の表面とほぼ面一となる第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させることができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、前記第2の無電解めっきを、めっき液中に浸漬させた基板を、周波数100Hz以上、振幅0.1〜1mmで基板表面に沿った方向に往復振動させて行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法である。
無電解めっきは、微小領域での局部電池作用で電子の授受を行うため、基板を0.1mm以上の振幅で基板表面に沿った方向に振動させると、基板表面とめっき液の間にめっき開始の条件を作れなくなる。このため、めっき液中に浸漬させた基板を、周波数100Hz以上、振幅0.1mm以上で基板表面に沿った方向に往復振動させながら第2の無電解めっきを行うことで、絶縁膜の表面とほぼ面一となる第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成膜レートをほぼ0にすることができる。なお、基板を1mm以上の振幅で基板表面に沿って振動させると、装置が大型化してしまうばかりでなく、構造の安定性からも好ましくない。
【0020】
請求項9に記載の発明は、前記第2の無電解めっきを、めっき液に浸漬させた基板表面の近傍に設置した攪拌体の移動速度を前記第1の無電解めっき時よりも増大させて行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法である。
基板をめっき液中に浸漬させ、基板表面の近傍に配置した攪拌体を回転させてめっき液を攪拌しながら基板表面に無電解めっきを行う場合、攪拌体を、例えば10〜100rpm程度の回転速度で回転させながら第1の無電解めっきを行い、攪拌体を第1の無電めっき時より速い、例えば300rpmの回転速度で回転させながら第2の無電解めっきを行うことで、絶縁膜の表面とほぼ面一となる第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させることができる。
【0021】
請求項10に記載の発明は、前記攪拌体と基板表面との最短距離は0〜3mmであることを特徴とする請求項9記載の基板処理方法である。
めっき液中反応種の拡散境界層は一般に数mm以下である。したがって、攪拌体と基板表面との最短距離を0〜3mmにすることで、絶縁膜の表面とほぼ面一となる第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、深さの浅い第1ビアホール内に第1の無電解めっきで形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を極めて遅くするか、または完全に停止させながら、深さの深い第2ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面でのめっき析出反応を続けることで、ビアホールの深さが異なっても、コンタクト配線(めっき膜)が絶縁膜の表面にバンプ状に盛り上がること防止しつつ、コンタクト配線の連続的した形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下の例では、図2(a)に示すように、ビット線722を有する半導体基材712上に、絶縁層724を挟んで上下に配置した一対の電極726,728からなるコンデンサ730を内部に埋設しながら絶縁膜714を形成し、絶縁膜714の内部に、コンデンサ730の電極726に達する深さの浅い第1ビアホール732とビット線722に達する深さの深い第2ビアホール734を形成した基板Wを用意する。そして、この両ビアホール732,734の内部に、無電解めっきでコンタクト配線を埋込むようにした例を示す。
【0024】
第1ビアホール732の底部に露出する配線下地としての電極726は、例えばWN膜で、第2ビアホール734の底部に露出する配線下地としてのビット線722は、例えば銅膜である。そして、無電解めっきで成膜されるコンタクト配線材料は、例えばNiPである。第1ビアホール732の深さは、例えば1μmで、第2ビアホール734の深さは、例えば3μmである。ビアホール732,734の直径は、共に約0.1μmである。なお、この例では、第1ビアホール732の配線下地をWNとしているが、TiNやWSiなどの金属、またはSiのような導電体であってもよい。コンタクト配線材質としては、NiP以外に、NiWB,NiWP,NiB,CoWB,CoWP,CoB,CoP,CoBPW,またはCoBP等が挙げられる。
【0025】
図3は、本発明の基板処理方法に使用される無電解めっき装置の平面配置図を示す。図3に示すように、この無電解めっき装置には、図2(a)に示す、表面の絶縁膜714に異なる深さのビアホール732,734を有する半導体ウエハ等の基板Wを収容した基板カセットを載置収容するロード・アンロードユニット11が備えられている。そして、排気系統を備えた矩形状の装置フレーム12の内部に、基板の表面を前洗浄する前洗浄ユニット14、前洗浄後の基板の表面に触媒付与液を接触させて、ビアホールの底部に露出する金属下地(電極726及びビット線722)表面に、例えばPd等の触媒を付与する触媒付与ユニット15が配置されている。
【0026】
ここでの前洗浄液は、例えばクエン酸とリン酸を含む酸性混合液であり、使用温度は20〜60℃である。洗浄の方式は、処理槽に洗浄液を循環させる浸漬式である。また、前洗浄ユニット14は、2種類の薬液処理に対応出来、その場合、第1ステップの処理は、アルカリ性の薬液のスプレー方式を採用し、第2ステップの処理は、前述の混合酸性薬液の浸漬式を採用する。Pdの触媒付与液は、PdCl2をHCl水溶液に溶かしたもので、室温で浸漬方式、またはスプレー方式で触媒付与処理を行う。
【0027】
装置フレーム12の内部には、基板の表面に無電解めっきを行う2基の無電解めっきユニット16、その後の基板を乾燥させる2基の乾燥ユニット20、及び仮置台22が配置されている。更に、装置フレーム12の内部には、ロード・アンロードユニット11に搭載された基板カセットと仮置台22との間で基板の受渡し行う第1基板搬送ロボット24と、仮置台22と各ユニット14,15,16,20との間で基板の受渡しを行う第2基板搬送ロボット26が、それぞれ走行自在に配置されている。
【0028】
次に、図3に示す無電解めっき装置に備えられている各ユニットの詳細を以下に説明する。前洗浄ユニット14は、触媒付与処理に先立って、基板Wの表面に残った金属酸化物及び/または金属錯体等を除去するようにしたユニットである。このユニットは、二重槽構造となっており、内槽に保持する洗浄液を加熱する手段を備え、基板を洗浄液に浸漬させて処理を行う。薬液洗浄後のリンス洗浄は、基板を引上げた位置で内槽のカバーを閉じ、カバーの上面に設置されたスプレーノズルからの超純水を供給して行う。前洗浄に2ステップが必要となる場合には、カバー上に設置されたスプレーノズルを2系統に分離し、1つの系統から超純水を、もう1つの系統から第2洗浄液を供給する。
【0029】
前処理ユニット14は、図4乃至図6に詳細に示すように、フレーム50の上部に取付けた固定枠52と、この固定枠52に対して相対的に上下動する移動枠54を備えており、図7に示すように、この移動枠54に、下方に開口した有底円筒状のハウジング部56と基板ホルダ58とを有する処理ヘッド60が懸架支持されている。つまり、移動枠54には、ヘッド回転用サーボモータ62が取付けられ、このサーボモータ62の下方に延びる出力軸(中空軸)64の下端に処理ヘッド60のハウジング部56が連結されている。
【0030】
この出力軸64の内部には、図7に示すように、スプライン66を介して該出力軸64と一体に回転する鉛直軸68が挿着され、この鉛直軸68の下端に、ボールジョイント70を介して処理ヘッド60の基板ホルダ58が連結されている。基板ホルダ58は、ハウジング部56の内部に位置している。また鉛直軸68の上端は、軸受72及びブラケットを介して、移動枠54に固定した固定リング昇降用シリンダ74に連結されている。これにより、この昇降用シリンダ74の作動に伴って、鉛直軸68が出力軸64とは独立に上下動する。
【0031】
図4乃至図6に示すように、固定枠52には、上下方向に延びて移動枠54の昇降の案内となるリニアガイド76が取付けられ、ヘッド昇降用シリンダ(図示せず)の作動に伴って、移動枠54がリニアガイド76を案内として昇降する。これにより、基板を保持した処理ヘッド60を下降させ、内槽100bに保持された洗浄液に基板を浸漬させて所定時間処理する。
【0032】
しかる後、処理ヘッド60を上昇させ、処理槽100の内槽100bの上端開口部を蓋体102で閉塞した状態で、処理ヘッド60で保持した基板Wに向けて、蓋体102の上面に配置したノズル板112の噴射ノズル112aから第2処理液を噴射することで、基板Wの下面(処理面)の全面に亘って第2処理液を均一に噴射する。この第2処理液は、外槽100aと内槽100bの間を通って、排水管(図に示せず)を介して排出されるので、内槽100bの内部に流入することが防止されて、第1処理液に混ざることが防止される。
【0033】
この前処理ユニット14によれば、図4に示すように、処理ヘッド60を上昇させた状態で、この内部に基板Wを挿入して保持し、しかる後、図5に示すように、処理ヘッド60を下降させて処理槽100の内槽100bの上端開口部を覆う位置に位置させる。そして、処理ヘッド60を回転させて、処理ヘッド60で保持した基板Wを回転させながら処理液に浸漬させる。そして、処理ヘッド60を上昇させて所定位置で停止させ、図6に示すように、待避位置にあった蓋体102を処理槽100の内槽100bの上端開口部を覆う位置まで移動させる。そして、この状態で、処理ヘッド60で保持して回転させた基板Wに向けて、蓋体102の上面に配置したノズル板112の噴射ノズル112aから第2処理液を噴射する。これにより、基板Wの第1処理液と第2処理液による処理を、2つの液体が混ざらないようにしながら行うことができる。
【0034】
触媒付与ユニット15の構造は前洗浄ユニット14と基本的に同じである。異なる点は、常温の触媒付与液を使う場合、内槽に加熱手段を省くことができる点である。また、触媒付与処理によって金属下地の表面が損傷するのを軽減するために、触媒付与液にN2のような不活性ガスを導入する手段を設けている。
【0035】
無電解めっきユニット16を図8乃至図13に示す。この無電解めっきユニット16は、めっき槽200(図12及び図14参照)と、このめっき槽200の上方に配置されて基板Wを着脱自在に保持する基板ヘッド204(図8参照)を有している。
【0036】
基板ヘッド204は、図8に詳細に示すように、ハウジング部230とヘッド部232とを有し、ヘッド部232は、吸着ヘッド234と該吸着ヘッド234の周囲を囲繞する基板受け236から主に構成されている。そして、ハウジング部230の内部には、基板回転用モータ238と基板受け駆動用シリンダ240が収納され、この基板回転用モータ238の出力軸(中空軸)242の上端はロータリジョイント244に、下端はヘッド部232の吸着ヘッド234にそれぞれ連結され、基板受け駆動用シリンダ240のロッドは、ヘッド部232の基板受け236に連結されている。ハウジング部230の内部には、基板受け236の上昇を機械的に規制するストッパ246が設けられている。
【0037】
ここで、吸着ヘッド234と基板受け236との間には、スプライン構造が採用され、基板受け駆動用シリンダ240の作動に伴って基板受け236は吸着ヘッド234と相対的に上下動するが、基板回転用モータ238の駆動によって出力軸242が回転すると、この出力軸242の回転に伴って、吸着ヘッド234と基板受け236が一体に回転するように構成されている。
【0038】
吸着ヘッド234の下面周縁部には、図9乃至図11に詳細に示すように、下面をシール面として基板Wを吸着保持する吸着リング250が押えリング251を介して取付けられ、この吸着リング250の下面に円周方向に連続させて設けた凹状部250aと吸着ヘッド234内を延びる真空ライン252とが吸着リング250に設けた連通孔250bを介して互いに連通するようになっている。これにより、凹状部250a内を真空引きすることで、基板Wを吸着保持するのであり、このように、小さな幅(径方向)で円周状に真空引きして基板Wを保持することで、真空による基板Wへの影響(たわみ等)を最小限に抑え、しかも吸着リング250をめっき液中に浸すことで、基板Wの表面(下面)のみならず、エッジについても、全てめっき液に浸すことが可能となる。基板Wのリリースは、真空ライン252にN2を供給して行う。
【0039】
一方、基板受け236は、下方に開口した有底円筒状に形成され、その周壁には、基板Wを内部に挿入する基板挿入窓236aが設けられ、下端には、内方に突出する円板状の爪部254が設けられている。更に、この爪部254の上部には、基板Wの案内となるテーパ面256aを内周面に有する突起片256が備えられている。
【0040】
これにより、図9に示すように、基板受け236を下降させた状態で、基板Wを基板挿入窓236aから基板受け236の内部に挿入する。すると、この基板Wは、突起片256のテーパ面256aに案内され、位置決めされて爪部254の上面の所定位置に載置保持される。この状態で、基板受け236を上昇させ、図10に示すように、この基板受け236の爪部254上に載置保持した基板Wの上面を吸着ヘッド234の吸着リング250に当接させる。次に、真空ライン252を通して吸着リング250の凹状部250aを真空引きすることで、基板Wの上面の周縁部を該吸着リング250の下面にシールしながら基板Wを吸着保持する。そして、無電解めっき処理を行う際には、図11に示すように、基板受け236を数mm下降させ、基板Wを爪部254から離して、吸着リング250のみで吸着保持した状態となす。これにより、基板Wの表面(下面)の周縁部が、爪部254の存在によってめっきされなくなることを防止することができる。
【0041】
図12は、めっき槽200の詳細を示す。このめっき槽200は、底部において、めっき液供給管308(図13参照)に接続され、周壁部にめっき液回収溝260が設けられている。めっき槽200の内部には、ここを上方に向かって流れるめっき液の流れを安定させる2枚の整流板262,264が配置され、更に底部には、めっき槽200の内部に導入されるめっき液の液温を測定する温度測定器266が設置されている。また、めっき槽200の周壁外周面のめっき槽200で保持しためっき液の液面よりやや上方に位置して、直径方向のやや斜め上方に向けてめっき槽200の内部に、pHが6〜7.5の中性液からなる停止液、例えば純水を噴射する噴射ノズル268が設置されている。これにより、無電解めっき終了後、ヘッド部232で保持した基板Wをめっき液の液面よりやや上方まで引上げて一旦停止させ、この状態で、基板Wに向けて噴射ノズル268から純水(停止液)を噴射して基板Wを直ちに冷却し、これによって、基板Wに残っためっき液によって無電解めっきが進行してしまうことを防止することができる。
【0042】
更に、めっき槽200の上端開口部には、アイドリング時等のめっき処理の行われていない時に、めっき槽200の上端開口部を閉じて該めっき槽200内のめっき液の無駄な蒸発と放熱を防止するめっき槽カバー270が開閉自在に設置されている。
【0043】
このめっき槽200は、図14に示すように、底部において、めっき液貯槽302から延び、途中にめっき液供給ポンプ304、フィルタ305及び三方弁306を介装しためっき液供給管308に接続されている。更に、めっき槽200のめっき液回収溝260は、めっき液貯槽302から延びるめっき液回収管に接続されている。これにより、無電解めっき処理中にあっては、めっき槽200の内部に、この底部からめっき液を供給し、めっき槽200を溢れるめっき液をめっき液回収溝260からめっき液貯槽302へ回収することで、めっき液が循環できるようになっている。また、三方弁306の一つの出口ポートには、めっき液貯槽302に戻るめっき液戻り管312が接続されている。これにより、めっき待機時にあっても、めっき液を循環させることができる。
【0044】
特に、この例では、めっき液供給ポンプ304を制御することで、めっき待機時及び無電解めっき処理時に循環するめっき液の流量を個別に設定できるようになっている。すなわち、めっき待機時のめっき液の循環流量は、例えば2〜20L/minで、無電解めっき処理時のめっき液の循環流量は、例えば0〜10L/minに設定される。これにより、めっき待機時にめっき液の大きな循環流量を確保して、セル内のめっき浴の液温を一定に維持し、無電解めっき処理時には、めっき液の循環流量を小さくして、より均一な膜厚の保護膜(めっき膜)を成膜することができる。
【0045】
めっき槽200の底部付近には、めっき槽200の内部に導入されるめっき液の液温を測定して、この測定結果を元に、下記のヒータ316及び流量計318を制御する温度測定器266が設けられている。
【0046】
この例では、別置きのヒータ316を使用して昇温させ、流量計318を通過させた水を熱媒体に使用し、熱交換器320をめっき液貯槽302内のめっき液中に設置して該めっき液を間接的に加熱する加熱装置322と、めっき液貯槽302内のめっき液を循環させて攪拌する攪拌ポンプ324が備えられている。これは、無電解めっきにあっては、めっき液を高温(約80℃程度)にして使用することがあり、これと対応するためであり、この方法によれば、インライン・ヒーティング方式に比べ、非常にデリケートなめっき液に不要物等が混入するのを防止することができる。
【0047】
この例によれば、めっき液は、基板Wと接触して無電解めっきを行うときに、基板Wの温度が70〜90℃となるように液温が設定され、液温のばらつき範囲が±2℃以内となるように制御される。
【0048】
無電解めっきユニット16には、めっき液貯槽302内のめっき液を抽出するめっき液抽出部330と、この抽出された無電解めっきユニット16が保有するめっき液の組成を、例えば吸光光度法、滴定法、電気化学的測定などで分析するめっき液組成分析部332が備えられている。このめっき液組成分析部332は、例えばニッケルイオン濃度をめっき液の吸光度分析、イオンクロマトグラフ分析、キャピラリー電気泳動分析またはキレート滴定分析により測定する。
【0049】
めっき液の液温は、高くなるほどめっき速度が速くなり、低すぎるとめっき反応が起こらないことから、一般的には60〜95℃で、65〜85℃であることが好ましく、70〜75℃であることがより好ましい。基本的には、無電解めっきを実際に行っているか否かに関わらず、一度温度を上げたら下げないことが望ましく、55℃以上にしておくことが望まれる。
【0050】
図13は、めっき槽200の側方に付設されている洗浄槽202の詳細を示す。この洗浄槽202の底部には、純水等のリンス液を上方に向けて噴射する複数の噴射ノズル280がノズル板282に取付けられて配置され、このノズル板282は、ノズル上下軸284の上端に連結されている。更に、このノズル上下軸284は、ノズル位置調整用ねじ287と該ねじ287と螺合するナット288との螺合位置を変えることで上下動し、これによって、噴射ノズル280と該噴射ノズル280の上方に配置される基板Wとの距離を最適に調整できるようになっている。
【0051】
更に、洗浄槽202の周壁外周面の噴射ノズル280より上方に位置して、直径方向のやや斜め下方に向けて洗浄槽202の内部に純水等の洗浄液を噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくともめっき液に接液する部分に洗浄液を吹き付けるヘッド洗浄ノズル286が設置されている。
【0052】
この洗浄槽202にあっては、基板ヘッド204のヘッド部232で保持した基板Wを洗浄槽202内の所定の位置に配置し、噴射ノズル280から純水等の洗浄液(リンス液)を噴射して基板Wを洗浄(リンス)するのであり、この時、ヘッド洗浄ノズル286から純水等の洗浄液を同時に噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくともめっき液に接液する部分を該洗浄液で洗浄することで、めっき液に浸された部分に析出物が蓄積してしまうことを防止することができる。
無電解めっきユニットは、図4乃至図6に示す前処理ユニットと同様な構造で、めっき処理を内槽で行い、リンス洗浄を外槽でスプレーノズルにより行うようにしている。
【0053】
次に、無電解めっきユニット16を使用した無電解めっきによって、図2(a)に示す第1ビアホール732及び第2ビアホール734の内部に、NiP合金からなるコンタクト配線を連続的に形成する方法について説明する。この例の場合、第1ビアホール732の底部に露出したWNからなる電極723及び第2ビアホール734の底部に露出した銅からなるビット線722が配線下地となって、この表面がめっき膜成長の起点となる。
【0054】
無電解めっき処理に使用するめっき液(NiP合金無電解めっき液)の組成例を以下に示す。
硫酸ニッケル6水和物: 35g/L
クエン酸アンモニウム: 20g/L
88%乳酸: 50ml/L
次亜リン酸ナトリウム: 30g/L
プロピオン酸: 2g/L
安定剤: 適量
pH調整剤: 適量
pH:6.9
温度:80℃
めっきレート:約500nm/min
【0055】
先ず、基板ヘッド204を上昇させた位置で、第1ビアホール732の底部に露出した電極723及び第2ビアホール734の底部に露出したビット線722の表面にPd触媒を付与した基板Wを、前述のようにして、基板ヘッド204のヘッド部232で吸着保持する。この時、めっき槽200のめっき液を循環させておく。
【0056】
そして、めっき槽200のめっき槽カバー270を開き、基板ヘッド204を回転させながら下降させ、ヘッド部232で保持した基板Wを回転させながらめっき槽200内のめっき液に浸漬させて第1の無電解めっき処理を行う。この第1無電解めっき時に、基板Wを通常の無電解めっき時と同じ1〜50rpmの回転速度、例えば15rpmの回転速度で回転させる。これにより、図2(b)に示すように、第1ビアホール732の底部に露出した電極723及び第2ビアホール734の底部に露出したビット線722を起点として、これらの表面にNiP合金めっき膜を成長させ、このめっき膜で第1ビアホール732内に埋込まれる第1コンタクト配線736及び第2ビアホール734内に埋込まれる第2コンタクト配線738を形成する。
【0057】
そして、深さの浅い第1ビアホール732の内部が第1コンタクト配線(めっき膜)736でほぼ埋まって、第1コンタクト配線736の表面が絶縁膜714の表面とほぼ面一となった時点、つまり、この例では、第1ビアホール732の深さが1μmで、めっきレートが500nm/minであるので、基板Wを、例えば15rpmの回転速度で回転させながら、第1の無電解めっきを約2分間行った時点で、基板Wの回転速度を、15rpmから150rpm以上、例えば300rpmに上げて、第2の無電解めっき処理を行う。この第2の無電解めっきでは、図2(c)に示すように、第1ビアホール732内に形成された第1コンタクト配線736の表面にめっき膜が成膜されるのを抑制しつつ、第2ビアホール734内に形成された第2コンタクト配線738の表面にめっき膜を成膜して、第2コンタクト配線738の高さを高くする。
【0058】
つまり、このように、基板Wの回転速度を150rpm以上、例えば300rpmに上げ、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を上げると、基板表面にめっきが開始できる電気化学的な条件が揃わず、めっき反応が急激に低下または停止する。つまり、第1コンタクト配線736の表面にあっては、絶縁膜714の表面とほぼ面一となっているので、第1コンタクト配線736の表面に沿って流れるめっき液の流速が速くなって、第1コンタクト配線736の表面にめっき膜が成膜されることが抑制される。
【0059】
一方、深さが深く、第2コンタクト配線738の埋込みが完了していない第2ビアホール734の内部にあっては、第2ビアホル734内に滞在しためっき液と第2コンタクト配線738との相対速度は小さく、濃度拡散による反応種の供給が続く限り、めっき反応は停止しない。このため、第2コンタクト配線738の表面にめっき膜が成膜される。
【0060】
そして、深さの深い第2ビアホール734の内部が第2コンタクト配線(めっき膜)738でほぼ埋まって、第2コンタクト配線738の表面が絶縁膜714の表面とほぼ面一となった時点、つまり、この例では、第2ビアホール734の深さが3μmで、めっきレートが500nm/minであるので、基板Wを、例えば300rpmの回転速度で回転させながら、第2の無電解めっきを約4分間行った時点で、基板Wの回転速度を、300rpmから、通常の無電解めっき時と同じ1〜50rpm、例えば15rpmに下げて、第3の無電解めっき処理を、例えば12秒間行う。
【0061】
この第3の無電解めっきでは、図2(d)に示すように、第2ビアホール734内に第2コンタクト配線(めっき膜)738を確実に埋込み、更にコンタクト配線736,738の表面に平坦な膜厚の余剰めっき膜740を成膜する。つまり、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度が高いままであると、コンタクト配線の表面が基板表面に到達する直前に成膜レートが急激に低下するが、基板の回転速度を落として、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を落とした第3の無電解めっきを行うことで、第2ビアホール734内に第2コンタクト配線(めっき膜)738を確実に埋込み、更にコンタクト配線736,738の表面に平坦な膜厚の余剰めっき膜740を成膜することができる。
【0062】
無電解めっきを終了した後、基板ヘッド204を上昇させて、基板Wをめっき槽200内のめっき液から引上げ、必要に応じて、前述のように、基板Wに向けて噴射ノズル268から純水(停止液)を噴射して基板Wを直ちに冷却し、更に基板ヘッド204を上昇させ、基板Wをめっき槽200の上方位置まで引上げて、基板ヘッド204の回転を停止させる。
【0063】
次に、基板ヘッド204のヘッド部232で基板Wを吸着保持したまま、基板ヘッド204を洗浄槽202の直上方位置に移動させる。そして、基板ヘッド204を回転させながら洗浄槽202内の所定の位置まで下降させ、噴射ノズル280から純水等の洗浄液(リンス液)を噴射して基板Wを洗浄(リンス)し、同時に、ヘッド洗浄ノズル286から純水等の洗浄液を噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくともめっき液に接液する部分を該洗浄液で洗浄する。
【0064】
この基板Wの洗浄が終了した後、基板ヘッド204の回転を停止させ、基板ヘッド204を上昇させて基板Wを洗浄槽202の上方位置まで引上げ、更に基板ヘッド204を第2基板搬送ロボット26との受渡し位置まで移動させ、この第2基板搬送ロボット26に基板Wを受渡して次工程に搬送する。
【0065】
この例によれば、深さの浅い第1ビアホール732内に第1の無電解めっきで形成された第1コンタクト配線736の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を極めて遅くするか、または完全に停止させながら、深さの深い第2ビアホール734内に形成された第2コンタクト配線738の表面でのめっき析出反応を続けることで、第1コンタクト配線(めっき膜)736が絶縁膜714の表面にバンプ状に盛り上がること防止しつつ、コンタクト配線736,738の連続的した形成が可能となる。
【0066】
図15は、無電解めっき装置の他の例を示す。この無電解めっき装置は、表面Sにビアホール732,734(図2(a)参照)を形成した半導体ウエハ等の基板Wを下向き(フェイスダウン)にして吸着保持する基板保持部410を有している。この基板保持部410は、円板状の保持体412と、この保持体412の下面の外周部に取付けたリング状の真空シール材414とを備えている。この真空シール材414は、例えばゴム等の弾性体から構成され、U字状の凹部を有する形状に形成されている。更に、保持体412は、回転モータから延びる回転軸の下端に連結されている。真空シール材414の凹部は、保持体412の内部を延びる真空経路420に連通し、この真空経路420は、図示しない真空源に接続されている。
【0067】
これによって、真空シール材414の凹部と基板Wの表面で区画させた空間を真空引きすることで、基板Wをその外周部を真空シール材414でシールした状態で吸着保持し、更に、このように基板Wを保持した状態で、回転モータを駆動することで、基板Wを保持体412と一体に回転させることができる。
【0068】
更に、保持体412の内部を延び、保持体412の真空シール材414で囲まれた下面で開口する不活性ガス導入路422が備えられている。これにより、基板Wをその外周部を真空シール材414でシールした状態で吸着保持した時に、この真空シール材414で囲まれた領域に、N2ガス等の不活性ガスを導入することで、この真空シール材414で囲まれた領域に浸入しようとするめっき液をこの不活性ガスで強制的に外方に押し戻し、これによって、めっき液の真空シール材414で囲まれた領域内への浸入をより確実に確実に防止できるようになっている。
【0069】
基板保持部410の周囲を包囲するように、ハウジング430が配置され、このハウジング430の下端に、内方に突出して基板Wの周縁部を下から支えるリング状の支持部432が設けられている。更に、ハウジング430の周壁には、基板Wの出し入れを行う開口が設けられている。ハウジング430は、シリンダ(図示せず)の作動に伴って基板保持部410と相対的に上下動し、また支持部432と真空シール材414で基板の周縁部を挟持して保持した状態で、基板保持部410と一体に回転する。
【0070】
ハウジング430の下方に位置して、めっき液442を保持するめっき槽444が配置されている。このめっき槽444は、めっき液442との摩擦を低減するため、例えばテフロン(登録商標)製で、内部には、底部中央から上方に延びるめっき液供給路446に連通してめっき液442を保持するめっき室448が形成されている。このめっき室448は、周囲を溢流堰450で囲われ、この溢流堰450の外側に、めっき液排出路452が形成されている。これにより、めっき液442は、めっき液供給路446から上向きでめっき室448内に導入され、溢流堰450をオーバーフローしてめっき液排出路452から外部に排出される。
【0071】
この例の無電解めっき装置にあっては、ハウジング430を基板保持部410に対して相対的に下降させた状態で、基板Wをハウジング430の内部に入れ、支持部432の上に載置保持する。この状態で、ハウジング430を上昇させ、基板保持部410の真空シール材414の下端に基板Wを圧接させる。そして、真空シール材414の凹部と基板Wの表面で区画された空間を真空引きすることで、基板Wをその外周部を真空シール材414でシールした状態で吸着保持し、更に、この真空シール材414で囲まれた領域に、N2ガス等の不活性ガスを導入する。この状態で、基板保持部410に内蔵した加熱部で基板Wをその全域に亘ってめっき室448内に導入されるめっき液442の温度と同じ一定の温度に加熱する。一方、めっき液供給路446から一定の温度に加熱しためっき液442をめっき室448内に導入し、溢流堰450からオーバーフローさせておく。
【0072】
この状態で、基板Wを、例えば0〜100rpm、好ましくは0〜50rpm、更に好ましくは0〜20rpm程度の回転速度で回転させつつ下降させて、基板Wをめっき室448内のめっき液442内に浸漬させ、更にハウジング430のみを下降させて、支持部432を基板Wの裏面から離し、基板Wを基板保持部410のみで吸着保持する。
【0073】
これによって、前述の同様に、基板Wを、好ましくは0〜20rpm程度の回転速度で回転させながら第1の無電解めっきを行い、次に、基板を150rpm以上、例えば300rpmの回転速度で回転させながら第2の無電解めっきを行い、更に基板を好ましくは0〜20rpm程度の回転速度で回転させながら第3の無電解めっきを行う。
【0074】
図15に示す無電解めっき装置を用い、前述のめっき液(NiP合金無電解めっき液)を使用して、基板の回転速度と成膜されるめっき膜の膜厚との関係を調べた。つまり、試料(基板)として300mmの銅ブランケットウエハを用い、めっき液の循環流量を5L/minの一定に設定した条件の下で、試料を0rpm、10rpm、50rpm、100rpm、150rpm、及び300rpmの回転速度で回転させながら、140secの無電解めっきを行って、試料の銅表面にNiP合金めっき膜を成膜した。めっき前処理、及びめっき後処理は全て同じ条件で行った。そして、光学式の膜厚測定器を用い、各試料表面の49点でNiP合金めっき膜の膜厚を測定し、その平均値を膜厚値とした。めっき膜厚と試料の回転速度の関係を図16に示す。
【0075】
図16から、試料を0〜100rpmの回転速度で回転させながら無電解めっきを行うと、試料の回転速度の上昇とともに、成膜されるめっき膜の膜厚が厚くなってめっきレートは上昇し、試料の回転速度が150rpmを超える条件では、成膜されるめっき膜の膜厚が急激に薄くなってめっきレートが激減して、試料の回転速度を300rpmにすると、成膜が停止することが判る。このことから、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度がある閾値を超えるとめっき析出が停止することが判る。
【0076】
なお、上記の例では、基板の回転速度を、例えば15rpmから300rpmに上げることで、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を速めるようにしているが、めっき液中に浸漬させた基板を、周波数100Hz以上、振幅0.1〜1mmで基板表面に沿った方向に往復振動させることによって、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を速めるようにしてもよい。
【0077】
無電解めっきは、微小領域での局部電池作用で電子の授受を行うため、基板を0.1mm以上の振幅で基板表面に沿った方向に振動させると、基板表面とめっき液の間にめっき開始の条件を作れなくなる。このため、めっき液中に浸漬させた基板を、周波数100Hz以上、振幅0.1mm以上で基板表面に沿った方向に往復振動させながら第2の無電解めっきを行うことで、第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成膜レートをほぼ0にすることができる。なお、基板を1mm以上の振幅で基板表面に沿って振動させると、装置が大型化してしまうばかりでなく、構造の安定性からも好ましくない。
【0078】
図17及び図18は、無電解めっき装置の更に他の例を示す。このめっき装置は、基板Wを載置保持する円形の基板保持面510aとその周囲のめっき液流通面510bとを有する基台510と、この基台510の上面を水密的に覆い、該基台510との間で水平方向に拡がるほぼ矩形のめっき室512を形成する天板(キャップ)514とから構成されるめっき容器515を備えている。この天板514は、基台510に対して、例えば、蝶番等によってめっき室512を開閉可能なように設けられ、基板Wの出し入れやメンテナンスの便宜を図っている。
【0079】
キャップ514には、中央下面に矩形の凹部514aが設けられ、この凹部514aと基板保持面510aの間にめっき室512が形成される。キャップ514には、めっき容器515の長手方向(図17及び図18において左右方向)の両端部にめっき液貯液部516a,516bが設けられ、めっき液貯液部516a,516bはめっき室512と隔壁518a,518bによって区画されている。そして、これら隔壁518a,518bには、めっき液貯液部516a,516bとめっき室512とを連通する多数の流通孔520a,520bが所定のピッチP1で設けられている。
【0080】
めっき容器515の外部には、めっき室512にめっき液を供給するめっき液供給手段522が備えられている。このめっき液供給手段522は、第1のめっき液循環ライン524aと第2のめっき液循環ライン524bとを有し、これらの両ライン524a,524bは、互いに合流して循環ポンプ526の吸込側と吐出側、及び各めっき液貯液部516a,516bにそれぞれ接続されている。そして、第1のめっき液循環ライン524aには、ポンプ526を挟んで開閉弁528a,528bが、第2のめっき液循環ライン524bにも、ポンプ526を挟んで開閉弁528c,528dがそれぞれ設置されている。
【0081】
これにより、第1のめっき液循環ライン524aの各開閉弁528a,528bを開き、第2のめっき液循環ライン524bの各開閉弁528c,528dを閉じることで、めっき液が第1のめっき液循環ライン524a内を実線の矢印に沿って流れる。逆に、第1のめっき液循環ライン524aの各開閉弁528a,528bを閉じ、第2のめっき液循環ライン524bの各開閉弁528c,528dを開くと、めっき液が第2のめっき液循環ライン524b内を破線の矢印に沿って流れる。
【0082】
めっき室512内には、正方形状の整流板530が配置されている。この整流板530の下面には、めっき容器515の長手方向に直線状に延びる複数の仕切壁532が所定のピッチで平行に垂設されている。一方、整流板530の上面中央には、上方に突出する軸体534が設けられている。この軸体534は、キャップ514の中央に長手方向に直交する方向に長く延びて設けられた長穴536に挿入され、軸体534と長穴536の間はベローズ538のような柔軟性部材で覆われている。
【0083】
軸体534は、長穴536よりキャップ514の上面に突出し、これには、軸体534を長穴536に沿って往復動させる駆動手段が連結されている。従って、整流板530は軸体534を介して仕切壁532と直交する方向、すなわち、隔壁518a,518bと平行な方向に揺動する。
【0084】
この無電解めっき装置においては、基板Wを基台510の基板保持面510a上に載置し、キャップ514を閉じた後、例えば第1のめっき液循環ライン524aを開き、第2のめっき液循環ライン524bを閉じた状態で、ポンプ526を作動させる。すると、めっき液は、一方のめっき液貯液部516aから隔壁518aの流通孔520aよりめっき室512内に流入し、基板Wの上面に全面に亘る均一な平行流を形成して基板Wのめっきを行った後、他方の隔壁518bの流通孔520bからめっき液貯液部516bに排出され、これによって、無電解めっきが行われる。この時、必要に応じて、整流板530を仕切壁532と直交する方向に揺動させる。
【0085】
次に、この無電解めっき装置を使用した無電解めっきによって、図2(a)に示す第1ビアホール732及び第2ビアホール734の内部に、前述の同様な組成のめっき液(NiP合金無電解めっき液)を使用して、NiP合金からなるコンタクト配線を連続的に形成する方法について説明する。この場合、第1ビアホール732の底部に露出したWNからなる電極723及び第2ビアホール734の底部に露出した銅からなるビット線722が配線下地となって、この表面がめっき膜成長の起点となることは前述と同様である。
【0086】
先ず、ポンプ526を介して、めっき液が通常の無電解めっき時における0.4m/s以下の流速で基板Wの表面に沿って流れるようにして、第1の無電解めっきを行う。そして、図2(b)に示すように、深さの浅い第1ビアホール732の内部が第1コンタクト配線(めっき膜)736でほぼ埋まって、第1コンタクト配線736の表面が絶縁膜714の表面とほぼ面一となった時点で、ポンプ526を介して、めっき液が2m/s以上、例えば3m/sの流速で基板Wの表面に沿って流れるようにして、第1ビアホール732内に形成された第1コンタクト配線736の表面にめっき膜が成膜されるのを抑制しつつ、第2ビアホール734内に形成された第2コンタクト配線738の表面にめっき膜を成膜する、第2の無電解めっきを行う。
【0087】
このように、固定した基板の表面に沿ってめっき液を流しながら無電解めっきを行う場合、めっき液の流速を通常(<0.4m/s)の5倍以上の2m/s以上、例えば3m/sに上げて第2の無電解めっきを行うことで、第1ビアホール732内に形成された第1コンタクト配線736の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させながら、第2ビアホール734内に形成された第2コンタクト配線738の表面にめっき膜を成膜することができる。
【0088】
そして、図2(c)に示すように、深さの深い第2ビアホール734の内部が第2コンタクト配線(めっき膜)738でほぼ埋まって、第2コンタクト配線738の表面が絶縁膜714の表面とほぼ面一となった時点で、めっき液が通常の無電解めっき時における、例えば0.4m/s以下の流速で基板Wの表面に沿って流れるようにして、第3の無電解めっきを行う。これによって、図2(d)に示すように、第2ビアホール734内に第2コンタクト配線(めっき膜)738を確実に埋込み、コンタクト配線736,738の表面に平坦な膜厚の余剰めっき膜740を成膜する。
【0089】
図17及び図18に示す無電解めっき装置を使用し、前述のめっき液((NiP合金無電解めっき液)を使用して、めっき液の平均流速と成膜されるめっき膜の膜厚との関係を調べた。試料(基板)として300mmの銅ブランケットウエハを用い、めっき液を0m/s,0.1m/s、0.3m/s、1m/s、2m/s、及び3m/sの平均流速で基板の表面に沿って流しながら、140secの無電解めっきを行って、試料の銅表面にNiP合金めっき膜を成膜した。めっき前処理、及びめっき後処理は全て同じ条件で行った。めっき液の平均流速は、入口流量と断面積の比で算出した。めっき液の循環流量によるめっき容器内のめっき液度の影響を無くすために、試料下の基台に補助ヒータを設置した(図に示せず)。めっき液の平均流速とめっき膜厚との関係を図19に示す。
【0090】
図19から、めっき液を0〜1m/sの平均流速で基板の表面に沿って流しながら無電解めっきを行った場合には、めっき膜厚(めっきレート)に変動は認められないが、めっき液を平均流速が2m/sを超える条件で基板の表面に沿って流す場合に、成膜されるめっき膜の膜厚が急激に薄くなってめっきレートが激減し、めっき液の平均流速を3m/sにすると、成膜が停止することが判る。これによっても、基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度がある閾値を超えるとめっき析出が停止することが判る。
【0091】
図20は、無電解めっき装置の更に他の例を示す。この無電解めっき装置610は、上方に開口し、内部にめっき液612を保持してめっき処理を施すめっき槽614と、このめっき槽614の上端開口部に配置され、半導体ウエハ等の基板Wを該基板Wの表面を下向き(フェィスダウン)にして保持する基板ホルダ616を備えた処理ヘッド618を有している。
【0092】
めっき槽614は、内壁620で区画形成され、この内壁620の側部及び底部は、所定間隔離間して配置された外壁622で覆われており、これによって、内壁620と外壁622との間に外槽624が区画形成されている。内壁620には、めっき槽614と外槽624とを連通させる多数の連通孔620aがその全面に亘って形成され、これによって、めっき槽614内のめっき液612と外槽624内のめっき液612が直に連通して、これらのめっき液612の水位が常に同じになるようになっている。
【0093】
外槽624の内部には、この例では、温水ヒータ626から供給される熱媒体(温水)を内部に通して、外槽624内のめっき液612を外槽624内において、例えば70℃に加熱し、これによって、めっき槽614内のめっき液612も同時に加熱する加熱チューブを有する加熱部630が配置されている。
【0094】
更に、めっき槽614内のめっき液612を循環させるめっき液循環系632が備えられている。このめっき液循環系632は、循環ポンプ634と、この循環ポンプ634の吐出し口とめっき槽614とを接続する、内部にフィルタ636を介装しためっき液吐出し管638と、循環ポンプ634の吸込口と外槽624とを接続するめっき液吸込管640とを有している。これにより、循環ポンプ634の駆動に伴って、外槽624内のめっき液612を循環ポンプ634で吸込み、フィルタ636を通過させてめっき槽614に戻すことで、めっき槽614内のめっき液612を循環させて、めっき槽614内のめっき液612の温度を均一に維持できるようになっている。
【0095】
処理ヘッド618には、基板ホルダ616の周囲を囲繞して下方に延びるハウジング642が備えられ、このハウジング642の下端の基板ホルダ616の下方に位置して、板状の攪拌板から構成された攪拌体644が取付けられている。このハウジング642は、中空の回転軸646に取付けられて、この回転軸646と一体に回転するように構成されている。この回転軸646の内部に固定軸648が挿通されており、この固定軸648の下端に基板ホルダ616が連結されている。ここで、回転軸646は固定軸648とは独立に回転し、固定軸648は回転軸646と一体に昇降する。
【0096】
この無電解めっき装置610にあっては、循環ポンプ634を駆動させてめっき槽614内のめっき液612を循環させ、同時に加熱チューブ内に熱媒体(温水)を導入することで、めっき液612を外槽624の内部で加熱し、更にこの加熱しためっき液612をめっき槽614内に導入することで、めっき槽614内のめっき液612を、例えば70℃の一定の温度に制御する。一方、処理ヘッド618の基板ホルダ616で基板Wを吸着保持する。
【0097】
そして、加熱チューブ内に熱媒体を導入することでめっき液612の加熱を継続したまま、循環ポンプ634の駆動を停止させて、めっき槽614内のめっき液612の循環を止め、この状態で、基板ホルダ616とハウジング642とを下降させ、この基板ホルダ616で保持した基板W及びハウジング642の下端に取付けた攪拌体644をめっき槽614内のめっき液612に浸漬させて、基板Wの表面に無電解めっきを行う。
【0098】
次に、この無電解めっき装置610を使用した無電解めっきによって、図2(a)に示す第1ビアホール732及び第2ビアホール734の内部に、前述の同様な組成のめっき液(NiP合金無電解めっき液)を使用して、NiP合金からなるコンタクト配線を連続的に形成する方法について説明する。この場合、第1ビアホール732の底部に露出したWNからなる電極723及び第2ビアホール734の底部に露出した銅からなるビット線722が配線下地となって、この表面がめっき膜成長の起点となることは前述と同様である。
【0099】
先ず、基板ホルダ616を停止させたまま、攪拌体644を、通常の無電解めっき時と同じ、例えば、10〜100rpm、好ましくは10〜20rpmの低速で回転させて第1の無電解めっきを行う。そして、図2(b)に示すように、深さの浅い第1ビアホール732の内部が第1コンタクト配線(めっき膜)736でほぼ埋まって、第1コンタクト配線736の表面が絶縁膜714の表面とほぼ面一となった時点で、攪拌体644の回転速度を、例えば10〜20rpmから、例えば300rpm以上に上げて、第1ビアホール732内に形成された第1コンタクト配線736の表面にめっき膜が成膜されるのを抑制しつつ、第2ビアホール734内に形成された第2コンタクト配線738の表面にめっき膜を成膜する、第2の無電解めっきを行う。
【0100】
このように、基板をめっき液中に浸漬させ、基板表面の近傍に配置した攪拌体644を回転させてめっき液を攪拌しながら基板表面に無電解めっきを行う場合に、攪拌体644を、例えば10〜100rpm程度の回転速度で回転させながら第1の無電解めっきを行い、攪拌体644を第1の無電めっき時より速い、例えば300rpmの回転速度で回転させながら第2の無電解めっきを行うことで、第1ビアホール732内に形成された第1コンタクト配線736の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させるながら、第2ビアホール734内に形成された第2コンタクト配線738の表面にめっき膜を成膜することができる。
【0101】
そして、図2(c)に示すように、深さの深い第2ビアホール734の内部が第2コンタクト配線(めっき膜)738でほぼ埋まって、第2コンタクト配線738の表面が絶縁膜714の表面とほぼ面一となった時点で、攪拌体644の回転速度を、例えば300rpmから通常の無電解めっき時における、例えば10〜100rpmに落として、第3の無電解めっきを行う。これによって、図2(d)に示すように、第2ビアホール734内に第2コンタクト配線(めっき膜)738を確実に埋込み、更にコンタクト配線736,738の表面に平坦な膜厚の余剰めっき膜740を成膜する。
【0102】
なお、攪拌体644と基板表面との最短距離は0〜3mmであることが好ましい。めっき液中反応種の拡散境界層は一般に数mm以下である。したがって、攪拌体644と基板表面との最短距離を0〜3mmにすることで、第1ビアホール732内に形成されたコンタクト配線736の表面に第2の無電解めっきで成膜されるめっき膜の成長を著しく低下させるか、または停止させることができる。
【0103】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】高アスペクト比のビアホール内にCVDによってコンタクト配線を形成した時の状態を示す断面図である。
【図2】本発明において、ビアホール内にコンタクト配線を形成する時の状態を工程順に示す断面図である。
【図3】本発明の基板処理方法に使用される無電解めっき装置の平面配置図である。
【図4】図3の兼触媒付与ユニットの外槽を省略した基板受渡し時における正面図である。
【図5】触媒付与ユニットの外槽を省略した薬液処理時における正面図である。
【図6】触媒付与ユニットの外槽を省略したリンス時における正面図である。
【図7】触媒付与ユニットの基板受渡し時における処理ヘッドを示す断面図である。
【図8】図3の無電解めっきユニットの基板受渡し時における基板ヘッドを示す断面図である。
【図9】図8のB部拡大図である。
【図10】無電解めっきユニットの基板固定時における基板ヘッドを示す図9相当図である。
【図11】無電解めっきユニットのめっき処理時における基板ヘッドを示す図9相当図である。
【図12】無電解めっきユニットのめっき槽カバーを閉じた時のめっき槽を示す一部切断の正面図である。
【図13】無電解めっきユニットの洗浄槽を示す断面図である。
【図14】無電解めっきユニットの系統図である。
【図15】無電解めっき装置の他の例を示す縦断面図である。
【図16】試料の回転速度を変化させて無電解めっきを行った時の試料の回転速度とめっき膜の膜厚の関係を示すグラフである。
【図17】無電解めっき装置の更に他の例を示す平面図である。
【図18】図17の縦段正面図である。
【図19】基板を固定し、基板表面に沿って流れるめっき液の平均流速を変化させて無電解めっきを行った時のめっき液の平均流速とめっき膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図20】無電解めっき装置の更に他の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0105】
14 前洗浄ユニット
15 触媒付与ユニット
16 無電解めっきユニット
712 半導体基材
714 絶縁膜
722 ビット線
724 絶縁層
726,728 電極
730 コンデンサ
732 第1ビアホール
734 第2ビアホール
736 第1コンタクト配線
738 第2コンタクト配線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、
前記第1ビアホール及び前記第2ビアホールの内部に、基板表面をめっき液に接触させた第1の無電解めっきによって、前記第1ビアホールがほぼ埋まるまでコンタクト配線を形成し、しかる後、
基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を速めて前記第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に成膜されるめっき膜の成長を抑制しながら、第2の無電解めっきを行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、
基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第1相対速度で相対的に移動させて第1の無電解めっきを行い、しかる後、
基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第2相対速度で相対的に移動させて第2の無電解めっきを行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、
基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第1相対速度で相対的に移動させて第1の無電解めっきを行い、しかる後、
基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第2相対速度で相対的に移動させて第2の無電解めっきを行い、さらに、
基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第3相対速度で相対的に移動させて第3の無電解めっきを行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
前記第3相対速度は前記第2相対速度より小さいことを特徴とする請求項3記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1相対速度は前記第2相対速度より小さいか、または同じであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第2の無電解めっきを、めっき液中に浸漬させた基板を150rpm以上の回転速度で回転させて行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第2の無電解めっきを、めっき液が基板表面に沿って2m/s以上の流速で流れるようにして行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第2の無電解めっきを、めっき液中に浸漬させた基板を、周波数100Hz以上、振幅0.1〜1mmで基板表面に沿った方向に往復振動させて行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第2の無電解めっきを、めっき液に浸漬させた基板表面の近傍に設置した攪拌体の移動速度を前記第1の無電解めっき時よりも増大させて行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記攪拌体と基板表面との最短距離は0〜3mmであることを特徴とする請求項9記載の基板処理方法。
【請求項1】
半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、
前記第1ビアホール及び前記第2ビアホールの内部に、基板表面をめっき液に接触させた第1の無電解めっきによって、前記第1ビアホールがほぼ埋まるまでコンタクト配線を形成し、しかる後、
基板表面と該表面に沿って流れるめっき液との相対速度を速めて前記第1ビアホール内に形成されたコンタクト配線の表面に成膜されるめっき膜の成長を抑制しながら、第2の無電解めっきを行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、
基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第1相対速度で相対的に移動させて第1の無電解めっきを行い、しかる後、
基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第2相対速度で相対的に移動させて第2の無電解めっきを行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
半導体基材上に積層した絶縁膜の内部に第1ビアホールと該第1ビアホールより深さの深い第2ビアホールを有する基板を用意し、
基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第1相対速度で相対的に移動させて第1の無電解めっきを行い、しかる後、
基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第2相対速度で相対的に移動させて第2の無電解めっきを行い、さらに、
基板表面と該表面に沿って流れるめっき液とを第3相対速度で相対的に移動させて第3の無電解めっきを行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
前記第3相対速度は前記第2相対速度より小さいことを特徴とする請求項3記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1相対速度は前記第2相対速度より小さいか、または同じであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第2の無電解めっきを、めっき液中に浸漬させた基板を150rpm以上の回転速度で回転させて行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第2の無電解めっきを、めっき液が基板表面に沿って2m/s以上の流速で流れるようにして行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第2の無電解めっきを、めっき液中に浸漬させた基板を、周波数100Hz以上、振幅0.1〜1mmで基板表面に沿った方向に往復振動させて行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第2の無電解めっきを、めっき液に浸漬させた基板表面の近傍に設置した攪拌体の移動速度を前記第1の無電解めっき時よりも増大させて行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記攪拌体と基板表面との最短距離は0〜3mmであることを特徴とする請求項9記載の基板処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−26778(P2009−26778A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185180(P2007−185180)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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