説明

基板収納容器

【課題】基板の製造条件、検査結果、検査データ等の基板情報を表示できる基板収納容器を提供する。
【解決手段】基板収納容器20は、被処理基板もしくは処理済基板10iを収納する容器本体22と、前記処理済基板10iに関する情報を受信する受信装置24と、前記容器本体に設けられ、前記受信装置24が受信した前記処理済基板10i情報を表示する情報表示装置としての表示パネル26とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を収納する基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶パネルや有機ELの製造において、ガラス基板上に素子を形成する方法が行われている。その中で、有機EL素子の成膜や封止等は真空中あるいは不活性ガス雰囲気中で行われることが多い。このような密閉チャンバー内で基板を製造する場合は、複数枚のガラス基板を収納可能な基板収納容器を用い、製造ラインの各工程を流動させる。そして、製造ラインでの流動の完了後に、作業者が当該ガラス基板の製造条件もしくは検査結果データ等の基板情報に基づいて分類もしくは選別作業等の処理を行う。
【0003】
この基板情報の表示方法として、検査済のウェハをウェハ収納用カセットに収納する場合、当該ウェハの良品もしくは不良品の情報に基づいて、ウェハのオリフラあるいはノッチの方向を異ならせて収納する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−135305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したウェハ収納方法では、ウェハ収納用カセットに収納されるウェハの収納方向を、良品基板もしくは不良品基板ごとに、変換させる方向変換装置が必要になる。そのため、装置が複雑になる、大型になってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
(適用例1)被処理基板もしくは処理済基板を収納する容器本体と、前記処理済基板に関する情報を受信する情報受信装置と、前記情報受信装置が受信した前記情報を表示する情報表示装置と、を有することを特徴とする基板収納容器。
【0008】
この構成によれば、基板収納容器は、収納される処理済基板に関する情報を、情報受信装置で受信して、情報表示装置で表示することができる。そのため、作業者は、基板収納容器内を確認することなしに基板収納容器に設けられた情報表示装置により、処理済基板に関する情報を確認することができる。従って、基板の収納方向を転換させる装置が不要になり、装置が複雑化、大型化することを防ぐことができる。
【0009】
(適用例2)前記情報表示装置は、前記容器本体に設けられ、収納される前記処理済基板に関する情報を表示する表示パネルを有することを特徴とする上記基板収納容器。
【0010】
この構成によれば、処理済基板に関する情報は、容器本体に設けられた表示パネルにより表示され、作業者は、表示パネルにより、複数の基板情報を一時に認識することができる。従って、作業者は、複数の基板情報に基づいて分類作業を行うことができ、作業の精度を向上させやすくすることができる。
【0011】
(適用例3)前記情報表示装置は、前記容器本体に設けられ、収納される前記処理済基板に関する情報を表示する表示灯を有することを特徴とする上記基板収納容器。
【0012】
この構成によれば、処理済基板に関する情報は、容器本体に設けられた表示灯からなる情報表示装置により表示され、作業者は、表示灯により基板に関する情報を視覚的に認識し、分類作業を行うことができる。従って、視認性に優れた情報表示装置により、分類作業の精度を向上させやすくすることができる。
【0013】
(適用例4)前記表示灯は、収納される前記処理済基板と一対一に対応し、前記処理済基板の情報を、点灯色あるいは点灯状態により表示することを特徴とする上記基板収納容器。
【0014】
この構成によれば、容器本体に収納された処理済基板と容器本体に設けられた表示灯とが一対一に対応されている。さらに収納された処理済基板に関する情報を、その処理済基板と対応する表示灯の点灯色と点滅等の点灯状態との組合せで表示することができる。そのため、処理済基板に対して複数の基板情報を表示することができるとともに、処理済基板の特定がしやすくなる。従って、分類作業の精度を向上させやすくすることができる。
【0015】
(適用例5)前記処理済基板に関する前記情報は、前記被処理基板に対して処理を行う装置から送信されることを特徴とする上記基板収納容器。
【0016】
この構成によれば、基板収納容器は、処理済基板に関する処理条件を受信して処理条件の適否もしくは結果を表示することができる。そのため、本情報に基づいて次工程への投入条件を決定する等の細かな分類作業が可能になる。
【0017】
(適用例6)前記処理済基板に関する前記情報は、前記処理済基板に対して検査を行う装置から送信されることを特徴とする上記基板収納容器。
【0018】
この構成によれば、基板収納容器は、処理済基板に関する検査結果を受信して、検査結果を表示することができる。そのため、処理済基板に関する良品もしくは不良品の分類作業が容易になる。
【0019】
(適用例7)前記情報受信装置は、前記情報を無線で受信することを特徴とする上記基板収納容器。
【0020】
この構成によれば、情報受信装置は、処理済基板に関する情報を無線で受信することができる。そのため、装置と基板収納容器との配置位置に関わらず、処理済基板の情報を受信することができ、情報表示装置に当該情報を表示することができる。
【0021】
(適用例8)前記情報受信装置は、前記情報を送信する装置と電気的に接続されることにより、前記情報を受信することを特徴とする上記基板収納容器。
【0022】
この構成によれば、基板収納容器が装置間を搬送された場合でも、情報受信装置は、適所でコネクタ等により接続され、その処理工程における基板情報を受信することができる。そのため、ノイズ等に影響されず、処理済基板に関する情報を受信することができる。
【0023】
(適用例9)前記容器本体に収納される前記被処理基板もしくは処理済基板は、フラットパネル製造用の基板であることを特徴とする上記基板収納容器。
【0024】
この構成によれば、フラットパネルの製造において、装置構成を複雑または大型にすることなしに、収納される処理済基板の情報を表示できる基板収納容器を提供することができる。
【0025】
(適用例10)前記容器本体に収納される前記被処理基板もしくは処理済基板は、有機エレクトロルミネッセンス製造用の基板であることを特徴とする上記基板収納容器。
【0026】
この構成によれば、有機エレクトロルミネッセンスの製造において、装置構成を複雑または大型にすることなしに、収納される処理済基板の情報を表示できる基板収納容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1実施形態)
第1実施形態を、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)装置用の基板を収納する基板収納容器を例にとり、図面に基づいて説明する。なお、図面では、説明を分かりやすくするために、一部を省略したり、各構成等を誇張して図示している。
【0028】
(有機EL装置の構造)
まず、有機EL装置の概略構造を、図1を参照して説明する。図1は、有機EL装置の構造を示す概略断面図である。
図1に示すように、有機EL装置100は、基板10上に、陽極としての複数の画素電極120が形成されている。各画素電極120は、それぞれに図示しない独立した配線を介して、図示しないデータ信号出力駆動回路に接続されている。そして、このデータ信号出力駆動回路から出力された描画データ信号が、画素電極120に供給されるようになっている。なお、画素電極120は、基板10上に、平面視で縦横方向に所定の間隔をあけてマトリクス状に形成されている。
【0029】
また、画素電極120の周囲には、これら画素電極120を囲むように隔壁としてのバンク122が形成されている。このバンク122によって、基板10上には、画素電極120を囲む複数の凹状の領域が形成されている。本実施形態においては、凹状の領域は矩形形状であり、それぞれの領域が1つの画素領域140に相当する。
【0030】
また、凹状の領域の底部の画素電極120から順に、正孔注入層128と発光層130とが積層されている。正孔注入層128は、例えば、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、または、これらのドーピング体等の有機材料から形成され得る。発光層130は、例えば、赤色、緑色、青色に発光する低分子の有機発光色素や高分子発光体、即ち、各種の蛍光物質や燐光物質等の発光性を具備した有機材料から形成され得る。
【0031】
また、有機EL装置100には、発光層130とバンク122とを覆う陰極132が形成されている。この陰極132は、図示しないデータ信号出力駆動回路に接続されている。さらに、バンク122、正孔注入層128、発光層130、画素電極120、陰極132は、封止部材134によって封止されている。
【0032】
有機EL装置100は、1つの画素領域140において、画素電極120と陰極132との間に、画素電極120を正側とし陰極132を負側とする電位差が生じると、発光層130が発光する。この発光は、正孔注入層128から注入された正孔と、陰極132からの電子とが、発光層130で結合することによって生じる。
【0033】
本実施形態における有機EL装置100は、発光層130で発光した光を画素電極120側から出射する、いわゆるボトムエミッション型が採用されている。そのため、基板10および画素電極120は、それぞれ光を透過可能な材料で構成されている。基板10の材料には、例えば、ガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン等が好適に用いられる。画素電極120の材料には、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)等が好適に用いられる。
【0034】
(有機EL装置の製造方法)
ここで、有機EL装置100の製造方法について、図2を参照して説明する。図2は、有機EL装置100の製造の流れを説明する図である。
有機EL装置を形成する工程は、図2に示すように、画素電極形成工程S1と、バンク形成工程S2と、正孔注入層材料塗布工程S3と、正孔注入層材料乾燥工程S4と、発光層材料塗布工程S5と、発光層材料乾燥工程S6と、陰極形成工程S7と、封止工程S8とを有している。
【0035】
図2に示すように、画素電極形成工程S1では、基板10上に、複数の画素電極120を、例えば、スパッタリング技術等を活用して形成する。このとき、データ信号出力駆動回路に接続される配線も形成される。
次いで、バンク形成工程S2では、基板10上に、例えば、スクリーン印刷技術やフォトリソグラフィ技術等を活用してバンク122を形成する。このとき、基板10上には、画素電極120を囲む凹状の画素領域140が形成される。
【0036】
正孔注入層材料塗布工程S3では、例えば、液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドから、正孔注入層材料を、バンク122によって囲まれた領域に塗布する。正孔注入層128を形成する液状の有機材料として、例えば、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液等が好適に用いられる。塗布された材料は、領域内に濡れ広がる。ここで、領域内の基板10の表面が親液性を有していれば、材料が均一に濡れ広がりやすくなるので好ましい。
【0037】
親液性を持たせるために、基板10に酸素ガスとフロロカーボンガスプラズマの連続プラズマ処理を行い、基板10を親液化させるとともに、画素電極120を親液化させてもよい。プラズマを発生する装置としては、真空中でプラズマを発生する装置でも、大気中でプラズマを発生する装置でも同様に用いることができる。
【0038】
ここで、前述したバンク122が撥液性を有していれば、材料を領域内にせき止めやすくなるので好ましい。バンク122に撥液性を持たせるために、感光性ポリイミドを用いてバンク122を形成して、基板10に酸素ガスとフロロカーボンガスプラズマの連続プラズマ処理を行ってもよい。これにより、バンク122の材料の感光性ポリイミドは表面が撥液化され、撥液性を有するバンク122が形成される。なお、親液および撥液処理は、バンク形成工程S2の後に設けることができる。
【0039】
正孔注入層材料乾燥工程S4では、基板10を加熱装置(ヒータ等)により加熱し、塗布された材料を乾燥固化させ、正孔注入層128を形成する。本実施形態では、加熱条件として、大気環境下または不活性ガス環境下で、加熱温度を約200℃とし、加熱時間を10分とした。これらの条件に加え、大気圧より低い圧力環境下(減圧環境下)で加熱すれば、溶媒の除去が促進されるので、加熱時間を短縮することができる。
このようにして、材料が乾燥すると正孔注入層128が完成する。
【0040】
発光層材料塗布工程S5では、例えば、液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドから、発光層形成材料を、バンク122によって囲まれた正孔注入層128の上に塗布する。発光層130を形成する液状の有機材料として、例えば、ポリアリールビニレン系やポリフルオレン系等の共役系高分子や、クマリン系、ペリレン系、ピラン系等の蛍光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の高分子中に溶解させ、さらに、これをキシレン等の溶媒に溶解させたものが好適に用いられる。発光層形成材料は、領域内の正孔注入層128の上に濡れ広がる。
【0041】
発光層材料乾燥工程S6では、基板10を加熱装置(ヒータ等)により加熱し、塗布された材料を乾燥固化させ、発光層130を形成する。本実施形態では、加熱条件として、大気環境下または不活性ガス環境下で、加熱温度を約200℃とし、加熱時間を10分とした。これらの条件に加え、大気圧より低い圧力環境下、すなわち(減圧環境下)で加熱すれば、溶媒の除去が促進されるので、加熱時間を短縮することができる。
このようにして、発光層形成材料が乾燥すると、発光層130が完成する。
【0042】
その後、陰極形成工程S7では、バンク122および発光層130上に、LiF層、Ca層、Al層等を、例えば、蒸着方法等により積層し、陰極132を形成する。
そして、封止工程S8では、バンク122、正孔注入層128、発光層130、画素電極120、陰極132を、封止部材134で封止する。このような工程を経て、図1に示す有機EL装置100が完成する。
【0043】
(有機EL装置の製造ラインについて)
有機EL装置100の製造ラインの概略を、図3を参照して説明する。図3は、有機EL装置の製造ラインの概略を説明する図である。
【0044】
有機EL装置100の製造ライン200は、図3に示すように、洗浄装置202と、スパッタリング装置204と、スクリーン印刷装置206と、プラズマ発生装置208と、液滴吐出装置210と、加熱装置212と、蒸着装置214と、封止部形成装置216と、搬送装置218と、検査装置220a,220bとを備えている。本製造ライン200は、上述の有機EL装置100の製造方法を実現できる1つの例である。
【0045】
有機EL装置100を製造するためには、基板10を洗浄装置202で洗浄し、次いで、スパッタリング装置204、スクリーン印刷装置206で、図1に示す画素電極120、配線およびバンク122を形成する。ここで、検査装置220aで、処理された基板10の検査を行う。次いで、プラズマ発生装置208で、バンク122に囲まれた領域の親液処理およびバンク122の撥液処理を行う。
【0046】
次いで、液滴吐出装置210で正孔注入層材料を、バンク122によって囲まれた領域に塗布する。その後、加熱装置212で基板10を加熱し、塗布された正孔注入層材料を乾燥させ正孔注入層128を形成する。次いで、液滴吐出装置210で発光層材料を、バンク122によって囲まれた正孔注入層128の上に塗布する。その後、加熱装置212で基板10を加熱し、塗布された発光層材料を乾燥させ発光層130を形成する。
【0047】
次いで、蒸着装置214で、バンク122および発光層130上に、LiF層、Ca層、Al層等を、蒸着方法により積層し、陰極132を形成する。さらに、封止部形成装置216で、バンク122、正孔注入層128、発光層130、画素電極120、陰極132を、封止部材134で封止する。このように各装置を用いて、有機EL装置100を製造する。
【0048】
また、上述の製造ライン200の中間には検査装置220a,220bが設けられている。本実施形態では、プラズマ発生装置208で基板10を処理する前に、それ以前の工程で形成された画素電極120、配線、バンク122の形成状況を検査する検査装置220aが設けられている。なお、この検査はスパッタリング装置204での処理の後に行ってもよい。
さらに、加熱装置212により基板10に塗布された材料を乾燥し固化させる前に、液滴吐出装置210が塗布した正孔注入層材料もしくは発光層材料の塗布状況を検査する検査装置220bを設けている。なお、この検査装置220bは、液滴吐出装置210と一体に設けられており、液滴吐出装置210から基板10に正孔注入層128および発光層130の形成材料を塗布しながら、基板10を検査することもできる。
【0049】
処理される基板10は、各装置間を搬送装置218によって搬送される。しかしながら、例えば、プラズマ発生装置208は、真空環境下でプラズマを発生させる。また、例えば、加熱装置212は、不活性ガス環境および減圧環境下で基板10を加熱すれば、品質が安定し、溶媒の除去が促進される。このように有機EL装置100の製造装置は、特定環境下で動作されるため、密閉チャンバー内に設置されている場合がある。
そのため、各装置間の基板10の搬送は、基板10単体で行う場合と一定枚数の基板10を基板収納容器にストックさせ、基板収納容器ごと搬送させる場合とがある。
【0050】
図3に示す製造ライン200では、スクリーン印刷装置206とプラズマ発生装置208との間、プラズマ発生装置208と液滴吐出装置210との間、および液滴吐出装置210と加熱装置212との間は、基板収納容器に複数枚の基板10を収納させ搬送もしくは移動させる。
または、各製造工程が終了したときもしくは検査工程において、発生した不良品を排除する場合がある。この場合は、作業者が、処理済もしくは検査済の基板10が収納された基板収納容器を、製造ライン200外に運搬し、分類仕分け作業を行う。
また、製造工程の各所で基板10をストックして、製造ライン200の流れを調整する場合もある。このような場合にも、基板収納容器に複数枚の基板10を収納させ、必要に応じ製造ライン200に投入する。
【0051】
(基板収納容器について)
基板10を収納する基板収納容器を、図4、図5を参照して説明する。図4は、基板収納容器の外観斜視図である。図5は、基板収納容器を用いたシステムの実施の形態を示すブロック図である。
【0052】
図4に示すように、基板収納容器20は、容器本体22と、情報受信装置としての受信装置24と、情報表示装置としての表示パネル26とを有している。
容器本体22は、底板28と天板30と複数の支柱部32とを有し、底板28と天板30とが支柱部32により連結され、箱状に構成されている。支柱部32には、基板10を保持する保持部34が、一定の間隔をあけて複数設けられている。箱状に形成された容器本体22は、1つの側面部が開放されており、基板搬入口36となっている。
【0053】
そのため、基板10は、基板搬入口36から、底板28もしくは天板30とほぼ平行な状態で容器本体22内に搬送され、支柱部32に設けられた保持部34に周辺部を保持され収納される。本実施形態においては、基板収納容器20は、基板10を最大10枚収納できるように構成されている。容器本体22の天板30には可搬用の取っ手38が設けられている。また、底板28の下部には、図3に示す搬送装置218に設けられた図示しない容器受け部と係合する図示しない係合部が設けられている。
【0054】
このように構成されていることによって、上述の各装置で処理された基板10が収納された基板収納容器20を、基板収納容器20の係合部が搬送装置218の容器受け部と係合することによって、搬送装置218で基板収納容器20を各装置に搬送することができる。また、必要があれば、作業者が、基板収納容器20の取っ手38を用い手動で可搬できるようになっている。
【0055】
図5に示すように、受信装置24は、無線で基板情報を受信する無線用受信機であり、受信装置24は、アンテナ40と、制御装置42と、メモリ44と、電源46とを備えている。アンテナ40は、処理済の基板10を検査する検査装置220a,220b等からの無線信号を受信するために用いられる。制御装置42は、アンテナ40を介して無線信号を受信し、それに基づく検査データおよび結果をメモリ44に書き込む。メモリ44は、書き換え可能な不揮発メモリであって、例えば、強誘電体メモリであるFeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)が好適に用いられる。メモリ44は、処理済の基板10の検査データおよび結果等の基板情報を記録する。
なお、受信装置24は、図4に示す容器本体22の基板搬入口36以外の側面の底板28近傍に設けられている。
【0056】
表示パネル26は、図4に示す天板30の上面の基板搬入口36側上面に設けられている。また、表示パネル26は、液晶表示装置等から構成されていて、制御装置42と電気的に接続されており制御装置42からの制御信号に応じて基板情報等の表示を行う。
電源46は、着脱可能な一次電池、二次電池、太陽電池等が好適に用いられ、制御装置42、メモリ44、表示パネル26に電力を供給する。
【0057】
(基板情報の表示システムについて)
ここで、基板情報の表示システムについて、上述の図5および図6を参照して説明する。図6は、基板収納容器20の表示パネル26に表示される基板情報の例を示す図である。
なお、ここでは、図3に示す液滴吐出装置210と一体に構成された検査装置220bから加熱装置212に、基板10が、基板収納容器20に収納され搬送される場合を例にとり説明する。
【0058】
図5に示すように、検査装置220bは、アンテナ224と、制御部226と、検査部228とを備えている。
検査装置220bは、液滴吐出装置210で塗布された正孔注入層材料もしくは発光層材料の塗布状況を、液滴吐出装置210に備えられた図示しない液滴吐出ヘッドから吐出される正孔注入層材料または発光層材料の吐出状況を代用特性として検査する装置である。
【0059】
検査部228は、撮像装置230と、重量測定装置232とを備えている。撮像装置230は、液滴吐出ヘッドから吐出される液滴の飛翔状況を撮影して、液滴の飛行曲りまたはドット抜け等の吐出不良を検査する。重量測定装置232は、液滴吐出ヘッドから吐出される液滴の重量を測定する。
【0060】
制御部226は、PC等のコンピュータであって、検査部228で得られた検査データに基づいて、液滴吐出ヘッドから吐出される液滴の重量が規定値範囲内にあるか否か、液滴の飛行曲り量が規定値範囲内にあるか否か、ドット抜けがあるか否か等に基づき、検査対象である基板10の良否およびランクを判断する。そして、制御部226は、検査データおよび検査結果等を無線信号として、アンテナ224を介して受信装置24に送信する。また直接受信装置24へ送信するのではなく、通信装置を備えた搬送装置218を介して情報を送信しても良い。
【0061】
なお、検査済の基板10は、図示しない基板搬入装置により、図4に示す基板収納容器20の基板搬入口36より搬入され、容器本体22に設けられた保持部34に1枚ずつ保持され、基板収納容器20に順次収納される。このとき、基板10は、例えば、基板収納容器20の底板28側から順に搬入され、保持された底板28からの順番により、基板10が特定される。本実施形態においては、基板収納容器20は、基板10を最大10枚収納できるように構成されているため、基板10は、底面側から基板10i(iは、1から10までの整数)として特定される。
【0062】
検査装置220bから送信された基板10iの検査データおよび検査結果は、基板10iが収納された基板収納容器20の受信装置24に受信される。受信された基板10iの検査データおよび検査結果は、メモリ44に書き込まれるとともに、制御装置42から、表示信号として表示パネル26に送られる。表示パネル26に送られた基板10iの検査データおよび検査結果は、表示パネル26に表示される。
【0063】
このようにして、液滴吐出装置210で液滴が塗布された基板10iは、基板収納容器20に収納され、検査装置220bで検査され良否が判定された結果が表示パネル26に表示されて、加熱装置212に搬送される。
【0064】
加熱装置212に搬送された基板収納容器20の表示パネル26には、収容される10枚の基板10iの検査データおよび検査結果が表示される。図6に示す表示例では、収容される基板10iがNo.iとして特定され、その基板10iの基板情報として、判定された結果およびランク、検査データとしての吐出重量、飛行曲り、ドット抜けの有無が表示される。
【0065】
加熱装置212において、作業者は、表示パネル26の表示内容に基づいて良品および不良品の分類を行う。図6に示す表示例では、No.9として特定された基板109が不良品として排除され、それ以外の9枚の基板10iが加熱処理される。排除された基板109は、そのランクもしくは検査データに基づいて、廃却されるか、修理されるかを判断され、別の基板収納容器20に移し替えられる。
【0066】
以下、実施形態の効果を記載する。
【0067】
(1)本実施形態における基板収納容器20は、検査装置220bにより検査された基板10iの検査結果および検査データを、受信装置24で受信し、表示パネル26で表示することができる。検査結果および検査データが表示された基板10iは、基板収納容器20に収納される場所により特定されることができる。そのため、作業者は、基板収納容器20内を確認することなしに基板収納容器20に設けられた表示パネル26の表示内容により、検査済の基板10iに関する情報を確認することができ、その情報に基づいて、分類作業を実施することができる。
【0068】
(2)また、従来の、良品基板もしくは不良品基板ごとに収納されるウェハ等の基板の収納方向を異ならせて収納する基板収納容器と比較して、収納方向を変換させる方向変換装置が不要になり、装置が複雑もしくは大型になってしまうことを防止できる。
【0069】
(3)基板収納容器20の表示パネル26は、基板10iの良否情報以外にも判定ランク、および、検査データとして吐出重量、飛行曲り、ドット抜けの有無等の複数の情報を表示することができる。そのため、不良品の排除のみならず、修理品もしくは製造装置への再投入品等の細かな分類作業を実現することができる。この結果、生産性向上に寄与できる。
【0070】
(4)基板収納容器20は、表示パネル26と電源46とを有しているため、基板収納容器20を装置が設置されている場所と異なる場所に移動しても、基板収納容器20単体で、収納された基板10iに関する情報を確認することができる。そのため、生産の自由度を向上させることができる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図7を参照して説明する。図7は、第2実施形態にかかる基板収納容器の概略斜視図である。なお、この第2実施形態においては、前記第1実施形態と同じ構成部材についてはその符号を等しくし、その詳細な説明を省略する。
【0072】
図7に示すように、第2実施形態にかかる基板収納容器20aは、情報表示装置として10個の表示灯50i(iは1から10までの整数)からなる表示部52を有している。基板収納容器20aのその他の構成部材である容器本体22と、受信装置24とは第1実施形態にかかる基板収納容器20と同様である。
10個の表示灯50iは、容器本体22の基板搬入口36近傍の支柱部32に底板28側から天板30側に向かって列状に設けられている。表示灯50iは、容器本体22の10個の保持部34に収納される基板10iと一対一に対応するように構成されている。また、表示灯50iは、LED等から構成されており、図5に示す制御装置42と電気的に接続されており、制御装置42からの制御信号に応じて、例えば、青色、赤色、黄色等の複数色に点灯する。
【0073】
前述の検査装置220bにより検査され良品か不良品か判定された基板10iは、基板収納容器20aの基板搬入口36より搬入され、容器本体22に設けられた保持部34に1枚ずつ保持され、基板収納容器20aに順次収納される。このとき、検査装置220bから送信された基板10iの判定結果は、基板10iが収納された基板収納容器20aの受信装置24で受信される。受信された基板10iの判定結果は、メモリ44に書き込まれるとともに、制御装置42から、表示信号として表示部52に送られる。表示部52に送られた基板10iの判定結果は、良品もしくは不良品の区分に基づき、基板10iの収納位置に対応する表示灯50iを所定の色に点灯させる。本実施形態では、表示灯50iは、例えば、良品の場合は青色に、不良品の場合は赤色に点灯する。
【0074】
すなわち、基板収納容器20aの表示部52は、収容される10枚の基板10iの判定結果を、表示灯50iの点灯色により表示する。図7に示す表示例では、表示灯502、506が赤色に点灯し、その他の表示灯50iが青色に点灯している。
作業者は、作業場所において、表示灯50iの点灯色に基づいて良品および不良品の分類を行う。図7に示す表示例では、赤色に点灯している表示灯502,506に対応する基板102,106が不良品として排除される。
【0075】
本実施形態では、表示灯50iが、良品および不良品の区分にあわせ、青色、赤色の2色に点灯する場合について説明したがこれに限定されない。
良否判定以外の表示内容を増やして、表示内容に対応する点灯色を増やすことにより表示してもよい。また、表示灯50iの点灯状態を、例えば、連続点灯、消灯、点滅、周期を持った間欠点灯等に変化させてもよい。この場合には、例えば、良品、不良品以外にも、要修理品、製造ライン200への再投入品等を表示できる。
【0076】
以下、第2実施形態の効果を記載する。
【0077】
(1)第2実施形態の基板収納容器20aにおいて、収容される10枚の基板10iの判定結果が、表示部52の表示灯50iの点灯色および点灯状態により表示される。そのため、作業者は容易に基板10iの判定結果を認識できる。すなわち、視認性に優れた表示部52を有する基板収納容器20aを提供することができる。
【0078】
(2)10個の表示灯50iは、容器本体22の支柱部32に列状に設けられているとともに、容器本体22の10個の保持部34に収納される基板10iと一対一に対応するように構成されている。そのため、基板10iの判定結果は、当該基板10iが収納される収納位置近傍に個別に表示される。その結果、作業者による基板の排除間違い等のミスが低減され、信頼性の高い分類作業が実施できる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば、上記実施形態以外の変形例は以下の通りである。
【0080】
(変形例1)
前述の実施形態では、基板収納容器20に収納される基板10iについて、その基板10iを検査した検査装置220a,220bから検査結果および検査データが、基板収納容器20の受信装置24に送信される場合を例にとり説明したが、これに限定されない。
【0081】
図3に示す有機EL装置100の製造ライン200を構成する各装置から、その基板10iを処理したときの処理条件や処理に関する情報を送信してもよい。例えば、液滴吐出装置210から送信される場合は、基板10iに液滴が吐出されるときの液滴吐出ヘッドの駆動波形の種類、液滴の吐出時の周辺環境、吐出される液状体のロットNo、等を基板収納容器20の受信装置24に送信する。
受信された基板10iの上記データは、受信装置24のメモリ44に書き込まれるとともに、所定の項目が表示信号として表示パネル26に送られ、表示部に表示される。
【0082】
このようにすることにより、製造ライン200を流動する基板10iの製造履歴が、受信装置24のメモリ44に書き込まれ、保存される。そのため、製造工程において、歩留低下もしくは不良が発生した場合、その不良原因の解析に製造履歴等の情報を有効に活用することができる。
【0083】
また、基板収納容器20の受信装置24に送信する情報として、製造される有機EL装置100の型番や品質ランクや流動させる製造上の優先順位等を送信してもよい。送信された情報は、受信装置24のメモリ44に書き込まれるとともに、所定の項目が表示信号として表示パネル26に送られ、表示部27に表示される。そのため、多品種少量生産ラインにおいても、作業者による細かな仕分け、分類が可能になり、生産性の向上に寄与できる。
【0084】
(変形例2)
前述の実施形態では、受信装置24が、無線で基板情報を受信する無線用受信機である場合を例にとり説明したが、これに限定されない。
基板収納容器の変形例2を示す図である図8に示すように、基板収納容器20cの受信装置24aに接続コネクタ60を設けてもよい。この場合、基板収納容器20cが、図3に示す各装置または検査装置220a,220bに搬送される時に、各々の装置に設けられた接続ケーブル240と接続コネクタ60とを接続させ、その装置で処理もしくは検査された情報を装置から基板収納容器20cの受信装置24aに送信する。
【0085】
この構成によれば、基板収納容器20cは、適所で受信装置24aの接続コネクタ60が装置の接続ケーブル240により接続されその処理工程における基板情報を受信し、表示パネル26で表示することができる。従って、各装置が発生するノイズ等に影響されず、確実に基板情報を受信できる基板収納容器20cを提供することができる。
【0086】
(変形例3)
前述の実施形態では、受信装置24が、電源46を有している場合を例に説明したが、これに限定されない。変形例2に示すように、基板収納容器20cの受信装置24aに接続コネクタ60を設けて、図3に示す各装置または検査装置220a,220bと接続ケーブル240により接続される場合は、各装置または検査装置220a,220bから電力が供給されてもよい。
【0087】
(変形例4)
前述の実施形態では、表示パネル26が、液晶表示装置等から構成されている場合を例にとり説明したが、これに限定されない。表示パネル26は、いわゆる電子ペーパーが好適に用いられる。電子ペーパーは、表示内容を電気的に書き換えることができ、バックライトを用いないため、液晶表示装置等に対して消費電力が少なく、電源46の切断後も一定期間表示内容を維持できる。そのため、基板収納容器20が内部電源を有していない場合でも、表示パネル26に表示される基板情報等を一定期間表示することができる。
【0088】
(変形例5)
前述の実施形態では基板収納容器20aは、情報表示装置として表示パネル26もしくは表示灯50iからなる表示部52のどちらを有している場合について説明したが、これに限定されない。表示パネル26および表示灯50iからなる表示部52の双方を有していてもよい。この場合、さらに多岐にわたる情報を表示することができる。
【0089】
前述の実施形態では、基板収納容器20が、基板10iを最大10枚収納できる場合を例にとり説明したがこれに限定されず、基板10iは、1枚でもよいし複数枚であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】第1実施形態にかかる有機EL装置の構造を示す概略断面図。
【図2】有機EL装置の製造の流れを説明する図。
【図3】有機EL装置の製造ラインの概略を説明する図。
【図4】基板収納容器の外観斜視図。
【図5】基板収納容器を用いたシステムの実施の形態をしめすブロック図。
【図6】基板収納容器の表示パネルに表示される基板情報の例を示す図。
【図7】第2実施形態にかかる基板収納容器の概略斜視図。
【図8】変形例2の基板収納容器を示す図。
【符号の説明】
【0091】
10,10i…基板、20,20a,20c…基板収納容器、22…容器本体、24…受信装置、26…表示パネル、32…支柱部、34…保持部、40…アンテナ、50i…表示灯、60…接続コネクタ、100…有機EL装置、200…製造ライン、210…液滴吐出装置、212…加熱装置、218…搬送装置、220a,220b…検査装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板もしくは処理済基板を収納する容器本体と、
前記処理済基板に関する情報を受信する情報受信装置と、
前記情報受信装置が受信した前記情報を表示する情報表示装置と、を有することを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記情報表示装置は、前記容器本体に設けられ、
収納される前記処理済基板に関する情報を表示する表示パネルを有することを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記情報表示装置は、前記容器本体に設けられ、
収納される前記処理済基板に関する情報を表示する表示灯を有することを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記表示灯は、収納される前記処理済基板と一対一に対応し、
前記処理済基板の情報を、点灯色あるいは点灯状態により表示することを特徴とする請求項3に記載の基板収納容器。
【請求項5】
前記処理済基板に関する前記情報は、前記被処理基板に対して処理を行う装置から送信されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板収納容器。
【請求項6】
前記処理済基板に関する前記情報は、前記処理済基板に対して検査を行う装置から送信されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板収納容器。
【請求項7】
前記情報受信装置は、前記情報を無線で受信することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基板収納容器。
【請求項8】
前記情報受信装置は、前記情報を送信する装置と電気的に接続されることにより、前記情報を受信することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基板収納容器。
【請求項9】
前記容器本体に収納される前記被処理基板もしくは処理済基板は、フラットパネル製造用の基板であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の基板収納容器。
【請求項10】
前記容器本体に収納される前記被処理基板もしくは処理済基板は、有機エレクトロルミネッセンス製造用の基板であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−70952(P2009−70952A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236294(P2007−236294)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】