説明

壁の下端部構造

【目的】本発明は建築、構築物の外壁材として使用する乾式壁材の下端部構造であり、流水機能、結露防止、断熱効率の向上、乾式壁材の合成樹脂発泡体の吸水防止、等を向上した壁の下端部構造に関するものである。
【構成】垂直平面状の固定部1と、固定部1の下端を外方に傾斜して垂下した傾斜面2と、傾斜面2の下端を外方かつ上方に傾斜して突出した傾斜化粧面4と、傾斜化粧面4の先端を上方に突出した化粧面5とから形成し、傾斜面2と傾斜化粧面4の下端に一定間隔で形成した流水兼通気孔7とから形成した長尺状のスタータAが、壁下地αの土台部に水平に連続状で固定され、スタータAの空間8に乾式壁材Bの下端部を挿入して形成されると共に、乾式壁材Bは合成樹脂発泡体を芯材10とし、裏面側に通気溝17を設けた縦張り外壁材が使用され、乾式壁材Bの働き幅Wを壁下地αのピッチPに対応して形成されている壁の下端部構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築、構築物の外壁材として使用する乾式壁材の下端部構造であり、流水機能、結露防止、断熱効率の向上、乾式壁材の合成樹脂発泡体の吸水防止、等を向上した壁の下端部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されている乾式壁材Bの下端部をカバーする水切りCとしては、壁材と水切りとの間に空間を形成し、水切りに貫通孔を形成して、雨水を外部に排出するものであった。(特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録3012289号
【特許文献2】特許登録3358474号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、芯材として合成樹脂発泡体を使用した乾式壁材を用いた場合には、水切り内部に浸入した雨水が跳ね上がり、乾式壁材端部木口の合成樹脂発泡体に接触し、水分が合成樹脂発泡体内に浸透してしまい、表面材の鉄板の錆発生、合成樹脂発泡体の腐食、濡れ雑巾化による断熱性の低下防止、等の悪影響を与える危険性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような欠点を除去するため、垂直平面状の固定部と、固定部の下端を外方に傾斜して垂下した傾斜面と、傾斜面の下端を外方かつ上方に傾斜して突出した傾斜化粧面と、傾斜化粧面の先端を上方に突出した化粧面とから形成し、傾斜面と傾斜化粧面の下端に一定間隔で形成した流水兼通気孔とから形成した長尺状のスタータが、壁下地の土台部に水平に連続状で固定され、スタータの空間に乾式壁材の下端部を挿入して形成されると共に、乾式壁材は合成樹脂発泡体を芯材とし、裏面側に通気溝を設けた縦張り外壁材が使用され、乾式壁材の働き幅は壁下地のピッチに対応して形成されている壁の下端部構造である。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る壁の下端部構造によれば、
(1)流水兼通気孔が内部に浸入した雨水を速やかに外部に排出する。
(2)傾斜面、傾斜化粧面を形成したために、内部に浸入した雨水が速やかに流下し、乾式壁材の木口に雨水が接触せず、乾式壁材の芯材が合成樹脂発泡体である場合に、合成樹脂発泡体の腐食防止、濡れ雑巾化による断熱性の低下防止、壁下地の腐食防止、乾式壁材の強度低下防止に有効である。
(3)壁内の湿気、汚染空気、廃熱、等を屋外に放出する排気機能を有する。
(4)通気路が空気層として機能し、断熱性を生かせる。
(5)通気路(壁)内に結露が生じない。
(6)結露が生じないので、躯体の腐朽が生じにくい。
(7)通気路(空気層)を形成した乾式壁材が断熱材として機能する。
(8)乾式壁材が断熱材として機能するために、夏季の冷房効率、冬季の暖房効率を高められる。
(9)乾式壁材の断熱性により、乾式壁材の裏面および壁内の温度が高く保持され、より内部結露の発生が抑えられる。
(10)壁下地の躯体のピッチに対応した働き幅で形成した乾式壁材を使用したために、壁下地上に横胴縁を形成する必要が無く、コストが低下し、施工性が向上する。
(11)乾式壁材の芯材を合成樹脂発泡体で形成したために、従来の外壁材として窯業系外壁材を使用した時のように昼の熱を蓄積し、夜間に放熱するようなことが無く、夏にはエアコンによる冷房の効率化を図り、冬には暖房の効率化が図られ、省エネルギーとコスト削減が図られる。
等の特徴、効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に図面を用いて本発明に係る壁の下端部構造の一実施例について詳細に説明する。すなわち、図1、図2(a)、(b)は本発明に係る壁の下端部構造の一実施例を示す断面図、図3(a)〜(c)は本発明に係る壁の下端部構造に使用するスタータAを示す断面図と一部切り欠き斜視図である。また、図4(a)、(b)は乾式壁材B、図5は水切りCの断面図である。
【0008】
スタータAは、垂直平面状の固定部1と、固定部1の下端を外方に傾斜して垂下した傾斜面2と、傾斜面2の下端を外方に突出した底面3と、底面3の先端を、外方かつ上方に傾斜して突出した傾斜化粧面4と、傾斜化粧面4の先端を上方に突出した化粧面5と、化粧面5の先端を内方に折り返した舌片6とから形成し、図では底面3に一定間隔で形成した流水兼通気孔7と、傾斜面2、底面3、傾斜化粧面4と化粧面5とから空間8を形成したものである。
【0009】
固定部1はスタータAを壁下地αに固定具βにより固定する部分である。
【0010】
傾斜面2は、スタータAに空間8を形成し、図1に示すように乾式壁材Bの木口B1とスタータA間に空間8を形成することにより、図6に矢印で示すように雨水が浸入した場合に、雨水が乾式壁材Bの木口B1に接触せず、木口B1が濡れることが無いようにしたものである。
【0011】
底面3は、傾斜面2と傾斜化粧面4の下端部分に形成し、主に流水兼通気孔7の形成場所として機能すると共に、内部に浸入した雨水を、スムーズに流水兼通気孔7より外部に排出するために形成した部分である。
【0012】
傾斜化粧面4は、内部に浸入した雨水を、スムーズに流水兼通気孔7より外部に排出するために形成した傾斜部分であると共に、傾斜することにより、乾式壁材Bの凹部14を垂下した雨水が跳ね返って木口B1の芯材10が濡れるのを防止するものである。このため、芯材10が吸水することによる腐食、濡れ雑巾化による断熱性の低下、壁下地αの腐食、乾式壁材Bの強度低下を防止できるものである。
【0013】
化粧面5は、乾式壁材Bの下端部の木口B1部分を覆い、乾式壁材Bの下端部分が外部に露出するのを防止する部分である。
【0014】
舌片6は、金属製板材により形成されたスタータAの端部により怪我をしないように形成した部分である。
【0015】
流水兼通気孔7は、底面3に一定ピッチで形成し、乾式壁材BとスタータAの化粧面5間より浸入した雨水を外部に排出するためのものである。また、流水兼通気孔7の形成ピッチは30〜300mm位である。
【0016】
その素材としては、金属薄板、例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板(塩ビ鋼板等)、サンドイッチ鋼板(制振鋼板等)、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等(勿論、これらを各種色調に塗装したカラー板を含む)の一種を押出成形、ロール成形、プレス成形、等によって各種形状に成形したものである。
【0017】
乾式壁材Bは図4に示すように表面材9と裏面材11間に芯材10を形成し、表面材9の化粧面12に、凸部13、凹部14を形成し、上下端に雌型連結部15と雄型連結部16、裏面に通気溝17を形成し、雄型連結部16内にパッキン18を形成したものであり、固定具βの打設と、雌型連結部15と雄型連結部16を嵌合することにより乾式壁材Bを連結するものである。勿論、本発明に係る壁の下端部構造に使用するスタータAは、図では縦張りの乾式壁材Bに使用しているが、横張りの乾式壁材Bにも使用できるものである。
【0018】
このように、乾式壁材Bの働き幅Wを壁下地αの形成ピッチPに対応して形成することにより、壁下地α上に胴縁などの固定下地を形成することなく、乾式壁材Bを縦に施工することが出来、通気路Tも連続的に土台から軒に向かって連続的に形成されるものである。勿論、壁下地α上にボード等の断熱材を形成した場合にでも、ボードの固定位置により壁下地αの場所が特定できるために、乾式壁材Bの施工には支障は来さないものである。
【0019】
表面材9、裏面材11は金属薄板、例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板(塩ビ鋼板等)、サンドイッチ鋼板(制振鋼板等)、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等(勿論、これらを各種色調に塗装したカラー板を含む)の一種をロール成形、プレス成形、押出成形等によって各種形状に成形したもの、あるいは無機質材を押出成形、プレス成形、オートクレーブ養生成形、押出−乾燥−焼成、等して各種任意形状に形成したものである。
【0020】
芯材10は例えばポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ユリアフォーム、等の合成樹脂発泡体からなるものであり、例えばレゾール型フェノールの原液と、硬化剤、発泡剤を混合し、表面材9、もしくは裏面材11の裏面側に吐出させ、加熱して反応・発泡・硬化させて形成したものである。
【0021】
合成樹脂発泡体よりなる芯材10は、夏には、従来の乾式壁材Bとして窯業系外壁材を使用した時のように、昼の熱を蓄積し、夜間に放熱するようなことが無く、夏にはエアコンによる冷房の効率化を図り、冬には暖房の効率化が図られ、省エネルギーとコスト削減が図られるものである。これは、窯業系外壁材は比重が大きいために、蓄熱すると共に、熱を徐々に放熱する性状を有するのに対して、合成樹脂発泡体よりなる芯材10を使用した本発明に係る壁の下端部構造で使用する乾式壁材Bは、蓄熱することが無いために、夜間に熱を放出することが無く、快適な居住空間を形成すると共に、省エネルギーとコスト削減が図られるものである。
【0022】
図2(b)、図4(b)に示すように壁下地αの形成ピッチをP、乾式壁材Bの働き幅をWとすると、W=P、あるいはW=n×P(nは正整数)で形成するものであり、乾式壁材Bの働き幅Wは壁下地α3の形成ピッチPに対応して形成するものである。WとPの寸法は、具体的には455mm(1尺5寸)、910mm(3尺)、500mm、1000mm、等である。
【0023】
通気溝17は、乾式壁材Bの裏面を凹条に窪ませてくぼみ形成した部分により形成されるものであり、点線矢印で示すように流水兼通気孔7より侵入した外部の新鮮空気が、屋内の湿気、汚染空気、廃熱、等を屋外に排出するための空間である。その寸法Hとしては、H=7mm〜12mm位である。勿論、通気溝17により形成した通気路Tの上端部分には、通気孔を形成した止縁、あるいは軒天に軒天有孔板を形成し、通気路Tを通ってきた湿気、汚染空気、廃熱、等を屋外に排出するものである。
【0024】
次に、本発明に係る壁の下端部構造の施工方法について簡単に説明する。まず、図3(a)〜(c)に示すようなスタータAを図1に示すように固定部1を固定具βにより打設し、基礎γ部分の水切りC上の壁下地αに連続状で複数本固定する。次に、図4(a)に示すような乾式壁材Bを順次連結し、下端の木口B1を空間8内に挿入して縦に施工するものである。
【0025】
以上説明したのは本発明に係る壁の下端部構造の一実施例にすぎず、図7〜図10(a)〜(c)に示すように形成することもできる。
【0026】
図7は1階と2階等の中間部に本発明に係る壁の下端部構造を施工した状態を示す断面図、図8は窓上に本発明に係る壁の下端部構造を施工した状態を示す断面図である。
【0027】
図9(a)〜(c)はスタータAのその他の実施例を示す説明図である。
【0028】
図10(a)〜(c)はスタータAのその他の実施例を示す説明図である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る壁の下端部構造の施工状態を示す説明図である。
【図2】本発明に係る壁の下端部構造の施工状態を示す説明図である。
【図3】本発明に係る壁の下端部構造に使用するスタータを示す説明図である。
【図4】本発明に係る壁の下端部構造に使用する乾式壁材を示す断面図である。
【図5】本発明に係る壁の下端部構造に使用する水切りを示す断面図である。
【図6】本発明に係る壁の下端部構造の施工状態を示す説明図である。
【図7】本発明に係る壁の下端部構造のその他の実施例を示す断面図である。
【図8】本発明に係る壁の下端部構造のその他の実施例を示す断面図である。
【図9】本発明に係る壁の下端部構造のその他の実施例を示す断面図である。
【図10】本発明に係る壁の下端部構造のその他の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
A スタータ
B 乾式壁材
B1 木口
C 水切り
T 通気路
α 壁下地
β 固定具
γ 基礎
1 固定部
2 傾斜面
3 底面
4 傾斜化粧面
5 化粧面
6 舌片
7 流水兼通気孔
8 空間
9 表面材
10 芯材
11 裏面材
12 化粧面
13 凸部
14 凹部
15 雌型連結部
16 雄型連結部
17 通気溝
18 パッキン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直平面状の固定部と、該固定部の下端を外方に傾斜して垂下した傾斜面と、該傾斜面の下端を外方かつ上方に傾斜して突出した傾斜化粧面と、該傾斜化粧面の先端を上方に突出した化粧面とから形成し、傾斜面と傾斜化粧面の下端に一定間隔で形成した流水兼通気孔とから形成した長尺状のスタータが、壁下地の土台部に水平に連続状で固定され、該スタータの空間に乾式壁材の下端部を挿入して形成されると共に、該乾式壁材は合成樹脂発泡体を芯材とし、裏面側に通気溝を設けた縦張り外壁材が使用され、乾式壁材の働き幅は壁下地のピッチに対応して形成されていることを特徴とする壁の下端部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−196207(P2008−196207A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32808(P2007−32808)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(390018463)アイジー工業株式会社 (100)
【Fターム(参考)】