説明

外気導入ダクト

【課題】 空気取入口周囲とエンジンフードとの幅広空間のシール性能を確保する。
【解決手段】 外気導入ダクト1の先端に車両前方に向かって開口する空気取入口2を設け、空気取入口2の周囲にエンジンフード6の内面に圧接するシール部材5が配置された外気導入ダクト1において、シール部材5は、エンジンフード6の内面と空気取入口2の周囲との間の空間を閉塞するように延びる台座部7と、台座部7の先端近傍からエンジンフード6の形状に沿うように延出してエンジンフード6に当接するリップ部8と、を有し、リップ部8の圧縮量がシール部材5の長手方向で略一定となるよう台座部7の高さがエンジンフード6に合わせて設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気導入ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の充填効率を高めるためには、なるべく吸入空気として低温の外気を取り込むことが望ましい。
【0003】
そこで、特許文献1には、外気導入ダクトを車両前方位置で、車両前方に向かって開口させると共に、外気導入ダクトの開口部周囲にエンジンフードに当接するシール部材を配置しエンジンルーム内で暖められた空気が後方から外気導入ダクトの開口部に流れ込まないようにしたものが開示されている。
【特許文献1】特開平5−32130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年希求されつつある、車両が歩行者に衝突した際にその衝撃によりボディが適度に変形し衝撃吸収を図る所謂「歩行者傷害軽減ボディ」が開発されつつあり、走行中の車両が誤って歩行者に衝突した場合、歩行者の脚部が車両のフロントバンパーに衝突し、次に腰部がエンジンフードの前縁部位に、そして歩行者の胸部あるいは頭部がエンジンフードの後縁部位やフロントガラスに衝突することになる。このため、エンジンフードにおいては、歩行者と衝突した際に衝撃吸収を図り歩行者の負傷の度合を軽減する歩行者保護対応が求められているが、上述した特許文献1に開示されるような従来の構造では、歩行者保護対応としてフードパネルと外気導入ダクトの開口部周囲との間の隙間を大きくして歩行者への衝撃吸収を図った場合、外気導入ダクトとエンジンフードとの間に所定の空間を確保する必要があり、空間確保のため、外気導入ダクトの開口周縁にシール部材としてスポンジ状パッキンを多く用いることになるが、単にスポンジ状パッキンの高さを増加させると、シール部材の倒れ込みによって、外気導入ダクトの開口部周囲とエンジンフードとの間のシール性能を確保できない虞がある。
【0005】
また、エンジンフードには凹凸形状があるため、シール部材の高さを一定とすると、シール性を確保するには場所によってシール部材の圧縮量が変化することとなり、圧縮量が大きい箇所については、圧縮量が小さい箇所に比べてシール部材が座屈しやすくなり、座屈が生じた場合に所期のシール性能を発揮できなくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の請求項1に記載の外気導入ダクトは、外気導入ダクトの先端に車両前方に向かって開口する空気取入口を設け、空気取入口の周囲にエンジンフードの内面に圧接するシール部材が配置された外気導入ダクトにおいて、シール部材は、エンジンフードの内面と空気取入口の周囲との間の空間を閉塞するように延びる台座部と、台座部の先端近傍からエンジンフードの形状に沿うように延出してエンジンフードに当接するリップ部と、を有し、リップ部の圧縮量がシール部材の長手方向で略一定となるよう台座部の高さがエンジンフードに合わせて設定されていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の外気導入ダクトは、請求項1に記載の外気導入ダクトにおいて、シール部材がリップ部の肉厚が台座部の肉厚に比べて薄肉となるよう設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リップ部の圧縮量がシール部材の長手方向で略一定となっているので、リップ部のシール反力をシール部材の長手方向で略均一にすることができ、シール部材は安定したシール性能を確保することができると共に、エンジンフードと外気導入ダクトとの間に所定の空間を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1〜図3は、本発明に係る外気導入ダクト1を示すものであって、図1は外気導入ダクト1の空気取入口2を正面からみた斜視図、図2は外気導入ダクト1の空気取入口2を後方からみた斜視図、図3はエンジンフードパネルと組み合わされたダクト1の断面図である。
【0011】
車両のエンジンルーム内に配置されたエンジン(図示せず)には、内部に吸気通路が構成された管路状の外気導入ダクト1を介して外気が導入されている。この外気導入ダクト1は、合成樹脂材料からなり、一端側となる先端が車両幅方向に細長い断面略矩形となるよう形成されている。
【0012】
そして、外気導入ダクト1の先端には、車両前方に向かって開口する空気取入口2が設けられている。この外気導入ダクト1は、この空気取入口2において、底壁3の先端が上部壁4の先端に対して相対的に車両前方側に位置するよう延長形成され、空気取入口2の開口が斜めに傾くように形成されている。
【0013】
空気取入口2の周囲には、空気取入口2にエンジンルーム内で暖められた空気が吸い込まれないように、シール部材5が配置されている。シール部材5は、EPDM等のゴム材料からなるいわゆる成形パッキンであって、エンジンフード6の内面と空気取入口2の周囲との間の空間を閉塞するように延びる台座部7と、台座部7の先端近傍からエンジンフード6の形状に沿うように延出してエンジンフード6の内面に当接するリップ部8と、を有している。
【0014】
台座部7は、空気取入口2の周囲に固定される薄板状の固定壁9と、固定壁9からエンジンフード6に向かって折り返された縦壁10と、を備え、全体として断面略L字形状を呈している。つまり、リップ部8は、縦壁10の先端近傍から突出し、エンジンフード6の形状に沿うように形成されている。また、縦壁10の高さは、リップ部8の突出量が略一定となるように形成されている。
【0015】
そして、本実施形態におけるシール部材5は、リップ部8の座屈応力σaよりも縦壁10の座屈応力σbが大きくなるように設定されている。図4は、リップ部8の座屈応力σaと縦壁10の座屈応力σbの作用状態を模式的に示した説明図であり、リップ部8先端に上方からの荷重Fが作用する際のリップ部8の座屈応力σaよりも、縦壁10の先端に上方から荷重Fが作用する際の縦壁10の座屈応力σbが大きくなるよう設定されている。つまり、リップ部8よりも縦壁10の方が剛性が確保されており、リップ部8は、柔軟にエンジンフード6の内面をシールできるようになっている。
【0016】
リップ部8の座屈応力σaと縦壁10の座屈応力σbとの相対的な大小関係は、リップ部8の肉厚、縦壁10の肉厚等によって決定されるものであり、本実施形態においては、リップ部8の肉厚に比べて、縦壁10の肉厚が大きくなるよう設定されている。一例を挙げれば、例えば、リップ部8の肉厚が1mm程度であれば、縦壁10の肉厚は2.5mm程度に設定される。
【0017】
また、台座部7は、縦壁10の背面側(反空気取入口側)が複数のリブ11によって支持されている。これらのリブ11は、縦壁10と固定壁9とに接続されており、これらのリブ11の厚みや個数によっても、縦壁10の先端に上方から荷重Fが作用した際の座屈応力σbを調整可能である。
【0018】
尚、12は、エンジンフード6の内面の凹凸(形状)に合わせてリップ部8から突出させた形状追従部である。
【0019】
このような外気導入ダクト1においては、歩行者保護対応としてエンジンフード6と外気導入ダクト1の空気取入口2周囲との間の隙間を大きくした場合には、台座部7の縦壁10の高さを大きくして対応することになる。つまり、エンジンフード6の内面に当接するリップ部8の長さは、エンジンフード6と外気導入ダクト1の空気取入口2周囲との間の隙間に応じて長くなることはなく、また台座部7はリブ11によって剛性が高められているので、エンジンフード6と外気導入ダクト1の空気取入口2周囲との間の隙間が大きくなったとしても、シール部材5の倒れ込みを確実に防止することができ、外気導入ダクト1の空気取入口2周囲とエンジンフード6との間の隙間が大きくなっても、シール部材5は安定したシール性能を確保することができる。
【0020】
さらに、リップ部8は、エンジンフード6の内面と台座部7との間で撓み変形することになるが、リップ部8の圧縮量がシール部材5の長手方向で略一定となっているので、リップ部8のシール反力をシール部材5の長手方向で略均一にすることができると共に、リップ部8が部分的に座屈してしまうことはなく、外気導入ダクト1の空気取入口2周囲とエンジンフード6との間で安定したシール性能を確保することができる。
【0021】
また、リップ部8は縦壁10に比べて薄肉に形成されているので、エンジンフード6に対するリップ部8からの弾性反力を相対的に小さくすることができ、エンジンフード6の開閉動作時におけるエンジンフード6の閉じ性能が悪化してしまうことを防止することができる。
【0022】
そして、リップ部8の座屈応力σaよりも、縦壁10の座屈応力σbが大きくなるよう設定されているので、歩行者保護対応として外気導入ダクト1の空気取入口2とエンジンフード6との間の距離を相対的に大きく設定することが可能となり、シール部材5の倒れ込みを防止しつつ、リップ部8のエンジンフード6に対するシール反力を小さくして、仮に歩行者と衝突したとしてもエンジンフード6は歩行者との衝撃を吸収できる。また、衝撃吸収以前の通常状態では、エンジンフード6と、空気取入口2との間のシール性能を確保し、エンジンルーム内の暖められた空気が外気導入ダクト1内に流れ込むの防止する所期性能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る外気導入ダクトの斜視図。
【図2】本発明に係る外気導入ダクトの斜視図。
【図3】本発明に係る外気導入ダクトの要部断面図。
【図4】リップ部の座屈応力σaと縦壁の座屈応力σbの作用状態を模式的に示した説明図。
【符号の説明】
【0024】
1…外気導入ダクト
2…空気取入口
5…シール部材
7…台座部
8…リップ部
9…固定壁
10…縦壁
11…リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気導入ダクトの先端に車両前方に向かって開口する空気取入口を設け、空気取入口の周囲にエンジンフードの内面に圧接するシール部材が配置された外気導入ダクトにおいて、
シール部材は、エンジンフードの内面と空気取入口の周囲との間の空間を閉塞するように延びる台座部と、台座部の先端近傍からエンジンフードの形状に沿うように延出してエンジンフードに当接するリップ部と、を有し、リップ部の圧縮量がシール部材の長手方向で略一定となるよう台座部の高さがエンジンフードに合わせて設定されていることを特徴とする外気導入ダクト。
【請求項2】
シール部材は、リップ部の肉厚が台座部の肉厚に比べて薄肉となるよう設定されていることを特徴とする請求項1に記載の外気導入ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−8302(P2007−8302A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191052(P2005−191052)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000151209)株式会社マーレ フィルターシステムズ (159)
【Fターム(参考)】