説明

壁パネル装置、その施工方法及び建物

【課題】輸送効率及び現場での施工効率を高めることのできる壁パネル装置を得る。
【解決手段】壁パネル装置11は、複数の短冊状の壁パネル12を備えている。壁パネル12は、隣接する端部の間に隙間が形成された状態で並設されている外装材13と、その背面の幅方向両端において高さ方向に沿って延びるように設けられているスタッド14とを備えている。スタッド14には、互いに隣接する後方フランジ14cに跨るようにして連結板15が取り付けられている。隣接するウェブ14aと連結板15とに囲まれてなる縦目地Aには、防水ゴム16及びシール材30が取り付けられている。防水ゴム16及びウェブ14aには、上下方向に所定間隔をおいて互いに対応する位置に複数の通し孔16c,14dがそれぞれ形成されている。これら通し孔16c,14dには、連結ワイヤ20が挿通された状態で各壁パネル12に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁パネル装置、その施工方法及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物において壁を曲面状に形成するニーズがある。このようなニーズに対応すべく、例えば、壁パネルの全体を所望の曲面状に予め成形したものを用いて曲面状の壁を構成するものが提案されている。
【0003】
しかしながら、予め曲面状に成形された壁パネルは、その特異な全体形状により、輸送の際に占有する領域が大きくなる。その結果、輸送効率が悪くなり、ひいては建物のコスト高に結びつく。
【0004】
そこで、近年では、幅狭の短冊状に成形された複数の壁パネルを施工現場において併設することにより曲面状の壁を構成するものが一般的になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このように短冊状の壁パネルを用いたものであれば、輸送の際には各部材が小さくまとめられるので、輸送効率を高めることができる。また、建物の施工現場においては所望の曲面にあわせて各壁パネル同士を適宜連結していくことにより、上記ニーズに対応することができる。
【特許文献1】特許第2978068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、幅狭の壁パネルを施工現場において複数並べる施工方法にあっては、曲面状の壁を構築するに際して施工現場における工数が増大するし、施工後に各壁パネル間の防水処理を慎重に行わなければならない。そのため、施工効率の点で好ましくないし、均質な建物の提供という観点からも改善の余地があると考えられる。
【0007】
なお、全体が予め曲面状に成形された1の壁パネルを用いるのであれば、当該壁パネル内における施工後のシール処理は不用であって施工現場における作業工数が少なくなる利点はあるが、上記のとおり輸送効率が低下する。
【0008】
つまり、従来の曲面状の壁を構築するための壁パネルは、いずれのものであっても、輸送効率、現場での施工効率及び均質な建物の提供という各観点をともに満たすことができるものではないのが実情である。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、曲面状の壁を含む建物に適用される壁パネル装置について、輸送効率及び現場での施工効率をいずれも高いものとし、さらに均質な建物の提供に寄与することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0011】
手段1.複数の壁パネルと、
前記各壁パネルの壁面を同一向きにして当該各壁パネルを並べた状態において各壁パネルの互いに隣接する端部同士を連結するとともに、当該連結部位において屈曲できるように構成されている連結手段と、
前記各壁パネルの互いに隣接する端部間に形成されている隙間からの水の浸入を止める止水手段と、
を備えていることを特徴とする壁パネル装置。
【0012】
手段1によれば、各壁パネルの互いに隣接する端部同士が連結される連結部位において連結手段により屈曲することができる。また、各壁パネルの互いに隣接する端部間に形成されている隙間からの水の浸入を止める止水手段が備えられている。これにより、仮に施工現場において隙間への止水処理を施さないとしても、止水手段による一定の止水効果が維持されていれば、各壁パネル間の連結部位を屈曲させるだけであっても一定の止水効果のある曲面状の壁を構築することができる。その結果、曲面状の壁の品質がばらつくことを抑制することができるとともに施工効率を高めることができ、均質な建物の提供に寄与することができる。また、施工現場までの運搬の際には、壁パネル装置を平坦な状態としておけば当該壁パネル装置を運搬車に効率良く積載することができ、輸送効率を高めることも可能となる。
【0013】
手段2.前記止水手段は、前記壁パネル間の折り曲げにより生じる前記隙間の大きさの変化に追従して水の浸入を止める機能を維持するだけの伸縮性を有している手段1に記載の壁パネル装置。
【0014】
手段2によれば、止水手段が有する伸縮性により、壁パネル間の折り曲げにより生じる隙間の大きさに追従して当該隙間からの水の浸入を止めることができる。このため、仮に壁パネル装置を曲面状に折り曲げて壁パネル間の隙間の大きさが変化したとしても、その隙間において止水効果を得ることができる。
【0015】
手段3.前記止水手段はシール材であり、前記シール材が前記各壁パネルの互いに隣接する端部に接触して前記隙間内において圧縮された状態で設けられている手段1又は2に記載の壁パネル装置。
【0016】
手段3によれば、シール材が各壁パネルの端部に接触して隙間に圧縮された状態で設けられているため、壁パネル間の隙間からの水の浸入を好適に止めることができる。また、シール材が各壁パネルの端部間の隙間内に収容されていることにより、シール材が表面側に突出することがない。
【0017】
手段4.前記連結手段は、前記止水手段に挿通された状態で前記各壁パネルの互いに隣接する端部同士を連結する連結部材である手段1乃至3のいずれかに記載の壁パネル装置。
【0018】
手段4によれば、連結部材が止水手段に挿通された状態で各壁パネルの端部同士が連結される。このため、連結部材によって壁パネル同士を連結することができるだけでなく、止水手段を壁パネルに連結して当該止水手段が壁パネル装置から離脱してしまわないようにすることもできる。すなわち、連結部材が、壁パネル同士の連結と、止水手段の脱落防止との両機能を兼用することができる。
【0019】
手段5.前記連結手段は、隣接する前記壁パネル間に跨るようにして取り付けられ、当該隣接する壁パネルの隙間位置において屈曲される板材である手段1乃至4のいずれかに記載の壁パネル装置。
【0020】
手段5によれば、隣接する壁パネル間に跨るようにして取り付けられる板材が、当該隣接する壁パネルの隙間位置において屈曲される。これにより、連結手段のコストを低減することができるとともに、壁パネル装置を薄型に形成することができるため運搬車へ効率良く積載することができる利点がある。
【0021】
手段6.前記板材は、前記壁パネルの背面に取り付けられている手段5に記載の壁パネル装置。
【0022】
手段6によれば、板材が各壁パネルの背面に取り付けられている。このため、例えば、壁パネル装置を表側に凸となる曲面状にする場合、板材が壁パネルの表側に取り付けられていたとすると、壁パネル間で折り曲げようとしても各壁パネルの裏側の角部同士が接触して所望の曲面状の壁が構築できないおそれがあるが、本発明ではこのような不具合を解消することができる。また、板材が壁パネルの表側に露出しないため、建物の美観が損なわれることがない。さらに、板材よりも表側となる隙間に止水手段を配置するスペースを十分に確保することができる利点がある。具体的には、隣接する壁パネルの端面と板材とに囲まれたスペースに止水手段を配置することができる。これにより、止水手段の選択の自由度が高められて、止水効果が高くかつ壁パネル間の折り曲げに追従し易い止水手段を容易に選択することができる。
【0023】
手段7.前記壁パネルは、壁面を形成する面材と、その面材の背面側に固定されて当該面材の下地となる壁下地材と、を備えており、
前記連結手段は、隣接する前記壁パネルの壁下地材同士を連結するものである手段1乃至6のいずれかに記載の壁パネル装置。
【0024】
手段7によれば、壁パネルには、面材とその面材の背面側に固定されて当該面材の下地となる壁下地材とが備えられており、当該壁下地材同士が連結手段により連結される。このため、面材同士を連結しなくてもよいため、その連結作業の際に生じる面材の損傷等の不具合を回避することができる。
【0025】
手段8.前記壁下地材は少なくとも縦材を備え、当該縦材は前記面材の幅方向両端において高さ方向に沿って延びるように設けられており、
前記連結手段は、隣接する前記壁パネルの互いに近接した縦材同士を連結するものである手段7に記載の壁パネル装置。
【0026】
手段8によれば、縦材が面材の幅方向両端において高さ方向に沿って延びるように設けられており、隣接する壁パネルの互いに近接した縦材同士が連結手段により連結される。このため、仮に縦材が幅方向に大きく離間していたとすれば、連結手段を設けることが困難となるが、本発明では、これを解消することができる。
【0027】
手段9.手段1乃至8のいずれかに記載の壁パネル装置を施工現場に搬入する搬入工程と、
建物本体に設けられた支持部材に沿って前記搬入された壁パネル装置の壁パネル間を屈曲させるとともに、壁パネル装置を前記支持部材に取り付ける取付工程と、
前記壁パネル間に形成される隙間に、前記壁パネルの屋外側よりシール手段を配置するシール工程と、
を備えた壁パネル装置の施工方法。
【0028】
手段9によれば、施工現場までは、壁パネル装置を平坦な状態で運搬車等に効率良く積載することができるため、輸送効率を高めることができる。また、施工現場においては、建物本体に設けられた支持部材に沿って壁パネル装置の壁パネル間を屈曲させ、壁パネル装置を支持部材に取り付けるだけでよいため、その取り付け作業が容易となる。さらに、壁パネル間に形成される隙間に、壁パネルの屋外側よりシール手段が配置される。これにより、シール手段が一次止水手段として機能し、先の止水手段が二次止水手段として機能するため、隙間のシール性能を高めることができる。また、施工現場においてシール手段を配置するようにしたことにより、壁パネル間の屈曲レベルに対応して適切な止水処理を行うことができ、これであっても従来より大幅に施工効率を高めることができる。なお、取付工程の後にシール工程を行うことが一層好ましい。このようにすれば、壁パネル間の隙間が変化した後の大きさに応じて止水処理を施すことができるためである。
【0029】
手段10.手段1乃至8のいずれかに記載の壁パネル装置を備え、前記壁パネル装置を用いて曲面状の壁が形成されている建物。
【0030】
手段10によれば、手段1乃至8のいずれかに記載の壁パネル装置が奏する効果を建物において享受し得る。
【0031】
手段11.前記壁パネル装置は、前記建物本体に設けられた支持部材に沿って取り付けられている手段10に記載の建物。
【0032】
手段11によれば、建物本体に設けられた支持部材に沿って壁パネル装置を取り付けるという簡易な作業により、建物に曲面状の壁を構築することができる。
【0033】
手段12.前記壁パネル間に形成される隙間には、前記壁パネルの前記止水手段よりも屋外側にシール手段が配置されている手段10又は11に記載の建物。
【0034】
手段12によれば、壁パネル間に形成される隙間に、壁パネルの止水手段よりも屋外側にシール手段が配置されている。このため、壁パネル間に形成される隙間において、シール手段が一次止水手段として機能し、先の止水手段が二次止水手段として機能する。その結果、隙間の止水性能を高めた壁を建物に構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態における建物は、例えば鉄骨軸組工法により構築された建物であり、その一部に壁パネル装置が取り付けられるようになっている。そこで、まずは壁パネル装置について説明する。なお、図1は一実施の形態における壁パネル装置を屈曲させた斜視図、図2は壁パネル装置の背面を示す斜視図である。
【0036】
図1に示すように、壁パネル装置11は、複数の短冊状の壁パネル12を備えている。壁パネル12は、幅狭の外装材13と、その背面側に取り付けられたスタッド14とを備えている。外装材13は、互いに隣接する端部の間に隙間が形成された状態で並設されている。スタッド14は溝形鋼により構成され、ウェブ14aと、その両端から同一側へ直角に折れ曲がった前方フランジ14b及び後方フランジ14cとを有している。スタッド14は、外装材13の背面の幅方向両端において、高さ方向に沿って延びるようにして取り付けられている。具体的には、一対のスタッド14は、前方フランジ14bが外装材13の背面に当接された状態で、開口部が向き合うように取り付けられている。また、外装材13の板面が同一平面に位置するように並んでいる場合には、互いに隣接するウェブ14aが平行となるように向き合っている。さらにこの場合には、後方フランジ14cは同一平面に配置される。なお、外装材13とスタッド14とは、それらの接触面、すなわち外装材13の裏面と前方フランジ14bとの当接面において、ボンド等のシール材によりシールされている。
【0037】
図2に示すように、各スタッド14には、互いに隣接する後方フランジ14cに跨るようにして上下に延びる連結板15がスポット溶接等により取り付けられている。これにより、壁パネル12同士が所定の隙間を有した状態で連結されている。連結板15は、薄肉平板状に形成されており、人の力により容易に屈曲できるような厚さ寸法を有している。連結板15は、例えば鉄板により構成されている。したがって、連結板15のうちスポット溶接されていない前記隙間部分において折り曲げることにより、隣接する壁パネル12が折り曲げられた状態とすることができる。なお、上記のとおり同一平面に配置された後方フランジ14cに連結板15を取り付ければよいため、連結板15の取付作業(溶接作業)は非常に簡単なものとなっている。
【0038】
各壁パネル12の間には、互いに隣接するスタッド14のウェブ14aと連結板15とに囲まれてなる縦目地Aが形成されている。これら各縦目地Aには、その隙間を埋めるようにして合成ゴム製の長尺の防水ゴム16が取り付けられている。
【0039】
次に、各壁パネル12間の連結部位の構造について詳しく説明する。
【0040】
まず、壁パネル装置11が曲面状に折り曲げられていない状態における、壁パネル12間の連結部位の構造について説明する。図3(a)は壁パネル装置11が曲面状に折り曲げられていない状態を示す横断面図、(b)は特に前記状態の壁パネル12間の連結部位を示す拡大横断面図である。
【0041】
図3(a)に示すように、壁パネル12は、各外装材13の板面が略同一平面上となるように横に並べられている。壁パネル12間に形成されている縦目地Aには、前記防水ゴム16が圧縮された状態でそれぞれ組み付けられている。より詳細には、図3(b)に示すように、防水ゴム16は連結板15側の端部が連結板15に接触しており、連結板15によって防水ゴム16の縦目地Aより後方への脱落が防止されている。また、防水ゴム16はその両側部(図3(b)では左右両側面)が互いに隣接するスタッド14のウェブ14aに接触している状態でかつ両ウェブ14a間において圧縮状態で組み付けられている。そして、防水ゴム16は表裏方向に延びており、表側の端部が外装材13の板面の近傍まで達している。
【0042】
防水ゴム16は、上下に延びる第1孔部16aと、その第1孔部16aよりも表側に位置して上下に延びる第2孔部16bとを有している。これにより、防水ゴム16は、幅方向への伸縮性が高められており、壁パネル12間の折り曲げにより生じる縦目地Aの大きさの変化に追従することができる伸縮性を有するものとなっている。防水ゴム16の幅方向への伸縮性についてさらにいえば、壁パネル12の枚数などにも依存するが、例えば隣接する壁パネル12のなす角度が30度となるまで追従することのできる伸縮性を有していれば実用上は十分である。なお、第1孔部16aは、第2孔部16bよりも表裏方向に長く形成されている。
【0043】
第1孔部16a及び第2孔部16bの間に挟まれた領域16dには、上下方向に所定間隔をおいて通し孔16cが複数形成されている。各通し孔16cは幅方向に延びており、防水ゴム16の両側面(図3(b)では左右両側面)を貫通している。また、各ウェブ14aには、通し孔16cに対応する位置に通し孔14dがそれぞれ形成されている。これら対応関係にある通し孔16c,14dを挿通するようにして連結ワイヤ20が取り付けられている。
【0044】
連結ワイヤ20は、ワイヤ21、スプリングバネ22及びストッパ23を備えている。ワイヤ21は、直線状をなして各通し孔16c,14dに挿通されており、互いに隣接するウェブ14aに対して幅方向に延長する一対の延長部21aを有している。これら延長部21aには、スプリングバネ22がそれぞれ取り付けられている。そして、スプリングバネ22が抜け落ちないようにワイヤ21の両端部には、スプリングバネ22の外端部に当接されるストッパ23がそれぞれ取り付けられている。また、スプリングバネ22の内端部とウェブ14aとの間には、ナット24が取り付けられている。これにより、スプリングバネ22がウェブ14aに形成されている通し孔14dに入り込まないようになっている。
【0045】
以上説明した構成のため、壁パネル12間の折り曲げの限界は、ワイヤ21の長さによって制限されている。また、スプリングバネ22の付勢力によりワイヤ21に弛みが生じることが抑制されている。さらに、そのような常に緊張状態にあるワイヤ21が防水ゴム16に挿通されていることにより、当該防水ゴム16の縦目地Aからの脱落が防止されている。
【0046】
次に、壁パネル装置11が曲面状に折り曲げられた状態における、壁パネル12間の連結部位の構成について説明する。図4(a)は壁パネル装置11が曲面状に折り曲げられている状態を示す横断面図、(b)は特に前記状態の壁パネル12間の連結部位を示す拡大横断面図である。
【0047】
図4(a)に示すように、壁パネル装置11は、壁パネル12間において屈曲されており、全体として曲面状に折り曲げられている。壁パネル12間の連結部位は、壁パネル12間の折り曲げに伴って、その状態が変化している。詳しく説明すると、図4(b)に示すように、縦目地Aは、表側ほどその隙間が広がっている。これに伴って、連結板15は、縦目地Aを境界にして表側に凸状となるように折れ曲がっている。連結ワイヤ20も同様に、縦目地Aを境界にして表側に凸状となるように折れ曲がっている。各延長部21aは、壁パネル装置11が曲面状に折り曲げられていない状態と比較して短くなっており、それに伴ってスプリングバネ22も縮んだ状態となっている。このような状態であっても、連結ワイヤ20は、通し孔16c,14dへの挿通状態が維持されている。これにより、縦目地Aの大きさが変化した後であっても、防水ゴム16が縦目地Aから離脱しないようになっている。
【0048】
防水ゴム16は、縦目地Aの広がりに追従して幅方向に伸長され、隣接する両ウェブ14aとの圧接状態が維持されている。これにより、壁パネル12間の屈曲により縦目地Aの大きさが変化した後であっても、縦目地Aの止水効果が維持される。
【0049】
以上説明した状態の縦目地Aには、定形のシール材30が壁パネル装置11の表側から取り付けられている。シール材30には、互いに隣接する壁パネル12の端面の両側に延びるリップ部30aが表裏方向に離間して複数(例えば3つ)形成されている。シール材30は、リップ部30aが壁パネル12の端面に弾性変形した状態で圧入されている。これにより、縦目地Aにおいて止水効果が得られるものである。シール材30の圧入状態をより詳しく説明すると、シール材30は、リップ部30aのうち最も防水ゴム16側に形成されているリップ部30aが防水ゴム16に接触した状態で強く押し込まれている。このため、防水ゴム16に形成されている第2孔部16bは押し潰されている。これにより、防水ゴム16の両端(図4(b)では左右両端)が壁パネル12の端面に強く押し当てられることとなり、止水効果が高められている。
【0050】
このようにシール材30を設けることにより、縦目地Aにおいて、シール材30が一次止水手段として機能し、防水ゴム16が二次止水手段として機能することとなる。
【0051】
以上説明した構成の壁パネル装置11は、予め工場において製造され、各壁パネル12が連結された状態で施工現場まで運搬される。なお、この場合、縦目地Aには防水ゴム16は取り付けられているが、シール材30は取り付けられていない。
【0052】
施工現場までは、壁パネル装置11は、図5に示すように平坦な状態でトラック等の運搬車に上下に重ねられて運搬される。これにより、壁パネル装置11を効率良く積載することができ、運搬効率を高めることができる。この場合、連結板15は同一平面に配置されているため、連結板15には負荷がかからない。なお、壁パネル装置11が互いに擦れて損傷しないように、各壁パネル装置11間に毛布等のシート45を敷いておくことが望ましい。
【0053】
施工現場に搬入された壁パネル装置11は、建物10に取り付けられることとなる。そこで、壁パネル装置11の建物10への取り付け手順について説明する。図6は壁パネル装置11が建物10に取り付けられた状態を示す横断面図である。
【0054】
図6に示すように、建物本体40に、曲線状に形成された一対の支持レール50を上下方向に離間して取り付ける(図6では一方の支持レール50のみ図示)。具体的には、一対の支持レール50を壁パネル装置11の上下方向の長さ寸法に対応する位置に離間して建物本体40に取り付ける。支持レール50は、例えばH形鋼により構成されている。
【0055】
上記のように配置されている支持レール50に沿って壁パネル装置11を取り付ける。より詳しく説明すると、支持レール50には、その延びる方向に所定間隔をおいて連結プレート51を複数取り付ける。そして、互いに隣接する連結プレート51に跨がるようにして連結板15を当接させ、これら当接部位にてボルト52により取り付ける。具体的には、ボルト52を、縦目地Aを挟んだ両側において、連結プレート51、連結板15及び後方フランジ14cに挿通させて締結する。
【0056】
これにより、壁パネル装置11が建物本体40に取り付けられる。この状態では、防水ゴム16が縦目地Aの大きさの変化に追従して幅方向に延びた状態となっている。このため、施工現場において、縦目地Aに対して止水処理を施さなくても、止水効果は得られている。しかしながら、本実施形態では、さらに縦目地Aの止水効果を高めるべく、屋外側から各縦目地Aにシール材30を取り付ける。これにより、縦目地Aにおいて、止水効果を高めることができる。なお、シール材30は、施工現場への搬入前に予め工場にて壁パネル装置11に組み付けておいてもよい。これにより、施工現場において、シール材30の壁パネル装置11への取り付け作業が不要となる。
【0057】
以上の取り付け手順により、壁パネル装置11を用いて建物10に曲面状の壁55を形成することができる。
【0058】
以上説明した構成及び作用により、本実施形態の壁パネル装置11では、以下に示す有利な効果が得られる。
【0059】
本実施の形態では、壁パネル装置11は、各壁パネル12が連結板15及び連結ワイヤ20によって連結されている。加えて、各壁パネル12の間に形成されている縦目地Aには、防水ゴム16が設けられている。このため、施工現場において各縦目地Aへの止水処理を施さなくても、各壁パネル12間の連結部位において屈曲するだけで一定の止水効果のある曲面状の壁55を構築することができる。その結果、施工現場における壁55の品質のばらつきを抑制するとともに施工効率を高めることができ、ひいては均質な建物10の提供に寄与することができる。また、施工現場までの運搬の際には、平坦な状態の壁パネル装置11を上下に重ねて運搬車に効率良く積載することにより輸送効率を高めることも可能となる。
【0060】
本実施の形態では、各縦目地Aには、防水ゴム16より屋外側にシール材30が取り付けられている。これにより、シール材30が一次止水手段として機能し、防水ゴム16が二次止水手段として機能するため、止水効果を高めることができる。また、壁パネル装置11を曲面状に折り曲げて建物本体40に取り付けた後に、シール材30を取り付けるようにした。この場合、縦目地Aが変化した後の大きさに合わせてシール材30を設ければよいため、隙間無く好適に止水処理を施すことができる。また、その取り付け作業は、シール材30を屋外側から縦目地Aに押し込むという簡易な作業により行うことができる。
【0061】
本実施の形態では、防水ゴム16は、各壁パネル12の互いに隣接する端面にそれぞれ接触して圧縮された状態で設けられている。また、防水ゴム16は、第1孔部16a及び第2孔部16bを有している。これにより、壁パネル12間の折り曲げにより生じる縦目地Aの大きさの変化に対して、防水ゴム16は自身の弾性変形により追従することができる。その結果、壁パネル装置11を曲面状に折り曲げた後も、縦目地Aからの水の浸入を好適に止めることができる。
【0062】
本実施の形態では、各壁パネル12は、連結板15が互いに隣接するスタッド14に跨るようにして取り付けられることにより連結されている。このため、外装材13同士を連結しなくてもよいことから、その連結作業の際に生じる外装材13の損傷等の不具合を回避することができる。また、連結板15を用いることにより、壁パネル装置11を全体として薄型に形成することができるため、運搬車へ効率良く積載することができる利点がある。
【0063】
本実施の形態では、連結板15は、スタッド14の後方フランジ14cに取り付けられている。このため、壁パネル装置11を表側に凸となる曲面状にする際に、各壁パネル12の表側の角部同士が接触して所望の曲面状の壁55が構築することができないという不具合を解消することができる。また、隣接する壁パネル12の端面と連結板15とに囲まれた縦目地Aに、防水ゴム16及びシール材30を配置することができる利点がある。この場合、連結板15が屋外側から直接見えることがないため、建物10の美観は損なわれない。
【0064】
本実施の形態では、連結ワイヤ20は、防水ゴム16の通し孔16c及びスタッド14の通し孔14dに挿通された状態で各壁パネル12に取り付けられている。このため、連結ワイヤ20によって壁パネル12同士を連結することができるだけでなく、防水ゴム16を各壁パネル12に連結してその防水ゴム16が壁パネル装置11から離脱してしまわないようにすることもできる。すなわち、連結ワイヤ20によって、各壁パネル12の連結及び屈曲レベルの規制を行いつつ、防水ゴム16の脱落防止効果も得られるものとなっている。
【0065】
本実施の形態では、壁パネル装置11は、曲線状に形成された支持レール50に取り付けられている。このため、支持レール50に沿って壁パネル装置11を取り付けるだけで、所望の曲面状の壁55を得ることができる。その結果、壁パネル12が個別に搬入されてそれぞれ取り付けていく場合に比べて、パネル装置11の建物本体40への施工が極めて簡単なものとなる。また、各壁パネル12間の縦目地Aも均一にすることができて、均質かつ高品質な建物10の提供に寄与することができる。
【0066】
なお、以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
【0067】
上記実施の形態では、壁パネル12を外装材13とその背面に取り付けられるスタッド14とから構成した。これに加え、スタッド14にその上端を繋ぐ上枠ランナと下端を繋ぐ下枠ランナとを取り付けて支持枠を形成してもよい。これによれば、壁パネル12の強度を向上させることができる。また、スタッド14を外装材13の背面に取り付けたが、外装材13に補強材を埋め込む構成としてもよい。さらにスタッド14を必ずしも設ける必要はない。
【0068】
上記実施の形態では、短冊状の壁パネル12により壁パネル装置11を構成したが、壁パネル12は特定の形状に限定されない。例えば、横長の壁パネル12を用いたり、正面視で矩形状とならない多角形状の壁パネル12を用いたりすることもできる。また、平面視で弧状となっている壁パネル12を用いることもできる。
【0069】
上記実施の形態では、各壁パネル12同士を連結する手段として、連結板15及び連結ワイヤ20の両方を用いたが、必ずしも両方の連結部材を用いる必要はない。例えば、図7(a)に示すように、連結板15を用いずに連結ワイヤ20だけで各壁パネル12を連結してもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、壁パネル12の連結手段として、薄肉平板状の連結板15やワイヤ状の連結ワイヤ20を用いたが、その他の異なる形状・構成からなる連結部材を用いてもよい。例えば、図7(b)に示す連結板60のように、高さ方向に延びるヒンジ部60aを設け、そのヒンジ部60aにて回動させることにより壁パネル装置11を曲面状に折り曲げてもよい。これによれば、壁パネル12間の連結部位において大きく折り曲げることができるため、曲率の大きい壁55を構築するに際して好適となる。また、連結ワイヤ20の延長部21aを片側のみに設ける構成としてもよい。
【0071】
さらに、図7(c)に示すように、ホース状の連結部材70を高さ方向に所定間隔をおいて複数設け、各壁パネル12の端面同士を連結してもよい。この場合、ホース状の連結部材70は、蛇腹状や入子状に形成してもよいし、樹脂製であっても金属製であってもよい。すなわち、ホース状の連結部材70によって壁パネル12が連結されてその連結部位において屈曲できればよい。
【0072】
上記実施の形態では、縦目地Aの止水手段として、防水ゴム16及びシール材30を用いたが、必ずしも両方の止水手段を用いる必要はなく、防水ゴム16及びシール材30の一方を用いて止水処理を行ってもよい。但し、縦目地Aにおける止水処理作業の軽減のために、少なくとも一方については壁パネル装置11に予め備えられているものとする。
【0073】
上記実施の形態では、縦目地Aの止水手段として、横断面が楕円形状の防水ゴム16及びリップ部30aを複数有するシール材30を用いたが、特定の形状・構成に限定されることはない。例えば、図7(c)に示す防水ゴム75のように、孔部75aが1つであってもよい。この場合、防水ゴム75を防水性のある接着剤により各ウェブ14aへ固定することにより、防水ゴム75の縦目地Aからの脱落を防止することができる。
【0074】
また、図8(a)に示すように、凹凸関係を有する防水ゴム80とシール材81とから構成されていてもよい。具体的には、防水ゴム80に凹部80aを設けるとともに、シール材81に、凹部80aに嵌め込まれる凸部81aを設ける。そして、防水ゴム80の凹部80にシール材81の凸部81aを嵌め込むようにしてシール材81を縦目地Aに取り付けてもよい。これにより、シール材81が縦目地Aに対して位置決めされ、縦目地Aへの取り付け作業が容易となる。また、取り付け後においても、シール材81の幅方向へのずれを抑制することができるため、その取り付け状態を安定保持することができる。その結果、縦目地Aの止水効果をより確実に維持することができる。この場合、防水ゴム80に連結ワイヤ20を挿通させることにより、壁パネル12との連結状態を安定保持することができる。なお、図8(a)に示すように、防水ゴム80の後端部から幅方向に延びるフランジ部80bを一体形成しておき、このフランジ部80bを後方フランジ14cに接着することもでき、このようにすれば防水ゴム80を強固に固定することができる。
【0075】
上記実施の形態では、定形の防水ゴム16及びシール材30を用いて止水処理を施したが、各縦目地Aに不定形のシール材を圧入して止水処理を施してもよい。例えば、図8(b)に示すように、隣接するスタッド14のウェブ14aに、表裏方向に所定間隔をおいて複数形成される挿通孔14eを上下方向に複数設け、不定形のシール材90を縦目地Aに圧入して止水処理を施してもよい。この止水処理は施工現場で行われるものではなく壁パネル装置11の製造時に行われる。この場合、シール材90が挿通孔14eを通って縦目地Aからはみ出して各スタッド14の開口部に達する。これにより、壁パネル12に対するシール材90の付着力が高められる。その結果、シール材90によって、縦目地Aにおける止水効果が得られるだけでなく、各壁パネル12を連結することができる。このように、止水手段と連結手段とを兼用させてもよい。
【0076】
上記実施の形態では、壁パネル装置11を表側に凸となる曲面状の壁55を形成したが、表側に凹となる曲面状の壁55を形成してもよい。
【0077】
上記の実施形態では、鉄骨軸組工法により構築された建物10に壁パネル装置11を適用した例について説明したが、他の工法で構築された建物10に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】一実施の形態における壁パネル装置を示す斜視図。
【図2】壁パネル装置の背面を示す斜視図。
【図3】(a)壁パネル装置が曲面状に折り曲げられていない状態を示す横断面図、(b)特に前記状態の壁パネル間の連結部位を示す拡大横断面図。
【図4】(a)壁パネル装置が曲面状に折り曲げられている状態を示す横断面図、(b)特に前記状態の壁パネル間の連結部位を示す拡大横断面図。
【図5】壁パネル装置が積載されている状態を示す正面図。
【図6】壁パネル装置が建物に取り付けられた状態を示す横断面図。
【図7】(a)(b)(c)連結手段及び止水手段の別例を示す横断面図。
【図8】(a)(b)連結手段及び止水手段の別例を示す横断面図。
【符号の説明】
【0079】
10…建物、11…壁パネル装置、12…壁パネル、13…面材としての外装材、14…壁下地材としてのスタッド、15…連結手段としての連結板、16…止水手段としての防水ゴム、20…連結手段としての連結ワイヤ、30…シール手段としてのシール材、40…建物本体、50…支持部材としての支持レール、55…壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の壁パネルと、
前記各壁パネルの壁面を同一向きにして当該各壁パネルを並べた状態において各壁パネルの互いに隣接する端部同士を連結するとともに、当該連結部位において屈曲できるように構成されている連結手段と、
前記各壁パネルの互いに隣接する端部間に形成されている隙間からの水の浸入を止める止水手段と、
を備えていることを特徴とする壁パネル装置。
【請求項2】
前記止水手段は、前記壁パネル間の折り曲げにより生じる前記隙間の大きさの変化に追従して水の浸入を止める機能を維持するだけの伸縮性を有している請求項1に記載の壁パネル装置。
【請求項3】
前記止水手段はシール材であり、前記シール材が前記各壁パネルの互いに隣接する端部に接触して前記隙間内において圧縮された状態で設けられている請求項1又は2に記載の壁パネル装置。
【請求項4】
前記連結手段は、前記止水手段に挿通された状態で前記各壁パネルの互いに隣接する端部同士を連結する連結部材である請求項1乃至3のいずれかに記載の壁パネル装置。
【請求項5】
前記連結手段は、隣接する前記壁パネル間に跨るようにして取り付けられ、当該隣接する壁パネルの隙間位置において屈曲される板材である請求項1乃至4のいずれかに記載の壁パネル装置。
【請求項6】
前記板材は、前記壁パネルの背面に取り付けられている請求項5に記載の壁パネル装置。
【請求項7】
前記壁パネルは、壁面を形成する面材と、その面材の背面側に固定されて当該面材の下地となる壁下地材と、を備えており、
前記連結手段は、隣接する前記壁パネルの壁下地材同士を連結するものである請求項1乃至6のいずれかに記載の壁パネル装置。
【請求項8】
前記壁下地材は少なくとも縦材を備え、当該縦材は前記面材の幅方向両端において高さ方向に沿って延びるように設けられており、
前記連結手段は、隣接する前記壁パネルの互いに近接した縦材同士を連結するものである請求項7に記載の壁パネル装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の壁パネル装置を施工現場に搬入する搬入工程と、
建物本体に設けられた支持部材に沿って前記搬入された壁パネル装置の壁パネル間を屈曲させるとともに、壁パネル装置を前記支持部材に取り付ける取付工程と、
前記壁パネル間に形成される隙間に、前記壁パネルの屋外側よりシール手段を配置するシール工程と、
を備えた壁パネル装置の施工方法。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の壁パネル装置を備え、前記壁パネル装置を用いて曲面状の壁が形成されている建物。
【請求項11】
前記壁パネル装置は、前記建物本体に設けられた支持部材に沿って取り付けられている請求項10に記載の建物。
【請求項12】
前記壁パネル間に形成される隙間には、前記壁パネルの前記止水手段よりも屋外側にシール手段が配置されている請求項10又は11に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−255670(P2008−255670A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99023(P2007−99023)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】