説明

変速機の制御装置

【課題】アクセル開度に基づいて変速機の予め設定された変速やロックアップクラッチのオンオフ動作のような特定動作の制御を行う変速機の制御装置において、特定動作が行われる頻度を低減することにより運転者の違和感を抑制することが可能な変速機の制御装置を提供することである。
【解決手段】アクセル開度に基づいて変速機の予め設定された特定動作の制御を行う変速機の制御装置であって、車両前方の道路の情報を検出又は推定する道路情報検出推定手段と、前記車両前方の道路の情報に基づいて、前記車両が前記車両前方の道路を通過する際に必要となる駆動力の変化量を推定する手段と、前記駆動力の変化量が予め設定された所定値以下である場合(S60−Y)には、前記駆動力の変化量が前記所定値を超えた場合(ステップS60−N)に比べて前記特定動作を実行し難くする制御手段(ステップS70)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機の制御装置に関し、特に、アクセル開度が予め設定された閾値を超えたときに変速機の予め設定された変速やロックアップクラッチのオンオフ動作を含む特定動作の制御を行う変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9−166205号公報(特許文献1)には、自動変速装置において、車両の走行時における前方の道路の勾配度を検出する勾配度検出手段と、勾配度検出手段により検出された前方道路の勾配度に基づいて車両がこの前方道路を現走行車速で走行するために変速段のシフトダウンが必要であるか否かを判定する登坂時シフトダウン判定手段とをそなえ、登坂時シフトダウン判定手段でシフトダウンが必要と判定すると前方道路の登坂に先立ち変速段のシフトダウンを行なうように構成する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−166205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクセル開度に基づいて変速機の予め設定された変速やロックアップクラッチのオンオフ動作のような特定動作の制御を行う変速機の制御装置において、特定動作が行われる頻度が高いと運転者は違和感を感じる場合がある。特定動作が行われる頻度を低減することにより運転者の違和感を抑制することが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、アクセル開度に基づいて変速機の予め設定された変速やロックアップクラッチのオンオフ動作のような特定動作の制御を行う変速機の制御装置において、特定動作が行われる頻度を低減することにより運転者の違和感を抑制することが可能な変速機の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の変速機の制御装置は、アクセル開度に基づいて変速機の予め設定された特定動作の制御を行う変速機の制御装置であって、車両前方の道路の情報を検出又は推定する道路情報検出推定手段と、前記車両前方の道路の情報に基づいて、前記車両が前記車両前方の道路を通過する際に必要となる駆動力の大きさ又は前記駆動力の変化量を推定する手段と、前記駆動力の大きさ又は前記駆動力の変化量が予め設定された所定値以下である場合には、前記駆動力の大きさ又は前記駆動力の変化量が前記所定値を超えた場合に比べて前記特定動作を実行し難くする制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
本発明の変速機の制御装置は、アクセル開度が予め設定された閾値を超えたときに変速機の予め設定された特定動作の制御を行う変速機の制御装置であって、車両前方の道路の情報を検出又は推定する道路情報検出推定手段と、前記車両前方の道路の情報に基づいて、前記車両が前記車両前方の道路を走行する際に前記アクセル開度が前記閾値を超えないようにするために必要な前記特定動作の回避制御を行う制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
本発明の変速機の制御装置において、前記制御手段による前記特定動作の回避制御の制御量が予め設定された所定値以下である場合に前記特定動作の回避制御が行われることを特徴としている。
【0009】
本発明の変速機の制御装置において、前記特定動作の回避制御は、前記閾値を変更することであることを特徴としている。
【0010】
本発明の変速機の制御装置において、前記特定動作の回避制御は、前記アクセル開度に対するスロットル開度を含むエンジン負荷の特性を変更することであることを特徴としている。
【0011】
本発明の変速機の制御装置において、更に、モータジェネレータを備え、前記特定動作の回避制御は、前記モータジェネレータによる力行を行うことであることを特徴としている。
【0012】
本発明の変速機の制御装置において、前記特定動作は、変速であることを特徴としている。
【0013】
本発明の変速機の制御装置において、前記特定動作は、ロックアップクラッチのオンからオフへの動作であることを特徴としている。
【0014】
本発明の変速機の制御装置において、前記車両前方の道路の情報は、道路勾配に関する情報であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の変速機の制御装置によれば、アクセル開度に基づいて変速機の予め設定された変速やロックアップクラッチのオンオフ動作のような特定動作の制御を行う変速機の制御装置において、特定動作が行われる頻度を低減することにより運転者の違和感を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の変速機の制御装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1から図4を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、車両が例えば高速巡航等を行っている場合に、先方道路の勾配情報と車速に基づいて、パワーオンダウンシフト(駆動状態でのダウンシフト)の回避の可能性を判断し、自動変速機のダウン点の予め設定された範囲内の変更(アクセル開度の高開度側への変更等)によって、ダウンシフトが回避できるのであれば、その変更を行うことでダウンシフトを回避するものである。これにより、変速の頻度が低減し、運転者に違和感を与えることが低減される。
【0018】
図2において、符号10は自動変速機、40はエンジンである。自動変速機10は、電磁弁121a、121b、121cへの通電/非通電により油圧が制御されて5段変速が可能である。図2では、3つの電磁弁121a、121b、121cが図示されるが、電磁弁の数は3に限定されない。電磁弁121a、121b、121cは、制御回路130からの信号によって駆動される。
【0019】
エンジン40の吸気配管41には、電子式スロットルバルブ43が設けられている。アクセルペダル115の操作によって変化するアクセル開度がアクセル開度センサ114によって検出されると、制御回路130は、そのアクセル開度に基づいて、スロットル弁制御指令をスロットル開度制御装置(図示せず)に出力する。そのスロットル開度制御装置は、そのスロットル弁制御指令に基づいて、電子スロットルバルブ43の開度を制御する。
【0020】
エンジン回転数センサ116は、エンジン40の回転数を検出する。車速センサ122は、車速に比例する自動変速機10の出力軸120cの回転数を検出する。シフトポジションセンサ123は、シフトポジションを検出する。パターンセレクトスイッチ117は、変速パターンを指示する際に使用される。加速度センサ90は、車両の減速度(減速加速度)を検出する。
【0021】
道路勾配計測・推定部118は、CPU131の一部として設けられることができる。道路勾配計測・推定部118は、加速度センサ90により検出された加速度に基づいて、道路勾配を計測又は推定するものであることができる。また、道路勾配計測・推定部118は、平坦路での加速度を予めROM133に記憶させておき、実際に加速度センサ90により検出した加速度と比較して道路勾配を求めるものであることができる。
【0022】
ナビゲーションシステム装置113は、自車両を所定の目的地に誘導することを基本的な機能としており、演算処理装置と、車両の走行に必要な情報(地図、直線路、カーブ、登降坂、高速道路など)が記憶された情報記憶媒体と、自立航法により自車両の現在位置や道路状況を検出し、地磁気センサやジャイロコンパス、ステアリングセンサを含む第1情報検出装置と、電波航法により自車両の現在位置、道路状況などを検出するためのもので、GPSアンテナやGPS受信機などを含む第2情報検出装置等を備えている。
【0023】
制御回路130は、アクセル開度センサ114、エンジン回転数センサ116、車速センサ122、シフトポジションセンサ123、加速度センサ90の各検出結果を示す信号を入力し、また、パターンセレクトスイッチ117のスイッチング状態を示す信号を入力し、また、ナビゲーションシステム装置113からの信号を入力する。
【0024】
制御回路130は、周知のマイクロコンピュータによって構成され、CPU131、RAM132、ROM133、入力ポート134、出力ポート135、及びコモンバス136を備えている。入力ポート134には、上述の各センサ114、116、122、123、90からの信号、上述のスイッチ117からの信号、及びナビゲーションシステム装置113のそれぞれからの信号が入力される。出力ポート135には、電磁弁駆動部138a、138b、138cが接続されている。
【0025】
ROM133には、予め図1のフローチャートに示す動作(制御ステップ)が記述されたプログラムが格納されているとともに、自動変速機10のギヤ段を変速するための変速マップ及び変速制御の動作(図示せず)が格納されている。制御回路130は、入力した各種制御条件に基づいて、自動変速機10の変速を行う。
【0026】
図1から図4を参照して、本実施形態の動作を説明する。
【0027】
図3において、符号101はアクセル開度に対する駆動力の特性を示している。図3において駆動力を示す縦軸は、電子スロットルバルブ43の開き量としてみることができる。符号LRは現在の(平坦路での)ロードロードを示す。符号(1)で示す縦の破線は、本例の車速における自動変速機10のダウン点を示している(変速点はアクセル開度と車速で決まる)。今、A点で車両が巡航しているとする。車両の進路の先方が登り坂となっていて、今の車速で巡航するためのロードロードがLR’にまで上昇するとする。この場合、運転点はB点となり、ダウン点(1)をよぎるため、ダウンシフトを生じる。これにより、運転者は変速の頻度が高いと違和感を感じる場合がある。
【0028】
そこで、本実施形態では、運転点Bでも、ダウンシフトが生じないようにするために、ダウン点を上記(1)の点よりもアクセル開度が高い側に移行する(符号(2))。これにより、本例の登坂路を走行する場合であってもダウンシフトを回避することが可能となる。但し、ダウン点の移行量が過大であると、運転者に違和感を与える場合がある。そのため、本実施形態では、ダウン点の移行量を判断し、移行量が予め設定された所定値以内であればダウン点の変更を行い、所定値を超えるのであればダウン点の変更は行わないこととしている。以下、具体的な動作について説明する。
【0029】
[ステップS10]
図1のステップS10では、制御回路130により、ナビゲーションシステム装置113から入力した信号に基づいて、車両が高速道路(又は自動車専用道路)を走行中であるか否かが判定される。その判定の結果、車両が高速道路を走行中であればステップS20に進み、そうでない場合にはステップS100に進む。
【0030】
なお、本例では、車速が概ね一定であって車両の加減速が比較的少ない場合の変速の頻度を抑えて運転者への違和感を抑制することを目的としているので、上記ステップS10において、車両が走行している道路種別を高速道路又は自動車専用道路とした。しかし、本実施形態の制御の前提条件として、車両が走行している道路種別が特に限定されるものではない。
【0031】
[ステップS20]
ステップS20では、制御回路130により、車速センサ122から入力した車速を示す信号に基づいて、車速が概ね一定(巡航中)であるか否かが判定される。その判定の結果、車両が巡航中であると判定された場合には、ステップS30に進み、そうでない場合にはステップS90に進む。上記のように、本例では、その目的との関係で、本制御の前提条件を車両が巡航中であることとした。しかし、本実施形態の制御の前提条件として、特に車両が巡航中であることに限定されるものではない。
【0032】
[ステップS30]
ステップS30では、制御回路130において、フラグFがチェックされる。フラグFは、ダウン点を変更制御している場合(後述するステップS70)には「1」であり(ステップS80)、そうでない場合(ステップS110)には「0」である(ステップS120)。フラグFが「1」である場合にはステップS90に進み、「0」である場合にはステップS40に進む。本制御フローの実行開始当初は「0」であるため、ステップS40に進む。
【0033】
[ステップS40]
ステップS40では、制御回路130より、ナビゲーションシステム装置113から入力した信号及び道路勾配計測・推定部118による計測・推定結果に基づいて、車両の現在位置から先方の予め設定された所定距離L1内に予め設定された所定値以上の登坂側への勾配の変化があるか否かが判定される。その判定の結果、肯定的に判定された場合にはステップS50に進み、そうでない場合には本制御フローはリセットされる。
【0034】
図4の符号Pに示すように、本例では、上記所定距離L1内に所定値以上の登坂側への勾配の変化があるため、ステップS50に進む。なお、所定距離L1は、予め一律の値に決められていてもよいし、車速に基づいて設定される値であってもよい。
【0035】
[ステップS50]
ステップS50では、制御回路130により、ナビゲーションシステム装置113から入力した信号に基づいて、上記ステップS40で検出された登坂の終了までの距離L2を求める(図4参照)。ステップS50の次に、ステップS60に進む。
【0036】
[ステップS60]
ステップS60では、制御回路130により、上記ステップS40及びステップS50で求めた登坂の情報と車速に基づいて、ダウンシフトを回避するために必要とされるダウン点のアクセル開度の高開度側への変更量が予め設定された所定値以下であるか否かが判定される。この判定に際して、車速は、現在の車速又は巡航中の平均速度とすることができる。ステップS60の判定の結果、肯定的に判定された場合には、ステップS70に進み、そうでない場合には、本制御フローはリターンされる。
【0037】
図3の例では、ダウンシフトを回避するために必要とされるダウン点のアクセル開度の高開度側への変更量は、ダウン点(1)から(2)への変更量であり、その変更量は、ステップS60において、予め設定された所定値以下と判定されるため、ステップS70に進む。
【0038】
[ステップS70]
ステップS70では、制御回路130により、ダウン点が変更される。図3の例では、ダウン点が(1)から(2)に変更される。これにより、ダウン点(2)は、上記ステップS40及びS50で検出された登坂におけるロードロードLR’を巡航するときの運転点Bをよぎらなくなるため、ダウンシフトが回避される。ステップS70の次にステップS80が行われる。
【0039】
[ステップS80]
ステップS80では、制御回路130により、フラグFが「1」にセットされる。その後、本制御フローはリターンされる。
【0040】
[ステップS90]
ステップS90では、制御回路130により、ナビゲーションシステム装置113から入力した情報に基づいて、上記ステップS50で求めた距離L2を既に走行したか否かが判定される。即ち、上記ステップS30でフラグFが「1」であると判定された場合(既にステップS70にてダウン点の変更が行われた場合)には、上記距離L2を走行したか否かが判定され(ステップS90)、その結果、肯定的に判定された場合にはステップS100に進み、そうでない場合には、本制御フローはリターンされる。
【0041】
ダウン点の変更が行われた場合(ステップS70)には、その登坂が終了する(車両が上記距離L2の走行を終了する)までダウン点は変更したままとする(ステップS90)。これにより、上記登坂の走行中のダウンシフトが抑制される。
【0042】
[ステップS100]
ステップS100では、制御回路130により、変速点(ダウン点)を復帰してもダウンシフトを生じないか否かを判定する。図3の例では、ロードロードがLR’から下がることにより、ダウン点を(2)から(1)に復帰させてもダウンシフトを生じないか否かが判定される。その判定の結果、ダウンシフトを生じないと判定された場合にはステップS110に進み、そうでない場合には本制御フローはリターンされる。
【0043】
[ステップS110]
ステップS110では、制御回路130により、変速点を復帰する。図3の例では、ダウン点を(2)から(1)に復帰させる。ステップS110の次には、ステップS120に進む。
【0044】
[ステップS120]
ステップS120では、制御回路130により、フラグFが0にセットされる。ステップS120の次には、本制御フローはリセットされる。
【0045】
なお、ステップS10又はステップS20において、否定的に判定された場合には、本制御の前提条件から外れるため、ステップS100において、運転者によって不意のダウンシフトが生じないか否かを確認した上で変速点を復帰させる。変速点を変更していない場合にはそのままである。
【0046】
上記のように、本実施形態によれば、車両の道路の勾配が変化した場合であっても、変速点を変更することでダウンシフトを回避して、巡航を継続することができる。これにより、変速の頻度が低減することにより、運転者に与える違和感を低減することができる。また、この場合、変速点の変更量が予め設定された所定値以下であることを考慮することにより、変速点を変更することにより運転者に与えられる違和感を効果的に抑制することができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、図5及び図6を参照して、第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態において、上記第1実施形態と共通する部分についての説明は省略する。
【0048】
第2実施形態は、車両が例えば高速巡航等を行っている場合(ステップS10−Y、ステップS20−Y)に、先方道路の勾配情報と車速に基づいて、パワーオンダウンシフトの回避の可能性を判断し、アクセル−スロットル開度特性の予め設定された範囲内の変更(スロットルの開き量を増加させる変更)によって、ダウンシフトが回避できるのであれば(ステップS62−Y)、その変更を行う(ステップS72)ことでダウンシフトを回避するものである。これにより、変速の頻度が低減し、運転者に違和感を与えることが低減される。
【0049】
図5において、上記図1との変更点は、ステップS62、ステップS72、ステップS102、ステップS112である。図5では、上記図1における変速点の変更に代えて、アクセル−電子スロットル開度の特性の変更又は復帰を行う。
【0050】
図6において、上記図3との変更点は、ダウン点を上記(1)のまま変更する代わりに、アクセル−電子スロットル開度の特性を符号101から102に変更することである。今、A点で車両が巡航しており、車両の進路の先方が登り坂となっていて、今の車速で巡航するためのロードロードがLR’にまで上昇するとする。この場合、運転点はB点となり、ダウン点(1)をよぎるため、ダウンシフトを生じ、これにより、運転者は変速の頻度が高いと違和感を感じる場合がある。そこで、第2実施形態では、ダウン点(1)よりもアクセル開度が小さい側でロードロードLR’を巡航できるようにアクセル−電子スロットル開度特性を符号102に変更する(これにより運転点はCとなる)。
【0051】
但し、アクセル−電子スロットル開度特性の変更量が過大であると、運転者に違和感を与える場合がある。そのため、本実施形態では、アクセル−電子スロットル開度特性の変更量を判断し、その変更量が予め設定された所定値以内であればアクセル−電子スロットル開度特性の変更を行い、所定値を超えるのであればアクセル−電子スロットル開度特性の変更は行わないこととしている。
【0052】
また、車両走行中であってアクセル開度が全閉(=電子スロットルバルブ43も全閉)のとき以外にアクセル−電子スロットル開度特性を復帰すると(ステップS112)、運転者に違和感を与える可能性がある。そこで、第2実施形態では、アクセル−電子スロットル開度特性を符号102に示すように変更する場合に、変更前の符号101のまま変更しない領域(電子スロットル特性非変更領域103)を設けるとともに、その電子スロットル特性非変更領域103において(ステップS102−Y)、アクセル−電子スロットル開度特性を符号102から符号101のものに復帰させることにより(ステップS112)、トルクの変動を抑え、運転者に違和感が生じることを抑制している。
【0053】
(第3実施形態)
次に、図7から図9を参照して、第3実施形態について説明する。
なお、第3実施形態において、上記実施形態と共通する部分についての説明は省略する。
【0054】
第3実施形態は、アクセル開度の拡大に伴い行われる自動変速機10のロックアップクラッチのオンからオフへの切換動作の頻度を低減することにより、運転者の違和感を抑制することを目的としている。
【0055】
図8に示すように、例えば4速から3速へのダウンシフトが行われる前に(4速の状態で)、低車速領域では、予め設定されたロックアップオフ点201よりもアクセル開度(エンジン負荷)が低い領域では、ロックアップクラッチがオンの状態であるが、アクセル開度が大きくなり、ロックアップオフ点201を超えると、ロックアップクラッチがオフに切り替えられる。
【0056】
ここで、車両の前方に、例えば登坂がある場合を考える。その登坂のロードロードで巡航するためにアクセル開度が増加したときに、ロックアップオフ点201を超えると、ロックアップクラッチがオンからオフに切り替えられるが、運転者はその動作をビジーであると感じることがある。また、ロックアップクラッチのオンからオフへの切換動作によりショックが生じる場合がある。
【0057】
そこで、登坂のロードロードを巡航するためのアクセル開度がロックアップオフ点201を超える場合には、図9に示すように、図8のロックアップオフ点201よりも、アクセル開度が高い側にロックアップオフ点202を変更させることにより(図7のステップS74)、ロックアップクラッチのオンからオフへの切換動作を回避する。即ち、車両は、ロックアップクラッチがオンのまま登坂を通過する。これにより、運転者はロックアップクラッチのオンからオフへの切換動作の頻度が高いことによる違和感を感じることが抑制され、また、同動作に伴うショックの発生が回避される。
【0058】
この場合、ロックアップオフ点201からロックアップオフ点202への変更量が過大であると、運転者に違和感を与える場合があるため、その変更量は予め設定された範囲内に限定される(ステップS64−Y)。また、登坂を通過した後に(ステップS90−Y)、ロックアップオフ点202をロックアップオフ点201に復帰させる(ステップS114)に際しては、その復帰によりロックアップクラッチのオフが生じないアクセル開度であるときに行われる(ステップS104−Y)。なお、エンジン負荷が大きい状態で、ロックアップクラッチがオンであると、音がこもるという現象が発生する場合があるが、その状態となるのは、登坂を通過するまでのごく短時間であるため、大きな問題とはならない。
【0059】
上記のように、第3実施形態によれば、車両の道路の勾配が変化した場合であっても、ロックアップオフ点を変更することでロックアップクラッチのオンからオフへの動作を回避して、巡航を継続することができる。これにより、ロックアップクラッチのオンからオフへの動作が低減することにより、運転者に与える違和感を低減することができる。また、この場合、ロックアップオフ点の変更量が予め設定された所定値以下であることを考慮することにより、ロックアップオフ点を変更することにより運転者に与えられる違和感を効果的に抑制することができる。
【0060】
(第4実施形態)
次に、図10を参照して、第4実施形態について説明する。
第4実施形態において、上記実施形態と共通する部分についての説明は省略する。
【0061】
第4実施形態は、車両が例えば高速巡航等を行っている場合(ステップS10−Y、ステップS20−Y)に、先方道路の勾配情報と車速に基づいて、ロックアップクラッチのオンからオフへの動作の回避の可能性を判断し、アクセル−スロットル開度特性の予め設定された範囲内の変更(スロットルの開き量を増加させる変更)によって、ロックアップクラッチのオンからオフへの動作が回避できるのであれば(ステップS66−Y)、その変更を行う(ステップS76)ことでロックアップクラッチのオンからオフへの動作を回避するものである。これにより、ロックアップクラッチのオンからオフへの動作の頻度が低減し、運転者に違和感を与えることが低減される。
【0062】
但し、アクセル−電子スロットル開度特性の変更量が過大であると、運転者に違和感を与える場合がある。そのため、本実施形態では、アクセル−電子スロットル開度特性の変更量を判断し、その変更量が予め設定された所定値以内であればアクセル−電子スロットル開度特性の変更を行い、所定値を超えるのであればアクセル−電子スロットル開度特性の変更は行わないこととしている。
【0063】
また、車両走行中であってアクセル開度が全閉(=電子スロットルバルブ43も全閉)のとき以外にアクセル−電子スロットル開度特性を復帰すると(ステップS116)、運転者に違和感を与える可能性がある。そこで、第4実施形態では、アクセル−電子スロットル開度特性を変更する場合に、変更前のまま変更しない領域(電子スロットル特性非変更領域)を設ける(ステップS76)とともに、その電子スロットル特性非変更領域において(ステップS106−Y)、アクセル−電子スロットル開度特性を復帰させることにより(ステップS116)、トルクの変動を抑え、運転者に違和感が生じることを抑制している。
【0064】
次に、上記各実施形態の変形例について説明する。
【0065】
(1)上記各実施形態では、制御の前提条件は「車両が巡航中であること(ステップS20−Y)」としたが、これに加えて、「クルーズコントロール(車間距離制御)が実行中であること」も前提条件に含めることができる。車速が概ね一定で走行する点で共通しているからである。
【0066】
(2)上記第1実施形態では、ダウン点を変更し、上記第2実施形態ではアクセル開度−電子スロットル開度特性を変更した。本変形例では、ダウン点の変更とアクセル開度−電子スロットル開度特性の変更を併用することができる。即ち、ダウン点(1)からの変更量を図3の例に比べて小さくする(ダウン点(2)までは変更させない)とともに、アクセル開度−電子スロットル開度特性101からの変更量を図5の例に比べて小さくする(アクセル開度−電子スロットル開度特性102までは変更させない)。ダウン点又はアクセル開度−電子スロットル開度特性を単独で変更させる場合に比べて、ダウン点及びアクセル開度−電子スロットル開度特性のそれぞれを少しずつ変更することにより、ロードロードが上昇した場合のダウンシフトを回避する。この場合、ダウン点とアクセル開度−電子スロットル開度特性の特性変化が分散されるため、変更に伴う運転者の違和感を一層感じ難くすることができる。同様に、上記第3実施形態と第4実施形態を併用して、ロックアップオフ点の変更とアクセル開度−電子スロットル開度特性の変更を併用することができる。
【0067】
(3)自動変速機を搭載したハイブリッド車両において、モータジェネレータ(MG)で駆動力をアシストできる構成を前提にすれば、上記第2実施形態又は第4実施形態において、アクセル開度−電子スロットル開度特性を変更する(電子スロットルバルブ43の開き量を多くする)代わりに、MGを力行運転することにより、ダウンシフトを抑制することができる。
【0068】
(4)上記実施形態では、車両前方の道路が登坂路である場合について説明したが、これに限定されるものではない。車両の走行負荷が変化するような道路であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の変速機の制御装置の第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図2】本発明の変速機の制御装置の第1実施形態の概略構成図である。
【図3】本発明の変速機の制御装置の第1実施形態の動作を説明するための図である。
【図4】本発明の変速機の制御装置の第1実施形態における車両の前方に登坂路がある場合を示す図である。
【図5】本発明の変速機の制御装置の第2実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の変速機の制御装置の第2実施形態の動作を説明するための図である。
【図7】本発明の変速機の制御装置の第3実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の変速機の制御装置の第3実施形態の動作を説明するための図である。
【図9】本発明の変速機の制御装置の第3実施形態の動作を説明するための他の図である。
【図10】本発明の変速機の制御装置の第4実施形態の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
10 自動変速機
40 エンジン
43 電子スロットルバルブ
90 加速度センサ
113 ナビゲーションシステム装置
114 アクセル開度センサ
115 アクセル
116 エンジン回転数センサ
118 道路勾配計測・推定部
122 車速センサ
123 シフトポジションセンサ
130 制御回路
131 CPU
133 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセル開度に基づいて変速機の予め設定された特定動作の制御を行う変速機の制御装置であって、
車両前方の道路の情報を検出又は推定する道路情報検出推定手段と、
前記車両前方の道路の情報に基づいて、前記車両が前記車両前方の道路を通過する際に必要となる駆動力の大きさ又は前記駆動力の変化量を推定する手段と、
前記駆動力の大きさ又は前記駆動力の変化量が予め設定された所定値以下である場合には、前記駆動力の大きさ又は前記駆動力の変化量が前記所定値を超えた場合に比べて前記特定動作を実行し難くする制御手段と
を備えたことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項2】
アクセル開度が予め設定された閾値を超えたときに変速機の予め設定された特定動作の制御を行う変速機の制御装置であって、
車両前方の道路の情報を検出又は推定する道路情報検出推定手段と、
前記車両前方の道路の情報に基づいて、前記車両が前記車両前方の道路を走行する際に前記アクセル開度が前記閾値を超えないようにするために必要な前記特定動作の回避制御を行う制御手段と
を備えたことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の変速機の制御装置において、
前記制御手段による前記特定動作の回避制御の制御量が予め設定された所定値以下である場合に前記特定動作の回避制御が行われる
ことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の変速機の制御装置において、
前記特定動作の回避制御は、前記閾値を変更することである
ことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の変速機の制御装置において、
前記特定動作の回避制御は、前記アクセル開度に対するスロットル開度を含むエンジン負荷の特性を変更することである
ことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の変速機の制御装置において、
更に、モータジェネレータを備え、
前記特定動作の回避制御は、前記モータジェネレータによる力行を行うことである
ことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の変速機の制御装置において、
前記特定動作は、変速である
ことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の変速機の制御装置において、
前記特定動作は、ロックアップクラッチのオンからオフへの動作である
ことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の変速機の制御装置において、
前記車両前方の道路の情報は、道路勾配に関する情報である
ことを特徴とする変速機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−154943(P2007−154943A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348469(P2005−348469)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】