説明

基準画像作成装置及び基準画像作成方法

【課題】倍胴オフセット印刷機における色調の変化に対しても安定した検査が可能な基準画像を作成することができる基準画像作成装置及び基準画像作成方法を提供する。
【解決手段】本発明は、基準画像を作成する際に、連続する3以上の奇数の検査画像を取り込み、取り込んだ連続する3以上の奇数の検査画像に対し各画素の濃度値のメディアン値を算出し、算出された前記メディアン値を濃度値として画像を作成し、上記検査画像に続く3以上の奇数の検査画像を取り込み、取り込んだ前記3以上の奇数の検査画像に対し各画素の濃度値のメディアン値を算出し、算出された前記メディアン値を濃度値とする画像を作成し、作成した双方の画像の濃度値との平均値を算出し、算出された平均値を濃度値として基準画像を作成するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、検査画像と比較するための基準画像を作成する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物の検査をオンラインでラインセンサを利用して行うシステムが知られている。即ち、連続して走行する印刷された紙面を光センサで走査し、検査画像として取り込み、予め取り込んでいる基準画像と比較して紙面の不良の有無を検査するものである。
【0003】
このとき、取り込んだ検査画像と比較して検査するための基準画像は、1つの取り込み画像から作成されていたが、印刷機のウェブ走行の挙動により取り込み画像は、天地及び左右方向に伸縮するため、1つの取り込み画像のみから作成された画像より得られた基準画像は、伸縮しているため、検査の基準画像とするには相応しくない。
【0004】
そこで、特許文献1には、基準画像に含まれる歪み等の不良を除去する目的で、3つのの奇数の撮像画像から画素毎にメディアン値を算出し、基準画像を作成する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平9−109371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、倍胴オフセット印刷機で印刷した印刷物を検査する場合、ブランケットや圧胴等の印刷機械精度が原因で、それぞれの面の色調が微妙に異なることがあり、片方の面(例えば、A側とする)を基準に検査を行うと、例えば、図5(X)に示すように良品として判定される範囲に偏りが生じ、他方の面(例えば、B側とする)の色調が変化したときに、その変化が良品範囲内である場合においても、不良(不良判定)として過検出してしまうという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みて為されたものであり、その目的の一例は、倍胴オフセット印刷機における色調の変化に対しても安定した検査が可能な基準画像を作成することができる基準画像作成装置及び基準画像作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、走行中の印刷物表面状態を光学的に監視することにより取り込まれた検査画像を検査するために用いられる基準画像を作成する基準画像作成装置において、連続する6以上の検査画像のうち、一画像ずつ離間した3以上の検査画像を取り込む第1画像取り込み手段と、前記取り込んだ3以上の検査画像に対し各画素の濃度値のメディアン値を算出する第1メディアン値算出手段と、前記第1メディアン値算出手段により算出された前記メディアン値を濃度値として第1の基準画像を作成する第1基準画像作成手段と、前記第1画像取り込み手段により取り込んだ前記検査画像以外の一画像ずつ離間した3以上の検査画像を取り込む第2画像取り込み手段と、前記第2画像取り込み手段により取り込んだ前記3以上の検査画像に対し各画素の濃度値のメディアン値を算出する第2メディアン値算出手段と、前記第2メディアン値算出手段により算出された前記メディアン値を濃度値として第2の基準画像を作成する第2基準画像作成手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基準画像作成装置において、前記印刷物は、ブランケット胴1回転で2以上の絵柄を印刷可能な倍胴オフセット印刷機により印刷されたものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の基準画像作成装置において、前記第1画像取り込み手段により取り込まれる検査画像の数と、前記第2画像取り込み手段により取り込まれる検査画像の数は同数であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、走行中の印刷物表面状態を光学的に監視することにより取り込まれた検査画像を検査するために用いられる基準画像を作成する基準画像作成方法において、連続する6以上の検査画像のうち、一画像ずつ離間した3以上の検査画像を取り込む第1画像取り込み工程と、前記取り込まれた3以上の検査画像に対し各画素の濃度値のメディアン値を算出する第1メディアン値算出工程と、前記第1メディアン値算出工程において算出された前記メディアン値を濃度値として第1の基準画像を作成する第1基準画像作成工程と、前記第1画像取り込み工程において取り込まれた前記検査画像以外の一画像ずつ離間した3以上の検査画像を取り込む第2画像取り込み工程と、前記第2画像取り込み工程において取り込まれた前記3以上の検査画像に対し各画素の濃度値のメディアン値を算出する第2メディアン値算出工程と、前記第2メディアン値算出工程において算出された前記メディアン値を濃度値として第2の基準画像を作成する第2基準画像作成工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基準画像を作成する際に、連続する6以上の検査画像のうち、一画像ずつ離間した3以上の検査画像を取り込み、取り込んだ3以上の検査画像に対し各画素の濃度値のメディアン値を算出し、算出されたメディアン値を濃度値として第1の基準画像を作成し、前記検査画像以外の一画像ずつ離間した3以上の検査画像を取り込み、取り込んだ前記3以上の検査画像に対し各画素の濃度値のメディアン値を算出し、算出された前記メディアン値を濃度値として第2の基準画像を作成するように構成したので、倍胴オフセット印刷機における色調の変化に対しても安定した検査が可能な基準画像を作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、印刷システムに対して本発明を適用した場合の実施の形態である。
【0013】
また、以下の実施形態においては、走行中の印刷物表面状態を光学的に監視(例えば、ラインセンサカメラにより)することにより取り込まれた検査画像を基準画像と比較することによって該検査画像を検査する印刷物検査装置に関し、特に、当該検査画像を検査するために用いられる基準画像を作成する特徴について詳述する。
【0014】
図1は、本実施形態に係わる印刷システムの概要構成例を示す図である。
【0015】
本実施形態に係る印刷システムは、倍胴オフセット印刷機及び印刷物検査装置20等を備える。
【0016】
図1において、ウェブ10は、図示しない給紙部から供給され、倍胴オフセット印刷機のブランケット胴11及び版胴12によって印刷された後、図示しない巻取部に巻き取られる。
【0017】
また、ブランケット胴11には、ロータリエンコーダ16が取り付けられ、ブランケット胴11の回転に同期したロータリエンコーダ16のパルス信号をタイミング信号とし、ラインセンサカメラ18によって撮像された画像が印刷物検査装置20へ取り込まれるようになっている。
【0018】
図2は、倍胴オフセット印刷機のブランケット胴及びその断面を示す図である。
【0019】
図2に示すように、倍胴オフセット印刷機のブランケット胴11は、印刷版2回転分の径になっており(つまり、ブランケット胴1回転で2つの絵柄を印刷可能)、印刷版1回転分の絵柄を夫々A側及びB側とする。このようなブランケット胴11のA側とB側の面の色調(色合い)が微妙に異なる。
【0020】
図3は、本実施形態に係る基準像作成処理を行う印刷物検査装置20内の概要構成例を示す図である。
【0021】
図3に示すように、印刷物検査装置20は、第1画像取り込み手段及び第2画像取り込み手段の一例としての画像取込み処理回路22、画像メモリA〜F(24〜34)、位置ずれ補正テンプレート選択回路36、位置ずれ補正回路38、第1メディアン値算出手段及び第1基準画像作成手段の一例としてのメディアン値算出回路40、第2メディアン値算出手段及び第2基準画像作成手段の一例としての一例としてのメディアン値算出回路42、基準画像メモリA44及び基準画像メモリB46等を備えて構成されている。
【0022】
図3において、連続して取り込まれた複数の画像(検査画像)は、画像取り込み処理回路22を介して順番にそれぞれ画像メモリA24、画像メモリB26、画像メモリC28、画像メモリD30、画像メモリE32、及び画像メモリF34に格納される。
【0023】
なお、本実施形態では、連続する6つの検査画像から基準画像を作成する例を示すが、これに限定されるものではない。
【0024】
位置ずれ補正テンプレート選択回路36及び位置ずれ補正回路38は、最初に取り込まれた1部目の画像に対して、後から取り込まれた2部目から6部目までの画像の位置ずれ補正を行うためのものである。
【0025】
メディアン値算出回路40は、画像メモリA24、画像メモリC28、及び画像メモリE32に格納された画像(一画像ずつ離間した1部目、3部目、及び5部目の画像)に対し各画素の濃度値のメディアン値(中央値)を算出し、当該算出したメディアン値を濃度値として第1の基準画像を作成する。こうして作成された基準画像は、基準画像メモリA44に格納される。
【0026】
一方、メディアン値算出回路42は、画像メモリB26、画像メモリD30、及び画像メモリE32に格納された画像(1部目、3部目、及び5部目の画像以外の、一画像ずつ離間した2部目、4部目、及び6部目の画像)に対し各画素の濃度値のメディアン値(中央値)を算出し、当該算出したメディアン値を濃度値として第2の基準画像を作成する。こうして作成された基準画像は、基準画像メモリB46に格納される。
【0027】
図4は、基準画像が作成されるまでのフローの一例を示す図である。
【0028】
図4に示すように、印刷物検査装置20の画像取り込み処理回路22を通じて連続して取り込まれ、画像メモリA24、画像メモリB26、画像メモリC28、画像メモリD30、画像メモリE32、及び画像メモリF34に格納された1部〜6部目までの6つの画像のうち、1部、3部、及び5部目の画像は、ブランケット胴11のA側の絵柄により印刷された印刷物表面の画像であり、2部、4部、及び6部目の画像は、ブランケット胴11のB側の絵柄により印刷された印刷物表面の画像である。
【0029】
そして、2〜6部目の画像は、位置ずれ補正テンプレート選択回路36及び位置ずれ補正回路38により、1部目の画像の位置に合わせるように位置ずれ補正される。
【0030】
次いで、メディアン値算出回路40により、一画像ずつ離間した1部目、3部目、及び5部目の3つの画像に対し各画素の濃度値のメディアン値が算出され、第1の基準画像であるA側基準画像A’が作成される。また、メディアン値算出回路42により、一画像ずつ離間した2部目、4部目、及び6部目の3つの画像に対し各画素の濃度値のメディアン値が算出され、第2の基準画像であるB側基準画像B’が作成される。この際、画像に含まれる汚れや抜け等の欠陥部分(不良の情報)は除外されることになる。
【0031】
なお、3つの画像の画素毎の濃度値について、2つの以上の画像の画素毎の濃度値が等しい場合は、その等しい値がメディアン値とされる。
【0032】
このように作成されたA側基準画像A’と、以降に撮像されるA側(図4では奇数番目の部数)の画像との比較検査が行われる一方、B側基準画像B’と、以降に撮像されるB側(図4では偶数番目の部数)の画像との比較検査が行われる。
【0033】
以上説明したように、上記実施形態によれば、ブランケット胴11のA側とB側の面の色調(色合い)が微妙に異なる場合であっても、基準画像に不良が含まれることなく、例えば図5(Y)に示すように良品として判定される範囲がブランケット胴11のA側とB側とで夫々規定されるので偏りが生じず、倍胴オフセット印刷機における色調の変化に対しても安定した検査が可能な基準画像を作成することができる。
【0034】
なお、上記実施形態においては、一画像ずつ離間した3つの画像で、A側とB側の夫々の基準画像を作成するように構成したが、これに限定されるものではなく、5以上の奇数の画像で基準画像を作成するように構成しても良い。
【0035】
また、上記実施形態においては、2倍胴のブランケット胴11を用いた場合について説明したが、3倍胴以上のブランケット胴11を用いても良く、この場合、夫々の絵柄の面毎に基準画像(例えば、3倍胴の場合、3つの基準画像)が作成されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態に係わる印刷システムの概要構成例を示す図である。
【図2】倍胴オフセット印刷機のブランケット胴及びその断面を示す図である。
【図3】本実施形態に係る基準像作成処理を行う印刷物検査装置20内の概要構成例を示す図である。
【図4】基準画像が作成されるまでのフローの一例を示す図である。
【図5】(X)は、従来技術における基準画像に基づいた良品範囲を示す図であり、(Y)は、本実施形態における基準画像に基づいた良品範囲を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10…ウェブ
11…ブランケット胴
12…版胴
16…ロータリエンコーダ
18…ラインセンサカメラ
20…印刷物検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の印刷物表面状態を光学的に監視することにより取り込まれた検査画像を検査するために用いられる基準画像を作成する基準画像作成装置において、
連続する6以上の検査画像のうち、一画像ずつ離間した3以上の検査画像を取り込む第1画像取り込み手段と、
前記取り込んだ3以上の検査画像に対し各画素の濃度値のメディアン値を算出する第1メディアン値算出手段と、
前記第1メディアン値算出手段により算出された前記メディアン値を濃度値として第1の基準画像を作成する第1基準画像作成手段と、
前記第1画像取り込み手段により取り込んだ前記検査画像以外の一画像ずつ離間した3以上の検査画像を取り込む第2画像取り込み手段と、
前記第2画像取り込み手段により取り込んだ前記3以上の検査画像に対し各画素の濃度値のメディアン値を算出する第2メディアン値算出手段と、
前記第2メディアン値算出手段により算出された前記メディアン値を濃度値として第2の基準画像を作成する第2基準画像作成手段と、
を備えることを特徴とする基準画像作成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基準画像作成装置において、
前記印刷物は、ブランケット胴1回転で2以上の絵柄を印刷可能な倍胴オフセット印刷機により印刷されたものであることを特徴とする基準画像作成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基準画像作成装置において、
前記第1画像取り込み手段により取り込まれる検査画像の数と、前記第2画像取り込み手段により取り込まれる検査画像の数は同数であることを特徴とする基準画像作成装置。
【請求項4】
走行中の印刷物表面状態を光学的に監視することにより取り込まれた検査画像を検査するために用いられる基準画像を作成する基準画像作成方法において、
連続する6以上の検査画像のうち、一画像ずつ離間した3以上の検査画像を取り込む第1画像取り込み工程と、
前記取り込まれた3以上の検査画像に対し各画素の濃度値のメディアン値を算出する第1メディアン値算出工程と、
前記第1メディアン値算出工程において算出された前記メディアン値を濃度値として第1の基準画像を作成する第1基準画像作成工程と、
前記第1画像取り込み工程において取り込まれた前記検査画像以外の一画像ずつ離間した3以上の検査画像を取り込む第2画像取り込み工程と、
前記第2画像取り込み工程において取り込まれた前記3以上の検査画像に対し各画素の濃度値のメディアン値を算出する第2メディアン値算出工程と、
前記第2メディアン値算出工程において算出された前記メディアン値を濃度値として第2の基準画像を作成する第2基準画像作成工程と、
を備えることを特徴とする基準画像作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−164407(P2008−164407A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353725(P2006−353725)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】