説明

基板搬送装置および基板貼り合わせ装置

【課題】一般的に基板ホルダは基板に比べて非常に重いので、基板ホルダを基板搬送装置で搬送しようとすると、搬送装置の基台部から先端に位置する把持部にかけての伸縮アームに自重撓みを生じてしまう。自重撓みを生じると基板ホルダが水平に保たれず、搬送先であるステージに対して傾斜した姿勢となってしまう。
【解決手段】基板を保持する基板ホルダを搬送する基板搬送装置であって、基板ホルダを載置し固定する載置部と、載置部を水平軸周りに揺動可能に支持する回転軸と、回転軸に対して載置部と一体的に揺動するバランスウェイトと、回転軸を支持するアーム部と、アーム部を回転させることにより、載置部、回転軸およびバランスウェイトを一体的に上下反転させる反転部とを備え、バランスウェイトは、反転部によりアーム部が上下反転されても、載置部が固定する基板ホルダが水平を保つように設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送装置および基板貼り合わせ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各々に素子、回路等が形成された半導体基板を積層して製造された積層型半導体装置がある(特許文献1参照)。半導体基板を積層する場合には、基板ホルダに保持された一対の半導体基板を、精密に位置決めして積層した後、基板全体を加熱、加圧して接合させる。このとき、一対の半導体基板を位置決めする位置決め装置(特許文献2参照)と、加熱加圧して恒久的な接合を実現する加熱加圧装置(特許文献3参照)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−261000号公報
【0004】
【特許文献2】特開2005−251972号公報
【0005】
【特許文献3】特開2007−115978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に基板ホルダは基板に比べて非常に重いので、基板ホルダを基板搬送装置で搬送しようとすると、搬送装置の基台部から先端に位置する把持部にかけての伸縮アームに自重撓みを生じてしまう。自重撓みを生じると基板ホルダが水平に保たれず、搬送先であるステージに対して傾斜した姿勢となってしまう。これに対し、予め自重撓み量を考慮して、伸縮アームに逆反りを与えておき、基板ホルダが載置されたときに把持部が水平となるように設計することもできる。しかしながら、複数の半導体基板を積層する場合には、互いの回路形成面が対向するように、それぞれ基板を保持する基板ホルダを上下のステージに固定する必要がある。このとき、回路形成面を上向きに保って下ステージに基板ホルダを搬送する場合は水平が保たれるものの、搬送途中で回路形成面を下向きにして上ステージに基板ホルダを搬送する場合は自重撓みに逆ぞり分も加わり、傾斜が拡大してしまう。また、逆反りを与えて自重撓みをキャンセルする場合、基台部に対する基板ホルダの位置が固定されてしまうので、伸縮アームの伸縮量が変わるとやはり水平を保てない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様における基板搬送装置は、基板を保持する基板ホルダを搬送する基板搬送装置であって、基板ホルダを載置し固定する載置部と、載置部を水平軸周りに揺動可能に支持する回転軸と、回転軸に対して載置部と一体的に揺動するバランスウェイトと、回転軸を支持するアーム部と、アーム部を回転させることにより、載置部、回転軸およびバランスウェイトを一体的に上下反転させる反転部とを備え、バランスウェイトは、反転部によりアーム部が上下反転されても、載置部が固定する基板ホルダが水平を保つように設置される。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様における基板貼り合わせ装置は、上記の基板搬送装置を備える。
【0009】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】基板重ね合わせシステムにおいて、基板搬送の様子を示す概略図である。
【図2】基板重ね合わせシステムにおいて、基板搬送の様子を示す概略図である。
【図3】ホルダ体を上方から見下ろした様子を示す斜視図である。
【図4】ホルダ体を下方から見上げた様子を示す斜視図である。
【図5】把持部の概略構成を示す上正面図である。
【図6】揺動体が水平を保つ様子を示す側面図である。
【図7】揺動体が揺動した様子を示す側面図である。
【図8】基板の回路形成面が下向きである状態を示す側面図である。
【図9】基板ホルダ対を載置部に載置した場合の様子を示す側面図である。
【図10】支持アームを傾けてホルダ体を搬入する場合の様子を示す。
【図11】別の例である把持部の概略構成を示す上正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る基板重ね合わせシステムにおいて、基板搬送装置10が基板40と基板ホルダ50を搬送する、基板搬送の様子を示す概略図である。特に、予備位置合わせ装置20から、基板重ね合わせ装置30の下ステージ301へ、基板40と基板ホルダ50を搬送する様子を示す。
【0013】
まず、基板重ね合わせシステムの構成の概略について説明する。基板重ね合わせシステムは、複数の基板を互いの実装面において位置合わせをして重ね合わせるシステムであり、特に半導体基板であるウェハ同士を重ね合わせて3次元実装を行う処理システムのサブシステムとして好適である。本実施形態において基板重ね合わせシステムは、基板搬送装置10、予備位置合わせ装置20および基板重ね合わせ装置30包含する。各装置の各要素は、基板重ね合わせシステム全体の制御および演算を司る制御演算部、または要素ごとに設けられた制御演算部が、統合制御、協調制御を行うことにより動作する。
【0014】
基板搬送装置10は、半導体ウェハである基板40および基板ホルダ50を把持することができる把持部105を備える。基板40は、基板ホルダ50に保持固定されて基板ホルダ50と一体的に搬送され得るが、詳細については後述する。なお、以下において基板40と基板ホルダ50が一体化された状態をホルダ体60とする。
【0015】
基板搬送装置10は、把持したホルダ体60を所定の位置へ所定の姿勢で搬送すべく、駆動機構を備える。駆動機構は、把持部105を重力方向であるZ軸方向に移動させる昇降部101、Z軸に直交するXY平面内で回転させる回転部102、XY平面内で伸縮させる伸縮部103および上下反転させる反転部104から構成される。特に、反転部104は、把持部105を反転させることにより、把持する基板40の回路形成面の向きを上向きと下向きに切り替えることができる。
【0016】
予備位置合わせ装置20は、プリステージ201と複数のリフトピン202を備える。リフトピン202は、例えば、プリステージ201の中心に対して120度ごとに3本配設される。基板搬送装置10は、ホルダ体60をプリステージ201上に搬入する。搬入動作としてはまず、プリステージ201に設置されている複数のリフトピン202がプリステージ201の載置面より突出して受渡面を形成する。次に、基板搬送装置10は、把持部105が把持するホルダ体60をこの受渡面に仮置きし、把持部105を引き抜く。そして、リフトピン202がプリステージ201の内部に退避することにより、ホルダ体60がプリステージ201に載置される。プリステージ201は真空吸着機構を備えており、表面に設けられた複数の吸気孔の作用により基板ホルダ50の裏面が吸引され、ホルダ体60はプリステージ201に固定される。なお、プリステージ201へのホルダ体60の載置は、基板ホルダ50の裏面がプリステージ201の表面と接し、基板40の回路面が上方へ向く姿勢となるように行われる。また、把持部105がプリステージ201に載置されたホルダ体60を把持するまでの動作は、上記の逆順により行われる。
【0017】
上記においては、基板搬送装置10を用いて予備位置合わせ装置20へホルダ体60を搬入する動作について説明したが、基板40と基板ホルダ50の搬入動作はこれに限らない。たとえば、図示しない別の搬送装置が、基板ホルダ50と基板40を順次予備位置合わせ装置20に搬入することにより、プリステージ201上でホルダ体60が形成されるように構成しても良い。
【0018】
予備位置合わせ装置20は、撮像素子を備える観察顕微鏡により基板40の画像データを取得し、これに基づいてXY平面内の中心座標、回転量などを含む基板40の姿勢が検出される。予備位置合わせ装置20で検出された基板40の姿勢に基づいて、基板搬送装置10の搬送パス生成、基板重ね合わせ装置30の位置制御などが実行される。
【0019】
基板重ね合わせ装置30は、互いに対向して上顕微鏡305と下顕微鏡306を備える。上顕微鏡305は筐体の天井フレームに固定され、下顕微鏡306は下ステージ301に設置される。下ステージ301は、六軸調整部302に設置され、制御演算部の制御によりXYZ方向およびθxθyθz方向の6軸方向に移動する。これにより、下ステージ301は、上ステージ303に対して、相対的に精密な位置決めを行うことができる。
【0020】
下ステージ301には、複数のリフトピン304が設けられている。リフトピン304は、例えば、下ステージ301の中心に対して120度ごとに3本配設される。リフトピン304は、下ステージ301からZ軸方向に進退する。ここで、ホルダ体60が、予備位置合わせ装置20から下ステージ301に載置固定されるまでの動作について説明する。予備位置合わせ装置20でホルダ体60を受け取った基板搬送装置10は、予備位置合わせ装置20で基板40の姿勢に基づいて生成された搬送パスに沿って、昇降部101、回転部102および伸縮部103を協調動作させ、ホルダ体60を搬送する。ホルダ体60は、把持部105が予備位置合わせ装置20で把持する時点で基板40の回路形成面が上を向いており、また、下ステージ301には同じく基板40の回路形成面を上に向けて載置されるので、反転部104が反転動作を行うことなく、水平を保ったまま搬送される。
【0021】
次に、複数のリフトピン304が下ステージ301の載置面より突出して受渡面を形成する。基板搬送装置10は、把持部105が把持するホルダ体60をこの受渡面に仮置きし、把持部105を引き抜く。そして、リフトピン304が下ステージ301の内部に退避することにより、ホルダ体60が下ステージ301に載置される。下ステージ301は真空吸着機構を備えており、表面に設けられた複数の吸気孔の作用により基板ホルダ50の裏面が吸引され、ホルダ体60は下ステージ301に固定される。
【0022】
続いて、ホルダ体60が、予備位置合わせ装置20から上ステージ303に載置固定されるまでの動作について説明する。図2は、図1と同様に本実施形態に係る基板重ね合わせシステムの概略図であるが、特に、予備位置合わせ装置20から、基板重ね合わせ装置30の上ステージ303へ、ホルダ体60を搬送する様子を示す。
【0023】
予備位置合わせ装置20でホルダ体60を受け取った基板搬送装置10は、予備位置合わせ装置20で基板40の姿勢に基づいて生成された搬送パスに沿って、昇降部101、回転部102および伸縮部103を協調動作させ、ホルダ体60を搬送する。ホルダ体60は、把持部105が予備位置合わせ装置20で把持する時点で基板40の回路形成面が上を向いており、一方で、上ステージ303には基板40の回路形成面を下に向けて載置される。したがって、生成された搬送パスには、ホルダ体60を反転させる部分が含まれる。把持部105は、このパスに従い、途中で反転部104による反転動作を受けて上下逆の姿勢になる。
【0024】
次に、複数のリフトピン304が下ステージ301の載置面より突出して受渡面を形成する。基板搬送装置10は、把持部105が把持するホルダ体60をこの受渡面に仮置きし、把持部105を引き抜く。そして、リフトピン304が更に上ステージ303に対して伸び、ホルダ体60の裏面を上ステージ303の表面に接触させる。上ステージ303は真空吸着機構を備えており、表面に設けられた複数の吸気孔の作用により基板ホルダ50の裏面が吸引され、ホルダ体60は上ステージ303に固定される。そして、リフトピン304は、下ステージ301の内部に退避する。
【0025】
なお、上記においては、都合上、下ステージ301への載置の後に上ステージへの載置を説明した。しかし、上下のステージのそれぞれに下ステージ301のリフトピン304を共用してホルダ体60を載置固定する場合には、まず上ステージ303への載置を優先して行う。そして、上ステージ303への載置が完了した後に、下ステージ301への載置を行う。また、上ステージ303専用のリフトピン304と、下ステージ301専用のリフトピン304がそれぞれ用意されている場合には、逆の順序であっても良い。ただしこの場合は、下ステージ301に載置されたホルダ体60が、上ステージ303用のリフトピンの動作を阻害しないように、例えば、下ステージ301を上ステージ303に対してXY方向に大きく退避するなどの動作が必要となる。
【0026】
上顕微鏡305は、図示されない制御演算部に接続された撮像素子と、下ステージ301に載置された基板40の一部分の像を撮像素子に結像させる光学系とを備える。同様に、下顕微鏡306は、図示されない制御演算部に接続された撮像素子と、上ステージ303に載置された基板40の一部分の像を撮像素子に結像させる光学系とを備える。上顕微鏡305により下ステージ301に載置された基板40の所定の部分を観察するときには、制御演算部は、その観察部分が上顕微鏡305の視野内に位置するように、六軸調整部302を駆動して下ステージ301を移動させる。下顕微鏡306により上ステージ303に載置された基板40の所定の部分を観察するときには、制御演算部は、その観察部分が下顕微鏡306の視野内に位置するように、六軸調整部302を駆動して下ステージ301を移動させる。なお、上顕微鏡305と下顕微鏡306のそれぞれの光軸は、互いに対向したときに一致するよう予め調整されている。
【0027】
制御演算部は、上顕微鏡305を用いて下ステージ301に載置された基板40に設けられた指標を観察し、下顕微鏡306を用いて上ステージ303に載置された基板40に設けられた指標を観察する。そしてそれぞれの基板40の精確な姿勢を把握する。
【0028】
互いの精確な姿勢を把握すると、これに基づいて下ステージ301を移動することにより、回路形成面である向かい合う面同士を接触させる。そして、向かい合うそれぞれの基板ホルダ50の固定機構を作用させることで、2枚の基板40を挟持した状態で、2つの基板ホルダ50を一体化する。つまり、向かい合う2つのホルダ体60が一体化され、基板ホルダ対を形成する。形成された基板ホルダ対は、基板重ね合わせ装置30から次工程を担う装置へ向けて搬出される。
【0029】
次に、ホルダ体60について説明する。図3は、ホルダ体60を上方から見下ろした様子を示す斜視図である。図では、基板ホルダ50の上面に基板40が保持されている。また、図4は、ホルダ体60を下方から見上げた様子を示す斜視図である。
【0030】
基板ホルダ50は、ホルダ本体51、吸着子52および電圧印加端子54を有して、全体としては基板40よりも径がひとまわり大きな円板状をなす。ホルダ本体51は、セラミックス、金属等の高剛性材料により一体成形される。吸着子52は、強磁性体により形成され、基板40を保持する保持面において、保持した基板40よりも外側である外周領域に複数配される。図の場合、2個を一組として120度毎に合計6個の吸着子52が配されている。電圧印加端子54は、基板40を保持する面の裏面に埋設される。
【0031】
ホルダ本体51は、その保持面において高い平面性を有する。また、ホルダ本体51は、保持した基板40を静電吸着する領域の外側に、ホルダ本体51を表裏に貫通して形成された、それぞれ複数の位置決め穴53を有する。更に、ホルダ本体51は、保持した基板40を静電吸着する領域の内側に、ホルダ本体51を表裏に貫通して形成された、複数の挿通孔55を有する。挿通孔55にはプッシュアップピンが挿通され、基板40を基板ホルダ50から離脱させることができる。
【0032】
位置決め穴53は、プリステージ201等に設けられている位置決めピンに嵌合して、基板ホルダ50の位置決めに利用される。吸着子52は、保持面と略同じ平面内に上面が位置するように、ホルダ本体51に形成された陥没領域に配設される。電圧印加端子54は、ホルダ本体51の裏面に埋め込まれる。電圧印加端子54を介して電圧を供給することにより、基板ホルダ50と基板40との間に電位差を生じさせて、基板40を基板ホルダ50に静電吸着する。予備位置合わせ装置20のプリステージ201、基板重ね合わせ装置30の下ステージ301および上ステージ303にはそれぞれ電圧供給端子が設けられており、基板40と基板ホルダ50の静電吸着を維持できる。ホルダ体60が基板搬送装置10の把持部105に載置されているときについては後述する。
【0033】
下ステージ301に載置するホルダ体60に用いる基板ホルダ50と、上ステージ303に載置するホルダ体60に用いる基板ホルダ50は、若干構成が異なる。具体的には、吸着子52に替えて、吸着子52に対向するように複数のマグネットが配されている。吸着子52とマグネットが結合することにより、2つのホルダ体60が対向して一体化され、基板ホルダ対を形成する。
【0034】
次に、把持部105の構成について説明する。図5は、把持部105の概略構成を示す正面図である。図示するように、把持部105は、反転部104より先端部分全体の構成を指す。反転部104には、反転部104の反転動作に従って一体的に反転する支持アーム109が固定されている。支持アーム109は、コの字上に腕部を伸ばし、その先端に設けられた2つの軸受部113で、反転部104の反転軸に直交する軸周りに回転する回転軸107を回転自在に支持する。回転軸107の、2つの軸受部113で支持された部分の間には、載置部基台108が固定されている。そして、載置部基台108は、回転軸107より先端側に載置部106を片持ちで支持し、反対側にウェイト支持部114を片持ちで支持する。ウェイト支持部114は、位置調整機構115を介してバランスウェイト110を支持する。
【0035】
載置部106には、ホルダ体60が載置された時に基板ホルダ50の裏面と接触する箇所に、複数の吸気孔111が設けられており、基板ホルダ50の裏面が真空引きされてホルダ体60が載置部106に固定される。同じく載置部106には、電圧供給端子112が設けられており、基板ホルダ50に電圧を供給することにより、基板ホルダ50は静電力を発生させて基板40を静電吸着する。
【0036】
このように構成された把持部105は、載置部106、載置部基台108、ウェイト支持部114およびバランスウェイト110が一体的に回転軸107周りに揺動することができる。回転軸107周りに揺動する構造物全体を揺動体と呼ぶ。そして、回転軸107が水平に保たれている状態では、載置部106に載置されたホルダ体60のうち基板ホルダ50の裏面、つまり載置部106と接する面が常に水平となるようにバランスウェイト110が調整されている。すなわち、バランスウェイト110は、位置調整機構115による位置調整を伴って、回転軸107周りに、ホルダ体60を載置した載置部106と釣り合うように調整されている。なお、位置調整機構115による調整は、載置されるホルダ体60の重量が既知であることから、調整されるバランスウェイト110の重量を勘案して、予め回転軸107から所定の距離に対してバランスウェイト110を固定するように行われる。
【0037】
また、反転部104には、制御演算部の制御によってウェイト支持部114方向へ進退する回転規制部116が設けられている。回転規制部116は、載置部106にホルダ体60が載置されていないときに、バランスウェイト110が下方へ回転して、揺動体が垂直姿勢となることを防ぐ。つまり、プリステージ201でホルダ体60を載置部106に載置するときにある程度水平を保ってホルダ体を受け取ることができるように、または、リフトピン304へホルダ体60を引き渡した後に突然バランスを崩さないように設けられる。具体的には、回転規制部116はソレノイドによって構成され、ウェイト支持部114の下部に突き出てウェイト支持部114が下方へ回転することを妨げる。載置部106にホルダ体60が載置されているときには、反転部104の内部に退避し、揺動体の揺動を妨げない。
【0038】
次に、載置部106にホルダ体60が載置されている様子について説明する。図6は、揺動体が水平を保つ様子を示す側面図である。特に、基板40の回路形成面が上向きである状態を示す。また、図7は、揺動体が若干揺動した様子を示す側面図である。
【0039】
ホルダ体60は、プリステージ201で載置部106に載置された直後、または、予備位置合わせ装置20から基板重ね合わせ装置30への搬送途中等において、載置部106と共に回転軸107周りに揺動する。そして、基板搬送装置10が動作を停止している静止時、または非常に遅い速度での移動時には、上述のようにバランスウェイト110は、回転軸107周りにホルダ体60と釣り合うように調整されているので、揺動が収束して、ホルダ体60を構成する基板ホルダ50の裏面が水平となる。
【0040】
なお、軸受部113には、その回転摺動部にビンガム流体が充填されている。これにより、揺動体が揺動を始めるとその動作を妨げないが、一旦静止状態となるとその姿勢を維持しようとする性質を得る。したがって、基板ホルダ50の裏面は、より早くより精確に水平姿勢に収束し、かつ、一旦水平となって静止状態となると、所定の速度よりも遅い速度であれば移動を行っても、揺動せずに水平を保つ。したがって、リフトピン304にホルダ体60を引き渡す場合には、接触直前で基板搬送装置10の動作を一旦停止して基板ホルダ50の裏面を水平にし、その後ゆっくりとリフトピン304に接触させると良い。
【0041】
さらに、載置部106にホルダ体60が載置されている別の様子について説明を続ける。図8は、反転部104が反転して基板40の回路形成面が下向きである状態を示す側面図である。
【0042】
上述のように、ホルダ体60を基板重ね合わせ装置30の上ステージ303に搬送する場合、搬送パスの途中に反転部104を反転させる動作を含む。反転部104が反転動作を行うと、反転部104に固定された支持アーム109も反転する。すると、支持アーム109に支持された回転軸107は、ちょうど2つの軸受部113の位置が入れ替わるように180度回転する。載置部106は、回転軸支持部108を介して回転軸107と一体的に構成されているので、回転軸107が180度回転すると、載置部106も180度回転する。その結果、載置部106の載置面は下向きとなり、吸気孔111により真空吸着されているホルダ体60も下向きとなる。
【0043】
反転動作の後しばらくの間は、揺動体は回転軸107周りに揺動するが、やがて揺動が収束して、図示するような、回路形成面を下向きにした水平姿勢となる。ここで、図6に示す回路形成面が上向きの姿勢であっても、図8に示す回路形成面が下向きの姿勢であっても、支持アーム109の傾きに関わらず、基板ホルダ50の裏面は精確に水平となる。つまり、基板搬送装置10の伸縮部103から反転部104、支持アーム109にかけては、把持部105に対して片持ち支持となるので、特に伸縮部103に自重撓みを生じ、支持アーム109に若干の傾斜を生じるが、回転軸107により揺動自在に支持されている載置部106はその影響を受けない。
【0044】
次に、向かい合う2つのホルダ体60が一体化されて形成された基板ホルダ対を、載置部106に載置固定する場合への対応について説明する。つまり、基板重ね合わせ装置30で下ステージ301に固定されたホルダ体60と、上ステージ303に固定されたホルダ体60の、それぞれの基板40が位置合わせされて重ね合わされた後に、基板重ね合わせ装置30から搬出する場合について説明する。
【0045】
まず、予備位置合わせ装置20からホルダ体60を、それぞれ基板重ね合わせ装置30の下ステージ301、上ステージ303へ搬入する基板搬送装置10と、基板重ね合わせ装置30から基板ホルダ対を搬出する基板搬送装置10を別装置として設けても良い。この場合、載置部106に載置されるのは、ホルダ体60、基板ホルダ対のいずれか一方のみとなるので、バランスウェイト110の位置はそれぞれ一意に決定され、バランスウェイト110は、位置調整機構115により予め固定される。
【0046】
一方、基板重ね合わせ装置30への搬入と、基板重ね合わせ装置30からの搬出を共に1台の基板搬送装置10で行う場合には、位置調整機構115によるバランスウェイト110の固定位置を動的に変更できる構成にする。図9は、この構成を採用した基板搬送装置10の、基板ホルダ対を載置部106に載置固定した場合の様子を示す側面図である。
【0047】
位置調整機構115は、回転軸107からの距離が変化する方向にバランスウェイト110を固定できる箇所を複数有する。固定できる箇所は、少なくとも、載置部106にホルダ体60を載置した場合と、基板ホルダ対を載置した場合のそれぞれで、載置部106と接する基板ホルダ50の裏面が水平姿勢を取る箇所を含む。基板ホルダ対は、2つのホルダ体60により形成されるので、その重量は2倍となる。したがって、水平姿勢となるバランス位置は、ホルダ体60のそれに対して回転軸107から2倍の距離となる。制御演算部は、例えばホルダ体60の搬入完了後に基板ホルダ対の搬出を行う場合には、図9に示すように、位置調整機構115の駆動部を駆動させ、バランスウェイト110を基板ホルダ対用のバランス位置に移動し、固定する。
【0048】
基板の積層は、一枚の基板と一枚の基板を重ね合わせる場合に限らない。つまり、一方の基板、または両方の基板が既に複数枚積層されている場合がある。一般的に、複数の基板が積層されるときには、中間層を形成する基板は積層された後に薄化工程を経て十分に薄く加工されるので、重量的には基板ホルダ50に比較して無視しうる程度である。したがって、基板ホルダ50の裏面の水平精度を中間層の基板を考慮した精度まで求めない場合には、上述の構成で十分である。しかし、中間層の基板を考慮するような、わずかな重量変化にも対応する場合には、バランスウェイト110の位置調整をより精密に行うことが求められる。
【0049】
載置部106に載置されるホルダ体60または基板ホルダ体のわずかな重量変化にも対応する場合には、載置部106内部に傾斜を検知する傾斜センサ117を設け、制御演算部はこの出力に応じて、位置調整機構115を動作させてバランスウェイト110の位置を微調整する。傾斜センサ117には、例えば加速度センサが用いられる。そして、制御演算部は、基板ホルダ50の裏面が接する載置部106の載置面の水平を監視し、載置面が水平を保つように、フィードバック制御によりバランスウェイト110の位置を能動的に変化させる。
【0050】
上述のように構成すれば、支持アーム109の傾きに関わらず、揺動体は水平姿勢をとり、よって基板ホルダ50の裏面は精確に水平を保つことがわかる。したがって、支持アーム109を積極的に傾けて搬入出を行う動作処理も採用し得る。図10は、支持アーム109を傾けてホルダ体60を搬入する場合の様子を示す。
【0051】
基板ホルダ50の裏面は、上述の構成により精確に水平姿勢をとるので、リフトピン304が下ステージ301の載置面より突出して形成する受渡面に対して平行となる。そして、基板搬送装置10は、ホルダ体60をこの受渡面に仮置きし、把持部105を引き抜く。その後、リフトピン304が下ステージ301の内部に下降退避して、ホルダ体60の下ステージ301への載置が完了する。
【0052】
ホルダ体60を上ステージ303へ載置する場合は、リフトピン304は、基板ホルダ50のうち基板40を保持する保持面の周縁部を支持するが、基板ホルダ50の裏面と保持面は互いに平行に加工されているので、基板ホルダ50の裏面が水平な姿勢をとれば、保持面も水平姿勢である。したがって、ホルダ体60を上ステージ303へ載置する場合であっても、リフトピン304が形成する受渡面に対して平行に仮置きすることができる。ホルダ体60が仮置きされると、把持部105が引き抜かれ、リフトピン304が更に上ステージ303に対して伸びて、ホルダ体60の裏面が上ステージ303の表面に接触される。そして、真空吸着機構によりホルダ体60が上ステージ303に固定されると、リフトピン304を下ステージ301の内部に退避させて一連の載置固定を完了する。
【0053】
図11は、別の例である把持部105の概略構成を示す上正面図である。上述の実施例においては、位置調整機構115を用いて、バランスウェイト110を回転軸107に対して位置調整を行った。本実施例においては、バランスウェイト110はウェイト支持部114に対して所定の位置に固定されており、代わりに、載置部106に基板ホルダ50を載置固定する場所を複数設けてある。具体的には、ホルダ体60を載置する場合には、回転軸107に対してより遠い先端部に載置固定し、基板ホルダ対を載置する場合には、ホルダ体60を載置する場所に対して回転軸107からの距離が半分の位置に設けられた中間部に載置固定する。いずれの場所に載置固定した場合でも、揺動体全体ではバランスが取れた状態となり、基板ホルダ50の裏面は、水平姿勢をとることができる。なお、それぞれの載置固定場所には、対応するように吸気孔111と電圧供給端子112が設けられている。このように構成すれば、位置調整機構115を省くことができる。
【0054】
なお、上述の実施形態においては、基板搬送装置10と基板重ね合わせ装置30を組み合わせたシステムの例を説明した。基板重ね合わせ装置30は、複数の基板の位置合わせを行って重ね合わせる装置であるが、重ね合わせ時には若干の圧力を加えて仮接合を行う。また、基板重ね合わせ装置30自体に本加圧を行う機構を組み込めば、本接合を行うこともできる。その意味において、基板重ね合わせ装置30は基板貼り合わせ装置としても機能し得る。したがって、基板搬送装置10を基板貼り合わせ装置に組み込んだ形態であっても上述の実施形態を実現することができる。
【0055】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0056】
10 基板搬送装置、20 予備位置合わせ装置、30 基板重ね合わせ装置、40 基板、50 基板ホルダ、51 ホルダ本体、52 吸着子、53 位置決め穴、54 電圧印加端子、55 挿通孔、60 ホルダ体、101 昇降部、102 回転部、103 伸縮部、104 反転部、105 把持部、106 載置部、107 回転軸、108 載置部基台、109 支持アーム、110 バランスウェイト、111 吸気孔、112 電圧供給端子、113 軸受部、114 ウェイト支持部、115 位置調整機構、116 回転規制部、117 傾斜センサ、201 プリステージ、202 リフトピン、301 下ステージ、302 六軸調整部、303 上ステージ、304 リフトピン、305 上顕微鏡、306 下顕微鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板ホルダを搬送する基板搬送装置であって、
前記基板ホルダを載置し固定する載置部と、
前記載置部を水平軸周りに揺動可能に支持する回転軸と、
前記回転軸に対して前記載置部と一体的に揺動するバランスウェイトと、
前記回転軸を支持するアーム部と、
前記アーム部を回転させることにより、前記載置部、前記回転軸および前記バランスウェイトを一体的に上下反転させる反転部とを備え、
前記バランスウェイトは、前記反転部により前記アーム部が上下反転されても、前記載置部が固定する前記基板ホルダが水平を保つように設置される基板搬送装置。
【請求項2】
前記載置部は、前記回転軸との距離が変化する方向に前記基板ホルダを固定できる位置を複数有する請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
複数設けられる前記載置部のそれぞれに前記基板ホルダに電力を供給する電力供給端子を有する請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記バランスウェイトは、前記回転軸との距離が変化する方向に移動する移動機構を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記基板ホルダの傾きを検知する検知部と、
前記検知部の出力に応じて前記移動機構を制御する制御部と
を有する請求項4に記載の基板搬送装置。
【請求項6】
前記回転軸にビンガム流体を充填した軸受けを備える請求項1から5のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の基板搬送装置を備える基板貼り合わせ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−29240(P2011−29240A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170554(P2009−170554)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】