説明

壁面構成ユニット取付け機構

【課題】既存壁面などの既存構造物に対して、その外側から新たなパネル体を吊り下げて取り付けたり、あるいは、その他各種パネル体を吊り下げて取り付けるための壁面構成ユニット取付け機構を提供すること。
【解決手段】建造物などの躯体生地に対して、その外側から壁面構成ユニットを吊り下げて取付けるための壁面構成ユニット取付け機構であって、前記壁面構成ユニットが、前記建造物などの躯体生地に直接的に取り付けられるベース部材1と、前記ベース部材に対して係止連結手段3を介して係止連結される壁面構成部材2との組み合わせでなり、前記係止連結手段が、前記ベース部材の表側に設けた上向きに開いた複数の受側係止溝12と、前記受側係止溝に対応して前記壁面構成部材の裏側に設けた下向きに開いた複数の掛側係止溝25とを含むものからなる壁面構成ユニット取付け機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、各種建造物などの躯体生地に対して、その外側から壁面構成ユニットを取り付けたり、あるいは、その他各種パネル体(例えば、ソーラーパネル、液晶パネル、光飾パネル、表示パネル、装飾パネルなど)を吊り下げて取り付けるための壁面構成ユニット取付け機構に係るものであり、特に、既存の建造物の構築壁面を改装する際、改装しようとする建造物の外壁面あるいは躯体生地に対して、新たなパネル体などを吊下げ式に取付け施工し得るようになした壁面構成ユニット取付け機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、例えば、既存の建造物における外壁などを改装する場合には、既存の建造物の外側から新たなパネル体を取り付けなければならない。従来、既存の建造物における外壁などを改装する構成のものとしては、例えば、特許文献1〜2に記載の技術内容のものが開発さて、提供されてきている。これら従来の方法では、極めて煩雑な施工作業が強いられ、多くの労力を必要とし、工期が長期化するなど多くの問題点を有していた。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のものは、建物の外壁を施工する方法に関し、外壁パネルを取付け位置へ搬送して躯体に取り付ける方法であり、具体的な構成は、外壁パネルを、建物の躯体から吊下げた状態でスライドさせるようにして、取り付け位置へ搬送することを特徴とするものである。この特許文献1に開示のものによれば、外壁パネル用吊具H1と外壁パネル用トロリT1が要部となるもので、当該外壁パネルを躯体に対して直接的に取り付ける手段としては、取付金具74によるものであり、当該外壁パネルの取付け作業に手間がかかるなどの問題点を有している。
【0004】
一方、特許文献2に記載のものは、建造物の外壁面を補修する外壁改装構造に関するもので、建物の外壁面を被覆するための保護パネル組立体と、この保護パネル組立体に取り付けられる外装パネルとを備え、保護パネル組立体は、取付開口を形成するパネル枠体と、このパネル枠体の取付開口に装着された網目状保護パネルとを有し、パネル枠体および網目状保護パネルの内側表面はほぼ同一の平面を規定し、パネル枠体は建物の外壁に取り付けられ、これによってパネル枠体および網目状保護パネルの内側表面は、建物の外壁面に接触または近接して位置するように構成したものである。この特許文献2に開示のものにおいて、外壁74に対する保護パネル組立体の取付け、並びに保護パネル組立体に対する外装パネルの取付けは、アンカーボルト並びに複数のネジ部材によってなされているものであり、その施工作業に多大の労力を要するものであった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−20528号公報(要約、図1)
【特許文献2】特開平11−81699号公報(要約、図6、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明では、上記する従来技術の問題点を解消すべくなしたものであって、特に重要な要素は、既存の建造物の構築壁面を改装する際、改装しようとする建造物の外壁面あるいは躯体生地に対して、その外側から新たなパネル体を吊下げ式に取付け施工し得るようになした壁面構成ユニット取付け機構であり、且つ、その他各種のパネル体を適宜構造物に対して吊り下げて取り付けるようにしたパネル体吊下げ取付け機構であって、その吊下げ取付け作業、並びに隣接するパネル部材の面合わせ作業、上下レベル合わせ作業などをも、より省力的に、且つ、より確実に行い得るようになしたパネル体吊下げ取付け機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記する目的を達成するにあたって、請求項1に記載の発明は、建造物などの躯体生地に対して、その外側から壁面構成ユニットを吊り下げて取付けるための壁面構成ユニット取付け機構であって、前記壁面構成ユニットが、前記建造物などの躯体生地に直接的に取り付けられるベース部材と、前記ベース部材に対して係止連結手段を介して係止連結される壁面構成部材との組み合わせでなり、前記係止連結手段が、前記ベース部材の表側に設けた上向きに開いた複数の受側係止溝と、前記受側係止溝に対応して前記壁面構成部材の裏側に設けた下向きに開いた複数の掛側係止溝とを含むものからなることを特徴とする壁面構成ユニット取付け機構を構成するものである。
【0008】
さらに、この発明において請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の壁面構成ユニット取付け機構であって、前記壁面構成部材が、前記係止連結手段における複数の掛側係止溝を備えた枠組立体と、前記枠組立体に対して固定してある壁面構成パネル体とからなることを特徴とするものである。
【0009】
さらにまた、この発明において請求項3に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載の壁面構成ユニット取付け機構であって、前記壁面構成部材が、前記係止連結手段における複数の掛側係止溝を備えた枠組立体と、前記枠組立体に対して固定してある壁面構成パネル体とからなり、前記壁面構成パネル体の少なくとも一部に、各種情報伝達媒体を収容するための情報ディスプレー収容空間を設けたものからなることを特徴とするものである。
【0010】
さらにまた、この発明において請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の壁面構成ユニット取付け機構であって、前記各種情報伝達媒体が、液晶テレビ装置、LED表示装置、インフォメーションボードあるいは額装装置などであることを特徴とするものである。
【0011】
さらにまた、この発明において請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の壁面構成ユニット取付け機構であって、前記壁面構成パネル体が、壁面を構成するための各種建材パネル、ソーラーパネル、光飾パネル、表示パネルあるいはその他の装飾パネルなどであることを特徴とするものである。
【0012】
さらにまた、この発明において請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の壁面構成ユニット取付け機構であって、前記ベース部材における各受側係止溝の近傍に、前記ベース部材と前記壁面構成部材との間にクッション性を付与するためのゴムローラ部材を取り付けてなることを特徴とするものである。
【0013】
さらにまた、この発明において請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の壁面構成ユニット取付け機構であって、前記ベース部材側に設けた受側係止溝が、当該ベース部材の広域平面に対して交差する方向にのびる第1のプレート部分に形成されており、前記壁面構成部材側に設けた掛側係止溝が、当該壁面構成部材の広域平面に対して平行する方向にのびる第2のプレート部分に形成されており、前記第1のプレート部分と前記第2のプレート部分が十字状に交差して、前記受側係止溝に前記掛側係止溝が係合することを特徴とするものである。
【0014】
さらにまた、この発明において請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の壁面構成ユニット取付け機構であって、前記ベース部材側に設けた受側係止溝および前記壁面構成部材側に設けた掛側係止溝が、それぞれ開いた側に向けて先拡がりになる傾斜ガイド部を備えたものからなることを特徴とするものである。
【0015】
さらにまた、この発明において請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の壁面構成ユニット取付け機構であって、前記壁面構成部材における枠組立体の下縁に、所定の間隔を隔てて、外周枠体の内側から外側に向けて出没する一対の上下調節ボルトでなる上下調節手段を備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明になる壁面構成ユニット取付け機構によれば、既存の建造物の外壁面改装施工にあたって、改装しようとする建造物の外壁面あるいは躯体生地に対して、その外側から新たな壁面構成ユニットを固定施工する際、これを吊下げ式に構成したことにより、施工現場の立地条件のいかんにかかわりなく、既存の建造物の外側から新たなパネル体の取付け施工を、極めて容易に、極めて省力的に、且つ、極めて確実に行うことができ、工期の短縮化を図り得る点と併せて極めて有効に作用するものといえる。
【0017】
さらに、この発明になる壁面構成ユニット取付け機構によれば、当該壁面構成ユニットを、建造物などの躯体生地に直接的に取り付けられるベース部材と、このベース部材に対して係止連結手段を介して係止連結される壁面構成部材との組み合わせにより構成したことにより、厚さ方向の寸法を全体的に薄層に構成することができ、壁面構成部材を、枠組立体と、この枠組立体に対して固定してある壁面構成パネル体とにより構成したことにより、薄手の壁面構成パネル体の反りを確実に防止することができるという作用効果を奏するものである。
【0018】
さらにまた、この発明になる壁面構成ユニット取付け機構によれば、係止連結手段を、ベース部材の表側に設けた上向きに開いた複数の受側係止溝と、受側係止溝に対応して壁面構成部材の裏側に設けた下向きに開いた複数の掛側係止溝とを含むものによって構成したことにより、厚さ方向の寸法を全体的に薄層に構成することができ、且つ、壁面構成部材の吊下げ施工を極めて迅速に、且つ、確実に行うことができるという点において極めて有効に作用するものといえる。
【0019】
さらにまた、この発明になる壁面構成ユニット取付け機構によれば、壁面構成部材を、枠組立体と、この枠組立体に対して固定してある壁面構成パネル体とにより構成し、壁面構成パネル体の少なくとも一部に、各種情報伝達媒体を収容するための情報ディスプレー収容空間を設けたことにより、該情報ディスプレー収容空間内に、液晶テレビ装置、LED表示装置、インフォメーションボードあるいは絵画、写真、イラスト、ポスターなどのための額装装置などの各種情報伝達媒体を組み込むことにより、多機能性に富んだ壁面を構築することができ、その点においても極めて有効に作用するものといえる。
【0020】
さらに、この発明になる壁面構成ユニット取付け機構によれば、高さ調節手段並びに上下方向レベル合わせ手段を適宜組み合わせて構成することにより、より省力的に、且つ、より迅速に壁面の改装施工が可能であり、工期の短縮化などの点においても極めて有効に作用するものといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明になる壁面構成ユニット取付け機構について、図面に示す具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明になる壁面構成ユニット取付け機構において、既存の建造物側に取り付けられるベース部材の一例を示す概略的な斜視図である。図2Aは、前記ベース部材と対をなす壁面構成部材の一例を示すものであり、当該壁面構成部材が枠組立体と、この枠組立体に固着してある壁面構成パネル体とによって構成されている様子を示す概略的な斜視図、図2Bは、枠組立体のコーナー溶接部の新しい構成を示す部分破断平面図、図2Cは、その従来の例を示す部分破断平面図である。
【0022】
図3は、ベース部材と壁面構成部材との間に形成される係止連結手段の一例を示すものであって、下側のベース部材に上側の壁面構成部材を係止する前の状態を示す概略的な斜視図であり、図4は、図3に示す状態から、下側のベース部材に上側の壁面構成部材を係止した状態を示す概略的な斜視図である。
【0023】
一方、図5は、既存の建造物の壁面に対して、上下方向に複数段の壁面構成部材を施工する例において、その係止連結手段の部分を縦断面で示すもので、下段側の壁面構成部材の上側部分と上段側の壁面構成部材の下側部分とを示す概略的な縦断面図である。図6は、既存の建造物の壁面に対して、左右方向に複数の壁面構成部材を施工する例において、その係止連結手段の部分を横断面で示すもので、左側の壁面構成部材の右側部分と右側の壁面構成部材の左側部分とを示す概略的な縦断面図である。図7は、上下調節機構の一例を示す概略的な縦断面図である。
【0024】
図8は、この発明になる壁面構成ユニット取付け機構において、壁面構成ユニットにおける壁面構成部材の異なる構成例を示すものであって、壁面構成部材が、枠組立体と、この枠組立体に対して固定してある壁面構成パネル体とからなり、当該壁面構成パネル体の少なくとも一部に、各種情報伝達媒体を収容するための情報ディスプレー収容空間を設けた構成例であり、図8Aは、その概略的な側面図、図8Bは、当該壁面構成部材の内面側(係止連結手段が設けてある側)から見た概略的な背面図である。
【0025】
図9は、図8に示す壁面構成部材を用いて壁面を形成する実施例を示すものであって、高さ方向中間部を部分的に破断して示す概略的な側断面図である。一方、図10は、この発明になる壁面構成ユニット取付け機構に基づいて、各種の異なる壁面構成部材を用いて各種の異なる壁面を構築して多機能性に富んだ壁面を構成してなる建造物の具体的な実施例を示す概略的な斜視図である。
【0026】
この発明になる壁面構成ユニット取付け機構は、基本的には、既存壁面などの既存構造物に対して、その外側から新たなパネル体を吊り下げて取り付けるためのものであって、壁面構成ユニットUは、既存構造物の既存壁面EWに直接的に取り付けられるベース部材1と、このベース部材1に対して係止連結手段3を介して取り付けられる壁面構成部材2とからなっている。
【0027】
先ず、この発明において、前記ベース部材1は、例えば、図1に示すもののように、金属製の枠組立体4によって構成されている。前記金属製枠組立体4は、横断面コ字状の型鋼材からなり、左右一対の縦枠体5、5と、前記縦枠体5、5間を固定連結する上下一対の横枠体6、6と、前記横枠体6、6間に配した縦補強梁7とによって構成されている。前記縦枠体5に対して前記横枠体6および縦補強梁7は、溶接によってしっかりと固着されている。
【0028】
前記ベース部材1における縦枠体5、横枠体6および縦補強梁7は、前記横断面コ字状の型鋼材における中間基部8が、いずれも一方向に向いていて、同一平面を構成し、縦枠体5、横枠体6および縦補強梁7には、アンカーボルトのためのアンカーボルト挿通孔9が設けられており、図6に示すようにして、既存構造物の既存壁面EWなどに対して、アンカーボルト10により直接的に固定されるようになっている。
【0029】
前記ベース部材1における縦枠体5、5には、前記係止連結手段3における一方が設けてある。すなわち、図1に示す実施例によれば、前記縦枠体5、5において、前記横断面コ字状の型鋼材における各内側の第1のプレート部分11に、上向きに開いた複数の受側係止溝12が設けてある。前記受側係止溝12は、開いた側に向けて先拡がりになる傾斜ガイド部13を備えている。
【0030】
一方、これに対して、前記壁面構成部材2は、例えば、図2に示すもののように、金属製の枠組立体14と、この枠組立体14に固定してある壁面構成パネル体15とによって構成されている。前記金属製枠組立体14は、横断面コ字状の型鋼材からなっており、左右一対の縦枠体16、16と、前記縦枠体16、16間を固定連結する上下一対の横枠体17、17とを含むものからなっている。前記縦枠体16と横枠体17とは、溶接によってしっかりと固着してある。前記縦枠体16と横枠体17とは直角に保持した状態で溶接される。このようにして枠組立体14を形成する場合、図2Bに示すように、例えば、縦枠体16における45度切断面16aに突起16bを設けておき、横枠体17における45度切断面17aに、突起16bが嵌まり合う切欠17bを設けておくことにより、縦枠体16と横枠体17とを直角に確実に保持した状態で溶接することができる。
【0031】
前記壁面構成部材2における縦枠体16および横枠体17は、前記横断面コ字状の型鋼材における中間基部18が、いずれも一方向に向いていて、同一平面を構成しており、例えば、固定ボルトのためのボルト挿通孔19を備えており、図6に示すようにして、前記パネル体15に対して、ボルト20により直接的に固定されるようになっている。
【0032】
前記壁面構成部材2における縦枠体16および横枠体17には、前記係止連結手段3における他方が設けてある。すなわち、図2に示す実施例によれば、前記縦枠体16において、前記横断面コ字状の型鋼材における各内側の立ち上がり壁21には、当該壁面構成部材の広域平面に対して平行する方向にのびる第2のプレート部分22、22が設けてあり、前記横枠体17において、前記横断面コ字状の型鋼材における各内側の立ち上がり壁21には、当該壁面構成部材の広域平面に対して平行する方向にのびる第2のプレート部分23、24が設けてある。
【0033】
前記壁面構成部材2における縦枠体16および横枠体17に対して、その第2のプレート部分22、22並びに23、24には、下向きに開いた複数の掛側係止溝25が設けてある。前記掛側係止溝25は、開いた側に向けて先拡がりになる傾斜ガイド部26を備えている。
【0034】
この発明において、前記壁面構成部材2における壁面構成パネル体15は、例えば、金属板、本石、石調シートあるいはこれに類する板体でなる一枚のパネル材、さらにはタイル片、陶磁器片、天然石片、金属片、ガラス片、漆喰層、その他これらに類する材料片でなるプレート片の集合体等の表装手段を全面的に貼り合わせた化粧壁パネルに構成したものであってもよい。
【0035】
この発明において、前記パネル体15は、例えば、気泡コンクリート成形体をオートクレーブ養成処理によって造られるものであって、軽量性、加工容易性並びに適度の強度性等の点において優れた特性を有する軽量気泡コンクリートパネル、あるいはセメントの押し出し成形によって供される押し出し成形セメントパネル、プレキャストコンクリート成形パネル、石綿セメント硅酸カルシウム成形パネル、石綿セメント成形パネル等の耐火性、あるいは防火性を有するものからなっている。
【0036】
さらにまた、この発明において、前記壁面構成部材2における壁面構成パネル体15は、ソーラーパネル、液晶パネル、光飾パネル、表示パネルあるいはその他の装飾パネルなどを含むものであって、これらを適宜構造物に吊下げて取付けるものに対して、変更なく適用が可能なものでもある。
【0037】
この発明のより好ましい実施例において、図3および図5に示すように、前記ベース部材1における各受側係止溝12の近傍には、クッション性を付与するゴムローラ部材27が取り付けられている。前記ゴムローラ部材27は、適度の弾力性を有する素材によって構成されるものであり、前記ベース部材1における各受側係止溝12に前記壁面構成部材2における各掛側係止溝25が係合した際、ベース部材1と壁面構成部材2との間を弾力的に支持するように構成してある。
【0038】
さらに、この発明において、前記壁面構成部材における枠組立体の下縁に、所定の間隔を隔てて、外周枠体の内側から外側に向けて出没する一対の上下調節ボルト29でなる上下調節手段28を備えている。
【0039】
一方、この発明では、ベース部材1と壁面構成部材2とによって構成される壁面構成ユニットUのうち、壁面構成部材2については、異なる幾つかの実施例を含むものとして構成される。その異なる構成例の一例を図8〜図10に示す。図8および図9に示す壁面構成部材102は、係止連結手段103を介してベース部材101に係止連結されるようになっている。前記壁面構成部材102は、係止連結手段103における複数の掛側係止溝125を備えた枠組立体104と、この枠組立体104に対して固定してある壁面構成パネル体115とを含むものからなっていて、前記壁面構成パネル体115の少なくとも一部に、各種情報伝達媒体DUを収容するための情報ディスプレー収容空間120を設けたものからなっている。前記情報ディスプレー収容空間120を形成する壁面122には、複数個の通気開口123が設けてある。
【0040】
上記の実施例になる壁面構成部材102については、当該壁面構成部材102における枠組立体104の下縁に、所定の間隔を隔てて、外周枠体の内側から外側に向けて出没する一対の上下調節ボルト129でなる上下調節手段128が設けてある。
【0041】
図8に示す実施例において、前記情報ディスプレー収容空間120の前面側は、ガラス窓121によって構成されており、その内部には、液晶テレビ装置、LED表示装置、インフォメーションボードあるいは額装装置などの比較的薄層構造の各種情報伝達媒体DUが収容されるようになっている。
【0042】
図10において、壁面構成部材202は、係止連結手段における複数の掛側係止溝を備えた枠組立体と、この枠組立体に対して固定してある壁面構成パネル体215とを含むものからなっていて、前記壁面構成パネル体215には、透光性のある文字列220が設けてあり、その内側に各種情報伝達媒体DUを収容するための情報ディスプレー収容空間が設けてあって、例えば、その内部にLED表示装置が収容されるようになっている。
【0043】
次いで、この発明になる壁面構成ユニット取付け機構による一施工例に基づいて詳細に説明する。この発明では、前記ベース部材1並びに壁面構成部材2は、いずれも工場サイドにおける工場生産ラインによって製造され準備される。工場サイドにおいて製造され準備されたベース部材1並びに壁面構成部材2は、施工現場に持ち込まれ、先ず、ベース部材1が既存の構造物における既存壁面EWに外側からアンカーボルト10によって直接的に取り付けられる。
【0044】
既存の構造物における既存壁面EWを大規模に補修する場合には、前記ベース部材1並びに壁面構成部材2をそれぞれ上下方向(縦方向)並びに左右方向(横方向)にマトリックス状に施工する必要がある。この場合には、先ず、下段側から左右方向に壁面構成部材2の吊下げ取付けを行い、順次上段方向に向けて壁面構成部材2の吊下げ取付けを行う。
【0045】
一方、前記壁面構成部材2における枠組立体14の上横枠体17にアイボルト30を取り付けておき、このアイボルト30を用いて前記壁面構成部材2をクレーンなどの持ち上げ搬送機械によって持ち上げ、前工程において既存壁面EWに取り付けられているベース部材1の位置に搬送する。
【0046】
クレーンなどの持ち上げ搬送機械によって持ち上げられた壁面構成部材2は、対応するベース部材1の位置にもたらされた段階において上方向に約5cm程度持ち上げられ、ここから下降させる段階で、前記係止連結手段3を構成する前記ベース部材1の表側に設けた上向きに開いた複数の受側係止溝12に、前記壁面構成部材2の裏側に設けた下向きに開いた複数の掛側係止溝25を係合させ係止する。この段階で、図5に示す固定用ボルト31により、前記壁面構成部材2を前記ベース部材1に固定する。しかるのち、前記壁面構成部材2に取り付けてあるアイボルト30を取り外して一つの壁面構成部材の吊下げ取付け作業を完了する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、この発明になる壁面構成ユニット取付け機構において、既存の建造物側に取り付けられるベース部材の一例を示す概略的な斜視図である。
【図2】図2は、この発明になる壁面構成ユニット取付け機構において、前記ベース部材に係止連結され、一方の面に新たなパネル体を備えた壁面構成部材の一例を示す概略的な斜視図である。
【図3】図3は、ベース部材と壁面構成部材との間に形成される係止連結手段の一例を示すものであって、下側のベース部材に上側の壁面構成部材を係止する前の状態を示す概略的な斜視図である。
【図4】図4は、図3に示す状態から、下側のベース部材に上側の壁面構成部材を係止した状態を示す概略的な斜視図である。
【図5】図5は、既存の建造物の壁面に対して、上下方向に複数段の壁面構成部材を施工する例において、その係止連結手段の部分を縦断面で示すもので、下段側の壁面構成部材の上側部分と上段側の壁面構成部材の下側部分とを示す概略的な縦断面図である。
【図6】図6は、既存の建造物の壁面に対して、左右方向に複数の壁面構成部材を施工する例において、その係止連結手段の部分を横断面で示すもので、左側の壁面構成部材の右側部分と右側の壁面構成部材の左側部分とを示す概略的な縦断面図である。
【図7】図7は、上下調節機構の一例を示す概略的な縦断面図である。
【図8】図8は、この発明になる壁面構成ユニット取付け機構において、壁面構成ユニットにおける壁面構成部材の異なる構成例(各種情報伝達媒体を収容するための情報ディスプレー収容空間を設けた具体的な例)を示すものであって、図8Aは、その概略的な側面図、図8Bは、当該壁面構成部材の内面側(係止連結手段が設けてある側)から見た概略的な背面図である。
【図9】図9は、図8に示す壁面構成部材を用いて壁面を形成する実施例を示すものであって、高さ方向中間部を部分的に破断して示す概略的な側断面図である。
【図10】図10は、この発明になる壁面構成ユニット取付け機構に基づいて、各種の異なる壁面構成部材を用いて各種の異なる壁面を構築して多機能性に富んだ壁面を構成してなる建造物の具体的な実施例を示す概略的な斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
EW 既存構造物の既存壁面
U 壁面構成ユニット
1、101 ベース部材
2、102、202 壁面構成部材
3、103 係止連結手段
4、104 金属製の枠組立体
5、5 左右一対の縦枠体
6、6 上下一対の横枠体
7 縦補強梁
8 中間基部
9 アンカーボルト挿通孔
10 アンカーボルト
11 第1のプレート部分
12 上向きに開いた受側係止溝
13 開いた側に向けて先拡がりの傾斜ガイド部
14 金属製の枠組立体
15、115、215 壁面構成パネル体
16、16 左右一対の縦枠体
17、17上下一対の横枠体
18 中間基部
19 ボルト挿通孔
20 固定ボルト
21 立ち上がり壁
22、22 第2のプレート部分
23、24 第2のプレート部分
25、125 下向きに開いた掛側係止溝
26 開いた側に向けて先拡がりの傾斜ガイド部
27 ゴムローラ部材
28、128 上下調節手段
29 上下調節ボルト
30 アイボルト
31 固定用ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物などの躯体生地に対して、その外側から壁面構成ユニットを吊り下げて取付けるための壁面構成ユニット取付け機構であって、前記壁面構成ユニットが、前記建造物などの躯体生地に直接的に取り付けられるベース部材と、前記ベース部材に対して係止連結手段を介して係止連結される壁面構成部材との組み合わせでなり、前記係止連結手段が、前記ベース部材の表側に設けた上向きに開いた複数の受側係止溝と、前記受側係止溝に対応して前記壁面構成部材の裏側に設けた下向きに開いた複数の掛側係止溝とを含むものからなることを特徴とする壁面構成ユニット取付け機構。
【請求項2】
前記壁面構成部材が、前記係止連結手段における複数の掛側係止溝を備えた枠組立体と、前記枠組立体に対して固定してある壁面構成パネル体とからなることを特徴とする請求項1に記載の壁面構成ユニット取付け機構。
【請求項3】
前記壁面構成部材が、前記係止連結手段における複数の掛側係止溝を備えた枠組立体と、前記枠組立体に対して固定してある壁面構成パネル体とからなり、前記壁面構成パネル体の少なくとも一部に、各種情報伝達媒体を収容するための情報ディスプレー収容空間を設けたものからなることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の壁面構成ユニット取付け機構。
【請求項4】
前記各種情報伝達媒体が、液晶テレビ装置、LED表示装置、インフォメーションボードあるいは額装装置などであることを特徴とする請求項3に記載の壁面構成ユニット取付け機構。
【請求項5】
前記壁面構成パネル体が、壁面を構成するための各種建材パネル、ソーラーパネル、光飾パネル、表示パネルあるいはその他の装飾パネルなどであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の壁面構成ユニット取付け機構。
【請求項6】
前記ベース部材における各受側係止溝の近傍に、前記ベース部材と前記壁面構成部材との間にクッション性を付与するためのゴムローラ部材を取り付けてなることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の壁面構成ユニット取付け機構。
【請求項7】
前記ベース部材側に設けた受側係止溝が、当該ベース部材の広域平面に対して交差する方向にのびる第1のプレート部分に形成されており、前記壁面構成部材側に設けた掛側係止溝が、当該壁面構成部材の広域平面に対して平行する方向にのびる第2のプレート部分に形成されており、前記第1のプレート部分と前記第2のプレート部分が十字状に交差して、前記受側係止溝に前記掛側係止溝が係合することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の壁面構成ユニット取付け機構。
【請求項8】
前記ベース部材側に設けた受側係止溝および前記壁面構成部材側に設けた掛側係止溝が、それぞれ開いた側に向けて先拡がりになる傾斜ガイド部を備えたものからなることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の壁面構成ユニット取付け機構。
【請求項9】
前記壁面構成部材における枠組立体の下縁に、所定の間隔を隔てて、外周枠体の内側から外側に向けて出没する一対の上下調節ボルトでなる上下調節手段を備えてなることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の壁面構成ユニット取付け機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−70523(P2006−70523A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253784(P2004−253784)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(591102822)富士工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】