説明

基板検査装置

【課題】 受光素子の画素サイズと電極パターンの繰り返しピッチとの関係が整数倍でなく、位相ずれを有する場合でも、この位相ずれによる各画素データの信号品質の低下を抑制し、画素サイズに対して微小な異物を高精度に検出できるようにする。
【解決手段】 パターンピッチが300[μm]で画素サイズが14[μm]の場合には、パターンのピッチを画素サイズで除することによって得られるパターン相当の画素数は約21.4である。この画素数に第1の整数として5を乗じると、その値は107となるので、5個のパターンで疑似パターンを形成することによって、疑似パターンと画素との間の相対的な位置関係がほぼ同位相となる。差分データ作成手段30はこの疑似パターンの隣接するもの同士の画素を用いて、差分データVを作成する。しきい値作成手段50は、差分データVから欠陥検出時のしきい値Tを作成する。欠陥検出手段80,90は差分データVとしきい値Tとを比較して欠陥の検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、所定の繰り返しパターンを有する基板、例えば液晶ディスプレイの製造工程においてガラス基板上に異物が付着していないかを検出する基板検査装置に係り、特にパターン比較方式によって欠陥を検出する際の画素データの補正に改良を加えた基板検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)は、CRT(Cathode Ray Tube)に比べて薄型化、軽量化が可能であるため、CTV(Color Television)やOA機器等のディスプレイ装置として採用され、画面サイズも10型以上の大形化が図られ、より一層の高精細化が押し進められている。液晶ディスプレイには、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Neatic)型、及びTFT(Thin Film Transistor)型などの種類がある。TFT型の液晶ディスプレイは、各画素電極基板上にパターン化されたTFTが設けられている。
【0003】基板検査装置は、この画素電極基板上に微小異物が存在しないかどうかを検出するものである。従来の基板検査装置は、電極パターンの設けられたガラス基板上に斜上方からレーザビームを照射し、異物の散乱光を上方より観察し、異物の存在を検出していた。基板検査装置は、基板上に形成された電極パターンなどが繰り返し性(周期性)を有することを利用して異物の存在や各種の欠陥を検出していた。図1は、パターン比較方式によってガラス基板検査を行う場合のCCD受光素子10と結像レンズ11と基板12との位置関係を示す図である。図から明らかなように基板12上の電極パターンは結像レンズ11を介してCCD受光素子10上に結像する。パターン比較方式は、基板上に設けられている電極パターン(TFTパターン及び配線パターン)が繰り返して配列されているので、そのパターンの周期性に注目して、隣接する電極パターン同士を順次比較して、その差画像(濃淡情報)に基づいて異物や各種の欠陥を検出する方式である。
【0004】図2は従来の基板検査装置の概略構成を示す図である。CCD受光素子10は、4000〜5000画素程度のものであり、1画素当たりのサイズが約14〔μm〕である。CCD受光素子10は基板12からの散乱光及び反射光を受光する。CCD受光素子10から出力される画像データは、A/D変換器20によって8ビット又は10ビット程度のデジタルデータ(濃淡情報)に変換され、FIFOメモリ22に取り込まれる。このとき、検査ステージ(図示せず)が約25〔μm〕移動するので、CCD受光素子10からは次のエリアの画像データがFIFOメモリ22に取り込まれる。これと同時にFIFOメモリ22からは前のエリアの第1画像データf(x)が出力され、次段の遅延回路(シフトレジスタ)24からはパターンピッチ分遅延した第2画像データg(x)がそれぞれ、サブピクセル補正回路26に出力される。
【0005】一般に、パターンピッチP〔μm〕は、CCD受光素子10の1画素のサイズa(約14〔μm〕)の整数倍ではなく、位相ずれε〔μm〕を有するものである。従って、第1画像データf(x)と第2画像データg(x)との差分の絶対値にはこの位相ずれεに起因した差信号レベルΔVというノイズを含むことになる。従って、この差信号レベルΔVと同程度の欠陥は検出が困難であるという問題があった。そこで、従来はサブピクセル補正と呼ばれる処理を行って、位相ずれεに起因する差信号レベルΔVを低減している。すなわち、図3(A)に示すようにCCD受光素子10のj+1番目の画素にパターンピッチP〔μm〕のエッジが位置し、それが位相ずれε〔μm〕となる。すなわち、CCD受光素子10の1画素のサイズをa、パターンピッチPに対応した画素数(整数)をj個とすると、パターンピッチPは、P=a×j+εと表現される。
【0006】サブピクセル補正回路26は、CCD受光素子10からの各画素の輝度データ、すなわち画像データf(x),g(x)をこの位相ずれε〔μm〕を考慮して補正している。これによって、前述の差信号レベルΔVを低減している。すなわち、サブピクセル補正回路26はFIFOメモリ22からの第1画像データf(x)と遅延回路(シフトレジスタ)24からの第2画像データg(x)をそれぞれ入力し、これらに所定の演算(サブピクセル補正)処理を行う。すなわち、i番目の第1画像データf(i)に対して、その前後の第1画像データf(i−1),f(i+1)を用いて、次式のようにして、i番目の第1画像データf(i)の輝度データF(i)を求めている。
F(i)=f(i)+(e/2)×{f(i−1)−f(i+1)}
第2画像データg(i)も同様な位相補正を行なう。ただし、補正方向を逆にするため、第1画像データf(i)とは一部符号が逆になっている。
G(i)=g(i)−(e/2)×{g(i−1)−g(i+1)}
ここで、eはk×(ε/a)である。ここでkはレンズの特性などにより決定する1以下の係数である。
【0007】上式をCCD受光素子10の各画素に対応したFIFOメモリ22からの第1画像データf(x)と遅延回路(シフトレジスタ)24からの第2画像データg(x)に適用(演算処理)することによって、サブピクセル補正が施され、補正後の第1画像データF(x)と第2画像データG(x)が差画像演算回路28に出力される。このサブピクセル補正処理によって差信号レベルΔVの影響がなくなり、隣接パターンの比較差信号として正確な値を求めることができるようになる。
【0008】差画像演算回路28は第1画像データF(x)と第2画像データG(x)の差分の絶対値Vを求め、欠陥判定回路29に出力する。欠陥判定回路29は差画像演算回路28からの差分の絶対値Vがしきい値よりも大きいかどうかに応じて欠陥判定を行う。この差分の絶対値Vは隣接パターンの比較差信号であり、理想的な条件の下では、通常ゼロである。ところが、この差分の絶対値がしきい値よりも大きい場合には欠陥と判定され、その差分の符号変化に基づいてピンホール欠陥なのかパターン欠陥なのかが判別できるようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述のサブピクセル補正は、i番目の画像データf(i)の輝度データをその前後の画像データf(i−1),f(i+1)を用いて求めている関係上、これら連続する3個の画素データの値が滑らかに変化する場合には有効な補正処理方法である。しかしながら、画素の大きさに対して検出しようとしている異物による信号変化の割合が大きい場合には、逆にサブピクセル補正を行うことによって、信号がぼけたり、ノイズ等が発生してS/Nが悪化し、画素データの信号品質が低下するという問題があった。
【0010】本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、受光素子の画素サイズと電極パターンの繰り返しピッチとの関係が整数倍でなく位相ずれを有する場合に、この位相ずれによる各画素データの信号品質の低下を抑制し、画素サイズに対して微小な異物を高精度に検出することのできる基板検査装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載された基板検査装置は、基板上に形成された所定ピッチのパターンを結像するレンズ系と、前記パターンの結像を前記レンズ系を介して受光する複数の画素から構成される受光素子手段と、前記受光素子に結像された前記パターンと前記画素との間の相対的な位置関係がほぼ同位相となるような画素同士の差分データを順次作成して出力する差分データ作成手段と、前記差分データ作成手段から出力される前記差分データに基づいてしきい値を作成するしきい値作成手段と、前記差分データ作成手段から出力される前記差分データと前記しきい値作成手段によって作成されたしきい値とを比較して欠陥を検出する欠陥検出手段とを備えたものである。受光素子手段の画素サイズとパターンの繰り返しピッチとの関係が整数倍でなく位相ずれを有する場合であっても、パターンを複数個にすることによって受光素子手段の画素サイズが複数パターンに対して整数倍となり、パターンと画素との間の相対的な位置関係がほぼ同位相となる。そこで、この発明では、従来のように隣り合うパターン同士の比較差信号に基づいて欠陥を検出するのではなく、パターンと画素との間の相対的な位置関係がほぼ同位相となるような画素同士の差分データを差分データ作成手段で作成する。そして、しきい値作成手段を用いて、差分データから欠陥検出時のしきい値を作成し、欠陥検出手段で差分データとしきい値とを比較して欠陥の検出を行うようにした。これによって、位相ずれによる各画素データの信号品質の低下が抑制され、画素サイズに対して微小な異物を高精度に検出することができるようになる。
【0012】請求項2に記載された基板検査装置は、請求項1において、前記差分データ作成手段を、前記パターンのピッチを前記画素のサイズで除することによって得られる前記パターン相当の画素数に、最も小さな任意の第1の整数を乗じてその画素数の値が最も整数に近い値となる場合の前記第1の整数に相当する数の前記パターンの集まりを一つの疑似パターンとして、この疑似パターンの隣接するもの同士を用いて前記差分データを順次作成するように構成したものである。これは、差分データ作成手段がどのようにして、パターンと画素との間の相対的な位置関係がほぼ同位相となるような画素同士を決定するのかを具体的にしたものである。例えば、パターンピッチが300[μm]で画素サイズが14[μm]の場合には、パターンのピッチを画素サイズで除することによって得られるパターン相当の画素数は約21.4である。この画素数に第1の整数として5を乗じると、その値は107となるので、5個のパターンで疑似パターンが形成される。差分データ作成手段はこの疑似パターンの隣接するもの同士の画素を用いて、差分データを作成する。
【0013】請求項3に記載された基板検査装置は、請求項1又は2において、前記しきい値作成手段を、前記レンズ系を複数ブロックに区分することによって前記受光素子手段の各画素をそのブロックに応じて区分し、前記差分データ作成手段から出力される前記差分データのうち、前記区分された前記受光素子手段の画素に対応するものの複数を演算用差分データとし、この演算用差分データに基づいて分散値を求め、この分散値に基づいて前記しきい値を作成するように構成したものである。これは、しきい値作成手段がどのようにしてしきい値を作成するのかを具体的にしたものである。しきい値を受光素子手段の全ての画素に対して共通にすることは、レンズ系の収差に起因する受光素子面における倍率誤差による影響を増長することになるので、ここでは、レンズ系を複数ブロックに区分し、そのブロック毎に差分データの分散値を求め、この分散値に基づいてしきい値を作成するようにした。
【0014】請求項4に記載された基板検査装置は、請求項3において、前記しきい値作成手段を、前記分散値に所定の係数を乗じ、この乗算値に前記演算用差分データの平均値及びレーザパワーの分布補正値を加算することによって前記しきい値を作成するようにしたものである。これは、しきい値作成手段がどのようにしてしきい値を作成するのか、より具体的にしたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態を図面を用いて説明する。図4は、本発明に係る基板検査装置の概略構成を示す図である。本発明の実施の形態に係る基板検査装置が図2のものと異なる点は、差分データ作成回路30によってCCD受光素子10の画素と電極パターンの繰り返しピッチとの相対的な位置関係が同位相となるような画素同士の差分データを生成し、差分データ作成回路30から出力される差分データに基づいてしきい値を生成し、差分データがしきい値より大きいか否かに応じて欠陥判定を行うようにした点である。
【0016】CCD受光素子10は、5000画素程度のものであり、1画素当たりのサイズが約14〔μm〕である。従って、CCD受光素子10の有効視野は70[mm]である。CCD受光素子10は図1に示すように基板12からの反射光を受光する。CCD受光素子10から出力される画像データは、A/D変換器20によって8ビット又は10ビット程度のデジタル画像データ(濃淡情報)に変換され、差分データ作成回路30のFIFOメモリ31及びラッチ回路37に取り込まれる。
【0017】差分データ作成回路30は、FIFOメモリ31、ラッチ回路32〜39、セレクタ3A及び差画像演算回路3Bを含んで構成される。FIFOメモリ31は、書込みイネーブル信号Wenbの入力タイミングでA/D変換器20から出力されるデジタル画像データを取り込み、読出しイネーブル信号Renbの入力タイミングで取り込んだデジタル画像データをラッチ回路32に出力する。ラッチ回路32〜36は直列に接続され、FIFOメモリ31から出力されたデジタル画像データを順次シフトするシフトレジスタ的な働きをする。従って、ラッチ回路32に取り込まれたデジタル画像データは、ラッチ回路33〜36に順番に転送され、各ラッチ回路32〜36からはラッチしているデジタル画像データがセレクタ3Aの各選択端子に出力される。セレクタ3Aは図示していない選択信号に基づいてラッチ回路32〜36のいずれか一つの出力を選択し、それを第2画像データG(x)として差画像演算回路3Bに出力する。
【0018】一方、ラッチ回路37〜39は、FIFOメモリ31、ラッチ回路32〜36及びセレクタ3Aの経路を通過し、出力されるデジタル画像データとのタイミングを調整するものであり、ラッチ回路37に取り込まれたデジタル画像データを順次ラッチ回路38、39に転送し、第1画像データF(x)として差画像演算回路3Bに出力する。差画像演算回路3Bはセレクタ3Aから出力される第2画像データG(x)と、ラッチ回路39から出力される第1画像データF(x)との差分データの絶対値Vを演算し、それをしきい値作成回路50及びラインメモリ70に出力する。
【0019】しきい値作成回路50は、差画像演算回路3Bから出力される差分データの絶対値Vに基づいてしきい値Tを作成する。このしきい値作成回路50がどのようにしてしきい値Tを作成するかは後述する。しきい値メモリ60は、しきい値作成回路50によって作成されたしきい値Tを複数記憶しており、最適なしきい値Tを演算回路80に出力する。ラインメモリ70は、FIFOメモリから構成され、差画像演算回路3Bから出力される差分データの絶対値Vを入力し、しきい値作成回路50及びしきい値メモリ60の処理時間に相当する時間だけ差分データの絶対値Vを遅延して演算回路80に出力する。演算回路80は、ラインメモリ70から出力される差分データの絶対値Vからしきい値メモリ60から出力されるしきい値Tを減算し、その減算値(V−T)を欠陥判定回路90に出力する。欠陥判定回路90は、減算値(V−T)に基づいて欠陥を判定する。すなわち、減算値(V−T)が正の値の場合には、差分データの絶対値Vがしきい値Tよりも大きいということを意味するので、欠陥判定回路90は欠陥ではないと判定し、逆に減算値(V−T)が負の値の場合には、差分データの絶対値Vがしきい値Tよりも小さいということを意味するので、欠陥判定回路90は欠陥である(異物が存在する)と判定する。
【0020】図5は、差分データ作成回路30がどのようにして差分データの絶対値Vを生成するのかその概念を示す図である。図において、点線で示した四角形はワークパターンWP1〜WP8であり、これは、基板上に形成された電極パターンに対応し、その繰り返し周期がP[μm]である。一方、CCD受光素子10は、画素A1から画素Z1の方向にライン状に設けられたライン型センサであり、検査ステージ(図示せず)の移動によって画素A1から画素A5の方向に相対的に移動するようになっている。従って画素A1〜Z1,A2〜Z2,A3〜Z3,A4〜Z4,A5〜Z5によって画素マトリックスが形成される。
【0021】この画素マトリックスとワークパターンWP1〜WP8との関係に注目して見ると、画素A1がワークパターンWP1の左上隅に位置し、画素D1がワークパターンWP2の左上隅に位置している。しかしながら、画素A1にはワークパターンWP1のみが重なっているのに対して、画素D1にはワークパターンWP1とワークパターンWP2とが重なっている。すなわち、画素A1とワークパターンWP1との相対的位置関係と、画素D1とワークパターンWP2との相対的位置関係とは相違している。
【0022】図5では、画素A1とワークパターンWP1、画素N1とワークパターンWP5の相対的位置関係が同じである。同様に、画素D1とワークパターンWP2、画素Q1とワークパターンWP6の相対的位置関係、画素G1とワークパターンWP3、画素T1とワークパターンWP7の相対的位置関係、画素K1とワークパターンWP4、画素X1とワークパターンWP8の相対的位置関係がそれぞれ同じである。この実施の形態に係る差分データ作成回路30は、上述のように画素とワークパターンの相対的位置関係が同じであるワークパターンに対応する画素の画素データに基づいて差分データを作成するように構成されている。
【0023】例えば、各画素A1〜Z1と各ワークパターンWP1〜WP8の相対的位置関係が図5のような場合には、A/D変換器20から画素A1〜Z1の画素データが順次出力される。このとき、ラッチ回路39から画素N1の画素データが出力するタイミングに同期して、セレクタ3Aから画素A1の画素データが出力するように、FIFOメモリ31の書込み読出しタイミングを調節し、かつ、セレクタ3Aでラッチ回路32〜36を選択する。これによって、差画像演算回路3Bには、第1画像データF(x)としてラッチ回路39から出力される画素N1の画素データG(N1)が取り込まれ、第2画像データG(x)としてセレクタ3Aから出力される画素A1の画素データF(A1)が取り込まれる。差画像演算回路3Bは、画素A1の画素データF(A1)から画素N1の画素データG(N1)を減算し、その差分データの絶対値V=|F(A1)−G(N1)|をしきい値作成回路50及びラインメモリ70に出力する。以下同様にして、差画像演算回路3Bは、画素B1〜D1の画素データF(B1)〜F(D1)から画素O1〜Q1の画素データG(O1)〜G(Q1)を減算し、その差分データの絶対値Vを出力する。すなわち、FIFOメモリ31、ラッチ回路32〜36及びセレクタ3Aは、画素データを画素13個分遅延させて差画像演算回路3Bに出力している。
【0024】なお、図5では、説明の便宜上、1個のワークパターンに3〜4個の画素が対応する場合を示したが、実際には、1個のワークパターンに対して20〜25個の画素が対応することになる。例えば、画素サイズaが14[μm]で、ワークパターンの繰り返しピッチPが300[μm]とすると、1個のワークパターンには300÷14≒21.4個の画素が対応することになる。このように1個のワークパターンに対応する画素数bが整数でなく小数点を含む場合には、この画素数bに最も小さな任意の整数cを乗じて最も整数に近い値となるようにする。例えば、画素数b=21.4に整数c=5を乗じるとその値は107になる。これは、5個のワークパターンに対応する画素数が丁度整数の107個であることを意味する。従って、このような場合には、差分データ作成回路30は、FIFOメモリ31、ラッチ回路32〜36及びセレクタ3Aによって、画素データを画素107個分遅延させて、セレクタ3Aから出力される第2画像データG(x)とラッチ回路39から出力される第1画像データF(x)との差分データの絶対値Vを出力する。これによって、画素とワークパターンの相対的位置関係はほぼ同じになり、位相ずれによる補正処理を行わなくてもよくなる。
【0025】しかしながら、実際は、若干の位相ずれは存在するし、また、結像レンズの収差や取付誤差や基板の傾きなどに起因する受光素子面における倍率誤差によって、結像レンズの特定部分において縮小歪みや拡大歪みが現れ、差分データの対象となる2個のワークパターンの比較位置に位相ずれが生じることになる。そこで、この実施の形態では、このような位相ずれの影響を考慮して、しきい値作成回路50を用いて差分データの対象となる複数のワークパターンに基づいてしきい値を決定するようにした。
【0026】図6は、しきい値作成回路50がどのようにしてしきい値を作成するのかその概念を示す図である。図において、ワークパターン1a〜1e,2a〜2e,3a〜3e,・・・,8a〜8eは、基板上に形成された電極パターンに対応し、その繰り返し周期が300[μm]であり、CCD受光素子10の1画素のサイズは14[μm]である。すなわち、図6は、画素サイズaが14[μm]で、ワークパターンの繰り返しピッチPが300[μm]の場合を図示している。従って、前述のように、1個のワークパターンには300÷14≒21.4個の画素が対応する。1個のワークパターンに対応する画素数が21.4個の場合には、5個のワークパターンに対応する画素数が丁度整数倍の107個となる。
【0027】従って、CCD受光素子10の左から1番目の画素から21.4番目の画素までがワークパターン1a,2a,3a,・・・,8aとの間で相対的位置関係が同じである。同様に、21.4番目の画素から42.8番目の画素までがワークパターン1b,2b,3b,・・・,8bとの間で、42.8番目の画素から64.2番目の画素までがワークパターン1c,2c,3c,・・・,8cとの間で、64.2番目の画素から85.6番目の画素までがワークパターン1d,2d,3d,・・・,8dとの間で、85.6番目の画素から107番目の画素までがワークパターン1e,2e,3e,・・・,8eとの間で、それぞれ相対的位置関係が同じである。
【0028】この実施の形態に係る差分データ作成回路30は、画素とワークパターンの相対的位置関係が同じであるワークパターンに対応する画素の画素データに基づいて差分データを作成するように構成されているので、各画素と各ワークパターンの相対的位置関係が図6のような場合には、図4のラッチ回路39から108番目の画素の画素データが出力するタイミングに同期して、セレクタ3Aから1番目の画素の画素データが出力する。すなわち、図4のラッチ回路39から(n+108)番目の画素の画素データが出力するタイミングに同期して、セレクタ3Aからn番目の画素の画素データが出力するように、FIFOメモリ31の書込み読出しタイミングやラッチ回路32〜36が設定される。これによって、差画像演算回路3Bは、ラッチ回路39から出力される(n+108)番目の画素の第1画像データF(n+108)から、セレクタ3Aから出力されるn番目の画素の第2画像データG(n)を減算した差分データの絶対値Vを出力する。
【0029】なお、図6では、5個のワークパターンを1個のサンプルとしてこれを8サンプルsmp1〜8用いる場合を示している。これは、図3に示すように、結像レンズの歪みによってパターンピッチのエッジがCCD受光素子上で位置ずれを生じるからである。すなわち、結像レンズ11による結像が歪みなく理想的に行われる場合には、位相ずれ量εはどの位置においても同じ値であるが、実際には結像レンズ11の収差に起因する受光素子面における倍率誤差によって、結像レンズ11の特定部分においては図3(B)の縮小歪みのようにパターンピッチのエッジがCCD受光素子10のj番目に現れたり、図3(C)の拡大歪みのようにCCD受光素子10のj+2番目に現れたり、また、位相ずれ量εもまちまちの値となる。
【0030】そこで、この実施の形態では、図1に示すように、結像レンズ11を複数ブロックB1〜Bnに区分し、その1つのブロックを上述のように8個のサンプルに分割する。これに伴って、CCD受光素子10の各画素も区分されることになる。例えば、結像レンズ11をブロックB1〜B6の6個の領域に区分する場合、CCD受光素子10の画素数が約5136個であれば、結像レンズ11の1個のブロックに相当する画素数は約856個となる。この856個の画素が結像レンズ11の1個のブロックに相当する画素数となる。従って、1サンプルの画素数が107個なので、1個のブロックには図6に示すように8個のサンプルsmp1〜8が存在することになる。
【0031】しきい値作成回路50は、この8個のサンプルsmp1〜8に基づいてしきい値を作成する。図6の場合には、5個のワークパターンで1個のサンプルsmpが形成され、8個のサンプルsmp1〜8で1個のブロックが形成されているので、しきい値作成回路50には、1ブロック当たり856個の差分データの絶対値Vが入力することになる。しきい値作成回路50は、この856個の差分データの絶対値Vの中からしきい値を作成する。例えば、8個のサンプル分の差分データの絶対値Vの総和ΣVと絶対値Vの自乗の総和ΣWを演算する。絶対値Vの自乗の総和ΣWを8で除した値ΣW/8から、絶対値Vの総和ΣVを8で除した値ΣV/8を減算し、その平方根を演算することによって、分散値δを求める。すなわち、分散値δはδ=SQRT(ΣW/8−ΣV/8)
となる。
【0032】このときに、差分データの絶対値Vの中には、検出したい異物のデータに相当するものが存在する場合があるので、8個の差分データの絶対値Vの中から最大値と2番目の最大値を示すものを予め演算処理から除外し、6個の差分データの絶対値Vに基づいて演算処理を行うようにしてもよい。また、8個の差分データの絶対値Vの中で特にその値が他の値からかけ離れている場合に、その値を除外するようにしてもよい。
【0033】しきい値作成回路50は、分散値δが求まったら、その分散値δに3〜6の係数Kaを乗算し、この乗算値に絶対値Vの総和ΣVを8で除した値ΣV/8及びレーザパワーの分布補正値Kb=0〜64を加算することによって最終的なしきい値T1を作成する。このようにして作成されたしきい値T1はブロックB1の各ワークパターンとの間の欠陥判定に使用されるしきい値として、しきい値メモリ60に記憶される。ブロックB2〜B6の各ワークパターンとの間の欠陥判定に使用されるしきい値T2〜T6も同様にして、それぞれのブロックB2〜B6の差分データの絶対値Vに基づいて求める。演算回路80は、このようにして求められたしきい値Tを用いて、ラインメモリ70から出力される差分データの絶対値Vから欠陥すなわち異物が存在するか否かの判定対象となる減算値(V−T)を欠陥判定回路90に出力する。これによって、この実施の形態に係る基板検査装置は、画素サイズよりも十分に小さな異物に対してもその存在を高精度に検出することができるようになる。
【0034】なお、上述の実施の形態では、8個の差分データの絶対値Vに基づいてしきい値を求める場合を示したが、これ以外の数の差分データの絶対値Vに基づいて求めるようにしてもよい。また、本発明は、ガラス基板以外に所定の繰り返しパターンを有するマスク、レチクル、ウェハ糖にも適用できることはいうまでもない。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、受光素子の画素サイズと電極パターンの繰り返しピッチとの関係が整数倍でなく、位相ずれを有する場合でも、この位相ずれによる各画素データの信号品質の低下を抑制し、画素サイズに対して微小な異物を高精度に検出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 パターン比較方式によってガラス基板検査を行う場合の受光素子(CCD)10と結像レンズ11と基板12との位置関係を示す図である。
【図2】 従来の基板検査装置の概略構成を示す図である。
【図3】 結像レンズの歪みによってパターンピッチのエッジがCCD受光素子上でどのような位置ずれを生じて現れるのかを示す図である。
【図4】 本発明に係る基板検査装置の概略構成を示す図である。
【図5】 図4の差分データ作成回路がどのようにして差分データの絶対値Vを生成するのかその概念を示す図である。
【図6】 図4のしきい値作成回路がどのようにしてしきい値を作成するのかその概念を示す図である。
【符号の説明】
10…CCD受光素子
20…A/D変換器
30…差分データ作成回路
31…FIFOメモリ
32〜39…ラッチ回路
3A…セレクタ
3B…差画像演算回路
50…しきい値作成回路
60…しきい値メモリ
70…ラインメモリ
80…演算回路
90…欠陥判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に形成された所定ピッチのパターンを結像するレンズ系と、前記パターンの結像を前記レンズ系を介して受光する複数の画素から構成される受光素子手段と、前記受光素子に結像された前記パターンと前記画素との間の相対的な位置関係がほぼ同位相となるような画素同士の差分データを順次作成して出力する差分データ作成手段と、前記差分データ作成手段から出力される前記差分データに基づいてしきい値を作成するしきい値作成手段と、前記差分データ作成手段から出力される前記差分データと前記しきい値作成手段によって作成されたしきい値とを比較して欠陥を検出する欠陥検出手段とを備えたことを特徴とする基板検査装置。
【請求項2】 請求項1において、前記差分データ作成手段は、前記パターンのピッチを前記画素のサイズで除することによって得られる前記パターン相当の画素数に、最も小さな任意の第1の整数を乗じてその画素数の値が最も整数に近い値となる場合の前記第1の整数に相当する数の前記パターンの集まりを一つの疑似パターンとして、この疑似パターンの隣接するもの同士を用いて前記差分データを順次作成することを特徴とする基板検査装置。
【請求項3】 請求項1又は2において、前記しきい値作成手段は、前記レンズ系を複数ブロックに区分することによって前記受光素子手段の各画素をそのブロックに応じて区分し、前記差分データ作成手段から出力される前記差分データのうち、前記区分された前記受光素子手段の画素に対応するものの複数を演算用差分データとし、この演算用差分データに基づいて分散値を求め、この分散値に基づいて前記しきい値を作成することを特徴とする基板検査装置。
【請求項4】 請求項3において、前記しきい値作成手段は、前記分散値に所定の係数を乗じ、この乗算値に前記演算用差分データの平均値及びレーザパワーの分布補正値を加算することによって前記しきい値を作成することを特徴とする基板検査装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【公開番号】特開2001−148017(P2001−148017A)
【公開日】平成13年5月29日(2001.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−332150
【出願日】平成11年11月24日(1999.11.24)
【出願人】(000233480)日立電子エンジニアリング株式会社 (34)
【Fターム(参考)】