説明

変速機

【課題】掻き上げた潤滑油を効率的に各潤滑箇所に供給できる動力損失の少ない潤滑構造を備えた変速機を提供する。
【解決手段】ケース10に軸線方向に軸承された軸体と、軸体に支承され軸体にシフトクラッチにより回転連結される複数のギヤと、複数のギヤのうち下部がケース10内の下方部分に形成された潤滑油貯留領域91に収容された潤滑油に浸漬され、回転して潤滑油を上方に掻き上げる大径ギヤ80と、掻き上げられた潤滑油を捕集し潤滑箇所へ流通させるために大径ギヤ80の回転軸方向に延在して配置されたレシーバ92と、を備え、レシーバ92は、掻き上げられてレシーバの上方を飛散する潤滑油を衝突させ表面を流下させてレシーバの捕集部に導入する縦壁92dと、レシーバ92と大径ギヤ80との間に飛散する潤滑油を慣性力によって表面を流動させ捕集部92aに導入する導入部94とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速ギヤにより潤滑油を掻き上げて潤滑を行う変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関などの駆動力及び回転数の調整を行なう車両用の変速機では、変速ギヤにより潤滑油を掻き上げて潤滑を行っているものがある。例えばオイルレシーバを有する変速機の潤滑機構が開示されている特許文献1に示すものでは、変速ギヤにより掻き上げられた潤滑油をオイルレシーバで受け止め、他の変速ギヤの歯面や各軸の内部に潤滑油を供給している。オイルレシーバは変速ギヤの上方に配置され、上方に開口された樋形状を呈している。そして変速ギヤの回転によって掻き上げられ飛散した潤滑油を樋の開口部で受け止め、受け止めた潤滑油をオイルレシーバ内に流通させ各部に供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−170491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すオイルレシーバの樋形状においては、変速ギヤの回転によって掻き上げられた潤滑油がオイルレシーバの長手方向に対し直交して飛来するよう構成されているためオイルレシーバの上方及び下方を通過していく潤滑油の回収は困難である。これによりオイルレシーバによって必要量の潤滑油が捕集できず、十分供給できないため他の変速ギヤの歯面や各軸の内部が潤滑油不足となる虞がある。また変速ギヤの回転により掻き上げられた潤滑油の全量が潤滑用として利用できないため変速ギヤは無駄な仕事をしていることとなり、延いては変速機の動力損失となり、車両の駆動や燃費に大きく影響する虞がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、掻き上げた潤滑油を無駄なく各潤滑箇所に供給できる動力損失の少ない効率的な潤滑構造を備えた変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明の特徴は、ケースと、前記ケース内に軸線方向に軸承された軸体と、前記軸体に支承されシフトクラッチにより前記軸体に回転連結される複数のギヤと、前記複数のギヤのうち下部が前記ケース内の下方部分に形成された潤滑油貯留領域に収容された潤滑油に浸漬され、回転して前記潤滑油を上方に掻き上げる大径ギヤと、前記上方に掻き上げられた潤滑油を捕集し、該捕集した潤滑油を潤滑箇所へ流通させるために前記大径ギヤの回転軸方向に延在して配置されたレシーバと、を備え、前記レシーバは、前記掻き上げられた潤滑油のうち前記レシーバの上方を飛散する前記潤滑油を衝突させ表面を流下させて前記レシーバの捕集部に導入する縦壁と、前記レシーバと前記大径ギヤとの間に飛散する前記潤滑油を該潤滑油の慣性力によって表面を流動させ前記レシーバの捕集部に導入する導入部とを有していることである。
【0007】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記大径ギヤは、前記複数のギヤのうち車両走行時に常に回転するギヤであることである。
【0008】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項2において、前記変速機は、前記ケースに同軸で回転可能に支持され前記複数のギヤのうち駆動側のギヤが同軸に配置された第一入力軸および第二入力軸と、前記ケースに前記第一入力軸と夫々平行に配置され、前記複数のギヤのうち従動側のギヤが夫々回転可能に支持された第一出力軸および第二出力軸と、原動機の回転駆動力を前記第一入力軸に伝達する第一クラッチ及び前記回転駆動力を前記第二入力軸に伝達する第二クラッチを有するデュアルクラッチと、をさらに備えるデュアルクラッチ式自動変速機であり、前記大径ギヤは、前記第一出力軸および前記第二出力軸に常時回転連結されているディファレンシャルのリングギヤであることである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、レシーバには縦壁と導入部とが設けられている。縦壁はレシーバの上方でレシーバとケースとの間に向って飛散する潤滑油を縦壁の壁面に衝突させ壁面を流下させることによってレシーバの捕集部に導入する。また導入部はレシーバと大径ギヤとの間に向って飛散する潤滑油を導入部の上面で受け止め、上面を潤滑油自身のもつ慣性力によって流動させレシーバの捕集部に導入する。このようにレシーバに縦壁と導入部とが設けられたことにより大径ギヤによって掻き上げられた潤滑油はレシーバの上方及び下方を通過できず、多くが捕集されレシーバの潤滑油捕集部に導入される。これにより大径ギヤで掻き上げられた潤滑油は無駄なく潤滑用に利用されるので、他の変速ギヤの歯面や各軸の内部が潤滑油不足となる虞はなく信頼性が向上する。また効率的に潤滑油の循環が行なえるため変速機としての動力損失も大幅に抑制される。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、大径ギヤは、車両走行時に常に回転する。これにより、車両走行時においては常に潤滑油が大径ギヤによって掻き上げられ、途切れることがない。よって潤滑箇所である他の変速ギヤの歯面や各軸の内部には確実に潤滑油が供給されるので潤滑油不足となる虞はない。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、変速機は、デュアルクラッチ式の自動変速機である。この変速機は、一方の入力軸が内燃機関とクラッチにより連結されている場合、他方の入力軸は回転駆動しないことがあるが、いずれかの出力軸は車両走行時にいずれかの入力軸に回転駆動されている。このようなデュアルクラッチ式自動変速機において、潤滑油を掻き上げる大径ギヤに、第一出力軸および第二出力軸に常時回転連結されているディファレンシャルのリングギヤを適用することで、車両走行時に常に潤滑油が掻き上げられることとなり変速機の潤滑性が向上される。
【0012】
また、変速機におけるディファレンシャルのリングギヤは、一般に、ケースに収容される複数のギヤの中で大径であり、且つ、下方に位置することが多い。そこで、大径ギヤをディファレンシャルのリングギヤとすることで、ケースの底部に形成される潤滑油貯留領域から潤滑油をより効率的に掻き上げることができる。また、ディファレンシャルのリングギヤは、変速機におけるファイナルギヤとして構成される。そのため、リングギヤに加えられる撹拌抵抗は、駆動源である内燃機関に対して、シフト位置に応じた減速比を有する複数のギヤを介して伝達される。よって、大径ギヤに加えられる撹拌抵抗により内燃機関に作用する動力抵抗を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る変速機1の軸方向から見た図であって、レシーバ92の図2における1−1断面と、一部のギヤとを示す構成図である。
【図2】図1におけるA方向から見た断面模式図であって、ケース10のミッションケース11およびクラッチハウジング12を断面とし、ケース10に収容される摺動部や潤滑油を模式的に示す図である。
【図3】変速機1の全体構造を示すスケルトン図である。
【図4】レシーバ92の部分斜視図である。
【図5】第2の実施形態に係る変速機111の軸方向から見た図であって、レシーバ192の図6における5−5断面と、一部のギヤとを示す構成図である。
【図6】図5におけるB方向から見た断面模式図であって、ケース10のミッションケース11およびクラッチハウジング12を断面とし、ケース10に収容される摺動部や潤滑油を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態に係る変速機1について、図1〜図4を参照し説明する。変速機1は、図1〜図3に示すように、デュアルクラッチ式自動変速機であり、ケース10内に、軸体としての第一入力軸21、第二入力軸22、第一出力軸31、及び第二出力軸32を備えている。またケース10内には、デュアルクラッチ40、各変速段の駆動ギヤ51〜57(本発明の「駆動側のギヤ」に相当する)、最終減速駆動ギヤ58、68、各変速段の従動ギヤ61〜67、後進ギヤ70、リングギヤ80(本発明の「大径ギヤ」に相当する)、及び潤滑機構90を備えている。最終減速駆動ギヤ58,68、従動ギヤ61〜67および後進ギヤ70は、本発明の「従動側のギヤ」に相当する。
【0015】
ケース10は、図2に示すように、ミッションケース11とクラッチハウジング12とを有する。ミッションケース11は、複数の軸受けにより各軸を支承するとともに、上記の複数のギヤなどを含む潤滑箇所を潤滑するための潤滑油を収容している。クラッチハウジング12は、ミッションケース11の端面と対向する端面を有し、ミッションケース11とボルト締結により固定される。このクラッチハウジング12は、複数の軸受けにより各軸を支承するとともに、内部にデュアルクラッチ40を収容している。
【0016】
第一入力軸21は、中空軸状に形成されて、軸受によりミッションケース11に対して回転可能に支承されている。また、第一入力軸21の外周面には、軸受けを支持する部位と複数の外歯スプラインが形成されている。そして、第一入力軸21には、一速駆動ギヤ51および大径の三速駆動ギヤ53が直接形成されている。五速駆動ギヤ55および七速駆動ギヤ57は、第一入力軸21の外周面に形成された外歯スプラインにスプライン嵌合により圧入されている。また、第一入力軸21は、デュアルクラッチ40の第一クラッチ41に連結される連結部が形成されている。
【0017】
第二入力軸22は、中空軸状に形成されており、第一入力軸21の一部の外周に複数の軸受を介して回転可能に支承され、且つ、軸受によりクラッチハウジング12に対して回転可能に支承されている。つまり、第二入力軸22は、第一入力軸21に対して同心に相対回転可能に配置されている。また、第二入力軸22の外周面には、第一入力軸21と同様に、軸受けを支持する部位と複数の外歯歯車が形成されている。第二入力軸22には、二速駆動ギヤ52および大径の四速駆動ギヤ54および6側駆動ギヤ56が形成されている。また、第二入力軸22は、デュアルクラッチ40の第二クラッチ42に連結される連結部が形成されている。
【0018】
第一出力軸31は、軸受によりミッションケース11およびクラッチハウジング12に対して回転可能に支承され、ミッションケース11内において第一入力軸21に平行に配置されている。また、第一出力軸31の外周面には、最終減速駆動ギヤ58が形成されるとともに、軸受けを支持する部位と複数の外歯スプラインが形成されている。第一出力軸31の外歯スプラインには、シフトクラッチ101、103の各ハブ201がスプライン嵌合により圧入されている。最終減速駆動ギヤ58は、ディファレンシャル(差動機構)のリングギヤ80に噛合している。さらに、第一出力軸31には、一速従動ギヤ61、三速従動ギヤ63、四速従動ギヤ64、後進ギヤ70を遊転可能に支持する支持部が形成されている。
【0019】
第二出力軸32は、軸受によりミッションケース11およびクラッチハウジング12に対して回転可能に支承され、ミッションケース11内において第一入力軸21に平行に配置されている。また、第二出力軸32の外周面には、第一出力軸31と同様に、最終減速駆動ギヤ68が形成されるとともに、軸受けを支持する部位と複数の外歯スプラインが形成されている。第二出力軸32の外歯スプラインには、シフトクラッチ102、104の各ハブ201がスプライン嵌合により圧入されている。最終減速駆動ギヤ68は、ディファレンシャルのリングギヤ80に噛合している。さらに、第二出力軸32には、二速従動ギヤ62、五速従動ギヤ65、六速従動ギヤ66、七速従動ギヤ67、を遊転可能に支持する支持部が形成されている。
【0020】
ここで、デュアルクラッチ40は、図3に示すように、内燃機関E/G(本発明の「原動機」に相当する)の回転駆動力を第一入力軸21に伝達する第一クラッチ41と、内燃機関E/Gの駆動力を第二入力軸22に伝達する第二クラッチ42とを有する。このデュアルクラッチ40は、図2の右側においてクラッチハウジング12に収容され、第一入力軸21および第二入力軸22に対して同心に設けられている。第一クラッチ41は、第一入力軸21の連結軸部に連結され、第二クラッチ42は、第二入力軸22の連結軸部に連結されている。そして、車両の制御指令に基づき第一,第二入力軸21,22に対し、第一,第二クラッチ41,42を順次作動させ内燃機関E/Gとの連結を切り換えることにより、高速のシフト変更を可能としている。
【0021】
後進ギヤ70は、第一出力軸31に形成された後進ギヤ70の支持部に遊転可能に設けられている。また、本実施形態において、後進ギヤ70は、二速従動ギヤ62に一体的に形成された小径ギヤ62aに常に噛合している。
【0022】
各シフトクラッチ101、102、103、104は、それぞれ、ハブ201と、スリーブ202とを備える。ハブ201は、内歯スプラインおよび外歯スプラインが形成された中空円盤状をなし、第一出力軸31または第二出力軸32の外歯スプラインにスプライン嵌合により圧入されている。スリーブ202は、ハブ201に対して軸方向にスライド可能となるようにハブ201の外歯スプラインに噛合し、スライドした際に変速段の従動ギヤ61〜67または後進ギヤ70のシンクロギヤ部に噛合可能となる。つまり、スリーブ202は軸方向にスライドすることにより、変速段の従動ギヤ61〜67および後進ギヤ70に設けられた図略のシンクロギヤとの噛合状態、非噛合状態とを切り替え、従動ギヤ61〜67または後進ギヤ70と第一出力軸31、第二出力軸32とを選択的に連結する役割を有する。
【0023】
リングギヤ80は、図1に示すように、最終減速駆動ギヤ58および最終減速駆動ギヤ68に噛合されることで、第一出力軸31および第二出力軸32に常時回転連結されている。また、リングギヤ80は、最終減速駆動ギヤ58、68より大径で、且つ、歯数が多い。このリングギヤ80は、ケース10に軸支される軸体としての回転軸80a及び差動機構(図示せず)を介して駆動輪に連結されている。つまり、ディファレンシャルのリングギヤ80は、変速機におけるファイナルギヤとして構成され、車両走行時に常に回転するギヤである。また、リングギヤ80は、他のギヤよりも下方に位置している。そして、リングギヤ80の下部は、ミッションケース11の底部に貯留する潤滑油に浸漬し、潤滑油の掻き上げが可能となっている。
【0024】
セパレータ93は、図1に示すように、変速機1の軸方向から見た場合に弓状であり、リングギヤ80の周縁部のうち潤滑油貯留領域91から潤滑油貯留領域91の外部に亘ってリングギヤ80の周縁部を囲むように形成されている。セパレータ93は、リングギヤ80の周縁部を囲むことによって、リングギヤ80の回転による潤滑油の掻き上げ油量や、飛散させる方向を安定させるものである。このセパレータ93は、リングギヤ80の周縁部の軸方向断面の形状に倣うようにコの字型形状に形成されている。
【0025】
また、このセパレータ93は、本実施形態においては、左右で分離可能な断面L字状の二つの側片93L,93Rの底部が重合して断面コの字型形状に構成されている。左側片93Lは、ミッションケース11に図略のボルトによって固定されている。同様に、セパレータ93の右側片93Rは、クラッチハウジング12に図略のボルトによって固定されている。そして、セパレータ93は、ミッションケース11にクラッチハウジング12が当接されてボルト締結により固定されると、二つの側片93L,93Rがリングギヤ80の両側面を左右から挟み込み、外周面と対向するように組み付けられる。また、セパレータ93の下側の端部は、潤滑油貯留領域91に設けられている。つまり、セパレータ93の下部は、ミッションケース11内に貯留する潤滑油と、リングギヤ80の周縁近傍に貯留する潤滑油とを区画している。これにより、回転するリングギヤ80により撹拌される潤滑油の油量を設定している。
【0026】
潤滑機構90は、潤滑油貯留領域91と、レシーバ92とを有している。潤滑油貯留領域91は、図1,図2に示すように、ミッションケース11の底部において潤滑油を貯留する領域である。この潤滑油貯留領域91は、貯留した潤滑油をリングギヤ80の回転によりリングギヤ80の上方へ掻き上げ可能としている。また、リングギヤ80により掻き上げられた潤滑油は、リングギヤ80の上部において飛散し、レシーバ92により捕集される。
【0027】
レシーバ92は、ミッションケース11の上部にボルト締結により固定されるミッションケース11と別体の部材である。レシーバ92は、図2に示すように一端に設けられた潤滑油を受け取る(捕集する)ための捕集部92aを有している。またレシーバ92は、レシーバ92の上方に飛散した潤滑油を表面に衝突させ表面を流下させることによって捕集し捕集部92aに導入するための縦壁92dと、レシーバ92とリングギヤ80との間に向って飛散する潤滑油を表面で受け止めたのち潤滑油の飛散する慣性力を利用し表面を滑らせ捕集部92aに導入するための導入部94とを有している。導入部94は両側の側壁94dを備えた導入路94aと側壁を持たない舌部94bとからなる。さらにレシーバ92は捕集された潤滑油を流通させ各潤滑箇所へ供給するための流路92bと、他端に形成され各出力軸31、32等に潤滑油を供給するための供給口92cとを有する。なお、ここでいう潤滑箇所とは、外方から潤滑油が供給され潤滑される各ギヤの歯面及び各シフトクラッチ101〜104と、各軸内から潤滑油が供給され潤滑される各ギヤの軸受けである支持部のことをいう。
【0028】
レシーバ92は、リングギヤ80の回転軸方向に延在され、一端を始点として下方へ所定の角度をもって配置されている。レシーバ92の流路92bは、リングギヤ80の回転軸方向と直交する断面がコの字型で上方が開口された樋形状にて形成されている。
【0029】
レシーバ92の一端の端部は、流路92bが断面コの字型の樋形状のまま直角に屈曲され所定量延在されて導入部94を構成する導入路94aが形成されている。導入路94aは、導入路94aの底壁94cの上面をそのまま延在させたとき、底壁94cの上面がリングギヤ80の外周の略接線となるように形成され配置されている。
【0030】
そして導入路94aの両側壁94d間の内側の距離は、リングギヤ80を囲むセパレータ93の左側片93Lと右側片93Rと間の内側の距離と略一致する幅にて形成されている。また導入路94aの両側壁94dの端面94eは、セパレータ93の上側の端部93aの端面93dと当接されている。
【0031】
導入路94aの底壁94cは、両側壁94dがセパレータ93の端面93dと当接された位置からリングギヤ80の外周面に向って延在されている。そして底壁94cの下面とリングギヤ80の外周面とに間に若干の隙間が確保される位置まで延在され、導入部94を構成する舌部94bが形成されている。
【0032】
捕集部92aは、図4に示すようにL字のレシーバ92の屈曲部に設けられている。捕集部92aは、リングギヤ80の回転により掻き上げられ飛散する潤滑油を捕集するための部位であるため、飛散した潤滑油が概ね落下する位置に配置されている。
【0033】
また、捕集部92aを形成する側壁においてリングギヤ80の回転により掻き上げられ飛散した潤滑油の飛来方向と面が直交する側の側壁に縦壁92dが立設されている。縦壁92dは、飛散した潤滑油のうち、レシーバ92の上方を通過しようとする潤滑油を縦壁92dの平面92eと衝突させ、該平面92eを流下させることにより捕集部92aに導入する。
【0034】
縦壁92dは、ミッションケース11の上方内壁近傍まで延在されている。そして縦壁92dの平面92eの両側には、飛散してくる潤滑油と、面が平行になるように直角に屈曲され形成された折曲げ部92fが設けられている。また縦壁92dはリングギヤ80の回転により掻き上げられ、レシーバ92の上方に飛散する潤滑油の飛散範囲がカバーできるような位置に配置され、またカバーできる所定の大きさで形成される。なお、上記において縦壁92dは、レシーバ92と一体で形成せず別体としてもよい。また、縦壁92dの折曲げ部92fは飛散してきた潤滑油を縦壁92dの両端から逃がし難くするためのものであり、両端のうち片側だけに設けられる場合や、両端とも設けられなくても相応の効果は期待できる。また、上記において導入路94aの底壁94cの上面と、舌部94bの上面と、縦壁92dの飛散潤滑油との衝突平面92eと、には潤滑油の流動性を向上させるため、低μの性質をもつ例えばテフロン等によるコーティングが施されていることが好ましい。
【0035】
流路92bは、リングギヤ80の回転軸方向に延在し捕集部92aに捕集した潤滑油を流通させ、変速機1の各潤滑箇所へ供給するためのものである。この流路92bには、各ギヤの歯面、各シフトクラッチ101〜104などの各潤滑箇所に適量の潤滑油を流下または滴下して供給するために、その潤滑箇所の上方に複数の流下口92g(図4)が設けられている。なお、潤滑油を各潤滑箇所の真上から確実に供給するため、流路92bは直線形状ではなく、各潤滑箇所の位置に対応させるため変形した形状としてもよい。
【0036】
供給口92cは、レシーバ92の他端に形成され、流入溝11aに連通する横穴に挿入されている。レシーバ92は、供給口92cから流入溝11aに連通する横穴に潤滑油を流入させることにより、流入溝11aを介して、貫通孔が形成されている第一出力軸31および第二出力軸32の貫通孔に潤滑油を供給している。ここで流入溝11aとは各軸31、32などの貫通孔に潤滑油を流入させるための油路であり、ミッションケース11においてレシーバ92の他端側と同じ側の端面開口部を閉塞するカバー11bに設けられている。
【0037】
次に、上述の実施形態の構成における動作、作用について説明する。変速機1が始動されると、この実施形態の歯車自動変速装置の制御装置は、アクセル開度、エンジン回転速度、車速などの自動車の作動状態に応じて、デュアルクラッチ40の第一及び第二クラッチ41,42並びに各シフトクラッチ101〜104を作動させる。不作動状態ではデュアルクラッチ40の第一及び第二クラッチ41,42はともに解除されており、各シフトクラッチ101〜104は中立位置にある。
【0038】
停車状態においてエンジンE/Gを起動させて歯車変速装置のシフトレバー(図示省略)を前進位置とすれば、制御装置は、シフトクラッチ101が有するスリーブ202をスライドさせ、変速段の従動ギヤ61のシンクロギヤ部に噛合させ、その他の各クラッチが中立位置となるようにして第一速段を形成する。アクセル開度が増大してエンジンE/Gが所定の低回転速度を越えれば、制御装置はアクセル開度に合わせてデュアルクラッチ40の第一クラッチ41の係合力を徐々に増加させ、これにより駆動トルクは第一クラッチ41から第一入力軸21、第一速ギヤ列51,61、シフトクラッチ101、第一出力軸31、最終減速駆動ギヤ58を介してディファレンシャルのリングギヤ80に伝達され、自動車は第一速で走行し始める。
【0039】
アクセル開度が増大するなどして自動車の作動状態が第二速走行に適した状態となれば、制御装置は、先ずシフトクラッチ102が有するスリーブ202をスライドさせ、変速段の従動ギヤ62のシンクロギヤ部に噛合させて第二速段を形成してから、デュアルクラッチ40を第二クラッチ42側に切り換えて第二速走行に切り換え、次いでシフトクラッチ101のスリーブ202を離脱させる。これにより駆動トルクは第二クラッチ42から第二入力軸22、第二速ギヤ列52,62、シフトクラッチ102、第二出力軸32、最終減速駆動ギヤ68を介してディファレンシャルのリングギヤ80に伝達され、自動車は第二速で走行する。同様にして制御装置は、第三速〜第七速では、自動車の作動状態に応じた変速段を順次選択するとともに第一クラッチ41と第二クラッチ42を交互に選択して、その状態に適した変速段での走行が行われるようにする。
【0040】
エンジンE/Gを起動させた停車状態において歯車変速装置のシフトレバーを後進位置とすれば、制御装置はそれを検出してシフトクラッチ103が有するスリーブ202をスライドさせ、後進ギヤ70のシンクロギヤ部に噛合させ、その他の各クラッチが中立位置となるようにして後進段を形成する。このとき後進ギヤ70は、変速段の従動ギヤ62と一体的に形成された小径ギヤ62aと常時噛合されている。これによって駆動トルクは第二クラッチ42から第二入力軸22、第二速ギヤ列52、62、62a、後進ギヤ70、シフトクラッチ103、第一出力軸31、最終減速駆動ギヤ58を介してディファレンシャルのリングギヤ80に伝達され、自動車は後進を開始する。
【0041】
次に潤滑機構90の作用について説明する。上述したように自動車の変速機内部において特に潤滑を必要とする前進時には変速機1の最終減速駆動ギヤ58または68を介し、ディファレンシャルのリングギヤ80が常時回転される。よってミッションケース11の底部に潤滑油が貯留する潤滑機構90を構成する潤滑油貯留領域91から潤滑油が常時掻き上げられる。リングギヤ80の回転によって掻き上げられた潤滑油は、リングギヤ80の外周接線方向に向って飛散される。しかしリングギヤ80には、リングギヤ80の周縁部のうち潤滑油貯留領域91から潤滑油貯留領域91の外部に亘ってリングギヤ80の周縁部を囲むようにセパレータ93が形成されている。これによって飛散される潤滑油の多くは、セパレータ93の上側端部93aが開口される方向であるレシーバ92が配置される方向に向って飛散される。
【0042】
レシーバ92は上方に開口された樋形状を呈している。このため飛散された潤滑油のうち所定の割合の潤滑油が樋形状の内部に形成された捕集部92aに落下し捕集される。
【0043】
またレシーバ92の上方に飛散された潤滑油はレシーバ92に設けられた縦壁92dの平面92eと衝突し平面92e上を流下し縦壁92dの下方に設けられている捕集部92aに捕集される。
【0044】
さらにレシーバ92とリングギヤ80との間の方向に向って飛散された潤滑油は、レシーバ92に設けられた導入部94である舌部94b及び導入路94aによって誘導され、捕集部92aに捕集される。つまりレシーバ92とリングギヤ80との間の方向に向って飛散された潤滑油の多くは、舌部94bと、舌部94bの上面と連続して形成されている導入路94aの底壁94cの上面に受け止められ、それぞれの潤滑油が持つ慣性力によって、該上面を流動して斜め上方に上昇し捕集部92aに捕集される。なお、本実施形態においては、舌部94b及び導入路94aの底壁94cの上面は、重力方向において上方に向って潤滑油が上昇するように面が形成されている。しかし、大径のリングギヤ80の回転によって掻き上げられる潤滑油の速度は大きく、よって慣性力も大きいため、潤滑油は重力方向上方に向って十分上昇可能であることが発明者によって確認されている。
【0045】
そしてこのように、リングギヤ80の回転によって掻き上げられた潤滑油の多くが無駄なく捕集部92aに捕集される。そして捕集部92aから流路92bを重力によって流下し、適所に設けられた流下口92gから各ギヤの歯面や各シフトクラッチなどの潤滑箇所に適量の潤滑油を流下または滴下して潤滑が行なわれる。またレシーバ92の他端に形成された供給口92cからは、流入溝11aを介して第一出力軸31および第二出力軸32の貫通孔に潤滑油が供給され各ギヤの支持部を構成する軸受に対して十分な潤滑が行なわれる。
【0046】
上述の説明から明らかなように、第1の実施形態においては、レシーバ92には縦壁92dと導入路94が設けられた。これにより大径ギヤとしてのリングギヤ80によって掻き上げられた潤滑油は無駄なくレシーバ92に捕集され潤滑用に利用されるので、潤滑箇所としての変速ギヤ61〜67等の歯面や各軸31、32などの内部が潤滑油不足となる虞はなく、信頼性が向上する。また効率的に潤滑油の循環が行なえるため変速機としての動力損失も大幅に抑制される。
【0047】
また、変速機1は、デュアルクラッチ式の自動変速機である。この変速機1は、一方の入力軸21又は22が内燃機関E/Gと、クラッチ41または42により連結されている場合、他方の入力軸22又は21は回転駆動しないことがあるが、いずれかの出力軸31、32は車両走行時にいずれかの入力軸21又は22に回転駆動されている。このようなデュアルクラッチ式自動変速機1において、潤滑油を掻き上げる大径ギヤに、第一出力軸31および第二出力軸32に常時回転連結されているディファレンシャルのリングギヤ80を適用することで、車両走行時に常に潤滑油が掻き上げられることとなる。これにより、レシーバ92に安定して潤滑油を供給できるので、変速機1の内部において潤滑油を効率的に循環させることができる。
【0048】
また、リングギヤ80は、一般に、ミッションケース11に収容される複数のギヤの中で大径であり、且つ、下方に位置することが多い。そこで、リングギヤ80により潤滑油を掻き上げる構成とすることで、ミッションケース11の底部に潤滑油が貯留する潤滑油貯留領域91から潤滑油をより効率的に掻き上げることができる。また、ディファレンシャルのリングギヤ80は、変速機1におけるファイナルギヤとして構成される。そのため、リングギヤ80に加えられる撹拌抵抗は、駆動源である内燃機関E/Gにシフト位置に応じた減速比を有する複数のギヤを介して伝達される。よって、リングギヤ80の撹拌抵抗により内燃機関E/Gに及ぼす影響を低減させることができる。
【0049】
次に第2の実施形態について図5,図6を参照して説明する。第2の実施形態の変速機111の構成は、主に、第1の実施形態の変速機1がデュアルクラッチ式自動変速機であったのに対し、手動式変速機である点が異なる。これに伴い、変速機111におけるギヤなどの構成が異なる。その他の構成については、第一実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略する。また手動式の変速機111の作動については周知であるため説明は省略し、以下、相違点のみについて説明する。
【0050】
手動式変速機である変速機111は、図5,図6に示すように、ミッションケース11内に、軸体としての入力軸123及び出力軸133、各変速段の駆動ギヤ151〜156、各変速段の従動ギヤ161〜166、最終減速駆動ギヤ168、後進ギヤ170、リングギヤ80(本発明の「大径ギヤ」に相当する)、および、潤滑機構190を備えている。リングギヤ80には、セパレータ193が設けられている。図5に示すように、セパレータ193は第1の実施形態におけるセパレータ93と同様に変速機111の軸方向から見た場合に弓状であり、リングギヤ80の周縁部のうち潤滑油貯留領域91から潤滑油貯留領域91の外部に亘ってリングギヤ80の周縁部を囲むように形成されている。
【0051】
入力軸123は、軸状に形成され、軸受けによりミッションケース11に対して回転可能に支持されている。また、入力軸123の外周面には、一速駆動ギヤ151、二速駆動ギヤ152、及び後進ギヤ170と図略のカウンタギヤを介して噛合される小径のギヤ157が直接形成されている。また入力軸123の外周面には、各ギヤを遊転可能に支持する支持部と複数の外歯スプラインが形成されている。入力軸123の外歯スプラインには、各シフトクラッチの各ハブがスプライン嵌合により圧入され、支持部には三速駆動ギヤ153〜六速駆動ギヤ156が遊転可能に支持されている。この入力軸123は、図示しない内燃機関E/Gのクランク軸とクラッチを介して連結され、変速機111に駆動力を入力するものである。つまり、入力軸123は、第1の実施形態の第一入力軸21および第二入力軸22に相当する。そして入力軸123の内部には、潤滑箇所である各ギヤの支持部を潤滑するための潤滑油が流動される貫通孔が形成されている。
【0052】
出力軸133は、軸受けによりミッションケース11およびクラッチハウジング12に対して回転可能に支承され、ミッションケース11内において入力軸123と平行に配置されている。また、出力軸133の外周面には三速従動ギヤ163〜六速従動ギヤ166及び最終減速駆動ギヤ168が直接形成されている。さらに出力軸133の外周面には、各ギヤを遊転可能に支持する支持部と複数の外歯スプラインが形成されている。そして出力軸133の外歯スプラインには、各シフトクラッチの各ハブがスプライン嵌合により圧入され、支持部には一速従動ギヤ161、二速従動ギヤ162及び後進ギヤ170が遊転可能に支持されている。
【0053】
出力軸133は、何れかの従動ギヤと回転連結され、出力軸133に形成された最終減速駆動ギヤ168を介してディファレンシャルのリングギヤ80を回転させ変速機111から駆動力を出力するものである。出力軸133は、第1の実施形態の第一出力軸31および第二出力軸32に相当する。また出力軸133の内部には、潤滑油が流動される貫通孔が形成されている。そして第1の実施形態と同様にミッションケース11の他端側開口部を閉塞するカバー11bに設けられている流入溝11aを介して潤滑油を流入させることにより、入力軸123および出力軸133の貫通孔に潤滑油が供給され、潤滑箇所としての各ギヤの支持部が潤滑される。
【0054】
リングギヤ80は、最終減速駆動ギヤ168に噛合することで、出力軸133に常時回転連結されている。また、リングギヤ80は、最終減速駆動ギヤ168より大径で、且つ、歯数が多い。つまり、ディファレンシャルのリングギヤ80は、変速機におけるファイナルギヤとして構成され、車両走行時に常に回転するギヤである。また、リングギヤ80は、他のギヤよりも下方に位置している。そして、リングギヤ80の下部は、ミッションケース11の底部に貯留する潤滑油に浸漬し、潤滑油の掻き上げが可能となっている。
【0055】
潤滑機構190は第1の実施形態の潤滑機構90と同様の構成であり、潤滑油貯留領域91と、レシーバ192とを有している。レシーバ192は、図5、図6に示すように一端に設けられた潤滑油を受け取る(捕集する)ための捕集部192a(第1の実施形態の捕集部92aに相当)と、レシーバ192の上方に飛散した潤滑油を表面に衝突させ表面を流下させることによって捕集し捕集部192aに導入するための縦壁192d(第1の実施形態の縦壁92dに相当)と、レシーバ192とリングギヤ80との間に向って飛散する潤滑油を表面で受け止め、潤滑油の飛散する慣性力を利用し表面を滑らせ捕集し捕集部192aに導入するための導入部194(第1の実施形態における導入部94に相当)とを有する。導入部194は第1の実施形態の導入部94と同様に、両側に側壁が備えられた導入路194aと、側壁を持たない舌部194bとからなる。またレシーバ192は捕集された潤滑油を各潤滑箇所へ流通させるための流路192b(第1の実施形態の流路92bに相当)と、他端に形成された供給口192c(第1の実施形態の供給口92cに相当)とを有する。供給口192cは前述の通りミッションケース11のカバー11bに設けられた流入溝11aを介し潤滑油を各軸123、133等の内部に供給して、潤滑箇所としての各ギヤの支持部を潤滑する。
【0056】
上記のように構成された変速機111においては、車両走行時に常時回転されているディファレンシャルのリングギヤ80によって潤滑油がリングギヤ80の上方に常に掻き上げられる。そして掻き上げられた潤滑油が潤滑機構90と同様の機能を持つ潤滑機構190によって効果的に捕集され、ミッションケース11内を効率的に循環されることによって第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0057】
なお、第1及び第2の実施形態において、レシーバ92、192の各導入部94、194には導入路94a、194aを設けず舌部94b、194bのみによって導入部94、194を形成してもよくこれによっても十分な効果が期待できる。
【0058】
また、第1及び第2の実施形態においては、リングギヤ80にセパレータ93、193を設けたが、セパレータ93、193を設けない構成としてもよい。そのときはレシーバ92、192の各導入部94、194の舌部94b、194bを廃止し、側壁を備えた導入路94a、194aをリングギヤ80の外周直近まで延在させてやればよく、これによっても相応の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0059】
1、111・・・変速機、10・・・ケース、11・・・ミッションケース、12・・・クラッチハウジング、21・・・第一入力軸、22・・・第二入力軸、31・・・第一出力軸、32・・・第二出力軸、40・・・デュアルクラッチ、41・・・第一クラッチ、42・・・第二クラッチ、51〜57、151〜157・・・変速段の駆動ギヤ、58、68、168・・・最終減速駆動ギヤ、61〜67、161〜166・・・変速段の従動ギヤ、62a・・・小径ギヤ、70、170・・・後進ギヤ、80・・・リングギヤ、90、190・・・潤滑機構、91・・・潤滑油貯留領域、92、192・・・レシーバ、92a、192a・・・捕集部、92b、192b・・・流路、92c、192c・・・供給口、92d、192d・・・縦壁、94、194・・・導入部、94a、194a・・・導入路、94b、194b・・・舌部、94c・・・底部、123・・・入力軸、133・・・出力軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内に軸線方向に軸承された軸体と、
前記軸体に支承されシフトクラッチにより前記軸体に回転連結される複数のギヤと、
前記複数のギヤのうち下部が前記ケース内の下方部分に形成された潤滑油貯留領域に収容された潤滑油に浸漬され、回転して前記潤滑油を上方に掻き上げる大径ギヤと、
前記上方に掻き上げられた潤滑油を捕集し、該捕集した潤滑油を潤滑箇所へ流通させるために前記大径ギヤの回転軸方向に延在して配置されたレシーバと、を備え、
前記レシーバは、前記掻き上げられた潤滑油のうち前記レシーバの上方を飛散する前記潤滑油を衝突させ表面を流下させて前記レシーバの捕集部に導入する縦壁と、前記レシーバと前記大径ギヤとの間に飛散する前記潤滑油を該潤滑油の慣性力によって表面を流動させ前記レシーバの捕集部に導入する導入部とを有していることを特徴とする変速機。
【請求項2】
請求項1において、
前記大径ギヤは、前記複数のギヤのうち車両走行時に常に回転するギヤであることを特徴とする変速機。
【請求項3】
請求項2において、前記変速機は、前記ケースに同軸で回転可能に支持され前記複数のギヤのうち駆動側のギヤが同軸に配置された第一入力軸および第二入力軸と、
前記ケースに前記第一入力軸と夫々平行に配置され、前記複数のギヤのうち従動側のギヤが夫々回転可能に支持された第一出力軸および第二出力軸と、
原動機の回転駆動力を前記第一入力軸に伝達する第一クラッチ及び前記回転駆動力を前記第二入力軸に伝達する第二クラッチを有するデュアルクラッチと、をさらに備えるデュアルクラッチ式自動変速機であり、
前記大径ギヤは、前記第一出力軸および前記第二出力軸に常時回転連結されているディファレンシャルのリングギヤであることを特徴とする変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−7208(P2011−7208A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148262(P2009−148262)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】