説明

基板収納容器、及び支持部材

【課題】容器本体に装着可能であり、基板支持部の寸法精度の向上を図り、基板支持部によって支持された基板の撓みを抑制することができる支持部材、及び支持部材を備えた基板収納容器を提供する。
【解決手段】開口を有し基板を収納する容器本体と、容器本体の開口を閉鎖する蓋体と、容器本体の内面に設けられ基板を支持する支持部材5と、支持部材を容器本体に固定する支柱部材51A,51Bとを有する基板収納容器であって、支持部材5は、基板を載置可能な複数の支持片61を有し、支柱部材51A,51Bは、支持片61を所定間隔で挟持する複数の棚部52を有し、支持片61は、棚部52間に嵌入されている。これにより、複数の支持片61が支柱部材51A,51Bとは、別部材として形成されているため、支持片61の成形が容易となり寸法精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス等の精密基板などを収納し、輸送、搬送、保管などに使用される基板収納容器、特には容器本体に設けられる基板支持部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板収納容器1として、正面に開口を備えた容器本体と、この容器本体2の開口をシール可能に閉鎖する蓋体とを備えるものがある。例えば、特許文献1には、直径300mmの基板を収納する基板収納容器の支持構造が記載されている。特許文献1に記載の基板支持構造では、容器本体の内壁から突出する棚状の支持部が、正面の開口側から奥にかけて形成されている。
【0003】
近年、半導体部品の微細化や配線の狭ピッチ化が進んでおり、従来よりも小さくて薄い半導体部品が生産されるようになっている。そのため、半導体ウェーハをより薄くまで(100μm以下)バックグラインドすることが行われている。このような薄い基板を、上記の基板収納容器に収納することも一部では行われていた。
【0004】
また、半導体部品においては、コストやシェアの競争も激しさを増している。その対応として精密基板の口径を大きくして、コストを削減しようという動きが続いている。半導体ウェーハの場合、現在主流となっているものは、直径300mmのものである。しかし、これを450mmにして、生産効率をさらに向上させようとする検討が始まっている。
【0005】
このため、半導体ウェーハなどの基板を収納する基板収納容器も、収納する大口径の基板にあわせて、大きな寸法の容器とする必要がある。また、大口径となったりバックグラインドされて薄くなったりした基板は、撓みやすくなるため、撓みやすくなった基板を安全に支持可能な基板支持構造を備えた基板収納容器が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−324327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バックグラインドにより薄く形成された基板や、口径が大きくなった基板をそのまま収納する場合、基板の撓みが大きくなることで、基板を取り出すための基板取り出し機によるローディングやアンローディングが難しくなる。そこで、位置精度良く基板を支持することが求められている。また、上記の基板を保持する場合、輸送時の振動や衝撃によって破損しやすくなるおそれがある。
【0008】
基板の撓みを小さくして支持するには、基板のどの箇所を支持するのかが重要である。通常、開口側の基板の周縁部は、支持部から距離があるため、たわみが大きくなる。そこで、開口側の基板の周縁部でのたわみを小さくするためには、なるべく、開口側の基板部分を支持する必要がある。しかし、この場合、支持部が容器本体の側壁内面から大きく張り出すことになる。そのため、支持部自体、特には、水平方向に張り出す棚部が、成形時において変化しやすくなり、寸法精度が低下するという問題が発生する。また、450mmといった大口径の基板の場合には、基板重量も大きくなるため、基板の自重によって、側壁から大きく張り出す棚部(支持部)が撓んでしまうことが考えられる。
【0009】
本発明は、容器本体に装着可能であり、基板支持部の寸法精度の向上を図り、基板支持部によって支持された基板の撓みを抑制することができる支持部材、及び支持部材を備えた基板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による基板収納容器は、開口を有し基板を収納する容器本体と、容器本体の開口を閉鎖する蓋体と、容器本体の内面に設けられ基板を支持する支持部材と、支持部材を容器本体に固定する固定部とを有する基板収納容器であって、支持部材は、基板を載置可能な複数の支持片を有し、固定部は、支持片を所定間隔で挟持する複数の挟持板を有し、支持片は、挟持板間に嵌入されていることを特徴としている。
【0011】
このような基板収納容器では、基板を載置可能な支持片を複数備え、これらの複数の支持片が固定部に嵌入されている。これにより、複数の支持片が、固定部とは別部材として形成されているため、支持片の成形が容易となり寸法精度を向上させることができる。その結果、支持片によって支持される基板の撓みを抑制することができる。すなわち、基板のサイズアップ、薄型化に対応し、基板の撓みを抑制して支持可能な基板支持構造を実現することができる。また、支持片が、固定部とは別部材とされているので、支持片及び固定部を互いに異なる材質によって成形することが可能である。
【0012】
また、本発明では、支持片は挟持板によって所定間隔で挟持され、支持片同士を当接させずに支持する構成であるため、支持片の寸法誤差や変形が累積されて大きな寸法誤差が生じてしまうことが防止される。これにより、従来技術と比較して寸法精度良く基板を支持することができる。例えば、支持片の基端側を上下方向に連結することで、一体物として成形した場合には、支持片の先端側が下方に傾斜するような収縮変形が起こり、支持片のピッチ精度を確保することが困難である。本発明では、複数の支持片が別部材として成形され、支持片が一対の挟持板によって固定されているため、挟持板の剛性を向上させることで収縮変形を防止し、支持片のピッチ精度の確保を容易とすることができる。
【0013】
また、ここで、支持片は、位置決め用傾斜面が形成され固定部の係止部に嵌入される差込片を複数箇所に備え、固定部には、差込片が嵌入される溝が一定間隔で形成されていることが好適である。これにより、位置精度良く支持片を係止部に嵌入させることができ、支持片によって支持される基板の位置精度を向上させることができる。その結果、基板のローディング、アンローディングの際のエラーを防止することができ、基板の損傷を防止することができる。
【0014】
また、固定部として、容器本体とは別部材である支柱部材を備え、支柱部材は、前後方向に離間して複数設けられていることが好適である。これにより、支柱部材と支持片とを別部材として形成することができる。また、支柱部材が、前後方向に離間して複数設けられているため、一対の支柱部材によって両側から挟み込むことで、支持片を固定することができる。
【0015】
また、支柱部材は、支持片よりも剛性が高い高剛性材から形成されていることが好ましい。また、支柱部材は、高剛性材として、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金の中から選択された金属材料によって形成されていることが好適である。これにより、支柱部材の剛性の向上が図られ、基板の撓みを防止して、基板を確実に支持することができる。
【0016】
また、金属材料から形成された支柱部材の表面には、コーティング処理が施工されていることが好ましい。このように、表面にコーティング処理を施工することで、パーティクルの発生を防止することが可能となる。
【0017】
また、本発明の基板収納容器用支持部材は、基板を収納する容器本体の内面に取り付けられて、基板を支持する支持部材であって、基板を載置する複数の支持片と、複数の支持片を上下方向に一定間隔で固定する一対の支柱部材と、を備え、支持片には、支柱部材に嵌入される差込片が複数箇所に設けられ、支柱部材には、差込片を所定間隔で支持する係止部が設けられていることが好ましい。
【0018】
このような基板収納容器用支持部材では、基板を載置可能な支持片を複数備え、これらの複数の支持片が支柱部材に嵌入されている。支持部材では、複数の支持片と、支柱部材とが別部材として形成されているため、支持片の成形が容易となり寸法精度を向上させることができる。その結果、支持片によって支持される基板の撓みを抑制することができる。すなわち、基板のサイズアップ、薄型化に対応し、基板の撓みを抑制して支持可能な基板支持構造を実現することができる。また、支持片が、支柱部材とは別部材とされているので、支持片及び支柱部材を互いに異なる材質によって成形することが可能である。例えば、支持片よりも剛性が高い高剛性材によって、支柱部材を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、支持片の寸法精度が向上され、基板サイズの大型化に対応して、位置精度よく基板を支持することができる。その結果、基板のローディング、アンローディングの際のエラーや、基板損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板収納容器の分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る基板支持部材の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る支柱部材を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る支持片を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る支持部材の開口側を上方から示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る支持部材のリア側を上方から示す斜視図である。
【図7】支持部材のリア側を斜め前方から示す図であり、基板Wがリア溝によって支持された状態を示す図である。
【図8】棚部及び差込片の密着状態を示す断面図である。
【図9】支持片のリア側の下面に形成された邪魔板を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る基板収納容器の容器本体を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る容器本体及び支持片を示す分解図である。
【図12】正面開口側に配置された支持片を示す拡大図である。
【図13】リア側に配置された支持片を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明による基板収納容器1の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の基板収納容器1は、半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラスなどの精密基板を収納し、輸送、搬送、保管などに使用されるものである。基板収納容器1において、基板を出し入れするための開口部2a(図1参照)が形成された面を正面として説明する。また、各図には、直交する3軸(X,Y,Z)方向を示している。X軸方向は、前後方向で基板を出し入れする方向であり、Y軸方向は、幅方向であり、Z軸方向は、上下方向である。
【0022】
基板収納容器1に収納される半導体ウェーハWは、例えば925μmの厚さを有する直径450mmの薄くて大きいシリコンウェーハである。シリコンウェーハの周縁部には、図示しない位置合わせや識別用のノッチが平面半円形に切り欠かれている。容器本体2には、25枚の半導体ウェーハが水平状態で、一定間隔で整列して収納される。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る基板収納容器の分解斜視図である。基板収納容器1は、正面に開口部2aを有し複数枚の基板Wを収納する容器本体2と、この容器本体2の開口部2aを閉鎖する蓋体3と、容器本体2の天面に設けられた搬送用のロボティックフランジ4と、容器本体2の両側壁2b,2bの内面に設けられ、複数の基板Wを水平に支持可能な支持部材5と、容器本体2の底面2cに設けられた位置決め・固定用のボトムプレート6とを備えている。
【0024】
蓋体3は、容器本体2に係止される係止爪を備えた施錠機構33を内蔵している。蓋体3は、施錠機構33を収容する蓋体本体32と、この蓋体本体32に装着され施錠機構33を覆うカバープレート31とを備える。蓋体3は、容器本体2の開口部2aとの間にシールを形成し、開口部2aを密封する。
【0025】
施錠機構33は、回転体34と一対のラッチバー35とを備えている。施錠機構33は、回転体34が回転操作されることで、ラッチバー35の先端が蓋体本体32の側壁の開口(上側のみ図示)32aから突出する。ラッチバー35の先端には、別部材として形成される係止爪(係止部材)をさらに設けることができる。蓋体3から突出した係止爪は、容器本体2のリム10に形成された凹部(下側のみ図示)10aに嵌入される。また、カバープレート31には、施錠機構33を外部から操作するための貫通穴(キー孔)31aが形成されている。
【0026】
また、蓋体3には、容器本体2の開口部2aとの間にシールを形成するためのガスケットが取り付けられている。これにより、容器本体2を気密封止可能な構成とされている。蓋体本体32の背面側(容器本体2と向き合う側)には、基板を個別に保持するリテーナ29が設けられている。リテーナ29は、蓋体3が容器本体2に取り付けられた状態において、基板を個別に保持可能である。
【0027】
図2〜図4に示すように、支持部材5は、支柱部材51及び支持片61を別部材として備えている。支持部材5は、支柱部材51に複数の支持片61が組み付けられて一体化されて形成されている。支持部材5は、幅方向Yの両側に配置された2枚の支持片61によって1枚の基板を支持するものであり、上下方向Zに配置された複数の支持片61を前後方向の両側に配置された一対の支柱部材51A,51Bによって支持する。なお、前側に配置されるものを支柱部材51Aとし、後側に配置されるものを支柱部材51Bとし、前後を区別する必要がない場合には、支柱部材51とする。本実施形態の支持部材5は、4本の支柱部材51を有する。
【0028】
図3に示すように、支柱部材51は角柱状を成し、支柱部材51Aの背面側には、複数の溝部53が等間隔で形成され、支柱部材51Bの正面側には、複数の溝部53が等間隔で形成されている。支柱部材51A,51Bの対面する溝部53は、上下方向Zにおいて同じ高さに形成されている。溝部53の上下方向Zの両側には、前後方向に張り出す棚部52が形成されている。棚部52は、支持片61を挟持する挟持板として機能するものである。すなわち、上下方向Zに所定間隔で並設された挟持板52,52間に溝部53が形成されている。また、棚部52の前後方向Xに連続する角はカットされ、傾斜面52aとされている。傾斜面52aは、棚部52の上下面及び側面に対して傾斜する面であり、前後方向Xに連続して形成されている。
【0029】
図4に示すように、支持片61は板状を成し、半導体ウェーハの周縁に沿って湾曲形成された載置部62を有する。載置部62は、半導体ウェーハの周縁が載置される部分である。
【0030】
また、支持片61には、支柱部材51の溝部53に嵌入される板状の差込片64が、X軸方向の両端部に設けられている。差込片64は、例えば、Y軸方向において載置部62とは反対側の側部において、外方に張り出している。差込片64のY軸方向の幅は、支柱部材51のY軸方向の幅に対応する大きさとされている。また、差込片64のY軸方向の両端部には、支柱部材51に設けられた傾斜面52aと当接可能な傾斜面64aが設けられている。そして、X軸方向の外側から、支柱部材51が嵌めこまれることで、複数の支持片61が等間隔で支持される。すなわち、一対の支柱部材51において前後方向Xの両側から固定することができるので、支持片61の脱落が防止される。
【0031】
図5は、支持部材の開口側を上方から示す斜視図である。図5に示すように、支持片61の上面の開口部側には、基板Wの飛び出しを防止するための段差65を設けることができる。この段差65は、基板Wに沿って湾曲形成されている。
【0032】
図6は、支持部材のリア側を上方から示す斜視図である。図6に示すように、支持片61の上面のリア側には、基板Wの挿入位置を制限するリア溝66が設けられている。このリア溝66はV字形状の溝であり、V字の開口側が基板Wに沿って湾曲形成されている。蓋体3を容器本体2に装着した場合、支持片61に載置されている基板Wは、蓋体3の背面に取り付けられたリテーナ29によって、後方側へ付勢される。図7は、支持部材のリア側を斜め前方から示す図であり、基板Wがリア溝によって支持された状態を示す図である。後方に付勢された基板Wは、図7に示すように、リア溝66の下側の斜面に当接して、浮き上がり、リテーナ29及びリア溝66によって前後方向から支持されることとなる。
【0033】
図8は、棚部及び差込片の密着状態を示す断面図である。図8では、正面開口側に配置された支柱部材51Aの棚部52と支持片16の差込片64との密着状態を示している。また、幅方向Xの両側に配置された傾斜面52a,64aが互いに当接した状態で、差込片64が支柱部材51に保持されている。すなわち、傾斜面52a,64aによって位置決めされて確実に保持されている。ここで、支持片61の差込片64は、上下方向の両側から支柱部材51の棚部52によって、密着固定されている。差込片64は、支柱部材51に嵌入されており、差込片64の上面は、対面する棚部52の下面と当接し、差込片64の下面は、対面する棚部52の上面と当接している。すなわち、支持片61の差込片64は、支柱部材51によって固定され、複数の支持片61同士が直接的に積層されることはないため、支持片61同士の擦れによるパーティクルの発生を低減することができる。
【0034】
図9は、支持片のリア側の下面に形成された邪魔板を示す図である。図9に示すように、支持片61のリア側の下面には、傾斜面を有する邪魔板67が形成されている。この邪魔板67の傾斜面は、基板の周縁に対応する位置に配置されている。邪魔板67の基板側の面が傾斜面とされ、上部側と比較して下部側が後方側へ配置されるように傾斜している。このような邪魔板67に基板が当接することで、基板がリア溝66とその上の支持片61との間の隙間に入り込むことが防止される。
【0035】
支持部材5の材質について説明する。支柱部材51及び支持片61の少なくとも一方は、高剛性で撓み荷重の大きい材料で構成されていることが好ましい。支柱部材51は、支持片61より剛性が高い高剛性材料で形成されていることが好ましい。
【0036】
支柱部材51は、合成樹脂を使用して形成することができる。合成樹脂として、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーなどが適用可能である。特に、これらの合成樹脂にカーボン繊維、ガラス繊維などを適量(20wt%〜40wt%)添加することで、材料強度を向上させ曲げ弾性率を向上させることが可能である。また、上記のカーボン繊維として、ピッチ系、PAN系、カーボンナノチューブなどが挙げられる。このような合成樹脂を高剛性材料として採用してもよい。
【0037】
また、支柱部材51は、各種の金属材料から形成することが可能である。特には、軽量化が図れるアルミニウム、アルミニウム合金(Al−Si−Mg系、Al−Si−Cu系、Al−Si−Cu−Mg系)、マグネシウム合金(Mg−Al−Zn系、Mg−Ag系)、チタン合金などが支柱部材51に使用可能である。特には、コスト面で有利なアルミニウムやアルミニウム合金、マグネシウム合金などが好ましい。アルミニウム合金の場合の剛性は、ヤング率を比較して確認することが可能である。ヤング率の値が約69GPaのアルミニウム合金は、ヤング率が通常の熱可塑性樹脂の約20倍以上となり、強度的な問題を解決することができる。このような金属材料を高剛性材料として採用可能である。
【0038】
支柱部材51をアルミニウムなどの鋳造品として形成するときには、表面部の平滑性を確保するためにサンドブラストなどのバリ処理を実行することが好ましい。これにより、表面粗さRa10μm以下とすることで、支柱部材51の表面を平滑化することができる。また、表面平滑化処理の後に、カーボンの焼付け塗装処理、アウトガスの放出が少ない樹脂を用いた表面コーティング処理、ガスバリア性を有する樹脂による表面コーティング処理、及びこれらの各種処理を組み合わせて、支柱部材51の表面に被覆層を形成することが好ましい。アウトガスの放出が少ない樹脂として、エポキシ樹脂、ふっ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどを使用することができる。ガスバリア性を備えた樹脂として、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリブニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデンなどを使用することができる。このように、表面平滑化処理を実行することで、磨耗粉の発生を抑制することができる。
【0039】
このような基板収納容器1では、基板Wを載置可能な支持片61を複数備え、これらの複数の支持片61が固定部である支柱部材51に嵌入されている。複数の支持片61が支柱部材51に嵌入されて一体化された支持部材5は、容器本体2の左右の側壁2bの内面に固定されている。支持部材5の側壁2bへの固定方法は、螺子部材を用いて固定してもよく、係合部材を用いて固定してもよい。
【0040】
本実施形態の支持部材5を備える基板収納容器1によれば、複数の支持片61が、固定部とは別部材として形成されているため、支持片61の成形が容易となり寸法精度を向上させることができる。その結果、支持片61によって支持される基板の撓みを抑制することができる。すなわち、基板のサイズアップ、薄型化に対応し、基板の撓みを抑制して支持可能な基板支持構造を実現することができる。また、支持片61が、固定部とは別部材とされているので、支持片61及び固定部を互いに異なる材質によって成形することが可能である。
【0041】
ここで、支持片61は、位置決め用傾斜面64aが形成され支柱部材51の溝部53に嵌入される差込片64を備え、支柱部材51には、差込片64が嵌入される溝部53が一定間隔で形成されている。そのため、位置精度良く支持片61を溝部53に嵌入させることができ、支持片61によって支持される基板の位置精度を向上させることができる。その結果、基板のローディング、アンローディングの際のエラーを防止することができ、基板の損傷を防止することができる。
【0042】
本実施形態の支持部材5では、支持片61は、水平方向に張り出す棚部52によって所定間隔で挟持され、支持片61同士を当接させずに支持する構成であるため、支持片61の寸法誤差や変形が累積されて大きな寸法誤差が生じてしまうことが防止されている。これにより、従来技術と比較して寸法精度良く基板を支持することができる。本発明では、複数の支持片61と支柱部材51が別部材として成形され、支持片61が挟持板として機能する棚部52によって固定されているため、支柱部材51の剛性を向上させることで収縮変形を防止することができ、支持片61のピッチ精度の確保を容易とすることができる。
【0043】
次に、第2実施形態に係る基板収納容器について、図10〜図13を参照して説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明は省略する。第2実施形態に係る基板収納容器71が、第1実施形態に係る基板収納容器1と違う点は、支持部材の構成が異なる点である。具体的には第1実施形態の基板収納容器1では、基板を支持する支持片61が固定部である支柱部材51を介して、容器本体2に固定されているのに対し、第2実施形態の基板収納容器71では、支持片81が容器本体72に固定されている。すなわち、支持片81を固定する固定部91が、容器本体72の内壁面に一体的に形成されている。
【0044】
第2実施形態の容器本体72は、正面側に開口72aが形成され、天面を構成する天板72b、側面を構成する側壁72c,72c、底面を構成する底板72d、背面を構成する第1背面壁72e及び第2背面壁72f,72fを備えている。なお、容器本体72を示す各図において、ロボティックフランジ、手動搬送用ハンドルなどの付属部品の図示を省略している。
【0045】
第1背面壁72eは容器本体72の幅方向Yにおいて中央に配置されている。第1背面壁72eの両側には、平面視において第1背面壁72eと所定の角度を有する第2背面壁72fが配置されている。第2背面壁72fは、側壁72cの後端から第1背面壁72eの側端にかけて形成されている。図11に示すように、第2背面壁72fは、例えば、X軸及びY軸に対して45度の角度を成して配置されている。
【0046】
側壁72cには、固定部91として、容器本体72の内方に張り出す棚部92Aが複数形成されている。複数の棚部92Aは、X軸及びY軸に平行な面を有し、Z軸(上下)方向において等間隔に配置されている。上下方向Zに離間する棚部92A間に溝部が形成され、この溝部に支持片81の差込片84Aが嵌入される。また、側壁72cには段差72gが設けられ、側壁72cのリア側は側壁72cの正面開口側より幅方向Yにおいて内側に配置されている。そして、この段差72gが棚部92Aの後端となる。また、この棚部92Aを有する固定部91には、正面側に突出する凸部が形成されている。この凸部は、支持片81の脱落を防止するための係止部として機能する。
【0047】
第2背面壁72fには、固定部91として、容器本体72の内方に張り出す棚部92Bが複数形成されている。複数の棚部92Bは、X軸及びY軸に平行な面を有し、Z軸(上下)方向において等間隔に配置されている。上下方向Zに離間する棚部92B間に溝部が形成され、この溝部に支持片81の差込片84Bが嵌入される。第2背面壁72fには、後方に凹む凹部72kが形成され、この凹部72kに載置部82の後端部82dが嵌入される。
【0048】
次に、支持片81について説明する。支持片81は、半導体ウェーハの周縁が載置される部分である板状の載置部82A及び載置部82Bを備え、これらの載置部82A,82Bを連結する連結部83を有する。載置部82A,82Bは、例えば、平面視において台形状に形成され、台形の下底側が容器本体72に固定される部分となる。
【0049】
載置部82Aは、図11及び図12に示すように、容器本体72の正面側に配置される載置部である。載置部82Aの下底側には、棚部92Aに嵌入される差込片84Aが形成されている。また、載置部82Aの後端には、棚部92Aの係止部に係合する係合部が形成されている。
【0050】
載置部82Bは、図11及び図13に示すように、容器本体72のリア側に配置される載置部である。載置部82Bの下底側には、棚部92Bに嵌入される差込片84Bが形成されている。また、載置部82Bの後端には、棚部92Bの係止部に係合する係合部82dが形成されている。
【0051】
そして、支持片81は、正面開口側から容器本体71内に挿入され、容器本体72の内壁に設けられた固定部91に固定されている。載置部82Aの差込片84Aは、棚部92A,92A間の溝部に嵌入され、差込片84Aの上下面が棚部92Aの上下面と密着している。このような第2実施形態の支持片(支持部材)81にあっても、第1実施形態の支持部材と同様に、容器本体に装着可能であり、支持片の位置精度、寸法精度の向上を図ることができる。これにより、支持片81によって支持された基板の撓みを抑制することができる。本実施形態の基板収納容器では、支持片81の寸法精度が向上され、基板サイズの大型化に対応して、位置精度良く基板を支持することができる。その結果、基板のローディング、アンローディングの際のエラーや、基板損傷を防止することができる。
【0052】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば支持片61を前後方向に分割して形成してもよい。例えば、正面開口側とリア側とに2分割された支持片としてもよく、正面開口側とリア側とこれらの間に配置された中間部とに3分割された支持片としてもよい。
【0053】
また支持片に、半導体ウェーハを支持する複数の突起を形成することができる。支持片61を別部材として形成することで、突起を任意の位置に設けることができる。
【0054】
また、上記実施形態では、支柱部材51を前後方向に別々に備える構成としているが、前後方向に配置された一対の支柱部材51を枠体などによって連結して一つの部品としてもよい。そして、連結されて一つの部品とされた支柱部材を容器本体の内壁面に固定する構成でもよい。
【0055】
また、支持部材5を容器本体に固定する方法としては、螺刻部材を用いた固定方法でもよく、係止部材を用いた固定方法でもよい。また、これらに限定されず、容器本体または支持部材に貫通穴を形成し、これに貫入する突起を対向する支持部材又は容器本体に形成し、突起の先端を熱溶着や超音波溶着して、ステーキングして固定する構成としてもよい。
【0056】
また、容器本体2の側壁に手動搬送用のハンドル16を形成することを例示したが、これに限定されず、フォークリフトでの搬送用のサイドレールフランジを側壁から張り出すように形成する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,71…基板収納容器、2,72…容器本体、2a,72a…開口、3…蓋体、5…支持部材、51A,51B…支柱部材(固定部)、52,92A,92B…棚部(挟持板)、52a…傾斜面(位置決め用傾斜面)、61,81…支持片、64,84A,84B…差込片、64a…傾斜面(位置決め用傾斜面)、91…固定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有し基板を収納する容器本体と、容器本体の開口を閉鎖する蓋体と、前記容器本体の内面に設けられ前記基板を支持する支持部材と、前記支持部材を前記容器本体に固定する固定部とを有する基板収納容器であって、
前記支持部材は、前記基板を載置可能な複数の支持片を有し、
前記固定部は、前記支持片を所定間隔で挟持する複数の挟持板を有し、
前記支持片は、前記挟持板間に嵌入されていることを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記支持片は、前記挟持板間に嵌入される複数の差込片を備え、
前記差込片は、差込方向を規定する位置決め用傾斜面を有し、前記挟持板間に嵌入されていることを特徴とする請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記固定部は、前記複数の挟持板を有し、上下方向に延在する一対の支柱部材を備え、
前記一対の支柱部材は、前記容器本体の前記開口側と背面側とに前後方向に離間して配置され前後方向の両側から前記複数の支持片を支持するものであり、
前記一対の支柱部材によって支持され一体化された前記複数の支持片が、前記容器本体の幅方向の両側に配置され、
前記容器本体の対面する側壁に、前記一対の支柱部材が各々固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の基盤収納容器。
【請求項4】
前記支柱部材は、前記支持片よりも剛性が高い高剛性材から形成されていることを特徴とする請求項3記載の基板収納容器。
【請求項5】
前記支柱部材は、前記高剛性材として、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金の中から選択された金属材料によって形成されている請求項4記載の基板収納容器。
【請求項6】
前記金属材料から形成された前記支柱部材の表面には、コーティング処理が施工されていることを特徴とする請求項5記載の基板収納容器。
【請求項7】
基板を収納する容器本体の内壁面に固定され前記基板を支持する支持部材であって、
前記基板を載置可能な複数の支持片と、
上下方向に延在し、前記複数の支持片を固定する複数の支柱部材と、を備え、
前記支柱部材は、上下方向に所定間隔で配置され前記支持片を挟持する複数の挟持板を有し、
前記支持片は、前記挟持板間に嵌入される差込片を有し、前記差込片が前記挟持板間に嵌入されていることを特徴とする支持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−103391(P2011−103391A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258106(P2009−258106)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】