多層セラミック基板及びその製造方法
【課題】 キャビティを有する多層セラミック基板を製造するに際して、寸法精度やキャビティ底面の平面度に優れた多層セラミック基板を製造可能とする。
【解決手段】 キャビティの底面を構成する底面形成用グリーンシート32とキャビティ形状に応じた開口を形成するキャビティ形成用グリーンシートとを含む複数の基板用グリーンシートを積層して積層体33とし、積層体33の最外層となる基板用グリーンシートの表面にそれぞれ収縮抑制材グリーンシート22,29を積層した状態で当該積層体33をプレスした後、焼成することによりキャビティ11を有する多層セラミック基板1を形成する。
【解決手段】 キャビティの底面を構成する底面形成用グリーンシート32とキャビティ形状に応じた開口を形成するキャビティ形成用グリーンシートとを含む複数の基板用グリーンシートを積層して積層体33とし、積層体33の最外層となる基板用グリーンシートの表面にそれぞれ収縮抑制材グリーンシート22,29を積層した状態で当該積層体33をプレスした後、焼成することによりキャビティ11を有する多層セラミック基板1を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビティを有する多層セラミック基板及びその製造方法に関するものであり、特に無収縮焼成方法を適用して製造されるキャビティを有する多層セラミック基板及びその製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等の分野においては、電子デバイスを実装するための基板が広く用いられているが、近年、電子機器の小型軽量化や多機能化等の要望に応え、且つ高信頼性を有する基板として、多層セラミック基板が提案され実用化されている。多層セラミック基板は、複数のセラミック層を積層することにより構成され、各セラミック層に配線導体や電子素子等を一体に作り込むことで、回路基板の高密度化が可能となっている。
【0003】
そして、前記多層セラミック基板においては、電子機器のさらなる小型化、低背化等を進めることを目的に、電子デバイスを収納するキャビティ(凹部)が形成された多層セラミック基板も実用化されている。このようなキャビティ付き多層セラミック基板の場合には、キャビティ内に電子デバイスを収容した状態で実装することができるので、前述の要望をより十分に満足させることができ、多層セラミック基板自体の小型化、低背化を実現することも可能である。
【0004】
ところで、前述の多層セラミック基板は、複数のグリーンシートを積層して積層体を形成した後、これを焼成することにより形成される。そして、前記グリーンシートは、この焼成工程における焼結に伴って必ず収縮し、多層セラミック基板の寸法精度を低下する大きな要因となっている。具体的には、前記収縮に伴って収縮バラツキが発生し、最終的に得られる多層セラミック基板においては、寸法精度は、0.5%程度に留まっている。
【0005】
このような状況から、多層セラミック基板の焼成工程において、グリーンシートの面内方向の収縮を抑制し、厚さ方向にのみ収縮させる、いわゆる無収縮焼成方法が提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。特許文献1等にも記載されるように、前記焼成温度でも収縮しないシートをグリーンシートの積層体に貼り付け、この状態で焼成を行うと、前記面内方向の収縮が抑制され、厚さ方向にのみ収縮する。この方法によれば、多層セラミック基板の面内方向の寸法精度を0.05%程度にまで改善することが可能である。
【0006】
ただし、前記キャビティを有する多層セラミック基板を作製する場合には、前記のような無収縮焼成方法を適用しても、必ずしも十分な寸法精度や平面度等が得られないという問題がある。これは、通常の無収縮焼成方法では、キャビティの底部に収縮抑制の拘束力が働かないことによる。キャビティの底部に収縮抑制の拘束力が働かないと、キャビティの底面の電子デバイス搭載に十分な平面度を確保することができず、電子デバイスの実装に支障をきたすおそれがある。
【0007】
そこで、キャビティの底面にも収縮抑制シートを配し、前記の不都合を解消することが試みられている(例えば、特許文献2等を参照)。特許文献2記載の発明では、収縮抑制用無機材料を含む収縮抑制用シートをキャリアフィルム上で形成し、収縮抑制用シートに、キャビティの底面の輪郭に相当する形状の切り込みを入れ、切り込みの外側の部分を除去した後、生の基板用積層体を作製するための基板用セラミックグリーンシートの積層工程において、キャビティの底面を与える基板用セラミックグリーンシート上に、キャリアフィルム上に保持された収縮抑制用シートを転写し、キャビティの底面上に収縮抑制用シートが配置された状態で焼成工程を実施している。これにより、焼成後の基板用積層体の寸法精度を高くできるとともに、キャビティにおいて不所望な歪みを生じにくくすることができ、配線の高密度化を高い信頼性をもって達成することができるとしている。
【特許文献1】特開平10−75060号公報
【特許文献2】特開2003−318309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献2記載の発明のように、キャビティの底面を与える基板用セラミックグリーンシート上に収縮抑制用シートを配置しただけでは、例えばキャビティの変形等の問題を完全に解消することは難しい。特に、多層セラミック基板の製造方法においては、複数のグリーンシートを積層した積層体のプレスが必要であり、前記キャビティを有する多層セラミック基板の製造方法では、プレス工程においてキャビティ開口部が潰れて変形する可能性が高い。また、焼成工程においても、キャビティ開口部周辺が盛り上がるという現象が見られ、やはり変形の原因となるおそれがある。
【0009】
また、キャビティを有する多層セラミック基板を作製する別の方法として、グリーンシートを積層して焼成し、その後、焼結した積層体に穴開け加工を施すことも考えられる。しかしながら、焼結した積層体は硬くて脆いことから、精度の高い加工が難しく、高価な設備が必要となる等、製造コストの点でも問題が多い。
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、低コストにて優れた寸法精度や平面度を実現し、キャビティ周辺部における変形の小さい多層セラミック基板を提供することを目的とする。また、本発明は、キャビティを有する多層セラミック基板を製造するに際して、寸法精度や平面度に優れた多層セラミック基板を簡単、且つ低コストで製造することが可能で、しかもキャビティ周辺部における変形等の発生も解消することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するために、本発明の多層セラミック基板は、複数の基板用グリーンシートを積層した後焼成することにより製造され、キャビティを有し、前記キャビティの底面を構成する底面形成用セラミック層を含むセラミック層が積層一体化される多層セラミック基板であって、前記底面形成用セラミック層上に前記キャビティの底面の周縁部を跨ぐ状態で導体パターンが形成されており、前記底面形成用セラミック層上の前記底面の周縁部に対応する部分のうち少なくとも前記導体パターンの表面に、前記焼成の際の焼成温度で軟化する軟化層を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の多層セラミック基板の製造方法は、キャビティの底面を構成する底面形成用グリーンシートとキャビティ形状に応じた開口を形成するキャビティ形成用グリーンシートとを含む複数の基板用グリーンシートを積層して積層体とし、前記積層体の最外層となる基板用グリーンシートの表面にそれぞれ収縮抑制材グリーンシートを積層した状態で当該積層体をプレスした後、焼成することによりキャビティを有する多層セラミック基板を形成する多層セラミック基板の製造方法であって、前記底面形成用グリーンシート上に前記キャビティの底面の周縁部を跨ぐ状態で導体パターンを形成し、前記底面形成用グリーンシート上の前記周縁部に対応する部分のうち少なくとも前記導体パターンの表面に、前記焼成の際の焼成温度で軟化する軟化層を形成した後、貫通孔内に収縮抑制材グリーンシート片が埋め込まれたキャビティ形成用グリーンシートをキャビティの底面と前記収縮抑制材グリーンシート片とが重なるように前記底面形成用グリーンシートの直上に積層するとともに、前記キャビティを埋める形で前記各キャビティ形成用グリーンシートとは分離された埋め込み用グリーンシートが前記収縮抑制材グリーンシート片上に配されるようにキャビティ形成用グリーンシートを積層した状態で前記プレス及び焼成を行い、焼成後に前記埋め込み用グリーンシートの焼成物を除去することを特徴とする。
【0013】
前述の通り、キャビティの底部に露呈する基板用グリーンシート上にも収縮抑制材グリーンシート片を配した状態で無収縮焼成方法を実施しているので、寸法精度が確保され、また、キャビティ底面の平面度も十分に確保される。それと同時に、キャビティ内に埋め込み用グリーンシートを配した状態で積層体のプレスを行うようにしているので、キャビティの無い積層体と同様に平板の金型等によって容易にプレスすることが可能であり、キャビティ開口部の潰れやキャビティ開口部周辺の盛り上がり等により変形が生ずることもない。
【0014】
ところで、多層セラミック基板においては、キャビティ底面や多層セラミック基板内部に導体パターンが形成されるのが一般的であるが、キャビティの底部に収縮抑制材グリーンシート片を配した状態で無収縮焼成方法により導体パターンがキャビティ底面の周縁部に跨る状態で形成されている多層セラミック基板の製造を試みると、当該導体パターンがキャビティ側壁との接触部を境に断線するという問題が発生することがある。この断線は、キャビティ側壁の下端部(底面形成用グリーンシートに接するキャビティ形成用グリーンシートの内周縁部)に対する収縮抑制材グリーシート片及び収縮抑制材グリーシートの拘束力が他の部分に比べて弱いため、例えばキャビティ側壁の下端部を構成するキャビティ形成用グリーンシートがキャビティ中心から離れる方向に大きく収縮し、その際の応力がキャビティ側壁の下端部に接する導体パターンや底面形成用セラミック層に集中することに起因する。
【0015】
そこで本発明では、底面形成用セラミック層上であってキャビティ底面の周縁部に対応する部分のうち少なくとも導体パターンの表面に、焼成の際の焼成温度で軟化する軟化層を形成する。導体パターンとキャビティの側壁の下端部との間に軟化層が介在することになるため、焼成時にキャビティの側壁の下端部を構成するキャビティ形成用グリーンシートがキャビティ中心から離れる方向に収縮する際、キャビティの側壁の下端部は軟化した軟化層表面を滑るように移動する。そのため、キャビティ形成用グリーンシートが面内方向に収縮することに起因する導体パターンへの応力集中が軟化層により緩和され、キャビティ底面の導体パターンの断線が抑制される。
【0016】
そして、焼成後の積層体から、収縮抑制材グリーシート、収縮抑制材グリーシート片及び埋め込み用グリーンシートの残渣を除去することで、キャビティの周縁部に対応する部分のうち少なくとも導体パターンの表面に軟化層を有し、キャビティの底面の導体パターンに断線のない多層セラミック基板が得られる。
【0017】
なお、本発明において、キャビティの底面とは、キャビティの深さ方向においていわゆる底部を構成する領域が全て該当し、例えばキャビティが多段形状を有する場合には、最も深い部分の底面のみならず、これよりも浅く当該底面に対して段差を有する段差面も底面に該当するものとする。また、埋め込み用グリーンシートは、キャビティ側壁形成用グリーンシートとは分離されていることが必要であるが、この場合の分離とは、例えば切り込みがキャビティ側壁形成用グリーンシートの厚さ方向に貫通しているものだけでなく、切り込みがキャビティ側壁形成用グリーンシートの厚さ方向に貫通していないものも含むものとする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、キャビティを有する多層セラミック基板の製造において、寸法精度や平面度に優れた多層セラミック基板を製造することが可能であり、しかもキャビティ開口部の潰れやキャビティ開口部周辺における盛り上がり等の変形の無い多層セラミック基板を製造することが可能である。また、本発明によれば、焼結後の穴開け加工が不要であるので、穴開けのための特別な設備も不要であり、簡単且つ低コストに前記多層セラミック基板を製造することが可能である。さらに、本発明によれば、キャビティ底面に露呈する導体パターンの断線がない多層セラミック基板を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を適用した多層セラミック基板及びその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
本実施形態の多層セラミック基板は、電子デバイス等を収容するためのキャビティ(凹部)を有する多層セラミック基板である。
【0021】
図1(a)〜(d)は、キャビティ11を有する多層セラミック基板1の最も単純なモデル例を示すものであり、本例の場合、複数(ここでは9層)のセラミック層2〜10が積層一体化されている。これらセラミック層2〜10のうち、下の2層2,3については、キャビティ形成のための貫通孔が形成されていない平坦なセラミック層であり、これらの中で上層となるセラミック層3が底面形成用セラミック層に相当し、その上面の一部がキャビティ11の底部に臨み、キャビティの底面11aを構成することになる。
【0022】
一方、前記セラミック層3上に積層される残りのセラミック層4〜10は、キャビティ11の側壁に対応してそれぞれ貫通孔4a〜10aが形成されており、キャビティ形成用セラミック層に相当する。セラミック層3が構成する底面11aとセラミック層4〜10の貫通孔4a〜10aが連なることによる側壁とで、キャビティ11が所定の空間として構成されている。
【0023】
キャビティ11の開口形状は、例えば正方形であるが、これに限らず、長方形や長円形等、任意の形状とすることができる。ただし、キャビティ11の開口形状を正方形や長方形とする場合には、角部に丸みを付け、円弧状とすることが好ましい。これにより角部において発生する応力を緩和することができ、角部に亀裂が発生する等の不都合を解消することができる。収縮抑制シートを用いた無収縮焼成法を採用した場合、前記キャビティ11において、側壁が外側に引き込まれる形になり、キャビティ11の開口形状における角部に応力が集中して亀裂が発生するおそれがある。角部に丸みを付け、円弧状とすることで、前記応力の集中を緩和することができ、亀裂の発生を防止することができる。この場合、円弧における曲率半径Rは、0.05mm以上とすることが好ましい。前記曲率半径Rは、収縮抑制シートの厚さに応じて設定することがより好ましく、例えば収縮抑制シートの厚さが75μmの場合には、前記曲率半径Rを0.1mm以上とすることで亀裂が発生することがなかった。収縮抑制シートの厚さを250μmとした場合には、前記曲率半径Rを0.51mm以上とすることで亀裂が発生することがなかった。
【0024】
セラミック層3の表面には、キャビティ11の底面11aの周縁部を跨ぐ状態で導体パターン12が形成されている。導体パターン12の一端はキャビティ11の底面11aに露呈し、キャビティ11内に収容される電子デバイスに接続される。また、導体パターン12の他端は、セラミック層3とセラミック層4との間に配され、多層セラミック基板11の内部に形成された内部電極や配線等に接続されている。図1においては、四角形状のキャビティ11において、平面からみたとき対向する2辺に短冊状の導体パターン12が2個ずつ計4個設けられた状態を示したが、導体パターン12の形状及び数は任意に設定できる。図示は省略するが、キャビティ11の底面11aには、放熱用のビアホール等が設けてある場合もある。
【0025】
本実施形態の多層セラミック基板1では、キャビティ11の底面の周縁部に対応する部分のうち、少なくとも導体パターン12の表面に軟化層13が配置されている。図1に示す軟化層13は、キャビティ11の底面11aの周縁部のうち、導体パターン12が設けられた2辺を縁取るような帯状に形成されている。
【0026】
軟化層13は、各種グリーンシートを積層した後プレスし、焼成して多層セラミック基板1を得る際の焼成温度で軟化する材料により構成される。焼成の際、キャビティ形成用セラミック層4〜10となるキャビティ形成用グリーンシートと底面形成用グリーンシート及び導体パターン12との間に軟化した軟化層13が介在することにより、キャビティ形成用グリーンシートの収縮によりセラミック層3や導体パターン12に加わる応力が緩和され、導体パターン12の断線を抑制することができる。
【0027】
軟化層13を構成する材料としては、多層セラミック基板1を得るための焼成の際の焼成温度で軟化することが求められ、また、セラミック層等と反応しないことが好ましい。このような材料としては例えばガラスを用いることができ、特に、セラミック層2〜10に含まれるガラスと同一種類のガラスを用いることが好ましい。具体的には、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸バリウムガラス、ホウケイ酸ストロンチウムガラス、ホウケイ酸亜鉛ガラス、ホウケイ酸カリウムガラス等を用いることができる。
【0028】
軟化層13のキャビティ11の外側の幅は、導体パターン12の断線を抑制できる程度に確保されていることが望ましい。具体的には、キャビティ11の底面11aの周縁部と軟化層13の外側の周縁との距離A1を0.1mm〜0.5mmとすることが好ましい。
【0029】
また、軟化層13のキャビティ11の内側の幅は、詳細は後述するが、セラミック層3のキャビティ11の底面11aの平坦性等を確保する観点から、極力小さい方が好ましい。具体的には、キャビティ11の底面11aの周縁部と軟化層13の内周縁部との距離A2を例えば0.5mm以下(ただし0は含まず。)とすることができる。また、導体パターン12の断線を確実に防止するためには、距離A2を0.05mm〜0.5mmとすることが好ましく、0.1mm〜0.5mmとすることがより好ましい。
【0030】
さらに、軟化層13の膜厚は、小さすぎると導体パターン12の断線を抑制する効果が不十分となるおそれがあり、逆に大きすぎると基板用グリーンシートの積層時に支障をきたすおそれがある。これらを勘案すると、軟化層13の膜厚は0.005mm〜0.02mmとすることが好ましい。
【0031】
ところで、後述するような各製造方法によって作製される多層セラミック基板においては、キャビティが特異的な形状を有しており、従来の多層セラミック基板のキャビティ形状と比べて樹脂封止において優位性を有している。以下、本実施形態の多層セラミック基板のキャビティ形状について説明する。
【0032】
前記多層セラミック基板1を作製するに際しては、詳細は後述するが、収縮抑制材グリーンシート片に相当する第1嵌合シートや最上層複合グリーンシート、さらには収縮抑制グリーンシートによって基板用グリーンシートを拘束しながら焼成を行い、面内方向における収縮を抑制するようにしている。この場合、焼成の際に前記の通り積層体の両面が収縮抑制グリーンシートで拘束されていたため、焼成後、各基板用グリーンシートは厚み方向にのみ収縮し、面方向には収縮していないはずである。
【0033】
しかしながら、詳細に観察すると、収縮抑制グリーンシート(第1嵌合シート、最上層複合グリーンシート、及び収縮抑制グリーンシート)直近の基板用グリーンシートについては面方向にほとんど収縮することはないが、収縮抑制グリーンシートから離れるにつれ、僅かではあるが面方向に収縮している。この面方向の収縮は、収縮抑制グリーンシートから離れるにつれて次第に大きくなる。このため、キャビティ11の形状を詳しく観察すると、図2に模式的に示すように、収縮抑制グリーンシート直近の開口部よりも内部の方が開口面積が大きな、いわば太鼓型形状となっている。
【0034】
この点についてさらに詳細に説明すると、前記キャビティ11においては、開口部11bにおける開口寸法W1が、キャビティ11の深さ方向中途位置における開口寸法W2よりも小である。すなわち、キャビティ11の開口部11bにおける開口面積が、キャビティ11の深さ方向中途位置11cにおける開口面積よりも小である。本例の場合、キャビティ11の開口面積が深さ方向中途位置11cに至るまで次第に増加し、次いで次第に減少しており、キャビティ11の内壁の断面形状は略円弧状である。したがって、キャビティ11の形状は、深さ方向中途部が円弧状に膨出する形状とされており、前記太鼓型形状となっている。
【0035】
キャビティ11が前述のような形状を有する多層セラミック基板1にあっては、前記特異的なキャビティ形状であるが故に、信頼性の点で大きな利点を有する。例えば、図3に示すように、電子デバイス40をキャビティ11内に実装し、樹脂100により樹脂封止した場合、前記の通りキャビティ11の開口部11bの開口寸法が内部よりも小さいので、充填した樹脂100が脱落することはない。従来の形状では、樹脂100により樹脂封止を行った場合、多層セラミック基板1を構成する各セラミック層2〜10と封止を行う樹脂100とで熱膨張率が異なることに起因して、封止した樹脂100が剥離しキャビティ11から脱落するという問題が発生する。特に、長期間に亘る温度変化の繰り返しにより、前記問題は顕著になる。前記多層セラミック基板1では、キャビティ11の開口部11bにおける開口面積がキャビティ11の深さ方向中途位置11cにおける開口面積よりも小であることから、キャビティ11内に充填して硬化した樹脂100は、内部の体積が大きいためキャビティ11の開口部11bを通り抜けることができず、キャビティ11内に保持される。
【0036】
以上のような特異的形状のキャビティ11を有する多層セラミック基板1は、これまで実現されたことがなく、第1嵌合シートや最上層複合グリーンシート、さらには収縮抑制グリーンシートによって基板用グリーンシートを拘束しながら焼成することに加えて、焼成前の積層体を形成する際に、キャビティを形成する部分に切り込みにより分離された部分をそのまま残し、埋め込み用グリーンシートとしてこれを埋める形とし、プレスを行なう際に均一に圧力が加わるようにすることで形成することができる。理由について詳細は不明であるが、ただ単に収縮抑制グリーンシートで拘束するだけでは前記キャビティ形状とすることはできず、本発明の製造方法を適用することではじめて実現できることが実験的に確かめられている。
【0037】
前述のような構成の多層セラミック基板1は、以下のような製造プロセスを実施することにより形成される。以下、本実施形態の多層セラミック基板の製造プロセスについて説明する。
【0038】
前述のようなキャビティ11を有する多層セラミック基板1は、複数のグリーンシートを積層し、これをプレスして積層体とした後、焼成することで作製するが、寸法精度を確保するために、焼成時の収縮を抑制する必要がある。また、それだけでは不十分であり、例えばプレス工程の際のキャビティ11の開口部の潰れや、キャビティ11の開口部周辺の盛り上がりによる変形を解消する必要がある。
【0039】
そこで、本実施形態では、無収縮焼成方法を採用するとともに、キャビティに相当する空間内に埋め込み用グリーンシートを配した状態でプレス工程や焼成工程を行い、プレス時の潰れ等を解消するようにする。
【0040】
本実施形態の製造プロセスの工程フローを図4に示す。本実施形態の製造プロセスは、図4に示す通り、基本的には、積層体形成工程(ステップS1)と焼成工程(ステップS2)、キャビティ形成工程(ステップS3)とを少なくとも有するものである。これらに加えて、収縮抑制シート除去工程(ステップS4)を有していても良い。積層体形成工程(ステップS1)には、グリーンシート形成工程(ステップS11)、複合グリーンシート形成工程(ステップS12)、切り込み形成工程(ステップS13)、ビアホール形成工程(ステップS14)、導体印刷工程(ステップS15)、軟化層形成工程(ステップS16)、積層工程(ステップS17)、及びプレス工程(ステップS18)が含まれる。
【0041】
以下、各工程について説明すると、前述の多層セラミック基板を作製するには、先ず、積層体形成工程(ステップS1)における最初の工程であるグリーンシート形成工程(ステップS11)を行う。このグリーンシート形成工程(ステップS11)では、図5(a)に示すセラミックグリーンシート(基板用グリーンシートに相当する。)21と、図5(b)に示す収縮抑制材グリーンシート22とを形成する。これらセラミックグリーンシート21及び収縮抑制材グリーンシート22は、通常、プラスチックシート等の支持体23の表面に密着させて形成する。支持体23として使用するプラスチックシートは、表面が平滑なシートであれば如何なるものであっても良いが、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)シート等が好ましい。支持体23の厚さは、工程中に変形せず、且つ扱いやすい厚さであることが好ましく、一般的には50〜150μmである。
【0042】
前記セラミックグリーンシート21の作製方法としては、例えば、セラミック粉末と有機ビヒクルを混合してスラリー(誘電体ペースト)を調製し、これをドクターブレード法等のシート成形法により支持体23(PETシート等の樹脂シート)上に成膜する方法等を挙げることができる。作製する多層セラミック基板をガラスセラミック基板とする場合には、セラミック粉末に加えてガラス粉末を用い、これらを有機ビヒクルと混合したスラリーを使用すればよい。
【0043】
なお、有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものであり、主としてテルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、イソプロピルアルコール等の溶媒、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等のバインダ、ジ−n−ブチルフタレート等の可塑剤で構成される。有機ビヒクルの含有量は、特に限定されず、通常の含有量、例えば、バインダは1〜5質量%、溶剤は10〜50質量%とすればよい。
【0044】
誘電体ペーストは、前述のように有機ビヒクルを含有する有機系塗料としてもよいし、水に水溶性バインダ、分散剤等を溶解させた水溶系塗料としてもよい。ここで、水溶系バインダは、特に限定されず、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂、エマルジョン等から適宜選択すればよい。
【0045】
また、前記の通り、誘電体ペーストにはセラミック粉末が含まれるが、当該セラミック粉末を構成する誘電体磁器組成物の組成等は任意である。したがって、セラミック粉末の作製に当たっては、誘電体磁器組成物の組成に応じて原料(主成分及び副成分)を選択すればよい。この場合、原料である主成分や副成分の材料形態は特に限定されない。また、原料である主成分及び副成分としては、酸化物や、焼成により酸化物となる化合物が用いられる。なお、焼成により酸化物になる化合物としては、例えば炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、有機金属化合物等が例示される。勿論、原料として、酸化物と、焼成により酸化物になる化合物とを併用してもよい。原料中の各成分の含有量は、焼成後に前記誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。また、前記セラミック粉末の製法も任意であり、例えば液相合成法、あるいは固相法のいずれから得られた粉末であっても良い。
【0046】
LTCC基板であるガラスセラミック基板を作製する場合には、前記の通りセラミック粉末(セラミック成分)とガラス粉末(ガラス成分)を併用するが、このときこれらガラス成分とセラミック成分は、目的とする比誘電率や焼成温度に基づいて適宜選択すればよい。具体的には、1000℃以下で焼成してガラスセラミック基板とすることが可能なアルミナ(セラミック成分:結晶相)と酸化ケイ素(ガラス成分:ガラス相)の組み合わせを例示することができる。その他、セラミックス成分としては、マグネシア、スピネル、シリカ、ムライト、フォルステライト、ステアタイト、コージェライト、ストロンチウム長石、石英、ケイ酸亜鉛、ジルコニア、チタニア等を用いることができる。ガラス成分としては、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸バリウムガラス、ホウケイ酸ストロンチウムガラス、ホウケイ酸亜鉛ガラス、ホウケイ酸カリウムガラス等を用いることができる。ガラス成分は60〜80体積%とし、骨材であるセラミックス成分を40〜20体積%とすることが好ましい。ガラス成分が前記範囲を外れると複合組成物となり難く、強度及び焼結性が低下するからである。
【0047】
一方、収縮抑制材グリーンシート22の作製方法も、前記セラミックグリーンシート21の作製方法と基本的には同様であるが、グリーンシートに含まれる成分が異なる。すなわち、収縮抑制材グリーンシート22は、セラミックグリーンシート21が焼結する温度では収縮し難い収縮抑制材料からなり、自身の収縮が抑制されたグリーンシートである。収縮抑制材料としては、石英、クリストバライト、若しくはトリジマイトの少なくとも一種を含む組成物等が使用可能である。あるいは、アルミナを含む組成物としても良い。
【0048】
これらの収縮抑制材料は、セラミックグリーンシート21に含まれるセラミック成分やガラス成分の焼成温度では焼結しないか、あるいは一部しか焼結しないため、セラミックグリーンシート21の焼成温度では収縮が生じない。したがって、前記収縮抑制材料から構成される収縮抑制材グリーンシート22を、セラミックグリーンシート21と密着して積層すれば、セラミックグリーンシート21の焼成時の平面方向の収縮を抑制するように働く。
【0049】
なお、収縮抑制材グリーンシート22の形成に際しては、前記収縮抑制材料(石英、クリストバライト、若しくはトリジマイトの少なくとも一種を含む組成物)に加えて焼結助剤を含有させてもよく、この場合にも同様の効果を得ることができる。焼結助剤を含有させた場合には、当該焼結助剤がセラミック成分やガラス成分の焼成温度で焼結するが、収縮抑制材料である石英、クリストバライト、若しくはトリジマイトの熱膨張係数がそれぞれ約20ppm/℃、約50ppm/℃、約40ppm/℃であり、セラミック成分やガラス成分に比べて大きいことから、焼結助剤が焼成後に収縮したとしても焼成前と焼成後の寸法変化が相殺され、セラミックグリーンシート21の収縮を抑制することができる。
【0050】
焼結助剤を併用する場合、使用する焼結助剤としては、セラミック成分やガラス成分の焼結開始温度以下で軟化するか、液相を生成する酸化物を挙げることができる。前者を用いた場合は、焼結助剤が軟化することによって前記収縮抑制材料の粒子同士が結合するため焼結し、後者を用いた場合は、収縮助剤が液相を生成することによって前記収縮抑制材料の粒子表面が反応し、粒子同士が結合するため焼結することとなる。焼結助剤として用いられる酸化物としては、特に限定されるものではないが、珪酸鉛アルミガラス、珪酸鉛アルカリガラス、珪酸鉛アルカリ土類ガラス、ホウ珪酸鉛ガラス、ホウ珪酸アルカリガラス、ホウ酸アルミ鉛ガラス、ホウ酸鉛アルカリガラス、ホウ酸鉛アルカリ土類ガラス、ホウ酸鉛亜鉛ガラス等を挙げることができ、これらのうちの一種以上を選択して用いればよい。
【0051】
また、焼結助剤としてアルカリ金属化合物を用いることも可能である。アルカリ金属化合物にはSiO2の焼結の進行を促す効果がある。したがって、石英、クリストバライト、及びトリジマイトの少なくとも一種を含む組成物にアルカリ金属化合物を添加すれば、セラミックグリーンシート21の焼成に伴って収縮抑制材グリーンシート22が僅かに焼結することとなる。ここで、アルカリ金属化合物は特に限定されないが、例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、酸化リチウム、酸化カリウム等を挙げることができる。
【0052】
さらに、収縮抑制材グリーンシート22に使用する材料として、トリジマイトと難焼結性の酸化物を含む組成物を用いることも可能である。トリジマイトは、組成の選択により焼結温度を種々変化させることができる材料である。ただし、トリジマイトは熱膨張係数が大きく、温度によっては熱膨張係数が40ppm/℃にも達する。このため、例えばガラスセラミック材料(約3〜10ppm/℃)との熱膨張差がありすぎて、セラミックグリーンシート21が焼結する前に剥れてしまうことがある。そこで、これを防ぐためにセラミックグリーンシート21の焼成温度で焼結しない酸化物を加えて熱膨張係数を調節し、セラミックグリーンシート21が焼結する前に剥れてしまうことを抑止する。セラミックグリーンシート21の焼成過程において焼結しない酸化物としては、特に限定されないが、例えば石英、溶融石英、アルミナ、ムライト、ジルコニア等を挙げることができる。
【0053】
以上のようにしてセラミックグリーンシート21や収縮抑制材グリーンシート22を作製するが、これらセラミックグリーンシート21や収縮抑制材グリーンシート22の一層当たりの厚さは、後述するビア電極や内部電極の形成を考慮して、20μm〜300μm程度とすることが好ましい。
【0054】
前記セラミックグリーンシート21及び収縮抑制材グリーンシート22の作製の後、複合グリーンシート形成工程(ステップS12)において、これらを利用して複合グリーンシート(セラミックグリーンシートと収縮抑制材グリーンシートとを組み合わせたグリーンシート)を作製する。ここで作製する複合グリーンシートは、底面形成用グリーンシートの直上に積層される第1複合グリーンシートと、最上層の収縮抑制材グリーンシートとして積層される最上層複合グリーンシートである。
【0055】
第1複合グリーンシート26を作製するには、図6(a)に示すように、先ず、前記グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製したセラミックグリーンシート21に第1貫通孔24を設ける。第1貫通孔24は、例えばセラミックグリーンシート21を支持体23の表面に密着させたままの状態で、セラミックグリーンシート21の所定の部分をパンチャーの金型で打ち抜いて形成しても良く、レーザ光、マイクロドリル、パンチング等により形成しても良い。第1貫通孔24はキャビティ形状に対応して形成されるものであり、その形状は特に限定されず、例えば正方形であっても良く、長方形や円形等であっても良い。
【0056】
次いで、グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製した収縮抑制材グリーンシート22を、支持体23の上で前記第1貫通孔24と略同形状に切断し、第1嵌合シート25(収縮抑制材グリーンシート片に相当する。)とする。これをセラミックグリーンシート21の第1貫通孔24に嵌め込み、第1複合グリーンシート26を形成する。このとき、第1複合グリーンシート26を平坦なものとするために、セラミックグリーンシート21と第1嵌合シート25の厚さは同一とすることが好ましい。
【0057】
最上層複合グリーンシート29の作製方法も先の第1複合グリーンシート26の作製方法と同様であるが、最上層複合グリーンシート29においては、図6(b)に示すように、収縮抑制材グリーンシート22に貫通孔を設け、ここにセラミックグリーンシート片を嵌め合わせる。すなわち、グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製した収縮抑制材グリーンシート22に、キャビティの開口に応じた第2貫通孔27を設ける。第2貫通孔27の形成方法は、前述の第1貫通孔24と同じである。そして、グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製したセラミックグリーンシート21を、支持体23の上で前記第2貫通孔27と略同形状に切断し、第2嵌合シート28とする。収縮抑制材グリーンシート22の第2貫通孔27に第2嵌合シート28を嵌め込み、支持体23から剥離して最上層複合グリーンシート29とする。なお、この場合にも、最上層複合グリーンシート29を平坦なものとするために、収縮抑制材グリーンシート22と第2嵌合シート28の厚さは同一とすることが好ましい。
【0058】
切り込み形成工程(ステップS13)では、前記セラミックグリーンシート21に切り込みを形成し、キャビティ形成用グリーンシートとする。すなわち、切り込み形成工程(ステップS13)では、グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製したセラミックグリーンシート21に切り込み(若しくは不連続部)31を設け、図7に示すような切り込み形成シート30とする。切り込み31とは、セラミックグリーンシート21の厚さ方向に貫通している不連続部のことである。なお、不連続部にはシートの厚さ方向に貫通していないものも含む。切り込み31は、切り込み形成シート30を先に作製した第1複合グリーンシート26に重ねたときに、第1貫通孔24と重なるように、第1貫通孔24と同位置、略同形状に形成される。切り込み31は、セラミックグリーンシート21を支持体23の表面に密着させたままの状態で、セラミックグリーンシート1の所定の部分にパンチャーの金型を押し付けて形成しても良く、レーザ光、マイクロドリル、パンチング等により形成しても良い。
【0059】
なお、切り込み形成工程(ステップS13)は、セラミックグリーンシート21の1枚毎に切り込みを設けることとしても良く、2枚以上のセラミックグリーンシート21を重ねた後にまとめて切り込みを設けることとしても良い。いずれの場合においても、切り込み形成シート30では、切り込み31により分離された部分30aをそのまま残し、積層及び焼成の際に埋め込み用グリーンシートとして利用する。
【0060】
以上により作製した第1複合グリーンシート26や切り込み形成シート30(キャビティ形成用グリーンシート)、さらにはキャビティの底面を構成するセラミックグリーンシート(底面形成用グリーンシート)等、焼成後に多層セラミック基板の各セラミック層を構成するセラミックグリーンシート(以下、これらを併せて「誘電体層シート」と称する。)に、ビアホールやビア電極、内部電極パターン等を形成する。ビア電極は、ビア電極ペーストを例えば穴埋め印刷により充填して固化させることにより形成する。内部電極パターンは、例えば、セラミックグリーンシートに内部電極ペーストをスクリーン印刷により所定のパターンで塗布することにより形成する。
【0061】
具体的には、ビアホール形成工程(ステップS14)では、誘電体層シートにビア電極を形成するための孔であるビアホールを形成する。ビアホールは、レーザ光、マイクロドリル、パンチング等により形成する。誘電体層シートにレーザ光を照射すると、誘電体層シートのセラミック粉末やバインダ樹脂を昇華させることで孔をあけることができる。使用するレーザは、波長の短いUV−YAGレーザやエキシマレーザが好ましい。このようにレーザ光を使用してビアホールを形成すれば、ビアホールの径を容易に100μm以下にすることができる。また、マイクロドリルやパンチングは、レーザ光に比べビアホールの径を小さくすることは難しいが、低コストで加工できるというメリットがある。いずれにしても、これらの手法により形成されるビアホールに導電体ペーストを充填することで、微少なビア電極を精度良く形成できる。
【0062】
導体印刷工程(ステップS15)では、ビアホール形成工程(ステップS14)で形成したビアホールに導電性ペーストを充填し、ビア電極を形成する。導電性ペーストとしては、例えば銅、銀、銀パラジウム、パラジウム、ニッケル等の金属粉末又は合金粉末を含有して、所定の流動性を有する粘度に調整されたビア電極ペーストを用いる。
【0063】
また、導体印刷工程(ステップS15)では、誘電体層シートの表面に内部電極パターンを所定のパターンで印刷する。導体印刷工程(ステップS15)では、基板用グリーンシートの表面に、内部電極パターン(導体パターン)を形成する。例えば図8に示すように、セラミックグリーンシート21の表面に、キャビティ11の底面11aとなる領域の周縁部(図中点線で示す。)を跨ぐように導体パターン12を形成する。
【0064】
導体パターン12や内部電極パターンの形成には、前述の導電性ペーストと同様、例えば銅、銀、銀パラジウム、パラジウム、ニッケル等の金属粉末又は合金粉末を含有して、所定の流動性を有する粘度に調整された内部電極ペーストを用いる。内部電極ペーストとビア電極ペーストは異なる材料であっても良い。
【0065】
なお、誘電体層シートの構成材料が耐還元性を有しており、導電材料に安価な卑金属を用いることもできるので、導電材料としてはニッケルあるいはニッケル合金を用いても良い。ニッケル合金としては、マンガン、クロム、コバルトおよびアルミニウムなどから選択される1種以上の元素とニッケルとの合金が好ましく、合金中におけるニッケルの含有量は95質量%以上であることが好ましい。なお、ビア電極及び内部電極パターンは、リン(P)などの各種微量成分を0.1質量%程度以下含有していても良い。内部電極パターンの厚さは用途に応じて適宜決定されるが、例えば、1μm〜15μm程度であることが好ましく、2.5μm〜10μm程度であればより好ましい。
【0066】
ビア電極ペースト、あるいは内部電極ペーストは、誘電体ペーストと同様のビヒクルと混練して作製される。ビア電極ペースト或いは内部電極ペーストにおけるビヒクルの含有量は誘電体ペーストと同様に調整する。また、ビア電極ペースト或いは内部電極ペーストには、必要に応じて分散剤、可塑剤、誘電体材料、絶縁体材料などの添加物を添加してもよい。その添加量は、合計で10質量%以下とすることが好ましい。
【0067】
軟化層形成工程(ステップS16)では、導体印刷工程(ステップS15)において導体パターン12を形成した基板用グリーンシートのうち一部に軟化層13を形成し、図8に示すような底面形成用グリーンシート32を得る。軟化層13は、焼成後の多層セラミック基板1においてキャビティ11の底面11aとなる領域の周縁部に対応する部分のうち、少なくとも導体パターン12と重なる部分に形成すればよい。図8においては、焼成後にキャビティ11の底面となる領域の周縁部(図中点線で示す。)のうち、導体パターン12が設けられた2辺を縁取るように軟化層13を形成している。
【0068】
軟化層13を構成する材料としては、後述する焼成工程(ステップS2)を実施する際の焼成温度で軟化する材料をいずれも用いることができる。また、軟化層13を構成する材料には、導体パターン12や基板用グリーンシート等に悪影響を及ぼさない材料であることも重要である。このような材料としてはガラスが好ましく、特に基板用グリーンシートに用いられるガラスと同一のガラスを軟化層13として用いることが最も好ましい。
【0069】
前記により各誘電体層シートにビア電極や内部電極パターンを形成し、さらに軟化層13を形成した後、積層工程(ステップS17)において作製した各シートを積層し、積層体33を形成する。この積層工程(ステップS17)から収縮抑制シート除去工程(ステップS4)までにおける積層体の構成を図9(a)から図9(d)に示す。なお、図9(c)に示す工程と図9(d)に示す工程については、順序が逆になる場合や、あるいは同時に行われる場合もあることを付記しておく。
【0070】
前記積層工程(ステップS17)では、図9(a)に示すように、最下層から収縮抑制グリーンシート22、セラミックグリーンシート21、底面形成用グリーンシート32、第1複合グリーンシート26、切り込み形成シート30、最上層複合グリーンシート29の順に積層する。
【0071】
なお、各シートは少なくとも1枚以上あれば良く、複数枚であっても良い。本例の場合、1枚のセラミックグリーンシート21と1枚の底面形成用グリーンシート32とを積層し、さらにその上に第1複合グリーンシート26及び6枚の切り込み形成シート30を積層している。したがって、これら9層が基板用グリーンシートに相当することになり、第1複合グリーンシート26及び6枚の切り込み形成シート30がキャビティ側壁形成用グリーンシートに相当することになる。積層体33の構成は、上下が逆であっても良く、収縮抑制グリーンシート22を挟んで上下に同様に各シートが積層されても良い。
【0072】
また、例えば前述のように切り込み形成シート30を2枚以上積層する場合、各切り込み形成シート30の材質を同じとしても良いし、あるいは各切り込み形成シート30の材質を異なる材質としてもよい。ただし、後者の場合、各切り込み形成シート30において、プレス時の圧縮率、焼成時の収縮率、熱膨張係数等が略等しくなるようにすることが好ましい。これにより、各切り込み形成シート30の圧縮率、収縮率、熱膨張係数の差から生じる基板の反りを抑制することができる。
【0073】
このようにして積層される積層体33の全体の厚さは、多層セラミック基板の小型化及び低背化の要求から、1mm以下であることが好ましい。また、積層体33のうち、キャビティを構成する部分となるキャビティ側壁形成用グリーンシート(6枚の切り込み形成シート30及び第1複合グリーンシート26)の積層高さ(キャビティの深さに相当する。)は、キャビティに収容する電子デバイスの寸法に合わせて設定する。
【0074】
前記積層工程(ステップS17)の後、プレス工程(ステップS18)を行うが、このプレス工程(ステップS18)は、積層工程(ステップS17)で作製した積層体33を圧着する工程である。圧着は通常の上下パンチが平坦な金型に入れて行なう。圧着の条件は、圧着の圧力が30〜80MPaで、圧着時間は10分程度が好ましい。本実施形態では、積層体33の最上層面、最下層面がそれぞれ平坦面となっており、さらに、キャビティを形成する部分に切り込み31により分離された部分30aをそのまま残し、埋め込み用グリーンシートとしてこれを埋める形としているので、プレスを行なう際に均一に圧力をかけることができる。したがって、従来技術のようにキャビティの開口部が、付加する圧力で潰れて変形したり、損傷を生じたりすることはない。
【0075】
次に、焼成工程(ステップS2)を行う。焼成工程(ステップS2)では、プレス工程(ステップS18)で圧着した積層体33を焼成する。なお、焼成に際しては、通常、作製した積層体33に対して脱バインダ処理を行うが、この場合の脱バインダ処理条件は通常のもので良い。脱バインダ処理を行った後、焼成を行い、積層焼成体34を形成する。焼成時の雰囲気は、特に限定されない。一般に、ビア電極及び内部電極パターンにニッケルあるいはニッケル合金等の卑金属を用いる場合には、還元性雰囲気とすることが好ましい。焼成温度は800℃〜1000℃とすることが好ましい。導体材料や抵抗材料を同時焼成することができ、このような多層セラミック基板は、高周波重畳モジュール、アンテナスイッチモジュール、フィルタモージュール等のLTCCモジュール用として使用することができる。
【0076】
焼成工程(ステップS2)を施した積層焼成体34は、図9(b)に示すように、切り込み形成シート30の切り込み31の内側の部分30aがキャビティから突出する。これは、以下の理由による。積層体33を焼成すると、誘電体層シートであるセラミックグリーンシート21、底面形成用グリーンシート32、第1複合グリーンシート26、及び切り込み形成シート30は焼結し、収縮しようとする。このとき、セラミックグリーンシート21は、下層の収縮抑制グリーンシート22に密着している。収縮抑制グリーンシート22は前述の通り、誘電体層シートの焼成温度では収縮しない。このためセラミックグリーンシート21の平面方向の収縮が抑制される。また、切り込み形成シート30の切り込み31の外側部分30bは、上層の最上層複合グリーンシート29に密着しているので、同様に収縮が抑制される。さらに、キャビティの底部においては、底面形成用グリーンシート32は第1複合グリーンシート26の第1嵌合シート25と密着しているので、同様に収縮が抑制される。
【0077】
これに対して、切り込み形成シート30の切り込み31の内側部分30aは、上層側に収縮抑制のシートが無いため、収縮が抑制されない。したがって、切り込み13の内側部分30aは、平面方向に収縮し、切り込み31の外側部分30bから分離される。この収縮は、キャビティ底部の第1嵌合シート25から上層方向に離れるにしたがって大きくなり、切り込み31の内側部分30aが平面方向に収縮した分だけ、厚さ方向の収縮率は小さくなる。したがって、第1嵌合シート25と第2嵌合シート28とこれらの間に挟まれた部分(前記切り込み31の内側部分30a)は、焼成後には積層焼成体34の表面から突出した形になる。
【0078】
ところで、例えば図10に示すように軟化層が設けられていない場合、キャビティの底面の周縁部を跨ぐ状態で配された導体パターン201が断線するという問題がある。底面形成用グリーンシート202のうち第1嵌合シート203が配された領域(キャビティ底面内)は、第1嵌合シート203の強い拘束力により面内方向へはほとんど収縮しないのに対し、キャビティの側壁の周囲の領域(切り込み形成シート204、第1複合グリーンシート205、底面形成用グリーンシート202)については、積層方向中央に向かうに従って収縮抑制材グリーンシート206及び最上層複合グリーンシート207による拘束力が弱まる傾向にあるため、拘束力の弱いキャビティの側壁下端部208は、キャビティから離れる面内方向へ大きく収縮する。この結果、キャビティの底面の周縁部に応力が集中し、この部分に位置する導体パターン201の断線を引き起こす。
【0079】
これに対し、本実施形態では、焼成工程(ステップS2)を実施する際の焼成温度で軟化した軟化層13がキャビティ11aの側壁下端部を構成するキャビティ形成用グリーンシート(第1複合シート26を構成するセラミックグリーンシート21)と導体パターン12との間に介在する。このため、キャビティ形成用グリーンシートがキャビティ中心から離れる方向に収縮する際、軟化した軟化層13表面を滑るように移動するため、導体パターン12に加わる応力が緩和される。したがって、導体パターン12の断線を抑制することができる。
【0080】
なお、キャビティ底面の周縁部のうち導体パターン12の存在しない2辺については、軟化層13が形成されていないため、当該領域は面内方向へ大きく収縮するが、キャビティ底面に露呈する導体パターン12へ悪影響を及ぼすことはない。
【0081】
前述のように、第1嵌合シート25や第2嵌合シート28、これらの間に挟まれた部分(前記切り込み31の内側部分30a)は、セラミックグリーンシート21や切り込み形成シート30の切り込み31の外側部分30b等とは異なる収縮状態となり、例えば切り込み形成シート30の切り込み31の内側部分30aは外側部分30bから完全に分離される。また、底部においても、前記第1嵌合シート25が焼成により脆化しており、この部分での拘束力も弱くなっている。したがって、図9(c)に示すように、キャビティを埋めていた第1嵌合シート25や第2嵌合シート28、これらの間に挟まれた部分(前記切り込み31の内側部分30a)は、小さな刺激で脱落させることができる。なお、キャビティの形状が複雑な場合においても容易に切り込み31の内側部分30aを脱落させることができる。また、切り込み31の内側部分30aを脱落させるためには、小さな力を加えることとしても良い。
【0082】
すなわち、図9(c)に示すように、前記第1嵌合シート25や第2嵌合シート28、これらの間に挟まれた部分(前記切り込み31の内側部分30a)を除去してキャビティを形成するとともに、必要に応じて収縮抑制シート除去工程(ステップS4)を行う。収縮抑制シート除去工程(ステップS4)では、図9(d)に示すように、積層焼成体34の最上層のシート35や最下層のシート36(収縮抑制材グリーンシート22や最上層複合グリーンシート29の焼成物)を除去する。これらを除去する方法は、積層焼成体34を溶剤中で通常の超音波洗浄を行なうこととしても良く、積層焼成体34にウェットブラストを施すこととしても良い。ウェットブラストは、水に研磨剤を混合した液体をコンプレッサからの圧縮空気で加速させ、被加工物に吹きつけて、洗浄と表面処理を同時に行なう方法である。また、収縮抑制材グリーンシート22をトリジマイト−シリカ系やクリストバライト−シリカ系等の材料で形成した場合、焼成後、最上層のシート35と最下層のシート36の主要部分は自然剥離するので、僅かに残る部分を洗浄すれば良い。
【0083】
以上の工程の他、必要に応じて切断工程、研磨工程等を行い、図1に示す多層セラミック基板1を得る。切断工程では、ダイヤモンドスクライブで分割しても良く、積層焼成体34が厚い場合はダイシング方式で切断しても良い。研磨工程は、例えばラッピングにより行なう。ラッピングは回転定盤に砥粒を含まず、加工液中に砥粒を含ませ、加工対象を砥ぐ加工法である。また、湿式バレルを用いる方法としても良い。
【0084】
製造される多層セラミック基板1には、電子デバイス40が搭載されるが、この電子デバイス40を搭載した状態を図11に示す。図11に示すように、電子デバイス40は多層セラミック基板1のキャビティ11の中に収容される。電子デバイス40の裏面はキャビティ11の表面に露呈した導体パターン12に接続される。さらに、電子デバイス40は、ボンディングワイヤ41で多層セラミック基板1に形成された電極(図示は省略する。)に接続される。電極は、多層セラミック基板1の表面に印刷された表面電極、ビア電極、さらには多層セラミック基板1の内部に印刷された内部電極等である。このように本実施形態の製造方法により作製される多層セラミック基板は、電子デバイスを多層セラミック基板の内部に収容でき、小型化及び低背化の要求を満足することができる。
【0085】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、キャビティの底面の周縁部全体を縁取るように軟化層を形成した例である。
【0086】
前記第1実施形態において、キャビティ11の底面11aの周縁部に導体パターン12の存在しない辺においては、当該導体パターン12の断線の懸念がないため軟化層を存在させていない。このため、この部分に対応するキャビティ11の底面11aが第1嵌合シート25の拘束力を強く受ける結果、キャビティ11の底面11aとその外側との境界部に大きな応力が発生する。例えばキャビティ11の側壁の下方のセラミック層の層間に内部電極パターンが設けられている場合には、当該内部電極パターンが断線するおそれがある。
【0087】
そこで本実施形態では、軟化層13の形状を、キャビティ11の底面の周縁部全体を縁取るような例えば枠状とする。図12に示すように、本実施形態の多層セラミック基板45では、キャビティ11の導体パターン12が形成されていない部分においても、キャビティ11の底面の周縁全体、すなわちキャビティ11の側壁の下端部に沿って、軟化層13が配置される。軟化層13は、セラミック層3とセラミック層4との間に配置される。
【0088】
図12に示すような多層セラミック基板45を得るためには、軟化層形成工程(ステップS16)において、焼成後にキャビティ11の底面となる領域の周縁全体を縁取るように軟化層13を形成し、底面形成用グリーンシート32を形成すればよい。
【0089】
以上のような多層セラミック基板45においては、キャビティ11の底面11の周縁部のうち導体パターン12が形成されていない部分にも軟化層13が配置される。このため、キャビティ11の底面11の周縁部のうち導体パターン12が形成されていない部分においても軟化層13により底面形成用グリーンシートへ加わる応力が緩和され、その結果キャビティの側壁の下方に配された内部電極パターンの断線を抑制することができる。
【0090】
図13は、四角形状の開口を有するキャビティ11の周縁部の全辺に導体パターン12が設けられている例を示す図である。この場合も、キャビティ11の底面11aの周縁部全体を縁取るよう軟化層13を形成する。また、多層セラミック基板においては、例えば図14に示すように、導体パターン12がキャビティ底面の全体に形成されていてもよい。いずれの場合も、キャビティ底面に露呈する導体パターン12や内部電極パターンの断線を確実に抑制することができる。
【0091】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。本実施形態と先の第1の実施形態との相違は、キャビティが多段形状のキャビティ(本例の場合、二段形状の二段底キャビティ)であることである。
【0092】
以下、二段底キャビティを有する多層セラミック基板について、図15を参照しながら説明する。図15に示す多層セラミック基板50は、二段底キャビティ51を有し、複数(ここでは14層)のセラミック層が積層一体化されている。セラミック層3が底面形成用セラミック層に相当し、その上面の一部がキャビティの底部に臨み、二段底キャビティ51の一番深い底面51aを構成する。多層セラミック基板50を構成するセラミック層のうち、セラミック層2〜9までの構成は、第1の実施形態と略同様である。セラミック層10の一部は二段底キャビティ51の二段目の底面51bを構成している。したがって、セラミック層10は底面形成用セラミック層に相当する。また、セラミック層10の表面には導体パターン52が設けられている。
【0093】
セラミック層10上に積層されるセラミック層53〜57は、それぞれ貫通孔53a〜57aを有し、キャビティ形成用セラミック層に相当する。セラミック層53〜57の貫通孔53a〜57aが連なることにより、二段底キャビティ51のうち浅い方の空間を規定する側壁が構成される。
【0094】
本実施形態の多層セラミック基板50では、二段目の底面51bにおいて導体パターン52が底面51bの周縁部を跨ぐように形成されている場合、周縁部のうち少なくとも導体パターン52表面に第2軟化層58を配置する。
【0095】
本実施形態の多層セラミック基板を作製するに際しては、後述するように、キャビティの一番深い底面に対応して第1複合グリーンシートを配する他、キャビティの二段目の底面(段差面)に対応して第2複合グリーンシートを配し、さらに各段のキャビティ部の寸法に合わせて大きさが異なる切り込み形成シートを積層する。
【0096】
図16は、図15に示す多層セラミック基板のキャビティ形状を詳細に示す図である。ここで、各キャビティ部51c,51dの側壁においては、収縮抑制グリーンシートから離れるにつれ面方向の収縮が次第に大きくなっており、それぞれ開口部における開口寸法が、深さ方向中途位置における開口寸法よりも小さくなっている。すなわち、キャビティ部51cについては、開口部の開口寸法をW3、深さ方向中途位置の開口寸法をW4としたときに、W3<W4である。同様に、キャビティ部51dについても、開口部の開口寸法をW5、深さ方向中途位置の開口寸法をW6としたときに、W5<W6である。また、各キャビティ部51c,51dの側壁の断面形状は円弧状であり、したがって各キャビティ部51c,51dの形状は、いわば壺形を呈することになる。
【0097】
なお、2段目以降のキャビティ部(ここではキャビティ部51d)については、必ずしも前記壺形に限らず、図17に示すように、開口面積が最も大きく、深さ方向において次第に開口面積が漸減する形状であってもよい。この場合には、開口部の開口寸法をW5、深さ方向中途位置の開口寸法をW6としたときにW5>W6であり、1段目のキャビティ部51cが壺形であるのに対して、2段目のキャビティ部51dは、いわば椀状を呈することになる。2段目以降のキャビティ部の形状を前記椀状とすることにより、当該キャビティ部51dに電子デバイスを実装する際のワイヤボンディング等が容易になり、効率的なデバイス実装が可能になる。
【0098】
本実施形態の多層セラミック基板50では、前記の通り、多段形状のキャビティ51において、少なくともキャビティ部51cの形状が開口部よりも内部の方が開口面積が大きな太鼓型形状となっており、したがって各キャビティ部51c,51dにおいて樹脂封止の信頼性を確保することが可能である。
【0099】
以下、前述のような構成の多層セラミック基板50の製造方法について説明する。本実施形態と先の第1の実施形態との相違は、キャビティを多段形状のキャビティ(本例の場合、二段形状の二段底キャビティ)とすることである。したがって、二段底キャビティとするために、キャビティの一番深い底面に対応して第1複合グリーンシートを配する他、キャビティの二段目の底面(段差面)に対応して第2複合グリーンシートを配すること、貫通孔の大きさが異なる切り込み形成シートを積層することが工程上の相違点である。
【0100】
本実施形態では、複合グリーンシート形成工程(ステップS12)において、図18(a)に示す第2複合グリーンシート43を形成する。第2複合グリーンシート43の作製に際しては、先ず、グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製したセラミックグリーンシート21に前述の第1貫通孔24と重なり且つ第1貫通孔24よりも大きな第3貫通孔44を設ける。第3貫通孔44の形成方法は、前述の第1貫通孔24の形成方法と同様である。
【0101】
そして、グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製した収縮抑制材グリーンシート22を、第3貫通孔44と略同形状に切断し、第3嵌合シート45とし、第3貫通孔44に嵌め込む。さらに、この嵌め込まれた第3嵌合シート45に第1貫通孔24と同位置、且つ略同形状となる第4貫通孔46を設け、ここにセラミックグリーンシート21を第4貫通孔46と略同形状に切断した第2嵌合シート28を嵌め込む。このようにして、第2複合グリーンシート43を形成する。第2複合グリーンシート43の作製に際しては、前記手順とは逆に、先に第2嵌合シート28を第4貫通孔46に嵌め込み、後に第3嵌合シート45を、第3貫通孔44に嵌め込むこととしても良い。
【0102】
また、本実施形態では、切り込み形成工程(ステップS13)において、図18(b)に示すように、第1実施形態における切り込み形成シート30とは別の切り込み形成シート(第2切り込み形成シート47)を形成する。この第2切り込み形成シート47と先の切り込み形成シート30との相違は、切り込み48の寸法が切り込み31の寸法よりも大きいことである。具体的には、第2切り込み形成シート47では、切り込み48は、第2複合グリーンシート43の第3貫通孔44と同位置で略同形状とする。
【0103】
また、導体印刷工程(ステップS15)において、図19に示すように、最上層の切り込み形成シート30の表面にキャビティ底面51bの周縁部を跨ぐように導体パターン52を形成し、第2底面形成用グリーンシート53を作製する。また、第1の実施形態と同様にして、グリーンシート21の表面に導体パターン12を形成し、底面形成用グリーンシート32を作製する。
【0104】
さらに、軟化層形成工程(ステップS16)において、図19に示すように、焼成後にキャビティ11の二段目の底面51bとなる領域の周縁部(図中点線で示す。)のうち、少なくとも導体パターン52が設けられた2辺を縁取るように第2軟化層58を形成する。
【0105】
本実施形態において各シートを積層した積層体54の例を図20(a)に示す。積層体54を構成する各層は、下から順に以下のように積層される。すなわち、最下層から収縮抑制グリーンシート22、セラミックグリーンシート21、底面形成用グリーンシート32、第1複合グリーンシート26、切り込み形成シート30、第2底面形成用グリーンシート53、第2複合グリーンシート43、第2切り込み形成シート47、最上層複合グリーンシート29の順に積層する。なお、各シートの積層枚数は、収縮抑制グリーンシート22、底面形成用グリーンシート32、第1複合グリーンシート26、第2底面形成用グリーンシート53、第2複合グリーンシート43、及び最上層複合グリーンシート29については1枚である。勿論、これらを複数枚重ねて使用することとしても良い。セラミックグリーンシート21、切り込み形成シート30、及び第2切り込み形成シート47については、多層セラミック基板に求められる層間の電極パターン構成や内部に搭載する電子デバイスの寸法に依存し、通常は2枚以上使用する。本例の場合、セラミックグリーシート21を1枚、切り込み形成シート30を5枚、第2切り込み形成シート47を4枚重ねている。勿論、これに拘束されるものでなく、各シートの積層数は任意である。また、積層体54は、図20(a)に示したキャビティの他に、例えば収縮抑制グリーンシート22側に別個のキャビティを有していても良い。
【0106】
前記積層体54を焼成すると、図20(b)に示すように、積層焼成体55が得られる。積層焼成体55においては、キャビティを埋めていた部分56aが平面方向に収縮し、キャビティから突出する形になる。そして、先の第1の実施形態と同様、この部分を除去し、必要に応じて収縮抑制シート除去工程(ステップS4)等を行うことで、図15(図16)に示すように、二段底キャビティ51を有する多層セラミック基板50を完成する。
【0107】
二段底キャビティ51を有する多層セラミック基板50に電子デバイス40を搭載した例を図21に示す。図21に示すように、電子デバイス40は下側のキャビティ部の中に収容され、最も深い底面11aに露呈した導体パターン12に接続される。電子デバイス40は、ボンディングワイヤ41で上側のキャビティ部の底面51bに露呈した導体パターン52に接続される。このように本実施形態の製造方法により作製される多層セラミック基板50は、電子デバイス40及びボンディングワイヤ41を多層セラミック基板50の内部に収容できる。これにより、多層セラミック基板の表面からボンディングワイヤなどが突出することなく平坦にできる。また、内部に複数の誘電体層を持つ多層セラミック基板においても、電子デバイスを高密度に実装でき、小型化及び低背化の要求を満足することができる。
【0108】
また、二段底キャビティ51の二段目の底面51bの周縁部のうち導体パターン52表面に第2軟化層58を配置するので、セラミック層53〜57の側壁下端部が面内方向へ収縮する際の導体パターン52への応力集中が緩和され、導体パターン52の断線を抑制することができる。
【0109】
なお、本実施形態の多層セラミック基板の製造方法を応用することにより、多層セラミック基板の内部に三段底以上の多段底キャビティを形成することもできる。例えば、前記積層体形成工程において、前記第2貫通孔と同位置で略同形状の切り込み若しくは不連続部が設けられているセラミックグリーンシートと前記最上層複合グリーンシートとの間に、下から順に、セラミックグリーンシートに、前記第2貫通孔と重なり且つ該第2貫通孔よりも大きな第4貫通孔を設け、該第4貫通孔と略同形状で同厚さの収縮抑制グリーンシートを該第4貫通孔に嵌め込み、該第4貫通孔に嵌めこんだ該収縮抑制グリーンシートに、前記第2貫通孔と同位置且つ略同形状となる第5貫通孔を設け、該第5貫通孔と略同形状で同厚さのセラミックグリーンシートを該第5貫通孔に嵌め込んだ第3複合グリーンシートと、前記第4貫通孔と同位置で略同形状の切り込み若しくは不連続部が設けられているセラミックグリーンシートと、をそれぞれ少なくとも1枚が重なって挟まれた状態とする。そして、積層方向にプレスして積層体を形成する。これにより、キャビティ形成工程を経ることで、三段底キャビティを形成できる。
【0110】
そして、三段目の底面の周縁部を跨ぐように導体パターンが形成されている場合には、二段底キャビティを有する多層セラミック基板の製造プロセスと同様に、所定の位置に軟化層を配置する。これにより、三段目の底面に形成された導体パターンの断線を抑制することができる。
【0111】
(第4の実施形態)
例えば、第1の実施形態の製造方法において、多層セラミック基板の層構造によっては上下の収縮抑制力のバランスが取れず、極端に描けば例えば図22に示すようにキャビテイ底面部が変形することがある。このような場合には、底面を挟む収縮抑制材グリーンシートの厚さを調整してやればよい。本実施形態は、このような調整を行った例である。
【0112】
すなわち、図23に示すように、キャビテイ形成部に収縮抑制材グリーンシート片(第1嵌合シート25)を嵌め合わせた第1複合グリーンシート26の厚さを調整する。この場合、前記厚さの変化を補正するためは、第1嵌合シート25の厚さのみを調整すればよいが、第1複合グリーンシート全体の厚さを調整するようにしてもよい。あるいは、図24に示すように、収縮抑制材グリーンシート22のキャビティに対応する部分の厚さを調整するようにしてもよい。この場合、収縮抑制材グリーンシート22は、図24に示すように、厚さの薄い収縮抑制材グリーンシート22aと、キャビテイ形成部に貫通孔を設けここにセラミックグリーンシートを嵌め合わせた収縮抑制材グリーンシート22bを積層することにより構成すればよい。これにより、積層体全体の収縮抑制とキャビティ底面部の収縮抑制を別々に制御することができる。
【0113】
なお、収縮抑制材グリーンシート22bについて、嵌め合わせるセラミックグリーンシートの形状(貫通孔の形状)はキャビティの形状と同一であることには拘らず、収縮抑制力のバランスを考慮して決めればよい。また、第1嵌合シート25や収縮抑制材グリーンシート22a,22bの厚さについても、同様に収縮抑制力のバランスを考慮して適宜設定すればよい。また、収縮抑制材グリーンシート22bの貫通孔には、セラミックグリーンシートに代えて焼失性シートを嵌め合わせておいてもよく、この場合も、プレスを行なう際に均一に圧力を加えることができる。
【0114】
(第5の実施形態)
本実施形態は、図1に示す多層セラミック基板1を製造する際に焼失性シートを用いた例である。図25は、本実施形態の基本的な製造プロセスを示すものである。当該製造プロセスは、主に、焼成後にセラミック層となるグリーンシート及び収縮抑制材グリーンシートを積層しプレスする工程、これを焼成する工程、焼成後に埋め込み用グリーンシートの焼成物を除去する工程、収縮抑制材グリーンシートの焼成物を除去する工程とから構成される。
【0115】
多層セラミック基板の作製に際しては、先ず、図25(a)に示すように、多層セラミック基板を構成するセラミック層の数に応じて、複数のセラミックグリーンシートを基板用グリーンシートとして積層する。ここでは、9枚のセラミックグリーンシート61〜69を積層する。各セラミックグリーンシート61〜69は、例えばセラミック粉末と有機バインダー及び有機溶剤とを混合して得られるスラリー状の誘電体ペーストを作り、これを例えばポリエチレンテレフタレート(PET)シート等の支持体上にドクターブレード法等によって成膜することにより形成する。前記セラミック粉末や有機ビヒクル(有機バインダー及び有機溶剤)としては、公知のものがいずれも使用可能である。
【0116】
ここで、前記セラミックグリーンシート61〜69のうち、下側の2枚のセラミックグリーンシート61,62については、キャビティを形成するための貫通孔は必要なく、通常の平坦なグリーンシートとして形成されている。これら2枚のセラミックグリーンシート61,62のうち、上側のセラミックグリーンシート62がキャビティの底面を構成する底面形成用グリーンシートに相当することになる。
【0117】
前記セラミックグリーンシート62上には、残りの7枚のセラミックグリーンシート63〜69が積層されるが、これらセラミックグリーンシート63〜69には、前記キャビティ11の開口形状に対応して、所定の形状の貫通孔63a及び切り込み64a〜69aが入れられ、キャビティ空間に対応する部分63b〜69bが分離されている。したがって、これら7枚のセラミックグリーンシート63〜69が、キャビティ側壁形成用グリーンシートに相当することになる。
【0118】
本実施形態では、前記キャビティの底面を構成するセラミックグリーンシート62と接するセラミックグリーンシート63を除いて、切り込み64a〜69aにより分離された部分64b〜69bを埋め込み用グリーンシートとして利用する。なお、前記に限らず、例えば各セラミックグリーンシート64〜69にキャビティに対応する貫通孔を形成し、ここに別途形成した埋め込み用グリーンシートを嵌め合わせるようにしてもよいが、生産性を考えると、前記のように切り込み64a〜69aにより分離された部分64b〜69bを埋め込み用グリーンシートとして利用するのが有利である。
【0119】
一方、前記キャビティの底面を構成するセラミックグリーンシート62と接するセラミックグリーンシート63については、キャビティに対応する貫通孔63aを形成し、この部分のセラミックグリーンシートを除去するとともに、前記貫通孔63aの形状に合わせた収縮抑制材グリーンシート片70a、及び焼失性シート片71aを貫通孔63aに嵌め込み、これを埋めるようにする。これを詳細に示したのが図26である。
【0120】
すなわち、先ず、図26(a)に示すように、セラミックグリーンシート63を形成し、図26(b)に示すように、キャビティの開口形状に対応する貫通孔63aを打ち抜き形成する。また、図26(c)に示すように、収縮抑制材グリーンシート70を形成し、図26(d)に示すように、これを前記貫通孔63aの形状とほぼ一致するように打ち抜いて収縮抑制材グリーンシート片70aを形成する。同様に、図26(e)に示すように、焼失性シート71を形成し、図26(f)に示すように、これを前記貫通孔63aの形状とほぼ一致するように打ち抜いて焼失性シート片71aを形成する。次いで、図26(g)に示すように、前記セラミックグリーンシート63の貫通孔63aに、前記収縮抑制材グリーンシート片70a、及び焼失性シート片71aをこの順に嵌め合わせ、前記貫通孔63aを埋める形とする。したがって、前記収縮抑制材グリーンシート片70aと焼失性シート片71aを合わせた厚さは、前記セラミックグリーンシート63の厚さとほぼ一致するように設定することが好ましい。
【0121】
前記収縮抑制材グリーンシート70(収縮抑制材グリーンシート片70a)には、前記セラミックグリーンシート61〜69の焼成温度では収縮しない材料、例えばトリジマイトやクリストバライト、さらには石英、溶融石英、アルミナ、ムライト、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素等を含む組成物が用いられ、これら収縮抑制材グリーンシート片71aをセラミックグリーンシート(この場合には、セラミックグリーンシート62)と接するように配し、焼成を行うことで、セラミックグリーンシート62の面内方向の収縮が抑えられる。
【0122】
前記焼失性シート71(焼失性シート片71a)には、前記セラミックグリーンシート61〜69の焼成温度で焼失する材料、例えば樹脂材料等が用いられる。特に、セラミックグリーンシート61〜69に含まれる有機バインダーと同一の材料を用いることが好ましい。焼失性シート71(焼失性シート片71a)にセラミックグリーンシート61〜69に含まれる有機バインダーと同一の材料を用いれば、焼成の際に確実に前記焼失性シート71(焼失性シート片71a)が焼失する。なお、前記焼失性シート片71aは、前記のようにシート化したものを打ち抜くことにより形成してもよいし、例えば印刷法等により形成してもよい。
【0123】
以上のようにセラミックグリーンシート61〜69を積層し、その両面、すなわち最外層のセラミックグリーンシート61,69の表面に、収縮抑制材グリーンシート73,74を重ね合わせる。収縮抑制材グリーンシート73,74の材質としては、先の収縮抑制材グリーンシート70の材質と同様である。なお、キャビティに対応して貫通孔(切り込み69a)が形成されるセラミックグリーンシート69側に配される収縮抑制材グリーンシート74については、セラミックグリーンシート69と同様にキャビティ開口形状に対応した貫通孔74aを設け、ここに別途打ち抜き形成した埋め込み用セラミックグリーンシート片75を嵌め込んでおく。
【0124】
これらを積層した積層体の積層状態は、図25(a)に示すようなものであり、複数のセラミックグリーンシート61〜69が積層された積層体の両面に収縮抑制材グリーンシート73,74が積層され、積層体全体の面内方向の収縮を抑制するように構成されている。セラミックグリーンシート62の表面には、キャビティの底面周縁部を跨ぐ状態で導体パターン12が形成されている。また、セラミックグリーンシート62のキャビティ底面を構成する領域には、前記セラミックグリーンシート63の貫通孔63a内に配された収縮抑制材グリーンシート片70aが接しており、この部分においても面内方向の収縮を抑制するように構成されている。
【0125】
キャビティに対応する空間は、通常はこの段階でも空間(凹部)として形成されるが、本実施形態の製造方法では、前記セラミックグリーンシート64〜69の切り込み64a〜69aにより分離された部分64b〜69b、さらには埋め込み用セラミックグリーンシート片75が埋め込み用グリーンシートとして配される形になっており、積層体の全体形状を見たときには、凹部の無い平坦な積層体として形成されることになる。
【0126】
前記セラミックグリーンシート61〜69や収縮抑制材グリーンシート73,74を積層した積層体は、焼成に先立ってプレス工程によりプレスする必要がある。このとき、キャビティに対応する凹部が形成されていると、凹部の潰れ等が発生し、キャビティの開口部等が変形するおそれがある。本実施形態では、前記埋め込み用グリーンシートにより積層方向で厚さが均一な積層体を作製し、キャビティ部分を含めて平坦化されているので、通常の平板の金型を用いてプレスすることができ、容易な手段でプレス工程を行うことが可能である。なお、積層体のプレス工程は、前記のように平板の金型間に挟み込んで加圧することにより行ってもよいし、例えば積層体を防水性樹脂等で被覆し、静水圧プレスを行ってもよい。
【0127】
前記のプレス工程の後、図25(b)に示すように、焼成することにより各セラミックグリーンシート61〜69をセラミック層2〜10とするが、このとき収縮抑制材グリーンシート73,74が積層され拘束されているので、前記セラミックグリーンシート61〜69は厚さ方向にのみ収縮し、面内方向にはほとんど収縮しない。キャビティの底部に露呈するセラミックグリーンシート62についても、面内方向の収縮が抑えられる。
【0128】
また、キャビティ空間に対応して埋め込み配置された埋め込み用グリーンシート(セラミックグリーンシート64〜69の切り込み64a〜69aにより分離された部分64b〜69b、及び埋め込み用セラミックグリーンシート片75)と収縮抑制材グリーンシート片70aの間には、前記焼失性シート片71aが介在され、これがセラミックグリーンシート61〜69が焼結する前に焼失する。これにより、これら埋め込み用グリーンシートに対してキャビティの底部に配される収縮抑制材グリーンシート片70aの拘束力は働かず、したがって面内方向に収縮し、これらの焼成物76は、図25(b)に示すように、厚さ方向での収縮が少ない分、焼成後の積層体から突出する形になる。前記拘束力が働かないので、これらが収縮することによって前記収縮抑制材グリーンシート片70a、さらにはその下のセラミックグリーンシート62に応力が加わることがなく、セラミックグリーンシート62が焼成することにより形成されるセラミック層3の平坦性等が損なわれることもない。
【0129】
焼成が終了した後には、図25(c)に示すように、前記埋め込み用グリーンシートの焼成物76をキャビティ空間から除去する。前記焼成物は、焼失性シート片71aの焼失により前記収縮抑制材グリーンシート片70aから分離され、例えば上下反転することで、容易に除去することが可能である。
【0130】
最後に、前記収縮抑制材グリーンシート73,74や収縮抑制材グリーンシート片70aの焼成後の残渣77を除去し、図25(d)に示すようなキャビティ11を有する多層セラミック基板1を完成する。収縮抑制材グリーンシート73,74や収縮抑制材グリーンシート片70aの焼成後の残渣77は、何らかの洗浄工程を行うことで容易に除去することができ、例えば超音波洗浄程度の刺激で容易に除去することが可能である。したがって、洗浄工程として、溶剤中での超音波洗浄工程等を行えばよいが、例えばアルミナ系のグリーンシートを前記収縮抑制材グリーンシートとして用いた場合には、残渣76が自然剥離しないので、ウエットブラスト工程等により研磨し洗浄することで前記残渣76を除去する必要がある。
【0131】
以上により作製される多層セラミック基板1は、寸法精度やキャビティ底面の平面度等に優れたものであり、また、キャビティ開口部の潰れやキャビティ開口部周辺における盛り上がり等の変形が生ずることもない。さらに、多層セラミック基板1においては、軟化層13を形成することにより導体パターン12の断線が抑えられている。
【0132】
(第6の実施形態)
本実施形態は、焼失性シートを多段構造(2段構造)のキャビティを有する多層セラミック基板の製造に適用した例である。図27は、2段構造のキャビティが形成される多層セラミック基板の製造に応用した実施形態を示すものである。この場合には、図27(a)に示すように、セラミックグリーンシートの積層体81の両面に収縮抑制材グリーンシート82,83を積層するとともに、キャビティの底面及び段差面にそれぞれ収縮抑制材グリーンシート片84,85及び焼失性シート片86,87を配する。そして、2段構造のキャビティ空間を埋める形で埋め込み用グリーンシート88を配した状態でプレス工程及び焼成工程を行う。本例の場合にも、積層体の平坦性が保たれており、プレス工程は容易である。
【0133】
焼成後には、図27(b)に示すように、埋め込み用グリーンシートの焼成物89は、積層体から突出する形になるが、前記と同様、例えば上下反転することで容易に除去することが可能である。得られる多層セラミック基板90は、図27(c)に示すようなものであり、全体の寸法精度に優れるばかりでなく、キャビティ91の底面91aや段差面91bの寸法精度や平面度も優れたものとなる。また、各底面に軟化層13及び第2軟化層58をそれぞれ配置することで、キャビティ周囲の領域の面内方向への収縮に伴う導体パターン12及び導体パターン52の断線を抑制することができる。なお、前記のような2段構造のキャビティ91の場合、底面91aに電子デバイスが搭載され、段差面に前記電子デバイスとボンディングワイヤで結ばれる導体パターンが設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】(a)は本実施形態の多層セラミック基板の一例を示す概略平面図であり、(b)は(a)の要部拡大平面図であり、(c)は(a)中X−X線における要部概略断面図であり、(d)は(c)の要部拡大断面図である。
【図2】図1に示す多層セラミック基板のキャビティ形状を詳細に示す図である。
【図3】キャビティ内に電子デバイスを樹脂封止した状態を示す概略断面図である。
【図4】第1の実施形態における製造プロセスを示すフローチャートである。
【図5】(a)はセラミックグリーンシートの概略側面図であり、(b)は収縮抑制材グリーンシートの概略側面図である。
【図6】(a)は第1複合グリーンシートの概略平面図であり、(b)は最上層複合グリーンシートの概略平面図である。
【図7】切り込み形成シートの概略平面図である。
【図8】底面形成用グリーンシートの概略平面図である。
【図9】第1の実施形態における多層セラミック基板の製造プロセスを示す要部概略断面図であり、(a)は積層工程、(b)は焼成工程、(c)はキャビティ形成工程、(d)は収縮抑制シート除去工程を示す。
【図10】軟化層が設けられていない多層セラミック基板の製造プロセスにおける積層工程を示す要部概略断面図である。
【図11】第1の実施形態で作製された多層セラミック基板への電子デバイスの実装状態を示す概略断面図である。
【図12】第2の実施形態の多層セラミック基板の一例を示す概略平面図である。
【図13】第2の実施形態の多層セラミック基板の他の例を示す概略平面図である。
【図14】第2の実施形態の多層セラミック基板のさらに他の例を示す要部概略断面図である。
【図15】第3の実施形態における多層セラミック基板であり、多段構造のキャビティを有する多層セラミック基板の一例を示す要部概略断面図である。
【図16】多段形状のキャビティを有する多層セラミック基板におけるキャビティ形状の一例を示す図である。
【図17】多段形状のキャビティを有する多層セラミック基板におけるキャビティ形状の他の例を示す図である。
【図18】(a)は第3の実施形態において作製される第2複合グリーンシートの概略平面図であり、(b)は第2切り込み形成シートの概略平面図である。
【図19】第2底面形成用グリーンシートの概略平面図である。
【図20】第3の実施形態における2段構造のキャビティを有する多層セラミック基板の製造プロセス例を示す要部概略断面図であり、(a)は積層工程、(b)は焼成工程を示す。
【図21】第3の実施形態で作製された多層セラミック基板への電子デバイスの実装状態を示す概略断面図である。
【図22】多層セラミック基板のキャビティ底面部における変形を示す要部概略断面図である。
【図23】第4の実施形態における積層体の一例を示す要部概略断面図である。
【図24】第4の実施形態における積層体の他の構成例を示す要部概略断面図である。
【図25】第5の実施形態における多層セラミック基板の製造プロセスを示す要部概略断面図であり、(a)は積層工程、(b)は焼成工程、(c)は埋め込み用グリーンシートの焼成物の除去工程、(d)は完成した多層セラミック基板を示す。
【図26】セラミックグリーンシートへの収縮抑制材グリーンシート片及び焼失性シート片の適用工程を示す概略斜視図である。
【図27】第6の実施形態における2段構造のキャビティを有する多層セラミック基板の製造プロセス例を示す要部概略断面図であり、(a)は積層工程、(b)は焼成工程、(c)はセラミック多層基板を示す。
【符号の説明】
【0135】
1 多層セラミック基板、2〜10 セラミック層、11 キャビティ、12 導体パターン、13 軟化層、21 セラミックグリーンシート、22 収縮抑制材グリーンシート、23 支持体、24 第1貫通孔、25 第1嵌合シート、26 第1複合グリーンシート、27 第2貫通孔、28 第2嵌合シート、29 最上層複合グリーンシート、30 切り込み形成シート、31 切り込み、32 底面形成用グリーンシート、33 積層体、34 積層焼成体、40 電子デバイス、41 ボンディングワイヤ、43 第2複合グリーンシート、44 第3貫通孔、45 第3嵌合シート、46 第4貫通孔、47 第2切り込み形成シート、48 切り込み、50 多層セラミック基板、51 二段底キャビティ、52 導体パターン、53〜57 セラミック層、58 軟化層、61〜69 セラミックグリーンシート、63a〜69a 切り込み、64b〜69b 分離された部分(埋め込み用グリーンシート)、70a 収縮抑制材グリーンシート片、71a 焼失性シート片、73,74 収縮抑制材グリーンシート、75 埋め込み用グリーンシート片、76 埋め込み用グリーンシートの焼成物、77 残渣、81 積層体、82,83 収縮抑制材グリーンシート、84,85 収縮抑制材グリーンシート片、86,87 焼失性シート片、88 埋め込み用グリーンシート、89 埋め込み用グリーンシートの焼成物、90 多層セラミック基板、91 キャビティ、91a 底面、91b 段差面
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビティを有する多層セラミック基板及びその製造方法に関するものであり、特に無収縮焼成方法を適用して製造されるキャビティを有する多層セラミック基板及びその製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等の分野においては、電子デバイスを実装するための基板が広く用いられているが、近年、電子機器の小型軽量化や多機能化等の要望に応え、且つ高信頼性を有する基板として、多層セラミック基板が提案され実用化されている。多層セラミック基板は、複数のセラミック層を積層することにより構成され、各セラミック層に配線導体や電子素子等を一体に作り込むことで、回路基板の高密度化が可能となっている。
【0003】
そして、前記多層セラミック基板においては、電子機器のさらなる小型化、低背化等を進めることを目的に、電子デバイスを収納するキャビティ(凹部)が形成された多層セラミック基板も実用化されている。このようなキャビティ付き多層セラミック基板の場合には、キャビティ内に電子デバイスを収容した状態で実装することができるので、前述の要望をより十分に満足させることができ、多層セラミック基板自体の小型化、低背化を実現することも可能である。
【0004】
ところで、前述の多層セラミック基板は、複数のグリーンシートを積層して積層体を形成した後、これを焼成することにより形成される。そして、前記グリーンシートは、この焼成工程における焼結に伴って必ず収縮し、多層セラミック基板の寸法精度を低下する大きな要因となっている。具体的には、前記収縮に伴って収縮バラツキが発生し、最終的に得られる多層セラミック基板においては、寸法精度は、0.5%程度に留まっている。
【0005】
このような状況から、多層セラミック基板の焼成工程において、グリーンシートの面内方向の収縮を抑制し、厚さ方向にのみ収縮させる、いわゆる無収縮焼成方法が提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。特許文献1等にも記載されるように、前記焼成温度でも収縮しないシートをグリーンシートの積層体に貼り付け、この状態で焼成を行うと、前記面内方向の収縮が抑制され、厚さ方向にのみ収縮する。この方法によれば、多層セラミック基板の面内方向の寸法精度を0.05%程度にまで改善することが可能である。
【0006】
ただし、前記キャビティを有する多層セラミック基板を作製する場合には、前記のような無収縮焼成方法を適用しても、必ずしも十分な寸法精度や平面度等が得られないという問題がある。これは、通常の無収縮焼成方法では、キャビティの底部に収縮抑制の拘束力が働かないことによる。キャビティの底部に収縮抑制の拘束力が働かないと、キャビティの底面の電子デバイス搭載に十分な平面度を確保することができず、電子デバイスの実装に支障をきたすおそれがある。
【0007】
そこで、キャビティの底面にも収縮抑制シートを配し、前記の不都合を解消することが試みられている(例えば、特許文献2等を参照)。特許文献2記載の発明では、収縮抑制用無機材料を含む収縮抑制用シートをキャリアフィルム上で形成し、収縮抑制用シートに、キャビティの底面の輪郭に相当する形状の切り込みを入れ、切り込みの外側の部分を除去した後、生の基板用積層体を作製するための基板用セラミックグリーンシートの積層工程において、キャビティの底面を与える基板用セラミックグリーンシート上に、キャリアフィルム上に保持された収縮抑制用シートを転写し、キャビティの底面上に収縮抑制用シートが配置された状態で焼成工程を実施している。これにより、焼成後の基板用積層体の寸法精度を高くできるとともに、キャビティにおいて不所望な歪みを生じにくくすることができ、配線の高密度化を高い信頼性をもって達成することができるとしている。
【特許文献1】特開平10−75060号公報
【特許文献2】特開2003−318309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献2記載の発明のように、キャビティの底面を与える基板用セラミックグリーンシート上に収縮抑制用シートを配置しただけでは、例えばキャビティの変形等の問題を完全に解消することは難しい。特に、多層セラミック基板の製造方法においては、複数のグリーンシートを積層した積層体のプレスが必要であり、前記キャビティを有する多層セラミック基板の製造方法では、プレス工程においてキャビティ開口部が潰れて変形する可能性が高い。また、焼成工程においても、キャビティ開口部周辺が盛り上がるという現象が見られ、やはり変形の原因となるおそれがある。
【0009】
また、キャビティを有する多層セラミック基板を作製する別の方法として、グリーンシートを積層して焼成し、その後、焼結した積層体に穴開け加工を施すことも考えられる。しかしながら、焼結した積層体は硬くて脆いことから、精度の高い加工が難しく、高価な設備が必要となる等、製造コストの点でも問題が多い。
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、低コストにて優れた寸法精度や平面度を実現し、キャビティ周辺部における変形の小さい多層セラミック基板を提供することを目的とする。また、本発明は、キャビティを有する多層セラミック基板を製造するに際して、寸法精度や平面度に優れた多層セラミック基板を簡単、且つ低コストで製造することが可能で、しかもキャビティ周辺部における変形等の発生も解消することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するために、本発明の多層セラミック基板は、複数の基板用グリーンシートを積層した後焼成することにより製造され、キャビティを有し、前記キャビティの底面を構成する底面形成用セラミック層を含むセラミック層が積層一体化される多層セラミック基板であって、前記底面形成用セラミック層上に前記キャビティの底面の周縁部を跨ぐ状態で導体パターンが形成されており、前記底面形成用セラミック層上の前記底面の周縁部に対応する部分のうち少なくとも前記導体パターンの表面に、前記焼成の際の焼成温度で軟化する軟化層を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の多層セラミック基板の製造方法は、キャビティの底面を構成する底面形成用グリーンシートとキャビティ形状に応じた開口を形成するキャビティ形成用グリーンシートとを含む複数の基板用グリーンシートを積層して積層体とし、前記積層体の最外層となる基板用グリーンシートの表面にそれぞれ収縮抑制材グリーンシートを積層した状態で当該積層体をプレスした後、焼成することによりキャビティを有する多層セラミック基板を形成する多層セラミック基板の製造方法であって、前記底面形成用グリーンシート上に前記キャビティの底面の周縁部を跨ぐ状態で導体パターンを形成し、前記底面形成用グリーンシート上の前記周縁部に対応する部分のうち少なくとも前記導体パターンの表面に、前記焼成の際の焼成温度で軟化する軟化層を形成した後、貫通孔内に収縮抑制材グリーンシート片が埋め込まれたキャビティ形成用グリーンシートをキャビティの底面と前記収縮抑制材グリーンシート片とが重なるように前記底面形成用グリーンシートの直上に積層するとともに、前記キャビティを埋める形で前記各キャビティ形成用グリーンシートとは分離された埋め込み用グリーンシートが前記収縮抑制材グリーンシート片上に配されるようにキャビティ形成用グリーンシートを積層した状態で前記プレス及び焼成を行い、焼成後に前記埋め込み用グリーンシートの焼成物を除去することを特徴とする。
【0013】
前述の通り、キャビティの底部に露呈する基板用グリーンシート上にも収縮抑制材グリーンシート片を配した状態で無収縮焼成方法を実施しているので、寸法精度が確保され、また、キャビティ底面の平面度も十分に確保される。それと同時に、キャビティ内に埋め込み用グリーンシートを配した状態で積層体のプレスを行うようにしているので、キャビティの無い積層体と同様に平板の金型等によって容易にプレスすることが可能であり、キャビティ開口部の潰れやキャビティ開口部周辺の盛り上がり等により変形が生ずることもない。
【0014】
ところで、多層セラミック基板においては、キャビティ底面や多層セラミック基板内部に導体パターンが形成されるのが一般的であるが、キャビティの底部に収縮抑制材グリーンシート片を配した状態で無収縮焼成方法により導体パターンがキャビティ底面の周縁部に跨る状態で形成されている多層セラミック基板の製造を試みると、当該導体パターンがキャビティ側壁との接触部を境に断線するという問題が発生することがある。この断線は、キャビティ側壁の下端部(底面形成用グリーンシートに接するキャビティ形成用グリーンシートの内周縁部)に対する収縮抑制材グリーシート片及び収縮抑制材グリーシートの拘束力が他の部分に比べて弱いため、例えばキャビティ側壁の下端部を構成するキャビティ形成用グリーンシートがキャビティ中心から離れる方向に大きく収縮し、その際の応力がキャビティ側壁の下端部に接する導体パターンや底面形成用セラミック層に集中することに起因する。
【0015】
そこで本発明では、底面形成用セラミック層上であってキャビティ底面の周縁部に対応する部分のうち少なくとも導体パターンの表面に、焼成の際の焼成温度で軟化する軟化層を形成する。導体パターンとキャビティの側壁の下端部との間に軟化層が介在することになるため、焼成時にキャビティの側壁の下端部を構成するキャビティ形成用グリーンシートがキャビティ中心から離れる方向に収縮する際、キャビティの側壁の下端部は軟化した軟化層表面を滑るように移動する。そのため、キャビティ形成用グリーンシートが面内方向に収縮することに起因する導体パターンへの応力集中が軟化層により緩和され、キャビティ底面の導体パターンの断線が抑制される。
【0016】
そして、焼成後の積層体から、収縮抑制材グリーシート、収縮抑制材グリーシート片及び埋め込み用グリーンシートの残渣を除去することで、キャビティの周縁部に対応する部分のうち少なくとも導体パターンの表面に軟化層を有し、キャビティの底面の導体パターンに断線のない多層セラミック基板が得られる。
【0017】
なお、本発明において、キャビティの底面とは、キャビティの深さ方向においていわゆる底部を構成する領域が全て該当し、例えばキャビティが多段形状を有する場合には、最も深い部分の底面のみならず、これよりも浅く当該底面に対して段差を有する段差面も底面に該当するものとする。また、埋め込み用グリーンシートは、キャビティ側壁形成用グリーンシートとは分離されていることが必要であるが、この場合の分離とは、例えば切り込みがキャビティ側壁形成用グリーンシートの厚さ方向に貫通しているものだけでなく、切り込みがキャビティ側壁形成用グリーンシートの厚さ方向に貫通していないものも含むものとする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、キャビティを有する多層セラミック基板の製造において、寸法精度や平面度に優れた多層セラミック基板を製造することが可能であり、しかもキャビティ開口部の潰れやキャビティ開口部周辺における盛り上がり等の変形の無い多層セラミック基板を製造することが可能である。また、本発明によれば、焼結後の穴開け加工が不要であるので、穴開けのための特別な設備も不要であり、簡単且つ低コストに前記多層セラミック基板を製造することが可能である。さらに、本発明によれば、キャビティ底面に露呈する導体パターンの断線がない多層セラミック基板を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を適用した多層セラミック基板及びその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
本実施形態の多層セラミック基板は、電子デバイス等を収容するためのキャビティ(凹部)を有する多層セラミック基板である。
【0021】
図1(a)〜(d)は、キャビティ11を有する多層セラミック基板1の最も単純なモデル例を示すものであり、本例の場合、複数(ここでは9層)のセラミック層2〜10が積層一体化されている。これらセラミック層2〜10のうち、下の2層2,3については、キャビティ形成のための貫通孔が形成されていない平坦なセラミック層であり、これらの中で上層となるセラミック層3が底面形成用セラミック層に相当し、その上面の一部がキャビティ11の底部に臨み、キャビティの底面11aを構成することになる。
【0022】
一方、前記セラミック層3上に積層される残りのセラミック層4〜10は、キャビティ11の側壁に対応してそれぞれ貫通孔4a〜10aが形成されており、キャビティ形成用セラミック層に相当する。セラミック層3が構成する底面11aとセラミック層4〜10の貫通孔4a〜10aが連なることによる側壁とで、キャビティ11が所定の空間として構成されている。
【0023】
キャビティ11の開口形状は、例えば正方形であるが、これに限らず、長方形や長円形等、任意の形状とすることができる。ただし、キャビティ11の開口形状を正方形や長方形とする場合には、角部に丸みを付け、円弧状とすることが好ましい。これにより角部において発生する応力を緩和することができ、角部に亀裂が発生する等の不都合を解消することができる。収縮抑制シートを用いた無収縮焼成法を採用した場合、前記キャビティ11において、側壁が外側に引き込まれる形になり、キャビティ11の開口形状における角部に応力が集中して亀裂が発生するおそれがある。角部に丸みを付け、円弧状とすることで、前記応力の集中を緩和することができ、亀裂の発生を防止することができる。この場合、円弧における曲率半径Rは、0.05mm以上とすることが好ましい。前記曲率半径Rは、収縮抑制シートの厚さに応じて設定することがより好ましく、例えば収縮抑制シートの厚さが75μmの場合には、前記曲率半径Rを0.1mm以上とすることで亀裂が発生することがなかった。収縮抑制シートの厚さを250μmとした場合には、前記曲率半径Rを0.51mm以上とすることで亀裂が発生することがなかった。
【0024】
セラミック層3の表面には、キャビティ11の底面11aの周縁部を跨ぐ状態で導体パターン12が形成されている。導体パターン12の一端はキャビティ11の底面11aに露呈し、キャビティ11内に収容される電子デバイスに接続される。また、導体パターン12の他端は、セラミック層3とセラミック層4との間に配され、多層セラミック基板11の内部に形成された内部電極や配線等に接続されている。図1においては、四角形状のキャビティ11において、平面からみたとき対向する2辺に短冊状の導体パターン12が2個ずつ計4個設けられた状態を示したが、導体パターン12の形状及び数は任意に設定できる。図示は省略するが、キャビティ11の底面11aには、放熱用のビアホール等が設けてある場合もある。
【0025】
本実施形態の多層セラミック基板1では、キャビティ11の底面の周縁部に対応する部分のうち、少なくとも導体パターン12の表面に軟化層13が配置されている。図1に示す軟化層13は、キャビティ11の底面11aの周縁部のうち、導体パターン12が設けられた2辺を縁取るような帯状に形成されている。
【0026】
軟化層13は、各種グリーンシートを積層した後プレスし、焼成して多層セラミック基板1を得る際の焼成温度で軟化する材料により構成される。焼成の際、キャビティ形成用セラミック層4〜10となるキャビティ形成用グリーンシートと底面形成用グリーンシート及び導体パターン12との間に軟化した軟化層13が介在することにより、キャビティ形成用グリーンシートの収縮によりセラミック層3や導体パターン12に加わる応力が緩和され、導体パターン12の断線を抑制することができる。
【0027】
軟化層13を構成する材料としては、多層セラミック基板1を得るための焼成の際の焼成温度で軟化することが求められ、また、セラミック層等と反応しないことが好ましい。このような材料としては例えばガラスを用いることができ、特に、セラミック層2〜10に含まれるガラスと同一種類のガラスを用いることが好ましい。具体的には、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸バリウムガラス、ホウケイ酸ストロンチウムガラス、ホウケイ酸亜鉛ガラス、ホウケイ酸カリウムガラス等を用いることができる。
【0028】
軟化層13のキャビティ11の外側の幅は、導体パターン12の断線を抑制できる程度に確保されていることが望ましい。具体的には、キャビティ11の底面11aの周縁部と軟化層13の外側の周縁との距離A1を0.1mm〜0.5mmとすることが好ましい。
【0029】
また、軟化層13のキャビティ11の内側の幅は、詳細は後述するが、セラミック層3のキャビティ11の底面11aの平坦性等を確保する観点から、極力小さい方が好ましい。具体的には、キャビティ11の底面11aの周縁部と軟化層13の内周縁部との距離A2を例えば0.5mm以下(ただし0は含まず。)とすることができる。また、導体パターン12の断線を確実に防止するためには、距離A2を0.05mm〜0.5mmとすることが好ましく、0.1mm〜0.5mmとすることがより好ましい。
【0030】
さらに、軟化層13の膜厚は、小さすぎると導体パターン12の断線を抑制する効果が不十分となるおそれがあり、逆に大きすぎると基板用グリーンシートの積層時に支障をきたすおそれがある。これらを勘案すると、軟化層13の膜厚は0.005mm〜0.02mmとすることが好ましい。
【0031】
ところで、後述するような各製造方法によって作製される多層セラミック基板においては、キャビティが特異的な形状を有しており、従来の多層セラミック基板のキャビティ形状と比べて樹脂封止において優位性を有している。以下、本実施形態の多層セラミック基板のキャビティ形状について説明する。
【0032】
前記多層セラミック基板1を作製するに際しては、詳細は後述するが、収縮抑制材グリーンシート片に相当する第1嵌合シートや最上層複合グリーンシート、さらには収縮抑制グリーンシートによって基板用グリーンシートを拘束しながら焼成を行い、面内方向における収縮を抑制するようにしている。この場合、焼成の際に前記の通り積層体の両面が収縮抑制グリーンシートで拘束されていたため、焼成後、各基板用グリーンシートは厚み方向にのみ収縮し、面方向には収縮していないはずである。
【0033】
しかしながら、詳細に観察すると、収縮抑制グリーンシート(第1嵌合シート、最上層複合グリーンシート、及び収縮抑制グリーンシート)直近の基板用グリーンシートについては面方向にほとんど収縮することはないが、収縮抑制グリーンシートから離れるにつれ、僅かではあるが面方向に収縮している。この面方向の収縮は、収縮抑制グリーンシートから離れるにつれて次第に大きくなる。このため、キャビティ11の形状を詳しく観察すると、図2に模式的に示すように、収縮抑制グリーンシート直近の開口部よりも内部の方が開口面積が大きな、いわば太鼓型形状となっている。
【0034】
この点についてさらに詳細に説明すると、前記キャビティ11においては、開口部11bにおける開口寸法W1が、キャビティ11の深さ方向中途位置における開口寸法W2よりも小である。すなわち、キャビティ11の開口部11bにおける開口面積が、キャビティ11の深さ方向中途位置11cにおける開口面積よりも小である。本例の場合、キャビティ11の開口面積が深さ方向中途位置11cに至るまで次第に増加し、次いで次第に減少しており、キャビティ11の内壁の断面形状は略円弧状である。したがって、キャビティ11の形状は、深さ方向中途部が円弧状に膨出する形状とされており、前記太鼓型形状となっている。
【0035】
キャビティ11が前述のような形状を有する多層セラミック基板1にあっては、前記特異的なキャビティ形状であるが故に、信頼性の点で大きな利点を有する。例えば、図3に示すように、電子デバイス40をキャビティ11内に実装し、樹脂100により樹脂封止した場合、前記の通りキャビティ11の開口部11bの開口寸法が内部よりも小さいので、充填した樹脂100が脱落することはない。従来の形状では、樹脂100により樹脂封止を行った場合、多層セラミック基板1を構成する各セラミック層2〜10と封止を行う樹脂100とで熱膨張率が異なることに起因して、封止した樹脂100が剥離しキャビティ11から脱落するという問題が発生する。特に、長期間に亘る温度変化の繰り返しにより、前記問題は顕著になる。前記多層セラミック基板1では、キャビティ11の開口部11bにおける開口面積がキャビティ11の深さ方向中途位置11cにおける開口面積よりも小であることから、キャビティ11内に充填して硬化した樹脂100は、内部の体積が大きいためキャビティ11の開口部11bを通り抜けることができず、キャビティ11内に保持される。
【0036】
以上のような特異的形状のキャビティ11を有する多層セラミック基板1は、これまで実現されたことがなく、第1嵌合シートや最上層複合グリーンシート、さらには収縮抑制グリーンシートによって基板用グリーンシートを拘束しながら焼成することに加えて、焼成前の積層体を形成する際に、キャビティを形成する部分に切り込みにより分離された部分をそのまま残し、埋め込み用グリーンシートとしてこれを埋める形とし、プレスを行なう際に均一に圧力が加わるようにすることで形成することができる。理由について詳細は不明であるが、ただ単に収縮抑制グリーンシートで拘束するだけでは前記キャビティ形状とすることはできず、本発明の製造方法を適用することではじめて実現できることが実験的に確かめられている。
【0037】
前述のような構成の多層セラミック基板1は、以下のような製造プロセスを実施することにより形成される。以下、本実施形態の多層セラミック基板の製造プロセスについて説明する。
【0038】
前述のようなキャビティ11を有する多層セラミック基板1は、複数のグリーンシートを積層し、これをプレスして積層体とした後、焼成することで作製するが、寸法精度を確保するために、焼成時の収縮を抑制する必要がある。また、それだけでは不十分であり、例えばプレス工程の際のキャビティ11の開口部の潰れや、キャビティ11の開口部周辺の盛り上がりによる変形を解消する必要がある。
【0039】
そこで、本実施形態では、無収縮焼成方法を採用するとともに、キャビティに相当する空間内に埋め込み用グリーンシートを配した状態でプレス工程や焼成工程を行い、プレス時の潰れ等を解消するようにする。
【0040】
本実施形態の製造プロセスの工程フローを図4に示す。本実施形態の製造プロセスは、図4に示す通り、基本的には、積層体形成工程(ステップS1)と焼成工程(ステップS2)、キャビティ形成工程(ステップS3)とを少なくとも有するものである。これらに加えて、収縮抑制シート除去工程(ステップS4)を有していても良い。積層体形成工程(ステップS1)には、グリーンシート形成工程(ステップS11)、複合グリーンシート形成工程(ステップS12)、切り込み形成工程(ステップS13)、ビアホール形成工程(ステップS14)、導体印刷工程(ステップS15)、軟化層形成工程(ステップS16)、積層工程(ステップS17)、及びプレス工程(ステップS18)が含まれる。
【0041】
以下、各工程について説明すると、前述の多層セラミック基板を作製するには、先ず、積層体形成工程(ステップS1)における最初の工程であるグリーンシート形成工程(ステップS11)を行う。このグリーンシート形成工程(ステップS11)では、図5(a)に示すセラミックグリーンシート(基板用グリーンシートに相当する。)21と、図5(b)に示す収縮抑制材グリーンシート22とを形成する。これらセラミックグリーンシート21及び収縮抑制材グリーンシート22は、通常、プラスチックシート等の支持体23の表面に密着させて形成する。支持体23として使用するプラスチックシートは、表面が平滑なシートであれば如何なるものであっても良いが、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)シート等が好ましい。支持体23の厚さは、工程中に変形せず、且つ扱いやすい厚さであることが好ましく、一般的には50〜150μmである。
【0042】
前記セラミックグリーンシート21の作製方法としては、例えば、セラミック粉末と有機ビヒクルを混合してスラリー(誘電体ペースト)を調製し、これをドクターブレード法等のシート成形法により支持体23(PETシート等の樹脂シート)上に成膜する方法等を挙げることができる。作製する多層セラミック基板をガラスセラミック基板とする場合には、セラミック粉末に加えてガラス粉末を用い、これらを有機ビヒクルと混合したスラリーを使用すればよい。
【0043】
なお、有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものであり、主としてテルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、イソプロピルアルコール等の溶媒、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等のバインダ、ジ−n−ブチルフタレート等の可塑剤で構成される。有機ビヒクルの含有量は、特に限定されず、通常の含有量、例えば、バインダは1〜5質量%、溶剤は10〜50質量%とすればよい。
【0044】
誘電体ペーストは、前述のように有機ビヒクルを含有する有機系塗料としてもよいし、水に水溶性バインダ、分散剤等を溶解させた水溶系塗料としてもよい。ここで、水溶系バインダは、特に限定されず、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂、エマルジョン等から適宜選択すればよい。
【0045】
また、前記の通り、誘電体ペーストにはセラミック粉末が含まれるが、当該セラミック粉末を構成する誘電体磁器組成物の組成等は任意である。したがって、セラミック粉末の作製に当たっては、誘電体磁器組成物の組成に応じて原料(主成分及び副成分)を選択すればよい。この場合、原料である主成分や副成分の材料形態は特に限定されない。また、原料である主成分及び副成分としては、酸化物や、焼成により酸化物となる化合物が用いられる。なお、焼成により酸化物になる化合物としては、例えば炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、有機金属化合物等が例示される。勿論、原料として、酸化物と、焼成により酸化物になる化合物とを併用してもよい。原料中の各成分の含有量は、焼成後に前記誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。また、前記セラミック粉末の製法も任意であり、例えば液相合成法、あるいは固相法のいずれから得られた粉末であっても良い。
【0046】
LTCC基板であるガラスセラミック基板を作製する場合には、前記の通りセラミック粉末(セラミック成分)とガラス粉末(ガラス成分)を併用するが、このときこれらガラス成分とセラミック成分は、目的とする比誘電率や焼成温度に基づいて適宜選択すればよい。具体的には、1000℃以下で焼成してガラスセラミック基板とすることが可能なアルミナ(セラミック成分:結晶相)と酸化ケイ素(ガラス成分:ガラス相)の組み合わせを例示することができる。その他、セラミックス成分としては、マグネシア、スピネル、シリカ、ムライト、フォルステライト、ステアタイト、コージェライト、ストロンチウム長石、石英、ケイ酸亜鉛、ジルコニア、チタニア等を用いることができる。ガラス成分としては、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸バリウムガラス、ホウケイ酸ストロンチウムガラス、ホウケイ酸亜鉛ガラス、ホウケイ酸カリウムガラス等を用いることができる。ガラス成分は60〜80体積%とし、骨材であるセラミックス成分を40〜20体積%とすることが好ましい。ガラス成分が前記範囲を外れると複合組成物となり難く、強度及び焼結性が低下するからである。
【0047】
一方、収縮抑制材グリーンシート22の作製方法も、前記セラミックグリーンシート21の作製方法と基本的には同様であるが、グリーンシートに含まれる成分が異なる。すなわち、収縮抑制材グリーンシート22は、セラミックグリーンシート21が焼結する温度では収縮し難い収縮抑制材料からなり、自身の収縮が抑制されたグリーンシートである。収縮抑制材料としては、石英、クリストバライト、若しくはトリジマイトの少なくとも一種を含む組成物等が使用可能である。あるいは、アルミナを含む組成物としても良い。
【0048】
これらの収縮抑制材料は、セラミックグリーンシート21に含まれるセラミック成分やガラス成分の焼成温度では焼結しないか、あるいは一部しか焼結しないため、セラミックグリーンシート21の焼成温度では収縮が生じない。したがって、前記収縮抑制材料から構成される収縮抑制材グリーンシート22を、セラミックグリーンシート21と密着して積層すれば、セラミックグリーンシート21の焼成時の平面方向の収縮を抑制するように働く。
【0049】
なお、収縮抑制材グリーンシート22の形成に際しては、前記収縮抑制材料(石英、クリストバライト、若しくはトリジマイトの少なくとも一種を含む組成物)に加えて焼結助剤を含有させてもよく、この場合にも同様の効果を得ることができる。焼結助剤を含有させた場合には、当該焼結助剤がセラミック成分やガラス成分の焼成温度で焼結するが、収縮抑制材料である石英、クリストバライト、若しくはトリジマイトの熱膨張係数がそれぞれ約20ppm/℃、約50ppm/℃、約40ppm/℃であり、セラミック成分やガラス成分に比べて大きいことから、焼結助剤が焼成後に収縮したとしても焼成前と焼成後の寸法変化が相殺され、セラミックグリーンシート21の収縮を抑制することができる。
【0050】
焼結助剤を併用する場合、使用する焼結助剤としては、セラミック成分やガラス成分の焼結開始温度以下で軟化するか、液相を生成する酸化物を挙げることができる。前者を用いた場合は、焼結助剤が軟化することによって前記収縮抑制材料の粒子同士が結合するため焼結し、後者を用いた場合は、収縮助剤が液相を生成することによって前記収縮抑制材料の粒子表面が反応し、粒子同士が結合するため焼結することとなる。焼結助剤として用いられる酸化物としては、特に限定されるものではないが、珪酸鉛アルミガラス、珪酸鉛アルカリガラス、珪酸鉛アルカリ土類ガラス、ホウ珪酸鉛ガラス、ホウ珪酸アルカリガラス、ホウ酸アルミ鉛ガラス、ホウ酸鉛アルカリガラス、ホウ酸鉛アルカリ土類ガラス、ホウ酸鉛亜鉛ガラス等を挙げることができ、これらのうちの一種以上を選択して用いればよい。
【0051】
また、焼結助剤としてアルカリ金属化合物を用いることも可能である。アルカリ金属化合物にはSiO2の焼結の進行を促す効果がある。したがって、石英、クリストバライト、及びトリジマイトの少なくとも一種を含む組成物にアルカリ金属化合物を添加すれば、セラミックグリーンシート21の焼成に伴って収縮抑制材グリーンシート22が僅かに焼結することとなる。ここで、アルカリ金属化合物は特に限定されないが、例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、酸化リチウム、酸化カリウム等を挙げることができる。
【0052】
さらに、収縮抑制材グリーンシート22に使用する材料として、トリジマイトと難焼結性の酸化物を含む組成物を用いることも可能である。トリジマイトは、組成の選択により焼結温度を種々変化させることができる材料である。ただし、トリジマイトは熱膨張係数が大きく、温度によっては熱膨張係数が40ppm/℃にも達する。このため、例えばガラスセラミック材料(約3〜10ppm/℃)との熱膨張差がありすぎて、セラミックグリーンシート21が焼結する前に剥れてしまうことがある。そこで、これを防ぐためにセラミックグリーンシート21の焼成温度で焼結しない酸化物を加えて熱膨張係数を調節し、セラミックグリーンシート21が焼結する前に剥れてしまうことを抑止する。セラミックグリーンシート21の焼成過程において焼結しない酸化物としては、特に限定されないが、例えば石英、溶融石英、アルミナ、ムライト、ジルコニア等を挙げることができる。
【0053】
以上のようにしてセラミックグリーンシート21や収縮抑制材グリーンシート22を作製するが、これらセラミックグリーンシート21や収縮抑制材グリーンシート22の一層当たりの厚さは、後述するビア電極や内部電極の形成を考慮して、20μm〜300μm程度とすることが好ましい。
【0054】
前記セラミックグリーンシート21及び収縮抑制材グリーンシート22の作製の後、複合グリーンシート形成工程(ステップS12)において、これらを利用して複合グリーンシート(セラミックグリーンシートと収縮抑制材グリーンシートとを組み合わせたグリーンシート)を作製する。ここで作製する複合グリーンシートは、底面形成用グリーンシートの直上に積層される第1複合グリーンシートと、最上層の収縮抑制材グリーンシートとして積層される最上層複合グリーンシートである。
【0055】
第1複合グリーンシート26を作製するには、図6(a)に示すように、先ず、前記グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製したセラミックグリーンシート21に第1貫通孔24を設ける。第1貫通孔24は、例えばセラミックグリーンシート21を支持体23の表面に密着させたままの状態で、セラミックグリーンシート21の所定の部分をパンチャーの金型で打ち抜いて形成しても良く、レーザ光、マイクロドリル、パンチング等により形成しても良い。第1貫通孔24はキャビティ形状に対応して形成されるものであり、その形状は特に限定されず、例えば正方形であっても良く、長方形や円形等であっても良い。
【0056】
次いで、グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製した収縮抑制材グリーンシート22を、支持体23の上で前記第1貫通孔24と略同形状に切断し、第1嵌合シート25(収縮抑制材グリーンシート片に相当する。)とする。これをセラミックグリーンシート21の第1貫通孔24に嵌め込み、第1複合グリーンシート26を形成する。このとき、第1複合グリーンシート26を平坦なものとするために、セラミックグリーンシート21と第1嵌合シート25の厚さは同一とすることが好ましい。
【0057】
最上層複合グリーンシート29の作製方法も先の第1複合グリーンシート26の作製方法と同様であるが、最上層複合グリーンシート29においては、図6(b)に示すように、収縮抑制材グリーンシート22に貫通孔を設け、ここにセラミックグリーンシート片を嵌め合わせる。すなわち、グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製した収縮抑制材グリーンシート22に、キャビティの開口に応じた第2貫通孔27を設ける。第2貫通孔27の形成方法は、前述の第1貫通孔24と同じである。そして、グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製したセラミックグリーンシート21を、支持体23の上で前記第2貫通孔27と略同形状に切断し、第2嵌合シート28とする。収縮抑制材グリーンシート22の第2貫通孔27に第2嵌合シート28を嵌め込み、支持体23から剥離して最上層複合グリーンシート29とする。なお、この場合にも、最上層複合グリーンシート29を平坦なものとするために、収縮抑制材グリーンシート22と第2嵌合シート28の厚さは同一とすることが好ましい。
【0058】
切り込み形成工程(ステップS13)では、前記セラミックグリーンシート21に切り込みを形成し、キャビティ形成用グリーンシートとする。すなわち、切り込み形成工程(ステップS13)では、グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製したセラミックグリーンシート21に切り込み(若しくは不連続部)31を設け、図7に示すような切り込み形成シート30とする。切り込み31とは、セラミックグリーンシート21の厚さ方向に貫通している不連続部のことである。なお、不連続部にはシートの厚さ方向に貫通していないものも含む。切り込み31は、切り込み形成シート30を先に作製した第1複合グリーンシート26に重ねたときに、第1貫通孔24と重なるように、第1貫通孔24と同位置、略同形状に形成される。切り込み31は、セラミックグリーンシート21を支持体23の表面に密着させたままの状態で、セラミックグリーンシート1の所定の部分にパンチャーの金型を押し付けて形成しても良く、レーザ光、マイクロドリル、パンチング等により形成しても良い。
【0059】
なお、切り込み形成工程(ステップS13)は、セラミックグリーンシート21の1枚毎に切り込みを設けることとしても良く、2枚以上のセラミックグリーンシート21を重ねた後にまとめて切り込みを設けることとしても良い。いずれの場合においても、切り込み形成シート30では、切り込み31により分離された部分30aをそのまま残し、積層及び焼成の際に埋め込み用グリーンシートとして利用する。
【0060】
以上により作製した第1複合グリーンシート26や切り込み形成シート30(キャビティ形成用グリーンシート)、さらにはキャビティの底面を構成するセラミックグリーンシート(底面形成用グリーンシート)等、焼成後に多層セラミック基板の各セラミック層を構成するセラミックグリーンシート(以下、これらを併せて「誘電体層シート」と称する。)に、ビアホールやビア電極、内部電極パターン等を形成する。ビア電極は、ビア電極ペーストを例えば穴埋め印刷により充填して固化させることにより形成する。内部電極パターンは、例えば、セラミックグリーンシートに内部電極ペーストをスクリーン印刷により所定のパターンで塗布することにより形成する。
【0061】
具体的には、ビアホール形成工程(ステップS14)では、誘電体層シートにビア電極を形成するための孔であるビアホールを形成する。ビアホールは、レーザ光、マイクロドリル、パンチング等により形成する。誘電体層シートにレーザ光を照射すると、誘電体層シートのセラミック粉末やバインダ樹脂を昇華させることで孔をあけることができる。使用するレーザは、波長の短いUV−YAGレーザやエキシマレーザが好ましい。このようにレーザ光を使用してビアホールを形成すれば、ビアホールの径を容易に100μm以下にすることができる。また、マイクロドリルやパンチングは、レーザ光に比べビアホールの径を小さくすることは難しいが、低コストで加工できるというメリットがある。いずれにしても、これらの手法により形成されるビアホールに導電体ペーストを充填することで、微少なビア電極を精度良く形成できる。
【0062】
導体印刷工程(ステップS15)では、ビアホール形成工程(ステップS14)で形成したビアホールに導電性ペーストを充填し、ビア電極を形成する。導電性ペーストとしては、例えば銅、銀、銀パラジウム、パラジウム、ニッケル等の金属粉末又は合金粉末を含有して、所定の流動性を有する粘度に調整されたビア電極ペーストを用いる。
【0063】
また、導体印刷工程(ステップS15)では、誘電体層シートの表面に内部電極パターンを所定のパターンで印刷する。導体印刷工程(ステップS15)では、基板用グリーンシートの表面に、内部電極パターン(導体パターン)を形成する。例えば図8に示すように、セラミックグリーンシート21の表面に、キャビティ11の底面11aとなる領域の周縁部(図中点線で示す。)を跨ぐように導体パターン12を形成する。
【0064】
導体パターン12や内部電極パターンの形成には、前述の導電性ペーストと同様、例えば銅、銀、銀パラジウム、パラジウム、ニッケル等の金属粉末又は合金粉末を含有して、所定の流動性を有する粘度に調整された内部電極ペーストを用いる。内部電極ペーストとビア電極ペーストは異なる材料であっても良い。
【0065】
なお、誘電体層シートの構成材料が耐還元性を有しており、導電材料に安価な卑金属を用いることもできるので、導電材料としてはニッケルあるいはニッケル合金を用いても良い。ニッケル合金としては、マンガン、クロム、コバルトおよびアルミニウムなどから選択される1種以上の元素とニッケルとの合金が好ましく、合金中におけるニッケルの含有量は95質量%以上であることが好ましい。なお、ビア電極及び内部電極パターンは、リン(P)などの各種微量成分を0.1質量%程度以下含有していても良い。内部電極パターンの厚さは用途に応じて適宜決定されるが、例えば、1μm〜15μm程度であることが好ましく、2.5μm〜10μm程度であればより好ましい。
【0066】
ビア電極ペースト、あるいは内部電極ペーストは、誘電体ペーストと同様のビヒクルと混練して作製される。ビア電極ペースト或いは内部電極ペーストにおけるビヒクルの含有量は誘電体ペーストと同様に調整する。また、ビア電極ペースト或いは内部電極ペーストには、必要に応じて分散剤、可塑剤、誘電体材料、絶縁体材料などの添加物を添加してもよい。その添加量は、合計で10質量%以下とすることが好ましい。
【0067】
軟化層形成工程(ステップS16)では、導体印刷工程(ステップS15)において導体パターン12を形成した基板用グリーンシートのうち一部に軟化層13を形成し、図8に示すような底面形成用グリーンシート32を得る。軟化層13は、焼成後の多層セラミック基板1においてキャビティ11の底面11aとなる領域の周縁部に対応する部分のうち、少なくとも導体パターン12と重なる部分に形成すればよい。図8においては、焼成後にキャビティ11の底面となる領域の周縁部(図中点線で示す。)のうち、導体パターン12が設けられた2辺を縁取るように軟化層13を形成している。
【0068】
軟化層13を構成する材料としては、後述する焼成工程(ステップS2)を実施する際の焼成温度で軟化する材料をいずれも用いることができる。また、軟化層13を構成する材料には、導体パターン12や基板用グリーンシート等に悪影響を及ぼさない材料であることも重要である。このような材料としてはガラスが好ましく、特に基板用グリーンシートに用いられるガラスと同一のガラスを軟化層13として用いることが最も好ましい。
【0069】
前記により各誘電体層シートにビア電極や内部電極パターンを形成し、さらに軟化層13を形成した後、積層工程(ステップS17)において作製した各シートを積層し、積層体33を形成する。この積層工程(ステップS17)から収縮抑制シート除去工程(ステップS4)までにおける積層体の構成を図9(a)から図9(d)に示す。なお、図9(c)に示す工程と図9(d)に示す工程については、順序が逆になる場合や、あるいは同時に行われる場合もあることを付記しておく。
【0070】
前記積層工程(ステップS17)では、図9(a)に示すように、最下層から収縮抑制グリーンシート22、セラミックグリーンシート21、底面形成用グリーンシート32、第1複合グリーンシート26、切り込み形成シート30、最上層複合グリーンシート29の順に積層する。
【0071】
なお、各シートは少なくとも1枚以上あれば良く、複数枚であっても良い。本例の場合、1枚のセラミックグリーンシート21と1枚の底面形成用グリーンシート32とを積層し、さらにその上に第1複合グリーンシート26及び6枚の切り込み形成シート30を積層している。したがって、これら9層が基板用グリーンシートに相当することになり、第1複合グリーンシート26及び6枚の切り込み形成シート30がキャビティ側壁形成用グリーンシートに相当することになる。積層体33の構成は、上下が逆であっても良く、収縮抑制グリーンシート22を挟んで上下に同様に各シートが積層されても良い。
【0072】
また、例えば前述のように切り込み形成シート30を2枚以上積層する場合、各切り込み形成シート30の材質を同じとしても良いし、あるいは各切り込み形成シート30の材質を異なる材質としてもよい。ただし、後者の場合、各切り込み形成シート30において、プレス時の圧縮率、焼成時の収縮率、熱膨張係数等が略等しくなるようにすることが好ましい。これにより、各切り込み形成シート30の圧縮率、収縮率、熱膨張係数の差から生じる基板の反りを抑制することができる。
【0073】
このようにして積層される積層体33の全体の厚さは、多層セラミック基板の小型化及び低背化の要求から、1mm以下であることが好ましい。また、積層体33のうち、キャビティを構成する部分となるキャビティ側壁形成用グリーンシート(6枚の切り込み形成シート30及び第1複合グリーンシート26)の積層高さ(キャビティの深さに相当する。)は、キャビティに収容する電子デバイスの寸法に合わせて設定する。
【0074】
前記積層工程(ステップS17)の後、プレス工程(ステップS18)を行うが、このプレス工程(ステップS18)は、積層工程(ステップS17)で作製した積層体33を圧着する工程である。圧着は通常の上下パンチが平坦な金型に入れて行なう。圧着の条件は、圧着の圧力が30〜80MPaで、圧着時間は10分程度が好ましい。本実施形態では、積層体33の最上層面、最下層面がそれぞれ平坦面となっており、さらに、キャビティを形成する部分に切り込み31により分離された部分30aをそのまま残し、埋め込み用グリーンシートとしてこれを埋める形としているので、プレスを行なう際に均一に圧力をかけることができる。したがって、従来技術のようにキャビティの開口部が、付加する圧力で潰れて変形したり、損傷を生じたりすることはない。
【0075】
次に、焼成工程(ステップS2)を行う。焼成工程(ステップS2)では、プレス工程(ステップS18)で圧着した積層体33を焼成する。なお、焼成に際しては、通常、作製した積層体33に対して脱バインダ処理を行うが、この場合の脱バインダ処理条件は通常のもので良い。脱バインダ処理を行った後、焼成を行い、積層焼成体34を形成する。焼成時の雰囲気は、特に限定されない。一般に、ビア電極及び内部電極パターンにニッケルあるいはニッケル合金等の卑金属を用いる場合には、還元性雰囲気とすることが好ましい。焼成温度は800℃〜1000℃とすることが好ましい。導体材料や抵抗材料を同時焼成することができ、このような多層セラミック基板は、高周波重畳モジュール、アンテナスイッチモジュール、フィルタモージュール等のLTCCモジュール用として使用することができる。
【0076】
焼成工程(ステップS2)を施した積層焼成体34は、図9(b)に示すように、切り込み形成シート30の切り込み31の内側の部分30aがキャビティから突出する。これは、以下の理由による。積層体33を焼成すると、誘電体層シートであるセラミックグリーンシート21、底面形成用グリーンシート32、第1複合グリーンシート26、及び切り込み形成シート30は焼結し、収縮しようとする。このとき、セラミックグリーンシート21は、下層の収縮抑制グリーンシート22に密着している。収縮抑制グリーンシート22は前述の通り、誘電体層シートの焼成温度では収縮しない。このためセラミックグリーンシート21の平面方向の収縮が抑制される。また、切り込み形成シート30の切り込み31の外側部分30bは、上層の最上層複合グリーンシート29に密着しているので、同様に収縮が抑制される。さらに、キャビティの底部においては、底面形成用グリーンシート32は第1複合グリーンシート26の第1嵌合シート25と密着しているので、同様に収縮が抑制される。
【0077】
これに対して、切り込み形成シート30の切り込み31の内側部分30aは、上層側に収縮抑制のシートが無いため、収縮が抑制されない。したがって、切り込み13の内側部分30aは、平面方向に収縮し、切り込み31の外側部分30bから分離される。この収縮は、キャビティ底部の第1嵌合シート25から上層方向に離れるにしたがって大きくなり、切り込み31の内側部分30aが平面方向に収縮した分だけ、厚さ方向の収縮率は小さくなる。したがって、第1嵌合シート25と第2嵌合シート28とこれらの間に挟まれた部分(前記切り込み31の内側部分30a)は、焼成後には積層焼成体34の表面から突出した形になる。
【0078】
ところで、例えば図10に示すように軟化層が設けられていない場合、キャビティの底面の周縁部を跨ぐ状態で配された導体パターン201が断線するという問題がある。底面形成用グリーンシート202のうち第1嵌合シート203が配された領域(キャビティ底面内)は、第1嵌合シート203の強い拘束力により面内方向へはほとんど収縮しないのに対し、キャビティの側壁の周囲の領域(切り込み形成シート204、第1複合グリーンシート205、底面形成用グリーンシート202)については、積層方向中央に向かうに従って収縮抑制材グリーンシート206及び最上層複合グリーンシート207による拘束力が弱まる傾向にあるため、拘束力の弱いキャビティの側壁下端部208は、キャビティから離れる面内方向へ大きく収縮する。この結果、キャビティの底面の周縁部に応力が集中し、この部分に位置する導体パターン201の断線を引き起こす。
【0079】
これに対し、本実施形態では、焼成工程(ステップS2)を実施する際の焼成温度で軟化した軟化層13がキャビティ11aの側壁下端部を構成するキャビティ形成用グリーンシート(第1複合シート26を構成するセラミックグリーンシート21)と導体パターン12との間に介在する。このため、キャビティ形成用グリーンシートがキャビティ中心から離れる方向に収縮する際、軟化した軟化層13表面を滑るように移動するため、導体パターン12に加わる応力が緩和される。したがって、導体パターン12の断線を抑制することができる。
【0080】
なお、キャビティ底面の周縁部のうち導体パターン12の存在しない2辺については、軟化層13が形成されていないため、当該領域は面内方向へ大きく収縮するが、キャビティ底面に露呈する導体パターン12へ悪影響を及ぼすことはない。
【0081】
前述のように、第1嵌合シート25や第2嵌合シート28、これらの間に挟まれた部分(前記切り込み31の内側部分30a)は、セラミックグリーンシート21や切り込み形成シート30の切り込み31の外側部分30b等とは異なる収縮状態となり、例えば切り込み形成シート30の切り込み31の内側部分30aは外側部分30bから完全に分離される。また、底部においても、前記第1嵌合シート25が焼成により脆化しており、この部分での拘束力も弱くなっている。したがって、図9(c)に示すように、キャビティを埋めていた第1嵌合シート25や第2嵌合シート28、これらの間に挟まれた部分(前記切り込み31の内側部分30a)は、小さな刺激で脱落させることができる。なお、キャビティの形状が複雑な場合においても容易に切り込み31の内側部分30aを脱落させることができる。また、切り込み31の内側部分30aを脱落させるためには、小さな力を加えることとしても良い。
【0082】
すなわち、図9(c)に示すように、前記第1嵌合シート25や第2嵌合シート28、これらの間に挟まれた部分(前記切り込み31の内側部分30a)を除去してキャビティを形成するとともに、必要に応じて収縮抑制シート除去工程(ステップS4)を行う。収縮抑制シート除去工程(ステップS4)では、図9(d)に示すように、積層焼成体34の最上層のシート35や最下層のシート36(収縮抑制材グリーンシート22や最上層複合グリーンシート29の焼成物)を除去する。これらを除去する方法は、積層焼成体34を溶剤中で通常の超音波洗浄を行なうこととしても良く、積層焼成体34にウェットブラストを施すこととしても良い。ウェットブラストは、水に研磨剤を混合した液体をコンプレッサからの圧縮空気で加速させ、被加工物に吹きつけて、洗浄と表面処理を同時に行なう方法である。また、収縮抑制材グリーンシート22をトリジマイト−シリカ系やクリストバライト−シリカ系等の材料で形成した場合、焼成後、最上層のシート35と最下層のシート36の主要部分は自然剥離するので、僅かに残る部分を洗浄すれば良い。
【0083】
以上の工程の他、必要に応じて切断工程、研磨工程等を行い、図1に示す多層セラミック基板1を得る。切断工程では、ダイヤモンドスクライブで分割しても良く、積層焼成体34が厚い場合はダイシング方式で切断しても良い。研磨工程は、例えばラッピングにより行なう。ラッピングは回転定盤に砥粒を含まず、加工液中に砥粒を含ませ、加工対象を砥ぐ加工法である。また、湿式バレルを用いる方法としても良い。
【0084】
製造される多層セラミック基板1には、電子デバイス40が搭載されるが、この電子デバイス40を搭載した状態を図11に示す。図11に示すように、電子デバイス40は多層セラミック基板1のキャビティ11の中に収容される。電子デバイス40の裏面はキャビティ11の表面に露呈した導体パターン12に接続される。さらに、電子デバイス40は、ボンディングワイヤ41で多層セラミック基板1に形成された電極(図示は省略する。)に接続される。電極は、多層セラミック基板1の表面に印刷された表面電極、ビア電極、さらには多層セラミック基板1の内部に印刷された内部電極等である。このように本実施形態の製造方法により作製される多層セラミック基板は、電子デバイスを多層セラミック基板の内部に収容でき、小型化及び低背化の要求を満足することができる。
【0085】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、キャビティの底面の周縁部全体を縁取るように軟化層を形成した例である。
【0086】
前記第1実施形態において、キャビティ11の底面11aの周縁部に導体パターン12の存在しない辺においては、当該導体パターン12の断線の懸念がないため軟化層を存在させていない。このため、この部分に対応するキャビティ11の底面11aが第1嵌合シート25の拘束力を強く受ける結果、キャビティ11の底面11aとその外側との境界部に大きな応力が発生する。例えばキャビティ11の側壁の下方のセラミック層の層間に内部電極パターンが設けられている場合には、当該内部電極パターンが断線するおそれがある。
【0087】
そこで本実施形態では、軟化層13の形状を、キャビティ11の底面の周縁部全体を縁取るような例えば枠状とする。図12に示すように、本実施形態の多層セラミック基板45では、キャビティ11の導体パターン12が形成されていない部分においても、キャビティ11の底面の周縁全体、すなわちキャビティ11の側壁の下端部に沿って、軟化層13が配置される。軟化層13は、セラミック層3とセラミック層4との間に配置される。
【0088】
図12に示すような多層セラミック基板45を得るためには、軟化層形成工程(ステップS16)において、焼成後にキャビティ11の底面となる領域の周縁全体を縁取るように軟化層13を形成し、底面形成用グリーンシート32を形成すればよい。
【0089】
以上のような多層セラミック基板45においては、キャビティ11の底面11の周縁部のうち導体パターン12が形成されていない部分にも軟化層13が配置される。このため、キャビティ11の底面11の周縁部のうち導体パターン12が形成されていない部分においても軟化層13により底面形成用グリーンシートへ加わる応力が緩和され、その結果キャビティの側壁の下方に配された内部電極パターンの断線を抑制することができる。
【0090】
図13は、四角形状の開口を有するキャビティ11の周縁部の全辺に導体パターン12が設けられている例を示す図である。この場合も、キャビティ11の底面11aの周縁部全体を縁取るよう軟化層13を形成する。また、多層セラミック基板においては、例えば図14に示すように、導体パターン12がキャビティ底面の全体に形成されていてもよい。いずれの場合も、キャビティ底面に露呈する導体パターン12や内部電極パターンの断線を確実に抑制することができる。
【0091】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。本実施形態と先の第1の実施形態との相違は、キャビティが多段形状のキャビティ(本例の場合、二段形状の二段底キャビティ)であることである。
【0092】
以下、二段底キャビティを有する多層セラミック基板について、図15を参照しながら説明する。図15に示す多層セラミック基板50は、二段底キャビティ51を有し、複数(ここでは14層)のセラミック層が積層一体化されている。セラミック層3が底面形成用セラミック層に相当し、その上面の一部がキャビティの底部に臨み、二段底キャビティ51の一番深い底面51aを構成する。多層セラミック基板50を構成するセラミック層のうち、セラミック層2〜9までの構成は、第1の実施形態と略同様である。セラミック層10の一部は二段底キャビティ51の二段目の底面51bを構成している。したがって、セラミック層10は底面形成用セラミック層に相当する。また、セラミック層10の表面には導体パターン52が設けられている。
【0093】
セラミック層10上に積層されるセラミック層53〜57は、それぞれ貫通孔53a〜57aを有し、キャビティ形成用セラミック層に相当する。セラミック層53〜57の貫通孔53a〜57aが連なることにより、二段底キャビティ51のうち浅い方の空間を規定する側壁が構成される。
【0094】
本実施形態の多層セラミック基板50では、二段目の底面51bにおいて導体パターン52が底面51bの周縁部を跨ぐように形成されている場合、周縁部のうち少なくとも導体パターン52表面に第2軟化層58を配置する。
【0095】
本実施形態の多層セラミック基板を作製するに際しては、後述するように、キャビティの一番深い底面に対応して第1複合グリーンシートを配する他、キャビティの二段目の底面(段差面)に対応して第2複合グリーンシートを配し、さらに各段のキャビティ部の寸法に合わせて大きさが異なる切り込み形成シートを積層する。
【0096】
図16は、図15に示す多層セラミック基板のキャビティ形状を詳細に示す図である。ここで、各キャビティ部51c,51dの側壁においては、収縮抑制グリーンシートから離れるにつれ面方向の収縮が次第に大きくなっており、それぞれ開口部における開口寸法が、深さ方向中途位置における開口寸法よりも小さくなっている。すなわち、キャビティ部51cについては、開口部の開口寸法をW3、深さ方向中途位置の開口寸法をW4としたときに、W3<W4である。同様に、キャビティ部51dについても、開口部の開口寸法をW5、深さ方向中途位置の開口寸法をW6としたときに、W5<W6である。また、各キャビティ部51c,51dの側壁の断面形状は円弧状であり、したがって各キャビティ部51c,51dの形状は、いわば壺形を呈することになる。
【0097】
なお、2段目以降のキャビティ部(ここではキャビティ部51d)については、必ずしも前記壺形に限らず、図17に示すように、開口面積が最も大きく、深さ方向において次第に開口面積が漸減する形状であってもよい。この場合には、開口部の開口寸法をW5、深さ方向中途位置の開口寸法をW6としたときにW5>W6であり、1段目のキャビティ部51cが壺形であるのに対して、2段目のキャビティ部51dは、いわば椀状を呈することになる。2段目以降のキャビティ部の形状を前記椀状とすることにより、当該キャビティ部51dに電子デバイスを実装する際のワイヤボンディング等が容易になり、効率的なデバイス実装が可能になる。
【0098】
本実施形態の多層セラミック基板50では、前記の通り、多段形状のキャビティ51において、少なくともキャビティ部51cの形状が開口部よりも内部の方が開口面積が大きな太鼓型形状となっており、したがって各キャビティ部51c,51dにおいて樹脂封止の信頼性を確保することが可能である。
【0099】
以下、前述のような構成の多層セラミック基板50の製造方法について説明する。本実施形態と先の第1の実施形態との相違は、キャビティを多段形状のキャビティ(本例の場合、二段形状の二段底キャビティ)とすることである。したがって、二段底キャビティとするために、キャビティの一番深い底面に対応して第1複合グリーンシートを配する他、キャビティの二段目の底面(段差面)に対応して第2複合グリーンシートを配すること、貫通孔の大きさが異なる切り込み形成シートを積層することが工程上の相違点である。
【0100】
本実施形態では、複合グリーンシート形成工程(ステップS12)において、図18(a)に示す第2複合グリーンシート43を形成する。第2複合グリーンシート43の作製に際しては、先ず、グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製したセラミックグリーンシート21に前述の第1貫通孔24と重なり且つ第1貫通孔24よりも大きな第3貫通孔44を設ける。第3貫通孔44の形成方法は、前述の第1貫通孔24の形成方法と同様である。
【0101】
そして、グリーンシート形成工程(ステップS11)で作製した収縮抑制材グリーンシート22を、第3貫通孔44と略同形状に切断し、第3嵌合シート45とし、第3貫通孔44に嵌め込む。さらに、この嵌め込まれた第3嵌合シート45に第1貫通孔24と同位置、且つ略同形状となる第4貫通孔46を設け、ここにセラミックグリーンシート21を第4貫通孔46と略同形状に切断した第2嵌合シート28を嵌め込む。このようにして、第2複合グリーンシート43を形成する。第2複合グリーンシート43の作製に際しては、前記手順とは逆に、先に第2嵌合シート28を第4貫通孔46に嵌め込み、後に第3嵌合シート45を、第3貫通孔44に嵌め込むこととしても良い。
【0102】
また、本実施形態では、切り込み形成工程(ステップS13)において、図18(b)に示すように、第1実施形態における切り込み形成シート30とは別の切り込み形成シート(第2切り込み形成シート47)を形成する。この第2切り込み形成シート47と先の切り込み形成シート30との相違は、切り込み48の寸法が切り込み31の寸法よりも大きいことである。具体的には、第2切り込み形成シート47では、切り込み48は、第2複合グリーンシート43の第3貫通孔44と同位置で略同形状とする。
【0103】
また、導体印刷工程(ステップS15)において、図19に示すように、最上層の切り込み形成シート30の表面にキャビティ底面51bの周縁部を跨ぐように導体パターン52を形成し、第2底面形成用グリーンシート53を作製する。また、第1の実施形態と同様にして、グリーンシート21の表面に導体パターン12を形成し、底面形成用グリーンシート32を作製する。
【0104】
さらに、軟化層形成工程(ステップS16)において、図19に示すように、焼成後にキャビティ11の二段目の底面51bとなる領域の周縁部(図中点線で示す。)のうち、少なくとも導体パターン52が設けられた2辺を縁取るように第2軟化層58を形成する。
【0105】
本実施形態において各シートを積層した積層体54の例を図20(a)に示す。積層体54を構成する各層は、下から順に以下のように積層される。すなわち、最下層から収縮抑制グリーンシート22、セラミックグリーンシート21、底面形成用グリーンシート32、第1複合グリーンシート26、切り込み形成シート30、第2底面形成用グリーンシート53、第2複合グリーンシート43、第2切り込み形成シート47、最上層複合グリーンシート29の順に積層する。なお、各シートの積層枚数は、収縮抑制グリーンシート22、底面形成用グリーンシート32、第1複合グリーンシート26、第2底面形成用グリーンシート53、第2複合グリーンシート43、及び最上層複合グリーンシート29については1枚である。勿論、これらを複数枚重ねて使用することとしても良い。セラミックグリーンシート21、切り込み形成シート30、及び第2切り込み形成シート47については、多層セラミック基板に求められる層間の電極パターン構成や内部に搭載する電子デバイスの寸法に依存し、通常は2枚以上使用する。本例の場合、セラミックグリーシート21を1枚、切り込み形成シート30を5枚、第2切り込み形成シート47を4枚重ねている。勿論、これに拘束されるものでなく、各シートの積層数は任意である。また、積層体54は、図20(a)に示したキャビティの他に、例えば収縮抑制グリーンシート22側に別個のキャビティを有していても良い。
【0106】
前記積層体54を焼成すると、図20(b)に示すように、積層焼成体55が得られる。積層焼成体55においては、キャビティを埋めていた部分56aが平面方向に収縮し、キャビティから突出する形になる。そして、先の第1の実施形態と同様、この部分を除去し、必要に応じて収縮抑制シート除去工程(ステップS4)等を行うことで、図15(図16)に示すように、二段底キャビティ51を有する多層セラミック基板50を完成する。
【0107】
二段底キャビティ51を有する多層セラミック基板50に電子デバイス40を搭載した例を図21に示す。図21に示すように、電子デバイス40は下側のキャビティ部の中に収容され、最も深い底面11aに露呈した導体パターン12に接続される。電子デバイス40は、ボンディングワイヤ41で上側のキャビティ部の底面51bに露呈した導体パターン52に接続される。このように本実施形態の製造方法により作製される多層セラミック基板50は、電子デバイス40及びボンディングワイヤ41を多層セラミック基板50の内部に収容できる。これにより、多層セラミック基板の表面からボンディングワイヤなどが突出することなく平坦にできる。また、内部に複数の誘電体層を持つ多層セラミック基板においても、電子デバイスを高密度に実装でき、小型化及び低背化の要求を満足することができる。
【0108】
また、二段底キャビティ51の二段目の底面51bの周縁部のうち導体パターン52表面に第2軟化層58を配置するので、セラミック層53〜57の側壁下端部が面内方向へ収縮する際の導体パターン52への応力集中が緩和され、導体パターン52の断線を抑制することができる。
【0109】
なお、本実施形態の多層セラミック基板の製造方法を応用することにより、多層セラミック基板の内部に三段底以上の多段底キャビティを形成することもできる。例えば、前記積層体形成工程において、前記第2貫通孔と同位置で略同形状の切り込み若しくは不連続部が設けられているセラミックグリーンシートと前記最上層複合グリーンシートとの間に、下から順に、セラミックグリーンシートに、前記第2貫通孔と重なり且つ該第2貫通孔よりも大きな第4貫通孔を設け、該第4貫通孔と略同形状で同厚さの収縮抑制グリーンシートを該第4貫通孔に嵌め込み、該第4貫通孔に嵌めこんだ該収縮抑制グリーンシートに、前記第2貫通孔と同位置且つ略同形状となる第5貫通孔を設け、該第5貫通孔と略同形状で同厚さのセラミックグリーンシートを該第5貫通孔に嵌め込んだ第3複合グリーンシートと、前記第4貫通孔と同位置で略同形状の切り込み若しくは不連続部が設けられているセラミックグリーンシートと、をそれぞれ少なくとも1枚が重なって挟まれた状態とする。そして、積層方向にプレスして積層体を形成する。これにより、キャビティ形成工程を経ることで、三段底キャビティを形成できる。
【0110】
そして、三段目の底面の周縁部を跨ぐように導体パターンが形成されている場合には、二段底キャビティを有する多層セラミック基板の製造プロセスと同様に、所定の位置に軟化層を配置する。これにより、三段目の底面に形成された導体パターンの断線を抑制することができる。
【0111】
(第4の実施形態)
例えば、第1の実施形態の製造方法において、多層セラミック基板の層構造によっては上下の収縮抑制力のバランスが取れず、極端に描けば例えば図22に示すようにキャビテイ底面部が変形することがある。このような場合には、底面を挟む収縮抑制材グリーンシートの厚さを調整してやればよい。本実施形態は、このような調整を行った例である。
【0112】
すなわち、図23に示すように、キャビテイ形成部に収縮抑制材グリーンシート片(第1嵌合シート25)を嵌め合わせた第1複合グリーンシート26の厚さを調整する。この場合、前記厚さの変化を補正するためは、第1嵌合シート25の厚さのみを調整すればよいが、第1複合グリーンシート全体の厚さを調整するようにしてもよい。あるいは、図24に示すように、収縮抑制材グリーンシート22のキャビティに対応する部分の厚さを調整するようにしてもよい。この場合、収縮抑制材グリーンシート22は、図24に示すように、厚さの薄い収縮抑制材グリーンシート22aと、キャビテイ形成部に貫通孔を設けここにセラミックグリーンシートを嵌め合わせた収縮抑制材グリーンシート22bを積層することにより構成すればよい。これにより、積層体全体の収縮抑制とキャビティ底面部の収縮抑制を別々に制御することができる。
【0113】
なお、収縮抑制材グリーンシート22bについて、嵌め合わせるセラミックグリーンシートの形状(貫通孔の形状)はキャビティの形状と同一であることには拘らず、収縮抑制力のバランスを考慮して決めればよい。また、第1嵌合シート25や収縮抑制材グリーンシート22a,22bの厚さについても、同様に収縮抑制力のバランスを考慮して適宜設定すればよい。また、収縮抑制材グリーンシート22bの貫通孔には、セラミックグリーンシートに代えて焼失性シートを嵌め合わせておいてもよく、この場合も、プレスを行なう際に均一に圧力を加えることができる。
【0114】
(第5の実施形態)
本実施形態は、図1に示す多層セラミック基板1を製造する際に焼失性シートを用いた例である。図25は、本実施形態の基本的な製造プロセスを示すものである。当該製造プロセスは、主に、焼成後にセラミック層となるグリーンシート及び収縮抑制材グリーンシートを積層しプレスする工程、これを焼成する工程、焼成後に埋め込み用グリーンシートの焼成物を除去する工程、収縮抑制材グリーンシートの焼成物を除去する工程とから構成される。
【0115】
多層セラミック基板の作製に際しては、先ず、図25(a)に示すように、多層セラミック基板を構成するセラミック層の数に応じて、複数のセラミックグリーンシートを基板用グリーンシートとして積層する。ここでは、9枚のセラミックグリーンシート61〜69を積層する。各セラミックグリーンシート61〜69は、例えばセラミック粉末と有機バインダー及び有機溶剤とを混合して得られるスラリー状の誘電体ペーストを作り、これを例えばポリエチレンテレフタレート(PET)シート等の支持体上にドクターブレード法等によって成膜することにより形成する。前記セラミック粉末や有機ビヒクル(有機バインダー及び有機溶剤)としては、公知のものがいずれも使用可能である。
【0116】
ここで、前記セラミックグリーンシート61〜69のうち、下側の2枚のセラミックグリーンシート61,62については、キャビティを形成するための貫通孔は必要なく、通常の平坦なグリーンシートとして形成されている。これら2枚のセラミックグリーンシート61,62のうち、上側のセラミックグリーンシート62がキャビティの底面を構成する底面形成用グリーンシートに相当することになる。
【0117】
前記セラミックグリーンシート62上には、残りの7枚のセラミックグリーンシート63〜69が積層されるが、これらセラミックグリーンシート63〜69には、前記キャビティ11の開口形状に対応して、所定の形状の貫通孔63a及び切り込み64a〜69aが入れられ、キャビティ空間に対応する部分63b〜69bが分離されている。したがって、これら7枚のセラミックグリーンシート63〜69が、キャビティ側壁形成用グリーンシートに相当することになる。
【0118】
本実施形態では、前記キャビティの底面を構成するセラミックグリーンシート62と接するセラミックグリーンシート63を除いて、切り込み64a〜69aにより分離された部分64b〜69bを埋め込み用グリーンシートとして利用する。なお、前記に限らず、例えば各セラミックグリーンシート64〜69にキャビティに対応する貫通孔を形成し、ここに別途形成した埋め込み用グリーンシートを嵌め合わせるようにしてもよいが、生産性を考えると、前記のように切り込み64a〜69aにより分離された部分64b〜69bを埋め込み用グリーンシートとして利用するのが有利である。
【0119】
一方、前記キャビティの底面を構成するセラミックグリーンシート62と接するセラミックグリーンシート63については、キャビティに対応する貫通孔63aを形成し、この部分のセラミックグリーンシートを除去するとともに、前記貫通孔63aの形状に合わせた収縮抑制材グリーンシート片70a、及び焼失性シート片71aを貫通孔63aに嵌め込み、これを埋めるようにする。これを詳細に示したのが図26である。
【0120】
すなわち、先ず、図26(a)に示すように、セラミックグリーンシート63を形成し、図26(b)に示すように、キャビティの開口形状に対応する貫通孔63aを打ち抜き形成する。また、図26(c)に示すように、収縮抑制材グリーンシート70を形成し、図26(d)に示すように、これを前記貫通孔63aの形状とほぼ一致するように打ち抜いて収縮抑制材グリーンシート片70aを形成する。同様に、図26(e)に示すように、焼失性シート71を形成し、図26(f)に示すように、これを前記貫通孔63aの形状とほぼ一致するように打ち抜いて焼失性シート片71aを形成する。次いで、図26(g)に示すように、前記セラミックグリーンシート63の貫通孔63aに、前記収縮抑制材グリーンシート片70a、及び焼失性シート片71aをこの順に嵌め合わせ、前記貫通孔63aを埋める形とする。したがって、前記収縮抑制材グリーンシート片70aと焼失性シート片71aを合わせた厚さは、前記セラミックグリーンシート63の厚さとほぼ一致するように設定することが好ましい。
【0121】
前記収縮抑制材グリーンシート70(収縮抑制材グリーンシート片70a)には、前記セラミックグリーンシート61〜69の焼成温度では収縮しない材料、例えばトリジマイトやクリストバライト、さらには石英、溶融石英、アルミナ、ムライト、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素等を含む組成物が用いられ、これら収縮抑制材グリーンシート片71aをセラミックグリーンシート(この場合には、セラミックグリーンシート62)と接するように配し、焼成を行うことで、セラミックグリーンシート62の面内方向の収縮が抑えられる。
【0122】
前記焼失性シート71(焼失性シート片71a)には、前記セラミックグリーンシート61〜69の焼成温度で焼失する材料、例えば樹脂材料等が用いられる。特に、セラミックグリーンシート61〜69に含まれる有機バインダーと同一の材料を用いることが好ましい。焼失性シート71(焼失性シート片71a)にセラミックグリーンシート61〜69に含まれる有機バインダーと同一の材料を用いれば、焼成の際に確実に前記焼失性シート71(焼失性シート片71a)が焼失する。なお、前記焼失性シート片71aは、前記のようにシート化したものを打ち抜くことにより形成してもよいし、例えば印刷法等により形成してもよい。
【0123】
以上のようにセラミックグリーンシート61〜69を積層し、その両面、すなわち最外層のセラミックグリーンシート61,69の表面に、収縮抑制材グリーンシート73,74を重ね合わせる。収縮抑制材グリーンシート73,74の材質としては、先の収縮抑制材グリーンシート70の材質と同様である。なお、キャビティに対応して貫通孔(切り込み69a)が形成されるセラミックグリーンシート69側に配される収縮抑制材グリーンシート74については、セラミックグリーンシート69と同様にキャビティ開口形状に対応した貫通孔74aを設け、ここに別途打ち抜き形成した埋め込み用セラミックグリーンシート片75を嵌め込んでおく。
【0124】
これらを積層した積層体の積層状態は、図25(a)に示すようなものであり、複数のセラミックグリーンシート61〜69が積層された積層体の両面に収縮抑制材グリーンシート73,74が積層され、積層体全体の面内方向の収縮を抑制するように構成されている。セラミックグリーンシート62の表面には、キャビティの底面周縁部を跨ぐ状態で導体パターン12が形成されている。また、セラミックグリーンシート62のキャビティ底面を構成する領域には、前記セラミックグリーンシート63の貫通孔63a内に配された収縮抑制材グリーンシート片70aが接しており、この部分においても面内方向の収縮を抑制するように構成されている。
【0125】
キャビティに対応する空間は、通常はこの段階でも空間(凹部)として形成されるが、本実施形態の製造方法では、前記セラミックグリーンシート64〜69の切り込み64a〜69aにより分離された部分64b〜69b、さらには埋め込み用セラミックグリーンシート片75が埋め込み用グリーンシートとして配される形になっており、積層体の全体形状を見たときには、凹部の無い平坦な積層体として形成されることになる。
【0126】
前記セラミックグリーンシート61〜69や収縮抑制材グリーンシート73,74を積層した積層体は、焼成に先立ってプレス工程によりプレスする必要がある。このとき、キャビティに対応する凹部が形成されていると、凹部の潰れ等が発生し、キャビティの開口部等が変形するおそれがある。本実施形態では、前記埋め込み用グリーンシートにより積層方向で厚さが均一な積層体を作製し、キャビティ部分を含めて平坦化されているので、通常の平板の金型を用いてプレスすることができ、容易な手段でプレス工程を行うことが可能である。なお、積層体のプレス工程は、前記のように平板の金型間に挟み込んで加圧することにより行ってもよいし、例えば積層体を防水性樹脂等で被覆し、静水圧プレスを行ってもよい。
【0127】
前記のプレス工程の後、図25(b)に示すように、焼成することにより各セラミックグリーンシート61〜69をセラミック層2〜10とするが、このとき収縮抑制材グリーンシート73,74が積層され拘束されているので、前記セラミックグリーンシート61〜69は厚さ方向にのみ収縮し、面内方向にはほとんど収縮しない。キャビティの底部に露呈するセラミックグリーンシート62についても、面内方向の収縮が抑えられる。
【0128】
また、キャビティ空間に対応して埋め込み配置された埋め込み用グリーンシート(セラミックグリーンシート64〜69の切り込み64a〜69aにより分離された部分64b〜69b、及び埋め込み用セラミックグリーンシート片75)と収縮抑制材グリーンシート片70aの間には、前記焼失性シート片71aが介在され、これがセラミックグリーンシート61〜69が焼結する前に焼失する。これにより、これら埋め込み用グリーンシートに対してキャビティの底部に配される収縮抑制材グリーンシート片70aの拘束力は働かず、したがって面内方向に収縮し、これらの焼成物76は、図25(b)に示すように、厚さ方向での収縮が少ない分、焼成後の積層体から突出する形になる。前記拘束力が働かないので、これらが収縮することによって前記収縮抑制材グリーンシート片70a、さらにはその下のセラミックグリーンシート62に応力が加わることがなく、セラミックグリーンシート62が焼成することにより形成されるセラミック層3の平坦性等が損なわれることもない。
【0129】
焼成が終了した後には、図25(c)に示すように、前記埋め込み用グリーンシートの焼成物76をキャビティ空間から除去する。前記焼成物は、焼失性シート片71aの焼失により前記収縮抑制材グリーンシート片70aから分離され、例えば上下反転することで、容易に除去することが可能である。
【0130】
最後に、前記収縮抑制材グリーンシート73,74や収縮抑制材グリーンシート片70aの焼成後の残渣77を除去し、図25(d)に示すようなキャビティ11を有する多層セラミック基板1を完成する。収縮抑制材グリーンシート73,74や収縮抑制材グリーンシート片70aの焼成後の残渣77は、何らかの洗浄工程を行うことで容易に除去することができ、例えば超音波洗浄程度の刺激で容易に除去することが可能である。したがって、洗浄工程として、溶剤中での超音波洗浄工程等を行えばよいが、例えばアルミナ系のグリーンシートを前記収縮抑制材グリーンシートとして用いた場合には、残渣76が自然剥離しないので、ウエットブラスト工程等により研磨し洗浄することで前記残渣76を除去する必要がある。
【0131】
以上により作製される多層セラミック基板1は、寸法精度やキャビティ底面の平面度等に優れたものであり、また、キャビティ開口部の潰れやキャビティ開口部周辺における盛り上がり等の変形が生ずることもない。さらに、多層セラミック基板1においては、軟化層13を形成することにより導体パターン12の断線が抑えられている。
【0132】
(第6の実施形態)
本実施形態は、焼失性シートを多段構造(2段構造)のキャビティを有する多層セラミック基板の製造に適用した例である。図27は、2段構造のキャビティが形成される多層セラミック基板の製造に応用した実施形態を示すものである。この場合には、図27(a)に示すように、セラミックグリーンシートの積層体81の両面に収縮抑制材グリーンシート82,83を積層するとともに、キャビティの底面及び段差面にそれぞれ収縮抑制材グリーンシート片84,85及び焼失性シート片86,87を配する。そして、2段構造のキャビティ空間を埋める形で埋め込み用グリーンシート88を配した状態でプレス工程及び焼成工程を行う。本例の場合にも、積層体の平坦性が保たれており、プレス工程は容易である。
【0133】
焼成後には、図27(b)に示すように、埋め込み用グリーンシートの焼成物89は、積層体から突出する形になるが、前記と同様、例えば上下反転することで容易に除去することが可能である。得られる多層セラミック基板90は、図27(c)に示すようなものであり、全体の寸法精度に優れるばかりでなく、キャビティ91の底面91aや段差面91bの寸法精度や平面度も優れたものとなる。また、各底面に軟化層13及び第2軟化層58をそれぞれ配置することで、キャビティ周囲の領域の面内方向への収縮に伴う導体パターン12及び導体パターン52の断線を抑制することができる。なお、前記のような2段構造のキャビティ91の場合、底面91aに電子デバイスが搭載され、段差面に前記電子デバイスとボンディングワイヤで結ばれる導体パターンが設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】(a)は本実施形態の多層セラミック基板の一例を示す概略平面図であり、(b)は(a)の要部拡大平面図であり、(c)は(a)中X−X線における要部概略断面図であり、(d)は(c)の要部拡大断面図である。
【図2】図1に示す多層セラミック基板のキャビティ形状を詳細に示す図である。
【図3】キャビティ内に電子デバイスを樹脂封止した状態を示す概略断面図である。
【図4】第1の実施形態における製造プロセスを示すフローチャートである。
【図5】(a)はセラミックグリーンシートの概略側面図であり、(b)は収縮抑制材グリーンシートの概略側面図である。
【図6】(a)は第1複合グリーンシートの概略平面図であり、(b)は最上層複合グリーンシートの概略平面図である。
【図7】切り込み形成シートの概略平面図である。
【図8】底面形成用グリーンシートの概略平面図である。
【図9】第1の実施形態における多層セラミック基板の製造プロセスを示す要部概略断面図であり、(a)は積層工程、(b)は焼成工程、(c)はキャビティ形成工程、(d)は収縮抑制シート除去工程を示す。
【図10】軟化層が設けられていない多層セラミック基板の製造プロセスにおける積層工程を示す要部概略断面図である。
【図11】第1の実施形態で作製された多層セラミック基板への電子デバイスの実装状態を示す概略断面図である。
【図12】第2の実施形態の多層セラミック基板の一例を示す概略平面図である。
【図13】第2の実施形態の多層セラミック基板の他の例を示す概略平面図である。
【図14】第2の実施形態の多層セラミック基板のさらに他の例を示す要部概略断面図である。
【図15】第3の実施形態における多層セラミック基板であり、多段構造のキャビティを有する多層セラミック基板の一例を示す要部概略断面図である。
【図16】多段形状のキャビティを有する多層セラミック基板におけるキャビティ形状の一例を示す図である。
【図17】多段形状のキャビティを有する多層セラミック基板におけるキャビティ形状の他の例を示す図である。
【図18】(a)は第3の実施形態において作製される第2複合グリーンシートの概略平面図であり、(b)は第2切り込み形成シートの概略平面図である。
【図19】第2底面形成用グリーンシートの概略平面図である。
【図20】第3の実施形態における2段構造のキャビティを有する多層セラミック基板の製造プロセス例を示す要部概略断面図であり、(a)は積層工程、(b)は焼成工程を示す。
【図21】第3の実施形態で作製された多層セラミック基板への電子デバイスの実装状態を示す概略断面図である。
【図22】多層セラミック基板のキャビティ底面部における変形を示す要部概略断面図である。
【図23】第4の実施形態における積層体の一例を示す要部概略断面図である。
【図24】第4の実施形態における積層体の他の構成例を示す要部概略断面図である。
【図25】第5の実施形態における多層セラミック基板の製造プロセスを示す要部概略断面図であり、(a)は積層工程、(b)は焼成工程、(c)は埋め込み用グリーンシートの焼成物の除去工程、(d)は完成した多層セラミック基板を示す。
【図26】セラミックグリーンシートへの収縮抑制材グリーンシート片及び焼失性シート片の適用工程を示す概略斜視図である。
【図27】第6の実施形態における2段構造のキャビティを有する多層セラミック基板の製造プロセス例を示す要部概略断面図であり、(a)は積層工程、(b)は焼成工程、(c)はセラミック多層基板を示す。
【符号の説明】
【0135】
1 多層セラミック基板、2〜10 セラミック層、11 キャビティ、12 導体パターン、13 軟化層、21 セラミックグリーンシート、22 収縮抑制材グリーンシート、23 支持体、24 第1貫通孔、25 第1嵌合シート、26 第1複合グリーンシート、27 第2貫通孔、28 第2嵌合シート、29 最上層複合グリーンシート、30 切り込み形成シート、31 切り込み、32 底面形成用グリーンシート、33 積層体、34 積層焼成体、40 電子デバイス、41 ボンディングワイヤ、43 第2複合グリーンシート、44 第3貫通孔、45 第3嵌合シート、46 第4貫通孔、47 第2切り込み形成シート、48 切り込み、50 多層セラミック基板、51 二段底キャビティ、52 導体パターン、53〜57 セラミック層、58 軟化層、61〜69 セラミックグリーンシート、63a〜69a 切り込み、64b〜69b 分離された部分(埋め込み用グリーンシート)、70a 収縮抑制材グリーンシート片、71a 焼失性シート片、73,74 収縮抑制材グリーンシート、75 埋め込み用グリーンシート片、76 埋め込み用グリーンシートの焼成物、77 残渣、81 積層体、82,83 収縮抑制材グリーンシート、84,85 収縮抑制材グリーンシート片、86,87 焼失性シート片、88 埋め込み用グリーンシート、89 埋め込み用グリーンシートの焼成物、90 多層セラミック基板、91 キャビティ、91a 底面、91b 段差面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板用グリーンシートを積層した後焼成することにより製造され、キャビティを有し、前記キャビティの底面を構成する底面形成用セラミック層を含むセラミック層が積層一体化される多層セラミック基板であって、
前記底面形成用セラミック層上に前記キャビティの底面の周縁部を跨ぐ状態で導体パターンが形成されており、
前記底面形成用セラミック層上の前記底面の周縁部に対応する部分のうち少なくとも前記導体パターンの表面に、前記焼成の際の焼成温度で軟化する軟化層を有することを特徴とする多層セラミック基板。
【請求項2】
前記周縁部全体に前記軟化層が形成されることを特徴とする請求項1記載の多層セラミック基板。
【請求項3】
前記底面の周縁部と前記軟化層の外周縁部との距離が0.1mm〜0.5mmであることを特徴とする請求項1または2記載の多層セラミック基板。
【請求項4】
前記底面の周縁部と前記軟化層の内周縁部との距離が0.5mm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の多層セラミック基板。
【請求項5】
前記軟化層がガラスにより構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の多層セラミック基板。
【請求項6】
前記ガラスは、前記セラミック層に含まれるガラスと同一であることを特徴とする請求項5記載の多層セラミック基板。
【請求項7】
前記キャビティの開口部における開口面積が、前記キャビティの深さ方向中途位置における開口面積よりも小であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の多層セラミック基板。
【請求項8】
前記キャビティの形状は深さ方向中途部が膨出する形状とされており、キャビティの開口面積は、深さ方向中途位置に至るまで次第に増加し、次いで次第に減少していることを特徴とする請求項7記載の多層セラミック基板。
【請求項9】
前記キャビティの内壁の断面形状が略円弧形状であることを特徴とする請求項8記載の多層セラミック基板。
【請求項10】
前記キャビティは開口寸法が深さ方向において段階的に小となる多段形状を有し、
段差を有する各底面のうち底面の周縁部を跨ぐ状態で導体パターンが形成されている底面において、当該底面を構成する底面形成用セラミック層上の前記底面の周縁部に対応する部分のうち少なくとも前記導体パターンの表面に前記軟化層を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の多層セラミック基板。
【請求項11】
少なくとも1段目のキャビティ部において、開口部における開口面積が深さ方向中途位置における開口面積よりも小であることを特徴とする請求項10記載の多層セラミック基板。
【請求項12】
前記1段目のキャビティ部の形状は深さ方向中途部が膨出する形状とされており、当該キャビティ部の開口面積は、深さ方向中途位置に至るまで次第に増加し、次いで次第に減少していることを特徴とする請求項11記載の多層セラミック基板。
【請求項13】
2段目以降のキャビティ部において、開口部における開口面積が深さ方向中途位置における開口面積よりも小であることを特徴とする請求項11または12記載の多層セラミック基板。
【請求項14】
2段目以降のキャビティ部は、深さに伴って開口面積が漸減する形状とされていることを特徴とする請求項11または12記載の多層セラミック基板。
【請求項15】
前記各キャビティ部の内壁の断面形状が略円弧形状であることを特徴とする請求項12から14のいずれか1項記載の多層セラミック基板。
【請求項16】
前記キャビティ内に電子デバイスが実装され、樹脂封止されていることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項記載の多層セラミック基板。
【請求項17】
キャビティの底面を構成する底面形成用グリーンシートとキャビティ形状に応じた開口を形成するキャビティ形成用グリーンシートとを含む複数の基板用グリーンシートを積層して積層体とし、前記積層体の最外層となる基板用グリーンシートの表面にそれぞれ収縮抑制材グリーンシートを積層した状態で当該積層体をプレスした後、焼成することによりキャビティを有する多層セラミック基板を形成する多層セラミック基板の製造方法であって、
前記底面形成用グリーンシート上に前記キャビティの底面の周縁部を跨ぐ状態で導体パターンを形成し、前記底面形成用グリーンシート上の前記周縁部に対応する部分のうち少なくとも前記導体パターンの表面に、前記焼成の際の焼成温度で軟化する軟化層を形成した後、
貫通孔内に収縮抑制材グリーンシート片が埋め込まれたキャビティ形成用グリーンシートをキャビティの底面と前記収縮抑制材グリーンシート片とが重なるように前記底面形成用グリーンシートの直上に積層するとともに、前記キャビティを埋める形で前記各キャビティ形成用グリーンシートとは分離された埋め込み用グリーンシートが前記収縮抑制材グリーンシート片上に配されるようにキャビティ形成用グリーンシートを積層した状態で前記プレス及び焼成を行い、
焼成後に前記埋め込み用グリーンシートの焼成物を除去することを特徴とする多層セラミック基板の製造方法。
【請求項18】
前記底面の周縁部全体に前記軟化層を形成することを特徴とする請求項17記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項19】
前記底面の周縁部と前記軟化層の外周縁部との距離が0.1mm〜0.5mmとなるように前記軟化層を形成することを特徴とする請求項17または18記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項20】
前記底面の周縁部と前記軟化層の内周縁部との距離が0.5mm以下となるように前記軟化層を形成することを特徴とする請求項17から19のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項21】
前記軟化層にガラスを用いることを特徴とする請求項17から20のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項22】
前記ガラスは前記基板用グリーンシートに含まれるガラスと同一であることを特徴とする請求項21記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項23】
前記底面形成用グリーンシートの直上に積層されるキャビティ形成用グリーンシートにキャビティ形状に応じて貫通孔を形成するとともに、この貫通孔内に前記収縮抑制材グリーンシート片を嵌合することを特徴とする請求項17から22のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項24】
前記収縮抑制材グリーンシート片の厚さが前記基板用グリーンシートの厚さと略一致するように設定することを特徴とする請求項23記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項25】
前記キャビティは開口寸法が深さ方向において段階的に小となる多段形状を有し、段差を有する各底面を構成する基板用グリーンシート上にそれぞれ収縮抑制材グリーンシート片を配することを特徴とする請求項17から24のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項26】
前記段差を有する各底面に収縮抑制材グリーシート片を配するに際し、段差を有する各底面のうち底面の周縁部を跨ぐ状態で導体パターンが形成された底面において、当該底面を構成する底面形成用グリーンシート上の前記周縁部に対応する部分のうち少なくとも前記導体パターンの表面に前記軟化層を形成することを特徴とする請求項25記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項27】
前記収縮抑制材グリーンシート片と前記埋め込み用グリーンシートの間に焼失性シートを介在させることを特徴とする請求項17から26のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項28】
前記底面形成用グリーンシートの直上に積層されるキャビティ形成用グリーンシートにキャビティ形状に応じて貫通孔を形成するとともに、この貫通孔内に前記収縮抑制材グリーンシート片及び焼失性シートを嵌合することを特徴とする請求項27記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項29】
前記収縮抑制材グリーシート片と焼失性シートを合わせた厚さが前記キャビティ形成用グリーンシートの厚さと略一致するように設定することを特徴とする請求項28記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項30】
前記キャビティは開口寸法が深さ方向において段階的に小となる多段形状を有し、段差を有する各底面を構成する基板用グリーンシート上にそれぞれ収縮抑制材グリーンシート片及び焼失性シートを配することを特徴とする請求項17から29のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項31】
前記焼失性シートは、樹脂材料により形成されていることを特徴とする請求項27から30のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項32】
前記樹脂材料は、キャビティ形成用グリーンシートに含まれる樹脂材料と同一であることを特徴とする請求項31記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項33】
キャビティ形成用グリーンシートにキャビティ形状に対応した切り込みを入れ、これによって分離された部分を前記埋め込み用グリーンシートとすることを特徴とする請求項17から32のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項34】
キャビティ形成用グリーンシートにキャビティ形状に対応した貫通孔を形成し、この貫通孔に別途打ち抜き形成した埋め込み用グリーンシートを嵌合することを特徴とする請求項17から32のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項35】
前記キャビティの開口側における最外層の基板用グリーンシート表面に配される収縮抑制材グリーンシートにキャビティの開口形状に応じた貫通孔を形成し、ここに埋め込み用グリーンシートを嵌合することを特徴とする請求項17から34のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項36】
キャビティ部分の収縮抑制材グリーンシート片の厚さを補正することを特徴とする請求項17から35のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項37】
前記底面形成用グリーンシートの直上に積層されるキャビティ形成用グリーンシートの厚さを他のキャビティ形成用グリーンシートの厚さと異なるようにし、前記収縮抑制材グリーンシート片の厚さを収縮抑制材グリーンシートの厚さと異なるように設定することを特徴とする請求項36記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項38】
前記キャビティの開口側とは反対側における最外層の基板用グリーンシート表面に配される収縮抑制材グリーンシートは、前記キャビティに対向する部分と他の部分とで厚さが異なるように設定することを特徴とする請求項36または37記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項39】
前記収縮抑制材グリーンシートは、所定の厚さを有する第1の収縮抑制材グリーンシートと、前記キャビティに対向する部分に貫通孔が形成された第2の収縮抑制材グリーンシートを積層することにより構成することを特徴とする請求項38記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項40】
前記収縮抑制材グリーンシート及び収縮抑制材グリーンシート片は、収縮抑制材料として、石英、クリストバライト、トリジマイトから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項17から39のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項41】
前記収縮抑制材グリーンシート及び収縮抑制材グリーンシート片は、トリジマイトと難焼結性の酸化物を含む組成物により形成されていることを特徴とする請求項40記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項42】
前記焼成の際の焼成温度を1000℃以下とすることを特徴とする請求項17から41のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項43】
前記焼成の後、残渣を洗浄する洗浄工程を行うことを特徴とする請求項17から42のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項44】
前記洗浄工程は、溶剤中での超音波洗浄により行うことを特徴とする請求項43記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項45】
前記洗浄工程は、ウエットブラストにより行うことを特徴とする請求項43記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項1】
複数の基板用グリーンシートを積層した後焼成することにより製造され、キャビティを有し、前記キャビティの底面を構成する底面形成用セラミック層を含むセラミック層が積層一体化される多層セラミック基板であって、
前記底面形成用セラミック層上に前記キャビティの底面の周縁部を跨ぐ状態で導体パターンが形成されており、
前記底面形成用セラミック層上の前記底面の周縁部に対応する部分のうち少なくとも前記導体パターンの表面に、前記焼成の際の焼成温度で軟化する軟化層を有することを特徴とする多層セラミック基板。
【請求項2】
前記周縁部全体に前記軟化層が形成されることを特徴とする請求項1記載の多層セラミック基板。
【請求項3】
前記底面の周縁部と前記軟化層の外周縁部との距離が0.1mm〜0.5mmであることを特徴とする請求項1または2記載の多層セラミック基板。
【請求項4】
前記底面の周縁部と前記軟化層の内周縁部との距離が0.5mm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の多層セラミック基板。
【請求項5】
前記軟化層がガラスにより構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の多層セラミック基板。
【請求項6】
前記ガラスは、前記セラミック層に含まれるガラスと同一であることを特徴とする請求項5記載の多層セラミック基板。
【請求項7】
前記キャビティの開口部における開口面積が、前記キャビティの深さ方向中途位置における開口面積よりも小であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の多層セラミック基板。
【請求項8】
前記キャビティの形状は深さ方向中途部が膨出する形状とされており、キャビティの開口面積は、深さ方向中途位置に至るまで次第に増加し、次いで次第に減少していることを特徴とする請求項7記載の多層セラミック基板。
【請求項9】
前記キャビティの内壁の断面形状が略円弧形状であることを特徴とする請求項8記載の多層セラミック基板。
【請求項10】
前記キャビティは開口寸法が深さ方向において段階的に小となる多段形状を有し、
段差を有する各底面のうち底面の周縁部を跨ぐ状態で導体パターンが形成されている底面において、当該底面を構成する底面形成用セラミック層上の前記底面の周縁部に対応する部分のうち少なくとも前記導体パターンの表面に前記軟化層を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の多層セラミック基板。
【請求項11】
少なくとも1段目のキャビティ部において、開口部における開口面積が深さ方向中途位置における開口面積よりも小であることを特徴とする請求項10記載の多層セラミック基板。
【請求項12】
前記1段目のキャビティ部の形状は深さ方向中途部が膨出する形状とされており、当該キャビティ部の開口面積は、深さ方向中途位置に至るまで次第に増加し、次いで次第に減少していることを特徴とする請求項11記載の多層セラミック基板。
【請求項13】
2段目以降のキャビティ部において、開口部における開口面積が深さ方向中途位置における開口面積よりも小であることを特徴とする請求項11または12記載の多層セラミック基板。
【請求項14】
2段目以降のキャビティ部は、深さに伴って開口面積が漸減する形状とされていることを特徴とする請求項11または12記載の多層セラミック基板。
【請求項15】
前記各キャビティ部の内壁の断面形状が略円弧形状であることを特徴とする請求項12から14のいずれか1項記載の多層セラミック基板。
【請求項16】
前記キャビティ内に電子デバイスが実装され、樹脂封止されていることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項記載の多層セラミック基板。
【請求項17】
キャビティの底面を構成する底面形成用グリーンシートとキャビティ形状に応じた開口を形成するキャビティ形成用グリーンシートとを含む複数の基板用グリーンシートを積層して積層体とし、前記積層体の最外層となる基板用グリーンシートの表面にそれぞれ収縮抑制材グリーンシートを積層した状態で当該積層体をプレスした後、焼成することによりキャビティを有する多層セラミック基板を形成する多層セラミック基板の製造方法であって、
前記底面形成用グリーンシート上に前記キャビティの底面の周縁部を跨ぐ状態で導体パターンを形成し、前記底面形成用グリーンシート上の前記周縁部に対応する部分のうち少なくとも前記導体パターンの表面に、前記焼成の際の焼成温度で軟化する軟化層を形成した後、
貫通孔内に収縮抑制材グリーンシート片が埋め込まれたキャビティ形成用グリーンシートをキャビティの底面と前記収縮抑制材グリーンシート片とが重なるように前記底面形成用グリーンシートの直上に積層するとともに、前記キャビティを埋める形で前記各キャビティ形成用グリーンシートとは分離された埋め込み用グリーンシートが前記収縮抑制材グリーンシート片上に配されるようにキャビティ形成用グリーンシートを積層した状態で前記プレス及び焼成を行い、
焼成後に前記埋め込み用グリーンシートの焼成物を除去することを特徴とする多層セラミック基板の製造方法。
【請求項18】
前記底面の周縁部全体に前記軟化層を形成することを特徴とする請求項17記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項19】
前記底面の周縁部と前記軟化層の外周縁部との距離が0.1mm〜0.5mmとなるように前記軟化層を形成することを特徴とする請求項17または18記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項20】
前記底面の周縁部と前記軟化層の内周縁部との距離が0.5mm以下となるように前記軟化層を形成することを特徴とする請求項17から19のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項21】
前記軟化層にガラスを用いることを特徴とする請求項17から20のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項22】
前記ガラスは前記基板用グリーンシートに含まれるガラスと同一であることを特徴とする請求項21記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項23】
前記底面形成用グリーンシートの直上に積層されるキャビティ形成用グリーンシートにキャビティ形状に応じて貫通孔を形成するとともに、この貫通孔内に前記収縮抑制材グリーンシート片を嵌合することを特徴とする請求項17から22のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項24】
前記収縮抑制材グリーンシート片の厚さが前記基板用グリーンシートの厚さと略一致するように設定することを特徴とする請求項23記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項25】
前記キャビティは開口寸法が深さ方向において段階的に小となる多段形状を有し、段差を有する各底面を構成する基板用グリーンシート上にそれぞれ収縮抑制材グリーンシート片を配することを特徴とする請求項17から24のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項26】
前記段差を有する各底面に収縮抑制材グリーシート片を配するに際し、段差を有する各底面のうち底面の周縁部を跨ぐ状態で導体パターンが形成された底面において、当該底面を構成する底面形成用グリーンシート上の前記周縁部に対応する部分のうち少なくとも前記導体パターンの表面に前記軟化層を形成することを特徴とする請求項25記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項27】
前記収縮抑制材グリーンシート片と前記埋め込み用グリーンシートの間に焼失性シートを介在させることを特徴とする請求項17から26のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項28】
前記底面形成用グリーンシートの直上に積層されるキャビティ形成用グリーンシートにキャビティ形状に応じて貫通孔を形成するとともに、この貫通孔内に前記収縮抑制材グリーンシート片及び焼失性シートを嵌合することを特徴とする請求項27記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項29】
前記収縮抑制材グリーシート片と焼失性シートを合わせた厚さが前記キャビティ形成用グリーンシートの厚さと略一致するように設定することを特徴とする請求項28記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項30】
前記キャビティは開口寸法が深さ方向において段階的に小となる多段形状を有し、段差を有する各底面を構成する基板用グリーンシート上にそれぞれ収縮抑制材グリーンシート片及び焼失性シートを配することを特徴とする請求項17から29のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項31】
前記焼失性シートは、樹脂材料により形成されていることを特徴とする請求項27から30のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項32】
前記樹脂材料は、キャビティ形成用グリーンシートに含まれる樹脂材料と同一であることを特徴とする請求項31記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項33】
キャビティ形成用グリーンシートにキャビティ形状に対応した切り込みを入れ、これによって分離された部分を前記埋め込み用グリーンシートとすることを特徴とする請求項17から32のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項34】
キャビティ形成用グリーンシートにキャビティ形状に対応した貫通孔を形成し、この貫通孔に別途打ち抜き形成した埋め込み用グリーンシートを嵌合することを特徴とする請求項17から32のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項35】
前記キャビティの開口側における最外層の基板用グリーンシート表面に配される収縮抑制材グリーンシートにキャビティの開口形状に応じた貫通孔を形成し、ここに埋め込み用グリーンシートを嵌合することを特徴とする請求項17から34のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項36】
キャビティ部分の収縮抑制材グリーンシート片の厚さを補正することを特徴とする請求項17から35のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項37】
前記底面形成用グリーンシートの直上に積層されるキャビティ形成用グリーンシートの厚さを他のキャビティ形成用グリーンシートの厚さと異なるようにし、前記収縮抑制材グリーンシート片の厚さを収縮抑制材グリーンシートの厚さと異なるように設定することを特徴とする請求項36記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項38】
前記キャビティの開口側とは反対側における最外層の基板用グリーンシート表面に配される収縮抑制材グリーンシートは、前記キャビティに対向する部分と他の部分とで厚さが異なるように設定することを特徴とする請求項36または37記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項39】
前記収縮抑制材グリーンシートは、所定の厚さを有する第1の収縮抑制材グリーンシートと、前記キャビティに対向する部分に貫通孔が形成された第2の収縮抑制材グリーンシートを積層することにより構成することを特徴とする請求項38記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項40】
前記収縮抑制材グリーンシート及び収縮抑制材グリーンシート片は、収縮抑制材料として、石英、クリストバライト、トリジマイトから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項17から39のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項41】
前記収縮抑制材グリーンシート及び収縮抑制材グリーンシート片は、トリジマイトと難焼結性の酸化物を含む組成物により形成されていることを特徴とする請求項40記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項42】
前記焼成の際の焼成温度を1000℃以下とすることを特徴とする請求項17から41のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項43】
前記焼成の後、残渣を洗浄する洗浄工程を行うことを特徴とする請求項17から42のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項44】
前記洗浄工程は、溶剤中での超音波洗浄により行うことを特徴とする請求項43記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項45】
前記洗浄工程は、ウエットブラストにより行うことを特徴とする請求項43記載の多層セラミック基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2007−59862(P2007−59862A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362116(P2005−362116)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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