説明

外用組成物

【課題】皮膚外用剤や頭皮頭髪外用剤において優れた薬効を有するアデノシンを、低温状態下であっても経時的安定性が担保された状態とする手段を提供すること。
【解決手段】下記(1)〜(3)の特徴を有する外用組成物を提供することにより、上記の課題を解決することが可能であることを見出した。当該外用組成物を、頭皮頭髪用途に用いることは好適な態様の一つである。
(1)アデノシンを組成物全体の1.0〜2.0質量%含有する。
(2)保湿剤を組成物全体の10.0〜20.0質量%含有し、当該保湿剤中における糖系保湿剤の含有量が保湿剤全体の20.0〜100質量%である。
(3)低級アルコールを組成物全体の35.0〜65.0質量%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた育毛効果や血行促進効果を有するアデノシンの低温下における安定性を向上させた外用組成物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
アデノシンは、優れた育毛効果や血行促進効果を、頭皮頭髪や、肌上において発揮する成分として、育毛料や皮膚外用剤等への配合が行われている(特許文献1〜9)。しかしながら、アデノシンは水やアルコールへの溶解性に問題があり、また溶解性に温度依存性が強く認められ、高温や室温で溶解しても低温では過飽和状態になってしまい、時間が経つと析出・沈殿が認められる。よって、現状において製品レベルでの実用的なアデノシンの配合量は、せいぜい製品の0.8質量%程度であり、これを超えるレベルでのアデノシンの配合手段が求められている。なお、下記特許文献1〜9には、アデノシンを組成物の1%以上配合した例も開示されているが、いずれも常温(25℃程度)での配合であり、低温(5〜−20℃)下においてアデノシンを同1%以上配合した例はない。
【0003】
なお、アデノシンのリン酸塩等のアデノシンを塩の形態とすることで、比較的大量の配合自体は可能であるが(例えば、特許文献4)、アデノシンの塩では、毛乳頭細胞等に存在するアデノシン受容体への直接的な作用が低下するために、アデノシンに本来的に期待する、その配合量に見合った薬理効果を発揮することが困難となる。また、本願の出願人の出願でアデノシンを10%配合した例(特許文献7の実施例2)も開示されているが、これは短時間でのみアデノシンの溶解状態が維持されるものであり、経時的な使用に適したものではない。当該特許文献7の実施例の試験薬剤は、養毛試験期間中は繰り返し調製している。
【特許文献1】特許第2937446号公報
【特許文献2】特許第3798927号公報
【特許文献3】特開2001−288048号公報
【特許文献4】特開2001−288045号公報
【特許文献5】特開2001−288042号公報
【特許文献6】特開2001−288043号公報
【特許文献7】特開2001−288046号公報
【特許文献8】特開2001−288047号公報
【特許文献9】特開2004−143184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決すべき課題は、上述のように優れた効能を有するアデノシンを、低温状態下であっても経時的安定性が担保された状態とする手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題の解決に向けて鋭意検討を行った結果、アデノシンと、糖系保湿剤を一定割合以上とした保湿剤と、低級アルコールとを、特定質量範囲にて共存させることにより、組成物に対して1〜2%という高濃度でアデノシンの配合を行っても、低温状態下における経時的な安定性が担保されることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(3)の特徴を有する外用組成物(以下、本組成物ともいう)を提供する発明である。
(1)アデノシンを組成物全体の1.0〜2.0質量%含有する。
(2)保湿剤を組成物全体の10.0〜20.0質量%を含有し、当該保湿剤中における糖系保湿剤の含有量が保湿剤全体の25.0〜100質量%である。
(3)低級アルコールを組成物全体の35.0〜65.0質量%含有する。
【0007】
本組成物は、アデノシンを配合して、その効能を肌上又は頭皮頭髪において活用することが可能な目的又は形態の外用組成物として用いることが可能である。具体的には、アデノシンの優れた育毛効果による頭皮頭髪用組成物(典型的には育毛料)や、同じく優れた血行促進効果を発揮し得る皮膚外用剤等が挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、外用組成物においてアデノシンを高濃度配合しつつ(組成物全体の1.0〜2.0質量%)、低温状態下でも長期保存が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[本組成物の配合成分]
本組成物の必須成分の一つは、効能成分として配合するアデノシンである。アデノシンは、リボヌクレオシドの一つで塩基部分にプリン誘導体であるアデニンを含むものである。
【0010】
本組成物に配合するアデノシンは、試薬として市販されているものを使用することもできる。本組成物におけるアデノシンの配合量は、組成物全体の1.0〜2.0質量%である。同1.0質量%未満の配合も可能であるが、他の組成でも本組成物と同等の低温保存性を発揮させることも可能であり、本組成物の製剤上の利点が十分に顕れない。また、同2.0質量%を超えると、低温でのアデノシンの析出を十分に抑制することが困難となる傾向がある。
【0011】
本組成物には、1種以上の保湿剤が組成物全体10.0〜20.0質量%、好適には10.0〜15.0%の範囲で配合され、かつ、当該保湿剤中における糖系保湿剤の含有量は保湿剤全体の25.0〜100質量%、好適には25.0〜50.0%である。保湿剤の配合量が組成物全体の10.0質量%未満では、アデノシンの溶解性が十分に向上せず、低温でのアデノシンの析出が認められる傾向がある。同20.0質量%を超えて配合すると、本組成物使用乾燥後のべたつきが顕著になり、使用性に問題が生じる傾向が認められる。
【0012】
本組成物に配合する糖系保湿剤は1種以上であり、単糖類、オリゴ糖類、多糖類のいずれであってもよく、例えば、グリセリン、ジグリセリン、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、テトリット、ペンチット、へキシット、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、ヒアルロン酸、ポリオキシエチレンメチルグルコシド等が挙げられる。また、糖系保湿剤以外の保湿剤としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ジメチルエーテル等、従来から外用組成物に保湿剤として配合されているものを適宜選択することができる。
【0013】
本組成物において好適な保湿剤の組み合わせの例として、糖系保湿剤以外の保湿剤であるジプロピレングリコール、並びに、糖系保湿剤であるソルビトール、マルチトール、及び、ポリオキシエチレンメチルグルコシド等から選ばれる1種以上の組み合わせを挙げることができる。この組み合わせにおいては、ジプロピレングリコールが保湿剤全体の0〜75.0質量%であることが好適であり、特に好適には同50.0〜75.0%である。このような組み合わせの保湿剤を本組成物に配合することは、アデノシンの基剤への溶解性を向上させ、低温でのアデノシンの析出を抑制する効果が高くなる。これら保湿剤の市販品としては、ジプロピレングリコール(旭電化工業株式会社製)、ソルビトールF(日研化学社製)、マルビット(林原生物化学研究所製)、グルカムE−10(アマコール社製)等が挙げられる。
【0014】
本組成物に配合する低級アルコールは、エタノール、メタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール等が挙げられるが、安全性や実用性等の面からエタノールを用いることが好適である。市販品としては一般アルコール95度合成(日本アルコール販売株式会社)等が挙げられる。本組成物におけるエタノール等の低級アルコールの配合量は、組成物全体の35.0〜65.0質量%であり、好適には同40.0〜60.0質量%である。この配合量が組成物全体の35.0質量%未満ではアデノシンの低温での析出が認められ、同65.0質量%を超えて配合すると、アデノシンの溶解性が低下する。なお、本明細書及び特許請求の範囲における低級アルコールの配合量は、100%アルコール換算として表示する。
【0015】
本組成物には、さらに低温安定性を向上させる目的で、カチオン性高分子を1種以上配合することができる。カチオン性高分子は、従来から外用組成物にカチオン性高分子として配合されているものを適宜選択することができる。例としては、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩液、塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル〕グァーガム、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2−ヒドロキシー3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体、塩化O−(2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル)ローカストビーンガム、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムでんぷん、ビニルピロリドン・メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル・アクリル酸ステアリル・ジアクリル酸トリプロピレングリコール共重合体等が挙げられる。カチオン性高分子の本組成物における配合量は、カチオン性高分子の種類等によって適宜選択することが可能であり、組成物全体の0.001〜5.0質量%配合することが好ましい。カチオン性高分子の配合量が、組成物全体の0.001質量%未満では、カチオン性高分子を配合したことによるアデノシンの低温安定性のさらなる向上効果が十分でない傾向があり、同5.0質量%を超えて配合すると、乾燥時のべたつきや皮膜感が著しくなり、使用性に問題を生じる傾向がある。
【0016】
カチオン性ポリマーの市販品としては、例えば、CGポリマー(大阪有機化学工業株式会社製)、PDMポリマー(大阪有機化学工業株式会社製)、ガフコート755−S(日本精化社製)、ポリマーJR−400(ユニオン・カーバイド日本株式会社製)、ラボールガムCG−M(大日本製薬株式会社)、Lipidure C(日本油脂株式会社製)等が挙げられる。
【0017】
本組成物には、有機酸を1種以上配合することにより、アデノシンの溶解性をさらに向上させることができる。有機酸の例としては、従来から外用組成物に有機酸として配合されているものを適宜選択することが可能であり、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、グルタミン酸、ピロリドンカルボン酸、蟻酸、酢酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、コハク酸、ベンゼンスルホン等が挙げられる。有機酸の本組成物における配合量は、組成物全体の0.0001〜1.0質量%の範囲で配合することが好ましい。同配合量が0.0001質量%未満では、有機酸を配合したころによるアデノシンの溶解性の向上効果が十分に発揮されず、1.0質量%を超えて配合すると、使用時のべたつきや、頭皮への刺激が著しくなる傾向が認められる。
【0018】
有機酸の市販品としては、例えば、DL-リンゴ酸フソウ S(扶桑化学工業株式会社製)、琥珀酸(武田キリン食品株式会社製)、乳酸一級(第一製薬株式会社製)、化粧品用L−グルタミン酸(味の素株式会社)等が挙げられる。
【0019】
[本組成物の形態]
上述したように、本組成物の主要な形態として、アデノシンの育毛効果を活用した、育毛料に代表される頭皮頭髪用組成物と、同血行促進効果を活用した皮膚外用剤が挙げられる。
【0020】
(1)頭皮頭髪用組成物(以下、本頭皮頭髪用組成物ともいう)
一般に、脱毛の原因としては、毛包や皮脂腺等の器官における男性ホルモンの活性化、毛乳頭や毛包への血流量の低下、皮脂の分泌過剰、過酸化物の生成等による頭皮の異常、栄養不良等が考えられている。
【0021】
このため、従来の育毛料には、これらの原因を取り除き、又は、軽減する作用を持つ成分が一般に配合されている。その中でも、アデノシンには優れた血行促進効果が認められ、この血行促進効果と相まって、優れた脱毛防止作用や発毛促進作用等の育毛作用が認められている。現在、アデノシンは、育毛料等の頭皮頭髪用組成物に積極的に配合されている。
【0022】
本組成物を頭皮頭髪用組成物とすることにより、組成物全体の1.0〜2.0質量%という高濃度のアデノシンを含有させることにより、その優れた血行促進効果により、頭皮における血行を促進させ、脱毛防止作用、発毛促進作用等を十分に発揮し、かつ、低温における経時的安定性に優れる頭皮頭髪用組成物を得ることができる。
【0023】
なお、本発明において「育毛」とは、脱毛防止作用,発毛促進作用等を包含する概念で使用される。
【0024】
本頭皮頭髪用組成物には、一般的に頭皮頭髪用組成物に配合され得る育毛成分を、本発明による低温安定効果とアデノシンによる効能を明らかに損なわない範囲で配合することができる。
【0025】
例えば、抗菌剤として、ヒノキチオール、ヘキサクロロフェン、ベンザルコニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、ウンデシレン酸、トリクロロカルバニリド、ビチオノール等を配合することができる。
【0026】
また、薬剤成分として、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、ビタミンE又はその誘導体、例えばビタミンEアセテート、センブリエキス、塩化カルプロニウム、アセチルコリン誘導体等の血管拡張剤;セファランチン等の皮膚機能亢進剤;グリチルレチン酸又はその誘導体、紫根エキス等の消炎剤;エストラジオール、エストロン等の女性ホルモン剤;セリン、メチオニン、アルギニン等のアミノ酸類;ビタミンA、ビタミンB 1 、ビタミンB 6 、ビオチン、パントテン酸又はその誘導体等のビタミン類;アデニン、シトシン、チミン、グアニン等の核酸等を配合することができる。
【0027】
さらに、必要に応じて、サリチル酸、亜鉛又はその誘導体、乳酸アルキルエステル等の薬剤、メントール等の清涼剤を配合することができる。
【0028】
なお、本頭皮頭髪用組成物には、上述した諸成分の他に、本発明による低温安定効果とアデノシンによる効能を明らかに損なわない範囲で、通常、外用組成物に配合され得る他の成分を、例えば、油分、界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、色素、水等の溶媒、の中から必要に応じて適宜配合することができる。
【0029】
本頭皮頭髪用組成物は、目的とする剤型に応じて常法により製造することができる。その採り得る剤型は任意であり、例えば、液状、乳液、軟膏、クリーム、ゲル、エアゾール等、外用に適用可能な剤型のものであればいずれでもよい。また、その製品形態も任意であり、例えば、トニック、スカルプトリートメント、スカルプローションの形態で用いられ得る。
【0030】
(2)皮膚外用剤
上記の頭皮頭髪用組成物の他に、本組成物を皮膚外用剤として用いることができる。すなわち、その優れた血行促進作用が、アデノシンの高濃度配合により、肌上において十分に発揮され、かつ、低温安定性が向上した皮膚外用剤が提供される。
【0031】
当該皮膚外用剤には、本発明による低温安定効果とアデノシンによる効能を明らかに損なわない範囲で、一般的に外用組成物に配合され得る他の成分を必要に応じて配合することができる。例えば、上述した抗菌剤、薬剤成分、清涼剤、油分、界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、色素、水等の溶媒、の中から必要に応じて適宜配合することができる。
【0032】
当該皮膚外用剤は、目的とする剤型に応じて常法により製造することができる。その採り得る剤型は任意であり、例えば、液状、乳液、軟膏、クリーム、ゲル、エアゾール等、外用に適用可能な剤型のものであればいずれでもよい。また、その製品形態も任意である。
【実施例】
【0033】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲が、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、配合量は、配合対象に対する質量%であり、アデノシン類については、固形分量として表示している。
【0034】
〔実施例1〜17、比較例1〜11〕
表1〜表5に示す処方で、下記の製造方法に従い育毛料を調製し、さらに、下記の試験により、これらの頭皮頭髪用ローションのアデノシン溶解性(25℃)及び0℃での低温安定性を検討した。その試験結果を併せて表1〜表5に示す。
【0035】
〔製造方法〕
95%エタノールに、保湿剤、及び香料を溶解させた(エタノール部)。次に、精製水に、有機酸及び色素、カチオン性高分子を溶解させ、これを、前記エタノール部に加えた後、アデノシンを添加し、攪拌することにより、透明液状のローションを得た。ここまでは、25℃下にて行った。なお、アデノシンを溶かすことができなかった比較例については、液を加温して、一旦溶解させた。
【0036】
[試験方法と評価基準]
上記の製造工程は、常温(25℃下)にて行われ、その際、アデノシンが完全に溶解したものについては「○」として評価し、一部のアデノシンが溶解せずに残り、完全溶解には再加熱が必要であったものについては「△」として評価し、ほとんどのアデノシンが溶解せずに、完全溶解には再加温が必要であったものについては「×」として評価した。
【0037】
また、このようにしてアデノシンを完全溶解させた試験品を蓋付きのバイアルに封入して、0℃下で1ヶ月静置して、1ヶ月後のアデノシンの結晶の析出について、試験開始時と同様に全く変化無くアデノシンが溶解していたものを「○」として評価し、わずかにアデノシンの結晶が析出したものを「△」として評価し、アデノシンの結晶の析出が一見して判別可能であるものを「×」として評価した。また溶解時間が短く、溶解性が向上したものに関しては「◎」として評価した。これらの評価結果についても、表1〜表5にて示した。
【0038】
【表1】

【0039】
表1の結果より、アルコール45〜65%の範囲でアデノシン1.6%を溶解でき、低温の経時安定性も良好であった。
【0040】
【表2】

【0041】
表2の結果より、乳酸、リンゴ酸、クエン酸のような有機酸を配合することで、アデノシン1.7%を容易に溶解することが可能であり、低温の経時安定性も良好であることが明らかになった。またリン酸のような無機酸を加えると低温安定性はむしろ悪くなる。
【0042】
【表3】

【0043】
表3の結果より、ジプロピレングリコールなどのポリオール系の保湿剤ではアデノシンの溶解性を上げることはできず、ソルビトールやマルチトールといった糖系保湿剤と組み合わせることで、アデノシン1.6%を溶解でき、低温の経時安定性も良好であった。
【0044】
【表4】

【0045】
表4の結果より、総保湿剤量は10%〜20%の範囲ではアデノシンを十分に溶かすことが出来、低温での析出も見られなかった。
【0046】
【表5】

【0047】
表5の結果より、カチオン性高分子を配合し、ソルビトールやジプロピレングリコールといった糖系保湿剤と組み合わせることで、アデノシン2%を溶解でき、低温の経時安定性も良好であった。
【0048】
以下、本発明の処方例を実施例として記載する。これらの実施例において、アデノシンは、低温でも長期間安定して溶解していた。
【0049】
〔実施例23〕 育毛料
配合成分 配合量(質量%)
エタノール 60.0
ジプロピレングリコール 8.0
マビット 4.0
クエン酸 0.05
クエン酸ナトリウム 0.1
メントール 0.3
ビタミンEアセテート 0.3
アデノシン 2.0
PDMポリマー(大阪有機化学工業株式会社製) 1.2
精製水 残 余
<製造方法>
エタノールに、香料、薬剤を溶解させた(エタノール部)。次に、精製水に、保湿剤、有機酸及びカチオン性高分子を溶解させ、これを、前記エタノール部に加えた後、アデノシンを添加し、攪拌することにより、透明液状の育毛料を得た。
【0050】
〔実施例24〕 皮膚外用剤
配合成分 配合量(質量%)
ブチレングリコール 15.0
ソルビトール 5.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
エタノール 35.0
流動パラフィン 2.0
カルボマー 0.4
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.1
アデノシン 1.4
グルタミン酸 0.01
ポリマーJR−400 1.0
(ユニオン・カーバイド日本株式会社製)
香料 適 量
精製水 残 余
<製造方法>
カルボマーを精製水に溶解させ、活性剤・精製水・油分を用い作った乳化パーツを添加し、攪拌した。これに香料を溶かしたエタノールと精製水を50℃まで加温しアデノシンを溶解させたものを添加し、最後にカルボマーを中和して増粘させ、皮膚外用剤を得た。
【0051】
〔実施例25〕 ローション
配合成分 配合量(質量%)
ジプロピレングリコール 7.5
マルチトール 2.5
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0
エタノール 40.0
アデノシン 1.6
CGポリマー(大阪有機化学工業株式会社製) 0.1
乳酸 0.02
乳酸ナトリウム 0.12
香料 適 量
精製水 残 余
<製造方法>
エタノールに、香料を溶解させた(エタノール部)。次に、精製水に、保湿剤、有機酸及びカチオン性高分子、ヒドロキシプロピルセルロースを溶解させ、これを、前記エタノール部に加えた後、アデノシンを添加し、攪拌することにより、ややとろみのある透明液状のローションを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)の特徴を有する外用組成物。
(1)アデノシンを組成物全体の1.0〜2.0質量%含有する。
(2)保湿剤を組成物全体の10.0〜20.0質量%含有し、当該保湿剤中における糖系保湿剤の含有量が保湿剤全体の20.0〜100質量%である。
(3)低級アルコールを組成物全体の35.0〜65.0質量%含有する。
【請求項2】
前記外用組成物において、(2)における糖系保湿剤が、グリセリン、ジグリセリン、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、テトリット、ペンチット、へキシット、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、ヒアルロン酸、及び、ポリオキシエチレンメチルグルコシドからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1記載の外用組成物。
【請求項3】
前記外用組成物において、カチオン性高分子を含有することを特徴とする、請求項1又は2記載の外用組成物。
【請求項4】
前記外用組成物において、有機酸を含有することを特徴とする外用組成物。
【請求項5】
前記外用組成物において、有機酸が、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、グルタミン酸、ピロリドンカルボン酸、蟻酸、酢酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、コハク酸、及び、ベンゼンスルホン酸からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項4記載の外用組成物。
【請求項6】
頭皮頭髪用外用組成物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項7】
頭皮頭髪用組成物が育毛料であることを特徴とする、請求項6記載の外用組成物。

【公開番号】特開2008−247752(P2008−247752A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87726(P2007−87726)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】