変速シフト装置
【課題】シフトドラムの各変速段の位置決めがなされ、変速操作入力の際にクリック感があって変速が行われたか否かを感知することができるとともに、シフトドラム回転力を最適に保つことができる変速シフト装置を供する。
【解決手段】シフトスピンドル31の回動をロストモーション機構50を介してシフトドラム21の回動に伝達して変速を行う変速シフト装置において、上流側回動部材51の上流側ラッチ機構70および下流側回動部材61の下流側ラッチ機構80を備えて上流側ラッチ機構70の掛止して保持する動作に連動して下流側ラッチ機構80が掛止解除し、上流側ディテント機構56が上流側回動部材51の位置決めを行う変速シフト装置。
【解決手段】シフトスピンドル31の回動をロストモーション機構50を介してシフトドラム21の回動に伝達して変速を行う変速シフト装置において、上流側回動部材51の上流側ラッチ機構70および下流側回動部材61の下流側ラッチ機構80を備えて上流側ラッチ機構70の掛止して保持する動作に連動して下流側ラッチ機構80が掛止解除し、上流側ディテント機構56が上流側回動部材51の位置決めを行う変速シフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機構の変速段の切換えを行う変速シフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車変速機構の一対の歯車列が有効に動力伝達している状態から他の歯車列が有効に動力伝達する状態に切り換える変速時には、動力伝達状態のままでは抵抗が大きいので、通常クラッチを切断して動力の伝達を遮断して切換えを可能にしている。
また、シフトペダルによる変速操作入力が直接シフトドラムを回動すると、ドグ当たりが生じたときなど変速操作が円滑になされないので、シフトスピンドルとシフトドラムとの間にロストモーション機構を介装して良好な変速操作感覚を得られるようにしている。
【0003】
このロストモーション機構を備える変速シフト装置にあって、クラッチの段接を自動的に制御する構成が、同じ出願人により先に出願された特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2008−221410
【0005】
同特許文献1では、ロストモーション機構のロスト量にばらつきがあるので、ロストモーション機構の下流側にシフトドラムの回動を規制するシフト規制機構を備えている。
また、シフトドラムの各変速段の位置決めを行う位置決め機構(ディテント機構)がロストモーション機構の下流側に設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この位置決め機構(ディテント機構)は、ロストモーション機構の下流側にのみ設けられていて、ロストモーション機構の上流側には設けられていないので、操縦者はシフトペダルを踏み込んでも単にスプリングを圧縮する程度の抵抗を感じるだけで、ディテント機構が持つクリック感がなく、変速操作の感触によって変速が行われたか否かを感知することができなかった。
また、ロストモーション機構に蓄えられる変速操作力にばらつきがあり、シフトドラム回転力を最適に保つことができない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、シフトドラムの各変速段の位置決めがなされ、変速操作入力の際にクリック感があって変速が行われたか否かを感知することができるとともに、シフトドラム回転力を最適に保つことができる変速シフト装置を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、変速操作入力によるシフトスピンドルの回動をロストモーション機構を介してシフトドラムの回動に伝達して変速を行う変速シフト装置において、前記ロストモーション機構の上流側回動部材を掛止して保持する上流側ラッチ機構と、前記ロストモーション機構の下流側回動部材を掛止して同下流側回動部材と一体の前記シフトドラムの回動を規制する下流側ラッチ機構とを備えて、前記上流側ラッチ機構が前記上流側回動部材を掛止して保持する動作に連動して前記下流側ラッチ機構が前記下流側回動部材を掛止解除することで前記シフトドラムを回動して変速を行い、前記上流側回動部材と一体に設けられた上流側花形カムの各変速段に対応するディテント凹部が形成された所定の凹凸カム面にローラが押圧される上流側ディテント機構と、前記下流側回動部材と一体に設けられた下流側花形カムの各変速段に対応するディテント凹部が形成された所定の凹凸カム面にローラが押圧される下流側ディテント機構とを備えた変速シフト装置とした。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の変速シフト装置において、前記下流側回動部材と一体に設けられた下流側花形カムの各変速段に対応するディテント凹部が形成された所定の凹凸カム面にローラが押圧される下流側ディテント機構を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の変速シフト装置において、前記上流側回動部材に最小変速段より下段への回動および最大変速段より上段への回動を禁止するストッパ機構を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の変速シフト装置によれば、ロストモーション機構の上流側に上流側ラッチ機構とともに上流側ディテント機構を備え、上流側ディテント機構により変速操作入力の際にクリック感があり、変速が行われたか否かを感知することができる。
【0012】
請求項2記載の変速シフト装置によれば、ロストモーション機構の下流側に下流側ラッチ機構とともに下流側ディテント機構を備えるので、下流側ディテント機構によってより一層安定した回動量をシフトドラムに与えることが可能となる。
また、上流側ディテント機構と下流側ディテント機構により、その間でロストモーション機構に蓄えられる変速操作力を最適に設定してシフトドラムの回転力としてシフトドラム回転力を適切に保つことができる。
【0013】
請求項3記載の変速シフト装置によれば、上流側回動部材に最小変速段より下段への回動および最大変速段より上段への回動を禁止するストッパ機構を設けたので、操縦者が最小変速段以下および最大変速段以上の変速操作を行おうとすると、操作できないため、現変速段が最小変速段または最大変速段であることを感知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係る自動二輪車用の変速装置の断面図である。
【図2】本変速シフト装置の断面図である。
【図3】同変速シフト装置の一部の分解断面図である。
【図4】マスターアームの左側面図である。
【図5】シフト入力部材の左側面図である。
【図6】ロストモーション機構の上流側回動部材の左側面図である。
【図7】ロストモーション機構の下流側回動部材の左側面図である。
【図8】1つの変速段が確立した状態の変速シフト装置の各要部をそれぞれ示す側面図である。
【図9】変速操作入力により変化する一過程の同変速シフト装置の各要部をそれぞれ示す側面図である。
【図10】次の過程の同変速シフト装置の各要部をそれぞれ示す側面図である。
【図11】次の過程の同変速シフト装置の各要部をそれぞれ示す側面図である。
【図12】次の変速段の切換え終了過程の同変速シフト装置の各要部をそれぞれ示す側面図である。
【図13】次の変速完全終了状態の同変速シフト装置の各要部をそれぞれ示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図13に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態に係る自動二輪車用の変速装置の断面図である。
自動二輪車にクランク軸を車体幅方向(左右方向)に指向させて搭載された内燃機関の機関ケース1に変速室2を形成して、該変速室2内に変速装置の歯車変速機構10が構成されている。
【0016】
変速室2を形成する機関ケース1の左右側壁に、変速入力軸であるメイン軸11と出力軸であるカウンタ軸12が、左右方向に指向して、それぞれベアリング13,14を介して回転自在に軸支されている。
互いに平行なメイン軸11とカウンタ軸12との間に歯車変速機構10が構成されている。
【0017】
メイン軸11には、右側から左へ1速駆動ギアm1,5速駆動ギアm5,4速駆動ギアm4,3速駆動ギアm3,6速駆動ギアm6,2速駆動ギアm2が順に配列されており、1速駆動ギアm1はメイン軸11に一体に形成され、5速駆動ギアm5はメイン軸11に回転自在に軸支されたアイドルギアであり、4速駆動ギアm4と3速駆動ギアm3は一体に形成されてメイン軸11にスプライン嵌合したシフタギアであり、6速駆動ギアm6はメイン軸11に回転自在に軸支されたアイドルギアであり、2速駆動ギアm2はメイン軸11に嵌合されている。
【0018】
他方、カウンタ軸12には、右側から左へ1速被動ギアn1,5速被動ギアn5,4速被動ギアn4,3速被動ギアn3,6速被動ギアn6,2速被動ギアn2が順に配列されており、1速被動ギアn1はカウンタ軸12に回転自在に軸支されたアイドルギアであり、5速被動ギアn5はカウンタ軸12にスプライン嵌合したシフタギアであり、4速被動ギアn4と3速被動ギアn3はそれぞれカウンタ軸12に回転自在に軸支されたアイドルギアであり、6速被動ギアn6はカウンタ軸12にスプライン嵌合したシフタギアであり、2速被動ギアn2はカウンタ軸12に回転自在に軸支されたアイドルギアである。
【0019】
本歯車変速機構10は、常時噛合い式の変速ギア機構であり、対応する駆動ギアと被動ギアが常時噛合っている。
そしてメイン軸11上でシフタギアである一体の3速駆動ギアm3と5速被動ギアn5およびカウンタ軸12上でシフタギアである5速被動ギアn5と6速被動ギアn6が、軸方向に移動され隣接するギアどうしのドグクラッチが段接することによりいずれか一対の歯車列(駆動ギアと被動ギアの噛合い)が有効に動力伝達することになって1つの変速段が確立し、確立した変速段の変速比でメイン軸11からカウンタ軸12に動力が伝達される。
なお、本歯車変速機構10には、すべての歯車列が無効となって動力伝達が行われないニュートラル位置が存在する。
【0020】
メイン軸11には、内燃機関のクランク軸(図示せず)の動力が伝達されるが、その間に動力伝達を断接する多板摩擦クラッチ3が介装される。
クランク軸からプライマリギア列4およびトルクダンパ5を介して多板摩擦クラッチ3のクラッチアウタ3oに動力が伝達される。
【0021】
多板摩擦クラッチ3は、前記メイン軸11の右端部にクラッチインナ3iが嵌着され、メイン軸11に回転自在に軸支された前記クラッチアウタ3oがクラッチインナ3iの外周囲を覆っており、その間でクラッチアウタ3oにスプライン嵌合する駆動摩擦板3ooとクラッチインナ3iにスプライン嵌合する被動摩擦板3iiが軸方向に交互に重なり、左側のクラッチインナ3iに形成された受圧板3ipと右側のクラッチインナ3iに軸方向に摺動自在に支持された加圧板3pとの間に挟まれている。
加圧板3pはクラッチスプリング3sにより左方向に付勢されている。
【0022】
メイン軸11は、円筒状をなし、内部をプッシュロッド6が貫通しており、プッシュロッド6のメイン軸11より右方に突出した右端がレリーズ部材7を介して加圧板3pに連結されている。
一方、プッシュロッド6の左端部は、機関ケース1を貫通してスレーブ油圧シリンダ8のピストン8pに嵌着されている。
【0023】
スレーブ油圧シリンダ8はECUにより制御されるマスター油圧シリンダにより駆動される。
したがって、スレーブ油圧シリンダ8が作動してピストン8pがプッシュロッド6を右方に押すと、レリーズ部材7を介して加圧板3pをクラッチスプリング3sのばね力に抗して右方に移動させてクラッチスプリング3sのばね力により接続していた多板摩擦クラッチ3を切断することができる。
【0024】
歯車変速機構10においてシフタギアの移動により変速段の切換えを行うときは、ドグクラッチの段接がなされるが、メイン軸11からカウンタ軸12に動力伝達がなされていると、ドグクラッチの切断に大きな抵抗を伴い円滑な変速ができないので、多板摩擦クラッチ3を切断して動力の伝達を遮断する必要がある。
【0025】
出力軸であるカウンタ軸12は、機関ケース1を左方に貫通した左端にドライブスプロケット15が嵌着されて、歯車変速機構10で確立された変速段の出力がドライブスプロケット15からチェーン16を介して後輪に伝達されて走行する。
【0026】
歯車変速機構10のシフタギアを移動して変速を行わせる変速シフト装置20について、以下説明する。
本変速シフト装置20は、シフトドラム21を回動することにより、シフトフォーク軸22,23に摺動自在に軸支されたシフトフォーク24,25,26がシフトドラム21の外周面に形成されたシフト溝21vに案内されて軸方向に移動し、シフトフォーク26がメイン軸11にスプライン嵌合したシフタギアである3速駆動ギアm3と4速駆動ギアm4を一体に移動し、シフトフォーク24がカウンタ軸12にスプライン嵌合したシフタギアである5速被動ギアn5を移動し、シフトフォーク25がシフタギアである6速被動ギアn6を移動して変速段の切換えを行う。
【0027】
変速シフト装置20のシフトドラム21は、操縦者が足でシフトペダル30を操作することによって回動される。
この変速シフト装置20におけるシフトペダル30の操作力がシフトドラム21の回動に伝達される仕組みを、図2ないし図13に基づき説明する。
【0028】
シフトペダル30は、機関ケース1より左方に突出したシフトスピンドル31の左端に嵌着されて、シフトペダル30の揺動操作によってシフトスピンドル31が回動する。
シフトスピンドル31には間欠送り機構32のマスターアーム33が嵌着されて、シフトスピンドル31と一体に揺動する。
【0029】
図3および図4に図示するように、マスターアーム33は、縦長の板状をなし、基端の円孔33aにシフトスピンドル31が貫通して嵌着され、先端側に細長い所定形状に屈曲したカム孔33bが形成され、基端の円孔33aと先端側のカム孔33bとの間に凸形状に穿孔された駆動孔33cが形成され、円孔33aから駆動孔33cに向かう方向と鋭角の角度を持った方向に長方形状の規制孔33dが形成され、円孔33aから規制孔33dの方向の端部が屈曲して係止片33eが形成されている。
【0030】
カム孔33bは、基端の円孔33aを中心とする中央円弧部33baとその両側の傾斜部33bb,33bbとさらにその両側の円孔33aを中心とする端円弧部33bc,33bcからなる。
また、凸形状の駆動孔33cは特に基端の揺動中心から径方向に長尺の長孔が有効に作用する部分である。
【0031】
図2および図8(a)を参照して、マスターアーム33の円孔33aに貫通して嵌着されたシフトスピンドル31に戻しばね34のコイル部が巻装され、同方向に延びた両端部がマスターアーム33の係止片33eを外側から挟むように取り付けられる。
このマスターアーム33の内側に固定して配設されるガイドプレート35の所定位置から左方に突設された円柱ピン36がマスターアーム33の長方形状の規制孔33dを貫通して戻しばね34のコイル部より同方向に延びた両端部間に突出して両端部に挟まれるようにする(図8(a)参照)。
【0032】
したがって、シフトスピンドル31にコイル部が巻装された戻しばね34のコイル部より同方向に延びた両端部間に、ガイドプレート35から突設された円柱ピン36とマスターアーム33の係止片33eが挟まれる構成となる。
【0033】
シフトスピンドル31から円柱ピン36と係止片33eが同一方向にあるときにマスターアーム33は中立位置にあり、シフトペダル30の踏込み操作でシフトスピンドル31が回動しマスターアーム33がいずれかの方向に揺動すると、戻しばね34の一方の端部を円柱ピン36が押え、他方の端部をマスターアーム33の係止片33eがばね力に抗して押し開くので、マスターアーム33には中立位置に戻そうとする付勢力が働く。
【0034】
したがって、シフトペダル30の踏み込みを止め、シフトスピンドル31を介してマスターアーム33に作用した操作力がなくなると、戻しばね34によりマスターアーム33はシフトペダル30とともに元の中立位置に戻される。
なお、マスターアーム33の揺動は、円柱ピン36が貫通する規制孔33dの範囲内に規制される。
【0035】
機関ケース1にベアリング27,27を介して両端を軸支されたシフトドラム21の左端部に右端を嵌入してシフトドラム軸37が左方に一体に突設され、該シフトドラム軸37はシフトドラム21の回転中心軸にあってシフトスピンドル31と平行で互いに近くに位置する。
このシフトドラム軸37のマスターアーム33に近接した左端部にシフト入力部材38が相対回転自在に軸支される。
シフト入力部材38はガイドプレート35を貫通している。
【0036】
図3および図5に図示するように、シフト入力部材38は、回動中心であるシフトドラム軸37が貫通する軸孔38aを有し、ガイドプレート35より左側部分38lの軸孔38aより偏心した位置に従動突起38bが左方に突出しており(図3参照)、同従動突起38bに環状滑動部材39が外嵌されて前記マスターアーム33の駆動孔33cに摺動自在に嵌合される(図2参照)。
従動突起38bは、環状滑動部材39を介してマスターアーム33の駆動孔33cの特に径方向に延びた長孔に嵌合するので、マスターアーム33が揺動すると、揺動する駆動孔33cに従動突起38bが案内されてシフト入力部材38がシフトドラム軸37を中心に回動する。
【0037】
シフト入力部材38のガイドプレート35より右側部分38rにはポールラチェット機構40の一対のポール41,41がハの字状に互いに対称に、かつ揺動して起伏自在に装着され、同ポール41,41の先端を遠心側に突出付勢する一対のばね42,42が付設される。
【0038】
シフトドラム軸37上で、このシフト入力部材38とシフトドラム21との間にロストモーション機構50が介装される。
ロストモーション機構50は、シフトドラム軸37に回動自在に軸支される上流側回動部材51とシフトドラム軸37に一体に嵌着軸支される下流側回動部材61との間にロストモーションばね60が介装されたものである。
【0039】
図3および図6を参照して、上流側回動部材51は、上流側(左側)の大径円筒部51bと下流側(右側)の小径円筒部51sが同軸に連続して形成され、小径円筒部51sをシフトドラム軸37が貫通して回動自在に軸支される。
大径円筒部51bの内周面には、内周凹部51bhが周方向に6つ等間隔に形成されており、大径円筒部51bの内側に、シフト入力部材38の右側部分38rが挿入されると(図2参照)、ポールラチェット機構40のばね42,42により遠心側に付勢された一対のポール41,41の各先端を大径円筒部51bの内周面に押圧してポールラチェット機構40を構成する(図8(b)参照)。
【0040】
すなわち、ポールラチェット機構40の各ポール41はシフト入力部材38の一方向の回動では、起立した先端が内周凹部51bhの周方向に向いた一方の掛止面に掛止して上流側回動部材51を回動するが、他方向の回動では倒伏して先端が内周凹部51bhから抜け出て上流側回動部材51を回動しない。
【0041】
したがって、マスターアーム33の揺動によりシフト入力部材38がいずれかの方向に所定角度回動すると、上流側回動部材51の大径円筒部51bの内周面に押圧された一対のポール41,41の一方のポール41の先端が内周凹部51bhに突出して内周凹部51bhの掛止面に掛止して上流側回動部材51を回動し、次いでマスターアーム33が元の中立位置に戻りシフト入力部材38が反対方向に回動すると、内周凹部51bhに掛合していたポール41は内周凹部51bhから抜け出て、上流側回動部材51をそのまま残し、上流側回動部材51の間欠送りが実行される。
【0042】
図6に図示するように、上流側回動部材51の大径円筒部51bの外周面には、左側に上流側花形カム52が一体に外嵌され、右側にラッチフランジ部53が一体に形成されている。
上流側花形カム52は、1速から6速までの各変速段とニュートラル位置に対応する上流側ディテント凹部52vが順次形成された所定の凹凸カム面が周方向に連続して形成されている。
【0043】
上流側ラッチフランジ部53には、外周縁を切り欠いて各変速段に対応する上流側ラッチ凹部53vが中心角60度間隔で順次形成されている。
上流側ラッチ凹部53vは、周方向に対向する掛止面が底面に対して90度弱の鋭角に形成されている。
【0044】
また、上流側回動部材51において、上流側ラッチフランジ部53の右側面の所定位置から軸方向右方に係止ピン54が突出しており、さらに上流側花形カム52の1速と6速にそれぞれ対応する上流側ディテント凹部52v,52vの間の位置から径方向にストッパ片55が突出している。
【0045】
一方、ロストモーション機構50の下流側回動部材61は、図3および図7を参照して、扁平な有底円筒状をなし、底壁には軸孔61aが穿孔され、円筒部の外周面には、右側に下流側花形カム62が一体に形成され、左側に下流側ラッチフランジ部63が一体に形成されている。
【0046】
下流側花形カム62は、1速から6速までの各変速段とニュートラル位置に対応する下流側ディテント凹部62vが順次形成された所定の凹凸カム面が周方向に連続して形成されている。
下流側ラッチフランジ部63には、外周縁を切り欠いて各変速段に対応する下流側ラッチ凹部63vが中心角60度間隔で順次形成されている。
【0047】
下流側ラッチ凹部63vは、周方向に対向する掛止面が底面に対して90度強の鈍角に形成されている。
また、下流側回動部材61において、下流側花形カム62の左側面の所定位置から軸方向左方に係止ピン64が突出している。
【0048】
この下流側回動部材61は、底壁に穿孔された軸孔61aにシフトドラム軸37が左方から嵌挿され(図3参照)、図2に示すように、貫通した軸部分がさらにシフトドラム21の左端の回転中心に穿孔された軸孔に嵌入し、シフトドラム軸37の途中に形成されたフランジ37fが下流側回動部材61の底壁をシフトドラム21との間で挟圧して、下流側回動部材61とシフトドラム21をシフトドラム軸37とともに一体に結合する。
シフトドラム21を回転自在に軸支するベアリング27は、下流側回動部材61も軸支している(図2参照)。
【0049】
シフトドラム軸37に回動自在に軸支される前記上流側回動部材51の小径円筒部51sにはねじりコイルばねであるロストモーションばね60のコイル部が巻装され、小径円筒部51sの右端部が下流側回動部材61の円筒内に挿入され、上流側回動部材51の右方に突出した係止ピン54と下流側回動部材61の左方に突出した係止ピン64に、ロストモーションばね60のコイル部より径方向に延びた両端部を弾性的に絞って係止する(図2および図8(c)参照)。
【0050】
上流側回動部材51の係止ピン54と下流側回動部材61の係止ピン64とは径方向に僅かにずれた位置にあるので、シフトドラム軸37から同方向でロストモーションばね60の両端部に弾性的に挟まれて、上流側回動部材51と下流側回動部材61の互いの相対的回動がロストモーションばね60により弾性的に抑制される。
したがって、上流側回動部材51の回動は、ロストモーションばね60の弾性力を介して下流側回動部材61に伝達されるロストモーション機構50が構成される。
【0051】
図8(b)に示すように、ロストモーション機構50における上流側回動部材51の上流側花形カム52の凹凸カム面には、支軸56pに基端を揺動自在に軸支されねじりばね(図示せず)により付勢された上流側ディテントアーム57の先端に回動自在に軸支されたローラ58が押圧されて上流側ディテント機構56が構成されている。
したがって、上流側ディテント機構56により上流側回動部材51は上流側花形カム52の凹凸カム面の各変速段に対応する上流側ディテント凹部52にローラ58が納まる回動位置で位置決めされる。
【0052】
また、図8(c)に示すように、下流側回動部材61の下流側花形カム62の凹凸カム面には、支軸66pに基端を揺動自在に軸支されねじりばね(図示せず)により付勢された下流側ディテントアーム67の先端に回動自在に軸支されたローラ68が押圧されて下流側ディテント機構66が構成されている。
したがって、下流側ディテント機構66により下流側回動部材61は下流側花形カム62の凹凸カム面の各変速段とニュートラル位置に対応する下流側ディテント凹部62にローラ68が納まる回動位置で位置決めされる。
【0053】
本上流側ディテント機構56と下流側ディテント機構66は、上流側ディテントアーム57の支軸56pと下流側ディテントアーム67の支軸66pを異なる位置に設けたが、これを1本の支軸で共有するようにしてもよく、こうすることで支軸を削減して上流側と下流側のディテント機構をコンパクトに配置することができる。
【0054】
なお、図8(b)を参照して、上流側回動部材51には、上流側花形カム52の1速と6速にそれぞれ対応する上流側ディテント凹部52v,52vの間の位置から径方向にストッパ片55が突出しており、ガイドプレート35の右側面の上流側ディテントアーム57の先端のローラ58を挟む両側所定位置から突設された2本のストッパピン59,59にストッパ片55が当接することにより上流側回動部材51は所定の回動角度範囲(1速から6速に対応する回動角度範囲)に回動が規制される。
【0055】
すなわち、上流側回動部材51は、回動して上流側ディテント機構56により1速から6速までの各変速段に位置決めされるが、ストッパ片55とストッパピン59,59のストッパ機構により1速(最小変速段)より下段への回動および6速(最大変速段)より上段への回動は禁止される。
【0056】
次に、上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vに上流側ラッチアーム71が掛止する上流側ラッチ機構70および下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vに下流側ラッチアーム81が掛止する下流側ラッチ機構80について説明する。
【0057】
図2および図8を参照して、上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81は、共通の揺動中心基端部75を有し、同揺動中心基端部75は、機関ケース1とガイドプレート35に左右方向に指向して軸方向に摺動自在に架設されるラッチアーム軸76に回動自在に軸支される。
したがって、上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81は、一体にラッチアーム軸76を中心に揺動自在に軸支される。
【0058】
揺動中心基端部75は、ラッチアーム軸76の所定箇所にC形止め輪77,77で挟まれてラッチアーム軸76に対して軸方向の相対移動を規制され、相対回動は許されて軸支される。
したがって、ラッチアーム軸76とともに揺動中心基端部75を共通にした上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81は一緒に軸方向(左右方向)に移動する。
【0059】
揺動中心基端部75を共通にして一体に形成された上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81が軸方向の左側所定位置にあるときに、上流側ラッチアーム71は、揺動中心基端部75の右端部から前記上流側回動部材51の上流側ラッチフランジ部53の外周囲に向けて延出し、先端が上流側ラッチフランジ部53側に屈曲してラッチ爪71cを形成し、上流側ラッチフランジ部53に形成される上流側ラッチ凹部53vにラッチ爪71cが掛止可能としている(図8(b)参照)。
【0060】
ラッチ爪71cは屈曲部から先端にかけて幅を広げて形成されており、上流側ラッチ凹部53vの鋭角に形成された掛止面に掛止すると、両者は引っ掛かって上流側ラッチ凹部53vが解除する方向に回動しない限り、上流側ラッチアーム71の揺動では掛止解除しない。
【0061】
同様に、下流側ラッチアーム81は、揺動中心基端部75の右端部から一旦軸方向右方に屈曲してから前記下流側回動部材61の下流側ラッチフランジ部63の外周囲に向けて延出し、その途中で下流側ラッチフランジ部63側に突出してラッチ爪81cが形成され、下流側ラッチフランジ部63に形成される下流側ラッチ凹部63vにラッチ爪81cが掛止可能としている(図8(c)参照)。
【0062】
共通の揺動中心基端部75から延出する上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81は、軸方向において左右に離れて位置する(図2参照)とともに、左側面視(軸方向視)で互いに略直角方向に延出している(図8(a)参照)。
上流側ラッチアーム71が軸方向左方に位置し、下流側ラッチアーム81が軸方向右方に位置する。
【0063】
上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81は、軸方向視で上流側回動部材51と下流側回動部材61を挟むように、互いに略直角に延出しているので、上流側ラッチアーム71がそのラッチ爪71cを上流側ラッチ凹部53vに掛止するときは、下流側ラッチアーム81はラッチ爪81cの下流側ラッチ凹部63vへの掛止が解除され、逆に下流側ラッチアーム81がそのラッチ爪81cを下流側ラッチ凹部63vに掛止するときは、上流側ラッチアーム71はラッチ爪71cの上流側ラッチ凹部53vへの掛止が解除される。
【0064】
すなわち、上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80は、一方が掛止するときは、他方は掛止解除する関係にある。
ただし、掛止状態が移り変わるときに、上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80が同時に掛止状態になることが一時的に生じる。
なお、図8(a),(c)に示すように、下流側ラッチ機構80の下流側ラッチアーム81がラッチ爪81cを下流側ラッチ凹部63vから抜き掛止解除して揺動した状態の下流側ラッチアーム81の先端部を検知するリミットスイッチであるラッチ角センサ95が所定位置に配設されている。
【0065】
ラッチ角センサ95の検知は、上流側ラッチアーム71のラッチ爪71cが上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vに掛合した状態を検知することでもある。
このラッチ角センサ95の検知信号は、ECUに入力されて前記スレーブ油圧シリンダ8の駆動制御に供され、多板摩擦クラッチ3を切断する。
なお、上流側ラッチアーム71の左側面の所定位置から係止ピン72が左方に突設されている。
【0066】
そして、一体に形成された上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81が左側所定位置にあるときは、上流側ラッチアーム71のラッチ爪71cおよび下流側ラッチアーム81のラッチ爪81cが、それぞれ上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vおよび下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vに掛止可能状態にある(図2において実線で示す状態)。
【0067】
この状態から上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81が右側に移動すると、上流側ラッチアーム71および下流側ラッチアーム81が、それぞれ上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vおよび下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vから軸方向に外れ、上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vおよび下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vに掛止不能状態となる(図2において2点鎖線で示す状態)。
【0068】
上流側ラッチアーム71および下流側ラッチアーム81を軸支するラッチアーム軸76は、ガイドプレート35を貫通して左方に突出しており、突出した左側軸部にリーディングアーム85の基端部が回動自在に、また軸方向に移動自在に軸支される(図2,図8参照)。
リーディングアーム85の先端部に従動ピン86が左方に突設されており、同従動ピン86が、前記マスターアーム33の所定形状に屈曲したカム孔33bに摺動自在に嵌合する。
したがって、マスターアーム33が揺動すると、揺動先端部にあって旋回するカム孔33bが従動ピン86を案内してリーディングアーム85を揺動する。
【0069】
リーディングアーム85は、ラッチアーム軸76から上流側ラッチアーム71に沿って概ね同方向に延びており、リーディングアーム85の右側面の基端寄り位置から右方に突設された係止ピン87と上流側ラッチアーム71の左方に突設された係止ピン72とは軸方向で重なる。
そして、上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81の共通の揺動中心基端部75の外周にねじりコイルばね88がコイル部を巻装して設けられ、リーディングアーム85の係止ピン87と上流側ラッチアームの係止ピン72に、ねじりコイルばね88のコイル部より径方向に延びた両端部を弾性的に絞って係止する。
【0070】
リーディングアーム85の係止ピン87と上流側ラッチアーム71の係止ピン72とはラッチアーム軸76から僅かに異なる距離にあるので、ラッチアーム軸76から同方向でねじりコイルばね88の両端部に弾性的に挟まれて、リーディングアーム85と上流側ラッチアーム71の互いの相対的回動がねじりコイルばね88によりばね力により抑制される。
したがって、リーディングアーム85の揺動は、ねじりコイルばね88を介して上流側ラッチアーム71(および一体の下流側ラッチアーム81)に伝達される。
【0071】
リーディングアーム85を軸支するラッチアーム軸76の左端には電磁ソレノイド91が駆動軸91dを同軸に連結して設けられている。
また、ラッチアーム軸76の左端部には圧縮コイルばね92が巻装され、ラッチアーム軸76を右方に付勢している。
【0072】
電磁ソレノイド91が消磁されているときは、圧縮コイルばね92によりラッチアーム軸76が右方に付勢されて右側所定位置にあって、上流側ラッチアーム71および下流側ラッチアーム81が、それぞれ上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vおよび下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vから軸方向に外れ、掛止不能状態となる(図2において2点鎖線で示す状態)。
【0073】
電磁ソレノイド91が励磁されて駆動軸91dが引き込まれると、圧縮コイルばね92に抗してラッチアーム軸76が上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81とともに左方に移動し、両ラッチ爪71c,81cが上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vと下流側ラッチアーム81の下流側ラッチ凹部63vに掛止可能な左側所定位置にあって掛止可能状態となる(図2において実線で示す状態)。
【0074】
以上のように、電磁ソレノイド91の駆動制御により上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80の両掛止機能を不能状態または可能状態に切り換える掛止機能切換え機構90が構成されている。
なお、上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81の移動に伴って揺動中心基端部75に巻装されるねじりコイルばね88も一緒に移動する。
【0075】
この掛止機能切換え機構90を、走行時と停車時とで切換え制御する。
走行時には電磁ソレノイド91を励磁して上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80を掛止機能可能状態とすることで、変速段の切換えが円滑に行えるようにし、下流側ディテント機構66にニュートラル位置に対応する下流側ディテント凹部62vがあっても上流側ラッチ凹部53vも下流側ラッチ凹部63vもニュートラル位置はなく、上流側ラッチ凹部53vと下流側ラッチ凹部63vの一方が掛止するときは他方は掛止解除するので、走行時は操縦者がいかに変速操作してもシフトドラム21がニュートラル位置に設定されることはない。
【0076】
また、停車時には電磁ソレノイド91を消磁して上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80を掛止機能不能状態とすることで、上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80のいずれの掛止もないので、上流側ディテント機構56と下流側ディテント機構66でニュートラル位置に対応する各ディテント凹部52v,62vにローラ58,68を押圧して位置決めすることができ、シフトドラム21をニュートラル位置へ容易に設定することができる。
【0077】
本変速シフト装置20は、以上のように構成されており、以下変速段の切換え工程を図8ないし図13に従って順を追って説明する。
なお、以下の変速段の切換え工程は、上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80が掛止機能可能状態にある。
【0078】
図8は、1つの変速段が確立した状態を示しており、図8(a)は変速シフト装置20の全体の左側面図であり、図8(b)は変速シフト装置20の一部省略して上流側回動部材51を主にして示した左側面図であり、図8(c)は変速シフト装置20のさらに一部省略して下流側回動部材61を主にして示した左側面図であって、図8(a),(b),(c)はいずれも同一の状態を示している。
図9ないし図13も、経時的に変化する1状態を上記(a),(b),(c)の各図に分けて図示している。
【0079】
まず、1変速段が確立した状態を示す図8において、シフトペダル30の踏み込みはなく、マスターアーム33は中立位置にあり、下流側ラッチ機構80は下流側ラッチアーム81がラッチ爪81cを下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vに掛合して(上流側ラッチ機構70は掛止解除)、シフトドラム21を該変速段の回動角度位置に拘束して該変速段を確立しており、リーディングアーム85の先端の従動ピン86はマスターアーム33のカム孔33bの中央円弧部33baの中央に位置している。
【0080】
この変速段が確立した状態からシフトペダル30が一方向に踏み込まれ、シフトスピンドル31を介してマスターアーム33を戻しばね34に抗して4度弱揺動した時点での状態を、図9に示す。
今回の例ではマスターアーム33は図9において反時計方向に揺動する。
なお、本明細書において、揺動または回動の方向は、図8ないし図13の左側面から視たときを基準に時計方向(右回り)および反時計方向(左回り)と記述する。
リーディングアーム85の先端の従動ピン86はマスターアーム33のカム孔33bの中央円弧部33baの端部に至るが、その間中央円弧部33baが作用することなく同じ位置にあり、よってリーディングアーム85は揺動しない。
【0081】
マスターアーム33の駆動孔33cに摺動自在に嵌合した従動突起38bが案内されてシフト入力部材38が回動し、ポールラチェット機構40の一方のポール41が上流側回動部材51の内周凹部51bhの掛止面に掛止して上流側回動部材51を15度程反時計方向に回動するが、ロストモーション機構50のロストモーションばね60で連結された下流側回動部材61は、多少回動するが、下流側ラッチアーム81のラッチ爪81cが下流側ラッチ凹部63vの掛止面に掛止して回動が規制されるので、ロストモーションばね60に操作力が蓄えられる。
【0082】
次に、マスターアーム33が揺動して8度弱揺動した時点での状態を、図10に示す。
リーディングアーム85の先端の従動ピン86はマスターアーム33のカム孔33bの傾斜部33bbに移行しているので、傾斜部33bbに案内されてリーディングアーム85は時計方向に揺動し、ねじりコイルばね88を介して上流側ラッチアーム71を同方向に揺動しようとするが、マスターアーム33の揺動でシフト入力部材38を介してさらに上流側回動部材51が約30度まで回動しており、上流側ラッチアーム71は先端のラッチ爪71cを上流側ラッチフランジ部53に当接して上流側ラッチアーム71(および下流側ラッチアーム81)の揺動が阻止され(図10(b)参照)、よって下流側ラッチアーム81による下流側回動部材61の掛止状態は維持されている。
【0083】
したがって、ロストモーション機構50のロストモーションばね60に操作力がさらに蓄えられるとともに、リーディングアーム85と上流側ラッチアーム71との間のねじりコイルばね88にも力が蓄えられる。
【0084】
次に、マスターアーム33が揺動して12度程揺動した時点での状態を、図11に示す。
リーディングアーム85の先端の従動ピン86はマスターアーム33のカム孔33bの傾斜部33bbの端部に至り、ねじりコイルばね88に最も力が蓄えられた直後であり、マスターアーム33の揺動で上流側回動部材51がさらに約50度まで回動し、上流側ラッチアーム71は先端のラッチ爪71cが上流側ラッチフランジ部53から上流側ラッチ凹部53vに臨み、ねじりコイルばね88に蓄えられた力により時計方向に揺動してラッチ爪71cが上流側ラッチ凹部53vの掛止面に掛止するが、一体に揺動した下流側ラッチアーム81のラッチ爪81cは下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vから抜け出す直前にあって、まだ掛止が解除されていないので、ロストモーション機構50のロストモーションばね60に蓄えられた操作力が作用する下流側回動部材61はまだ回動しない。
【0085】
なお、下流側ラッチアーム81のラッチ爪81cが下流側ラッチ凹部63vの掛止面に接して滑る間に多少下流側回動部材61は回動する。
【0086】
次いで、シフトペダル30の踏み込みが限界に達し、マスターアーム33が規制孔33dにより規制された限界である15度程揺動した時点での状態を、図12に示す。
リーディングアーム85の先端の従動ピン86はマスターアーム33のカム孔33bの端円弧部33bcに入ってリーディングアーム85は最大揺動角で揺動せず、マスターアーム33の揺動で上流側回動部材51が間欠送り角度60度まで回動し、ねじりコイルばね88に蓄えられた力により上流側ラッチアーム71は揺動して先端のラッチ爪71cが上流側ラッチ凹部53vに完全に掛合し、一体に揺動した下流側ラッチアーム81のラッチ爪81cは下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vから掛止解除して抜け出すので、ロストモーション機構50のロストモーションばね60に蓄えられた操作力が掛止解除された下流側回動部材61に作用する。
【0087】
この下流側ラッチアーム81の揺動をラッチ角センサ95が検知し、この検知信号に基づき前記多板摩擦クラッチ3が切断されて歯車変速機構10のドグクラッチの切換えにおける抵抗を低減するので、ロストモーション機構50のロストモーションばね60に蓄えられた操作力により下流側回動部材61が円滑に回動し、下流側回動部材61が一気に60度回動した状態すなわち下流側回動部材61と一体のシフトドラム21が60度回動して変速段の切換えを終了した状態となる。
図12はその変速段の切換え終了状態を示す。
【0088】
ここで、シフトペダル30の踏み込み(変速操作入力)を停止すると、戻しばね34のばね力によりマスターアーム33がシフトスピンドル31およびシフトペダル30とともに時計方向に揺動して中立位置に戻る。
図13は、この状態を示す。
このとき、マスターアーム33の駆動孔33cに摺動自在に嵌合した従動突起38bが案内されてシフト入力部材38が時計方向に回動するが、ポールラチェット機構40はシフト入力部材38の時計方向の回動に対してポール41の上流側回動部材51の内周凹部51bhへの掛合はなく上流側回動部材51は回動せず従前の状態を維持する。
【0089】
また、マスターアーム33が中立位置に戻るので、リーディングアーム85の先端の従動ピン86はマスターアーム33のカム孔33bの中央円弧部33baの中央に戻り、リーディングアーム85は反時計方向に揺動し、同時にねじりコイルばね88を介して上流側ラッチアーム71および下流側ラッチアーム81も一体に反時計方向に揺動して、上流側ラッチアーム71のラッチ爪71cは上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vから抜け出て、下流側ラッチアーム81のラッチ爪81cは下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vに掛合して下流側回動部材61の回動を拘束し、変速が完全に終了する。
【0090】
以上の例では、マスターアーム33が反時計方向に揺動する例であったが、マスターアーム33が時計方向に揺動する場合も揺動方向および回動方向が逆になるだけで、同様に作動し、シフトアップもシフトダウンも同じように作動する。
【0091】
本変速シフト装置20は、必要程度の変速操作入力があり、図11に示す状態すなわち上流側回動部材51が約50度まで回動し、上流側ラッチアーム71のラッチ爪71cが上流側ラッチ凹部53vの掛止面に掛止する状態になれば、シフトペダル30の踏み込みを止め、変速操作入力を停止しても、上流側ラッチ凹部53vの底面に対して鋭角に形成された掛止面に上流側ラッチアーム71の屈曲部から先端にかけて幅を広げて形成されラッチ爪71cが引っ掛かって容易に掛止解除せず上流側回動部材51の回動は保持されてロストモーションばね60に蓄えられた操作力は維持され、一方の下流側ラッチアーム81は、下流側回動部材の下流側ラッチ凹部63vの底面に対して鈍角の掛止面にラッチ爪81cが掛止するので、鈍角の掛止面を滑り易く、下流側ラッチ凹部63vから抜け出て、下流側ラッチアーム81は時計方向に揺動し、この下流側ラッチアーム81の揺動をラッチ角センサ95が検知する。
【0092】
したがって、このラッチ角センサ95の検知信号に基づき多板摩擦クラッチ3が切断されるので、歯車変速機構10のドグクラッチの切換えにおける抵抗を低減し、ロストモーション機構50のロストモーションばね60に蓄えられた操作力により下流側回動部材61がシフトドラム21とともに円滑に回動し、変速段の切換えが実行される。
【0093】
本変速シフト装置20は、ロストモーション機構50の上流側に上流側ラッチ機構70とともに上流側ディテント機構56を備え、上流側ディテント機構56により変速操作入力の際にクリック感があり、変速が行われたか否かを感知することができる。
【0094】
ロストモーション機構50の下流側に下流側ラッチ機構80とともに下流側ディテント機構66を備えることで、より一層安定した回動量をシフトドラム21に与えることが可能となる。
また、上流側ディテント機構56と下流側ディテント機構66により、その間でロストモーション機構50に蓄えられる変速操作力を最適に設定してシフトドラム21の回転力としてシフトドラム回転力を適切に保つことができる。
【0095】
ロストモーション機構50の上流側回動部材51には、上流側花形カム52に1速と6速にそれぞれ対応する上流側ディテント凹部52v,52vの間の位置から径方向にストッパ片55が突出し、ガイドプレート35の右側面の上流側ディテントアーム57の先端のローラ58を挟む両側位置から2本のストッパピン59,59が突設されて、ストッパ片55がストッパピン59,59に当接することにより上流側回動部材51は1速から6速に対応する回動角度範囲に回動を規制されるストッパ機構が構成されているので、上流側回動部材51の回動が規制されたときはポールラチェット機構40を介したシフト入力部材38も同方向の回動が規制され、さらにマスターアーム33も同方向の回動が規制されることになり、よってシフトペダル30の同方向の踏み込みも規制される。
【0096】
したがって、操縦者がシフトペダル30により1速(最小変速段)以下および6速(最大変速段)以上の変速操作を行おうとしても、操作できないため、現変速段が最小変速段または最大変速段であることを容易に感知することができる。
【符号の説明】
【0097】
20…変速シフト装置、21…シフトドラム、
30…シフトペダル、31…シフトスピンドル、37…シフトドラム軸、
50…ロストモーション機構、51…上流側回動部材、51b…大径円筒部、51s…小径円筒部、52…上流側花形カム、52v…上流側ディテント凹部、53…上流側ラッチフランジ部、53v…上流側ラッチ凹部、54…係止ピン、55…ストッパ片、56…上流側ディテント機構、57…上流側ディテントアーム、58…ローラ、59…ストッパピン、60…ロストモーションばね、61…下流側回動部材、62…下流側花形カム、62v…下流側ディテント凹部、63…下流側ラッチフランジ部、63v…下流側ラッチ凹部、64…係止ピン、66…下流側ディテント機構、67…下流側ディテントアーム、68…ローラ、
70…上流側ラッチ機構、71…上流側ラッチアーム、71c…ラッチ爪、72…係止ピン、75…揺動中心基端部、76…ラッチアーム軸、
80…下流側ラッチ機構、81…下流側ラッチアーム、81c…ラッチ爪、
85…リーディングアーム、86…従動ピン、87…係止ピン、88…ねじりコイルばね、
90…掛止機能切換え機構、91…電磁ソレノイド、92…圧縮コイルばね。
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機構の変速段の切換えを行う変速シフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車変速機構の一対の歯車列が有効に動力伝達している状態から他の歯車列が有効に動力伝達する状態に切り換える変速時には、動力伝達状態のままでは抵抗が大きいので、通常クラッチを切断して動力の伝達を遮断して切換えを可能にしている。
また、シフトペダルによる変速操作入力が直接シフトドラムを回動すると、ドグ当たりが生じたときなど変速操作が円滑になされないので、シフトスピンドルとシフトドラムとの間にロストモーション機構を介装して良好な変速操作感覚を得られるようにしている。
【0003】
このロストモーション機構を備える変速シフト装置にあって、クラッチの段接を自動的に制御する構成が、同じ出願人により先に出願された特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2008−221410
【0005】
同特許文献1では、ロストモーション機構のロスト量にばらつきがあるので、ロストモーション機構の下流側にシフトドラムの回動を規制するシフト規制機構を備えている。
また、シフトドラムの各変速段の位置決めを行う位置決め機構(ディテント機構)がロストモーション機構の下流側に設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この位置決め機構(ディテント機構)は、ロストモーション機構の下流側にのみ設けられていて、ロストモーション機構の上流側には設けられていないので、操縦者はシフトペダルを踏み込んでも単にスプリングを圧縮する程度の抵抗を感じるだけで、ディテント機構が持つクリック感がなく、変速操作の感触によって変速が行われたか否かを感知することができなかった。
また、ロストモーション機構に蓄えられる変速操作力にばらつきがあり、シフトドラム回転力を最適に保つことができない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、シフトドラムの各変速段の位置決めがなされ、変速操作入力の際にクリック感があって変速が行われたか否かを感知することができるとともに、シフトドラム回転力を最適に保つことができる変速シフト装置を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、変速操作入力によるシフトスピンドルの回動をロストモーション機構を介してシフトドラムの回動に伝達して変速を行う変速シフト装置において、前記ロストモーション機構の上流側回動部材を掛止して保持する上流側ラッチ機構と、前記ロストモーション機構の下流側回動部材を掛止して同下流側回動部材と一体の前記シフトドラムの回動を規制する下流側ラッチ機構とを備えて、前記上流側ラッチ機構が前記上流側回動部材を掛止して保持する動作に連動して前記下流側ラッチ機構が前記下流側回動部材を掛止解除することで前記シフトドラムを回動して変速を行い、前記上流側回動部材と一体に設けられた上流側花形カムの各変速段に対応するディテント凹部が形成された所定の凹凸カム面にローラが押圧される上流側ディテント機構と、前記下流側回動部材と一体に設けられた下流側花形カムの各変速段に対応するディテント凹部が形成された所定の凹凸カム面にローラが押圧される下流側ディテント機構とを備えた変速シフト装置とした。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の変速シフト装置において、前記下流側回動部材と一体に設けられた下流側花形カムの各変速段に対応するディテント凹部が形成された所定の凹凸カム面にローラが押圧される下流側ディテント機構を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の変速シフト装置において、前記上流側回動部材に最小変速段より下段への回動および最大変速段より上段への回動を禁止するストッパ機構を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の変速シフト装置によれば、ロストモーション機構の上流側に上流側ラッチ機構とともに上流側ディテント機構を備え、上流側ディテント機構により変速操作入力の際にクリック感があり、変速が行われたか否かを感知することができる。
【0012】
請求項2記載の変速シフト装置によれば、ロストモーション機構の下流側に下流側ラッチ機構とともに下流側ディテント機構を備えるので、下流側ディテント機構によってより一層安定した回動量をシフトドラムに与えることが可能となる。
また、上流側ディテント機構と下流側ディテント機構により、その間でロストモーション機構に蓄えられる変速操作力を最適に設定してシフトドラムの回転力としてシフトドラム回転力を適切に保つことができる。
【0013】
請求項3記載の変速シフト装置によれば、上流側回動部材に最小変速段より下段への回動および最大変速段より上段への回動を禁止するストッパ機構を設けたので、操縦者が最小変速段以下および最大変速段以上の変速操作を行おうとすると、操作できないため、現変速段が最小変速段または最大変速段であることを感知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係る自動二輪車用の変速装置の断面図である。
【図2】本変速シフト装置の断面図である。
【図3】同変速シフト装置の一部の分解断面図である。
【図4】マスターアームの左側面図である。
【図5】シフト入力部材の左側面図である。
【図6】ロストモーション機構の上流側回動部材の左側面図である。
【図7】ロストモーション機構の下流側回動部材の左側面図である。
【図8】1つの変速段が確立した状態の変速シフト装置の各要部をそれぞれ示す側面図である。
【図9】変速操作入力により変化する一過程の同変速シフト装置の各要部をそれぞれ示す側面図である。
【図10】次の過程の同変速シフト装置の各要部をそれぞれ示す側面図である。
【図11】次の過程の同変速シフト装置の各要部をそれぞれ示す側面図である。
【図12】次の変速段の切換え終了過程の同変速シフト装置の各要部をそれぞれ示す側面図である。
【図13】次の変速完全終了状態の同変速シフト装置の各要部をそれぞれ示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図13に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態に係る自動二輪車用の変速装置の断面図である。
自動二輪車にクランク軸を車体幅方向(左右方向)に指向させて搭載された内燃機関の機関ケース1に変速室2を形成して、該変速室2内に変速装置の歯車変速機構10が構成されている。
【0016】
変速室2を形成する機関ケース1の左右側壁に、変速入力軸であるメイン軸11と出力軸であるカウンタ軸12が、左右方向に指向して、それぞれベアリング13,14を介して回転自在に軸支されている。
互いに平行なメイン軸11とカウンタ軸12との間に歯車変速機構10が構成されている。
【0017】
メイン軸11には、右側から左へ1速駆動ギアm1,5速駆動ギアm5,4速駆動ギアm4,3速駆動ギアm3,6速駆動ギアm6,2速駆動ギアm2が順に配列されており、1速駆動ギアm1はメイン軸11に一体に形成され、5速駆動ギアm5はメイン軸11に回転自在に軸支されたアイドルギアであり、4速駆動ギアm4と3速駆動ギアm3は一体に形成されてメイン軸11にスプライン嵌合したシフタギアであり、6速駆動ギアm6はメイン軸11に回転自在に軸支されたアイドルギアであり、2速駆動ギアm2はメイン軸11に嵌合されている。
【0018】
他方、カウンタ軸12には、右側から左へ1速被動ギアn1,5速被動ギアn5,4速被動ギアn4,3速被動ギアn3,6速被動ギアn6,2速被動ギアn2が順に配列されており、1速被動ギアn1はカウンタ軸12に回転自在に軸支されたアイドルギアであり、5速被動ギアn5はカウンタ軸12にスプライン嵌合したシフタギアであり、4速被動ギアn4と3速被動ギアn3はそれぞれカウンタ軸12に回転自在に軸支されたアイドルギアであり、6速被動ギアn6はカウンタ軸12にスプライン嵌合したシフタギアであり、2速被動ギアn2はカウンタ軸12に回転自在に軸支されたアイドルギアである。
【0019】
本歯車変速機構10は、常時噛合い式の変速ギア機構であり、対応する駆動ギアと被動ギアが常時噛合っている。
そしてメイン軸11上でシフタギアである一体の3速駆動ギアm3と5速被動ギアn5およびカウンタ軸12上でシフタギアである5速被動ギアn5と6速被動ギアn6が、軸方向に移動され隣接するギアどうしのドグクラッチが段接することによりいずれか一対の歯車列(駆動ギアと被動ギアの噛合い)が有効に動力伝達することになって1つの変速段が確立し、確立した変速段の変速比でメイン軸11からカウンタ軸12に動力が伝達される。
なお、本歯車変速機構10には、すべての歯車列が無効となって動力伝達が行われないニュートラル位置が存在する。
【0020】
メイン軸11には、内燃機関のクランク軸(図示せず)の動力が伝達されるが、その間に動力伝達を断接する多板摩擦クラッチ3が介装される。
クランク軸からプライマリギア列4およびトルクダンパ5を介して多板摩擦クラッチ3のクラッチアウタ3oに動力が伝達される。
【0021】
多板摩擦クラッチ3は、前記メイン軸11の右端部にクラッチインナ3iが嵌着され、メイン軸11に回転自在に軸支された前記クラッチアウタ3oがクラッチインナ3iの外周囲を覆っており、その間でクラッチアウタ3oにスプライン嵌合する駆動摩擦板3ooとクラッチインナ3iにスプライン嵌合する被動摩擦板3iiが軸方向に交互に重なり、左側のクラッチインナ3iに形成された受圧板3ipと右側のクラッチインナ3iに軸方向に摺動自在に支持された加圧板3pとの間に挟まれている。
加圧板3pはクラッチスプリング3sにより左方向に付勢されている。
【0022】
メイン軸11は、円筒状をなし、内部をプッシュロッド6が貫通しており、プッシュロッド6のメイン軸11より右方に突出した右端がレリーズ部材7を介して加圧板3pに連結されている。
一方、プッシュロッド6の左端部は、機関ケース1を貫通してスレーブ油圧シリンダ8のピストン8pに嵌着されている。
【0023】
スレーブ油圧シリンダ8はECUにより制御されるマスター油圧シリンダにより駆動される。
したがって、スレーブ油圧シリンダ8が作動してピストン8pがプッシュロッド6を右方に押すと、レリーズ部材7を介して加圧板3pをクラッチスプリング3sのばね力に抗して右方に移動させてクラッチスプリング3sのばね力により接続していた多板摩擦クラッチ3を切断することができる。
【0024】
歯車変速機構10においてシフタギアの移動により変速段の切換えを行うときは、ドグクラッチの段接がなされるが、メイン軸11からカウンタ軸12に動力伝達がなされていると、ドグクラッチの切断に大きな抵抗を伴い円滑な変速ができないので、多板摩擦クラッチ3を切断して動力の伝達を遮断する必要がある。
【0025】
出力軸であるカウンタ軸12は、機関ケース1を左方に貫通した左端にドライブスプロケット15が嵌着されて、歯車変速機構10で確立された変速段の出力がドライブスプロケット15からチェーン16を介して後輪に伝達されて走行する。
【0026】
歯車変速機構10のシフタギアを移動して変速を行わせる変速シフト装置20について、以下説明する。
本変速シフト装置20は、シフトドラム21を回動することにより、シフトフォーク軸22,23に摺動自在に軸支されたシフトフォーク24,25,26がシフトドラム21の外周面に形成されたシフト溝21vに案内されて軸方向に移動し、シフトフォーク26がメイン軸11にスプライン嵌合したシフタギアである3速駆動ギアm3と4速駆動ギアm4を一体に移動し、シフトフォーク24がカウンタ軸12にスプライン嵌合したシフタギアである5速被動ギアn5を移動し、シフトフォーク25がシフタギアである6速被動ギアn6を移動して変速段の切換えを行う。
【0027】
変速シフト装置20のシフトドラム21は、操縦者が足でシフトペダル30を操作することによって回動される。
この変速シフト装置20におけるシフトペダル30の操作力がシフトドラム21の回動に伝達される仕組みを、図2ないし図13に基づき説明する。
【0028】
シフトペダル30は、機関ケース1より左方に突出したシフトスピンドル31の左端に嵌着されて、シフトペダル30の揺動操作によってシフトスピンドル31が回動する。
シフトスピンドル31には間欠送り機構32のマスターアーム33が嵌着されて、シフトスピンドル31と一体に揺動する。
【0029】
図3および図4に図示するように、マスターアーム33は、縦長の板状をなし、基端の円孔33aにシフトスピンドル31が貫通して嵌着され、先端側に細長い所定形状に屈曲したカム孔33bが形成され、基端の円孔33aと先端側のカム孔33bとの間に凸形状に穿孔された駆動孔33cが形成され、円孔33aから駆動孔33cに向かう方向と鋭角の角度を持った方向に長方形状の規制孔33dが形成され、円孔33aから規制孔33dの方向の端部が屈曲して係止片33eが形成されている。
【0030】
カム孔33bは、基端の円孔33aを中心とする中央円弧部33baとその両側の傾斜部33bb,33bbとさらにその両側の円孔33aを中心とする端円弧部33bc,33bcからなる。
また、凸形状の駆動孔33cは特に基端の揺動中心から径方向に長尺の長孔が有効に作用する部分である。
【0031】
図2および図8(a)を参照して、マスターアーム33の円孔33aに貫通して嵌着されたシフトスピンドル31に戻しばね34のコイル部が巻装され、同方向に延びた両端部がマスターアーム33の係止片33eを外側から挟むように取り付けられる。
このマスターアーム33の内側に固定して配設されるガイドプレート35の所定位置から左方に突設された円柱ピン36がマスターアーム33の長方形状の規制孔33dを貫通して戻しばね34のコイル部より同方向に延びた両端部間に突出して両端部に挟まれるようにする(図8(a)参照)。
【0032】
したがって、シフトスピンドル31にコイル部が巻装された戻しばね34のコイル部より同方向に延びた両端部間に、ガイドプレート35から突設された円柱ピン36とマスターアーム33の係止片33eが挟まれる構成となる。
【0033】
シフトスピンドル31から円柱ピン36と係止片33eが同一方向にあるときにマスターアーム33は中立位置にあり、シフトペダル30の踏込み操作でシフトスピンドル31が回動しマスターアーム33がいずれかの方向に揺動すると、戻しばね34の一方の端部を円柱ピン36が押え、他方の端部をマスターアーム33の係止片33eがばね力に抗して押し開くので、マスターアーム33には中立位置に戻そうとする付勢力が働く。
【0034】
したがって、シフトペダル30の踏み込みを止め、シフトスピンドル31を介してマスターアーム33に作用した操作力がなくなると、戻しばね34によりマスターアーム33はシフトペダル30とともに元の中立位置に戻される。
なお、マスターアーム33の揺動は、円柱ピン36が貫通する規制孔33dの範囲内に規制される。
【0035】
機関ケース1にベアリング27,27を介して両端を軸支されたシフトドラム21の左端部に右端を嵌入してシフトドラム軸37が左方に一体に突設され、該シフトドラム軸37はシフトドラム21の回転中心軸にあってシフトスピンドル31と平行で互いに近くに位置する。
このシフトドラム軸37のマスターアーム33に近接した左端部にシフト入力部材38が相対回転自在に軸支される。
シフト入力部材38はガイドプレート35を貫通している。
【0036】
図3および図5に図示するように、シフト入力部材38は、回動中心であるシフトドラム軸37が貫通する軸孔38aを有し、ガイドプレート35より左側部分38lの軸孔38aより偏心した位置に従動突起38bが左方に突出しており(図3参照)、同従動突起38bに環状滑動部材39が外嵌されて前記マスターアーム33の駆動孔33cに摺動自在に嵌合される(図2参照)。
従動突起38bは、環状滑動部材39を介してマスターアーム33の駆動孔33cの特に径方向に延びた長孔に嵌合するので、マスターアーム33が揺動すると、揺動する駆動孔33cに従動突起38bが案内されてシフト入力部材38がシフトドラム軸37を中心に回動する。
【0037】
シフト入力部材38のガイドプレート35より右側部分38rにはポールラチェット機構40の一対のポール41,41がハの字状に互いに対称に、かつ揺動して起伏自在に装着され、同ポール41,41の先端を遠心側に突出付勢する一対のばね42,42が付設される。
【0038】
シフトドラム軸37上で、このシフト入力部材38とシフトドラム21との間にロストモーション機構50が介装される。
ロストモーション機構50は、シフトドラム軸37に回動自在に軸支される上流側回動部材51とシフトドラム軸37に一体に嵌着軸支される下流側回動部材61との間にロストモーションばね60が介装されたものである。
【0039】
図3および図6を参照して、上流側回動部材51は、上流側(左側)の大径円筒部51bと下流側(右側)の小径円筒部51sが同軸に連続して形成され、小径円筒部51sをシフトドラム軸37が貫通して回動自在に軸支される。
大径円筒部51bの内周面には、内周凹部51bhが周方向に6つ等間隔に形成されており、大径円筒部51bの内側に、シフト入力部材38の右側部分38rが挿入されると(図2参照)、ポールラチェット機構40のばね42,42により遠心側に付勢された一対のポール41,41の各先端を大径円筒部51bの内周面に押圧してポールラチェット機構40を構成する(図8(b)参照)。
【0040】
すなわち、ポールラチェット機構40の各ポール41はシフト入力部材38の一方向の回動では、起立した先端が内周凹部51bhの周方向に向いた一方の掛止面に掛止して上流側回動部材51を回動するが、他方向の回動では倒伏して先端が内周凹部51bhから抜け出て上流側回動部材51を回動しない。
【0041】
したがって、マスターアーム33の揺動によりシフト入力部材38がいずれかの方向に所定角度回動すると、上流側回動部材51の大径円筒部51bの内周面に押圧された一対のポール41,41の一方のポール41の先端が内周凹部51bhに突出して内周凹部51bhの掛止面に掛止して上流側回動部材51を回動し、次いでマスターアーム33が元の中立位置に戻りシフト入力部材38が反対方向に回動すると、内周凹部51bhに掛合していたポール41は内周凹部51bhから抜け出て、上流側回動部材51をそのまま残し、上流側回動部材51の間欠送りが実行される。
【0042】
図6に図示するように、上流側回動部材51の大径円筒部51bの外周面には、左側に上流側花形カム52が一体に外嵌され、右側にラッチフランジ部53が一体に形成されている。
上流側花形カム52は、1速から6速までの各変速段とニュートラル位置に対応する上流側ディテント凹部52vが順次形成された所定の凹凸カム面が周方向に連続して形成されている。
【0043】
上流側ラッチフランジ部53には、外周縁を切り欠いて各変速段に対応する上流側ラッチ凹部53vが中心角60度間隔で順次形成されている。
上流側ラッチ凹部53vは、周方向に対向する掛止面が底面に対して90度弱の鋭角に形成されている。
【0044】
また、上流側回動部材51において、上流側ラッチフランジ部53の右側面の所定位置から軸方向右方に係止ピン54が突出しており、さらに上流側花形カム52の1速と6速にそれぞれ対応する上流側ディテント凹部52v,52vの間の位置から径方向にストッパ片55が突出している。
【0045】
一方、ロストモーション機構50の下流側回動部材61は、図3および図7を参照して、扁平な有底円筒状をなし、底壁には軸孔61aが穿孔され、円筒部の外周面には、右側に下流側花形カム62が一体に形成され、左側に下流側ラッチフランジ部63が一体に形成されている。
【0046】
下流側花形カム62は、1速から6速までの各変速段とニュートラル位置に対応する下流側ディテント凹部62vが順次形成された所定の凹凸カム面が周方向に連続して形成されている。
下流側ラッチフランジ部63には、外周縁を切り欠いて各変速段に対応する下流側ラッチ凹部63vが中心角60度間隔で順次形成されている。
【0047】
下流側ラッチ凹部63vは、周方向に対向する掛止面が底面に対して90度強の鈍角に形成されている。
また、下流側回動部材61において、下流側花形カム62の左側面の所定位置から軸方向左方に係止ピン64が突出している。
【0048】
この下流側回動部材61は、底壁に穿孔された軸孔61aにシフトドラム軸37が左方から嵌挿され(図3参照)、図2に示すように、貫通した軸部分がさらにシフトドラム21の左端の回転中心に穿孔された軸孔に嵌入し、シフトドラム軸37の途中に形成されたフランジ37fが下流側回動部材61の底壁をシフトドラム21との間で挟圧して、下流側回動部材61とシフトドラム21をシフトドラム軸37とともに一体に結合する。
シフトドラム21を回転自在に軸支するベアリング27は、下流側回動部材61も軸支している(図2参照)。
【0049】
シフトドラム軸37に回動自在に軸支される前記上流側回動部材51の小径円筒部51sにはねじりコイルばねであるロストモーションばね60のコイル部が巻装され、小径円筒部51sの右端部が下流側回動部材61の円筒内に挿入され、上流側回動部材51の右方に突出した係止ピン54と下流側回動部材61の左方に突出した係止ピン64に、ロストモーションばね60のコイル部より径方向に延びた両端部を弾性的に絞って係止する(図2および図8(c)参照)。
【0050】
上流側回動部材51の係止ピン54と下流側回動部材61の係止ピン64とは径方向に僅かにずれた位置にあるので、シフトドラム軸37から同方向でロストモーションばね60の両端部に弾性的に挟まれて、上流側回動部材51と下流側回動部材61の互いの相対的回動がロストモーションばね60により弾性的に抑制される。
したがって、上流側回動部材51の回動は、ロストモーションばね60の弾性力を介して下流側回動部材61に伝達されるロストモーション機構50が構成される。
【0051】
図8(b)に示すように、ロストモーション機構50における上流側回動部材51の上流側花形カム52の凹凸カム面には、支軸56pに基端を揺動自在に軸支されねじりばね(図示せず)により付勢された上流側ディテントアーム57の先端に回動自在に軸支されたローラ58が押圧されて上流側ディテント機構56が構成されている。
したがって、上流側ディテント機構56により上流側回動部材51は上流側花形カム52の凹凸カム面の各変速段に対応する上流側ディテント凹部52にローラ58が納まる回動位置で位置決めされる。
【0052】
また、図8(c)に示すように、下流側回動部材61の下流側花形カム62の凹凸カム面には、支軸66pに基端を揺動自在に軸支されねじりばね(図示せず)により付勢された下流側ディテントアーム67の先端に回動自在に軸支されたローラ68が押圧されて下流側ディテント機構66が構成されている。
したがって、下流側ディテント機構66により下流側回動部材61は下流側花形カム62の凹凸カム面の各変速段とニュートラル位置に対応する下流側ディテント凹部62にローラ68が納まる回動位置で位置決めされる。
【0053】
本上流側ディテント機構56と下流側ディテント機構66は、上流側ディテントアーム57の支軸56pと下流側ディテントアーム67の支軸66pを異なる位置に設けたが、これを1本の支軸で共有するようにしてもよく、こうすることで支軸を削減して上流側と下流側のディテント機構をコンパクトに配置することができる。
【0054】
なお、図8(b)を参照して、上流側回動部材51には、上流側花形カム52の1速と6速にそれぞれ対応する上流側ディテント凹部52v,52vの間の位置から径方向にストッパ片55が突出しており、ガイドプレート35の右側面の上流側ディテントアーム57の先端のローラ58を挟む両側所定位置から突設された2本のストッパピン59,59にストッパ片55が当接することにより上流側回動部材51は所定の回動角度範囲(1速から6速に対応する回動角度範囲)に回動が規制される。
【0055】
すなわち、上流側回動部材51は、回動して上流側ディテント機構56により1速から6速までの各変速段に位置決めされるが、ストッパ片55とストッパピン59,59のストッパ機構により1速(最小変速段)より下段への回動および6速(最大変速段)より上段への回動は禁止される。
【0056】
次に、上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vに上流側ラッチアーム71が掛止する上流側ラッチ機構70および下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vに下流側ラッチアーム81が掛止する下流側ラッチ機構80について説明する。
【0057】
図2および図8を参照して、上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81は、共通の揺動中心基端部75を有し、同揺動中心基端部75は、機関ケース1とガイドプレート35に左右方向に指向して軸方向に摺動自在に架設されるラッチアーム軸76に回動自在に軸支される。
したがって、上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81は、一体にラッチアーム軸76を中心に揺動自在に軸支される。
【0058】
揺動中心基端部75は、ラッチアーム軸76の所定箇所にC形止め輪77,77で挟まれてラッチアーム軸76に対して軸方向の相対移動を規制され、相対回動は許されて軸支される。
したがって、ラッチアーム軸76とともに揺動中心基端部75を共通にした上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81は一緒に軸方向(左右方向)に移動する。
【0059】
揺動中心基端部75を共通にして一体に形成された上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81が軸方向の左側所定位置にあるときに、上流側ラッチアーム71は、揺動中心基端部75の右端部から前記上流側回動部材51の上流側ラッチフランジ部53の外周囲に向けて延出し、先端が上流側ラッチフランジ部53側に屈曲してラッチ爪71cを形成し、上流側ラッチフランジ部53に形成される上流側ラッチ凹部53vにラッチ爪71cが掛止可能としている(図8(b)参照)。
【0060】
ラッチ爪71cは屈曲部から先端にかけて幅を広げて形成されており、上流側ラッチ凹部53vの鋭角に形成された掛止面に掛止すると、両者は引っ掛かって上流側ラッチ凹部53vが解除する方向に回動しない限り、上流側ラッチアーム71の揺動では掛止解除しない。
【0061】
同様に、下流側ラッチアーム81は、揺動中心基端部75の右端部から一旦軸方向右方に屈曲してから前記下流側回動部材61の下流側ラッチフランジ部63の外周囲に向けて延出し、その途中で下流側ラッチフランジ部63側に突出してラッチ爪81cが形成され、下流側ラッチフランジ部63に形成される下流側ラッチ凹部63vにラッチ爪81cが掛止可能としている(図8(c)参照)。
【0062】
共通の揺動中心基端部75から延出する上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81は、軸方向において左右に離れて位置する(図2参照)とともに、左側面視(軸方向視)で互いに略直角方向に延出している(図8(a)参照)。
上流側ラッチアーム71が軸方向左方に位置し、下流側ラッチアーム81が軸方向右方に位置する。
【0063】
上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81は、軸方向視で上流側回動部材51と下流側回動部材61を挟むように、互いに略直角に延出しているので、上流側ラッチアーム71がそのラッチ爪71cを上流側ラッチ凹部53vに掛止するときは、下流側ラッチアーム81はラッチ爪81cの下流側ラッチ凹部63vへの掛止が解除され、逆に下流側ラッチアーム81がそのラッチ爪81cを下流側ラッチ凹部63vに掛止するときは、上流側ラッチアーム71はラッチ爪71cの上流側ラッチ凹部53vへの掛止が解除される。
【0064】
すなわち、上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80は、一方が掛止するときは、他方は掛止解除する関係にある。
ただし、掛止状態が移り変わるときに、上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80が同時に掛止状態になることが一時的に生じる。
なお、図8(a),(c)に示すように、下流側ラッチ機構80の下流側ラッチアーム81がラッチ爪81cを下流側ラッチ凹部63vから抜き掛止解除して揺動した状態の下流側ラッチアーム81の先端部を検知するリミットスイッチであるラッチ角センサ95が所定位置に配設されている。
【0065】
ラッチ角センサ95の検知は、上流側ラッチアーム71のラッチ爪71cが上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vに掛合した状態を検知することでもある。
このラッチ角センサ95の検知信号は、ECUに入力されて前記スレーブ油圧シリンダ8の駆動制御に供され、多板摩擦クラッチ3を切断する。
なお、上流側ラッチアーム71の左側面の所定位置から係止ピン72が左方に突設されている。
【0066】
そして、一体に形成された上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81が左側所定位置にあるときは、上流側ラッチアーム71のラッチ爪71cおよび下流側ラッチアーム81のラッチ爪81cが、それぞれ上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vおよび下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vに掛止可能状態にある(図2において実線で示す状態)。
【0067】
この状態から上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81が右側に移動すると、上流側ラッチアーム71および下流側ラッチアーム81が、それぞれ上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vおよび下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vから軸方向に外れ、上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vおよび下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vに掛止不能状態となる(図2において2点鎖線で示す状態)。
【0068】
上流側ラッチアーム71および下流側ラッチアーム81を軸支するラッチアーム軸76は、ガイドプレート35を貫通して左方に突出しており、突出した左側軸部にリーディングアーム85の基端部が回動自在に、また軸方向に移動自在に軸支される(図2,図8参照)。
リーディングアーム85の先端部に従動ピン86が左方に突設されており、同従動ピン86が、前記マスターアーム33の所定形状に屈曲したカム孔33bに摺動自在に嵌合する。
したがって、マスターアーム33が揺動すると、揺動先端部にあって旋回するカム孔33bが従動ピン86を案内してリーディングアーム85を揺動する。
【0069】
リーディングアーム85は、ラッチアーム軸76から上流側ラッチアーム71に沿って概ね同方向に延びており、リーディングアーム85の右側面の基端寄り位置から右方に突設された係止ピン87と上流側ラッチアーム71の左方に突設された係止ピン72とは軸方向で重なる。
そして、上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81の共通の揺動中心基端部75の外周にねじりコイルばね88がコイル部を巻装して設けられ、リーディングアーム85の係止ピン87と上流側ラッチアームの係止ピン72に、ねじりコイルばね88のコイル部より径方向に延びた両端部を弾性的に絞って係止する。
【0070】
リーディングアーム85の係止ピン87と上流側ラッチアーム71の係止ピン72とはラッチアーム軸76から僅かに異なる距離にあるので、ラッチアーム軸76から同方向でねじりコイルばね88の両端部に弾性的に挟まれて、リーディングアーム85と上流側ラッチアーム71の互いの相対的回動がねじりコイルばね88によりばね力により抑制される。
したがって、リーディングアーム85の揺動は、ねじりコイルばね88を介して上流側ラッチアーム71(および一体の下流側ラッチアーム81)に伝達される。
【0071】
リーディングアーム85を軸支するラッチアーム軸76の左端には電磁ソレノイド91が駆動軸91dを同軸に連結して設けられている。
また、ラッチアーム軸76の左端部には圧縮コイルばね92が巻装され、ラッチアーム軸76を右方に付勢している。
【0072】
電磁ソレノイド91が消磁されているときは、圧縮コイルばね92によりラッチアーム軸76が右方に付勢されて右側所定位置にあって、上流側ラッチアーム71および下流側ラッチアーム81が、それぞれ上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vおよび下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vから軸方向に外れ、掛止不能状態となる(図2において2点鎖線で示す状態)。
【0073】
電磁ソレノイド91が励磁されて駆動軸91dが引き込まれると、圧縮コイルばね92に抗してラッチアーム軸76が上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81とともに左方に移動し、両ラッチ爪71c,81cが上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vと下流側ラッチアーム81の下流側ラッチ凹部63vに掛止可能な左側所定位置にあって掛止可能状態となる(図2において実線で示す状態)。
【0074】
以上のように、電磁ソレノイド91の駆動制御により上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80の両掛止機能を不能状態または可能状態に切り換える掛止機能切換え機構90が構成されている。
なお、上流側ラッチアーム71と下流側ラッチアーム81の移動に伴って揺動中心基端部75に巻装されるねじりコイルばね88も一緒に移動する。
【0075】
この掛止機能切換え機構90を、走行時と停車時とで切換え制御する。
走行時には電磁ソレノイド91を励磁して上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80を掛止機能可能状態とすることで、変速段の切換えが円滑に行えるようにし、下流側ディテント機構66にニュートラル位置に対応する下流側ディテント凹部62vがあっても上流側ラッチ凹部53vも下流側ラッチ凹部63vもニュートラル位置はなく、上流側ラッチ凹部53vと下流側ラッチ凹部63vの一方が掛止するときは他方は掛止解除するので、走行時は操縦者がいかに変速操作してもシフトドラム21がニュートラル位置に設定されることはない。
【0076】
また、停車時には電磁ソレノイド91を消磁して上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80を掛止機能不能状態とすることで、上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80のいずれの掛止もないので、上流側ディテント機構56と下流側ディテント機構66でニュートラル位置に対応する各ディテント凹部52v,62vにローラ58,68を押圧して位置決めすることができ、シフトドラム21をニュートラル位置へ容易に設定することができる。
【0077】
本変速シフト装置20は、以上のように構成されており、以下変速段の切換え工程を図8ないし図13に従って順を追って説明する。
なお、以下の変速段の切換え工程は、上流側ラッチ機構70と下流側ラッチ機構80が掛止機能可能状態にある。
【0078】
図8は、1つの変速段が確立した状態を示しており、図8(a)は変速シフト装置20の全体の左側面図であり、図8(b)は変速シフト装置20の一部省略して上流側回動部材51を主にして示した左側面図であり、図8(c)は変速シフト装置20のさらに一部省略して下流側回動部材61を主にして示した左側面図であって、図8(a),(b),(c)はいずれも同一の状態を示している。
図9ないし図13も、経時的に変化する1状態を上記(a),(b),(c)の各図に分けて図示している。
【0079】
まず、1変速段が確立した状態を示す図8において、シフトペダル30の踏み込みはなく、マスターアーム33は中立位置にあり、下流側ラッチ機構80は下流側ラッチアーム81がラッチ爪81cを下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vに掛合して(上流側ラッチ機構70は掛止解除)、シフトドラム21を該変速段の回動角度位置に拘束して該変速段を確立しており、リーディングアーム85の先端の従動ピン86はマスターアーム33のカム孔33bの中央円弧部33baの中央に位置している。
【0080】
この変速段が確立した状態からシフトペダル30が一方向に踏み込まれ、シフトスピンドル31を介してマスターアーム33を戻しばね34に抗して4度弱揺動した時点での状態を、図9に示す。
今回の例ではマスターアーム33は図9において反時計方向に揺動する。
なお、本明細書において、揺動または回動の方向は、図8ないし図13の左側面から視たときを基準に時計方向(右回り)および反時計方向(左回り)と記述する。
リーディングアーム85の先端の従動ピン86はマスターアーム33のカム孔33bの中央円弧部33baの端部に至るが、その間中央円弧部33baが作用することなく同じ位置にあり、よってリーディングアーム85は揺動しない。
【0081】
マスターアーム33の駆動孔33cに摺動自在に嵌合した従動突起38bが案内されてシフト入力部材38が回動し、ポールラチェット機構40の一方のポール41が上流側回動部材51の内周凹部51bhの掛止面に掛止して上流側回動部材51を15度程反時計方向に回動するが、ロストモーション機構50のロストモーションばね60で連結された下流側回動部材61は、多少回動するが、下流側ラッチアーム81のラッチ爪81cが下流側ラッチ凹部63vの掛止面に掛止して回動が規制されるので、ロストモーションばね60に操作力が蓄えられる。
【0082】
次に、マスターアーム33が揺動して8度弱揺動した時点での状態を、図10に示す。
リーディングアーム85の先端の従動ピン86はマスターアーム33のカム孔33bの傾斜部33bbに移行しているので、傾斜部33bbに案内されてリーディングアーム85は時計方向に揺動し、ねじりコイルばね88を介して上流側ラッチアーム71を同方向に揺動しようとするが、マスターアーム33の揺動でシフト入力部材38を介してさらに上流側回動部材51が約30度まで回動しており、上流側ラッチアーム71は先端のラッチ爪71cを上流側ラッチフランジ部53に当接して上流側ラッチアーム71(および下流側ラッチアーム81)の揺動が阻止され(図10(b)参照)、よって下流側ラッチアーム81による下流側回動部材61の掛止状態は維持されている。
【0083】
したがって、ロストモーション機構50のロストモーションばね60に操作力がさらに蓄えられるとともに、リーディングアーム85と上流側ラッチアーム71との間のねじりコイルばね88にも力が蓄えられる。
【0084】
次に、マスターアーム33が揺動して12度程揺動した時点での状態を、図11に示す。
リーディングアーム85の先端の従動ピン86はマスターアーム33のカム孔33bの傾斜部33bbの端部に至り、ねじりコイルばね88に最も力が蓄えられた直後であり、マスターアーム33の揺動で上流側回動部材51がさらに約50度まで回動し、上流側ラッチアーム71は先端のラッチ爪71cが上流側ラッチフランジ部53から上流側ラッチ凹部53vに臨み、ねじりコイルばね88に蓄えられた力により時計方向に揺動してラッチ爪71cが上流側ラッチ凹部53vの掛止面に掛止するが、一体に揺動した下流側ラッチアーム81のラッチ爪81cは下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vから抜け出す直前にあって、まだ掛止が解除されていないので、ロストモーション機構50のロストモーションばね60に蓄えられた操作力が作用する下流側回動部材61はまだ回動しない。
【0085】
なお、下流側ラッチアーム81のラッチ爪81cが下流側ラッチ凹部63vの掛止面に接して滑る間に多少下流側回動部材61は回動する。
【0086】
次いで、シフトペダル30の踏み込みが限界に達し、マスターアーム33が規制孔33dにより規制された限界である15度程揺動した時点での状態を、図12に示す。
リーディングアーム85の先端の従動ピン86はマスターアーム33のカム孔33bの端円弧部33bcに入ってリーディングアーム85は最大揺動角で揺動せず、マスターアーム33の揺動で上流側回動部材51が間欠送り角度60度まで回動し、ねじりコイルばね88に蓄えられた力により上流側ラッチアーム71は揺動して先端のラッチ爪71cが上流側ラッチ凹部53vに完全に掛合し、一体に揺動した下流側ラッチアーム81のラッチ爪81cは下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vから掛止解除して抜け出すので、ロストモーション機構50のロストモーションばね60に蓄えられた操作力が掛止解除された下流側回動部材61に作用する。
【0087】
この下流側ラッチアーム81の揺動をラッチ角センサ95が検知し、この検知信号に基づき前記多板摩擦クラッチ3が切断されて歯車変速機構10のドグクラッチの切換えにおける抵抗を低減するので、ロストモーション機構50のロストモーションばね60に蓄えられた操作力により下流側回動部材61が円滑に回動し、下流側回動部材61が一気に60度回動した状態すなわち下流側回動部材61と一体のシフトドラム21が60度回動して変速段の切換えを終了した状態となる。
図12はその変速段の切換え終了状態を示す。
【0088】
ここで、シフトペダル30の踏み込み(変速操作入力)を停止すると、戻しばね34のばね力によりマスターアーム33がシフトスピンドル31およびシフトペダル30とともに時計方向に揺動して中立位置に戻る。
図13は、この状態を示す。
このとき、マスターアーム33の駆動孔33cに摺動自在に嵌合した従動突起38bが案内されてシフト入力部材38が時計方向に回動するが、ポールラチェット機構40はシフト入力部材38の時計方向の回動に対してポール41の上流側回動部材51の内周凹部51bhへの掛合はなく上流側回動部材51は回動せず従前の状態を維持する。
【0089】
また、マスターアーム33が中立位置に戻るので、リーディングアーム85の先端の従動ピン86はマスターアーム33のカム孔33bの中央円弧部33baの中央に戻り、リーディングアーム85は反時計方向に揺動し、同時にねじりコイルばね88を介して上流側ラッチアーム71および下流側ラッチアーム81も一体に反時計方向に揺動して、上流側ラッチアーム71のラッチ爪71cは上流側回動部材51の上流側ラッチ凹部53vから抜け出て、下流側ラッチアーム81のラッチ爪81cは下流側回動部材61の下流側ラッチ凹部63vに掛合して下流側回動部材61の回動を拘束し、変速が完全に終了する。
【0090】
以上の例では、マスターアーム33が反時計方向に揺動する例であったが、マスターアーム33が時計方向に揺動する場合も揺動方向および回動方向が逆になるだけで、同様に作動し、シフトアップもシフトダウンも同じように作動する。
【0091】
本変速シフト装置20は、必要程度の変速操作入力があり、図11に示す状態すなわち上流側回動部材51が約50度まで回動し、上流側ラッチアーム71のラッチ爪71cが上流側ラッチ凹部53vの掛止面に掛止する状態になれば、シフトペダル30の踏み込みを止め、変速操作入力を停止しても、上流側ラッチ凹部53vの底面に対して鋭角に形成された掛止面に上流側ラッチアーム71の屈曲部から先端にかけて幅を広げて形成されラッチ爪71cが引っ掛かって容易に掛止解除せず上流側回動部材51の回動は保持されてロストモーションばね60に蓄えられた操作力は維持され、一方の下流側ラッチアーム81は、下流側回動部材の下流側ラッチ凹部63vの底面に対して鈍角の掛止面にラッチ爪81cが掛止するので、鈍角の掛止面を滑り易く、下流側ラッチ凹部63vから抜け出て、下流側ラッチアーム81は時計方向に揺動し、この下流側ラッチアーム81の揺動をラッチ角センサ95が検知する。
【0092】
したがって、このラッチ角センサ95の検知信号に基づき多板摩擦クラッチ3が切断されるので、歯車変速機構10のドグクラッチの切換えにおける抵抗を低減し、ロストモーション機構50のロストモーションばね60に蓄えられた操作力により下流側回動部材61がシフトドラム21とともに円滑に回動し、変速段の切換えが実行される。
【0093】
本変速シフト装置20は、ロストモーション機構50の上流側に上流側ラッチ機構70とともに上流側ディテント機構56を備え、上流側ディテント機構56により変速操作入力の際にクリック感があり、変速が行われたか否かを感知することができる。
【0094】
ロストモーション機構50の下流側に下流側ラッチ機構80とともに下流側ディテント機構66を備えることで、より一層安定した回動量をシフトドラム21に与えることが可能となる。
また、上流側ディテント機構56と下流側ディテント機構66により、その間でロストモーション機構50に蓄えられる変速操作力を最適に設定してシフトドラム21の回転力としてシフトドラム回転力を適切に保つことができる。
【0095】
ロストモーション機構50の上流側回動部材51には、上流側花形カム52に1速と6速にそれぞれ対応する上流側ディテント凹部52v,52vの間の位置から径方向にストッパ片55が突出し、ガイドプレート35の右側面の上流側ディテントアーム57の先端のローラ58を挟む両側位置から2本のストッパピン59,59が突設されて、ストッパ片55がストッパピン59,59に当接することにより上流側回動部材51は1速から6速に対応する回動角度範囲に回動を規制されるストッパ機構が構成されているので、上流側回動部材51の回動が規制されたときはポールラチェット機構40を介したシフト入力部材38も同方向の回動が規制され、さらにマスターアーム33も同方向の回動が規制されることになり、よってシフトペダル30の同方向の踏み込みも規制される。
【0096】
したがって、操縦者がシフトペダル30により1速(最小変速段)以下および6速(最大変速段)以上の変速操作を行おうとしても、操作できないため、現変速段が最小変速段または最大変速段であることを容易に感知することができる。
【符号の説明】
【0097】
20…変速シフト装置、21…シフトドラム、
30…シフトペダル、31…シフトスピンドル、37…シフトドラム軸、
50…ロストモーション機構、51…上流側回動部材、51b…大径円筒部、51s…小径円筒部、52…上流側花形カム、52v…上流側ディテント凹部、53…上流側ラッチフランジ部、53v…上流側ラッチ凹部、54…係止ピン、55…ストッパ片、56…上流側ディテント機構、57…上流側ディテントアーム、58…ローラ、59…ストッパピン、60…ロストモーションばね、61…下流側回動部材、62…下流側花形カム、62v…下流側ディテント凹部、63…下流側ラッチフランジ部、63v…下流側ラッチ凹部、64…係止ピン、66…下流側ディテント機構、67…下流側ディテントアーム、68…ローラ、
70…上流側ラッチ機構、71…上流側ラッチアーム、71c…ラッチ爪、72…係止ピン、75…揺動中心基端部、76…ラッチアーム軸、
80…下流側ラッチ機構、81…下流側ラッチアーム、81c…ラッチ爪、
85…リーディングアーム、86…従動ピン、87…係止ピン、88…ねじりコイルばね、
90…掛止機能切換え機構、91…電磁ソレノイド、92…圧縮コイルばね。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速操作入力によるシフトスピンドルの回動をロストモーション機構を介してシフトドラムの回動に伝達して変速を行う変速シフト装置において、
前記ロストモーション機構の上流側回動部材を掛止して保持する上流側ラッチ機構と、
前記ロストモーション機構の下流側回動部材を掛止して同下流側回動部材と一体の前記シフトドラムの回動を規制する下流側ラッチ機構とを備えて、
前記上流側ラッチ機構が前記上流側回動部材を掛止して保持する動作に連動して前記下流側ラッチ機構が前記下流側回動部材を掛止解除することで前記シフトドラムを回動して変速を行い、
前記上流側回動部材と一体に設けられた上流側花形カムの各変速段に対応するディテント凹部が形成された所定の凹凸カム面にローラが押圧される上流側ディテント機構とを備えたことを特徴とする変速シフト装置。
【請求項2】
前記下流側回動部材と一体に設けられた下流側花形カムの各変速段に対応するディテント凹部が形成された所定の凹凸カム面にローラが押圧される下流側ディテント機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の変速シフト装置。
【請求項3】
前記上流側回動部材に最小変速段より下段への回動および最大変速段より上段への回動を禁止するストッパ機構を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変速シフト装置。
【請求項1】
変速操作入力によるシフトスピンドルの回動をロストモーション機構を介してシフトドラムの回動に伝達して変速を行う変速シフト装置において、
前記ロストモーション機構の上流側回動部材を掛止して保持する上流側ラッチ機構と、
前記ロストモーション機構の下流側回動部材を掛止して同下流側回動部材と一体の前記シフトドラムの回動を規制する下流側ラッチ機構とを備えて、
前記上流側ラッチ機構が前記上流側回動部材を掛止して保持する動作に連動して前記下流側ラッチ機構が前記下流側回動部材を掛止解除することで前記シフトドラムを回動して変速を行い、
前記上流側回動部材と一体に設けられた上流側花形カムの各変速段に対応するディテント凹部が形成された所定の凹凸カム面にローラが押圧される上流側ディテント機構とを備えたことを特徴とする変速シフト装置。
【請求項2】
前記下流側回動部材と一体に設けられた下流側花形カムの各変速段に対応するディテント凹部が形成された所定の凹凸カム面にローラが押圧される下流側ディテント機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の変速シフト装置。
【請求項3】
前記上流側回動部材に最小変速段より下段への回動および最大変速段より上段への回動を禁止するストッパ機構を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変速シフト装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−236680(P2010−236680A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87982(P2009−87982)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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