説明

多層配線板及びその製造方法

【課題】電圧が印加されて互いに異なる電位を有する部材間の絶縁性を確保すると共に、反りや歪みが十分に抑制された多層配線板を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明による多層配線板100は、内層に第1の配線層112を有するセラミック配線板110と、セラミック配線板110上に積層した樹脂層120と、樹脂層120上に積層した第2の配線層130とを含み、第1及び第2の配線層112、130がビア140により直接接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の能動部品、フィルター、抵抗、キャパシタ等の受動部品といった電子デバイス、及び、それらのチップ部品等は、小型化及び軽量化がますます進んでおり、これらが実装される配線基板、モジュール、パッケージ部品等も、高密度実装による更なる小型化及び軽量化が切望されている。かかる要求を満足するために、高密度配線を実現できるだけでなく、一層の小型化及び軽量化も可能となる多層配線板が種々検討されている。
【0003】
例えば特許文献1には、コア基板上に樹脂絶縁層と導体層とを積層した配線基板において、前記コア基板がセラミックを主体として構成され、コア基板及び樹脂絶縁層の線膨張係数が所定の条件を満足する配線基板が提案されている。この特許文献1によると、コア基板及び樹脂絶縁層の線膨張係数が所定の条件を満足することで、コア基板と樹脂絶縁層との剥離が生じ難い、高信頼性を持つ配線基板を容易に製造できる、とされている。
【特許文献1】特開2005−191299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の配線基板では、その図1及び対応する明細書中の記載に示されているように、セラミック誘電体層を絶縁層として有するコア基板1の内層に配設された導体層61と、その外側の樹脂絶縁層7及び9間に配設された導体層8との層間接続は、コア基板2におけるビア導体4と樹脂絶縁層7内に設けられたビア34とを導体層63(パッド)を介して接続することにより確保されている。導体層63は、ビア導体4やビア34よりも面内方向での断面積が大きいため、その導体層63と、導体層8の同層に設けられ導体層63と接続しない他の配線層との間、すなわち電圧が印加されて互いに異なる電位を有する層間(以下、「異電位層間」ともいう。)の絶縁性を確保するためには、それらの間に存在する樹脂絶縁層7を厚くする必要がある。しかしながら、樹脂絶縁層7を厚くすると、樹脂絶縁層7の収縮等に起因して配線基板に反りや歪みが生じてしまう。特に近年では、配線基板の狭ピッチ化と共に薄層化が一層進んできており、上述の異電位層間の絶縁性の確保と反りや歪みの抑制とを両立することが困難になっている。
【0005】
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、電圧が印加されて互いに異なる電位を有する部材間の絶縁性を確保すると共に、反りや歪みが十分に抑制された多層配線板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明者らはビア間を接続するパッドを省略することに着目し鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明による多層配線板は、内層に第1の配線層を有するセラミック配線板と、セラミック配線板上に積層した樹脂層と、樹脂層上に積層した第2の配線層とを含み、第1及び第2の配線層がビアにより直接接続されている配線板である。この多層配線板は、セラミック配線板と樹脂層との間に上記ビアに接続する配線層を有しないことが好ましい。
【0007】
上記特許文献1に記載のものを始めとする従来の多層配線板では、セラミック配線板の内層に設けられた配線層と、そのセラミック配線板に積層した樹脂層の表面上に形成された配線層とは、セラミック配線板と樹脂層との間に設けられたパッドを介してそこから各配線層に延びるビアで互いに接続される。このように従来の多層配線板は、上記各配線層間をビアにより直接接続することなく、ビアよりも面内方向の断面積が大きなパッドを介する。パッドの断面積が大きな分、パッドと樹脂層に積層した他の配線層との距離はビアと他の配線層との距離よりも短くなり絶縁破壊が生じやすくなる。そこで、このような異電位層間の絶縁破壊を回避するためには、樹脂層を厚くせざるを得ない。そうなると、セラミック配線板に対する樹脂層の厚みの程度が大きくなり、多層配線板全体では樹脂層の収縮等に起因して反りや歪みが生じやすくなる。また、多層配線板の反りや歪みを抑制するために樹脂層を薄くすると、異電位層間の絶縁破壊が生じやすくなる。
【0008】
一方、本発明の多層配線板は、セラミック配線板の内層にある第1の配線層と、樹脂層上に積層した第2の配線層とがビアにより直接接続されている。これにより、それらの配線層を接続するためのパッド等が必要なくなる。そうすると、面内方向の断面積の小さなビアのみが各配線層間に存在し、電圧印加時に互いに異なる電位を有するビアと他の配線層との距離を長くすることができるので、樹脂層を薄くしても異電位層間の絶縁破壊が十分に抑制される。樹脂層を薄くすることができれば、セラミック配線板が相対的に厚くなるため、樹脂層の収縮等によってもセラミック配線板の剛性により多層配線板の反りや歪みを十分に防止できる。
【0009】
したがって、このような本発明による効果は、樹脂層上に積層し、第1の配線層とは異なる電位を有し得る第3の配線層を本発明の多層配線板が更に含む場合、一層有効に奏される。
【0010】
本発明の多層配線板の製造方法は、セラミック基板の素地材料からなり互いに積層した複数枚のグリーンシートと、その複数枚のグリーンシートの内層に配設された導電ペーストからなる第1の層と、最表層の上記グリーンシートの表面から第1の層まで連通した孔内に充填された上述の素地材料の焼成温度で焼結しない材料からなる非焼結ペーストとを含む構造体を準備する工程と、その構造体を上記素地材料の焼成温度で焼成して、上述のグリーンシートの焼成体であるセラミック基板と第1の層の焼成体である配線層とを含むセラミック配線板を得る工程と、そのセラミック配線板から上記非焼結ペーストを除去する工程と、セラミック配線板の主面上に樹脂からなる樹脂層を形成する工程と、上記孔内に上述の配線層と接続するビアを形成する工程と、上記樹脂層の表面上に上記ビアと接続する配線層を形成する工程とを有する製造方法である。この製造方法によると、上記本発明の多層配線板を製造することができる。すなわち、本発明の多層配線板の製造方法は、電圧が印加されて互いに異なる電位を有する部材間の絶縁性を確保すると共に、反りや歪みが十分に抑制された多層配線板を製造することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電圧が印加されて互いに異なる電位を有する部材間の絶縁性を確保すると共に、反りや歪みが十分に抑制された多層配線板及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0013】
図1は、本実施形態の多層配線板の要部を概略的に示す断面図である。本実施形態の多層配線板100は、内層に配線層112を有するセラミック配線板110と、セラミック配線板110上に積層した樹脂層120と、樹脂層120上に積層した配線層130とを含み、配線層112、130がビア140により層間で直接接続されているものである。
【0014】
セラミック配線板110は、セラミック基板116と、そのセラミック基板116の内層に設けられた配線層112、114とを含み、更に配線層114とその下方の配線層(図示せず)とを層間で接続するビア113と、配線層112と配線層114とを層間で接続するビア111とを含む。
【0015】
セラミック基板116は絶縁性を示し、セラミック材料(素地材料)を含有する基板であれば特に限定されない。かかるセラミック基板116を備える多層配線板100は、従来の樹脂のみを絶縁層として用いた多層配線板と比較して、放熱性や配線精度、高周波特性に優れているので好ましい。セラミック材料は、例えば後述の実施形態に係るグリーンシートに含有される材料を焼成して得られる材料である。セラミック基板116は、配線層112、114を境界として、上から絶縁層116e、116f、116fを有する。それらの絶縁層116e、116f、116gの厚みは例えば10〜200μmであればよい。絶縁層116eには、樹脂層120との界面からその厚み方向に配線層112の上面にまで連通する貫通孔116aが形成されている。貫通孔116aの大きさは特に限定されず、小型化、微細化(狭ピッチ化)の観点から、その開口116bでの内径が50〜200μmであると好ましい。なお貫通孔116aは上方からの穿孔により形成されるため、下方に先細り状になるテーパ形状を有している。
【0016】
セラミック材料としては、後述の各配線層に用いられる導電材料と同時焼成できる低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)材料が好ましい。LTCC材料としては、例えば、ガラス複合系材料(ガラスコンポジット系材料)、結晶化ガラス系材料、及び、非ガラス系材料(セラミックス系低温焼成材料)が挙げられる。ガラス複合系材料は、通常、50〜70質量%の非晶質ガラス粉末と50〜30質量%のセラミックス粉末(例えば、アルミナ粉末)の混合材料であり、結晶化ガラス系材料は、加熱焼成時に多数の微細な結晶がガラス成分中に析出した材料であり、ガラスセラミックスとも呼ばれている。また、非ガラス系材料は、主成分であるセラミック粉末(例えば、BaO−希土類酸化物−TiO2系材料粉末)に、ZnO、CuO、B23等の焼成時に液相を形成する成分(焼結助剤)が少量(通常10%以下)添加されて低温焼成が可能となった材料である。
【0017】
これらのなかでも、非ガラス系材料は、共振器等の高周波デバイス用の誘電体材料としての特性に優れており、例えば、BaO−4TiO2系や上記のBaO−希土類酸化物−TiO2系の材料、殊に、BaO−Nd23−TiO2系材料は、特に誘電率及びQ値(誘電損失の評価ファクター:Q=1/tanδで定義される)が高い点で好ましい。
【0018】
配線層112、114は導電性を示し、所定のパターン形状を有する回路配線であってもよく、パッドやランド等の形態であってもよい。配線層112、114を構成する材料としては、後述の多層配線板の製造方法の説明において詳述するが、導電性を付与する導電材料として例えば銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、銅(Cu)及びニッケル(Ni)並びにこれらの金属の合金が挙げられる。これらの中では耐酸化性、低温焼結性の観点から銀が好ましい。また、耐マイグレーション性の観点からは銅が好ましい。配線層112、114の厚みは、例えば5〜35μmであればよい。
【0019】
柱状のビア111、113は、それぞれ絶縁層116f、116gをその厚み方向に貫通するようにして形成されている。ビア111、113は導電性を示し、構成材料としては、導電性を付与する導電材料として、例えば銀、パラジウム、金、銅及びニッケル並びにこれらの金属の合金が挙げられる。これらの中では、耐酸化性、低温焼結性の観点から銀が好ましい。また、耐マイグレーション性の観点からは銅が好ましい。ビア111、113の径は、層間厚みにもよるが接続性の観点から50〜200μmであると好ましい。
【0020】
セラミック配線板110がコア基板として機能する場合、その厚みが50〜500μmであると好ましい。厚みが上記下限値以上であると多層配線板100の剛性を高めるほか、高周波特性を更に優れたものとすることができる。また、厚みが上記上限値以下であると、多層配線板100の小型化及び低背化に更に寄与することができる。
【0021】
樹脂層120は絶縁性を示し、樹脂組成物から構成されるものである。樹脂組成物に含まれる樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルベンジルエーテル、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネートエステル系樹脂、ポリイミド、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、樹脂組成物にはその絶縁性を確保できる限りにおいて、アクリルゴム、エチレンアクリルゴムなどのゴム成分が含まれてもよく、セラミックス等の無機フィラーが含まれてもよい。樹脂層120の厚みは、30μm以下であると好ましく、2〜20μmであるとより好ましい。樹脂層120の厚みが30μm以下であると、その範囲で樹脂層120の厚みにバラツキが生じた場合であっても、多層配線板100の反りや歪みを更に確実に抑制することができる。また、樹脂層120の厚みを2μm以上にすることにより、異電位層間での絶縁破壊を更に有効かつ確実に防止することができると共に、セラミック配線板110との密着性を確保することができる。
【0022】
セラミック配線板110のうち絶縁層116eの配線層112から上方の部分の厚みに対する樹脂層120の厚みの比率(樹脂層/絶縁層)は、絶縁層116e及び樹脂層120の厚みを上述の範囲内で設定すれば、任意の値に設定することができる。
【0023】
本実施形態の多層配線板100は、図示する樹脂層120のみでなく、セラミック配線板を被覆するその他の樹脂層を含んでもよい。
【0024】
配線層130は導電性を示すものであり、所定のパターン形状を有する回路配線であってもよく、パッド、ランド等の形態であってもよい。配線層130を構成する材料としては、後述の多層配線板の製造方法の説明において詳述するが、導電性を付与する導電材料として例えば銀、パラジウム、金、銅及びニッケル並びにこれらの金属の合金が挙げられる。これらの中では、耐マイグレーション性の観点から銅が好ましい。配線層130の厚みは、例えば2〜35μmであればよい。
【0025】
ビア140は導電性を示すものであり、下方に向かって先細ったテーパ形状を有する。このビア140は、セラミック基板116における絶縁層116eの厚み方向に形成された貫通孔116a内を経由して、配線層112と配線層130とを層間で接続する。ビア140の径は、異電位層間の絶縁破壊をより有効に防止する観点から細い方が好ましいが、配線層112と接合した部分及び配線層130と接合した部分の両方で、20〜200μmであることが好ましく、50〜100μmであることがより好ましい。ビア140の径が上記下限値以上であると、更に確実にビア140による配線層112と配線層130との接続がなされ、それらの断線をより有効に防止することができる。ビア140の径が上記上限値以下であると、異電位層間の絶縁破壊をより有効かつ確実に防止することができる。
【0026】
ビア140の構成材料としては、導電性を付与する導電材料として、例えば銀、パラジウム、金、銅及びニッケル並びにこれらの金属の合金が挙げられる。これらの中では、耐マイグレーション性の観点から銅が好ましい。
【0027】
貫通孔116a内でのビア140の周囲には樹脂組成物が充填され樹脂充填部122を構成する。樹脂充填部122が樹脂層120と共にビア140の側面に接合して支持することで、レーザー加工後のデスミア処理、アルカリ処理や酸処理等の薬液からセラミック配線板を保護する効果が得られる。貫通孔116a内に充填された樹脂組成物は、樹脂層120と同様の組成を有していればよい。
【0028】
本実施形態の多層配線板100は、更に配線層150を備える。配線層150は、上記配線層130と同様に、樹脂層120上に積層しているが、配線層112や配線層130に接続されていない。すなわち、配線層150は、電圧が印加された際に、配線層112や配線層130とは異なる電位を有する層である。配線層150は導電性を示すものであり、所定のパターン形状を有する回路配線であってもよく、パッド、ランド等の形態であってもよい。その構成材料は配線層130と同様であればよい。
【0029】
本実施形態の多層配線板100は、セラミック配線板110の内層にある配線層112と、樹脂層120上に積層される配線層130とがビア140により直接接続されているため、従来、それらの配線層を接続するためにセラミック基板116上に設けられていたパッドやランドを有していない。したがって、本実施形態の多層配線板100では、積層方向における異電位部材間の絶縁破壊が従来よりも十分に抑制される。そうすると、樹脂層120を従来よりも一層薄くすることができ、同程度の厚みを有する多層配線板においてセラミック配線板110を従来よりも相対的に厚くすることが可能となるので、樹脂層120の収縮等によってもセラミック配線板110の剛性に起因して、多層配線板100の反りや歪みを十分に防止できる。なお、樹脂層120を薄くすることで配線層112と配線層150との距離も短くなるが、これらの配線層の間にはセラミック基板116の絶縁層116eが存在するため、絶縁破壊の発生を十分に防止できる。また、樹脂層120を薄くすることにより、多層配線板100を更に薄層化することも可能となる。
【0030】
特に近年では、配線基板の狭ピッチ化と薄層化との両方が更に求められ、回路配線のライン/スペース幅など同一層内での設計ルールは詳細に決められているものの、異なる層間での設計ルールは厳密に決められていない。そのような状況下では、同一層内で設計ルールに基づいた配線設計がなされても、異なる層に存在する配線層間の距離が短くなりすぎる結果、絶縁破壊が生じやすくなる。本実施形態の多層配線板100のように配線層112と配線層130とを直接ビア140で接続する手段は、かかる異なる層間での絶縁破壊を抑制する有効な手段である。
【0031】
また、本実施形態の多層配線板100では、配線層130が最表層の配線層となっている。最表層の配線層間の距離は、通常それらの間に樹脂やセラミックが存在せず空間(誘電率の高い大気)が介在するのみであるため、多層配線板内部での配線層間の距離よりも短くすることができる。そうなると、配線層150を更に配線層130に接近させても最表層における絶縁性は確保できる。このような場合に、本実施形態の多層配線板100は、異電位部材間での絶縁性を十分に確保できるので、特に好適な態様となる。
【0032】
さらには、セラミック基板116を構成するセラミック材料としてLTCC材料を採用する場合、セラミック基板116における配線仕様(配線間のピッチなど)と樹脂層120における配線仕様とを対比すると、セラミック基板116における配線仕様の方が格段と厳しくなる。複数の配線層112と配線層130とを層間で接続するのに、セラミック基板116と樹脂層120との間に設けられるパッドやランドを経由すると、それらの複数のパッドやランド間の距離を確保する必要があるため、複数の層間接続の間隔が広くなってしまい狭ピッチ化の実現が困難になる。一方、本実施形態の多層配線板100では、セラミック基板116と樹脂層120との間にそのようなパッド等を設ける必要がないため、複数の層間接続の間隔を狭めることができ、絶縁破壊を確保できる範囲において、更なる狭ピッチ化の実現が可能となる。
【0033】
また、樹脂層120を構成する樹脂組成物の組成によっては、樹脂層120の表面に微少な空隙が生じやすくなる。この場合、樹脂層120の厚みを薄くすると、配線層150を構成する導電性材料が樹脂層120の微少な空隙に入り込み、樹脂層120とセラミック基板116との界面付近まで到達することもあり得る。さらに、樹脂組成物に低抵抗率の無機フィラーを含有する場合もある。これらの場合、樹脂層120とセラミック基板116との間にランドやパッドを設けると、絶縁破壊を防止するために、それらに近い位置に配線層150を形成することが困難となる。本実施形態の多層配線板100は、上述のとおり樹脂層120とセラミック基板116との間にランドやパッドを設ける必要がないため、配線層150を形成する位置の制限が低減され、回路設計の自由度が更に広がる。
【0034】
図2、3、4は、本発明の別の実施形態に係る多層配線板の製造方法を説明するための概略工程図であり、それぞれの図面は多層配線板の要部の断面を示す。この実施形態の製造方法においては、まず、セラミック基板の素地材料からなる複数枚のグリーンシート210、211、212、213、214(「グリーンシート210〜214」と表記する。以下同様。)と、積層したグリーンシート210〜214の内層に配設された導電ペーストからなる導電ペースト層215、216、217、218と、最表層のグリーンシート210、214の表面からそれぞれ導電ペースト層215、218まで連通した貫通孔210a、214a内に充填された上記素地材料の焼成温度で焼結しない材料からなる非焼結ペーストである非焼結体220、224とを含む構造体200を準備する。この構造体200は、更にグリーンシート211〜213にそれぞれ形成された貫通孔211a、212a、213a内に導電ペーストからなるビア前駆体221、222、223を充填されている。セラミック基板の素地材料は、上記実施形態において説明したものと同様であればよい。
【0035】
構造体200に備えられるグリーンシート210〜214は、LTCC材料を含むものが好ましく、例えば、それぞれ下記のようにして得られるものである。まず、非ガラス系材料の素地材料を調製するために、例えば主成分としてバリウム(Ba)、ネオジム(Nd)等の希土類、及びチタン(Ti)の各酸化物を用意し、それらが所定の組成比となるように所定量を秤量し、例えば水等を用いた湿式混合等により混合する。それから、BaO−Nd23等の希土類酸化物−TiO2系化合物の合成を行うため、その混合物を、例えば1100℃以上、好ましくは1100℃〜1400℃程度で所定時間、仮焼を行った後、所定の粒径となるように粉砕する。なお、主成分原料としては、酸化物である必要はなく、バリウム、希土類元素、及びチタンの例えば炭酸塩、水酸化物、硫化物等のように熱処理により酸化物となるものを使用してもよい。
【0036】
次に、焼結助剤成分である銅(Cu)、亜鉛(Zn)、及びホウ素(B)の各酸化物の所定量を秤量し、先に仮焼して得た主成分(母材粉末)であるBaO−希土類酸化物−TiO2化合物と、例えば水等を用いた湿式混合等により混合する。このときの主成分と焼結助剤との混合比は特に制限されず、例えば、主成分粉末に対して焼結助剤が0.1〜10質量%程度となるように適宜調整できる。なお、焼結助剤に関しても、主成分原料と同様に、酸化物である必要はなく、例えば、炭酸塩、水酸化物、硫化物等のように熱処理により酸化物となるものを使用してもよい。
【0037】
次いで、主成分と焼結助剤成分との均一分散性を高め、かつ、後工程での成型等の作業性を向上させるべく粒度分布の狭い粉体を得るために、上記の混合粉砕物を、その焼結温度以下の温度で所定時間で再仮焼した後、その仮焼粉末を所定の粒径まで粉砕する。
【0038】
それから、得られた粉末に、例えば、アクリル系(アクリル酸、メタクリル酸又はそれらのエステルの単独重合体または共重合体、より具体的には、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等)、ポリビニルブチラール系、ポリビニルアルコール系、アクリル−スチレン系、ポリプロピレンカーボネート系、セルロール系、エチルセルロース系等の単独重合体又は共重合体を適宜の溶剤で溶解したビヒクル等の有機バインダー、あるいは、無機バインダー、必要に応じてエステル等の可塑剤やターピネオール等の有機溶剤を混合してスラリーを得る。次に、このスラリーを、例えばドクターブレード法、スラリーキャスト法、スクリーン印刷法、圧延法、プレス法等の適宜の方法によってシート化し、この誘電体のスラリーシートを所望により複数層積層してグリーンシート210〜214を得る。
【0039】
次いで、得られたグリーンシート210〜214に対して、パンチング加工、レーザー照射、ドリル加工などにより、その厚み方向にそれぞれ貫通孔210a、211a、212a、213a、214aを設ける。
【0040】
次に、導電ペーストを調製し、この導電ペーストを、グリーンシート211〜213の貫通孔211a〜213a内に充填してビア前駆体221〜223を形成する。導電ペーストとしては良好な導電性を示す金属ペーストが好ましい。金属ペーストとしては、上述の実施形態に係る配線層の構成材料を含むものが好ましく、銀(Ag)、銅(Cu)、銀−パラジウム(Ag−Pd)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)等の粉末(例えば平均粒径が数μmオーダーのもの)に、ポリビニルアルコール系、アクリル系、エチルセルロース系のような有機バインダーを加え、塗布に適した粘度となるように適宜混合したものを用いることができる。また、金属ペーストに含まれる金属についても、当初から金属である必要はなく、例えば、硝酸塩、酸化物、塩化物等のように熱処理により金属となるものを使用することができる。
【0041】
さらに、金属ペーストには適宜の焼結助剤を添加することが好ましい。この焼結助剤としては、非晶質のSiO2、B23、Al23、ZnO、PbO、Bi23、ZrO2、TiO2、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、希土類酸化物等のガラス粉末や、結晶性のSiO2、Al23、ZrO2、TiO2、ZnO、MgO、MnO2、MgAl24、ZnAl24、MgSiO3、Zn2SiO4、Zn2TiO4、SrTiO3、CaTiO3、MgTiO3、BaTiO3、AlN、Si34、SiC等のセラミック粉末を、単独で又は複数組み合わせ、適宜選択して用いることができる。
【0042】
このとき、金属ペーストに含まれる焼結助剤の化合物又は組成物は、素地材料のグリーンシート210〜214に含まれる焼結助剤と同じ種類のものであると一層好適である。また、金属ペースト中の金属成分と焼結助剤成分との混合割合は、後の焼成によって形成されるビアに要求される電気的性質や機能に応じて適宜設定することができる。
【0043】
続いて、非焼結ペーストを調製し、この非焼結ペーストを、グリーンシート210、214の貫通孔210a、214a内に充填して非焼結体220、224を得る。非焼結体220、224は、グリーンシート210、214の焼成温度(グリーンシート210、214の母材粉末の焼結温度)で焼成した後でも、貫通孔210a、214aから容易に除去することができる易除去性を示すものである。非焼結体220、224を得るための非焼結ペーストは、バインダーと、非焼結体220、224に易除去性を付与し得る無機粉体と、必要に応じて有機溶剤(例えば、有機ビヒクル)とを含む。そのような無機粉体としては、例えば炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムが挙げられ、これらの中では炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムは後述のトリジマイト等ほどではないが、それ自体がグリーンシート210、214の焼成温度で焼成しても収縮し難いものであり、これを含む非焼結体220、224を充填した貫通孔210a、214aに外部から負荷がかかっても、貫通孔210a、214aの変形を抑制する。このことと、焼成後の焼成物の除去作業がより容易であることと相俟って、炭酸カルシウムは非焼結ペーストの材料として好適である。
【0044】
バインダーとしては任意の樹脂を使用することが可能であるが、焼成時に速やかに熱分解し得る樹脂が好ましい。
【0045】
次いで、上述のようにして貫通孔内にビア前駆体又は非焼結体を設けたグリーンシート211〜214の一主面上に、上記導電ペースト、好適には上記金属ペーストを、例えば、スクリーン印刷法などにより所定パターンに塗布し、乾燥して、それぞれ導電ペースト層215〜218を形成する。
【0046】
一方、構造体とは別に図示しない収縮抑制シートを準備する。収縮抑制シートは、グリーンシート210〜214の焼成温度で焼成しても、特に面内方向において収縮し難いシートであり、この収縮抑制シートに直接又は間接的に支持されたものの収縮を抑制する機能を有する。収縮抑制シートは、グリーンシート210〜214の焼成温度で焼結しない難焼結性のセラミック材料粉末に、グリーンシート210〜214用のペースト調製と同様にして有機バインダーを添加、混合してスラリーを調製し、このスラリーを、平坦な支持体上に、例えば、ドクターブレード法、スラリーキャスト法、スクリーン印刷法、圧延法、プレス法等によりシート状に塗布し、乾燥して得られる。収縮抑制シートの厚みは、例えば20〜150μmであればよい。
【0047】
収縮抑制シートを構成する難焼結性のセラミック材料としては、例えば、ジルコニア、アルミナ、トリジマイト、トリジマイト、α石英、トリジマイト−α石英、クリストバライト、β石英等が挙げられる。また、焼成時に、収縮抑制シートによる構造体200の拘束力を高めつつ、有機バインダーを効率よく確実に除去(脱バイ処理)するために、難焼結性のセラミック材料粉末に、グリーンシート210〜214の焼結温度以下でありかつグリーンシート210〜214に含まれる有機成分の分解温度よりも高い軟化点を有するガラス粉末を所定量加えてもよい。
【0048】
次いで、準備した上記各部材を、図2に示すように、下からグリーンシート214、導電ペースト層218、グリーンシート213、導電ペースト層217、グリーンシート212、導電ペースト層216、グリーンシート211、導電ペースト層215、グリーンシート210の順となるように積層して構造体200を得、さらに2枚の収縮抑制シートにより構造体200を積層方向に挟み熱圧着する。上記積層の際、非焼結体220、224がそれぞれ導電ペースト層215及び導電ペースト層218の所定部分と接合するよう、かつ、ビア前駆体221が導電ペースト層215と導電ペースト層216とを、ビア前駆体222が導電ペースト層216と導電ペースト層217とを、ビア前駆体223が導電ペースト層217と導電ペースト層218とを、それぞれ所定の位置で接続するよう、それぞれの層を位置合わせする。
【0049】
なお、上記積層の際、収縮抑制シートと構造体200との間に、更に易除去性を示す収縮抑制シートを挟んでもよい。易除去性を示す収縮抑制シートは、上記収縮抑制シートと同様にグリーンシート210〜214の焼成温度(グリーンシート210〜214の母材粉末の焼結温度)で焼成しても、特に面内方向において収縮し難いシートであり、この易除去性の収縮抑制シートに直接又は間接的に支持されたものの収縮を抑制する機能を有する。さらに、易除去性の収縮抑制シートは、グリーンシート210〜214の焼成温度で焼成した後であっても容易に除去することができるものである。
【0050】
易除去性の収縮抑制シートは、上述の非焼結ペーストのうち、収縮抑制効果を有するペーストを、平坦な支持体上に、例えば、ドクターブレード法、スラリーキャスト法、スクリーン印刷法、圧延法、プレス法等によりシート状に塗布し、乾燥して得られる。易除去性の収縮抑制シートの厚みは、例えば20〜150μmであればよい。
【0051】
そして、収縮抑制シート及び必要に応じて易除去性の収縮抑制シートで挟んだ構造体200を、例えばアルミナセッター等の支持具に載置し、適宜の温度にて脱バイ処理を行った後、例えば850℃〜1050℃程度で所定時間焼成する。この焼成温度は950℃以下であるとより好ましい。このとき、構造体200の厚み方向の焼結収縮を補助・促進するため、収縮シート上にセラミック板を載せる等の適宜の方法を用いて厚さ方向に加圧するようにしてもよい。こうして、グリーンシート210〜214の焼成体であるセラミック基板310と、導電ペースト層215〜218の焼成体である配線層315、316、317、318と、ビア前駆体221〜223の焼成体であるビア321、322、323とを含むセラミック配線板300(図3を参照のこと。)が得られる。
【0052】
次に、焼成後のセラミック配線板300の両主面側に未焼結体として残存する収縮抑制シート及び場合によって易除去性の収縮抑制シートと、貫通孔210a、214a内にやはり未焼結体として残存する非焼結体220、224とを、例えば、サンドブラスト、ビーズブラスト、ドライアイスブラスト等の乾式ブラスト処理、水ジェット等やアイスブラスト、スラリーブラスといった湿式ブラスト処理のほか、デスミア処理、プラズマ(アッシング)処理、ジェットスクラブ処理、超音波処理、ブラシ処理といった適宜の方法を用いて除去する。この際、易除去性の収縮抑制シートが用いられていると、収縮抑制シートが容易に除去されないものであっても、易除去性の収縮抑制シートと共に容易に除去される。
【0053】
このようにして得られたセラミック配線板300は、焼成後であっても貫通孔210a、214aが収縮したり変形したりすることなく、その形状や寸法を良好に維持するため、その中に微細なビアを設けることが容易に可能となる。その結果、最終的に得られる多層配線板の異電位層間の絶縁破壊を更に有効かつ確実に防止することができる。また、構造体200を収縮抑制シートに挟んで焼成するため、特にその面内方向での収縮が抑制され、寸法精度及び形状精度の高いセラミック配線板300を作製することができる。このことは、セラミック配線板300、これを含有する多層配線板、さらには多層配線板を備える電子部品の更なる小型化、高密度化に有効に寄与し得るものである。
【0054】
次に、セラミック配線板300の両主面を被覆するように樹脂層330、332を形成すると共に、貫通孔210a、214a内に樹脂組成物を充填する。樹脂層330、332を形成し、樹脂組成物を充填する方法は特に限定されず、例えば、樹脂層330、32を構成する樹脂組成物を含む樹脂ペーストを直接、セラミック配線板300の両主面上にスクリーン印刷などの公知の塗布法で塗布すると共に貫通孔210a、214a内に充填し、乾燥、硬化する方法が挙げられる。あるいは、上記樹脂ペーストをシート状に成膜してなる樹脂シートを真空ラミネート等によりセラミック配線板300の両主面に貼り合わせると共に、少なくとも一部を流動させて貫通孔210a、214a内に充填し、硬化する方法が挙げられる。
【0055】
樹脂組成物は、上述の実施形態において説明したものと同様であればよい。また、樹脂ペーストは粉末状の上記樹脂組成物を有機ビヒクルに溶解、分散して得られる。貼り合わせた後の樹脂シートは貫通孔210a、214a内に充填可能なように十分な流動性を有することが好ましく、例えば半硬化状態(Bステージ状態)であると好ましい。樹脂シートは、熱硬化性樹脂を含む場合、熱処理により半硬化状態になる。
【0056】
真空ラミネートによる貼り合わせは、具体的には、真空ラミネータ装置の加熱平板と膜との間にセラミック配線板300と樹脂シートとを配置した後、加熱平板と膜とで作られる空間を減圧するとともに、加熱ガスで加熱平板の方向へ膨張させた膜をセラミック配線板300及び樹脂シートに対し押し当てることにより行う。真空ラミネートは低圧で等方的な加熱及び加圧が可能であるため、セラミック配線板300の破損を防ぎつつ樹脂シートを貼り合わせることができる。
【0057】
塗布した後の樹脂ペースト又は貼り合わせた後の樹脂シートを硬化させるには、樹脂層330、332が熱硬化性樹脂を含む場合、加熱すればよく、必要に応じてセラミック配線板300と樹脂シート等の積層体をその積層方向に加圧すればよい。加熱及び加圧の条件は、樹脂の種類等によって適宜設定することができる。
【0058】
次に、樹脂層330、332、貫通孔210a、214a内に充填した樹脂組成物を穿孔し、孔334、336を形成する。この際、配線層315、318の表面の一部が露出するように孔334、336を形成する。孔334、336を形成する穿孔方法としては、例えば各種のレーザーを用いた穿孔、ドリルを用いた穿孔、マスクを用いたブラスト処理による穿孔が挙げられるが、より微細な孔を形成可能であり、かつ、配線層315、318に対する穿孔を抑制できる観点から、レーザーを用いた穿孔が好ましい。
【0059】
レーザーによって穿孔する場合、配線層315、318の穿孔を更に防止し、樹脂層330、332並びに貫通孔210a、214a内に充填した樹脂組成物のみを選択的に除去する観点から、好ましくは、CO2レーザー又はUV−YAGレーザーを樹脂層330、332の表面に照射する。これらのレーザーを用いることにより、一層微細な孔を形成することが可能となる。CO2レーザーは通常、約10μmの発振波長を有し、本実施形態において、その出力は150W以下であればよい。また、UV−YAGレーザーは通常、約0.355μmの発振波長を有し、本実施形態において、その出力は5W以下であればよい。また、穿孔する部位にレーザーを連続的に照射してもよく、パルスにて照射してもよい。さらに、レーザーを照射している最中に、その出力を変更しても変更しなくてもよい。
【0060】
この穿孔により孔334、336を形成する際、貫通孔210a、214a内に充填された樹脂組成物の全てを除去してもよいが、セラミック基板310の貫通孔210a、214a内壁を被覆するように樹脂組成物の一部を残存させて穿孔することが好ましい。これにより、セラミック基板310はその主面だけでなく貫通孔210a、214a内でも樹脂部分と接合するため、それらの接合面積がより大きくなり、互いの密着性が更に強固なものとなる。
【0061】
次いで、図3に示すように、無電解めっき法による金属めっきの析出により孔334、336内にビア340、342を形成すると共に、樹脂層330、332の表面を被覆するように導電層344、346を形成する。上記各フィルドビア及び各めっき層を構成する金属めっきの材質は特に限定されず、上述の実施形態におけるビア140、配線層130と同様であればよく、例えば銅めっきが挙げられる。また、無電解めっき液の塗布方法としては、例えばディップ法、スプレー法などが挙げられる。
【0062】
そして、図4に示すように、導電層344、346を所望の形状にパターニングして、配線層345、347を得る。この際、配線層345、347がビア340、342と接続する配線層345a、347aと、ビア340、342とは接続せず、その結果、配線層315、318とも接続しない配線層345b、347bとを構成するようにパターニングしてもよい。このパターニング方法は特に限定されず、フォトリソグラフィ及びエッチング等の公知の方法であってもよい。こうして、多層配線板400を得る。
【0063】
得られた多層配線板400は、配線層345a、347aとビア340、342とが同じ無電解めっきの工程で形成され、しかも同じ工程で形成された樹脂層330、332と貫通孔210a、214a内の樹脂組成物の表面上に形成されているため、レーザー加工後のデスミア処理、アルカリ処理や酸処理等の薬液からセラミック配線板を保護するという利点を有する。
【0064】
また、多層配線板400は、上記実施形態の多層配線板100と同様の効果を奏する。例えば、異電位部材間、例えば配線層345bと配線層315との間、あるいは配線層347bと配線層318との間、の絶縁破壊が従来よりも十分に抑制される。また、樹脂層330、332を従来よりも一層薄くすることができ、同程度の厚みを有する多層配線板においてセラミック配線板300を従来よりも相対的に厚くすることが可能となるので、多層配線板400の反りや歪みを十分に防止できる。
【0065】
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0066】
例えば、本発明の多層配線板は、セラミック配線板内にICチップが内蔵されていてもよい。ICチップの周囲では特にビアが多くなるため、それに伴いビア間を接続するパッドやランドが多くなる傾向にある。そこで、本発明のように、各層間の配線をバンプやランドを介さずビアにより直接接続すれば、従来多く存在していたバンプ及びランドを大幅に省略できるため、特に本発明により得られる回路設計の自由度が広がるという利点を有効に活用することができる。
【0067】
また、上述の実施形態において、最表層の配線層とその下層の配線層とを直接接続するビア及びその周囲の孔の内壁はテーパー形状を有しているが、それらの形状はテーパ形状に限定されず、例えば円柱状などの柱状であってもよい。さらに、上記実施形態では、ビア340、342、導電層344、346は無電解めっきにより形成されるが、これらの形成方法は無電解めっきに限定されず、例えば上述の導電性ペーストを塗布、充填して乾燥及び/又は焼成を経て得られるものであってもよい。また、上述の実施形態において、最表層である配線層(例えば配線層130、150)の更に上側に絶縁層及び配線層が積層されてもよい。さらに、孔(例えば貫通孔116a)内に樹脂組成物が充填されず、ビアが直接孔の内壁に接合してもよい。
【0068】
あるいは、上記実施形態の多層配線板の製造方法では、ビア340、342と導電層344、346の形成を一度の工程において行っているが、ビア340、342を形成した後に、導電層344、346を形成してもよい。この場合、ビア340、342を導電性ペーストを用いて形成し、導電層344、346を無電解めっきにより形成する等、それぞれの形成方法が異なっていても同じであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したとおり、本発明による多層配線板及びその製造方法によれば、電圧が印加されて互いに異なる電位を有する部材間の絶縁性を確保すると共に、多層配線板の反りや歪みを十分に抑制することができる。そのため、半導体内蔵基板やその他のプリント配線板を備える各種の電子機器、装置、システム、デバイス等、特に小型化や薄層化、高性能化が求められるものに広くかつ有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態に係る多層配線板を示す概略断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る多層配線板の製造方法を示す概略工程図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る多層配線板の製造方法を示す概略工程図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る多層配線板の製造方法を示す概略工程図である。
【符号の説明】
【0071】
100、400…多層配線板、110、300…セラミック配線板、111、113、140、321、322、323、340、342…ビア、112、114、130、150、315、316、317、318、345、347…配線層、116、310…セラミック基板、116a、210a、211a、212a、213a、214a…貫通孔、120、330、332…樹脂層、200…構造体、210、211、212、213…グリーンシート、215、216、217、218…導電ペースト層、220、222…非焼結体、221、222、223…ビア前駆体、344、346…導電層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層に第1の配線層を有するセラミック配線板と、前記セラミック配線板上に積層した樹脂層と、前記樹脂層上に積層した第2の配線層とを含み、前記第1及び第2の配線層がビアにより直接接続されている多層配線板。
【請求項2】
前記セラミック配線板と前記樹脂層との間に前記ビアに接続する配線層を有しない、請求項1に記載の多層配線板。
【請求項3】
前記樹脂層上に積層し、前記第1の配線層とは異なる電位を有し得る第3の配線層を更に含む、請求項1又は2に記載の多層配線板。
【請求項4】
セラミック基板の素地材料からなり互いに積層した複数枚のグリーンシートと、前記複数枚のグリーンシートの内層に配設された導電ペーストからなる第1の層と、最表層の前記グリーンシートの表面から前記第1の層まで連通した孔内に充填された前記素地材料の焼成温度で焼結しない材料からなる非焼結ペーストと、を含む構造体を準備する工程と、
前記構造体を前記素地材料の焼成温度で焼成して、前記グリーンシートの焼成体である前記セラミック基板と前記第1の層の焼成体である配線層とを含むセラミック配線板を得る工程と、
前記セラミック配線板から前記非焼結ペーストを除去する工程と、
前記セラミック配線板の主面上に樹脂からなる樹脂層を形成する工程と、
前記孔内に前記配線層と接続するビアを形成する工程と、
前記樹脂層の表面上に前記ビアと接続する配線層を形成する工程と、
を有する多層配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−80866(P2010−80866A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250461(P2008−250461)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】