説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】本発明の実施形態は、被処理物の処理面における発火を検出することができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、被処理物の処理面に有機溶媒を供給し、前記供給された有機溶媒を蒸散させる基板処理装置であって、前記処理面に有機溶媒を供給する有機溶媒供給部と、前記処理面における発火を検出する検出部と、を備えたこと、を特徴とする基板処理装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置やフラットパネルディスプレイなどの電子デバイスの製造においては、被処理物(例えば、ウェーハやガラス基板など)を薬液処理した後、純水などで洗浄を行うようにしている。そして、洗浄の後にはIPA(イソプロピルアルコール)などの有機溶媒を用いた乾燥処理が行われている。
ここで、IPAなどの有機溶媒は引火性であるため、万一、有機溶媒が発火した場合に備えて消火機構が設けられた基板処理装置が提案されている。
【0003】
この様な消火機構においては、有機溶媒槽などに設けられた検出部により基板処理装置自体の火災を検出し、二酸化炭素ガスなどを用いた消火を行うようにしている(例えば、特許文献1を参照)。
ところが、静電気などで発生した火花により被処理物の処理面に残留していた有機溶媒が発火したような場合には、有機溶媒の量が少ないため燃焼時間、温度上昇などが僅かなものとなる。そのため、この様な僅かな発火が広がり火災とならない限りは消火機構に設けられた検出部では発火の発生を検出することができない。
【0004】
そのため、被処理物の処理面において僅かな発火が生じてもこれを検出できないため、煤などが生じて当該被処理物、当該基板処理装置、後工程の処理装置や製造プロセスにおける要素などを汚染してしまうおそれがある。また、当該被処理物は不良品となる可能性が高く、これを後工程で処理しても無駄となるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−244166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、被処理物の処理面における発火を検出することができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、被処理物の処理面に有機溶媒を供給し、前記供給された有機溶媒を蒸散させる基板処理装置であって、前記処理面に有機溶媒を供給する有機溶媒供給部と、前記処理面における発火を検出する検出部と、を備えたこと、を特徴とする基板処理装置が提供される。
【0008】
また、他の実施形態によれば、被処理物の処理面に有機溶媒を供給し、前記供給された有機溶媒を蒸散させる基板処理方法であって、前記処理面に有機溶媒を供給する工程と、前記処理面に供給された有機溶媒を蒸散させる工程と、を備え、前記有機溶媒を供給する工程および前記有機溶媒を蒸散させる工程の少なくともいずれかにおいて、前記処理面における発火を検出することを特徴とする基板処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、被処理物の処理面における発火を検出することができる基板処理装置および基板処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態に係る基板処理装置を例示するための模式図である。
【図2】発火位置から検出部の中心軸に対する離隔角度を例示するための模式図である。
【図3】発火位置の違いに基づく受光特性を例示するための模式グラフ図である。
【図4】IPAの発火時の発光特性を例示するための模式グラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態に係る基板処理装置を例示するための模式図である。
図1に示すように、基板処理装置1には、処理容器2、載置部3、処理部4、遮蔽部5、検出部6、制御部7が設けられている。
処理容器2は、耐薬品性の高い有機材料などから形成されるようにすることができる。処理容器2は、例えば、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)などから形成されるようにすることができる。また、処理容器2は、処理に用いられる有機溶媒の蒸気などが外部に漏れないように気密構造とすることができる。
【0012】
処理容器2の側壁には、被処理物W(例えば、ウェーハやガラス基板など)の搬入搬出を行うための開口部2aが設けられ、開口部2aを気密に開閉可能な開閉扉2bが設けられている。開閉扉2bは、開閉機構2cにより開閉動作するようになっている。また、開口部2aを閉鎖する場合には、開閉扉2bに設けられたシール部2dを処理容器2の側壁面に押し付けることで開口部2aを気密に閉鎖できるようになっている。
【0013】
また、処理容器2の底部には、処理容器2内の排気および使用済みの処理液などを排出させるための排出口2eが設けられている。排出口2eには、排出された排気および使用済みの処理液などを処理する図示しない処理装置などを接続することができる。
【0014】
処理容器2の内部には、載置部3が設けられている。
被処理物Wを保持して回転させる載置部3には、載置台22、駆動部23が設けられている。
載置台22は円板状を呈し、一方の主面が被処理物Wを載置する載置面22aとなっている。また、載置部3にはバキュームチャックなどの図示しない保持部が設けられており、載置された被処理物Wを保持することができるようになっている。なお、載置面22aの周縁に被処理物Wの周端を支持する図示しない支持部を設けて、被処理物Wの周端を支持することで載置面22aに載置された被処理物Wが保持されるようにしてもよい。
【0015】
載置台22の他方の主面の中心には回転軸22bが設けられている。回転軸22bは駆動部23と接続され、載置面22aに保持された被処理物Wを回転軸22b周りに回転させることができるようになっている。また、回転軸22bが処理容器2の底部を挿通する部分にはシール部26が設けられており、使用済みの処理液などが処理容器2外に漏れ出ないようになっている。
駆動部23は、例えば、サーボモータなどの制御モータなどから構成され、載置台22を回転軸22b周りに回転させるとともに、回転数や、停止位置などの制御ができるようになっている。
【0016】
処理部4には、処理液供給部4a、洗浄液供給部4b、有機溶媒供給部4cが設けられている。
なお、一例として、処理液供給部4a、洗浄液供給部4b、有機溶媒供給部4cが設けられる場合を例示するが、少なくとも有機溶媒供給部4cが設けられるものとすることもできる。
【0017】
処理液供給部4aは、載置部3に載置された被処理物Wの処理面Waに処理液を供給する。処理液としては、例えば、アンモニア過水(アンモニアと過酸化水素を含む水溶液)、塩酸過水(塩酸と過酸化水素を含む水溶液)、フッ化水素酸(フッ化水素の水溶液)、バッファードフッ酸(フッ化水素とフッ化アンモニウムを含む水溶液)などを例示することができる。ただし、これらに限定されるものではなく被処理物Wの処理面Waの材質や処理目的などに応じて適宜変更することができる。なお、処理液供給部4aには、図示しないタンク、送液配管、送液ポンプ、流量制御弁などを適宜設けることができるが、これらの要素には既知の技術を適用させることができるので詳細な説明は省略する。
【0018】
洗浄液供給部4bは、載置部3に載置された被処理物Wの処理面Waに洗浄液を供給する。洗浄液としては、例えば、純水、脱イオン化された純水などを例示することができる。ただし、これらに限定されるわけではなく被処理物Wの処理面Waに供給された処理液を洗い流すことができるものを適宜選択することができる。なお、洗浄液供給部4bには、図示しないタンク、送液配管、送液ポンプ、流量制御弁などを適宜設けることができるが、これらの要素には既知の技術を適用させることができるので詳細な説明は省略する。
【0019】
有機溶媒供給部4cは、載置部3に載置された被処理物Wの処理面Waに有機溶媒を供給する。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、IPA、これらの混合液などを例示することができる。ただし、これらに限定されるわけではなく、被処理物Wの処理面Waに供給された洗浄液と置換させたり、洗浄液と混合させて蒸散させたりすることができるものを適宜選択することができる。
この場合、処理面Waに供給される有機溶媒は、有機溶媒の溶液、有機溶媒の蒸気、有機溶媒の溶液を不活性ガスを用いて霧状にしたものなどとすることができる。
なお、有機溶媒供給部4cには、図示しないタンク、送液配管、送液ポンプ、流量制御弁などを適宜設けることができるが、これらの要素には既知の技術を適用させることができるので詳細な説明は省略する。
【0020】
また、処理液供給部4a、洗浄液供給部4b、有機溶媒供給部4cを構成する要素の少なくとも使用される液体と接触する部分は、使用される液体に対する耐性の高い材料から形成されるものとすることができる。例えば、処理液供給部4aにおいて使用される液体(処理液)がフッ化水素酸である場合には、フッ化水素酸と接触する部分が、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂やポリエチレンなどから形成されるものとすることができる。
また、処理液供給部4a、洗浄液供給部4b、有機溶媒供給部4cには、被処理物Wに対する液体の供給位置を変化させるための図示しない移動部を適宜設けるようにすることもできる。なお、被処理物Wに対する液体の供給位置は図1に例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0021】
遮蔽部5には、カップ体24、駆動部25が設けられている。
カップ体24は、載置台22の外周方向を覆うように設けられている。
カップ体24には、基部24a、カバー24b、昇降軸24cが設けられている。
基部24aは、円筒状を呈し、上面および下面が開口されている。
カバー24bは、基部24aの上端に設けられている。カバー24bは傾斜面となっており、その上端が基部24aの中心に近づく方向に傾斜している。この様な形態を有するカバー24bとすることで、被処理物Wの処理面Waに供給された液体がカバー24bの上面から飛散することを抑制することができる。また、カバー24bの上面は開口されており、カバー24bの開口が被処理物Wよりも大きくなっている。
基部24aの下端には昇降軸24cの一端が接続され、昇降軸24cの他端は駆動部25に接続されている。また、昇降軸24cが処理容器2の底部を挿通する部分にはシール部27が設けられており、使用済みの処理液などが処理容器2の外部に漏れ出ないようになっている
駆動部25は、例えば、サーボモータなどの制御モータや空圧シリンダーなどから構成され、昇降軸24cを介して基部24a、カバー24bを昇降させることができるようになっている。この場合、被処理物Wの処理面Waに供給された液体がカバー24bの上面から飛散するのを抑制することができる位置を上昇端とし、載置台22への被処理物Wの載置が容易となる位置を下降端とすることができる。なお、上昇端、下降端の位置は、図示しない検出器によりカップ体24の昇降位置を検出することで制御することができる。
【0022】
検出部6は、被処理物Wの処理面Waにおける発火を検出する。
有機溶媒供給部4cにより被処理物Wの処理面Waに供給された有機溶媒は引火性を有するため静電気などで発生した火花により発火する場合がある。この場合、有機溶媒供給部4cにより被処理物Wの処理面Waに供給された有機溶媒の量が少ないため燃焼時間、温度上昇などは僅かなものとなる。また、いわゆるスピン乾燥工程においては、被処理物Wが回転されることで処理面Waに供給された有機溶媒が被処理物Wの径外方向に排出されるので、有機溶媒の量はさらに少なくなり燃焼時間、温度上昇などはさらに僅かなものとなる。
【0023】
本発明者の行った実験によれば、被処理物Wの処理面Waに残留する有機溶媒の量は、被処理物Wの回転数にもよるが実用的な回転数では概ね0.5cc程度であった。この場合、有機溶媒をIPAとすれば燃焼エンタルピは1モルあたり2005.8キロジュールであり、6.58×10−3モルである0.5ccのIPAがすべて燃焼するとすればその燃焼エネルギーは13.2キロジュール、おおよそ3.2キロカロリーとなる。そして、この場合の燃焼時間は5秒程度であった。
【0024】
ここで、被処理物Wの処理面Waにおいて僅かな発火が生じると煤などが生じて被処理物Wや処理容器2の内部に設けられた要素などが汚染されるおそれがある。また、煤などで汚染された被処理物Wが後工程で処理された際に後工程の処理装置や製造プロセスにおける要素などを汚染してしまうおそれがある。また、僅かな発火が生じた被処理物Wは不良品となる可能性が高く、これを後工程で処理しても無駄となるおそれもある。
そのため、本実施の形態に係る基板処理装置1においては、被処理物Wの処理面Waにおける発火を検出する検出部6を設けるようにしている。
【0025】
検出部6は、載置台22に載置された被処理物Wの処理面Waを臨むことができる位置に設けられている。
検出部6は、被処理物Wの処理面Waにおいて発火が生じた際の光を検出するものとすることができる。この場合、処理面Waのどこで発火が生じるかを予測することは困難である。そのため、処理面Waのどこで発火が生じても検出が可能となるように、処理面Waの全域が検出領域となるような位置に検出部6を設けるようにすることができる。
例えば、検出部6は、発火が起こった際に発火場所がカップ体24、処理液供給部4a、洗浄液供給部4b、有機溶媒供給部4cなどの陰に隠れないような位置に設けるようにすることができる。
具体的には、処理容器2の天井部や側壁に設けるようにすることができる。この場合、処理面Waの全域を検出領域とできるような配設位置としては、処理容器2の天井の中心部分などを例示することができる。
【0026】
ここで、処理面Waの中央部分で発火が生じた場合と、処理面Waの周縁部分で発火が生じた場合とでは、検出部6における受光量が異なるものとなる。
図2は、発火位置から検出部の中心軸に対する離隔角度を例示するための模式図である。
図3は、発火位置の違いに基づく受光特性を例示するための模式グラフ図である。
図2に示すように、検出部6の中心軸6aが処理面Waの中心を通るように検出部6を配設すると、処理面Waの中心部分からの光は受光面に入射するが、処理面Waの周縁部分からの光は一部しか受光面に入射することができない。
そのため、処理面Waの一検出地点(発火位置)から検出部6の中心軸6aに対する離隔角度θは図2に例示をしたもののようになる。なお、図2は検出地点(発火位置)を周縁部分とした場合である。また、正面から見たときに中心軸6aから反時計回りの離隔角度を+θ、時計回りの離隔角度を−θとしている。
また、離隔角度θと受光量の割合との関係は図3に例示をしたもののようになる。なお、受光量の割合とは、「各離隔角度における受光量/離隔角度θが0degの時の受光量」である。
【0027】
この場合、処理面Waの中央部分で発火が生じた場合よりも、処理面Waの周縁部分で発火が生じた場合の方が受光量が少なくなるので検出がし難くなる。
本発明者の得た知見によれば、処理面Waの周縁部分で発火が生じた場合の受光量は、処理面Waの中央部分で発火が生じた場合の受光量の0.1倍程度となる。そのため、周縁部分に対する受光特性が中央部分に対する受光特性の10倍以上となるような検出特性を有する検出部6とすれば、処理面Waのどこで発火が生じたとしてもこれを検出することができる。
この場合、例えば、発火による光を反射させて検出部6に入射させることができる位置にミラーを配設し、発火による光を反射させることで処理面Waの周縁部における発火による光を検出部6に集光させたり、あるいは複数の検出部を設けて処理面Waの周縁部における発火による光を複数の検出部にそれぞれ受光させるようにすることができる。
【0028】
また、有機溶媒の種類によって発火時の発光特性が異なるものとなる。
図4は、IPAの発火時の発光特性を例示するための模式グラフ図である。
図4に示すように、IPAが発火すると特定の波長において発光強度比にピーク値が表れる。そのため、特定の波長の光を検出するようにすればIPAの発火を検出することができる。
図4に示すように、IPAの場合には4つの波長において発光強度比にピーク値が表れるので、この4つの波長の少なくともいずれか、あるいは4つの波長を適宜組み合わせることでIPAの発火を検出するようにすることができる。この場合、外乱光などを考慮して測定対象となる波長を選択するようにすることもできる。なお、検出部6の受光面に特定の波長を有する光を透過させるフィルタなどを設けることで、特定の波長における検出を行うようにすることができる。
特に、赤外線を検出対象とすると外乱光の影響を低減させることができるので、発火による光を効率よく受光することができる。そのため、検出精度を向上させることができる。
また、特に、波長が0.3ミクロンメートル以上、2ミクロンメートル以下の光を検出対象とするようにすることが好ましい。処理容器2の中で受光素子を露出させた状態で使用すると、処理容器2内の薬液を含む雰囲気で受光素子が腐食し、性能が劣化してしまうおそれがある。このため、受光素子を処理容器2外に配設し、処理容器2に設けられた石英窓を介して検出を行うようにすることが好ましい。そのようにすれば、受光素子の腐食や性能の劣化を防止することができる。
ここで、波長が0.3ミクロンメートル以上、2ミクロンメートル以下の光は石英の透過率が高い。
そのため、波長が0.3ミクロンメートル以上、2ミクロンメートル以下の光を検出対象とすれば、受光素子を処理容器2外に配設し、処理容器2に設けられた石英窓を介して精度の高い検出を行うようにすることができる。
つまり、赤外線の波長領域であって、石英に対する透過率の高い0.3ミクロンメートル以上、2ミクロンメートル以下の波長の光を検出するようにすれば、効率の良い検出を行うことができる。
【0029】
制御部7は、検出部6からの信号に基づいた制御を行う。
前述したように、被処理物Wの処理面Waにおける有機溶媒の量は少ないので燃焼時間、すなわち発光時間も僅かなものとなる。そのため、発光時間が短いことを利用して有機溶媒の発火と他の熱源との区別を行うようにすることができる。
また、有機溶媒の発火は突発的に生じるので光の強度の変化により有機溶媒の発火と他の熱源との区別を行うようにすることもできる。例えば、検出部6の検出領域に他の熱源がある場合であっても、熱源は定常的に熱を発生するものであるか温度変化が緩やかなものである場合が多いので、突発的に生じる有機溶媒の発火と他の熱源との区別を行うようにすることができる。
【0030】
例えば、検出部6が、入射した光をその強度に応じた電気信号に変換するものである場合には、発光時間を測定して発光時間と入射した光の強度とから有機溶媒の発火であると判定するようにすることができる。また、入射した光の強度の変化により有機溶媒の発火であると判定するようにすることもできる。
また、検出部6が、入射した光の強度の変化に応じた電気信号を発生させるものである場合には、光の強度の変化が生じた際、すなわち発火が生じた際に電気信号が発生するので、これを検出することで有機溶媒の発火であると判定するようにすることができる。またさらに、発光時間をも考慮して有機溶媒の発火であると判定するようにすることもできる。
この場合、この様な判定は制御部7において行うようにすることができる。
すなわち、制御部7は、発光時間および光の強度の変化の少なくともいずれかに基づいて処理面Waにおける発火を検出するようにすることができる。
なお、有機溶媒の発火に関する判定には、予め定められた閾値を用いるようにすることができる。
この様にすれば、有機溶媒の発火の検出精度や検出の信頼性を向上させることができる。
【0031】
また、制御部7は、処理面Waにおける発火が検出された場合には、発火が検出された被処理物Wに対して工程異常の識別標識(例えば、工程管理データにおける異常フラグなど)を付与するようにすることができる。
また、制御部7は、発火が検出された場合には、洗浄液供給部4bに被処理物Wの処理面Waへ洗浄液を供給させて消火を行わせたり、図示しない消火機構に二酸化炭素ガスなどを用いた消火を行わせたりすることができる。
【0032】
また、処理容器2の内部に天井側から底部側(排出口2e)に向けて流れる気流を形成する図示しない気流制御部を適宜設けるようにすることができる。図示しない気流制御部を設けるようにすれば、処理容器2の内部から外部に排気が漏れることを抑制することができる。また、被処理物Wにパーティクルが付着することを抑制することができる。この場合、有機溶媒(例えば、IPA)の雰囲気濃度が0.5%未満となるような気流を形成するようにすることができる。なお、有機溶媒の雰囲気濃度を検出する図示しない検出装置を設けて、有機溶媒の雰囲気濃度が0.5%未満となるように気流の形成を制御するようにすることができる。
また、処理容器2の内部に図示しないイオナイザなどを設けて、静電気による発火を抑制するようにすることができる。
【0033】
また、被処理物Wの処理面Waに有機溶媒が供給される際に処理面Waとは反対側の面に純水を供給する図示しない純水供給部を設けるようにすることができる。この場合、純水の供給は載置台22を介して行うようにすることができる。例えば、純水供給部は2リットル/分程度の純水を供給するものとすることができる。なお、図示しない純水供給部の構成については、洗浄液供給部4bと同様に既知の技術を適用させることができるので詳細な説明は省略する。
また、二酸化炭素ガスなどを用いた消火を行う図示しない消火機構を設けるようにすることもできる。なお、図示しない消火機構には既知の技術を適用させることができるので詳細な説明は省略する。
【0034】
次に、基板処理装置1の作用について例示をする。
まず、駆動部25により、基部24a、カバー24bが下降端まで下降する。
次に、開閉機構2cにより開閉扉2bが開けられ、開口部2aを介して図示しない搬入搬出装置などにより被処理物Wが処理容器2の内部に搬入される。搬入された被処理物Wは載置台22の載置面22aに載置される。載置面22aに載置された被処理物Wは、バキュームチャックなどの図示しない保持部により保持される。なお、載置面22aの周縁に被処理物Wの周端を支持する図示しない支持部が設けられている場合には、図示しない支持部により被処理物Wの周端が支持されることで、載置面22aに載置された被処理物Wが保持される。
被処理物Wが保持されることで、載置台22が回転した際に被処理物Wの位置がずれることを抑制することができる。
【0035】
次に、開閉機構2cにより開閉扉2bを閉め、駆動部25により、基部24a、カバー24bを上昇端まで上昇させる。
次に、駆動部23により回転軸22bを回転させることで、載置面22aに保持された被処理物Wを所定の回転数(例えば、100〜1500rpm(revolutions per minute))で回転させる。
なお、一例として、回転させた被処理物Wの処理面Waに処理液、洗浄液、有機溶媒を供給する場合を例示するが、処理面Waに処理液、洗浄液、有機溶媒が供給された被処理物Wを回転させることもできる。
【0036】
次に、処理液供給部4aにより被処理物Wの処理面Waに処理液が供給される。処理面Waに供給された処理液は、被処理物Wを回転させることで処理面Waの全域に行きわたり所望の処理が行われる。そして、使用済みの処理液は遠心力により被処理物Wの径外方向に排出される。被処理物Wの径外方向に排出された使用済みの処理液は、カップ体24の基部24a、カバー24bにより飛散が抑制され、処理容器2の底部に集められる。処理容器2の底部に集められた使用済みの処理液は、排出口2eから排出される。
【0037】
次に、洗浄液供給部4bにより被処理物Wの処理面Waに洗浄液が供給される。処理面Waに供給された洗浄液は、被処理物Wを回転させることで処理面Waの全域に行きわたり、処理面Waに残留している処理液が洗い流される。そして、使用済みの洗浄液と洗い流された処理液は遠心力により被処理物Wの径外方向に排出される。被処理物Wの径外方向に排出された使用済みの洗浄液と洗い流された処理液は、前述した処理液の場合と同様にして排出口2eから排出される。または、図示しない隔壁と排出口とを設け、被処理物Wの径外方向に排出された使用済みの洗浄液と洗い流された処理液と、を前述した処理液とは異なる排出口から排出させるようにすることもできる。
【0038】
次に、有機溶媒供給部4cにより被処理物Wの処理面Waに有機溶媒が供給される。処理面Waに供給された有機溶媒は、被処理物Wを回転させることで処理面Waの全域に行きわたる。この有機溶媒と処理面Waに残留している洗浄液とが置換される。または、洗浄液と有機溶媒とが混合されより蒸散させやすい混合液が形成される。そして、有機溶媒や混合液は遠心力により被処理物Wの径外方向に排出される。被処理物Wの径外方向に排出された有機溶媒や混合液は、前述した処理液の場合と同様にして排出口2eから排出される。または、図示しない隔壁と排出口とを設け、被処理物Wの径外方向に排出された有機溶媒や混合液を前述した処理液や洗浄液とは異なる排出口から排出させるようにすることもできる。
この場合、処理面Waに供給される有機溶媒は、有機溶媒の溶液、有機溶媒の蒸気、有機溶媒の溶液を気体を用いて霧状にしたものなどとすることができる。
【0039】
また、被処理物Wの処理面Waに有機溶媒が供給される際には、処理面Waとは反対側の面に図示しない純水供給部から2リットル/分程度の純水が供給される様にすることができる。処理面Waとは反対側の面に純水が供給される様にすれば、被処理物Wの面内温度分布のばらつきを緩和させることができるので、洗浄液と有機溶媒との置換における面内均一性を向上させることができる。また、遠心力により被処理物Wの径外方向に排出された有機溶媒と、遠心力により被処理物Wの径外方向に排出された純水とが混合されて希釈化される(例えば、有機溶媒の濃度が0.01重量%程度となる)ので、発火の発生を抑制することもできる。
【0040】
処理面Waに残留した有機溶媒や混合液は、いわゆるスピン乾燥を行うことで蒸散させることができる。
この場合、有機溶媒と処理面Waに残留している洗浄液とを置換したり、より蒸散させやすい混合液を形成したりすることで、ウォータマークやパターンの倒壊が抑制された乾燥を行うことができる。
【0041】
ここで、本実施の形態においては、検出部6により被処理物Wの処理面Waにおける発火が検出される。
そして、制御部7により処理面Waにおける発火と判定された場合には、洗浄液供給部4bに被処理物Wの処理面Waへ洗浄液を供給させて消火を行わせたり、図示しない消火機構に二酸化炭素ガスなどを用いた消火を行わせたりすることができる。
また、制御部7により当該被処理物Wに工程異常の識別標識を付与するようにすることもできる。工程異常の識別標識が付与された被処理物Wは、例えば、後工程における処理が制限されたり、廃棄されたりするようにすることができる。そのため、後工程の処理装置や製造プロセスにおける要素などの汚染を抑制することができ、後工程における無駄な処理の発生もなくすことができる。
【0042】
次に、被処理物Wの回転を止め、駆動部25により、基部24a、カバー24bを下降端まで下降させる。そして、開閉機構2cにより開閉扉2bを開け、被処理物Wを図示しない搬入搬出装置などにより搬出する。その後、必要に応じて前述した動作を繰り返すことで被処理物Wの処理を連続的に行うことができる。
【0043】
本実施の形態によれば、被処理物Wの処理面Waにおける僅かな発火をも検出することができる。そのため、煤などで汚染された被処理物Wにより後工程の処理装置や製造プロセスにおける要素などが汚染されるのを抑制することができる。また、後工程における無駄な処理の発生もなくすことができる。
【0044】
次に、本実施の形態に係る基板処理方法について例示をする。
まず、被処理物Wの処理面Waに処理液を供給する(ステップS1)。
この際、回転させた被処理物Wの処理面Waに処理液を供給することもできるし、処理面Waに処理液が供給された被処理物Wを回転させることもできる。
次に、被処理物Wの処理面Waに洗浄液を供給する(ステップS2)。
この際、回転させた被処理物Wの処理面Waに洗浄液を供給することもできるし、処理面Waに洗浄液が供給された被処理物Wを回転させることもできる。
次に、被処理物Wの処理面Waに有機溶媒を供給する(ステップS3)。
この際、回転させた被処理物Wの処理面Waに有機溶媒を供給することもできるし、処理面Waに有機溶媒が供給された被処理物Wを回転させることもできる。
次に、被処理物Wの処理面Waに供給された有機溶媒を蒸散させる(ステップS4)。 また、ステップS3およびステップS4の少なくともいずれかにおいて、被処理物Wの処理面Waにおける発火を検出する(ステップS5)。
すなわち、被処理物Wの処理面Waに有機溶媒を供給する工程および被処理物Wの処理面Waに供給された有機溶媒を蒸散させる工程の少なくともいずれかにおいて、処理面Waにおける発火を検出する。
また、処理面Waにおける発火の検出において、発光時間および光の強度の変化の少なくともいずれかに基づいて処理面Waにおける発火を検出するようにすることができる。 発火が検出された場合には、被処理物Wの処理面Waに洗浄液を供給して消火を行ったり、図示しない消火機構により二酸化炭素ガスなどを用いた消火を行ったりすることができる。
また、当該被処理物Wに工程異常の識別標識を付与するようにすることもできる。工程異常の識別標識が付与された被処理物Wは、例えば、後工程における処理が制限されたり、廃棄されたりするようにすることができる。
なお、各工程における内容は、基板処理装置1を例示した際に説明したものと同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0045】
本実施の形態によれば、被処理物Wの処理面Waにおける僅かな発火をも検出するようにしている。そのため、煤などで汚染された被処理物Wにより後工程の処理装置や製造プロセスにおける要素などが汚染されるのを抑制することができる。また、後工程における無駄な処理の発生もなくすことができる。
【0046】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、いわゆる枚様式の基板処理装置の場合を例示したが、有機溶媒を収納する槽を有し、被処理物Wが有機溶媒に浸漬される基板処理装置や基板処理方法にも適用させることができる。この場合、有機溶媒を収納する槽から取り出された被処理物Wの主面(表面、裏面)が処理面となる。
また、基板処理装置1が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0047】
1 基板処理装置、2 処理容器、3 載置部、4 処理部、4a 処理液供給部、4b 洗浄液供給部、4c 有機溶媒供給部、5 遮蔽部、6 検出部、24 カップ体、W 被処理物、Wa 処理面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物の処理面に有機溶媒を供給し、前記供給された有機溶媒を蒸散させる基板処理装置であって、
前記処理面に有機溶媒を供給する有機溶媒供給部と、
前記処理面における発火を検出する検出部と、
を備えたこと、を特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記処理面の周縁部分に対する受光特性が、前記処理面の中央部分に対する受光特性の10倍以上となる検出特性を有したこと、を特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記検出部からの信号に基づいた制御を行う制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記発火による発光に基づく発光時間および光の強度の変化の少なくともいずれかに基づいて前記処理面における発火を検出すること、を特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記処理面における発火が検出された場合には、前記発火が検出された被処理物に対して工程異常の識別標識を付与すること、を特徴とする請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理面に洗浄液を供給する洗浄液供給部をさらに備え、
前記制御部は、前記処理面における発火が検出された場合には、前記洗浄液供給部に洗浄液の供給を行わせること、を特徴とする請求項3または4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
被処理物の処理面に有機溶媒を供給し、前記供給された有機溶媒を蒸散させる基板処理方法であって、
前記処理面に有機溶媒を供給する工程と、
前記処理面に供給された有機溶媒を蒸散させる工程と、
を備え、
前記有機溶媒を供給する工程および前記有機溶媒を蒸散させる工程の少なくともいずれかにおいて、前記処理面における発火を検出することを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
前記処理面における発火の検出において、発光時間および光の強度の変化の少なくともいずれかに基づいて前記処理面における発火を検出すること、を特徴とする請求項6記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記処理面における発火が検出された場合には、前記発火が検出された被処理物に対して工程異常の識別標識を付与すること、を特徴とする請求項7記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記処理面における発火が検出された場合には、前記処理面における発火の消火が行われること、を特徴とする請求項7または8に記載の基板処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−74568(P2012−74568A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218784(P2010−218784)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】