説明

多官能性の、置換モノマー類、および、そのポリアリーレン組成物

半導体装置用のポリマー性誘電フィルムの形成に有用な化合物、ならびに、得られる硬化フィルムおよび装置であり、前記化合物は、i)3つ以上のジエノフィル基(A−官能性基)およびii)2つの共役炭素−炭素2重結合および脱離基Lを含む単一環構造(一括してB−官能性基という)を含む化合物であり、ここで、前記化合物の分子の1つのA−官能性基の1つは、付加環化反応条件下で第2の分子のB−官能性基と反応し、脱離基Lを脱離し、これによってポリマーを形成する能力があることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNISTによって与えられた共同契約(Cooperative Agreement)第70NANB8H4013号に基づき、アメリカ合衆国政府の支援により行われたものである。アメリカ合衆国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、少なくとも2つの異なる反応性官能性基を有する組成物、および、それらのモノマー類から製造される芳香族ポリマー類に関する。得られるポリマー類は、超小型電子機器(microelectronic device)類の低誘電率絶縁層の製造に有用である。
【背景技術】
【0003】
米国特許第5,965,679号(Godschalx et al.)に記載されているようなポリアリーレン樹脂類は、半導体装置類、特に集積回路類の絶縁フィルム類としての用途に適する低誘電率物質である。このようなポリアリーレン化合物は、2つ以上のシクロペンタジエノン基を有する多官能性化合物を、2つ以上の芳香族アセチレン基を有する多官能性化合物と反応させて製造され、ここで前記多官能性化合物の少なくとも一部は3つ以上の反応性基を有する。1つのシクロペンタジノン基と共に、2つの芳香族アセチレン基、特に3,4−ビス(3−フェニルエチニル)フェニル)−2,5−ジシクロペンタジエノン、および、3,4−ビス(4−(フェニルエチニル)フェニル)−2,5−ジシクロペンタジエノンを含む、特定の単一成分反応性モノマー類、および、これらのモノマー類より製造されるポリマー類もまた、前記文献に開示されている。典型的には、これらの物質は、溶媒溶液中でB−ステージ化(B-staged)され、続いて基材にスピンコーティングされた後、ホットプレート焼成段階を経て、その後に400〜450℃のオーブンで硬化(ガラス化)され、硬化を完了する。
【0004】
米国特許第6,359,091号には、Godschalx の反応物の比率を調節し、または、モノマー類もしくはGodschalx の一部ポリマー化された生成物に他の反応化学種を添加して、Godschalx et al.に教示されるポリマー類のモジュラスを調整することが望ましい場合がある旨教示されている。米国特許第6,172,128号は、フェニルアセチレン基を含む芳香族ポリマー類と反応して分枝または架橋ポリマー類を与えることが可能なシクロペンタジエノン基を含む、芳香族ポリマー類を開示する。米国特許第6,156,812号は、シクロペンタジエノン基とフェニルアセチレン基の両方をポリマー主鎖に含むポリマー類を示す。WO00/31183は、炭化水素を含有する架橋性マトリックス前駆体と、空隙形成物質(ポラゲン、poragen)を含み、硬化して半導体機器向けの低誘電率絶縁層を形成する架橋性組成物を開示した。一般的に前記の開示は、前駆体を一部硬化してポラゲンの吸蔵(occlusions)を含有するマトリックスを形成し、つぎに、空隙生成物質を除去して空隙または間隙(voids or pore)をマトリックス物質中に形成することにより、改良された(低)誘電率絶縁フィルムを形成することを教示する。
【0005】
Chem. Commun., (1998), 1139、および、Macomolecules, (2001), 34, 187には、1つのテトラフェニルシクロペンタジエノン基と、少なくとも2つのトリイソプロピルシリル置換アセチレン基を含む化合物の合成が開示されている。これらの化合物中では、かさ高のトリイソプロピルシリル基の存在によって、ディールス−アルダーまたは付加環化反応において、アセチレン官能基がジエノフィル類に到達できなくなっている。従って、このような化合物はモノマーとしての使用に適せず、誘電性フィルム類を形成する反応をする能力がない。類似の化合物もまた、J. Org. Chem., (1997), 62, 3430に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の技術の進歩は、得られるフィルムの誘電率の改良をもたらしたが、産業界ではフィルム特性のさらなる改良が望まれている。特に加工性がよく、溶解性が改良され、多孔性が増大し、基材への濡れ性に優れる硬化性組成物が、いまだに望まれている。さらに、物理特性が改良された組成物もまた探し求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、i)3つ以上のジエノフィル基(A−官能性基)およびii)2つの共役炭素−炭素2重結合および脱離基Lを含む単一環構造(一括してB−官能性基という)を含む化合物(モノマー)であり、ここで、化合物の分子の1つのA−官能性基の1つは、付加環化反応条件下で第2の分子のB−官能性基と反応し、前記脱離基Lを脱離し、これによってポリマーを形成する能力があることを特徴とする、モノマーが提供される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、前記モノマー、それらの混合物、または、それを含む組成物を、付加環化反応および脱離反応条件下で反応させて製造した硬化性オリゴマーまたはポリマーが提供される。本発明のこの態様においては、前記硬化性オリゴマーまたはポリマーは、2つの反応性官能性基の残基の一部、主としてA−官能性基を、ペンダント基、末端基、または前記オリゴマーまたはポリマーの主鎖中の基として含む。
【0009】
第3の態様によれば、本発明は、前記の硬化性オリゴマーもしくはポリマー、またはそれを含む組成物を最終硬化することによって製造された高架橋ポリマーである。
【0010】
第4の態様によれば、本発明は、第2の態様の前記硬化性オリゴマーまたはポリマーとポラゲンを含む組成物である。
【0011】
本発明の第5の実施態様によれば、ガラス化されたポリアリーレンポリマーを含む固体物品を形成する方法が提供され、ここで前記方法は、上述のモノマー、モノマー類の混合物、または、それを含む組成物を提供し、前記モノマーを付加環化反応条件下、必要に応じて溶媒および/またはポラゲンの存在下で、部分的に重合し、これによって硬化性オリゴマーまたはポリマー含有組成物を形成し、そして、この組成物を硬化し、必要に応じて溶媒および/またはポラゲンの除去を一緒にまたは続けて行い、固体ポリアリーレンポリマーを形成することを含む。
【0012】
第6の実施態様によれば、本発明は、上記方法で製造された物品、または、そのような物品を含む構造体である。
【0013】
本発明の第7の実施態様によれば、前記物品はフィルムであり、前記構造体は集積回路のような半導体機器であり、回路回線の間、または、回路回線の層の間の絶縁体としてこのフィルムをその中に含む。
【0014】
モノマー類の混合物およびB−ステージ化から得られるオリゴマー類は、半導体機器の製造に用いる一般的な溶媒類へ溶解し、ポリマー生成物の架橋密度が高いため、基材上にスピンコーティングされたり、低い温度でガラス化されたり、および/または、高温でモジュラスの著しい損失がないシステムを形成したりすることができる配合物に用いられることがある。このような組成物は、チップ製造プロセス最中の空隙の破壊または合体の可能性が低減され、ガラス化によって、望ましい低誘電率の絶縁フィルムが得られる、高空隙性のフィルムを得るために望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
米国特許実務のため、本明細書で参照する特許、特許出願または公開の内容、特にモノマー、オリゴマーまたはポリマー構造、合成手法、および、技術常識の開示に関しては、本明細書に参照することによってその全体を援用する。本明細書に「含む」の語およびその派生語が示される場合は、本明細書中に開示されているか否かには関わりなく、任意の追加の成分、ステップ、または手順の存在を排除することを意図するものでない。いかなる疑義をも避けるために、「含む」の語を用いる本明細書中の全ての組成は、反する記載のない限り、任意の追加の添加剤、補助剤、または化合物を含んでいてもよい。反対に「〜から実質的になる」の語が本明細書に示される場合は、列挙の範囲から、実施可能にするため必須ではないものを除き、いかなる他の成分、ステップまたは手順をも除外する。「〜からなる」の語を用いる場合は、具体的に表され、または列挙されていない成分、ステップまたは手順を、すべて除外する。「または」の語は、特に他の記載のない限り、列挙された構成要素を単独でさすだけではなく、任意の組み合わせをもさす。
【0016】
本明細書で用いる「芳香族」の語は、(4δ+2)π電子を含む、多原子、環状の環系をいう(ここでδは1以上の整数である)。本明細書で、多原子の環を2つ以上含む環系に関して用いる「縮合した」の語は、少なくとも2つのそれらの環について、少なくとも1対の隣接原子が両方の環に含まれることを意味する。
【0017】
「A−官能性基」とは単一のジエノフィル基をさす。
【0018】
「B−官能性基」とは、2つの共役炭素−炭素2重結合および脱離基Lを含む環構造をさす。
【0019】
「B−ステージ化」とは、モノマーを部分重合して得られるオリゴマー性混合物または低分子量ポリマー性混合物をさす。この混合物中には未反応モノマーが含まれていてもよい。
【0020】
「架橋性」とは、不可逆的に硬化し、再成形または再形成不可能な物質となる能力がある、マトリックス前駆体をさす。架橋は、UV、マイクロ波、X線、または、電子ビーム放射によって補助される。架橋が熱的に行われる場合は、多くの場合「熱硬化性」が同義に用いられる。
【0021】
「ジエノフィル」とは、本発明の共役2重結合炭素原子団と反応可能な基をさし、好適には、L基の脱離および芳香族環の形成を伴う付加環化反応中で反応可能な基をさす。
【0022】
「不活性置換基」とは、その後に続くモノマーまたはB−ステージ化オリゴマーの所望の重合反応と干渉しない置換基を意味し、本明細書に開示のさらに重合可能な環構造を含まない。
【0023】
「マトリックス前駆体」とは、モノマー、プレポリマーもしくはポリマー、または、それらの混合物であり、硬化により架橋マトリックス物質を形成するものを意味する。
【0024】
「モノマー」とは、重合性化合物または重合性化合物の混合物を意味する。
【0025】
「マトリックス」とは、分散された不連続な成分領域または空隙を取り囲む連続相をさす。
【0026】
「ポラゲン」とは、最初に生じたオリゴマーまたはポリマー、または、より好適には、ガラス化された(すなわち完全に硬化または架橋された)ポリマーから除去され、その結果ポリマー中に空隙または間隙を生成可能な成分をさす。ポラゲンはマトリックスポリマーから任意の適切な手法、例えば溶媒への溶解によって、または、より好適には熱分解によって除去可能である。
【0027】
モノマー類およびその合成
本発明のモノマー類は、好適には、2つの共役炭素−炭素2重結合および脱離基Lを有し、そしてさらに3つ以上の、好適には3から5つの、より好適には3つの前述のジエノフィル官能性基で置換されている単一の環、またはそれらの不活性置換された誘導体を含む。適切な環構造としては、シクロペンタジエノン類、ピロン類、フラン類、チオフェン類、ピリダジン類、および、それらのアルキルまたはアリール(縮合環アリールを含む)誘導体類が挙げられる。
【0028】
好適には、前記環構造は5員環[ここで、Lは−O−、−S−、−(CO)−もしくは−(SO)−である]であるか、または、6員環[ここでLは−N=N−もしくは−O(CO)−である]である。場合により、前記環構造およびその置換基の2つの炭素原子が一緒に芳香環を形成していてもよく、すなわち、前記5員環または6員環構造が芳香環に縮合していてもよい。
【0029】
望ましくは、Lは−(CO)−であり、環はシクロペンタジエノン基またはベンズシクロペンタジエノン基である。好適なジエノフィル基は炭化水素基であり、最も好適にはエチニルまたはフェニルエチニル基である。
【0030】
非常に望ましくは、適切なモノマー類は、B−官能性基の2重結合を形成する2つ以上の炭素、または、そのような2重結合炭素を含む縮合芳香環の炭素が、エチニルアリール基、アリールエチニルアリール基、または、ジ(アリールエチニル)アリール基で置換された、シクロペンタジエノンまたはベンズシクロペンタジエノン化合物である。さらに非常に望ましくは、シクロペンタジエノン化合物の3または4つ全部の共役2重結合炭素は、エチニルアリール基、アリールエチニルアリール基、または、ジ(アリールエチニル)アリール基で置換されている。よりさらに非常に望ましくは、ジエノフィル置換基の少なくとも1つは、ジ(アリールエチニル)アリール基、最も好適には3,5−ジ(フェニルエチニル)フェニル基である。
【0031】
本発明の適切なモノマー類の例は、以下の式で表される化合物である。
【化4】

[式中、Lは−O−、−S−、−N=N−、−(CO)−、−(SO)−または−O(CO)−であり、好適には−(CO)−であり、
Zは独立にそれぞれの場合、−W−(C≡C−Q)、水素、ハロゲン、非置換または不活性置換芳香族基、非置換または不活性置換アルキル基であり、または、2つの隣接Z基はそれらが結合している炭素と一緒に縮合芳香環を形成し、
Wは非置換または不活性置換C6〜20芳香族、または、好適にはフェニレン、p,p’−ビフェニレン、または、4−(4’−フェノキシ)フェニレンであり、
Qは水素、非置換または不活性置換C6〜20アリール基、または、非置換または不活性置換C1〜20アルキル基であり
qは独立にそれぞれの場合1から3の整数であり、そして、
Z置換基の数とqは、−C≡C−Q基の合計が3から10、好適には3〜5、および、最も好適には3または4となるよう選択される。]。
【0032】
本発明の好適なモノマー類は、2,3,4−トリ(アリールエチニルアリール)−2,3,5−トリ(アリールエチニルアリール)−、2−ジ(アリールエチニル)アリール−3−アリールエチニルアリール−、2−ジ(アリールエチニル)アリール−4−アリールエチニルアリール−、2−ジ(アリールエチニル)アリール−5−アリールエチニルアリール−、3−ジ(アリールエチニル)アリール−4−アリールエチニルアリール−、3−ジ(アリールエチニル)アリール−5−アリールエチニルアリール−、2−アリールエチニルアリール−3−ジ(アリールエチニル)アリール−、2−アリールエチニルアリール−4−ジ(アリールエチニル)アリール−、2−アリールエチニルアリール−5−ジ(アリールエチニル)アリール−、3−アリールエチニルアリール−4−ジ(アリールエチニル)アリール−、3−アリールエチニルアリール−5−ジ(アリールエチニル)アリール−、2,3−ビス(ジ(アリールエチニル)アリール)−、2,4−ビス(ジ(アリールエチニル)アリール)−、2,5−ビス(ジ(アリールエチニル)アリール)−、または、3,4−ビス(ジ(アリールエチニル)アリール)−置換シクロペンタジエノン化合物である。
【0033】
好適な化合物の例は、以下式で示されるものである。
【化5】

[式中、Rは、水素、C6〜20アリールまたは不活性置換アリールであり、最も好適には、水素、フェニル、ビフェニル、p−フェノキシフェニル、または、ナフチルであり、
qは1から3の数であり、
rは0から3の数であり、
uは0または1であり、
vは1から3の数であり、
sおよびtは1から4の数であり、(v・s)+(q・t)は3以上の数であり、 ならびに、
r+s+t=4である。]。
【0034】
本発明の非常に好適なモノマー類は、以下式で表されるフェノキシフェニル基に結合した少なくとも1つのアリールエチニル部分を含む、置換2,5−ジフェニルシクロペンタジエノン化合物である。
【化6】

[式中、q’は2から3の数であり、q’’は1から3の数である。]
【0035】
本発明のモノマー類またはそれらのB−ステージ化オリゴマー類は、単体で、または、ディールス−アルダー反応もしくは類似の付加環化反応によって重合可能な2つ以上の官能性基を含む他のモノマー類(またはそれらのB−ステージ化オリゴマー類)との混合物として、硬化性組成物中に適切に用いられる。そのような他のモノマー類の例としては、米国特許第5,965,679号および第6,359,091号に従来開示されていたもののような、2つ以上のシクロペンタジエノン官能性基および/またはアセチレン官能性基を有する化合物、またはそれらの混合物が挙げられる。B−ステージ硬化反応中に、ジエノフィル基は環状ジエン官能性基と反応し、Lの脱離および芳香環の形成を生じる。その後に生じる硬化またはガラス化は、ジエノフィル官能性基のみが関与する同様の付加環化または付加反応を含むことがある。
【0036】
本発明の硬化性組成物に含まれていてもよい追加の適切なモノマー類としては、以下の式の化合物が挙げられる。
【化7】

[式中、Z’は独立にそれぞれの場合、水素、非置換もしくは不活性置換芳香族基、非置換もしくは不活性置換アルキル基、または、−W−(C≡C−Q)であり、
X’は非置換または不活性置換芳香族基、−W−C≡C−W−、または、
【化8】

であり、
Wは非置換または不活性置換芳香族基であり、および、
Qは水素、非置換または不活性置換C6〜20アリール基、または、非置換または不活性置換C1〜20アルキル基であり、ただし、X’および/またはZ’基の少なくとも2つはアセチレン基を含み、
qは1から3の整数であり、そして、
nは1から10の整数である。]。
【0037】
本発明のモノマー類と一緒に用いることができる前述の多官能性モノマー類の例としては、式II〜XXVの化合物が挙げられる。
【0038】
式II
【化9】

【0039】
式III(以下の混合物)
【化10】

【0040】
式IV
【化11】

【0041】
式V
【化12】

【0042】
式VI
【化13】

【0043】
式VII
【化14】

【0044】
式VIII
【化15】

【0045】
式IX
【化16】

【0046】
式X
【化17】

【0047】
式XI
【化18】

【0048】
式XII
【化19】

【0049】
式XIII
【化20】

【0050】
式XIV
【化21】

【0051】
式XV
【化22】

【0052】
式XVI
【化23】

【0053】
式XVII
【化24】

【0054】
式XVIII
【化25】

【0055】
式XIX
【化26】

【0056】
式XX(以下の混合物)
【化27】

【0057】
式XXI(以下の混合物)
【化28】

【0058】
式XXII(以下の混合物)
【化29】

【0059】
式XXIII
【化30】

【0060】
式XXIV
【化31】

【0061】
式XXV
【化32】

【0062】
環構造がシクロペンタジエノンである前記モノマーII〜XXVは、例えば、以下に開示の従来の方法を用いて、置換または非置換ベンジル類と、置換または非置換ベンジルケトン類との縮合(または類似の反応)によって製造可能である。Kumar, et al. Macromolecules, (1995), 28, 124-130、Ogliaruso et al., J. Org. Chem., (1965), 30,3354、Ogliaruso, et al., J. Org. Chem., (1963), 28, 2725、Wiesler, et al., Macromolecules, (2001), 34, 187、Baker, et al., Macromolecules, (1979), 12, 369、Tong, et al., J. Am. Chem. Soc. (1997), 119, 7291、および、米国特許第4,400, 540号。他の構造を有するモノマー類は、以下のように製造される。ピロン類は、以下の文献およびそれらに引用される文献に示されるような既存の方法を用いて製造可能である。Braham et. al., Macromolecules (1978), 11, 343、Liu et. al., J. Org. Chem. (1996), 61,6693-99、van Kerckhoven et. al., Macromolecules(1972), 5, 541、Schilling et. al. Macromolecules (1969), 2, 85、Puetter et. al., J. Prakt. Chem. (1951), 149,183。フラン類は、以下の文献およびそれらに引用される文献に示されるような既存の方法を用いて製造可能である。Feldman et. al., Tetrahedron Lett. (1992), 47, 7101、McDonald et. al., J. Chem. Soc. Perkin Trans. (1979), 1 1893。ピラジン類は、以下の文献およびそれらに引用される文献に示されるような既存の方法を用いて製造可能である。Turchi et. al., Tetrahedron (1998), 1809。
【0063】
本発明のモノマー類および上記開示の他のモノマー類の混合物を用いる本発明の好適な実施態様においては、混合物中のB−官能性基対A−官能性基の比率が1:10から10:1、最も好適には2:1から1:4の範囲内になるように、混合物中のA−官能性基とB−官能性基の比率を維持することが望ましい。好適には組成物はさらに溶媒を含み、最も好適にはポラゲンも含む。
【0064】
より好適な実施態様においては、本発明の1つ以上のモノマー類、および必要に応じてポラゲンを含む組成物は、硬化中にポリアリーレン物質を形成し、ここで、前記B−ステージ化モノマー組成物は、捻り含浸布分析(torsional impregnated cloth analysis、TICA)により測定した曲げ貯蔵モジュラスプロファイルが、組成物を加熱中は、250℃から450℃の温度範囲で観察した最低測定モジュラス(minimum measured modulus)であるMminが、同様の方法で分析した場合の従来のSiLK−I(商標)材料が示すものより大きく、好適には、25℃で測定した完全硬化コンポジットの曲げ貯蔵モジュラスの少なくとも50パーセント、より好適には少なくとも75パーセントであることによって特徴づけられる。SiLK−I(商標)は、The Dow Chemical Companyから市販されているポリアリーレンオリゴマー溶液である。
【0065】
TICA法においては、ガラス織布(好適には0.3mm厚、15mm幅、および、35mm長さ)を、好適には感度を上げるための低質量垂直クランプアクセサリー(Low Mass Vertical Clamp Accessory)または同等の機能を装備する、DuPont 983DMAのような動的機械式分析器(dynamic mechanical analyzer)にマウントする。布の端部を長さ10mmの露出を残してアルミ箔で包む。次に布を10mm間隔に設定された動的機械式分析器の垂直クランプにマウントする。クランプをトルクレンチを用いて12インチポンド(1.4Nm)まで締める。布を、固体の量が10から30パーセントであるB−ステージ化モノマー類を含む溶液を用いて、ピペットで含浸する。布を溶液に完全に浸し、ピペットを用いて余剰分を全て除去する。熱デフレクターおよびオーブンを接続し、毎時3標準立方フィート(0.009m/h)の窒素流を確立する。変位の振幅を1.00mmに設定し、周波数を1Hzに設定する。サンプルを毎分5℃で500℃に加熱し、次に放冷する。加熱および冷却段階の両方でデータを収集する。ガラスおよび配合物のコンポジットの温度対曲げ貯蔵モジュラス値を取得して、データ分析を行うことができる。既存のソフトウェアプログラム、例えば、DuPontのDMA Standard Data Analysis Version 4.2、または、TA Instruments, Inc.のUniversal Analysis for Windows(登録商標) 95/98/NT Version 2.5Hを用いて、データ分析を行うことができる。曲げ貯蔵モジュラス値自体は、ガラス布の寄与およびサンプル装填時の不可避のばらつきのため、試験した配合物についての絶対値ではない。しかし、差異が顕著であれば、1つのマトリックス系対他のマトリックス系の定性的評価を行うことが可能である。
【0066】
理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明の溶媒含有混合物を加熱することにより、当初の溶媒の損失が、布/マトリックスコンポジットの曲げ貯蔵モジュラスの増大をもたらすと考えられる。さらに加熱した後は、走査温度がB−ステージ化モノマー類の混合物のガラス転移温度に到達し、次にそれを超過するため、曲げ貯蔵モジュラスは減少し始める。前駆体化合物が反応または硬化し始めるためモジュラスは再度増大し、そして硬化が完了するため横ばいとなる。冷却に伴い、曲げ貯蔵モジュラスはほぼ直線状にゆっくりと増大する。硬化中に300から400℃の間で曲げ貯蔵モジュラスの著しい低下が観察される場合は、空隙の破壊問題が生じている恐れがある。本発明の配合物の曲げ貯蔵モジュラス、Mminは、従来の配合物のそれよりも大きいことがあり、および/または、Mminは、より低温、Tminで、例えば375℃未満で生じることがある。ポラゲンを含む配合物を用いる場合は、ポラゲンの著しい分解はTminに達するまで生じにくいと思われ、および/または、モジュラスは空隙率を維持するのに充分であるであろうから、この事実は空隙破壊を防止するのに役立つ。
【0067】
本発明のモノマー類のスピンコーティング配合物の製造用に適切な溶媒は、熱硬化性ポリアリーレン前駆体組成物の処理に有用な既知の溶媒を含む。この溶媒は、単一の溶媒でも、1つ以上の溶媒の混合物でもよい。溶媒の例としては、メシチレン、ピリジン、トリエチルアミン、N−メチルピロリジノン(NMP)、メチルベンゾアート、エチルベンゾアート、ブチルベンゾアート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロヘキシルピロリジノン、例えばジベンジルエーテル類のようなエーテル類またはヒドロキシエーテル類、ジグリム、トリグリム、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジクロロベンゼン、プロピレンカルボナート、ナフタレン、ジフェニルエーテル、ブチロラクトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0068】
本発明で用いる適切なポラゲンとしては、前駆体が形成するマトリックス中に小領域を形成することが可能であり、そして、例えば熱分解によって後に除去されることが可能な任意の化合物が挙げられる。好適なポラゲンとしては、ホモポリマー類、および、2つ以上のモノマー類のインターポリマー類が挙げられ、グラフトコポリマー類、エマルジョンポリマー類およびブロックコポリマー類を含む。適切な熱可塑性材料としては、ポリスチレン類、ポリアクリラート類、ポリメタクリラート類、ポリブタジエン類、ポリイソプレン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリプロピレンオキシド類、ポリエチレンオキシド類、ポリ(ジメチルシロキサン)類、ポリテトラヒドロフラン類、ポリエチレン類、ポリシクロヘキシルエチレン類、ポリエチルオキサゾリン類、ポリビニルピリジン類、ポリカプロラクトン類、ポリ乳酸類、これらの物質の製造に用いたモノマー類のコポリマー類、ならびに、これらの物質の混合物が挙げられる。熱可塑性物質は、本質的に直鎖状、分枝状、超分枝状(hyperbranched)、樹枝状、または、星形状であってもよい。ポラゲンもまた、B−ステージ化の最中または後に架橋性マトリックス前駆体と反応し、ポリマー鎖のブロック状またはペンダント状置換を生ずるよう設計されていてもよい。例えば、ビニル、アクリラート、メタクリラート、アリル、ビニルエーテル、マレイミド、スチリル、アセチレン、ニトリル、フラン、シクロペンタジエノン、ペルフルオロエチレン、ベンゾシクロブタン(BCB)、ピロン、プロピオラート、または、オルト−ジアセチレン基のような反応性基を含む熱可塑性ポリマー類は、架橋性マトリックス前駆体と化学結合を形成することが可能であり、その後その熱可塑性樹脂を空隙を残すために除去することができる。ポラゲンは、平均径が200nmより小さい、より好適には100nmより小さい、最も好適には50nmより小さい空隙または間隙をマトリックス中で形成する物質が望ましい。適切なブロックコポリマー類としては、1つのブロックが架橋ポリマーマトリックス樹脂と相溶性(compatible)であり、他のブロックがそれらと不相溶性であるものが挙げられる。有用なポリマーブロックとしては、ポリスチレンおよびポリ−α−メチルスチレンのようなポリスチレン類、ポリアクリルニトリル類、ポリエチレンオキシド類、ポリプロピレンオキシド類、ポリエチレン類、ポリ乳酸類、ポリシロキサン類、ポリカプロラクトン類、ポリウレタン類、ポリメタクリラート類、ポリアクリラート類、ポリブタジエン類、ポリイソプレン類、ポリビニルクロリド類、および、ポリアセタール類、ならびに、アミンキャップされたアルキレンオキシド類(Huntsman Corp.から市販のJeffamine(商標)ポリエーテルアミン類)を挙げることができる。
【0069】
マトリックス前駆体は、ポラゲンにグラフトしていることが好適である。これは、ポラゲン上の残存官能性基はモノマー類上の反応基と反応可能であるため、ポラゲンをB−ステージ化の前にモノマー類に加えることによって達成可能である。あるいは、B−ステージ化の一部がポラゲンの添加前に生じてもよく、混合物をポラゲン上の残存官能性基がB−ステージ化反応生成物の残存反応基と反応を生じるのに充分な条件に供して、ポラゲンをグラフトしてもよい。混合物を続いて基材上(好適には、例えば既知方法によるスピンコーティングによって溶媒コーティングされた)にコーティングする。マトリックスを硬化し、ポラゲンを、その熱分解温度を超えるように加熱することによって除去する。この方法で製造した多孔性フィルムは、集積回路製品の製造に有用であり、ここでこのフィルムは導電性金属線を互いに分離し電気的に絶縁する。
【0070】
非常に好適なポラゲンは、溶液または乳化重合によって製造された架橋ポリマーである。このような重合技術は、例えばEP−A−1,245,586その他にあるように、公知である。非常に小さい架橋炭化水素系ポリマー粒子は、乳化重合において1つ以上のアニオン性、カチオン性、または非イオン性界面活性剤類を用いることによって製造されてきた。かかる製造の例は、とりわけ、J. Dispersiosl Sci. and Tech., vol. 22, No. 2-3,231-244 (2001)、The Applications of Synthetic Resin Emulsions, H. Warson, Ernest Benn Ltd. , 1972, p. 88、および、Colloid Polym. Sci., 269, 1171-1183 (1991), Polymer. Bull., 43, 417-424 (1999)、 ならびに、2003年8月28日に公開のWO2003/070777にみることができる。
【0071】
本発明の組成物は、米国特許第5,965,679号に開示されているもののような既知の方法に基づき、集積回路の誘電性フィルム類および層間絶縁膜の製造に用いることができる。多孔性フィルムの製造では、ポラゲンの熱分解によって、ポラゲンを除去することが好適である。
【0072】
以下の実施例は説明のみを目的とするものであり、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。特に、当業者は、置換エチニルおよび置換シクロペンタジエノン配位子を広範囲にわたる数、種類および組み合わせで含む本発明のモノマー類を得るために、以下の調製を容易に変更可能であることを認めるだろう。
【実施例】
【0073】
試薬の調製
A) O,O’−フェニルエチニルフェニルベンジルの合成
【化33】

【0074】
撹拌されたAlCl(66.5g、0.5モル)のCHCl(200ml)中の懸濁物に0℃で、ブロモジフェニルエーテル(109.6g、0.44モル)およびオキサリルクロリド(25.2g、0.2モル)の混合物を45分間をかけて滴下する。滴下が完了した後に、反応混合物を0℃でさらに4時間撹拌し、次に1リットルの氷/水にゆっくりと注ぐ。得られた生成物を800mlのトルエンで抽出し、NaSOを通して乾燥させる。溶媒をエバポレーションすることにより黄色固体が得られ、これは次反応段階に十分な程度純粋である。収量93.2g、84パーセント。
【0075】
500ml丸底フラスコに、上記反応によるO,O’−ジブロモフェニルベンジル(27.6g、0.05モル)、DMF(60ml)、フェニルアセチレン(15g、0.147モル)、および、トリエチルアミン(30g、0.297モル)を加える。得られた混合物を窒素で15分間パージし、続いて、トリフェニルホスフィン(0.60g、0.0023モル)および酢酸パラジウム(0.1g、0.00045モル)を加える。反応混合物を80℃で18時間加熱する。室温まで冷却後、水(200ml)を加える。粗生成物を濾過し、固体をトルエン/ヘキサンに再溶解する。溶媒をエバポレーションすることにより黄色結晶が得られ、これはさらに酢酸エチル/ヘキサンから再結晶可能である。収量21.5g、72パーセント。
【0076】
B) 4,4’−フェニルエチニルベンジルの合成
【化34】

【0077】
250ml丸底フラスコに、4,4’−ジブロモベンジル(18.4g、0.05モル)、DMF(60ml)、フェニルアセチレン(12.2g、0.12モル)、および、トリエチルアミン(29g、0.24モル)を加える。得られた混合物を窒素で15分間パージし、続いて、トリフェニルホスフィン(0.60g、0.0023モル)および酢酸パラジウム(0.0829g、0.00037モル)を加える。反応混合物を80℃で10時間加熱する。室温まで冷却後、水(200ml)を加える。粗生成物を濾過し、固体をトルエン/ヘキサンに再溶解する。溶媒をエバポレーションすることにより黄色結晶が得られ、これはさらに酢酸エチル/ヘキサンから再結晶可能である。収量15.3g、75パーセント。
【0078】
C) 1−(4−フェニルエチニルフェニル)−3−フェニル−2−プロパノンの合成
【0079】
1. エチル4−ブロモフェニルアセタート
63グラム(0.29モル)の4−ブロモフェニル酢酸と50mlの濃硫酸との、500mlの純粋エタノール溶液を8時間還流し、続いて終夜放置する。600グラムの氷の上に注いだ後、混合物をエーテル/ヘキサンで抽出する。エーテル抽出物を重炭酸ナトリウム水溶液で完全に洗浄し、無水硫酸ナトリウムを通して乾燥させる。溶媒をロータリーエバポレーションによって除去し、冷却によって結晶化する油を57グラム(0.24モル、収率80パーセント)得る。濾過してヘキサンで洗浄すると、高純度の生成物が生じる。
【0080】
2. γ−(4−ブロモフェニルアセト)−α−フェニルアセトニトリルの合成
ナトリウム(6.0グラム、0.26モル)を、撹拌機、コンデンサー、および、滴下ロートを備える250ml三つ口フラスコ中の90mlの純粋エタノールに加える。溶液を撹拌しながら還流している間、30.37グラムのエチル4−ブロモフェニルアセタート(0.125モル)およびシアン化ベンジル(17.5グラム、0.15モル)の混合物を滴下ロートを通すことによって1時間かけて加える。溶液を3時間還流し、冷却し、次に400mlの冷水に注ぐ。1回100mlのジエチルエーテルによってアルカリ性水溶液を3回抽出し、エーテル抽出物を廃棄する。水溶液を冷却した10パーセント塩酸水溶液で酸性化し、続いて、1回100mlのエーテルで3回抽出する。次に、エーテル溶液を100mlの水で1回、1回に100mlの10パーセント重炭酸ナトリウム水溶液で2回、および、100mlの水で1回抽出し、今度は水性抽出物を廃棄する。有機相に無水硫酸ナトリウムを通して乾燥し、ひだ付濾紙で濾過し、そして、エーテルをロータリーエバポレーションで除去する。目的生成物(33g)を回収し、単体収率は89パーセントである。
【0081】
3. 1−(4−ブロモフェニル)−3−フェニル−2−プロパノンの合成
撹拌機およびコンデンサーを備える250ミリリットル三つ口フラスコに、75mlの60パーセント硫酸水溶液と、30グラムの上記で製造したアセトニトリル誘導体を投入する。撹拌しながら、この混合物を二酸化炭素が発生しなくなるまで還流下で加熱する。この混合物を冷却し、200mlの氷水に注ぎ、次に1回に150mlのジエチルエーテルで3回抽出する。エーテル抽出物を、50mlの水で1回、1回に100mlの10パーセント水酸化ナトリウム水溶液で2回、そして、50mlの水で洗浄する。無水硫酸ナトリウムを通して乾燥させた後に濾過し、エーテルをロータリーエバポレーションで除去し、粗生成物を得る。160mlのヘキサンからの再結晶によって、11.5グラム(単体収率42パーセント)の生成物を、無色の固体として得る。
【0082】
4. 1−(4−フェニルエチニルフェニル)−3−フェニル−2−プロパノンの合成
250ミリリットルフラスコに、10.9グラム(0.04モル)の1−(4−ブロモフェニル)−3−フェニル−2−プロパノン、10グラム(0.10モル)のトリエチルアミン、4.6グラム(0.045モル)のフェニルアセチレン、および、50mlのN,N−ジメチルホルムアミドを投入する。反応混合物を窒素で15分間パージし、続いて、0.47グラム(0.0018モル)のトリフェニルホスフィンおよび0.067グラム(0.0003モル)の酢酸パラジウムを加える。反応混合物を80℃で2時間、窒素雰囲気下で加熱後に、フラスコを室温まで放冷し、そして、水(200ml)およびジエチルエーテル(200ml)を加える。得られた有機層を10パーセントHCl水溶液、水、および、飽和NaCl水溶液で洗浄し、続いて無水NaSOを通して乾燥させる。エーテルを除去し、トルエン/ヘキサンから再結晶させ、比較的純粋な生成物(8.5グラム、単体収率72パーセント)を得る。
【0083】
D) 1,3−ビス(4−フェニルエチニルフェニル)−2−プロパノンの合成
【化35】

【0084】
50mlトルエン中の水素化ナトリウム(9.17グラム、0.23モル)のスラリーに、エチル4−ブロモフェニルアセタート(50グラム、0.21モル)のトルエン(50ml)溶液を30〜32℃において滴下する。滴下が完了した後に、反応混合物をゆっくりと50℃まで温めると、ここで反応開始し、水素の発生を伴い急速に発熱する。反応混合物をさらに78℃で2時間加熱し、室温まで冷却し、そして、水(22.5グラム)に溶解した塩酸(45グラム)をゆっくりと滴下して、溶液を中和する。層を分離し、水相をジエチルエーテルで抽出する。あわせた有機抽出物を乾燥し、溶媒を除去すると、黄色の油が残る。この油を24時間、氷酢酸(60ml)と濃HCl(30ml)の混合物中で還流する。冷却後、層を分離し、有機相を固化し、黄色の固体を得る。この粗生成物をn−ヘプタンから再結晶し、純粋生成物を白色固体として得る(31.2グラム、単体収率82パーセント)。
【0085】
250ミリリットルフラスコに、18.4グラム(0.05モル)の1,3−ビス(4−ブロモフェニル)−2−プロパノン、24グラム(0.24モル)のトリエチルアミン、12グラム(0.12モル)のフェニルアセチレン、および、60mlのN,N−ジメチルホルムアミドを投入する。反応混合物を窒素で15分間パージし、続いて0.60グラム(0.0023モル)のトリフェニルホスフィンおよび0.08グラム(0.00036モル)の酢酸パラジウムを加える。反応混合物を80℃で20時間、窒素雰囲気下で加熱した後に、フラスコを室温まで放冷し、続いて水(200ml)およびトルエン(200ml)を加える。得られた有機相を10パーセントHCl水溶液、水、および、飽和NaCl水溶液で洗浄し、続いて無水NaSOを通して乾燥させる。トルエンを除去し、トルエン/ヘキサンから再結晶させ、比較的純粋な生成物(14.5グラム)を71パーセントの単体収率で得る。
【0086】
E) 1,3−ビス(3,5−ジ(フェニルエチニル)フェニル)−2−プロパノンの合成
250ミリリットルフラスコに、26.3グラム(0.05モル)の1,3−ビス(3,5−ジブロモフェニル)−2−プロパノン、24グラム(0.24モル)のトリエチルアミン、20.4グラム(0.20モル)のフェニルアセチレン、および、60mlのN,N−ジメチルホルムアミドを投入する。反応混合物を窒素で15分間パージし、続いて0.60グラム(0.0023モル)のトリフェニルホスフィンおよび0.08グラム(0.00036モル)の酢酸パラジウムを加える。反応混合物を80℃で20時間、窒素雰囲気下で加熱した後に、フラスコを室温まで放冷し、続いて水(200ml)およびトルエン(200ml)を加える。得られた有機層を10パーセントHCl水溶液、水、および、飽和NaCl水溶液で洗浄し、続いて無水NaSOを通して乾燥させる。トルエンを除去し、トルエン/ヘキサンから再結晶させ、目的生成物(16.0g)を得る。
【0087】
実施例1 2−(4−フェニルエチニルフェニル)−3,4−ジ((4−フェニルエチニル)−4−フェノキシフェニル)−5−フェニル−2,4−シクロペンタジエノン(ABモノマー)の合成
【化36】

【0088】
O,O’−フェニルエチニルフェニルベンジル(試薬A)(1.45グラム、0.00244モル)および0.76グラム(0.0025モル)の1−(4−フェニルエチニルフェニル)−3−フェニル−2−プロパノン(試薬C)を、100mlの無水1−プロパノールを含む反応器に加える。撹拌と加熱を開始し、いったん懸濁物が還流温度に達したら、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(0.2mlのメタノール中の40パーセント溶液を、0.1mlづつに2回に分けて)を加え、即座に深赤紫色が生じる。還流を40分間維持した後、HPLC分析は、O,O’−フェニルエチニルフェニルベンジル反応物の完全な転換が達成されたことを示す。このとき、油浴を反応器から取り去り、反応混合物を40℃まで放冷する。生成物を中程度のガラス濾過ロートを通すことによって濾過して回収する。ロート上の結晶生成物を、100mlづつの1−プロパノールで2回洗浄し、続いて減圧オーブン中で乾燥し、1.6グラム(単体収率75パーセント)の目的モノマーを得る。
【0089】
実施例2 2,5−ジ−(4−フェニルエチニルフェニル)−3,4−ジ((4−フェニルエチニル)−4−フェノキシフェニル)−2,4−シクロペンタジエノン(ABモノマー)の合成
【化37】

【0090】
O,O’−フェニルエチニルフェニルベンジル(試薬A)(2.92グラム、0.0049モル)および2.0グラム(0.0049モル)の1、3−ビス(4−フェニルエチニルフェニル)−2−プロパノン(試薬D)を、100mlの無水1−プロパノールを含む反応器に加える。撹拌と加熱を開始し、いったん懸濁物が還流温度に達したら、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中の40パーセント溶液0.55mlを2回に分けて)を加え、即座に深赤紫色が生じる。還流を2時間維持した後、HPLC分析は、O,O’−フェニルエチニルフェニルベンジル反応物の完全な転換が達成されたことを示す。このとき、油浴を反応器から取り去り、反応混合物を40℃まで放冷する。生成物を中程度のガラス濾過ロートを通すことによって濾過して回収する。ロート上の結晶生成物を、100mlづつの1−プロパノールで2回洗浄し、続いて減圧オーブン中で乾燥し、3.8グラム(単体収率80パーセント)の目的モノマーを得る。
【0091】
実施例3 2,3,4−トリ−(4−フェニルエチニルフェニル)−5−フェニル−2,4−シクロペンタジエノン(ABモノマー)の合成
【化38】

【0092】
4,4’−フェニルエチニルベンジル(試薬B)(1.0グラム、0.0025モル)および0.76グラム(0.0025モル)の1−(4−フェニルエチニルフェニル)−3−フェニル−2−プロパノン(試薬C)を、100mlの無水1−プロパノールを含む反応器に加える。撹拌と加熱を開始し、いったん懸濁物が還流温度に達したら、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中の40パーセント溶液0.20mlを2回に分けて)を加え、即座に深赤紫色が生じる。還流を1時間維持した後、HPLC分析は、4,4’−フェニルエチニルベンジル反応物の完全な転換が達成されたことを示す。このとき、油浴を反応器から取り去り、反応混合物を40℃まで放冷する。生成物を中程度のガラス濾過ロートを通すことによって濾過して回収する。ロート上の結晶生成物を、100mlづつの1−プロパノールで2回洗浄し、続いて減圧オーブン中で乾燥し、1.1グラム(単体収率66パーセント)の目的4,4’−ABモノマーを得る。
【0093】
実施例4 2,3,4,5−テトラキス−(4−フェニルエチニルフェニル)−2,4−シクロペンタジエノン(ABモノマー)の合成
【化39】

【0094】
4,4’−フェニルエチニルベンジル(試薬B)(2.0グラム、0.0049モル)および2.0グラム(0.0049モル)の1,3−ビス(4−フェニルエチニルフェニル)−2−プロパノン(試薬D)を、100mlの無水1−プロパノールを含む反応器に加える。撹拌と加熱を開始し、いったん懸濁物が還流温度に達したら、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中の40パーセント溶液0.35mlを2回に分けて)を加え、即座に深赤紫色が生じる。還流を1.5時間維持した後、HPLC分析は、4,4’−フェニルエチニルベンジル反応物の完全な転換が達成されたことを示す。このとき、油浴を反応器から取り去り、反応混合物を40℃まで放冷する。生成物を中程度のガラス濾過ロートを通すことによって濾過して回収する。ロート上の結晶生成物を、100mlづつの1−プロパノールで2回洗浄し、続いて減圧オーブン中で乾燥し、3.0グラム(単体収率78パーセント)の目的モノマーを得る。
【0095】
前記モノマー2.2mgを用い、示差走査熱分析(DSC)を完了した。25℃から450℃まで10℃/分の加熱速度を用いて、45cm/分で流れる窒素流下で2910 Modulated DSC(TA Instruments)を用いた。小さな単一吸熱遷移が最低点266℃で観測され、フェニルエチニル基とテトラフェニルシクロペンタジエノン基の付加環化反応に起因する強い単一発熱遷移が、最高点270℃(115.4ジュール/g)で観測される。発熱遷移の開始温度は267℃であり、その終了温度は297℃である。さらに、フェニルエチニル基の自己硬化反応に起因する単一/幅広発熱遷移が、最高点401℃(144ジュール/グラム)で観察された。
【0096】
実施例5 2,5−ビス−(3,5−(フェニルエチニル)フェニル)−3,4−ビス[4−(4−フェニルエチニル)フェノキシフェニル]−2,4−シクロペンタジエノン(ABモノマー)の合成
【0097】
O,O’−フェニルエチニルフェニルベンジル(試薬A)(2.0グラム、3.3mmol)および2.0グラム(3.3mmol)の1,3−ビス(3,5−ジ(フェニルエチニル)フェニル)−2−プロパノン(試薬E)を、100mlの無水1−プロパノールを含む反応器に加える。撹拌と加熱を開始し、いったん懸濁物が還流温度に達したら、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中の40パーセント溶液0.35mlを2回に分けて)を加える。還流を1.5時間維持した後、油浴を反応器から取り去り、反応混合物を40℃まで放冷する。生成物を中程度のガラス濾過ロートを通すことによって濾過して回収し、100mlづつの1−プロパノールで2回洗浄し、続いて減圧オーブン中で乾燥する。
【0098】
実施例6 2,5−ビス−(3,5−(フェニルエチニル)フェニル)−3,4−ビス[4−(4−フェニルエチニル)フェニル]−2,4−シクロペンタジエノン(ABモノマー)の合成
【0099】
4,4’−フェニルエチニルベンジル(試薬B)(1.3g、3.3mmol)と、2.0g(3.3mmol)の1,3−ビス(3,5−ジ(フェニルエチニル)フェニル)−2−プロパノン(試薬E)を用いて、実施例5の反応条件を本質的に繰り返す。
【0100】
実施例7 重合および薄いフィルムの特性評価
【0101】
50mlの丸底フラスコに、2.0gの実施例2のモノマーと、4.7gのγ−ブチロラクトンを入れ、得られる混合物を窒素雰囲気下で24時間、200℃に加熱する。1、5、7.5、13および24時間のB−ステージ反応の後、溶液のサンプルを採取し、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)でポリスチレンを標準として用いて分析した。表1に結果を示す。
【表1】

【0102】
第6試行から得られた溶液をシクロヘキサノンで希釈して20パーセント溶液を作成し、シリカウエハに適用し、スピンコーティングによってキャストし、0.48μm厚のフィルムを作成する。ウエハを150℃のホットプレート上で焼付け、さらに窒素雰囲気下で40分間、430℃に加熱する。屈折率が1.65であり、k値が2.77の誘電フィルムが得られる、
【0103】
実施例8 多孔性フィルムの製造
【0104】
50mlの丸底ガラスフラスコに、2.0gの実施例4のモノマー、0.86gの架橋ポリスチレンエマルジョン重合ポリマー(平均粒径10nm)、および、4.7gのγ−ブチロラクトンを加える。得られた混合物を窒素下で15分間パージし、続いて窒素下で200℃で13時間加熱する。この混合物を室温まで冷却し、7.0グラムのシクロヘキサノンで希釈し、17パーセント混合物を得る。得られたB−ステージ化オリゴマーをGPCで分析して、Mnが4060g/モルであり、Mwが6260g/モルであり、多分散性(Mw/Mn)が1.54であることが判明する。
【0105】
B−ステージ化モノマーの溶液をシリカウエハに適用し、スピンコーティングによってキャストし、0.95μm厚のフィルムを形成する。ウエハを150℃のホットプレート上で焼付け、さらに窒素雰囲気下で40分間オーブン中で430℃に加熱する。屈折率が1.478、k値が2.23、および、透過電子顕微鏡によって得た写真の目視検査に基づく予測平均空隙サイズが20nmである多孔性フィルムを得る。
【0106】
実施例9 2,5−ジフェニル−3−[4−(2,4,6−トリス(フェニルエチニル)フェノキシ)フェニル]−5−(3,5−ビス(フェニルエチニル)フェニル)−2,4−シクロペンタジエノン(ABモノマー)の合成
【化40】

【0107】
A) 2,4,6−トリブロモジフェニルオキシドの合成
2,4,6−トリブロモフェノール(9.93g、0.03モル)、ジフェニルヨードニウムクロリド(9.5g、0.03モル)、水酸化ナトリウム(99.99パーセント、1.2g、0.03モル)、および、脱イオン水(240g)を、電磁撹拌子を含む500mlのガラス製1口丸底反応器に加える。反応器をさらに、冷却(2℃)コンデンサー、および、サーモスタット制御の加熱マントルに装着した。撹拌および加熱を開始し、37分後に、微量の懸濁黄色粒子形成を伴う還流している透明溶液が生じる。累積して62分間加熱した後、還流している透明溶液中に懸濁する淡琥珀色油が生じる。累積して24時間還流後、反応混合物を室温まで冷却し、水相をデカントして廃棄する。残った生成物をジエチルエーテル(200ml)に溶解する。このジエチルエーテル溶液を分液ロート中で10パーセント水酸化ナトリウム水溶液(50ml)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、中程度のガラス濾過ロートを通して濾過する。得られた濾液をロータリーエバポレーションすると、高圧液体クロマトグラフ分析(HPLC)によって決定される目的生成物が75エリアパーセントである、オフホワイトの固体が得られる。この生成物を200mlエタノール中で煮沸し、得られた濁った溶液を、フリットのガラスロートに充填した珪藻土のベッドに通す。得られた濾液を回収し、沸騰するまで再加熱した後、わずかな濁りを生じるにちょうど十分量の脱イオン水を加える。室温までゆっくりと冷却すると透明な針状結晶の懸濁物が得られ、これを濾過によって回収し、減圧オーブン中で25℃で、6.3gの恒量に達するまで乾燥する。濾液を冷却(4℃)し、結晶生成物の第2の収集物(0.9g)を得る。生成物の両方の収集物のHPLC分析は、目的の2,4,6−トリブロモジフェニルオキシドが100エリアパーセント存在することを示す。電子衝突イオン化質量分光分析(EI MS)によって、生成物の構造を確認する。
【0108】
B. 3,5−ジブロモフェニルアセチルクロリドによる2,4,6−トリブロモジフェニルオキシドのアシル化
2,4,6−トリブロモジフェニルオキシド(7.13g,0.0175モル)、塩化アルミニウム(2.57g、0.0193モル)、および、無水1,2−ジクロロエタン(40ミリリットル)を、乾燥窒素雰囲気下で、予備乾燥された電磁撹拌子を含む、予備乾燥された250mlのガラス製三つ口丸底反応器に加える。反応器を窒素雰囲気下で密封し、シュレンクライン(Schlenk line)に置く。乾燥窒素雰囲気下で、3,5−ジブロモフェニルアセチルクロリド(5.58g、0.0175モル)を1,2−ジクロロエタン(19ml)に溶解し、続いて予備乾燥された添加ロートに加え、これを次に窒素雰囲気下で密封し、シュレンクライン上に置く。添加ロートと反応器を動的な窒素流の下で連結する。氷浴を反応器の下に設置し、撹拌を開始し、20分後に3,5−ジブロモフェニルアセチルクロリド溶液を撹拌された混合物に滴下する。52分後に滴下を完了し、累積して172分後に、反応生成物のサンプルのHPLC分析は、反応物が目的にアシル化生成物に完全に転化したことを示す。累積して196分後、冷却脱イオン水(100ml)を反応混合物に加え、その後、ジクロロメタン(50ml)を加える。反応器中の全内容物を追加のジクロロメタン(350ml)と共に分液ロートに加え、透明の有機層を得る。水層を除去および廃棄し、その後、残存有機相を脱イオン水(100ml)で洗浄する。回収された有機層を無水硫酸ナトリウムを通して乾燥し、次に中程度のガラス濾過ロートを通して濾過する。得られた濾液をロータリーエバポレーションし、11.93gの白色粉体生成物を得る。生成物のHPLC分析は、99.3エリアパーセントの目的1−(2’,4’,6’−トリブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’−ジブロモフェニルアセチル)ベンゼンと、残りのエリアの単一の副生成物の存在を示す。
【0109】
C. 1−(2’,4’,6’−トリブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’−ジブロモフェニルアセチル)ベンゼンの酸化
1−(2’,4’,6’−トリブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’−ジブロモフェニルアセチル)ベンゼン(11.9g、0.0175モル)、および、ジメチルスルホキシド(300ミリリットル)を、電磁撹拌子を含む500mlガラス製三つ口反応器に加える。反応器に、スクラバーに排気され室温に設定されたコンデンサー、温度計、サーモスタット制御された加熱マントル、および、48パーセント臭化水素酸(20.6g)水溶液が充填された添加ロートをさらに装着する。撹拌を開始し、つづいて臭化水素酸水溶液を1分間かけてストリームとして加えると、31℃の最大発熱を生じる。2分後ゆっくりとした加熱を開始し、68分後、反応器内容物は100℃に達する。100℃で2時間後、HPLC分析は、反応生成物のサンプルが完全に目的の酸化生成物へと転化したことを示す。さらに22分後、反応生成物を撹拌された脱イオン水(2.5リットル)中に注ぐ。終夜撹拌後、スラリーを細かなガラス濾過ロートを通して濾過した後、フィルター上の生成物を脱イオン水(200ml)で洗浄する。フィルター上の生成物を減圧オーブン中で8.86gの恒量となるまで乾燥させる(60℃)。生成物を、アセトニトリル(200ml)中のスラリーとして沸騰させ、続いて室温まで冷却し、中程度のガラス濾過ロートによる濾過によって回収する。フィルターから回収された固体生成物を減圧オーブン中で乾燥後(60℃)、8.56gの淡黄色の粉末生成物が回収される。生成物のHPLC分析は、100エリアパーセントの目的1−(2’,4’,6’−トリブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’−ジブロモフェニルグリオキサリル)ベンゼンの存在を示す。EI MSによって、生成物の構造が確認される。
【0110】
D. 1−(2’,4’,6’−トリブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’−ジブロモフェニルグリオキサリル)ベンゼンのフェニルエチニル化
1−(2’,4’,6’−トリブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’−ジブロモフェニルグリオキサリル)ベンゼン(8.56g、0.0123モル、0.0614臭素当量)、フェニルアセチレン(7.58グラム、0.0742モル)、窒素スパージした(nitrogen sparged)無水トリエチルアミン(16.97グラム、0.1677モル)、トリフェニルホスフィン(0.41グラム、0.0016モル)、パラジウム(II)アセタート(0.056グラム、0.00025モル)、および、窒素スパージした無水N,N−ジメチルホルムアミド(200g)を、乾燥窒素雰囲気下で、予備乾燥された電磁撹拌子を含む、予備乾燥された1リットルガラス製三つ口丸底反応器に加える。反応器をさらに、送風機で冷却されるスパイラルコンデンサー、および、サーモスタット制御の加熱マントルを備える温度計に装着する。黄色スラリーの撹拌および加熱を開始し、18分後、温度は57℃に達し、淡琥珀色の溶液が生じる。温度が80℃に達するまで加熱を継続し、この温度をさらに17時間維持する。このとき、HPLC分析は、1−(2’,4’,6’−トリブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’−ジブロモフェニルグリオキサリル)ベンゼン反応物の完全な転換が達成されたことを示す。反応器内容物を、撹拌された脱イオン水(2.5リットル)を含むビーカーに注ぐ。終夜撹拌後、沈殿生成物を中程度のガラス濾過ロートを通すことにより濾過し、回収する。ロート上の生成物のケークを2回にわけた(100ml)脱イオン水で洗浄し、フィルター上で自然乾燥し、11.2gのライトクリーム色の粉末(まだわずかに湿っている)を得る。生成物のHPLC分析は、100エリアパーセントの目的1−[2’,4’,6’−トリス(フェニルエチニル)フェノキシ]−4−[3’’,5’−ビス(フェニルエチニル)フェニルグリオキサリル]ベンゼン生成物の存在を示す。
【0111】
E. 1−[2’,4’,6’−トリス(フェニルエチニル)フェノキシ]−4−[3’’,5’−ビス(フェニルエチニル)フェニルグリオキサリル]ベンゼンのABモノマーへの転換
1−[2’,4’,6’−トリス(フェニルエチニル)フェノキシ]−4−[3’’,5’−ビス(フェニルエチニル)フェニルグリオキサリル]ベンゼン(11.2g、理論量0.0123モル)、1,3−ジフェニルアセトン(2.91g、0.0138モル)、2−プロパノール(172ミリリットル)およびトルエン(77ミリリットル)を、乾燥雰囲気下で、電磁撹拌子を含む500mlガラス製三つ口丸底反応器に加える。反応器にさらにクライゼン(Claisen)アダプター、冷却(2℃)コンデンサー、温度計、サーモスタット制御された加熱マントル、窒素スパージチューブ、および、0.94mlのテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(1Mメタノール溶液)の2−プロパノール(18.6ml)溶液を充填した添加ロートを装着する。撹拌、加熱および窒素スパージを開始し、68分後、穏やかな還流の温度である79℃に達する。このとき、窒素スパージを停止して液面上の窒素へと転換し、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド触媒溶液を滴下すると、淡黄褐色の薄いスラリーが生じ始める。17分後、触媒溶液を全て添加すると、えび茶色の薄いスラリーが生じる。累積して27分後、暗赤紫色の溶液を生じる。累積して125分間の反応後、HPLC分析は、ABモノマーの最適な転換が生じたことを示し、反応器から加熱マントルを除去後、2−プロパノール(150ml)を反応器に加えて、反応器の外側を送風機で冷却した。25℃に冷却後、生成物を中程度のガラス濾過ロートを通すことによって濾過して回収する。ロート上の生成物ケーク(product cake)を2−プロパノール(50ml)で洗浄し、続いて減圧オーブン中(40℃)で乾燥し、9.59グラム(単体収率79.9パーセント)のABモノマーを、暗赤紫色の結晶生成物として得る。HPLC分析は、目的生成物が93.4エリアパーセントで存在することを示す。
【0112】
実施例10 ポリアリーレンポリマー生成
実施例9のABモノマーを4.0mg用い、示差走査熱分析(DSC)を行なう。25℃から500℃まで7℃/分の加熱速度を用いて、45cm/分で流れる窒素流下でDSC 2920 Modulated DSC(TA Instruments)を用いた。溶融に伴うわずかな吸熱遷移が観察され、それはその後に続く発熱遷移の開始点に位置する。フェニルエチニル基とシクロペンタジエノン基のディールス−アルダー反応に起因する、単一の発熱遷移(ピークの前後にショルダリング(shouldering)を伴う)は、最高点230.0℃(109.5ジュール/グラム)で観察される。フェニルエチニル基の反応に起因する第2の発熱遷移は、最高点が379.6℃(166.9ジュール/グラム)で観察される。この発熱遷移の開始温度は325.7℃であり、前述のディールス−アルダー反応に伴う遷移の直後である。DSC分析から回収されたサンプルは、硬い暗琥珀色の溶融した透明の固体である。
【0113】
実施例11 2,5−ジフェニル−3−[4−(4−(フェニルエチニル)フェノキシ)フェニル]−5−(3,5−ビス(フェニルエチニル)フェニル)−2,4−シクロペンタジエノン(ABモノマー)
【化41】

【0114】
A. 3,5−ジブロモフェニルアセチルクロリドによる4−ブロモジフェニルオキシドのアシル化
4−ブロモジフェニルオキシド(12.46g,0.05モル)、3,5−ジブロモフェニルアセチルクロリド(15.62g、0.05モル)、および、無水1,2−ジクロロエタン(50ミリリットル)を、乾燥窒素雰囲気下で、予備乾燥された電磁撹拌子を含む、予備乾燥された500mlのガラス製1口丸底反応器に加える。乾燥窒素雰囲気下で、塩化アルミニウム(8.00g、0.06モル)を0.5gのアリコットで5分毎に、23℃に維持される反応器中のスラリーに撹拌しながら加える。これらの塩化アルミニウム添加の最中に、反応器内の生成物は、スラリーからレッドオレンジ色の溶液へ変化する。反応の125分後には、反応生成物のサンプルのHPLC分析は、反応物のさらなる目的アシル化生成物への転化が生じないことを示す。累積して反応の157分後、反応生成物を2リットルビーカーに入れた氷に注ぎ、その後ジクロロメタン(500ml)を加える。氷が融解したら、その混合物を分液ロートに入れ、水層を除去および廃棄した後、残存有機層を脱イオン水(200ml)で洗浄する。回収された有機層を無水硫酸ナトリウムを通して乾燥し、次に中程度のガラス濾過ロートを通すことによって濾過する。得られた濾液をロータリーエバポレーションし、28.30gの白色粉体生成物を得る。生成物をジクロロメタン(250ml)に溶解後、水酸化カリウム水溶液(0.15モルの有効KOHが、100mlの脱イオン水に溶解している)で抽出し、少量の3,5−ジブロモフェニル酢酸を生成物から除去する。ジクロロメタン溶液を脱イオン水(100ml)で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、そして、中程度のガラス濾過ロートを通すことによって濾過し、濾液をロータリーエバポレーションし、21.41gの1−(4’−ブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’’−ジブロモフェニルアセチル)ベンゼン(水性抽出物から回収された5.80gのカリウム3,5−ジブロモフェニルアセタートを伴う)を得る。
【0115】
B. 1−(4’−ブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’’−ジブロモフェニルアセチル)ベンゼンの酸化
1−(4’−ブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’’−ジブロモフェニルアセチル)ベンゼン(21.4g、0.0408モル)、および、ジメチルスルホキシド(400ml)を、電磁撹拌子を含む1リットルのガラス製三つ口丸底反応器に加える。反応器に、スクラバーに排気され室温で運用されるコンデンサー、温度計、サーモスタット制御された加熱マントル、および、48パーセント臭化水素酸(48.12g)水溶液が充填された添加ロートをさらに装着する。撹拌を開始し、続いて臭化水素酸水溶液をストリームとして4分間かけて37℃の溶液に加えると、48℃の最大発熱を生じる。1分後穏やかな加熱を開始し、38分後、反応器内容物は100℃に達する。100℃で110時間後、HPLC分析は、反応生成物のサンプルが完全に目的の酸化生成物へと転化したことを示す。追加の13分後、反応生成物を撹拌された脱イオン水(3リットル)中に注ぐ。3時間撹拌後、スラリーを粗いガラス濾過ロートを通すことにより濾過した後、フィルター上の生成物を脱イオン水(200ml)で洗浄する。フィルター上の生成物を湿潤生成物として回収し、これを次に沸騰アセトン(150ml)に溶解した後に、室温まで冷却する。一晩で生成する結晶生成物を中程度のガラス濾過ロートを通すことによって濾過し回収する。フィルターから回収された固体生成物を減圧オーブン中で乾燥後(60℃)、淡黄色の繊維状生成物が11.85g回収される。室温にて濾液がわずかに濁った溶液となるまでロータリーエバポレーションを行った後、室温で終夜放置し、濾過および乾燥して、結晶生成物の2回目の収集物(1.50g)を回収する。第1の収集物のHPLC分析は、100エリアパーセントの目的1−(4’−ブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’’−ジブロモフェニルグリオキサリル)ベンゼンの存在を示す。第2の収集物のHPLC分析は、2つの副生成物を伴う、97.0エリアパーセントの目的1−(4’−ブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’’−ジブロモフェニルグリオキサリル)ベンゼンの存在を示す。EI MSによって、生成物の構造が確認される。
【0116】
C. 1−(4’−ブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’’−ジブロモフェニルグリオキサリル)ベンゼンのフェニルエチニル化
上記Bで得られた1−(4’−ブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’’−ジブロモフェニルグリオキサリル)ベンゼンの第1および第2収集物を合わせたものの一部(13.15g、0.0244モル、0.0732臭素当量)、フェニルアセチレン(9.04グラム、0.0885モル)、窒素スパージした無水トリエチルアミン(20.22グラム、0.20モル)、トリフェニルホスフィン(0.49グラム、0.0019モル)、パラジウム(II)アセタート(0.07グラム、0.00031モル)、および、窒素スパージした無水N,N−ジメチルホルムアミド(233g)を、乾燥窒素雰囲気下で、予備乾燥された電磁撹拌子を含む、予備乾燥された500ミリリットルガラス製三つ口丸底反応器に加える。反応器をさらに、送風機で冷却されるスパイラルコンデンサー、および、サーモスタット制御の加熱マントルを備える温度計に装着する。温度が80℃に達するまで淡い鮮黄色の溶液の撹拌および加熱を継続し、この温度をさらに18.5時間維持する。このとき、HPLC分析は、1−(4’−ブロモフェノキシ)−4−(3’’,5’’−ジブロモフェニルグリオキサリル)ベンゼン反応物の完全な転換が達成されたことを示す。反応器内容物を、撹拌された脱イオン水(3リットル)を含むビーカーに注ぐ。終夜撹拌後、沈殿生成物を中程度のガラス濾過ロートを通すことによって濾過して回収する。ロート上の生成物のケークを、2回にわけて(100ml)脱イオン水で洗浄し、室温の減圧オーブン内で乾燥し、17.24gの黄色の粉末(まだわずかに湿っている)を得る。生成物を試薬グレードのエタノール(4リットル)中で、濁った溶液が生じるまで煮沸した後、室温まで冷却する。一晩で生成する結晶生成物を中程度のガラス濾過ロートを通すことによって濾過して回収する。回収された固体生成物を減圧オーブン中で室温で乾燥後、2.80gの淡黄色のマスタードイエローの結晶生成物が回収される。HPLC分析は、95.4エリアパーセントの目的1−[4’−(フェニルエチニル)フェノキシ]−4−[3’’,5’−ビス(フェニルエチニル)フェニルグリオキサリル]ベンゼン生成物の存在を示す。
【0117】
D. 1−[4’−(フェニルエチニル)フェノキシ]−4−[3’’,5’−ビス(フェニルエチニル)フェニルグリオキサリル]ベンゼンのABモノマーへの転換
1−[4’−(フェニルエチニル)フェノキシ]−4−[3’’,5’−ビス(フェニルエチニル)フェニルグリオキサリル]ベンゼン(1.83g、0.0030モル)、1,3−ジフェニルアセトン(0.72g、0.0034モル)、および、1−プロパノール(100ミリリットル)を、乾燥雰囲気下で、電磁撹拌子を含む500mlガラス製三つ口丸底反応器に加える。反応器にさらにクライゼン(Claisen)アダプター、冷却(2℃)コンデンサー、温度計、サーモスタット制御された加熱マントル、窒素スパージチューブ、および、隔壁で覆われた0.24mlのテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(1Mメタノール溶液)の注入用ポートを装着する。撹拌、加熱および窒素スパージを開始し、45分後、95℃の還流温度に達する。このとき、窒素スパージを液面上の窒素へと転換し、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド触媒溶液を注入すると、黄色の薄いスラリーが生じる。触媒注入の9分後、暗赤色の溶液が生じ、HPLC分析は、1−[4’−(フェニルエチニル)フェノキシ]−4−[3’’,5’−ビス(フェニルエチニル)フェニルグリオキサリル]ベンゼンから、ABモノマーに起因する単一生成物への完全な転換を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)3つ以上のジエノフィル基(A−官能性基)およびii)2つの共役炭素−炭素2重結合および脱離基Lを含む単一環構造(一括してB−官能性基という)を含む化合物であって、
前記化合物の分子の1つのA−官能性基の1つは、付加環化反応条件下で第2の分子のB−官能性基と反応し、前記脱離基Lを脱離し、これによってポリマーを形成し得ることを特徴とする、化合物。
【請求項2】
以下の式で表される請求項1に記載の化合物。
【化1】

[式中、Lは−O−、−S−、−N=N−、−(CO)−、−(SO)−または−O(CO)−であり、
Zは独立にそれぞれの場合、−W−(C≡C−Q)、水素、ハロゲン、非置換または不活性置換芳香族基、非置換または不活性置換アルキル基であり、または、2つの隣接Z基はそれらが結合している炭素と一緒に縮合芳香環を形成し、
Wは非置換または不活性置換C6〜20芳香族基であり、
Qは水素、非置換または不活性置換C6〜20アリール基、または、非置換または不活性置換C1〜20アルキル基であり、
qは独立にそれぞれの場合1から3の整数であり、そして、
Z置換基の数とqは、合計で3から10の−C≡C−Q基を与えるよう選択される。]
【請求項3】
以下の式で表される請求項1に記載の化合物。
【化2】

[式中、Rは水素、C6〜20アリールまたは不活性置換アリールであり、
qは1から3の数字であり、
rは0から3の数字であり、
uは0または1であり、vは1から3の数字であり、
sおよびtは1から4の数字であり、
(v・s)+(q・t)は3以上の数字であり、そして、
r+s+t=4である。]
【請求項4】
下記化学式で表される請求項1に記載の化合物。
【化3】

[式中、q’は2から3の数字であり、q’’は1から3の数字である。]
【請求項5】
2−(4−フェニルエチニルフェニル)−3,4−ジ((4−フェニルエチニル)−4−フェノキシフェニル)−5−フェニル−2,4−シクロペンタジエノン、
2,5−ジ−(4−フェニルエチニルフェニル)−3,4−ジ((4−フェニルエチニル)−4−フェノキシフェニル)−2,4−シクロペンタジエノン、
2,3,4−トリ−(4−フェニルエチニルフェニル)−5−フェニル−2,4−シクロペンタジエノン、
2,3,4,5−テトラキス−(4−フェニルエチニルフェニル)−2,4−シクロペンタジエノン、
2,5−ビス−(3,5−ジ(フェニルエチニル)フェニル)−3,4−ビス[4−(4−フェニルエチニル)フェノキシフェニル]−2,4−シクロペンタジエノン、
2,5−ビス−(3,5−ジ(フェニルエチニル)フェニル)−3,4−ビス[4−(4−フェニルエチニル)フェニル]−2,4−シクロペンタジエノン、
2,5−ジフェニル−3−[4−(2,4,6−トリス(フェニルエチニル)フェノキシ)フェニル]−5−(3,5−ビス(フェニルエチニル)フェニル)−2,4−シクロペンタジエノン、および、
2,5−ジフェニル−3−[4−(4−(フェニルエチニル)フェノキシ)フェニル]−5−(3,5−ビス(フェニルエチニル)フェニル)−2,4−シクロペンタジエノンからなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のモノマーと、必要に応じて溶媒、および、必要に応じて空隙形成物質を含む、スピンコーティング可能な硬化性組成物。
【請求項7】
電子機器を請求項6に記載の組成物でコーティングし、前記必要に応じて含まれる溶媒を除去し、前記モノマーを硬化し、そして、前記必要に応じて含まれる空隙形成物質を必要に応じて除去することを含む、電子機器上に絶縁フィルムを形成する方法。
【請求項8】
請求項7に記載のように製造された絶縁フィルムを含む、電子機器。

【公表番号】特表2006−525413(P2006−525413A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509557(P2006−509557)
【出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/009972
【国際公開番号】WO2004/090018
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】