説明

塗布方法および塗布装置

【課題】 高粘度の溶液を基盤表面に均一な膜厚で塗布することができる塗布方法および塗布装置を提供する。
【解決手段】 薬液ノズル14は、ノズル基盤間距離Lが10mmで、かつ基盤2が回転を停止している静止状態で、ポリイミド溶液の吐出を開始する。5秒が経過した時、基盤回転用モータ13は、基盤2の回転を開始した後回転数を上昇し、同時にノズル上下シリンダ15は、矢印D方向つまり鉛直方向への薬液ノズル14の降下を開始する。基盤2の回転が開始してから1秒経過した時、ノズル上下シリンダ15は、薬液ノズル14の降下を停止する。その時、ノズル基盤間距離Lは2mmとなる。同時に、基盤回転用モータ13は、基盤2の回転数の上昇を停止させ、基盤2の回転数を1500rpmとする。ノズル基盤間距離Lが2mmになった時から5秒経過した時、薬液ノズル14は、ポリイミド溶液の吐出を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基盤表面に溶液を塗布する塗布方法および塗布装置に関し、より詳細には、半導体素子などの基盤表面にポリイミドなどの高粘度の溶液を塗布し、塗布後の膜厚むらを改善することができる塗布方法および塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基盤表面に溶液を塗布する塗布方法には、基盤を回転することなく静止状態で溶液を吐出して塗布する方法(以下「基盤静止塗布方法」という)と、基盤を回転させた状態で溶液を塗布する方法(以下「基盤回転塗布方法」という)とがある。
【0003】
基盤静止塗布方法は、基盤の表面の凹凸が大きい場合に用いられる方法であるが、基盤の中心付近の膜厚が周辺部の膜厚よりも薄くなり、均一性が劣る傾向にある。基盤回転塗布方法は、基盤静止塗布方法よりも均一性を向上することはできるが、基盤の表面の凹凸が大きい場合に、溶液が塗布されない部分がある。
【0004】
図4は、低粘度の溶液および高粘度の溶液をノズルから基盤に吐出した状態を示す図である。ノズルが基盤に対して低い位置で250cp(0.25パスカル秒)未満の低粘度の溶液を吐出した場合、基盤静止塗布方法では、溶液の盛り上がりが低く、ノズルと溶液とが接することはない。基盤回転塗布方法では、水あめ状の状態、すなわち水あめが糸状に長く尾を引くような状態が発生することはない。
【0005】
250cp以上の高粘度の溶液をノズルが基盤に対して低い位置で吐出した場合、基盤静止塗布方法では、吐出された溶液の盛り上がる高さが高くなり、基盤表面からのノズルの高さが2〜3mmであると、ノズル先端と溶液とが接し、ノズルに溶液が付着することがある。ノズル先端に付着した溶液は、異物となってパターン欠陥を発生させ、歩留まりを低下させる要因になる。基盤回転塗布方法では、ノズルの位置が低いので、溶液が水あめ状の状態になることはない。
【0006】
250cp以上の高粘度の溶液をノズルが基盤に対して高い位置で吐出した場合、基盤静止塗布方法では、吐出された溶液の盛り上がる高さが高くなっても、基盤表面からのノズルの位置が高いので、ノズル先端に溶液が接することはない。基盤回転塗布方法では、ノズルの位置が高いので、溶液が水あめ状の状態になり、吐出の最後に水あめ状の状態の溶液が基盤表面に落ちて、その部分の膜厚が厚くなる。膜厚が厚くなった溶液は、パターン欠陥を発生させ、歩留まりを低下させる要因になる。
【0007】
基盤回転塗布方法による第1の従来の技術として、特許文献1に記載される半導体製造装置がある。この半導体製造装置は、ウエハ上にフォトレジストを吐出するレジストノズルをウエハの中心からウエハの周辺にモータによって移動可能とする。そして、ウエハとレジストノズルとの間の距離もノズル上下用カムで可変することができるように構成したものである。ウエハは、ウエハチャックに真空吸着されて回転し、ウエハとレジストノズルとの間の距離は、ノズルが中心にあるときよりも周辺にあるときの方が大きい距離とされる。
【0008】
基盤静止塗布方法による第2の従来の技術として、特許文献2に記載される塗布膜形成装置がある。この塗布膜形成装置は、塗布対象物に塗布液を噴霧する噴霧装置を備えており、塗布対象物は、ワークステージに載置されて水平方向に移動され、噴霧装置によって表面全体に塗布液が塗布される。塗布液が塗布された後、形成された塗布膜の膜厚が膜厚測定器によって測定される。測定された膜厚が必要な膜厚よりも薄い部位を検出すると、再度噴霧装置による塗布処理を行うことによって、表面に凹凸部を有する塗布対象物に均一な塗布膜の形成を可能にする。塗布対象物は、回転運動されることはない。
【0009】
基盤静止塗布方法による第3の従来の技術として、特許文献3に記載される処理システムがある。この処理システムは、被処理基板の厚さのバラツキに対して、ステージ上の被処理基板と塗布ノズルの吐出口とのギャップを一定に保ちつつ、処理液を吐出口から被処理基板に吐出する。この処理システムは、被処理基板を回転運動させることなく、被処理基板に所望の膜厚でレジスト液を塗布する。
【0010】
【特許文献1】特開平5−190438号公報
【特許文献2】特開2005−334754号公報
【特許文献3】特開2005−251864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ポリイミド溶液は、半導体素子の保護膜あるいは絶縁膜を形成するために使用されている。近年、ポリイミド溶液を塗布して形成された保護膜を使用した半導体素子は、衝撃に強いので、携帯電話機用および自動車用の半導体素子として需要が伸びてきている。携帯電話機および自動車などの製品は小型化の傾向にあり、これらの製品に使用される半導体素子も縮小化が求められるとともに、半導体素子に形成されるポリイミド膜の膜厚の均一性の向上も要求されている。
【0012】
しかしながら、ポリイミド溶液は、粘度が250cp以上と高く、基盤静止塗布方法および基盤回転塗布方法のいずれの方法を用いるとしても、図4に示したように、膜厚にばらつきが発生し、膜厚を均一にすることができないという問題がある。
【0013】
第1の従来の技術は、ノズルを基盤の中心から周辺に移動させながら溶液を吐出する方法で、低粘度の溶液の場合には有効な方法であるが、ポリイミド溶液のように高粘度の溶液の場合には、基盤周辺ではじき現象が発生するという問題がある。はじき現象とは、回転する基盤上の回転中心からずれた位置に高粘度の溶液を吐出したとき、基盤上に吐出された溶液が基盤表面の上を転がる様に流される現象のことである。
【0014】
第2の従来の技術は、溶液を噴霧する方法であるが、ポリイミド溶液は粘度が高く噴霧することができない。第3の従来の技術は、基板の厚さのバラツキに対して、基板と塗布ノズルの吐出口とのギャップを一定に保つものであるが、高粘度の溶液で発生する高い盛り上がりおよび水あめ状の状態に起因する問題を解決するものではない。
【0015】
本発明の目的は、高粘度の溶液を基盤表面に均一な膜厚で塗布することができる塗布方法および塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、鉛直方向に延びる中心軸まわりに回転可能な基盤の上面に前記中心軸上に配置されるノズルから鉛直方向の下方に溶液を吐出して塗布する塗布方法であって、
ノズルの先端から基盤の上面までのノズル基盤間距離が予め定める第1の距離と予め定める第1の距離よりも小さい予め定める第2の距離との間で、基盤が静止している状態のときから、基盤が回転している状態のときにわたって、ノズルから溶液を基盤の上面に吐出して塗布しつつ、基盤の回転に連動してノズルを鉛直方向の下方に移動することを特徴とする塗布方法である。
【0017】
また本発明は、基盤を載置する載置手段と、
前記基盤載置手段に載置される前記基盤を、鉛直方向に延びる中心軸まわりに回転させる回転手段と、
前記中心軸上に配置され、鉛直方向の下方に設けられる前記基盤に溶液を吐出して塗布する吐出手段と、
前記吐出手段を鉛直方向の下方に移動させる移動手段と、
前記回転手段および前記吐出手段を制御して、基盤が静止している状態のときから、基盤が回転している状態のときにわたって、溶液を前記吐出手段から前記基盤の上面に吐出させて塗布しつつ、前記回転手段による前記基盤の回転に連動して、前記移動手段によって前記吐出手段を、前記吐出手段の先端から前記基盤の上面までの距離が予め定める第1の距離と予め定める第1の距離よりも小さい予め定める第2の距離との間で移動させる制御手段とを含むことを特徴とする塗布装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鉛直方向に延びる中心軸まわりに回転可能な基盤の上面に前記中心軸上に配置されるノズルから鉛直方向の下方に溶液を吐出して塗布するにあたって、ノズルの先端から基盤の上面までの距離が予め定める第1の距離と予め定める第1の距離よりも小さい予め定める第2の距離との間で、基盤が静止している状態のときから、基盤が回転している状態のときにわたって、ノズルから溶液を基盤の上面に吐出して塗布しつつ、基盤の回転に連動してノズルを鉛直方向の下方に移動する。
【0019】
したがって、本発明に係る塗布方法を適用すれば、基盤の回転と連動してノズルの高さを制御することができるので、高粘度の溶液を塗布しても、基盤の中心付近の溶液の盛り上がりとノズルとが接すること、および溶液が水あめ状の状態、すなわち水あめが糸状に長く尾を引くような状態になることを回避することができ、基盤表面に均一な膜厚で溶液を塗布することができる。
【0020】
また本発明によれば、載置手段によって、基盤が載置され、回転手段によって、前記基盤載置手段に載置される前記基盤が、鉛直方向に延びる中心軸まわりに回転され、前記中心軸上に配置される吐出手段によって、鉛直方向の下方に設けられる前記基盤に溶液が吐出されて塗布され、移動手段によって、前記吐出手段が鉛直方向の下方に移動される。そして、制御手段によって、前記回転手段および前記吐出手段を制御して、基盤が静止している状態のときから、基盤が回転している状態のときにわたって、溶液を前記吐出手段から前記基盤の上面に吐出させて塗布しつつ、前記回転手段による前記基盤の回転に連動して、前記移動手段によって前記吐出手段が、前記吐出手段の先端から前記基盤の上面までの距離が予め定める第1の距離と予め定める第1の距離よりも小さい予め定める第2の距離との間で移動される。
【0021】
したがって、基盤の回転と連動してノズルの高さを制御することができるので、高粘度の溶液を塗布しても、基盤の中心付近の溶液の盛り上がりとノズルとが接すること、および溶液が水あめ状の状態、すなわち水あめが糸状に長く尾を引くような状態になることを回避することができ、基盤表面に均一な膜厚で溶液を塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の実施の一形態である基盤処理装置1の構成を模式的に示す図である。塗布装置である基盤処理装置1は、基盤吸着チャック11、カップ12、基盤回転用モータ13、薬液ノズル14、ノズル上下シリンダ15、ノズル支柱16、上方センサ17、下方センサ18および制御部19を含んで構成される。本発明に係る塗布方法は、基盤処理装置1で処理される。
【0023】
載置手段である基盤吸着チャック11は、半導体素子などの基盤2を吸着して載置する。カップ12は、基盤2に塗布された溶液(以下「塗布液」という)が基盤2の回転によって基盤2から飛散したとき、その飛散した塗布液を収集するための容器である。回転手段である基盤回転用モータ13は、基盤吸着チャック11に結合される回転駆動軸を有し、回転駆動軸を回転させることによって、基盤吸着チャック11に載置されている基盤2を回転する。基盤回転用モータ13は、制御部19からの指示によって、基盤2を回転させ、あるいは回転を停止して静止状態とする。基盤2を回転させる回転数は、制御部19から指示される。
【0024】
ノズルである薬液ノズル14は、塗布液を先端から鉛直方向に吐出して基盤2に塗布する吐出手段であり、ノズル支柱16によって保持される。薬液ノズル14は、制御部19からの指示によって、塗布液の吐出を開始し、あるいは塗布液の吐出を停止する。ノズル上下シリンダ15は、制御部19からの指示によって、ノズル支柱16を上下方向に移動することによって、薬液ノズル14の先端と基盤2の上面とのノズル基盤間距離Lを変える。ノズル支柱16は、薬液ノズル14を保持し、ノズル上下シリンダ15によって上下方向に移動される。ノズル上下シリンダ15およびノズル支柱16は、移動手段である。
【0025】
上方センサ17は、ノズル基盤間距離Lが予め定める第1の距離、たとえば10mmになる位置に、ノズル支柱16が位置付いていることを検知するセンサであり、ノズル支柱16がその位置に位置付いていることを検知すると、その旨を制御部19に知らせる。下方センサ18は、ノズル基盤間距離Lが予め定める第2の距離、たとえば2mmになる位置に、ノズル支柱16が位置付いていることを検知するセンサであり、ノズル支柱16がその位置に位置付いていることを検知すると、その旨を制御部19に知らせる。薬液ノズル14は、ノズル基盤間距離Lが2mmのとき、図1に示した薬液ノズル14aの位置に位置付いている。
【0026】
制御手段である制御部19は、たとえば中央処理装置(以下「CPU」という)および半導体メモリなどによって構成され、CPUは、半導体メモリに記憶される制御プログラムを実行することによって、基盤回転用モータ13、薬液ノズル14およびノズル上下シリンダ15を制御する。塗布液は、250cp(0.25パスカル秒)以上4500cp以下の高粘度の溶液、たとえばポリイミド溶液である。
【0027】
図2は、基盤処理装置1がポリイミド溶液を塗布する塗布シーケンスを示すグラフである。図2(a)は、時間の経過と基盤2の回転数との関係を示す図であり、横軸が時間(秒)で、縦軸が基盤回転数(rpm:回転/秒)である。図2(b)は、時間の経過とノズル基盤間距離Lとの関係を示す図であり、横軸が時間(秒)で、縦軸が薬液ノズル14の先端と基盤2の上面とのノズル基盤間距離L(mm)である。
【0028】
時間「0」で、ノズル基盤間距離Lは10mmであり、基盤2の回転数は0rpmつまり基板2の回転は停止している静止状態である。薬液ノズル14は、時間「0」で、制御部19からの指示によってポリイミド溶液の吐出を開始する。時間「0」から5秒が経過した時、基盤回転用モータ13は、制御部19からの指示によって、基盤2の回転を開始した後回転数を上昇し、同時にノズル上下シリンダ15は、制御部19からの指示によって、矢印D方向つまり鉛直方向への薬液ノズル14の降下を開始する。この間、薬液ノズル14は、ポリイミド溶液の吐出を継続している。単位時間あたりの溶液の吐出量は、予め定められていて、吐出時には変動しない。
【0029】
時間「0」から6秒が経過した時、すなわち基盤2の回転が開始してから加速時間1秒が経過した時、ノズル上下シリンダ15は、制御部19からの指示によって、薬液ノズル14の降下を停止する。基盤2の回転が開始してから加速時間1秒が経過した時、ノズル基盤間距離Lは2mmとなる。同時に、基盤回転用モータ13は、制御部19からの指示によって、基盤2の回転数の上昇を停止させる。基盤2の回転が開始してから加速時間1秒が経過した時、基盤2の回転数は、予め定める第1の回転数、たとえば1500rpmとなる。
【0030】
時間「0」から11秒が経過した時、すなわちノズル基盤間距離Lが2mmになった時から5秒経過した時、薬液ノズル14は、制御部19からの指示によって、継続していたポリイミド溶液の吐出を停止する。したがって、薬液ノズル14は、時間「0」から11秒間ポリイミド溶液を吐出したことになる。時間「0」から11秒が経過した後、基盤回転用モータ13は、制御部19からの指示によって、基盤2の回転数の上昇を再開させ、回転数が3000rpmになるまで基盤2の回転数を上昇させる。
【0031】
このように、基盤2が静止している状態で基盤2の上面にポリイミド溶液を塗布して、基盤2の上面にポリイミド溶液が盛り上がっても、ノズル基盤間距離Lが10mmであるので、盛り上がったポリイミド溶液に薬液ノズル14が接することはない。さらに、基盤2の上面に塗布されて盛り上がったポリイミド溶液を広げるために、基盤2の回転を開始すると、盛り上がっていたポリイミド溶液の高さが減少する。そして、ポリイミド溶液の高さが減少し始めると、薬液ノズル14の降下を開始する。基盤2の回転数が上昇し、1500rpmに到達するときに、ノズル基盤間距離Lが2mmになるように制御される。薬液ノズル14は、基盤2が1500rpmで回転している状態で、ポリイミド溶液を吐出するが、ノズル基盤間距離Lが2mmであるので、ポリイミド溶液が水あめ状の状態、すなわち水あめが糸状に長く尾を引くような状態になることはない。
【0032】
図3は、基盤2に形成されたポリイミド溶液の膜厚分布を示す図である。横軸は、基盤測定ポイントであり、基盤2の中心からの半径方向の距離(cm)であり、縦軸は、ポリイミド膜厚(nm)である。図3(a)は、従来の技術による基盤静止塗布方法を用いてポリイミド溶液を基盤2に塗布した場合の膜厚分布である。中心位置でのポリイミド膜厚は、1035(nm)であるのに対し、中心から1〜3cmの位置のポリイミド膜厚は、1060〜1123(nm)であり、中心位置でのポリイミド膜厚が周辺の位置でのポリイミド膜厚よりも小さい値となっている。
【0033】
図3(b)は、従来の技術による基盤回転塗布方法を用いてポリイミド溶液を基盤2に塗布した場合の膜厚分布である。中心位置でのポリイミド膜厚は、1023(nm)であるのに対し、中心から1〜3cmの位置のポリイミド膜厚は、996〜1004(nm)であり、中心位置でのポリイミド膜厚が周辺の位置でのポリイミド膜厚よりも大きい値となっている。図3(c)は、本発明に係る基盤処理装置1によって、ポリイミド溶液を基盤2に塗布した場合の膜厚分布である。中心位置および周辺の位置のいずれの位置でもポリイミド膜厚は、1000〜1005(nm)であり、ポリイミド溶液は均一な膜厚で塗布されている。
【0034】
すなわち、基盤処理装置1は、高粘度の溶液、たとえばポリイミド溶液を基板2に塗布しても、基盤2に塗布されたポリイミド溶液の膜厚を均一にすることができる。
【0035】
上述した実施の形態では、予め定める第1の距離を10mmとしたが、7〜10mmの間のうちいずれかの距離であってもよい。予め定める第2の距離を2mmとしたが、2〜3mmの間のうちいずれかの距離であってもよい。予め定める第1の回転数を1500回転/秒としたが、500〜2000回転/秒の間のうちいずれかの回転数であってもよい。加速時間を1秒としたが、0.5〜2秒の間のうちいずれかの時間であってもよい。加速時間は、加速時、つまり基盤2の状態が静止から回転に移行するとき、溶液が円形に広がること、および加速時も溶液を吐出しているので吐出した溶液が水あめ状にならない時間である。
【0036】
さらに、基盤2が停止している静止状態でポリイミド溶液を塗布する時間を5秒としたが、1〜5秒の間のうちいずれかの時間であってもよい。基盤2が静止している状態で溶液を吐出する時間は、高粘度の溶液が盛り上がって高さが高くなりすぎないこと、および吐出時間が短いと塗布不良が発生するので塗布不良の発生しない時間である。基盤が予め定める第1の回転数で回転している状態でポリイミド溶液を塗布する時間を5秒としたが、2〜5秒の間のうちいずれかの時間であってもよい。第1の回転数で回転している状態で溶液を吐出する時間は、高粘度の溶液が基盤2全面に広がる時間である。膜厚ばらつきを抑えるため、この広がりが終わるまで溶液を吐出する。
【0037】
さらに、上述した実施の形態では、高粘度の溶液として、ポリイミド溶液を用いたが、ポリイミド溶液に限定されるものではなく、たとえば感光性樹脂のレジスト膜を形成するための高粘度の溶液であってもよい。
【0038】
このように、基盤2が静止している状態のときに、高粘度の溶液を吐出して、基盤2の中心付近の高粘度の溶液の盛り上がりが、低粘度の溶液の盛り上がりの高さよりも高くなっても、薬液ノズル14の位置を高くしているので、薬液ノズル14が溶液の盛り上がり部分と接することを防ぐことができる。さらに、基盤2が第1の回転数で回転している状態のときに、薬液ノズル14の位置を低くして高粘度の溶液を吐出するので、高粘度の溶液が水あめ状の状態、すなわち水あめが糸状に長く尾を引くような状態になることを回避することができる。したがって、本発明に係る基盤処理装置1は、および基盤処理装置1で処理される本発明に係る塗布方法を適用すれば、ポリイミド溶液などの高粘度の溶液を基盤2の上面に均一な膜厚で塗布することができる。均一な膜厚で塗布することができるので、膜厚ばらつきが原因となって発生するパターン不良を低減することができ、半導体素子の歩留まりを改善することができる。さらに、基盤処理装置1は、既存の設備を安価な費用で改造して実現することができる。
【0039】
このように、鉛直方向に延びる中心軸まわりに回転可能な基盤2の上面に前記中心軸上に配置される薬液ノズル14から鉛直方向の下方に溶液を吐出して塗布するにあたって、薬液ノズル14の先端から基盤2の上面までのノズル基盤間距離Lが予め定める第1の距離と予め定める第1の距離よりも小さい予め定める第2の距離との間で、基盤2が静止している状態のときから、基盤2が回転している状態のときにわたって、薬液ノズル14から溶液を基盤2の上面に吐出して塗布しつつ、基盤2の回転に連動して薬液ノズル14を鉛直方向の下方に移動する。
【0040】
したがって、本発明に係る塗布方法を適用すれば、基盤2の回転と連動して薬液ノズル14の高さを制御することができるので、高粘度の溶液を塗布しても、基盤2の中心付近の溶液の盛り上がりと薬液ノズル14とが接すること、および溶液が水あめ状の状態、すなわち水あめが糸状に長く尾を引くような状態になることを回避することができ、基盤2の表面に均一な膜厚で溶液を塗布することができる。
【0041】
さらに、薬液ノズル14は、基盤2が静止している状態で、前記ノズル基盤間距離Lが前記予め定める第1の距離で溶液の吐出を開始し、溶液の吐出を開始した後、基盤2の回転を開始すると同時に下降を開始し、基盤2の回転数が予め定める第1の回転数になる時に、前記予め定める第2の距離まで下降し、前記ノズル基盤間距離Lが前記予め定める第2の距離に到達した後、溶液の吐出を停止する。
【0042】
したがって、静止状態のとき薬液ノズル14位置を高くして溶液を吐出するので、中心付近の溶液の盛り上がりに薬液ノズル14が接することを防止することができ、かつ、基盤2が第1の回転数で回転している状態のとき、薬液ノズル14の位置を低くするので、水あめ状の状態、すなわち水あめが糸状に長く尾を引くような状態を回避することができ、高粘度の溶液を基盤2の表面に均一な膜厚で塗布することができる。
【0043】
さらに、前記予め定める第1の距離は、7mm〜10mmであるので、基盤2が静止している状態で高粘度の溶液を吐出しても、基盤2の中心付近で低粘度の溶液の場合よりも高く盛り上がった溶液に薬液ノズル14が接することはない。
【0044】
さらに、前記予め定める第2の距離は、2mm〜3mmであるので、高粘度の溶液であっても溶液が水あめ状の状態、すなわち水あめが糸状に長く尾を引くような状態になることはない。
【0045】
さらに、基盤2が静止状態から前記予め定める第1の回転数になるまでの加速時間は、0.5秒〜2秒であり、前記予め定める第1の回転数は、500回転/秒〜2000回転/秒であるので、高粘度の溶液が円形に広がりをはじめ、水あめ状になることはない。
【0046】
さらに、薬液ノズル14は、基盤2が静止している状態で、1秒〜5秒間溶液を吐出し、基盤2が前記予め定める第1の回転数で回転している状態で、2秒〜5秒間溶液を吐出するので、高粘度の溶液の盛り上がりを制御し基盤2の回転時に溶液が基盤に均一に塗布することができる。
【0047】
さらに、前記溶液の粘度は、250cp(0.25パスカル秒)以上4500cp以下であるので、250cp以上4500cp以下の高い粘度の溶液を塗布しても、膜厚を均一にすることができる。
【0048】
さらに、前記溶液は、ポリイミド溶液であるので、均一な膜厚のポリイミド膜を形成することができる。
【0049】
さらに、前記溶液は、感光性樹脂のレジスト膜を形成するための溶液であるので、均一な膜厚の感光性樹脂のレジスト膜を形成することができる。
【0050】
さらに、基盤吸着チャック11によって、基盤2が載置され、基盤回転用モータ13によって、基盤吸着チャック11に載置される基盤2が、鉛直方向に延びる中心軸まわりに回転され、前記中心軸上に配置される薬液ノズル14によって、鉛直方向の下方に設けられる基盤2に溶液が吐出されて塗布され、ノズル上下シリンダ15およびノズル支柱16によって、薬液ノズル14が鉛直方向の下方に移動される。そして、制御部19によって、基盤回転用モータ13および薬液ノズル14を制御して、基盤2が静止している状態のときから、基盤2が回転している状態のときにわたって、溶液を薬液ノズル14から基盤2の上面に吐出させて塗布しつつ、基盤回転用モータ13による基盤2の回転に連動して、ノズル上下シリンダ15およびノズル支柱16によって薬液ノズル14が、薬液ノズル14の先端から基盤2の上面までのノズル基盤間距離Lが予め定める第1の距離と予め定める第1の距離よりも小さい予め定める第2の距離との間で移動される。
【0051】
したがって、基盤2の回転と連動して薬液ノズル14の高さを制御することができるので、高粘度の溶液を塗布しても、基盤2の中心付近の溶液の盛り上がりと薬液ノズル14とが接すること、および溶液が水あめ状の状態、すなわち水あめが糸状に長く尾を引くような状態になることを回避することができ、基盤2の表面に均一な膜厚で溶液を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の一形態である基盤処理装置1の構成を模式的に示す図である。
【図2】基盤処理装置1がポリイミド溶液を塗布する塗布シーケンスを示すグラフである。
【図3】基盤2に形成されたポリイミド溶液の膜厚分布を示す図である。
【図4】低粘度の溶液および高粘度の溶液をノズルから基盤に吐出した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 基盤処理装置
2 基盤
11 基盤吸着チャック
12 カップ
13 基盤回転用モータ
14,14a 薬液ノズル
15 ノズル上下シリンダ
16 ノズル支柱
17 上方センサ
18 下方センサ
19 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる中心軸まわりに回転可能な基盤の上面に前記中心軸上に配置されるノズルから鉛直方向の下方に溶液を吐出して塗布する塗布方法であって、
ノズルの先端から基盤の上面までのノズル基盤間距離が予め定める第1の距離と予め定める第1の距離よりも小さい予め定める第2の距離との間で、基盤が静止している状態のときから、基盤が回転している状態のときにわたって、ノズルから溶液を基盤の上面に吐出して塗布しつつ、基盤の回転に連動してノズルを鉛直方向の下方に移動することを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
前記ノズルは、
前記基盤が静止している状態で、かつ前記ノズル基盤間距離が前記予め定める第1の距離で溶液の吐出を開始し、
溶液の吐出を開始した後、前記基盤の回転を開始すると同時に下降を開始し、
前記基盤の回転数が予め定める第1の回転数になる時に、前記予め定める第2の距離まで下降し、
前記ノズル基盤間距離が前記予め定める第2の距離に到達した後、溶液の吐出を停止することを特徴とする請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記予め定める第1の距離は、7mm〜10mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記予め定める第2の距離は、2mm〜3mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の塗布方法。
【請求項5】
前記基盤が静止状態から前記予め定める第1の回転数になるまでの加速時間は、0.5秒〜2秒であり、
前記予め定める第1の回転数は、500回転/秒〜2000回転/秒であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の塗布方法。
【請求項6】
前記ノズルは、基盤が静止している状態で、1秒〜5秒間溶液を吐出し、基盤が前記予め定める第1の回転数で回転している状態で、2秒〜5秒間溶液を吐出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の塗布方法。
【請求項7】
前記溶液の粘度は、250cp(0.25パスカル秒)以上4500cp以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の塗布方法。
【請求項8】
前記溶液は、ポリイミド溶液であることを特徴とする請求項1に記載の塗布方法。
【請求項9】
前記溶液は、感光性樹脂のレジスト膜を形成するための溶液であることを特徴とする請求項1に記載の塗布方法。
【請求項10】
基盤を載置する載置手段と、
前記基盤載置手段に載置される前記基盤を、鉛直方向に延びる中心軸まわりに回転させる回転手段と、
前記中心軸上に配置され、鉛直方向の下方に設けられる前記基盤に溶液を吐出して塗布する吐出手段と、
前記吐出手段を鉛直方向の下方に移動させる移動手段と、
前記回転手段および前記吐出手段を制御して、基盤が静止している状態のときから、基盤が回転している状態のときにわたって、溶液を前記吐出手段から前記基盤の上面に吐出させて塗布しつつ、前記回転手段による前記基盤の回転に連動して、前記移動手段によって前記吐出手段を、前記吐出手段の先端から前記基盤の上面までの距離が予め定める第1の距離と予め定める第1の距離よりも小さい予め定める第2の距離との間で移動させる制御手段とを含むことを特徴とする塗布装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−42325(P2010−42325A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206276(P2008−206276)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】