説明

変位センサシステム及び変位センサ

【課題】常に、受光量が最大値を示すピーク画素からの受光信号を利用する構成に比べて、検出可能な対象物の制約を抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】変位センサシステムは、受光信号に基づき指定された少なくとも1つの領域について、当該領域内において受光量がピークを示す画素であるピーク画素が複数存在する場合、当該複数のピーク画素の中からいずれかを、選択画素として選択するピーク選択部と、上記少なくとも1つの領域について、ピーク選択部で選択された選択画素からの受光信号に基づき投受光感度を設定する感度設定部と、各領域内の走査線の受光信号を、当該領域に対応する投受光感度下で前記受光処理部に取り出させ、その取り出された受光信号に応じた検出処理を実行する受光制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面形状等を測定するための変位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対象物の表面形状等を測定するための変位センサが知られている(特許文献1参照)。この変位センサは、投光部及び二次元CCDを有し、投光部から出射した線状の光を対象物の表面に照射させ、その反射光を二次元CCDの撮像面にて受光する。反射光が撮像面上に形成する受光像は、対象物の表面形状に応じた形状となるため、撮像面上の受光位置に基づき対象物の表面形状等を測定することができる。
【0003】
ところが、表面形状等を測定したい対象物は、表面全体が均一な反射率であるものに限られず、反射率が互いに異なる複数の領域を有するものもある。このような反射率が不均一な対象物の表面形状等を、上記従来の変位センサにより測定しようとすると、反射率の高い領域からの反射光を受光する画素では受光量が飽和してしまう一方で、反射率の低い領域からの反射光を受光する画素では受光量が小さく耐ノイズ性が低くなるため、表面形状等を精度よく測定することができないという問題があった。
【0004】
そこで、本願出願人は、撮像面上の異なる領域ごとに対応して個別の投受光感度を設定可能とし、各領域内の走査線の受光信号を、当該領域に対応する投受光感度下で取り出す変位センサを創作した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−237176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記本願出願人の変位センサを利用した場合、少なくとも1つの領域内において、受光量がピークを示す画素であるピーク画素が複数存在する場合がある。例えば、対象物が、基準部材の上に光透過性部材が配置されたものである場合、少なくとも基準部材の表面及び光透過性部材の表面での反射光が撮像面にて受光されることにより、ピーク画素が複数存在することがある。この場合、基準部材の表面形状を測定するときには、基準部材の表面での反射光に対応するピーク画素からの受光信号を利用して投受光感度を調整することが好ましい。一方、光透過性部材の表面形状を測定するときには、光透過性部材の表面での反射光に対応するピーク画素からの受光信号を利用して投受光感度を調整することが好ましい。
【0007】
しかし、上記変位センサでは、領域ごとに個別に投受光感度を設定できるものの、どの領域も、ピーク画素が複数存在するかどうかにかかわらず、常に、それら複数のピーク画素のうち受光量が最大値を示すピーク画素からの受光信号を利用して投受光感度を調整する構成であった。このため、例えば、一の領域では1番目に受光量が多いピーク画素を利用し、他の領域では2番目に受光量が多いピーク画素を利用して投受光感度を調整すべき対象物については、投受光感度が適正に調整できず、変位センサで適正に検出可能な対象物に制約があった。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、常に、受光量が最大値を示すピーク画素からの受光信号を利用する構成に比べて、検出可能な対象物の制約を抑制することが可能な技術を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための手段として、第1の発明に係る変位センサシステムは、対象物に線状の光を照射する投光部と、前記投光部から照射され前記対象物で反射した線状の反射光を受光する撮像面を有する二次元撮像素子と、前記撮像面上の各画素での受光量に応じた受光信号を、前記線状の反射光の受光像に交差する走査線ごとに取り出す受光処理部と、前記撮像面上の複数の領域を走査線単位で指定する領域指定部と、前記受光処理部で取り出された受光信号に基づき、前記領域指定部で指定された少なくとも1つの領域について、当該領域内において受光量がピークを示す画素であるピーク画素が複数存在する場合、当該複数のピーク画素の中からいずれかを、選択画素として選択するピーク選択部と、前記少なくとも1つの領域について、前記ピーク選択部で選択された前記選択画素からの受光信号に基づき投受光感度を設定する感度設定部と、前記各領域内の走査線の受光信号を、当該領域に対応する投受光感度下で前記受光処理部に取り出させ、その取り出された受光信号に応じた検出処理を実行する受光制御部と、を備える。
【0010】
本構成によれば、指定された少なくとも1つの領域について、複数のピーク画素の中からいずれかを、選択画素として選択し、その選択画素からの受光信号に基づき投受光感度が設定される。従って、常に、受光量が最大値を示すピーク画素からの受光信号のみを利用する構成に比べて、検出可能な対象物の制約を抑制することが可能である。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の変位センサシステムであって、前記ピーク選択部は、前記複数のピーク画素を受光量が大きい順或いは小さい順に順位付けた場合、予め定められた規定順位になるピーク画素を、選択画素として選択する。
本構成によれば、受光量が小さいノイズ成分、或いは、受光量の大きいノイズ成分による影響を抑制することができる。
【0012】
第3の発明は、第1の発明の変位センサシステムであって、前記ピーク選択部は、前記複数のピーク画素を基準画素に近い順或いは遠い順に順位付けた場合、予め定められた規定順位になるピーク画素を、選択画素として選択する。
本構成によれば、基準画素から遠い位置で発生するノイズ成分、或いは、基準画素に近い位置で発生するノイズ成分による影響を抑制することができる。
【0013】
第4の発明の変位センサは、対象物に線状の光を照射する投光部と、前記投光部から照射され前記対象物で反射した線状の反射光を受光する撮像面を有する二次元撮像素子と、前記撮像面上の各画素での受光量に応じた受光信号を、前記線状の反射光の受光像に交差する走査線ごとに取り出す受光処理部と、前記受光処理部で取り出された受光信号に基づき、前記撮像面上の異なる領域のうち少なくとも1つの領域について、当該領域内において受光量がピークを示す画素であるピーク画素が複数存在する場合、当該複数のピーク画素の中からいずれかを、選択画素として選択するピーク選択部と、前記少なくとも1つの領域について、前記ピーク選択部で選択された前記選択画素からの受光信号に基づき投受光感度を設定する感度設定部と、前記各領域内の走査線の受光信号を、当該領域に対応する投受光感度下で前記受光処理部に取り出させ、その取り出された受光信号に基づく検出処理を実行する受光制御部と、を備える。
【0014】
第5の発明は、第4の発明の変位センサであって、前記領域ごとに対応する投受光感度で取り出された受光信号に基づく受光位置及び受光量の少なくとも一方に関する情報を外部出力する出力部を備える。
この発明によれば、領域ごとに対応する投受光感度で取り出された受光信号に基づく受光位置及び受光量の少なくとも一方に関する情報を、例えば上位機器等に伝送することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、常に、受光量が最大値を示すピーク画素からの受光信号を利用する構成に比べて、検出可能な対象物の制約を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る変位センサの一部を示す概要構成図
【図2】図1のX−X面で切断した対象物の断面図
【図3】受光像と走査線との関係を示す模式図
【図4】変位センサシステムの電気的構成を示すブロック図
【図5】領域指定処理を示すフローチャート
【図6】領域E2の一走査線Lの受光量分布曲線を示すグラフ
【図7】領域別投受光処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
本発明の一実施形態について図1〜図7を参照しつつ説明する。
本実施形態の変位センサシステム1は、変位センサ10とコントローラ30とが通信可能に接続された構成である。
【0018】
(変位センサの概要構成)
図1は変位センサ10の一部を示す概要構成図である。
図1に示すように、変位センサ10は、表面形状検出器であって、レーザ光源11(投光部の一例)及び二次元CCD15(二次元撮像素子の一例)を備え、レーザ光源11から出射された光Bを挿通板12のスリット12Aを通過させて線状にし、それを対象物Wの表面に照射させる。そして、その反射光Rを二次元CCD15の撮像面15A上にて受光するものである。
【0019】
反射光Bが撮像面15A上に形成する受光像Fは、対象物Wの表面(被照射面)が平坦であれば、上記スリット12Aの開口形状と略同じ形状(例えば直線状)をなす。一方、上記受光像Fは、対象物Wの表面が凸凹状をなす場合には、凸凹に倣った形状をなす(図2参照)。従って、撮像面15A上に形成される受光像F(受光位置)に基づいて対象物Wの表面形状等を測定することができる。
【0020】
図2は、図1のX−X面で切断した対象物Wの断面図である。
図2に示すように、対象物Wは、上面が開口したケースW1と、当該ケースW1内に収容された内部部品W2と、ケースW1の開口部を塞ぐガラスカバーW3とを備える。以下の説明では、ケースW1はアルミなどの金属製であり、内部部品W2は例えばICチップなどであって樹脂製材料で覆われており、反射率は、ケースW1、ガラスカバーW3、内部部品W2の順に低いものとする。
【0021】
図1,2に示すように、内部部品W2に向けて照射された光Bは、内部部品Wの表面、ガラスカバーW3の裏面及び表面でそれぞれ反射し、反射光R1、R2、R3として二次元CCD15の撮像面15A上にて受光される。一方、対象物Wのうち内部部品W2よりも外側に向けて照射された光Bは、ほとんどがケースW1の表面で反射し、一部がガラスカバーW3の表面で反射して撮像面15A上にて受光される。
【0022】
(受光像と走査線との関係)
図3は受光像F1〜F3と走査線Lとの関係を示す模式図であり、後述する表示部31の表示内容を示す図でもある。同図において、受光像F1は反射光R1により形成され、受光像F2は反射光R2により形成され、受光像F3は反射光R3により形成される。
【0023】
撮像面15Aは行列状に配された複数の画素(受光素子)より構成されるが、これら各画素の受光信号を受光像F1〜F3の厚み方向(受光像に交差する方向の一例)に沿った走査線L毎に読み出す。そして、読み出された走査線L上の各画素について、例えば、受光量(受光信号レベル)の比較を行って、受光量がピークとなる画素を特定し、その位置(以下、受光位置という)を検出する。
【0024】
このように、走査線L上における受光位置を検出する処理を、各走査線Lについてそれぞれ行うことで、光が照射された部位の表面形状や高低差等を測定することができる。また、対象物Wと変位センサ10とを相対的に移動させつつ同様の表面形状測定を各部位について行うことで、対象物W全体の表面形状についても測定することができる。
【0025】
(変位センサシステムの電気的構成)
図4は、変位センサシステム1の電気的構成を示すブロック図である。
【0026】
1.変位センサ
変位センサ10には、変位センサ10の全体を制御する第1制御部20(受光制御部、ピーク選択部、感度設定部、領域指定部の一例)、レーザ光源11、レーザ駆動回路13、二次元CCD15、CCD駆動回路17(受光処理部の一例)、データ処理部21(出力部の一例)、メモリ25を備える。
【0027】
レーザ駆動回路13は第1制御部20からの動作信号Saに基づいてドライブして、レーザ光源11に駆動電流を供給させる。また、動作信号SaはPWM信号であり、第1制御部20はそのデューティ比を変えることで駆動電流の電流量を増減調整し、レーザ光源11からの投光量を変更することができる。
【0028】
二次元CCD15は、受光素子を行列状に配した撮像面15Aを有し、撮像面15Aに入光する光をその光量に応じたレベルの電気信号(受光信号)に変換する。CCD駆動回路17は撮像面15Aの各受光素子から出力される受光信号を、走査線L毎に順次読み取るものである。なお、本実施形態では、走査線Lは撮像面15Aの上下方向に延びる設定とされており、線状の受光像と略直交する。
【0029】
第1制御部20は、レーザ駆動回路13を介してレーザ光源11に投光動作をさせつつCCD駆動回路17に二次元CCD15から受光信号を読み取らせる(投受光動作)。そして、当該受光信号に基づき走査線Lごとの受光データを、データ処理部21を介して外部出力する。受光データは、受光素子、換言すれば画素の位置及び受光量に関する情報が含まれる。なお、データ処理量を軽減するために、受光データに、所定量以上の受光量を示す画素のみの位置及び受光量だけを含めてもよい。
【0030】
2.コントローラ
コントローラ30は、表示部31、第2制御部33(表示制御部の一例)、データ処理部35、操作部37を備える。データ処理部35は、有線または無線により変位センサ10のデータ処理部21との間でデータの双方向通信が可能である。第2制御部33は、表示部31の表示制御等を行うものであり、例えば変位センサ10から受信した受光データに基づき、図3に示すように撮像面15A上における各走査線L、及び、各走査線Lの受光位置に基づく形状を表示部31に表示させる。操作部37は、ユーザが各種の入力操作を行うものである。
【0031】
(領域指定処理)
図5は領域指定処理を示すフローチャートである。ユーザが操作部37にて領域指定モードの実行を指示すると、第2制御部33がその実行を変位センサ10の第1制御部20に指示し、これにより第1制御部20が領域指定処理を実行する。このとき第1制御部20は領域指定部として機能する。
【0032】
第1制御部20は、投受光動作を実行し(S1)、全走査線Lの受光データを取得する(S3)。なお、このときの投受光動作では、例えば全走査線Lについて投受光感度(本実施形態ではレーザ光源の投光量)が一律、所定の初期値に設定されている。第1制御部20は、取得した受光データをコントローラ30に送信する。これにより第2制御部33は、上記受光データに基づき受光像の形状を表示部31に表示させる(S5 図3参照)。
【0033】
ここで、上述したように対象物Wは反射率が不均一である。このため、撮像面15A上において、低反射率の内部部品W2に対応する領域では受光量が少なくノイズに埋もれてしまい、高反射率のケースW1に対応する領域では受光量が多く飽和レベルに達してしまうおそれがある。そして、その結果、各走査線L上のおける受光位置を正確に検出できず、表示部31には対象物Wの実際の形状に対して不正確な受光像の形状が表示されることがある。
【0034】
但し、不正確な受光像の形状とは言っても、ユーザは、その受光像の形状から、反射率の異なる各領域を概ね視認することができる。そこで、ユーザは、表示部31を見ながら、操作部37での操作により、各領域をそれぞれ走査線L単位で指定する。図3の例では、例えば走査線L1〜L4の領域(第1領域E1)、走査線L5〜L17の領域(第2領域E2)、L18〜L21の領域(第3領域E3)の3つ領域を指定することが好ましい。
【0035】
ユーザにより領域が指定されると(S7:YES)、第2制御部33は、指定された複数の領域の中に、ピーク画素が複数存在する領域があるかどうかを判断する(S9)。ピーク画素とは、所定本(本実施形態では1本)分の走査線L上において受光量(輝度)がピークを示す画素であり、ピークとは、所定本分の走査線L上に位置する画素群の受光量分布曲線において増減傾向が反転する、いわゆる極大値を意味する。
【0036】
図3の例では、領域E1の走査線L2〜L4、領域E3の走査線L18〜L21それぞれにおいてピーク画素は1つしか存在しない。しかし、領域E2の走査線L5〜L17それぞれにおいてピーク画素が3つずつ存在する。従って、この場合、第2制御部33は、ピーク画素が複数存在する領域があると判断する(S9:YES)。
【0037】
図6は、領域E2の一走査線Lの受光量分布曲線を示すグラフである。縦軸が受光量であり、横軸が一走査線L上の各画素の位置を示す。同図に示すように、同走査線Lの受光量分布曲線には3つのピーク画素G1〜G3が存在する(同図の実線グラフ参照)。ピーク画素G1は、内部部品W2の表面での反射光R1に対応し、ピーク画素G2は、ガラスカバーW3の裏面での反射光R2に対応し、ピーク画素G3は、ガラスカバーW3の表面での反射光R3に対応する。
【0038】
ここで、例えばガラスカバーWの裏面または表面の表面形状を測定したいにもかかわらず、ピーク画素G1の受光量に基づき投受光感度を調整した場合、ピーク画素G2、G3の受光量が飽和してしまうおそれがある(図6の二点鎖線参照)。そうすると、後述する領域別投受光処理において、ガラスカバーWの裏面や表面の形状について測定誤差が大きくなってしまう。また、例えば内部部品W2の表面またはガラスカバーWの裏面の形状を測定したいにもかかわらず、ピーク画素G3の受光量に基づき投受光感度を調整した場合、ピーク画素G1、G2の受光量が不足してしまうおそれがある。そうすると、やはり領域別投受光処理において、ガラスカバーWの裏面や表面の形状について測定誤差が大きくなってしまう。
【0039】
従って、測定対象に応じて適切なピーク画素を選択することが好ましい。第2制御部33は、ピーク画素が複数存在する領域が有ると判断した場合(S9:YES)、その領域についてピーク画素をユーザに選択させるための選択画面を表示部31に表示させる(S11)。この選択画面には、図3及び図6の示す画像が含まれていることが好ましい。ユーザは、選択画面を見ながら特定のピーク画素を選択する操作を操作部37にて行う。
【0040】
本実施形態では、ユーザにより複数のピーク画素のいずれかが選択されると(S13:YES)、第2制御部33は、複数のピーク画素を受光量が大きい順に順位付けた場合において、選択されたピーク画素の順位を特定し、その順位を規定順位とし、領域指定情報(走査線Lの指定番号)と共に変位センサ10に送信する。そして、第1制御部20は、受信した規定順位及び領域指定情報をメモリ25に格納し(S15、S17)、本領域指定処理を終了する。
【0041】
一方、第2制御部33は、ピーク画素が複数存在する領域が無いと判断した場合(S9:NO)、領域指定情報を変位センサ10に送信し、第1制御部20は、受信した領域指定情報をメモリ25に格納し(S17)、本領域指定処理を終了する。
【0042】
(領域別投受光処理)
図7は、領域別投受光処理を示すフローチャートである。
ユーザが操作部37にて測定モードの実行を指示すると、第2制御部33は領域別投受光処理の実行コマンドを変位センサ10に送信する。そして、第1制御部20は、実行コマンドの受信に基づき領域別投受光処理を実行する。このとき第1制御部20は感度設定部、受光制御部として機能する。
【0043】
第1制御部20は、領域指定番号Kを「1」に初期化し(S21)、各領域Eにおける代表走査線L(例えば各領域Eの中央の位置する走査線 第1領域E1であれば走査線L2またはL3)について投受光動作を実行する(S23)。即ち、現在設定されている投光量レベルでレーザ光源11に投光動作をさせ、二次元CCD15から上記代表走査線Lのみの受光信号を読み出す。
【0044】
次に第1制御部20は、読み出した受光信号に基づき、代表走査線L上に複数のピーク画素が存在するかどうかを判断する(S25)。第1制御部20は、複数のピーク画素が存在すると判断した場合には(S25:YES)、複数のピーク画素を受光量が大きい順に順位付けた場合、上記規定順位になるピーク画素を、選択画素として特定する(S27)。次に、第1制御部20は、その選択画素の受光量が適切か否かを判断する(S29)。具体的には、受光量が所定の基準範囲(飽和レベルよりも低く、且つ、ノイズよりも高い範囲)内か否かを判断する。受光量が適切であれば(S29:YES)、S33にそのまま進む。
【0045】
一方、受光量が不適切である場合には(S29:NO)、受光量が基準範囲内になるよう投受光感度(第1制御部20が受ける受光信号レベル)を変更し(S31)、その後、S33に進む。本実施形態では、第1制御部20は、レーザ駆動回路13に与える動作信号Saのデューティ比を変更しレーザ光源11の投光量を変更することにより、投受光感度を変更する。具体的には、受光量が基準範囲よりも低ければ投光量を多くし、受光量が基準範囲よりも高ければ投光量を少なくする。なお、投受光感度を変更する方法としては、例えばCCD駆動回路17における受光信号の増幅度を変更してもよい。
【0046】
なお、第1制御部20は、1つのピーク画素のみ存在すると判断した場合には(S25:NO)、そのピーク画素についてS29,S31の処理を実行する。
【0047】
受光量が適切になると(S29:YES)、受光信号に基づく受光データを、各領域E(または代表走査線L)に対応付けてコントローラ30に送信する(S33)。そして、第1制御部20は、未処理の領域が残っている場合には(S35:NO)、領域指定番号Kに「1」を加えて(S37)、S23に戻り、第2領域以降についても同様の処理を繰り返す。
【0048】
全領域Eについて処理が終了すれば(S35:YES)、本領域別投受光処理を終了する。これにより、変位センサ10は、領域Eごとに適切な画素に基づく投受光感度下で取得した受光データをコントローラ30に送信することができる。そして、コントローラ30の第2制御部33は、受信した領域Eごとの受光データに基づき、各領域E間の高低差を所定の閾値と比較することにより、ケースW1に対して内部部品W2或いはガラスカバーW3が傾くことなく適切に嵌められているか否かを判定し、その判定結果に応じた判定信号を図示しない上位機器に出力する。このとき第2制御部33は受光制御部として機能する。
【0049】
なお、他の検出処理としては、例えば変位センサ10に設けられた図示しない表示灯を点灯動作させたり、コントローラ30の表示部31に判定結果を表示させたりしてもよい。また、変位センサ10と対象物Wの各部位との距離(変位)を検出(測定)してもよい。
【0050】
(本実施形態の効果)
この実施形態の変位センサシステム1によれば、撮像面15A上の異なる領域Eごとに対応して個別の投受光感度を設定可能であり、各領域E内の走査線Lの受光信号を、当該領域Eに対応する投受光感度下で取り出すことができる。従って、反射率が不均一な対象物Wでも、各部分に対応する撮像面15A上の領域Eごとに当該部分の反射率に応じた投受光感度を設定することで対象物WのガラスカバーW3等が正常に嵌っているかを判定することが可能である。
【0051】
しかも、各領域Eの代表走査線Lのみの受光信号に基づき上記判定が可能であるから、撮像面上の全走査線の受光信号を利用する構成に比べて高速で処理することができる。
【0052】
また、指定された少なくとも1つの領域について、複数のピーク画素の中からいずれかを、選択画素として選択し、その選択画素からの受光信号に基づき投受光感度が設定される。従って、常に、受光量が最大値を示すピーク画素からの受光信号のみを利用する構成に比べて、検出可能な対象物の制約を抑制することが可能である。図3の例では、領域E2について、1番目に受光量が大きいピーク画素G3を選択画素とすれば、ガラスカバーW3の表面形状を精度よく測定することができる。また、2番目に受光量が大きいピーク画素G2を選択画素とすれば、ガラスカバーW3の裏面形状を精度よく測定することができる。更に、3番目に受光量が大きいピーク画素G1を選択画素とすれば、内部部品W2の表面形状を精度よく測定することができる。
【0053】
しかも、複数のピーク画素が存在する領域について、複数のピーク画素を受光量が大きい順に順位付けた場合、規定順位になるピーク画素を、選択画素として特定する。従って、例えば外部環境の変化により、受光量が規定順位よりも下位のノイズ成分等が発生した場合でも、当該ノイズ成分等による影響を抑制することができる。
【0054】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。特に、各実施形態の構成要素のうち、最上位の発明の構成要素以外の構成要素は、付加的な要素なので適宜省略可能である。
(1)上記実施形態では、変位センサ10及びコントローラ30を備えた変位センサシステムについて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば表示部31及び操作部37の少なくとも一方を変位センサ10側に設けた構成や、コントローラ30の第2制御部33が領域指定処理を実行する構成であってもよい。
【0055】
(2)上記実施形態では、各走査線L及び各走査線Lの受光位置に基づく形状を表示部31に表示(図形表示)したが、本発明はこれに限られない。例えば各走査線Lの特定情報、受光位置の位置情報を文字、記号等で数値表示してもよい。
【0056】
(3)また、領域別投受光処理を行った後に、各領域Eについて各走査線L及び各走査線Lの受光位置に基づく形状を表示部31に表示させ、領域指定を変更できるようにしてもよい。このような構成であれば、より正確に領域指定を行うことができる。このとき、全ての領域Eについて、受光位置に基づく形状を同時に表示部31に表示するのが好ましい。
【0057】
(4)上記実施形態では、領域指定処理において各領域Eの代表走査線Lのみの受光信号に基づき対象物Wの高低差を測定したが、本発明はこれに限られない。例えば各領域Eの全走査線Lの受光信号に基づき対象物Wの表面形状を測定してもよい。
【0058】
(5)上記実施形態では、ガラスカバーW3を備える対象物Wを例に挙げた。しかし、ガラスカバーW3の代わりに、フィルムなどの透明体や半透明体を備える対象物でもよい。要するに、少なくとも一部の領域での反射光により複数のピーク画素が存在する対象物であればよい。
【0059】
(6)上記実施形態では、ピーク画素が複数存在する領域が1つだけの場合を例に挙げて説明した。しかし、ピーク画素が複数存在する領域が2以上ある場合でもよく、この場合、領域ごとに個別に選択画素を選択することが好ましい。
【0060】
(7)上記実施形態では、複数のピーク画素を受光量が大きい順に順位付けた場合、規定順位になるピーク画素を、選択画素とした。しかし、複数のピーク画素を受光量が小さい順に順位付けた場合、規定順位になるピーク画素を、選択画素としてもよい。この場合、例えば周囲環境の変化により、受光量が規定順位よりも上位のノイズ成分等が発生した場合でも、当該ノイズ成分等による影響を抑制することができる。
【0061】
また、複数のピーク画素を基準画素に近い順に順位付けた場合、規定順位になるピーク画素を、選択画素としてもよい。この場合、周囲環境の変化により、基準画素から遠い位置で発生したノイズ成分等による影響を抑制することができる。逆に、複数のピーク画素を基準画素に遠い順に順位付けた場合、規定順位になるピーク画素を、選択画素としてもよい。この場合、周囲環境の変化により、基準画素から近い位置で発生したノイズ成分等による影響を抑制することができる。また、単にユーザが選択したピーク画素を、選択画素としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1:変位センサシステム
10:変位センサ
11:レーザ光源(投光部)
15:二次元CCD(二次元撮像素子)
15A:撮像面
17:CCD駆動回路(受光処理部)
20:第1制御部(受光制御部、ピーク選択部、感度設定部、領域指定部)
21:データ処理部(出力部)
L:走査線
W:対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に線状の光を照射する投光部と、
前記投光部から照射され前記対象物で反射した線状の反射光を受光する撮像面を有する二次元撮像素子と、
前記撮像面上の各画素での受光量に応じた受光信号を、前記線状の反射光の受光像に交差する走査線ごとに取り出す受光処理部と、
前記撮像面上の複数の領域を走査線単位で指定する領域指定部と、
前記受光処理部で取り出された受光信号に基づき、前記領域指定部で指定された少なくとも1つの領域について、当該領域内において受光量がピークを示す画素であるピーク画素が複数存在する場合、当該複数のピーク画素の中からいずれかを、選択画素として選択するピーク選択部と、
前記少なくとも1つの領域について、前記ピーク選択部で選択された前記選択画素からの受光信号に基づき投受光感度を設定する感度設定部と、
前記各領域内の走査線の受光信号を、当該領域に対応する投受光感度下で前記受光処理部に取り出させ、その取り出された受光信号に応じた検出処理を実行する受光制御部と、を備える変位センサシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の変位センサシステムであって、
前記ピーク選択部は、前記複数のピーク画素を受光量が大きい順或いは小さい順に順位付けた場合、予め定められた規定順位になるピーク画素を、選択画素として選択する、変位センサシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の変位センサシステムであって、
前記ピーク選択部は、前記複数のピーク画素を基準画素に近い順或いは遠い順に順位付けた場合、予め定められた規定順位になるピーク画素を、選択画素として選択する、変位センサシステム。
【請求項4】
対象物に線状の光を照射する投光部と、
前記投光部から照射され前記対象物で反射した線状の反射光を受光する撮像面を有する二次元撮像素子と、
前記撮像面上の各画素での受光量に応じた受光信号を、前記線状の反射光の受光像に交差する走査線ごとに取り出す受光処理部と、
前記受光処理部で取り出された受光信号に基づき、前記撮像面上の異なる領域のうち少なくとも1つの領域について、当該領域内において受光量がピークを示す画素であるピーク画素が複数存在する場合、当該複数のピーク画素の中からいずれかを、選択画素として選択するピーク選択部と、
前記少なくとも1つの領域について、前記ピーク選択部で選択された前記選択画素からの受光信号に基づき投受光感度を設定する感度設定部と、
前記各領域内の走査線の受光信号を、当該領域に対応する投受光感度下で前記受光処理部に取り出させ、その取り出された受光信号に基づく検出処理を実行する受光制御部と、を備える変位センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の変位センサであって、
前記領域ごとに対応する投受光感度で取り出された受光信号に基づく受光位置及び受光量の少なくとも一方に関する情報を外部出力する出力部を備える、変位センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−215399(P2012−215399A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79238(P2011−79238)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000106221)パナソニック デバイスSUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】