説明

外観検査装置及び外観検査方法

【課題】 欠陥検出の際に使用する撮像画像を用いて、従来の欠陥分類方法よりも高い精度で、検出された欠陥の分類を行うことが可能な外観検査装置及び外観検査方法を提供する。
【解決手段】 外観検査装置を、検査試料3の表面を撮像する撮像装置4と、その撮像画像から検査試料3の表面に存在する欠陥を検出する欠陥検出部8と、欠陥検出部により検出された欠陥を第1の系の欠陥分類に従って分類分けする欠陥分類部9と、検査試料3について、欠陥分類部9により前記第1の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数に基づき、所定の近似式に従って、第2の系の欠陥分類に従う各類の欠陥数を算出する欠陥数算出部10を備えて構成し、上記所定の近似式を、所与の基準試料において検出された既知の欠陥について、欠陥分類部9による第1の系の欠陥分類に従う分類分けの結果と、所定の観察手段による第2の系の欠陥分類に従う分類分けの結果と、から導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査試料の表面を撮像して得た撮像画像からこの検査試料上に生じた欠陥に分類分けを行う外観検査装置及び外観検査方法に関し、特に、半導体製造工程で半導体ウエハ上に形成した半導体回路パターンや、液晶表示パネルの欠陥分類を行う外観検査装置及び外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
形成したパターンを撮像して画像データを生成し、画像データを解析してパターンの欠陥の有無などを検査することが広く行われている。特に、半導体製造の分野では、フォトマスクを検査するフォトマスク検査装置や半導体ウエハや、液晶表示パネルの上に形成したパターンを検査する外観検査装置が広く使用されている。以下本明細書では、半導体製造工程で半導体ウエハ上に形成した半導体回路パターンの欠陥を検出する外観検査装置(インスペクションマシン)を例として説明を行なうが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0003】
また、一般の外観検査装置は、対象表面を垂直方向から照明してその反射光の像を捕らえる明視野検査装置であるが、照明光を直接捕らえない暗視野検査装置も使用されている。暗視野検査装置の場合、対象表面を斜め方向又は垂直方向から照明して正反射は検出しないようにセンサを配置し、照明光の照射位置を順次走査することにより対象表面の暗視野像を得る。従って、暗視野装置ではイメージセンサを使用しない場合もあるが、これも当然発明の対象である。このように、試料の表面を撮像して得た撮像画像から試料の外観を検査する外観検査装置及び外観検査方法であれば、どのような装置及び方法にも適用可能である。
【0004】
図1に、本特許出願の出願人が、特開2004−177397号公報(下記特許文献1)にて提案する外観検査装置と同様の、従来の外観検査装置についてそのブロック図を示す。図示するように、2次元又は3次元方向に自在に移動可能なステージ1の上面に試料台(チャックステージ)2が設けられている。この試料台の上に、検査対象となる半導体ウエハ3を載置して固定する。ステージの上部には1次元又は2次元のCCDカメラなどを用いて構成される撮像装置4が設けられており、撮像装置4は半導体ウエハ3上に形成されたパターンの画像信号を発生させる。
【0005】
図2に示すように、半導体ウエハ3上には、複数のダイ3Aが、X方向とY方向にそれぞれ繰返し、マトリクス状に配列されている。各ダイには同じパターンが形成されるので、隣接するダイの対応する部分の画像を比較するのが一般的である。両方のダイに欠陥がなければグレイレベル差は閾値より小さいが、一方に欠陥があればグレイレベル差は閾値より大きくなる(シングルディテクション)。これではどちらのダイに欠陥があるか分からないので、更に異なる側に隣接するダイとの比較を行ない、同じ部分のグレイレベル差が閾値より大きくなればそのダイに欠陥があることが分かる(ダブルディテクション)。
【0006】
撮像装置4は1次元のCCDカメラを備え、カメラが半導体ウエハ3に対してX方向又はY方向に一定速度で相対的に移動(スキャン)するようにステージ1を移動する。画像信号は多値のディジタル信号(グレイレベル信号)に変換された後、差分検出部6に入力されると共に、信号記憶部5に記憶される。スキャンにより隣のダイのグレイレベル信号が生成されると、それに同期して信号記憶部5に記憶された前のダイのグレイレベル信号を読み出し、差分検出部6に入力する。実際には微小な位置合わせ処理などが行われるがここでは詳しい説明は省略する。
【0007】
差分検出部6には隣接する2個のダイのグレイレベル信号が入力され、2つのグレイレベル信号の差(グレイレベル差)が演算されて検出閾値計算部7と欠陥検出部8に出力される。ここでは、差分検出部6は、グレイレベル差の絶対値を算出し、それをグレイレベル差として出力する。検出閾値計算部7は、グレイレベル差から検出閾値を決定し、欠陥検出部8に出力する。欠陥検出部8は、グレイレベル差を決定された閾値と比較し、欠陥かどうかを判定する。
【0008】
半導体パターンは、メモリセル部、論理回路部、配線部、アナログ回路部などのパターンの種類に応じてノイズレベルが異なるのが一般的である。半導体パターンの部分と種類の対応関係は設計データにより分かる。そこで、例えば、検出閾値計算部7は部分毎に、その部分のグレイレベル差の分布に応じて検出閾値を自動的に決定し、欠陥検出部8は部分毎に決定された閾値で判定を行なう。
【0009】
さらに、外観検査装置には、欠陥検出部8により検出された各欠陥が、それぞれどのタイプの欠陥であるか自動的分類分けを行う欠陥分類部9を備えるものがある。欠陥分類部9は、撮像画像に現れた欠陥の外観的特徴に基づいて、検出された欠陥のタイプを特定して所定の欠陥分類に従って分類分けを行う。このような欠陥情報の分類分けは、欠陥検出部8により検出された欠陥のタイプを特定し、欠陥の発生原因を究明して欠陥の原因となった工程を特定するために利用される。
【0010】
【特許文献1】特開2004−177397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述のように欠陥検出の際に使用する撮像画像を欠陥分類にも用いる場合には、欠陥分類に要する撮像画像の解像度は、一般に欠陥検出に必要な撮像解像度よりも高いため、撮像装置4が欠陥検出に必要な解像度で撮像画像を取得すると、欠陥分類を十分な精度で行うことはできない。一方で、十分な精度で欠陥分類を行うためにSEM(走査電子顕微鏡)等により高解像度の画像を使用すると、欠陥検出を行う検査時間が必要以上に長くなるという問題がある。
【0012】
上記問題点に鑑み、本発明は、欠陥検出の際に使用する撮像画像を用いて、従来の欠陥分類方法よりも高い精度で、検出された欠陥の分類を行うことが可能な外観検査装置及び外観検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、検査試料表面を撮像して得られる撮像画像から検査試料表面に存在する欠陥を検出してこれら欠陥を分類分けするのに際して、予め、所与の基準試料において検出された既知の欠陥を、所定の欠陥分類手段及び所定の観察手段によって、それぞれ第1の系の欠陥分類及び第2の系の欠陥分類に従って分類分けし、第1及び第2の系の欠陥分類に従う各々の分類分けの結果に基づいて、所定の欠陥分類手段によって第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数から、所定の観察手段によって第2の欠陥分類に従い分類分けされる各類の欠陥数を、算出する近似式を導出する。
そして、検査試料について、所定の欠陥分類手段により第1の系の欠陥分類への分類分けを行った後、この第1の系の欠陥分類に分類分けされた各類の欠陥数に基づき、上記近似式に従って、第2の系の欠陥分類に従う各類の欠陥数を算出する。
【0014】
上記近似式は、例えば、上記基準試料について、上記所定の欠陥分類手段により第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥において、上記所定の観察手段により前記第2の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥が占めるそれぞれ割合に応じて、第1の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数から、第2の系の欠陥分類に従う各類の欠陥数を近似するものであってよい。
【0015】
または、上記近似式は、例えば、第1の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数の割合から、第2の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数の割合を近似するものであってもよい。このような近似式は、複数の基準試料のそれぞれについて、上記所定の欠陥分類手段により第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数の割合と、上記所定の観察手段によって第2の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数の割合と、の間の関係に基づき導出することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、欠陥検出に使用する撮像画像を用いる従来の欠陥分類手段による欠陥分類の結果に基づいて、他の観察手段(例えば高い解像度の撮像装置であるSEMを用いたSEM観察など)による欠陥分類の結果を統計的に近似することが可能となる。これにより従来の欠陥検出に使用する撮像画像を用いて行う欠陥分類に比べて高い精度で欠陥分類を行うことが可能となる。
また、本発明によれば、高い精度の欠陥分類を行うために、欠陥検出に使用する撮像画像の解像度を高める必要がないため、欠陥検査のスループットへ悪影響を及ぼすことを防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図3は、本発明の第1実施例の半導体パターン用外観検査装置の概略構成を示すブロック図である。図3に示す半導体パターン用外観検査装置は、図1を参照して説明した半導体パターン用外観検査装置と同様の構成を有しており、同一又は類似する構成要素については同一の参照番号を付し、また、同じ構成要素については詳しい説明を省略する。
【0018】
図示するように、2次元又は3次元方向に移動可能なステージ1の上面には試料台2が設けられ、この試料台2の上に検査試料となる半導体ウエハ3を載置して固定する。ステージの上部にはCCDカメラなどを用いて構成される撮像装置4が設けられており、撮像装置4は半導体ウエハ3上に形成されたパターンの撮像画像の画像信号を発生させる。
撮像装置4は、例えばTDI等の1次元のCCDカメラを備え、カメラが半導体ウエハ3に対してX方向又はY方向に一定速度で相対的に移動(スキャン)するようにステージ1を移動する。撮像画像の画像信号は多値のディジタル信号(グレイレベル信号)に変換された後、差分検出部6に入力されると共に、信号記憶部5に記憶される。スキャンにより隣のダイのグレイレベル信号が生成されると、それに同期して信号記憶部5に記憶された前のダイのグレイレベル信号を読み出し、差分検出部6に入力する。
【0019】
差分検出部6には隣接する2個のダイのグレイレベル信号が入力され、2つのグレイレベル信号の差(グレイレベル差)が演算されて検出閾値計算部7と欠陥検出部8に出力される。検出閾値計算部7は、グレイレベル差から検出閾値を決定し欠陥検出部8に出力する。欠陥検出部8は、グレイレベル差を決定された閾値と比較し欠陥かどうかを判定して欠陥を検出し、検出した欠陥毎について所定の欠陥情報を出力する。
この欠陥情報には、当該欠陥の識別子、位置情報や、撮像装置4による撮像画像に現れた欠陥の外観的特徴に関する情報(例えば、欠陥と判定された画素の明度や欠陥の大きさ等)が含まれる。
【0020】
欠陥分類部9は、欠陥情報に含まれる当該欠陥に関して上記撮像画像に現れた外観的特徴に基づいて、検出された欠陥のタイプを特定して所定の欠陥分類(第1の系の欠陥分類)に従って分類分けを行う。
ここで第1の系の欠陥分類は、類1〜類n(nは自然数)のn個の類から成っており、欠陥分類部9は、例えば各欠陥の撮像画像に現れる外観的特徴に対応して、欠陥検出部8が検出した欠陥を各類1〜nに分類分けする。以下の説明のため、第1の系の欠陥分類では、例えば、類1には「明度が高く大きい」欠陥が、類2には「明度が高く大きさが中程度の」欠陥が、類3には「明度が高く小さい」欠陥が、類4には「明度が中程度で大きい」欠陥が、…などのように分類分けがなされるものとする。
【0021】
1つ又は複数のウエハ3について欠陥検出部8による欠陥検出が完了すると、欠陥分類部9は、そのウエハ3上で検出され、上記第1の系の欠陥分類による分類が可能な全ての欠陥について、第1の系の欠陥分類に従って各類1〜nに分類分けされた各類毎の欠陥数を、以下説明する欠陥数算出部10に出力する。
【0022】
さらに、半導体パターン用外観検査装置は、欠陥分類部9により第1の系の欠陥分類に従って各類1〜nに分類分けされた各類毎の欠陥数に基づいて、後述する近似式に従い、第2の系の欠陥分類に従って分類分けされる各類毎の欠陥数を算出する欠陥数算出部10を備える。
ここで第2の系の欠陥分類は、類1〜類m(mは自然数)のm個の類から成る欠陥分類であり、例えば各類1〜mのそれぞれに係る欠陥種類は、ユーザにより任意に定義された欠陥分類としてよい。以下の説明のため、第2の系の欠陥分類では、例えば、類1には「配線ショートを生じる」欠陥が、類2には「パターン欠損による」欠陥が、類3には「層間に介在するパーティクルによる」欠陥が、…などのように分類分けがなされるものとする。
【0023】
欠陥数算出部10は、次式(1)に示すように、所定の近似式f1、f2、…、fmに従って、第1の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類1〜n毎の欠陥数に基づいて、第2の系の欠陥分類に従って分類分けされる各類1〜m毎の欠陥数を算出する。
【0024】
【数1】

【0025】
ここで、N1、N2…Nnは、それぞれ第1の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類1〜n毎の欠陥数を示し、A1、A2…Amは、それぞれ第2の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類1〜m毎の欠陥数を示す。
【0026】
さらに、半導体パターン用外観検査装置は、欠陥数算出部10による第2の系の欠陥分類に従う各類の欠陥数算出の前に、予め上記の近似式f1、f2、…、fmを導出する近似式導出部11と、導出された近似式を記憶する近似式記憶部12とを備える。
近似式導出部11は、既に欠陥が検出され、かつSEM観察などの所定の観察手段によって、それら欠陥について第2の系の欠陥分類に従い分類分けがなされているウエハ3(基準試料)を使用して、上記近似式を導出する。
そして、近似式導出部11は、このウエハ3(基準試料)において検出された既知の欠陥についての、所定の観察手段(上記例ではSEM観察)による第2の系の欠陥分類に従う分類分けの結果と、欠陥分類部9による前記第1の系の欠陥分類に従う分類分けの結果と、から上記近似式を導出する。
【0027】
そして、近似式導出部11により導出された近似式f1、f2、…、fmは、近似式記憶部12に記憶され、欠陥数算出部10は、第2の系の欠陥分類に従って分類分けされる各類1〜m毎の欠陥数を算出する際に、この近似式を近似式記憶部12から読み出して使用する。
以下、図4に示すフローチャートを参照して、近似式導出部11による近似式f1、f2、…、fmの第1の例の導出方法と、かかる近似式に基づいて欠陥数算出部10により行われる第2の系の欠陥分類に従う各類の欠陥数の算出方法を詳説する。
【0028】
まず、ステップS1において、欠陥検出部8を用いて、所与の基準試料であるウエハ3上に存在する各欠陥を検出して、各欠陥の欠陥情報を取得する。
次に、ステップS2において、ステップS1で検出された各欠陥情報を欠陥分類部9によって上記第1の欠陥分類に従って分類分けする。
同様に、ステップS3において、ステップS1で検出された各欠陥情報を、SEM観察などの所定の観察手段によって上記第2の欠陥分類に従って分類分けする。
図3に示すように、これら欠陥分類部9によって分類分けされた欠陥情報と、所定の観察手段によって分類分けされた欠陥情報とは、近似式導出部11に入力される。
【0029】
再び図4に戻りステップS4において、近似式導出部11は、ステップS2で第1の欠陥分類に従って各類1〜nに分類分けされた欠陥に占める、ステップS3で第2の欠陥分類に従って各類1〜mに分類分けされた欠陥の割合Pij(i=1〜n、j=1〜m)を算出する。ここにPijは、第1の欠陥分類に従って第i番目の類に分類分けされた欠陥に占める、第2の欠陥分類に従って第j番目の類に分類分けされた欠陥に占める割合である。このとき、近似式導出部11は、ステップS2で第1の欠陥分類に従って分類分けされたそれぞれの欠陥が、ステップS3で第2の欠陥分類に従って分類分けされたそれぞれの欠陥のいずれに対応するかを、欠陥情報に含まれる各欠陥の識別子や位置情報に基づいて判断する。
【0030】
より具体的に記述すると、近似式導出部11は、ステップS2で第1の欠陥分類に従って第i番目の類に分類分けされた欠陥に占める、ステップS3で第2の欠陥分類に従って各類1〜mに分類分けされた欠陥の各割合Pi1〜Pimを、第1の欠陥分類に従って類1〜mに分類分けされた欠陥のそれぞれについて算出する。
そして、第1の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数N1〜Nnから、第2の系の欠陥分類に従う各類の欠陥数A1〜Amを近似する近似式f1〜fmを、次式(2)に示すように導出する。
【0031】
【数2】

【0032】
そして、近似式導出部11は、導出した近似式f1〜fm(または各割合Pij(i=1〜n、j=1〜m))を、近似式記憶部12に記憶する。
ステップS5において、欠陥検出部8を用いて、検査試料であるウエハ3上に存在する各欠陥を検出して、各欠陥の欠陥情報を取得する。また、ステップS6において、欠陥分類部9は、ステップS5で検出された各欠陥情報を第1の欠陥分類に従って分類分けし、第1の欠陥分類に従って各類1〜nに分類分けされたそれぞれの欠陥数N1〜Nnを欠陥数算出部10に出力する。
【0033】
ステップS7において、欠陥数算出部10は、近似式記憶部12に記憶された近似式f1〜fm(または各割合Pij(i=1〜n、j=1〜m))を読み出して、上式(2)に従って、第2の欠陥分類に従い各類1〜mに分類分けされるそれぞれの欠陥数A1〜Anを算出する。
【0034】
図5は、近似式導出部11による近似式の第2の例の導出方法と、かかる近似式に基づき欠陥数算出部10により行われる第2の系の欠陥分類に従う各類の欠陥数の算出方法を示すフローチャートであり、図6は、上記第2の例の導出方法の説明図である。
【0035】
まず、図4を参照して説明した上記第1の例の導出方法と同様に、ステップS1において、所与の基準試料であるウエハ3上に存在する各欠陥の欠陥情報を取得し、ステップS2において、この欠陥情報を欠陥分類部9によって上記第1の欠陥分類に従って分類分けし、ステップS3において、ステップS1で検出された各欠陥情報を、SEM観察などの所定の観察手段によって上記第2の欠陥分類に従って分類分けする。
そして、これら欠陥分類部9によって分類分けされた欠陥情報と、所定の観察手段によって分類分けされた欠陥情報とは、近似式導出部11に入力する。
これらステップS1〜S3を、複数の基準試料について繰り返し行う。
【0036】
ステップS11において、近似式導出部11は、ステップS2で第1の欠陥分類に従って各類1〜nに分類分けされた欠陥のそれぞれの欠陥数N1〜Nnが、全体の欠陥数(すなわちN=N1+N2+…+Nn)に占める割合を、各基準試料毎に別個に算出する。
近似式導出部11はまた、ステップS3で第2の欠陥分類に従って各類1〜mに分類分けされた欠陥のそれぞれの欠陥数A1〜Amが、全体の欠陥数(すなわちA=A1+A2+…+Am)に占める割合を、各基準試料毎に別個に算出する。
【0037】
次に近似式導出部11は、各基準試料のそれぞれについて算出された、第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類i(i=1…n)の欠陥数の割合Ni/Nと、第2の欠陥分類に従って分類分けされた各類j(j=1…n)の欠陥数の割合Aj/Aと、の間の関係に基づき、上記割合Ni/Nから上記割合Aj/Aを近似する近似式gijを算出する。この様子を図6に示す。
【0038】
図6の(A)は、各基準試料のそれぞれについて算出された、第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類i(i=1…n)の欠陥数の割合Ni/Nと、第2の欠陥分類に従って分類分けされた各類j(j=1…n)の欠陥数の割合Aj/Aと、との関係をプロットした図である。
近似式導出部11は、最少二乗法などの近似式を導出する既知の手法に基づき、図6の(B)の実線に示すような近似式Aj/A=gij(Ni/N)と、上記割合Ni/NとAj/Aとの間の相関係数rijを算出する。
【0039】
その後、近似式導出部11は、第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数の割合N1/N〜Nn/Nから、第2の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数A1〜Amを近似する近似式を、次式(3)に示すように導出する。
【0040】
【数3】

【0041】
そして、近似式導出部11は、導出した近似式(または定数N、各関数gijを定めるパラメータ、相関係数rij(i=1〜n、j=1〜m))を、近似式記憶部12に記憶する。
【0042】
そして図4を参照して説明した上記第1の例の導出方法と同様に、ステップS5において、検査試料であるウエハ3上に存在する各欠陥を検出して、各欠陥の欠陥情報を取得する。ステップS6において、欠陥分類部9は、この各欠陥情報を第1の欠陥分類に従って分類分けし、第1の欠陥分類に従って各類1〜nに分類分けされたそれぞれの欠陥数N1〜Nnを欠陥数算出部10に出力する。
【0043】
ステップS12において、欠陥数算出部10は、検査試料であるウエハ3について第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類i(i=1…n)の欠陥数の割合Ni/Nを求め、近似式記憶部12に記憶された近似式(3)(または上記定数N、各関数gijを定めるパラメータ、相関係数rij(i=1〜n、j=1〜m))を読み出す。
そして、割合Ni/Nに基づいて上式(3)に従って、第2の欠陥分類に従い各類1〜mに分類分けされるそれぞれの欠陥数A1〜Anを算出する。
【0044】
なお、上記の実施例では第2の系の欠陥分類は、第1の系の欠陥分類を成す各類と、異なる欠陥種別を示す類から成る例を示したが、第2の系の欠陥分類と第1の系の欠陥分類とを、同じ欠陥種別を示す類から成る欠陥分類としてもよい。すなわち例えば、第1及び第2の系の欠陥分類を、類1〜類m(mは自然数)のm個の類から成る欠陥分類として、各類1〜mのそれぞれに係る欠陥種類をユーザにより任意に定義された欠陥分類、例えば、類1には「配線ショートを生じる」欠陥が、類2には「パターン欠損による」欠陥が、類3には「層間に介在するパーティクルによる」欠陥が、…などのように分類分けがなされる欠陥分類としてもよい。
【0045】
また、第2の系の欠陥分類と第1の系の欠陥分類とを、その一部の類において互いに同じ欠陥種別を示す、他の類において相互に異なる欠陥種別を示す、類から成る欠陥分類としてもよい。
【0046】
図7は、近似式導出部11による近似式の第3の例の導出方法と、かかる近似式に基づき欠陥数算出部10により行われる第2の系の欠陥分類に従う各類の欠陥数の算出方法を示すフローチャートであり、図8は、上記第3の例の導出方法の説明図である。
【0047】
まず、図4を参照して説明した上記第1の例の導出方法と同様に、ステップS1において、所与の基準試料であるウエハ3上に存在する各欠陥の欠陥情報を取得し、ステップS2において、この欠陥情報を欠陥分類部9によって上記第1の欠陥分類に従って分類分けし、ステップS3において、ステップS1で検出された各欠陥情報を、SEM観察などの所定の観察手段によって上記第2の欠陥分類に従って分類分けする。
そして、これら欠陥分類部9によって分類分けされた欠陥情報と、所定の観察手段によって分類分けされた欠陥情報とは、近似式導出部11に入力する。
これらステップS1〜S3及びS21を、複数の基準試料について繰り返し行う。
【0048】
次にステップS21において、近似式導出部11は、近似式導出部11は、ステップS2で第1の欠陥分類に従って分類分けされたそれぞれの欠陥と、ステップS3で第2の欠陥分類に従って分類分けされたそれぞれの欠陥とを、両者の欠陥情報に含まれる各欠陥の識別子や位置情報に基づいて対応付ける。
そして、ステップS2で第1の欠陥分類に従って各類iそれぞれについて(i=1…n)、各分類iに分類分けされた欠陥の総数Niのうち、ステップS2で第1の欠陥分類により類iに分類分けされ、かつステップS3で第2の欠陥分類により各類jに分類分けされた欠陥がそれぞれ占める総数Bijの割合であるBij/Niを算出する(j=1…m)。
【0049】
次に近似式導出部11は、ステップS22において、各基準試料のそれぞれについて算出された、第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類i(i=1…n)の欠陥数の割合Ni/Nと、ステップS21において算出された割合Bij/Niと、の間の関係に基づき、上記割合Ni/Nから上記割合Bij/Niを近似する近似式hijを、各類i、jごとに導出する。この様子を図8に示す。
【0050】
図8の(A)は、各基準試料のそれぞれについて算出された、第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類iの欠陥数の割合Ni/Nと、ステップS21において算出された割合Bij/Niと、の関係をプロットした図である。近似式導出部11は、最少二乗法などの近似式を導出する既知の手法に基づき、図8の(B)の実線に示すような近似式Bij/Ni=hij(Ni/N)と、上記割合Ni/NとBij/Niとの間の相関係数rijを算出する。
その後、近似式導出部11は、近似式hijを次式(4)に示すように導出する。
【0051】
【数4】

【0052】
そして、近似式導出部11は、導出した近似式(または定数Sm、各関数hijを定めるパラメータ、相関係数rij(i=1〜n、j=1〜m))を、近似式記憶部12に記憶する。
【0053】
そして図4を参照して説明した上記第1の例の導出方法と同様に、ステップS5において、検査試料であるウエハ3上に存在する各欠陥を検出して、各欠陥の欠陥情報を取得する。ステップS6において、欠陥分類部9は、この各欠陥情報を第1の欠陥分類に従って分類分けし、第1の欠陥分類に従って各類1〜nに分類分けされたそれぞれの欠陥数N1〜Nnを欠陥数算出部10に出力する。
【0054】
ステップS23において、欠陥数算出部10は、検査試料であるウエハ3について第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類i(i=1…n)の欠陥数の割合Ni/Nを求める。また、近似式記憶部12に記憶された近似式(4)(または定数Sm、各関数hijを定めるパラメータ、相関係数rij(i=1〜n、j=1〜m))を読み出す。
そして、割合Ni/Nに基づいて上式(4)に従って、第2の欠陥分類に従い各類1〜mに分類分けされるそれぞれの欠陥数A1〜Anを算出する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、検査試料の表面を撮像して得た撮像画像からこの検査試料上に生じた欠陥に分類分けを行う外観検査装置及び外観検査方法に利用可能である。特に、半導体製造工程で半導体ウエハ上に形成した半導体回路パターンや、液晶表示パネルの欠陥分類を行う外観検査装置及び外観検査方法に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】従来の外観検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】半導体ウエハ上のダイの配列を示す図である。
【図3】本発明の実施例の半導体パターン用外観検査装置の全体構成図である。
【図4】図3に示す外観検査装置による欠陥数算出方法の第1例のフローチャートである。
【図5】図3に示す外観検査装置による欠陥数算出方法の第2例のフローチャートである。
【図6】図5に示す欠陥数算出方法の説明図である。
【図7】図3に示す外観検査装置による欠陥数算出方法の第3例のフローチャートである。
【図8】図7に示す欠陥数算出方法の説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ステージ
2 試料台
3 半導体ウエハ
3A ダイ
4 撮像装置
5 信号記憶部
8 欠陥検出部
9 欠陥分類部
10 欠陥数算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査試料表面を撮像する撮像手段と、該撮像手段による撮像画像から前記検査試料表面に存在する欠陥を検出する欠陥検出手段と、該欠陥検出手段により検出された前記欠陥を第1の系の欠陥分類に従って分類分けする欠陥分類手段と、を備える外観検査装置において、
前記検査試料について、前記欠陥分類手段により前記第1の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数に基づき、所定の近似式に従って、第2の系の欠陥分類に従う各類の欠陥数を算出する欠陥数算出手段を備え、
前記所定の近似式は、所与の基準試料において検出された既知の欠陥についての、前記欠陥分類手段による前記第1の系の欠陥分類に従う分類分けの結果と、所定の観察手段による前記第2の系の欠陥分類に従う分類分けの結果と、から予め導出された近似式である、
ことを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記近似式は、前記基準試料について、前記欠陥分類手段により前記第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥において、前記所定の観察手段により前記第2の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥が占めるそれぞれ割合に応じて、前記第1の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数から、前記第2の系の欠陥分類に従う各類の欠陥数を近似することを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記近似式は、
複数の前記基準試料のそれぞれについて、前記所定の欠陥分類手段により前記第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数の割合と、前記所定の観察手段によって前記第2の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数の割合と、の間の関係に基づき導出され、
前記第1の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数の割合から、前記第2の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数の割合を近似する、
ことを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記第2の系の欠陥分類を成す各類には、前記第1の系の欠陥分類を成す各類と異なる欠陥種別を示す類が含まれる請求項1〜3のいずれか一項に記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記第2の系の欠陥分類を成す各類には、前記第1の系の欠陥分類を成す各類と同じ欠陥種別を示す類が含まれる請求項1〜3のいずれか一項に記載の外観検査装置。
【請求項6】
検査試料表面を撮像して得られる撮像画像から前記検査試料表面に存在する欠陥を検出し、検出された前記欠陥を、さらに所定の欠陥分類手段により第1の系の欠陥分類への分類分けを行う外観検査方法において、
所与の基準試料において検出された既知の欠陥を、前記所定の欠陥分類手段及び所定の観察手段によって、それぞれ前記第1の系の欠陥分類及び第2の系の欠陥分類に従って分類分けし、
前記第1及び第2の系の欠陥分類に従う各々の前記分類分けの結果に基づいて、前記所定の欠陥分類手段によって第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数から、前記所定の観察手段によって第2の欠陥分類に従い分類分けされる各類の欠陥数を、算出する近似式を導出し、
前記検査試料について、前記所定の欠陥分類手段により前記第1の系の欠陥分類に分類分けされた各類の欠陥数に基づき、前記近似式に従って、第2の系の欠陥分類に従う各類の欠陥数を算出する、
ことを特徴とする外観検査方法。
【請求項7】
前記近似式は、前記基準試料について、前記所定の欠陥分類手段により前記第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥において、前記所定の観察手段により前記第2の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥が占めるそれぞれ割合に応じて、前記第1の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数から、前記第2の系の欠陥分類に従う各類の欠陥数を近似することを特徴とする請求項6に記載の外観検査方法。
【請求項8】
前記近似式は、
複数の前記基準試料のそれぞれについて、前記所定の欠陥分類手段により前記第1の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数の割合と、前記所定の観察手段によって前記第2の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数の割合と、の間の関係に基づき導出され、
前記第1の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数の割合から、前記第2の系の欠陥分類に従って分類分けされた各類の欠陥数の割合を近似する、
ことを特徴とする請求項6に記載の外観検査方法。
【請求項9】
前記第2の系の欠陥分類を成す各類には、前記第1の系の欠陥分類を成す各類と異なる欠陥種別を示す類が含まれる請求項6〜8のいずれか一項に記載の外観検査方法。
【請求項10】
前記第2の系の欠陥分類を成す各類には、前記第1の系の欠陥分類を成す各類と同じ欠陥種別を示す類が含まれる請求項6〜8のいずれか一項に記載の外観検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−308364(P2006−308364A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129525(P2005−129525)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】