説明

増幅回路及び信号処理装置

【課題】拡散抵抗で形成された抵抗素子でゲインを設定する増幅回路において、入力信号の電圧変化に関わらず、ゲイン及び入出力特性のリニアリティを安定化させ得る増幅回路を提供する。
【解決手段】基板上に形成される拡散層と、拡散層を囲むウェルとを有する拡散抵抗であって、複数の拡散抵抗R18,R19の抵抗値比に基づいてゲインを設定する増幅器15を備えた増幅回路において、ウェルの電位を、該拡散抵抗R18,R19の抵抗体のいずれかの端子から常時自己バイアスで供給する電位供給回路16a,16bを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
拡散抵抗で形成される抵抗素子でゲインを調整する増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置に搭載された増幅回路では、増幅器のゲイン(利得)を設定する抵抗を拡散抵抗で形成したものがある。このような拡散抵抗では、基板上に形成される拡散層と、その拡散層を取り囲むウェルの電位(島電位)との電位差の変化により抵抗値が変動するため、拡散抵抗を抵抗素子として使用した増幅回路では、拡散抵抗の抵抗値の変動により、所要のゲインが安定して得られないことがある。そこで、拡散抵抗の抵抗値の変動による増幅回路の増幅率の変動を抑制することが必要となっている。
【0003】
図6は、抵抗素子として拡散抵抗を使用した増幅回路の一例を示す。入力信号INは入力抵抗R1を介して増幅器1の一方の入力端子に入力され、増幅器1の他方の入力端子には基準電圧Vsが入力される。
【0004】
増幅器1の出力端子と、増幅器1の一方の入力端子とは帰還抵抗R2を介して接続され、増幅器1の出力信号が抵抗R2を介して一方の入力端子に帰還される。増幅器1の増幅率は、帰還抵抗R2の抵抗値及び入力抵抗R1と帰還抵抗R2との抵抗値の比により設定される。
【0005】
前記抵抗R1,R2はP型の拡散抵抗で構成され、N型ウェル上にP型拡散層が形成されている。そして、N型ウェルに高電位側電源VDDが島電位として供給され、P型拡散層の両端部に配線層が接続されて、所要の抵抗体が形成される。
【0006】
P型拡散抵抗は、抵抗体の入力電圧より島電位を高くする必要がある。すなわち、島電位が入力電圧より低くなると、P型の抵抗体とN型ウェルとの間に順方向のバイアス電圧が印加されてしまうため、抵抗体からN型ウェルに洩れ電流が流れてしまうからである。
【0007】
また、このような拡散抵抗では、島電位と入力電圧との電位差が増大すると、空乏層の幅が狭くなって、抵抗体の抵抗値が増大することが知られている。このため、図6に示す増幅回路では、入力信号Vinの電圧振幅が大きくなって、入力信号Vinの電圧が高くなったとき、抵抗R1の抵抗値が減少、抵抗R2の抵抗値が増大し、図7に示すように、入力信号Vinの電圧が高くなるにつれて、ゲインGが増大する。従って、入力信号Vinの電圧が基準電圧Vsからずれると、増幅器1のゲインGが狙い値からずれてしまう。
【0008】
図8は、上記のような増幅器を使用したセンサ用増幅回路を示す。このセンサ用増幅回路は、センサ素子2の微小な出力信号を増幅する差動増幅段3と、差動増幅段3の出力信号を増幅して出力信号OUTを出力する出力段4とで構成される。そして、差動増幅段3あるいは出力段4で図6に示す増幅器1が使用される。
【特許文献1】特開昭57−44331号公報
【特許文献2】特開昭57−78163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、図6に示す増幅器1では入力信号Vinの電圧変動により、増幅器1のゲインGが狙い値からずれてしまうため、入出力特性のリニアリティを確保することができないという問題点がある。
【0010】
従って、図8に示すようなセンサ用増幅回路に図6に示す増幅器1を使用した場合にも、センサ素子2の出力信号の電圧変化にともない、差動増幅段3及び出力段4の総ゲインが変動し、入出力特性のリニアリティが劣化するという問題点がある。
【0011】
一方、出力信号として略固定電位を出力する増幅器では、抵抗体の一方の端子電圧、すなわち高電位側の端子電圧を島電位として自己バイアスする構成が提案されている。このような構成では、入力抵抗と帰還抵抗の抵抗値の比をほぼ一定に維持して、ゲインを安定化させ、リニアリティを維持することができる。
【0012】
しかし、増幅器の入力信号が交流的に変動する場合には、島電位と抵抗体の電位が逆転することがあるため、島電位を常時自己バイアスで供給することはできない。
特許文献1には、A/D変換器のラダー抵抗を構成する多数の拡散抵抗の逆バイアス電圧を一定とするための構成が開示されている。しかし、抵抗体の入力電圧が変動する場合に、島電位と抵抗体との間の電位差を調製するための構成は開示されていない。
【0013】
特許文献2には、抵抗体の島電位を、抵抗体の各端子の近傍で各端子に対してそれぞれ一定量バイアスして、抵抗体と島電位との電位差を一定に維持する構成が開示されている。
【0014】
しかし、このような構成では、各抵抗体の端子にそれぞれバッファアンプを必要とするため、このような抵抗体を多数使用する増幅回路では、回路規模が増大するという問題点がある。
【0015】
この発明の目的は、拡散抵抗で形成された抵抗素子でゲインを設定する増幅回路において、入力信号の電圧変化に関わらず、ゲイン及び入出力特性のリニアリティを安定化させ得る増幅回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、基板上に形成される拡散層と、前記拡散層を囲むウェルとを有する拡散抵抗であって、複数の前記拡散抵抗の抵抗値比に基づいてゲインを設定する増幅器を備えた増幅回路において、前記ウェルの電位を、該拡散抵抗の抵抗体のいずれかの端子から常時自己バイアスで供給する電位供給回路を備えた増幅回路により達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、拡散抵抗で形成された抵抗素子でゲインを設定する増幅回路において、入力信号の電圧変化に関わらず、ゲイン及び入出力特性のリニアリティを安定化させ得る増幅回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第一の実施の形態)
以下、この発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。図1に示す増幅回路は、差動増幅段11と、出力段12とで構成され、ブリッジ回路で構成されるセンサ素子13から出力される差動信号Sa,Sbを増幅して出力信号Voutとして出力する。
【0019】
センサ素子13は、例えば加速度センサのセンサ素子であり、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の加速度を検出するセンサでは、3個のセンサ素子13で各方向の加速度が検出される。そして、各センサ素子13の出力信号が差動増幅段11で電圧増幅され、出力段12で所望のゲインを確保するように増幅される。
【0020】
前記差動増幅段11では、前記差動信号Sa,Sbが増幅器14a,14bの一方の入力端子に入力される。増幅器14a,14bの他方の入力端子は、抵抗R11を介して接続されるとともに、それぞれ帰還抵抗R12,R13を介してその出力端子に接続される。
【0021】
前記増幅器14aの出力信号は、抵抗R14を介して増幅器14cの一方の入力端子に入力され、前記増幅器14bの出力信号は、抵抗R15を介して増幅器14cの他方の入力端子に入力される。
【0022】
また、増幅器14cの一方の入力端子と出力端子は帰還抵抗R16を介して接続され、増幅器14cの他方の入力端子には抵抗R17を介して基準電圧Vsが入力される。基準電圧Vsは、高電位側電源VDDと低電位側電源Vssとの中間電位である。
【0023】
このような構成により、差動増幅段11ではセンサ素子13から出力される差動信号Sa,Sbの電位差を増幅して増幅器14cから出力する。
前記増幅器14cの出力信号は、出力段12に入力信号電圧V1として入力される。入力信号電圧V1は、入力抵抗R18を介して増幅器15の一方の入力端子に入力され、増幅器15の他方の入力端子には基準電圧Vsが入力されている。また、増幅器15の出力端子と一方の入力端子とは帰還抵抗R19を介して接続されている。
【0024】
前記抵抗R11〜R19はP型拡散抵抗で構成され、差動増幅段11の抵抗R11〜R17には電源VDDが島電位として供給されている。差動信号Sa,Sbの電圧変動は微小であるので、抵抗R11〜R17に島電位として電源VDDを供給しても、その抵抗値の変動は微小である。
【0025】
出力段12の抵抗R18では、同抵抗R18のいずれかの端子電圧がスイッチ回路16aで選択されて島電位として供給される。また、出力段12の抵抗R19には、同抵抗R19のいずれかの端子電圧がスイッチ回路16bで選択されて島電位として供給される。
【0026】
前記出力段12の入力信号電圧V1は、比較器17の一方の入力端子に入力され、比較器17の他方の入力端子には基準電圧Vsが入力される。そして、比較器17は入力信号電圧V1と基準電圧Vsを比較し、その比較結果をHレベルあるいはLレベルのスイッチ制御信号SCとして出力する。
【0027】
前記スイッチ制御信号SCは、前記スイッチ回路16a,16bに供給される。そして、スイッチ制御信号SCがHレベルとなるとき、すなわち入力信号電圧V1が基準電圧Vsより高くなるとき、スイッチ回路16aでは抵抗R18の島電位として抵抗R18の両端子電圧のうち高い方の端子電圧である入力信号電圧V1を選択して供給する。
【0028】
また、スイッチ回路16bでは抵抗R19の島電位として抵抗R19の両端子電圧のうち高い方の端子電圧、すなわち増幅器15の入力端子電圧を選択して供給する。
一方、スイッチ制御信号SCがLレベルとなるとき、すなわち入力信号電圧V1が基準電圧Vsより低くなるとき、スイッチ回路16aでは抵抗R18の両端子電圧のうち高い方の端子電圧である増幅器15の入力端子電圧を選択して、抵抗R18の島電位として供給する。
【0029】
また、スイッチ回路16bでは抵抗R19の島電位として、抵抗R19の両端子電圧のうち高い方の端子電圧、すなわち増幅器15の出力信号Voutを選択して供給する。
前記スイッチ回路16aは、PチャネルMOSトランジスタとNチャネルMOSトランジスタとを並列に接続して構成する転送ゲートを2つ使用して構成可能である。すなわち、各転送ゲートに抵抗R18の両端子電圧をそれぞれ入力し、スイッチ制御信号SCに基づいて生成される相補信号を各トランジスタのゲートに入力して、いずれかの転送ゲートが導通するように構成する。スイッチ回路16bも同様である。
【0030】
さて、上記のように構成された増幅回路では、センサ素子13から出力される差動信号Sa,Sbの電位差が差動増幅段11で増幅され、その出力信号が出力段12に入力信号電圧V1として入力される。
【0031】
出力段12では、増幅器15で入力信号電圧V1を抵抗R18,R19の抵抗比に基づいて増幅して出力信号Voutとして出力する。このとき、入力信号電圧V1が基準電圧Vsより高くなると、スイッチ回路16aでは抵抗R18の島電位として入力信号電圧V1を選択して供給する。
【0032】
また、スイッチ回路16bでは抵抗R19の島電位として増幅器15の入力端子電圧を選択して供給する。
一方、入力信号電圧V1が基準電圧Vsより低くなるとき、スイッチ回路16aでは増幅器15の入力端子電圧を選択して、抵抗R18の島電位として供給する。また、スイッチ回路16bでは増幅器15の出力信号Voutを選択して抵抗R19の島電位として供給する。
【0033】
このような動作により、入力電圧V1が基準電圧Vsに対し交流的に変化するとき、各抵抗R18,R19にはその両端子電圧のうち高電位側の端子電圧が島電位として供給される。
【0034】
上記のような増幅回路では、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)出力段12の抵抗R18,R19の島電位に一方の端子電圧を供給して自己バイアスするので、入力信号電圧V1の電圧変動による抵抗R18,R19の抵抗値の比の変動を抑制することができる。従って、出力段12の入出力特性において、ゲイン及びリニアリティを安定化させることができる。
(2)入力信号電圧V1と基準電圧Vsとを比較し、その比較結果に基づいて各抵抗R18,R19の両端子電圧のうち高い方の電圧を各抵抗R18,R19の島電位として供給するので、各抵抗R18,R19の入力電圧が島電位より高くなることはない。従って、抵抗R18,R19から基板への順方向電流の発生を防止することができる。
(第二の実施の形態)
図2は、第二の実施の形態を示す。この実施の形態の増幅回路は、センサ素子から出力される差動信号を増幅して出力する出力信号に、高い総ゲインを必要としないとき、出力段を省略して、差動増幅段の出力信号を直接次段の回路に出力する場合の構成を示す。第一の実施の形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明する。
【0035】
図2に示す増幅回路において、センサ素子13は前記第一の実施の形態と同様である。差動増幅段18は、第一の実施の形態の差動増幅段11の構成に比較器19とスイッチ回路20a〜20dを付加した構成である。増幅器14a,14b及び抵抗R11〜R13は第一の実施の形態と同様である。また、抵抗R14〜R17及び増幅器14cの接続構成も第一の実施の形態と同様であり、増幅器14cから出力信号Voutが出力される。
【0036】
そして、各抵抗R14〜R17にはスイッチ回路20a〜20dで自己バイアスによる島電位を供給するようになっている。その具体的構成を以下に説明する。
スイッチ回路20aは、抵抗R14の両端子のいずれかの電圧を選択して同抵抗R14に島電位として供給する。スイッチ回路20bは、抵抗R15の両端子のいずれかの電圧を選択して同抵抗R15に島電位として供給する。
【0037】
スイッチ回路20cは、抵抗R16の両端子のいずれかの電圧を選択して同抵抗R16に島電位として供給する。スイッチ回路20dは、抵抗R17の両端子のいずれかの電圧を選択して同抵抗R17に島電位として供給する。
【0038】
前記スイッチ回路20a〜20dは、比較器19から出力されるスイッチ制御信号SCにより制御される。比較器19は、増幅器14aの出力電圧Vmと前記基準電圧Vsとを比較し、増幅器14aの出力電圧Vmが基準電圧Vsより高くなると、Hレベルのスイッチ制御信号SCをスイッチ回路20a〜20dに出力し、増幅器14aの出力電圧Vmが基準電圧Vsより低くなると、Lレベルのスイッチ制御信号SCをスイッチ回路20a〜20dに出力する。
【0039】
スイッチ制御信号SCがHレベルとなると、スイッチ回路20aでは抵抗R14の島電位として抵抗R14の両端子電圧のうち高い方の端子電圧である増幅器14aの出力電圧を選択して供給する。スイッチ回路20bでは抵抗R15の島電位として抵抗R15の両端子電圧のうち高い方の端子電圧である増幅器14cの入力電圧を選択して供給する。
【0040】
また、スイッチ回路20cでは抵抗R16の島電位として抵抗R16の両端子電圧のうち高い方の端子電圧である増幅器14cの入力電圧を選択して供給する。スイッチ回路20dでは抵抗R17の島電位として抵抗R17の両端子電圧のうち高い方の端子電圧である基準電圧Vsを選択して供給する。
【0041】
スイッチ制御信号SCがLレベルとなると、スイッチ回路20aでは抵抗R14の島電位として抵抗R14の両端子電圧のうち高い方の端子電圧である増幅器14cの入力電圧を選択して供給する。スイッチ回路20bでは抵抗R15の島電位として抵抗R15の両端子電圧のうち高い方の端子電圧である増幅器14bの出力電圧を選択して供給する。
【0042】
また、スイッチ回路20cでは抵抗R16の島電位として抵抗R16の両端子電圧のうち高い方の端子電圧である出力信号Voutを選択して供給する。スイッチ回路20dでは抵抗R17の島電位として抵抗R17の両端子電圧のうち高い方の端子電圧である増幅器14cの入力電圧を選択して供給する。
【0043】
上記のように構成された増幅回路では、差動増幅段18の増幅器14cに接続される抵抗R14〜R17には自己バイアスにより島電位を供給し、その島電位として各抵抗R14〜R17の端子電圧のうち高い方の端子電圧を供給する。
【0044】
従って、差動増幅段18から出力される出力信号Voutにおいて、第一の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。
(第三の実施の形態)
図3は、第三の実施の形態を示す。この実施の形態は、第一の実施の形態の比較器17に、基準電圧Vsに代えて比較調整電圧Vcが入力されている。その他の構成は、第一の実施の形態と同様である。
【0045】
比較調整電圧Vcは、基準電圧Vsより僅かに高い電圧あるいは低い電圧に設定される。比較器17で入力信号電圧V1と基準電圧Vsを比較する構成では、入力信号電圧V1が基準電圧Vs付近、すなわち高電位側電源VDDと低電位側電源Vssとの中間電位付近で定常状態となると、比較器17の出力信号がHレベルとLレベルとの間で頻繁に切り替わる。そして、スイッチ回路16a,16bの切り替え動作が頻繁に繰り返されるチャタリング動作が発生してしまう。
【0046】
この実施の形態では、比較器17で入力信号電圧V1と比較調整電圧Vcとが比較されるので、入力信号電圧V1が高電位側電源VDDと低電位側電源Vssとの中間電位付近で定常値となる場合にも、スイッチ回路16a,16bでのチャタリング動作の発生を防止することができる。
(第四の実施の形態)
図4は、第四の実施の形態を示す。この実施の形態は、出力段12の増幅器15の帰還抵抗を複数の抵抗19a〜19cに分割し、各抵抗19a〜19cの島電位をそれぞれ独立して自己バイアスし、かつその島電位として、各抵抗19a〜19cの両端子電圧のうち高い方の電圧を供給する構成としたものである。その他の構成は、前記第三の実施の形態と同様である。
【0047】
第三の実施の形態において、出力段12の入力抵抗R18と帰還抵抗R19の抵抗値の比が1:3に設定され、例えば入力抵抗R18が10KΩに設定され、帰還抵抗R19が30KΩに設定されるとき、図4に示すように、帰還抵抗は10KΩの抵抗R19a〜R19cを3本直列に接続するようにレイアウトされる。
【0048】
このような構成で、各帰還抵抗R19a〜R19cの島電位には、スイッチ回路21a〜21cにより、各帰還抵抗R19a〜R19cのいずれか一方の端子電圧が供給される。そして、各スイッチ回路21a〜21cは比較器17から出力されるスイッチ制御信号SCにより、各帰還抵抗R19a〜R19cの両端子電圧のうち高い方の電圧を島電位として供給する。スイッチ制御信号SCによる各スイッチ回路21a〜21cの動作は、第三の実施の形態のスイッチ回路16bの動作と同様である。
【0049】
このような構成により、帰還抵抗R19a〜R19cには当該抵抗の端子電圧が島電位として自己バイアスされるので、各帰還抵抗R19a〜R19cにおいて島電位と抵抗体との電位差が小さくなるとともに、その電位差が各帰還抵抗R19a〜R19cで均一化される。
【0050】
すると、出力段12の入力信号電圧V1が変動した場合における帰還抵抗R19a〜19cの抵抗値の変動を抑制し、入力抵抗R18と帰還抵抗R19a〜19cの抵抗値の比の変動を抑制することができる。従って、出力段12のゲイン及びリニアリティをさらに安定化させることができる。
(第五の実施の形態)
図5は、第五の実施の形態を示す。この実施の形態は、出力段の入力抵抗R18及び帰還抵抗R19の島電位を各抵抗の一方の端子から整流回路を介して供給する構成としたものである。その他の構成は、前記第一の実施の形態と同様である。
【0051】
同図に示すように、出力段12の入力抵抗R18では、入力信号電圧V1がダイオードD1を介して島電位として供給されている。また、ダイオードD1のカソードには抵抗R20を介して基準電圧Vsが供給されている。
【0052】
帰還抵抗R19では、増幅器15の出力信号VoutがダイオードD2を介して島電位として供給される。また、ダイオードD2のカソードには抵抗R21を介して基準電圧Vsが供給されている。
【0053】
前記ダイオードD1,D2は、そのPN接合の順方向電圧降下が、拡散抵抗の抵抗体とウェルとの順方向電圧降下より小さくなるように構成されている。
上記のように構成された出力段12では、出力段12の入力信号電圧V1が基準電圧VsよりダイオードD1の順方向電圧降下分以上高くなると、入力信号電圧V1よりダイオードD1の順方向電圧降下分低い電圧が入力抵抗R18の島電位として自己バイアスされる。
【0054】
出力段12の入力信号電圧V1が基準電圧VsよりダイオードD1の順方向電圧降下分以上高くない場合には、基準電圧Vsが入力抵抗R18の島電位として供給される。
また、出力段12の出力信号Voutが基準電圧VsよりダイオードD2の順方向電圧降下分以上高くなると、出力信号VoutよりダイオードD2の順方向電圧降下分低い電圧が帰還抵抗R19の島電位として自己バイアスされる。
【0055】
出力段12の出力信号Voutが基準電圧VsよりダイオードD2の順方向電圧降下分以上高くない場合には、基準電圧Vsが帰還抵抗R19の島電位として供給される。
このように構成された出力段12では、入力抵抗R18と帰還抵抗R19には自己バイアスにより島電位が供給される。各抵抗R18,R19の抵抗体の電位は、当該島電位より抵抗体とウェルとの順方向電圧降下分以上高くなることはないので、抵抗体から基板への漏れ電流の発生は防止される。従って、第一の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。
【0056】
上記実施の形態は、以下に示す態様で実施することもできる。
・第二の実施の形態の差動増幅段18と、第一の実施の形態の出力段12とを併せ持つ増幅回路としてもよい。
【0057】
なお、以上に記載した実施の形態に記載の増幅回路は、温度、圧力、光信号等の信号処理装置に適用できる。
温度、圧力、光信号等の入力信号の変動を検出する検出回路の出力を、拡散抵抗の島バイアス依存の小さい本実施の形態の増幅回路で信号を増幅して信号処理回路に出力することにより、入力信号が大きく変動する場合であっても、島バイアスの影響を低減できるので、安定した信号処理装置を実現することができる。
【0058】
以下に、本発明の諸態様を付記としてまとめる。
(付記1)
基板上に形成される拡散層と、前記拡散層を囲むウェルとを有する拡散抵抗であって、複数の前記拡散抵抗の抵抗値比に基づいてゲインを設定する増幅器を備えた増幅回路において、
前記ウェルの電位を、該拡散抵抗の抵抗体のいずれかの端子から常時自己バイアスで供給する電位供給回路を備えたことを特徴とする増幅回路。
(付記2)
前記拡散抵抗をP型拡散抵抗で形成し、前記電位供給回路は、前記ウェルの電位として、前記拡散抵抗に該拡散抵抗の抵抗体の電位以上の電位を供給することを特徴とする請求項1記載の増幅回路。
(付記3)
前記電位供給回路は、
前記拡散抵抗の入力信号電圧と基準電圧を比較して、スイッチ制御信号を出力する比較器と、
前記スイッチ制御信号に基づいて、前記抵抗体の端子電圧のうち高電位側の端子電圧を前記ウェルの電位として供給するスイッチ回路と
を備えたことを特徴とする付記1又は2記載の増幅回路。
(付記4)
前記拡散抵抗は、複数の抵抗体を直列に接続して所要の抵抗値を生成し、前記電位供給回路は、各抵抗体の端子電圧のうち高電位側の端子電圧を前記ウェルの電位として供給するスイッチ回路を備えたことを特徴とする付記3記載の増幅回路。
(付記5)
前記比較器に供給する前記基準電圧を、前記入力信号電圧の定常値と異なる電圧としたことを特徴とする付記3又は4記載の増幅回路。
(付記6)
前記スイッチ回路は、
前記拡散抵抗の一方の端子電圧を前記ウェルの電位として供給するダイオードと、
前記ダイオードのカソードに前記基準電圧を供給する抵抗と
を備えたことを特徴とする付記2記載の増幅回路。
(付記7)
外部からの入力信号を検出する検出回路と、
前記検出回路の出力を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路の出力を信号処理する信号処理回路とを有し、
前記増幅回路は、基板上に形成される拡散層と、前記拡散層を囲むウェルとを有する拡散抵抗であって、複数の前記拡散抵抗の抵抗値比に基づいてゲインを設定する増幅器と、
前記ウェルの電位を、該拡散抵抗の抵抗体のいずれかの端子から常時自己バイアスで供給する電位供給回路と
を備えたことを特徴とする信号処理回路。
(付記8)
前記拡散抵抗をP型拡散抵抗で形成し、前記電位供給回路は、前記ウェルの電位として、前記拡散抵抗に該拡散抵抗の抵抗体の電位以上の電位を供給することを特徴とする付記7記載の信号処理装置。
(付記9)
前記電位供給回路は、
前記拡散抵抗の入力信号電圧と基準電圧を比較して、スイッチ制御信号を出力する比較器と、
前記スイッチ制御信号に基づいて、前記抵抗体の端子電圧のうち高電位側の端子電圧を前記ウェルの電位として供給するスイッチ回路と
を備えたことを特徴とする付記7又は8記載の信号処理装置。
(付記10)
前記拡散抵抗は、複数の抵抗体を直列に接続して所要の抵抗値を生成し、前記電位供給回路は、各抵抗体の端子電圧のうち高電位側の端子電圧を前記ウェルの電位として供給するスイッチ回路を備えたことを特徴とする付記9記載の信号処理装置。
(付記11)
前記比較器に供給する前記基準電圧を、前記入力信号電圧の定常値と異なる電圧としたことを特徴とする付記9又は10記載の信号処理装置。
(付記12)
前記スイッチ回路は、
前記拡散抵抗の一方の端子電圧を前記ウェルの電位として供給するダイオードと、
前記ダイオードのカソードに前記基準電圧を供給する抵抗と
を備えたことを特徴とする付記8記載の信号処理装置。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第一の実施の形態を示す回路図である。
【図2】第二の実施の形態を示す回路図である。
【図3】第三の実施の形態を示す回路図である。
【図4】第四の実施の形態を示す回路図である。
【図5】第五の実施の形態を示す回路図である。
【図6】従来例を示す回路図である。
【図7】従来例の入出力特性図である。
【図8】従来例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0060】
11,18 差動増幅段
12 出力段
15 増幅器
16a,16b,20a〜20d,21a〜21c 電位供給回路(スイッチ回路)
17,19 電位供給回路(比較器)
R18,R19 拡散抵抗(入力抵抗、帰還抵抗)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成される拡散層と、前記拡散層を囲むウェルとを有する拡散抵抗であって、複数の前記拡散抵抗の抵抗値比に基づいてゲインを設定する増幅器を備えた増幅回路において、
前記ウェルの電位を、該拡散抵抗の抵抗体のいずれかの端子から常時自己バイアスで供給する電位供給回路を備えたことを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
前記拡散抵抗をP型拡散抵抗で形成し、前記電位供給回路は、前記ウェルの電位として、前記拡散抵抗に該拡散抵抗の抵抗体の電位以上の電位を供給することを特徴とする請求項1記載の増幅回路。
【請求項3】
前記電位供給回路は、
前記拡散抵抗の入力信号電圧と基準電圧を比較して、スイッチ制御信号を出力する比較器と、
前記スイッチ制御信号に基づいて、前記抵抗体の端子電圧のうち高電位側の端子電圧を前記ウェルの電位として供給するスイッチ回路と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の増幅回路。
【請求項4】
前記拡散抵抗は、複数の抵抗体を直列に接続して所要の抵抗値を生成し、前記電位供給回路は、各抵抗体の端子電圧のうち高電位側の端子電圧を前記ウェルの電位として供給するスイッチ回路を備えたことを特徴とする請求項3記載の増幅回路。
【請求項5】
前記比較器に供給する前記基準電圧を、前記入力信号電圧の定常値と異なる電圧としたことを特徴とする請求項3又は4記載の増幅回路。
【請求項6】
前記スイッチ回路は、
前記拡散抵抗の一方の端子電圧を前記ウェルの電位として供給するダイオードと、
前記ダイオードのカソードに前記基準電圧を供給する抵抗と
を備えたことを特徴とする請求項3記載の増幅回路。
【請求項7】
外部からの入力信号を検出する検出回路と、
前記検出回路の出力を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路の出力を信号処理する信号処理回路とを有し、
前記増幅回路は、基板上に形成される拡散層と、前記拡散層を囲むウェルとを有する拡散抵抗であって、複数の前記拡散抵抗の抵抗値比に基づいてゲインを設定する増幅器と、
前記ウェルの電位を、該拡散抵抗の抵抗体のいずれかの端子から常時自己バイアスで供給する電位供給回路と
を備えたことを特徴とする信号処理装置。
【請求項8】
前記拡散抵抗をP型拡散抵抗で形成し、前記電位供給回路は、前記ウェルの電位として、前記拡散抵抗に該拡散抵抗の抵抗体の電位以上の電位を供給することを特徴とする請求項7記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記電位供給回路は、
前記拡散抵抗の入力信号電圧と基準電圧を比較して、スイッチ制御信号を出力する比較器と、
前記スイッチ制御信号に基づいて、前記抵抗体の端子電圧のうち高電位側の端子電圧を前記ウェルの電位として供給するスイッチ回路と
を備えたことを特徴とする請求項7又は8記載の信号処理装置。
【請求項10】
前記拡散抵抗は、複数の抵抗体を直列に接続して所要の抵抗値を生成し、前記電位供給回路は、各抵抗体の端子電圧のうち高電位側の端子電圧を前記ウェルの電位として供給するスイッチ回路を備えたことを特徴とする請求項9記載の信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−81625(P2009−81625A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248895(P2007−248895)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】