説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】被処理基板に対する処理を均一に行うことができるとともに処理液がウエハに再付着したりウエハの端縁付近の気流が乱されたりすることを抑制することができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】支持部20により支持される被処理基板Wを、略垂直方向に延びる軸を中心として回転させる。支持部20上にある被処理基板Wの上面に向かってガスを下方に噴射するとともにこの被処理基板Wの上方領域からガスを上方に吸引することによって支持部20上にある被処理基板Wを当該支持部20に向かって押圧する。被処理基板Wを回転させ、この被処理基板Wを支持部20に向かって押圧させながら、被処理基板Wの下面に対して下方からエッチング液や洗浄液等の処理液を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理基板を回転させながら当該被処理基板に処理液を供給することにより被処理基板の処理を行うスピン式の基板処理装置および基板処理方法に関し、とりわけ、被処理基板に対する処理を均一に行うことができるとともに処理液がウエハに再付着したりウエハの端縁付近の気流が乱されたりすることを抑制することができる基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスの製造工程においては、被処理基板としての半導体ウエハやL
CD用ガラス基板等(以下、ウエハ等という)に対して薬液処理や洗浄処理等の処理を行うために基板処理装置が用いられている。このような基板処理装置として、1枚のウエハをスピンチャック上に載置し、このスピンチャックを回転させることにより当該スピンチャック上に載置されたウエハを回転させ、ウエハが回転した状態でウエハの下面(裏面)または上下両面にエッチング液や洗浄液等の処理液を供給するようなスピン式のものが知られている。
【0003】
ここで、ウエハを回転させながら当該ウエハに処理液を供給するにあたり、ウエハをスピンチャックに保持させる必要がある。スピンチャックにウエハを保持させる方法としては、ウエハの下面を負圧にてスピンチャックに吸着させる方法や、ウエハの端縁(側面)を複数の保持部材により保持させる方法が知られている。ウエハの下面を負圧にてスピンチャックに吸着させる方法としては、例えば特許文献1等に示すものが知られている。また、ウエハの端縁(側面)を複数の保持部材により保持させる方法としては、例えば特許文献2等に示すものが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−93441号公報
【特許文献2】特開平11−176795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スピンチャックにウエハを保持させる方法として、特許文献1等に示すような、ウエハの下面を負圧にてスピンチャックに吸着させる方法を用いた場合には、ウエハの保持に用いられる部材とウエハとの接触部分の面積が大きくなってしまう。この場合、このような部材とウエハとの接触部分には処理液が供給されないので、この接触部分において薬液処理や洗浄処理等の処理が行われることはなく、ウエハの処理にむらが生じてしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献2等に示すような、ウエハの端縁を複数の保持部材により保持させる方法を用いた場合には、処理液が処理中にウエハの表面を伝ってウエハの径方向外方へ移動し、この処理液がウエハの端縁で保持部材に当たって跳ね返ることにより、処理液がウエハに再付着するおそれがある。また、ウエハの端縁に配置された保持部材の回転によりウエハの端縁付近の気流を乱れさせるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、被処理基板を支持部に保持させる際に、このような被処理基板の保持に用いられる部材と被処理基板との接触部分の面積を小さくすることができ、被処理基板に対する処理を均一に行うことができ、また、処理液が被処理基板に再付着したり被処理基板の端縁付近の気流が乱されたりすることを抑制することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板処理装置は、被処理基板を下方から支持する支持部と、略鉛直方向に延びる軸を中心として前記支持部を回転させる回転駆動部と、前記支持部により支持される被処理基板の上方に距離を隔てて設けられ、ガスを下方に向かって噴射するガス噴射部分と、ガスを上方に吸引するガス吸引部分とを有するガス噴射・吸引部と、前記支持部により支持される被処理基板の下面に対して下方から処理液を供給する処理液供給部と、を備え、前記ガス噴射・吸引部は、前記支持部上にある被処理基板の上面に向かって前記ガス噴射部分によりガスを噴射するとともに前記ガス吸引部分によりガスを上方に吸引することによって前記支持部上にある被処理基板を当該支持部に向かって押圧することを特徴とする。
【0009】
本発明の基板処理装置によれば、支持部により支持される被処理基板を、略垂直方向に延びる軸を中心として回転させ、支持部上にある被処理基板の上面に向かってガスを下方に噴射するとともにこの被処理基板の上方領域からガスを上方に吸引することによって支持部上にある被処理基板を当該支持部に向かって押圧しながら、被処理基板の下面に対して下方からエッチング液や洗浄液等の処理液を供給するようになっている。このように、被処理基板から上方に離間したガス噴射・吸引部を使用することにより被処理基板が支持部に向かって押圧されるようになるので、被処理基板を支持部に保持させる際に、このような被処理基板の保持に用いられる部材と被処理基板との接触部分の面積を小さくすることができ、被処理基板に対する処理を均一に行うことができる。また、被処理基板の端縁を複数の箇所で保持するような保持部材を用いていないので、処理液が被処理基板に再付着したり被処理基板の端縁付近の気流が乱されたりすることを抑制することができる。
【0010】
本発明の基板処理装置においては、前記処理液供給部は、前記支持部の内部に設けられ一の端部が上方に開口する処理液供給路と、前記処理液供給路の他の端部に連通し、この処理液供給路に処理液を供給する処理液供給源とを有する処理液供給機構を有し、この処理液供給機構は前記支持部により支持される被処理基板の下面に処理液を供給するようになっていることが好ましい。
【0011】
本発明の基板処理装置においては、前記支持部は、略水平方向に延びるベース部材と、当該ベース部材の上面に設けられ被処理基板の下面に当接するような支持部材とを有し、前記支持部材は、当該支持部材に当接する被処理基板の下面との間で静摩擦力が働くような材料からなることが好ましい。ここで、前記支持部材は弾性材料からなることがより好ましい。このことにより、各支持部材上に載置される被処理基板は、各支持部材との間に働く静摩擦力によって水平方向にずれにくくなる。
【0012】
本発明の基板処理装置においては、前記ガス噴射・吸引部において、前記ガス噴射部分により下方に噴射されるガス流量は、前記ガス吸引部分により上方に吸引されるガス流量と略同一またはそれよりも大きくなっていることが好ましい。このことにより、より確実に、支持部上にある被処理基板が当該支持部に向かって押圧されることとなる。
【0013】
本発明の基板処理装置においては、前記ガス噴射・吸引部は、上方からみて前記支持部により支持される被処理基板全体を覆うようなベース部材を有することが好ましい。ここで、前記ガス噴射・吸引部において、前記ガス噴射部分および前記ガス吸引部分はそれぞれ複数設けられており、これらの複数のガス噴射部分およびガス吸引部分は、前記ベース部材に対して略均一に配置されていることがより好ましい。
【0014】
ここで、複数のガス噴射部分およびガス吸引部分がベース部材に対して略均一に配置されている場合には、支持部上にある被処理基板は、当該支持部に向かって偏りなく略均一に押圧されることとなり、被処理基板に加えられる下向きの力が不均一なことに起因する被処理基板の位置ずれ等のトラブルを抑止することができる。
【0015】
また、この際に、前記ベース部材の下面における外縁部において、ガス噴射部分がガス吸引部分よりも外側に設けられていることが好ましい。このことにより、外部からベース部材の下方領域に気体が流れ込むことを抑制することができる。
【0016】
本発明の基板処理装置においては、前記支持部により支持される被処理基板の側方に設置され、前記回転駆動部により前記支持部が回転させられたときにこの支持部により支持される被処理基板が略水平方向に移動しないよう被処理基板の動きを規制する規制部材を更に備えたことが好ましい。ここで、前記規制部材は、前記支持部により支持される被処理基板の側面を覆うよう設けられていることがより好ましい。このことにより、被処理基板を回転させる際にこの被処理基板が水平方向にずれることをより一層抑止することができるようになる。
【0017】
本発明の基板処理方法は、支持部により支持される被処理基板を、略鉛直方向に延びる軸を中心として回転させる工程と、前記支持部上にある被処理基板の上面に向かってガスを下方に噴射するとともにこの被処理基板の上方領域からガスを上方に吸引することによって前記支持部上にある被処理基板を当該支持部に向かって押圧する工程と、前記支持部により支持される被処理基板の下面に対して下方から処理液を供給する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明の基板処理方法によれば、被処理基板の上面に向かってガスを下方に噴射するとともにこの被処理基板の上方領域からガスを上方に吸引することにより被処理基板が支持部に向かって押圧されるようになるので、被処理基板を支持部に保持させる際に、このような被処理基板の保持に用いられる部材と被処理基板との接触部分の面積を小さくすることができ、被処理基板に対する処理を均一に行うことができる。また、被処理基板の端縁を複数の箇所で保持するような保持部材を用いていないので、処理液が被処理基板に再付着したり被処理基板の端縁付近の気流が乱されたりすることを抑制することができる。
【0019】
本発明の基板処理方法においては、前記支持部により支持される被処理基板に処理液を供給する際に、前記支持部に設けられた処理液供給路から処理液が被処理基板の下面に供給されることが好ましい。
【0020】
本発明の基板処理方法においては、前記支持部上にある被処理基板の上面に向かって下方に噴射されるガス流量は、被処理基板の上方領域から上方に吸引されるガス流量と略同一またはそれよりも大きくなっていることが好ましい。このことにより、より確実に、支持部上にある被処理基板が当該支持部に向かって押圧されることとなる。
【0021】
本発明の基板処理方法においては、前記支持部上にある被処理基板の上面に向かってガスを下方に噴射するとともにこの被処理基板の上方領域からガスを上方に吸引する際に、被処理基板の上面に向かって複数の箇所からガスを略均一に下方に噴射するとともに、被処理基板の上方領域における複数の箇所からガスを略均一に上方に吸引することが好ましい。このことにより、支持部上にある被処理基板は、当該支持部に向かって偏りなく略均一に押圧されることとなり、被処理基板に加えられる下向きの力が不均一なことに起因する被処理基板の位置ずれ等のトラブルを抑止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の基板処理装置および基板処理方法によれば、被処理基板を支持部に保持させる際に、このような被処理基板の保持に用いられる部材と被処理基板との接触部分の面積を小さくすることができ、被処理基板に対する処理を均一に行うことができ、また、処理液が被処理基板に再付着したり被処理基板の端縁付近の気流が乱されたりすることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図3は、本実施の形態による基板処理装置の構成を示す図である。なお、図1は、本実施の形態における基板処理装置の構成を概略的に示す概略構成図であり、図2は、図1に示す基板処理装置におけるスピンチャックおよびガス噴射・吸引機構の構成の詳細を示す拡大構成図である。また、図3は、図1に示す基板処理装置におけるガス噴射・吸引機構を下方から見たときのガス噴射口およびガス吸引口の位置を示す説明図である。
【0024】
図1に示すように、基板処理装置1は、ベース10と、ベース10上に設けられたチャンバー12と、チャンバー12内に回転自在に設けられ、半導体ウエハW(以下、ウエハWという)を下方から支持するスピンチャック20と、略鉛直方向に延びる軸を中心としてスピンチャック20を回転させるスピンチャック駆動モータ22とを備えている。また、スピンチャック20上に載置されるウエハWの上方には、ガス噴射・吸引機構30がわずかに距離を隔てて設けられている。このガス噴射・吸引機構30は、ガスを下方に向かって噴射するとともにガスを上方に吸引するようになっている。さらに、スピンチャック20により支持されるウエハWにエッチング液や洗浄液等の処理液を供給する処理液供給部が設けられている。
【0025】
以下、このような基板処理装置1の各構成要素について詳述する。
【0026】
図1に示すように、ベース10上には略円筒形状のチャンバー12が設けられている。このチャンバー12は、支持部材12sによりベース10上に設置されている。チャンバー12の側壁には、ウエハWの搬送アーム(図示せず)を通過させるための開口部12aが設けられており、この開口部12aはチャンバー12の側壁に取り付けられたシャッター14により開閉させられるようになっている。すなわち、開口部12aは通常シャッター14により閉じられているが、搬送アームによりチャンバー12内にウエハWを搬入してスピンチャック20上に載置したり、あるいは搬送アームによりスピンチャック20上にあるウエハWをチャンバー12から搬出したりする場合には、シャッター14が開口部12aから退避して開口部12aが開かれた状態となる。また、図1に示すように、チャンバー12の側壁には、開口部12aとは異なる他の開口部12bが形成されている。この開口部12bは、後述するガス噴射・吸引機構30の支持アーム34が通過するよう設けられている。
【0027】
また、図1に示すように、チャンバー12の底面には排液管12cが接続されており、後述する処理液供給部からチャンバー12内のウエハWに供給されたエッチング液や洗浄液等の処理液がこの排液管12cから排除されるようになっている。
【0028】
スピンチャック20は、ベース10から上方に延びるよう設置されている。このスピンチャック20は、ウエハWを下方から、すなわちウエハWを裏面から支持するようになっている。また、スピンチャック20の回転体20b(後述)を回転させるスピンチャック駆動モータ22が設けられている。
より具体的には、スピンチャック20は、略水平方向に延び、ウエハWが載置される略円板形状の支持プレート(ベース部材)20aと、支持プレート20aの下方に連結される略円筒形状の回転体20bと、回転体20bの内部に設けられ鉛直方向(図1の上下方向)に昇降を行う略円柱形状の昇降部材20eとから構成されている。この回転体20bは、循環ベルト21を介してスピンチャック駆動モータ22に接続されている。ここで、スピンチャック駆動モータ22を駆動させると、回転駆動力が循環ベルト21を介してスピンチャック20の回転体20bに伝達され、支持プレート20aおよび回転体20bが一体的に、略鉛直方向に延びる軸を中心として回転するようになっている。なお、この際に昇降部材20eは回転しない。
【0029】
図2に示すように、スピンチャック20の支持プレート20aの上面には、略円柱形状、略円錐形状あるいは多角錐形状等のゴム等の弾性部材からなる支持部材20cが設けられている。この支持部材20cは、支持プレート20aの上面に複数、具体的には例えば3つあるいは4つ設けられており、図2に示すように、ウエハWはこれらの複数の支持部材20c上に載置されるようになっている。ここで、ウエハWが各支持部材20c上に載置されたときに、この支持部材20cは弾性変形し、当該支持部材20cに当接するウエハWの下面との間で静摩擦力が働くようになっている。このような支持部材20cが支持プレート20aの上面に複数設けられていることにより、各支持部材20c上に載置されるウエハWは、各支持部材20cとの間に働く静摩擦力によって水平方向にずれにくくなる。
【0030】
また、図1および図2に示すように、支持プレート20aの上面には、当該支持プレート20a上に載置されるウエハWの略水平方向における動きを規制する規制部材20dが設けられている。この規制部材20dは、支持プレート20a上に載置されるウエハWの側面の全周を覆うよう設けられた略円環形状の材料からなり、スピンチャック20が回転させられたときに支持プレート20a上に載置されるウエハWが略水平方向に移動しないよう、ウエハWの動きを規制するようになっている。
【0031】
また、昇降部材20eは前述のように鉛直方向に昇降するようになっている。この昇降部材20eの上面には、ウエハWの受け渡しを行うリフトピン20fが設けられている。
【0032】
スピンチャック20よりも上方には距離を隔ててガス噴射・吸引機構30が設けられている。図1乃至図3に示すように、このガス噴射・吸引機構30は、略水平方向に延びる略円板形状のベース部材32と、ベース部材32を上方から支持する支持アーム34と、支持アーム34の基端に設けられた昇降部材36と、ベース10上に設けられ、昇降部材36が嵌設された支柱部材38とを有している。
【0033】
ベース部材32は、スピンチャック20により支持されるウエハWの上方にわずかに距離を隔てて設けられている。また、図1に示すように、ベース部材32には、ガス供給管41を介してガス供給源40が接続されているとともに、ガス吸引管46を介してガス吸引器45が接続されている。ガス供給源40は、ガス供給管41を介してN2ガス等のガスをベース部材32の内部に供給するようになっており、また、ガス吸引器45は、ベース部材32の内部からガス吸引管46を介してガスを吸引するようになっている。また、ガス供給管41およびガス吸引管46にはそれぞれバルブ42、47が介設されており、各バルブ42、47は、ガス供給源40からベース部材32の内部へのガスの供給量、およびベース部材32の内部からガス吸引器45へのガスの吸引量をそれぞれ調整するようになっている。
【0034】
図2および図3に示すように、ベース部材32の下面には、ガスを下方に向かって噴射するガス噴射口32aと、ガスを上方に吸引するガス吸引口32bとが設けられている。このようなガス噴射口32aおよびガス吸引口32bは複数設けられており、図3に示すように、これらの複数のガス噴射口32aおよびガス吸引口32bは、ベース部材32に対して偏りなく略均一に配置されている。なお、図3において、参考のため、ウエハWおよび各支持部材20cの位置を二点鎖線で示している。
【0035】
より具体的に説明すると、各ガス噴射口32aは、ガス供給源40からベース部材32に供給されたN2ガス等のガスをベース部材32の下面から下方に向かって噴射するようになっている。また、各ガス吸引口32bは、ガス吸引器45が駆動されることにより、ベース部材32の下方領域からガスを上方に吸引するようになっている。図1のベース部材32の下方にある矢印は、各ガス噴射口32aから下方に噴射されるガスの流れ、および各ガス吸引口32bにより上方に吸引されるガスの流れを示しており、図2のベース部材32の下方にある矢印は、各ガス噴射口32aから下方に噴射されたガスが各ガス吸引口32bにより上方に吸引される様子を示している。
【0036】
図2に示すように、ベース部材32の下面における最も外側の箇所には、ガス吸引口32bではなくガス噴射口32aが設けられている。このことにより、外部からベース部材32の下方領域に気体が流れ込むことを抑制することができる。
【0037】
ここで、ベース部材32において、各ガス噴射口32aにより下方に噴射されるガスの総流量は、各ガス吸引口32bにより上方に吸引されるガスの総流量と略同一、またはそれよりも大きくなっている。そして、ベース部材32が図1に示すような位置にあるような状態で、スピンチャック20の支持プレート20a上にあるウエハWの上面に向かってガス噴射口32aによりガスを噴射するとともにガス吸引口32bによりガスを上方に吸引することによって、支持プレート20a上にあるウエハWが当該支持プレート20aに向かって押圧されることとなる。
【0038】
支持アーム34は、図1に示すようにその先端でベース部材32を上方から支持するようになっており、その基端には昇降部材36が設けられている。支持アーム34は開口部12bを介してチャンバー12を貫通しており、この支持アーム34の先端はチャンバー12内にあり、基端はチャンバー12の外部に位置するようになっている。このような支持アーム34がベース部材32を上方から支持することにより、ベース部材32を、スピンチャック20上に載置されるウエハWの上方にわずかに距離を隔てて配置することができる。
【0039】
支持アーム34の基端に設けられた昇降部材36は、ベース10の上面から鉛直方向上方に延びる支柱部材38に沿って図1の矢印方向に昇降することができるようになっている。このことにより、当該昇降部材36に取り付けられた支持アーム34およびこの支持アーム34により支持されるベース部材32も昇降させることができるようになっている。すなわち、ウエハWがスピンチャック20上に載置されているときには、昇降部材36は支柱部材38における比較的低い箇所に位置するが、前述の搬送アームによりスピンチャック20上にウエハWを載置したり、あるいは搬送アームによりスピンチャック20上からウエハWを取り除いたりする場合には、昇降部材36は上方に移動させられてベース部材32はスピンチャック20の支持プレート20aから大きく離間することとなる。
【0040】
次に、スピンチャック20により支持されるウエハWにエッチング液や洗浄液等の処理液を供給する処理液供給部について以下に説明する。ここで、処理液供給部からウエハWに供給される洗浄液としては、フッ化水素酸等の洗浄用薬液や純水が挙げられる。
【0041】
図1に示すように、昇降部材20eの内部には、略鉛直方向に延びる処理液供給管50が設けられている。この処理液供給管50の上端部は、スピンチャック20の支持プレート20a上に載置されるウエハWの下方領域において上方に向けて開口している。一方、処理液供給管50の他の端部は、並列に設けられた薬液供給源52および純水供給源54にそれぞれ接続されており、これらの薬液供給源52や純水供給源54から処理液供給管50に薬液や純水が供給されるようになっている。薬液供給源52や純水供給源54と処理液供給管50との間にはバルブ53、55がそれぞれ設けられており、各バルブ53、55は、薬液供給源52や純水供給源54から処理液供給管50への薬液や純水の供給量を調整するようになっている。
【0042】
ここで、薬液供給源52や純水供給源54から薬液や純水が処理液供給管50に供給されると、この薬液や純水は、スピンチャック20により支持されるウエハWの下面に供給されるようになっている。
【0043】
次に、このような構成からなる基板処理装置1の動作について説明する。
【0044】
まず、シャッター14がチャンバー12の開口部12aから退避するよう移動させられることにより、チャンバー12の開口部12aが開かれ、搬送アーム(図示せず)によりウエハWがチャンバー12の外部から開口部12aを介してチャンバー12内に搬入される。この際に、昇降部材20eは鉛直方向上方に移動させられており、ウエハWは搬送アームから昇降部材20eに設けられたリフトピン20f上に受け渡される。その後、昇降部材20eが降下し、リフトピン20f上にあるウエハWはスピンチャック20の支持プレート20a上の支持部材20cに受け渡される。この際に、ガス噴射・吸引機構30の昇降部材36は予め支柱部材38における比較的上方の位置に移動させられており、ガス噴射・吸引機構30のベース部材32はスピンチャック20から上方に大きく離間させられている。
【0045】
ウエハWがスピンチャック20の支持プレート20a上に載置された後、昇降部材36が下方に移動させられ、ベース部材32は、支持プレート20a上にあるウエハWの上方にわずかに距離を隔てた箇所に位置するようになる。そして、ベース部材32が、支持プレート20a上にあるウエハWの上方にわずかに距離を隔てた位置にあるときに、ガス供給源40からベース部材32にガスを供給することによりベース部材32の各ガス噴射口32aからウエハWの上面に向かってガスを下方に噴射するとともに、ガス吸引器45を駆動することによりウエハWの上方領域から各ガス吸引口32bを介してガスを上方に吸引する。この際に、各ガス噴射口32aからウエハWに向かって下方に噴射されるガスの総流量は、各ガス吸引口32bから上方に吸引されるガスの総流量と略同一またはそれよりも大きくなっている。
【0046】
各ガス噴射口32aからウエハWの上面に向かってガスを下方に噴射するとともに、ウエハWの上方領域から各ガス吸引口32bを介してガスを上方に吸引しているので、各ガス噴射口32aからウエハWの上面に向かって下方に噴射されるガスは、そのまま各ガス吸引口32bから上方に吸引される場合が多くなる。このため、この下方に噴射されるガスはウエハWの上方領域における側方外部へ逃げにくくなり、ウエハWに対して下方への力が作用することとなる。このため、支持プレート20a上にあるウエハWが当該支持プレート20aに向かって押圧される。
【0047】
また、ウエハWは、実際には支持プレート20aの上面に設けられた例えばゴム等の弾性部材からなる複数の支持部材20c上に載置されているが、ウエハWが支持プレート20aに向かって押圧されることにより、この支持部材20cは弾性変形する。
【0048】
次に、スピンチャック駆動モータ22により循環ベルト21を介してスピンチャック20の回転体20bが図1の矢印に示すように回転させられ、スピンチャック20により支持されるウエハWも一体的に回転させられる。このときに、ウエハWは支持プレート20aに向かって押圧されているので、ウエハWが回転させられることによりこのウエハWの水平方向における位置がずれるといった事態が生じにくくなる。
【0049】
そして、処理液供給部からウエハWの下面(ウエハWの裏面)に処理液が供給される。具体的には、ウエハWに対してエッチング処理を行う場合には、バルブ53を開状態とすることにより薬液供給源52から処理液供給管50にエッチング液が供給され、この処理液供給管50の上端部からウエハWの下面にエッチング液が供給される。このことにより、ウエハWに対するエッチング処理が行われる。
【0050】
一方、ウエハWに対して洗浄処理を行う場合には、まずバルブ53を開状態とすることにより薬液供給源52から処理液供給管50に洗浄用薬液が供給され、この処理液供給管50の上端部からウエハWの下面に洗浄用薬液が供給される(薬液処理)。次に、ウエハWへの洗浄用薬液の供給を停止し、バルブ55を開状態とすることにより純水供給源54から処理液供給管50に純水が供給され、この処理液供給管50の上端部からウエハWの下面に純水が供給される(リンス処理)。その後、ウエハWを高速回転させることによりウエハWの乾燥を行う(乾燥処理)。このようにして、ウエハWに対する洗浄処理が行われる。
【0051】
処理液供給管50からウエハWの下面に供給される処理液は、図2に示すように規制部材20dの下部を通ってスピンチャック20の外方に排出され、チャンバー12の底面に設けられた排液管12cを介してチャンバー12から排除される。このチャンバー12から排除された処理液は、再利用されたりあるいは廃棄されたりする。
【0052】
ウエハWに対するエッチング処理や洗浄処理等の処理が終了したら、ガス噴射・吸引機構30によるウエハWの上面に対するガスの噴射およびガスの吸引を停止させる。その後、昇降部材36は上方へ移動させられ、ベース部材32はスピンチャック20の支持プレート20aから上方に大きく離間させられる。その後、昇降部材20eが鉛直方向上方に移動させられることにより、スピンチャック20a上にあるウエハWは昇降部材20eに設けられたリフトピン20fに受け渡される。そして、シャッター14がチャンバー12の開口部12aから退避して搬送アームがこの開口部12aからチャンバー12内に挿入させられ、この搬送アームによりリフトピン20f上にあるウエハWがチャンバー12の外部に搬出される。このようにして、ウエハWに対する一連の処理が終了する。
【0053】
以上のように本実施の形態の基板処理装置1および基板処理方法によれば、スピンチャック20により支持されるウエハWを、略垂直方向に延びる軸を中心として回転させ、スピンチャック20の支持プレート20a上にあるウエハWの上面に向かってN2ガス等のガスを下方に噴射するとともにこのウエハWの上方領域からガスを上方に吸引することによってスピンチャック20の支持プレート20a上にあるウエハWを当該支持プレート20aに向かって押圧しながら、ウエハWの下面に対して下方からエッチング液や洗浄液等の処理液を供給するようになっている。このように、ウエハWから上方に離間したガス噴射・吸引機構30を使用することによりウエハWが支持プレート20aに向かって押圧されるようになるので、ウエハWをスピンチャック20に保持させる際に、このようなウエハWの保持に用いられる部材、すなわちスピンチャック20の支持部材20cとウエハWとの接触部分の面積を小さくすることができ、被処理基板に対する処理を均一に行うことができるようになる。また、ウエハWの端縁を複数の箇所で保持するような保持部材を用いていないので、処理液がウエハWに再付着したりウエハWの端縁付近の気流が乱されたりすることを抑制することができる。
【0054】
また、スピンチャック20には、ウエハWの下面に当接するような支持部材20cが支持プレート20aの上面に複数設けられており、この支持部材20cは、当該支持部材20cに当接するウエハWの下面との間で静摩擦力が働くような材料、具体的には例えばゴム等の弾性材料から構成されている。このため、各支持部材20c上に載置されるウエハWは、各支持部材20cとの間に働く静摩擦力によって水平方向にずれにくくなる。
【0055】
また、ガス噴射・吸引機構30において、各ガス噴射口32aにより下方に噴射されるガスの総流量は、ガス吸引口32bにより上方に吸引されるガスの総流量と略同一またはそれよりも大きくなっているので、より確実に、スピンチャック20の支持プレート20a上にあるウエハWが当該支持プレート20aに向かって押圧されることとなる。
【0056】
また、ガス噴射・吸引機構30において、ガス噴射口32aおよびガス吸引口32bはそれぞれ複数設けられており、これらの複数のガス噴射口32aおよびガス吸引口32bは、図3に示すようにベース部材32に対して略均一に配置されているので、スピンチャック20の支持プレート20a上にあるウエハWは、当該支持プレート20aに向かって偏りなく略均一に押圧されることとなり、ウエハWに加えられる下向きの力が不均一なことに起因するウエハWの位置ずれ等のトラブルを抑止することができる。
【0057】
また、スピンチャック20により支持されるウエハWの側方に、このウエハWの動きを規制する略円環形状の規制部材20dが設けられているので、ウエハWを回転させる際にこのウエハWが水平方向にずれることをより一層抑止することができるようになる。
【0058】
なお、本発明による基板処理装置および基板処理方法は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【0059】
例えば、スピンチャック20の支持部材20cの材料として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)、カルレッツ(登録商標)(パーフロロエラストマー)等からなる樹脂を用いてもよい。
【0060】
また、他の変形例としては、ガス噴射・吸引機構30のベース部材32は、スピンチャック20により支持されるウエハWの全面を覆うような略円板形状のものに限定されることはなく、スピンチャック20により支持されるウエハWの一部を覆うようなものであってもよい。具体的には、ベース部材32は、中心部分が開口部となっているような略円環形状のものであってもよい。この場合でも、スピンチャック20の支持部材20c上にベース部材32が位置するようになることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一の実施の形態における基板処理装置の構成を概略的に示す概略構成図である。
【図2】図1に示す基板処理装置におけるスピンチャックおよびガス噴射・吸引機構の構成の詳細を示す拡大構成図である。
【図3】図1に示す基板処理装置におけるガス噴射・吸引機構を下方から見たときのガス噴射口およびガス吸引口の位置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 基板処理装置
10 ベース
12 チャンバー
12a 開口部
12b 開口部
12c 排液管
12s 支持部材
14 シャッター
20 スピンチャック
20a 支持プレート
20b 回転体
20c 支持部材
20d 規制部材
20e 昇降部材
20f リフトピン
21 循環ベルト
22 スピンチャック駆動モータ
30 ガス噴射・吸引機構
32 ベース部材
32a ガス噴射口
32b ガス吸引口
34 支持アーム
36 昇降部材
38 支柱部材
40 ガス供給源
41 ガス供給管
42 バルブ
45 ガス吸引器
46 ガス吸引管
47 バルブ
50 処理液供給管
52 薬液供給源
53 バルブ
54 純水供給源
55 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を下方から支持する支持部と、
略鉛直方向に延びる軸を中心として前記支持部を回転させる回転駆動部と、
前記支持部により支持される被処理基板の上方に距離を隔てて設けられ、ガスを下方に向かって噴射するガス噴射部分と、ガスを上方に吸引するガス吸引部分とを有するガス噴射・吸引部と、
前記支持部により支持される被処理基板の下面に対して下方から処理液を供給する処理液供給部と、
を備え、
前記ガス噴射・吸引部は、前記支持部上にある被処理基板の上面に向かって前記ガス噴射部分によりガスを噴射するとともに前記ガス吸引部分によりガスを上方に吸引することによって前記支持部上にある被処理基板を当該支持部に向かって押圧することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記処理液供給部は、前記支持部の内部に設けられ一の端部が上方に開口する処理液供給路と、前記処理液供給路の他の端部に連通し、この処理液供給路に処理液を供給する処理液供給源とを有する処理液供給機構を有し、
この処理液供給機構は前記支持部により支持される被処理基板の下面に処理液を供給するようになっていることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記支持部は、略水平方向に延びるベース部材と、当該ベース部材の上面に設けられ被処理基板の下面に当接する支持部材とを有し、前記支持部材は、当該支持部材に当接する被処理基板の下面との間で静摩擦力が働く材料からなることを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記支持部材は弾性材料からなることを特徴とする請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記ガス噴射・吸引部において、前記ガス噴射部分により下方に噴射されるガス流量は、前記ガス吸引部分により上方に吸引されるガス流量と略同一またはそれよりも大きくなっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ガス噴射・吸引部は、上方からみて前記支持部により支持される被処理基板全体を覆うベース部材を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記ガス噴射・吸引部において、前記ガス噴射部分および前記ガス吸引部分はそれぞれ複数設けられており、これらの複数のガス噴射部分およびガス吸引部分は、前記ベース部材に対して略均一に配置されていることを特徴とする請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記ベース部材の下面における外縁部において、ガス噴射部分がガス吸引部分よりも外側に設けられていることを特徴とする請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記支持部により支持される被処理基板の側方に設置され、前記回転駆動部により前記支持部が回転させられたときにこの支持部により支持される被処理基板が略水平方向に移動しないよう被処理基板の動きを規制する規制部材を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記規制部材は、前記支持部により支持される被処理基板の側面を覆うよう設けられていることを特徴とする請求項9記載の基板処理装置。
【請求項11】
支持部により支持される被処理基板を、略鉛直方向に延びる軸を中心として回転させる工程と、
前記支持部上にある被処理基板の上面に向かってガスを下方に噴射するとともにこの被処理基板の上方領域からガスを上方に吸引することによって前記支持部上にある被処理基板を当該支持部に向かって押圧する工程と、
前記支持部により支持される被処理基板の下面に対して下方から処理液を供給する工程と、
を備えたことを特徴とする基板処理方法。
【請求項12】
前記支持部により支持される被処理基板に処理液を供給する際に、前記支持部に設けられた処理液供給路から処理液が被処理基板の下面に供給されることを特徴とする請求項11記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記支持部上にある被処理基板の上面に向かって下方に噴射されるガス流量は、被処理基板の上方領域から上方に吸引されるガス流量と略同一またはそれよりも大きくなっていることを特徴とする請求項11または12記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記支持部上にある被処理基板の上面に向かってガスを下方に噴射するとともにこの被処理基板の上方領域からガスを上方に吸引する際に、被処理基板の上面に向かって複数の箇所からガスを略均一に下方に噴射するとともに、被処理基板の上方領域における複数の箇所からガスを略均一に上方に吸引することを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−147148(P2009−147148A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323482(P2007−323482)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】