説明

多機能装置

【課題】1台の装置でその被駆動部を交換することにより、様々な機能を発揮させることができる多機能装置を提供する。
【解決手段】動力源2と、この動力源の出力軸に固定されて当該出力軸の回転軸線を中心とした公転運動をする偏心軸3Aと、当該偏心軸に滑面を介して装着されて当該偏心軸とともに公転運動をするクランクリンクロータ4と、このクランクリンクロータに一端を配置して滑面を介して連結し他端を回転軸線から見て放射方向に向けた複数のコンロッド6とを備えた駆動部Mと、いずれかのコンロッドの他端に脱着機構を介して接続されて、当該他端の放射方向の往復運動により駆動される被駆動部Fと、いずれかのコンロッドの他端近傍に配置されて、被駆動部を支持し、かつ、当該被駆動部の脱着機構を有する本体部Hとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射方向に向けた複数のコンロッドの往復運動により、様々な被駆動部を駆動して、複合的な機能を呈する多機能装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な素材や薬剤等の研究開発には、材料を供給し混合し攪拌するといった処理が必要になる。また、容器の中を減圧したり加圧したりする処理も必要になる。このために多種多様な装置が使用される。従って、研究室には多数の機材が保存され、選択されて使用される。その中には、特定の関連する試験を同じ装置で実施できるように、その試験条件を変更できる多機能な試験装置等も含まれる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−215009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。研究設備に使用される機器はそれぞれ高価である。用途や目的が明確でないから、予め準備しておくことが難しい。また、たとえ、適切な機材が購入済みでも、長い間使用されずに保管された機材は、そのつど、操作方法や調整方法を確認しなければならない。また、機材のメンテナンスが十分でないと、使用する際に故障等が発生する。研究の内容によっては、適切な機材が見当たらず、機材の購入などのために研究開発の進捗が阻まれることもある。
【0004】
本発明は以上の点に着目してなされたもので、1台の装置でその被駆動部を交換することにより、様々な機能を発揮させることができる多機能装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
動力源と、この動力源の出力軸に固定されて当該出力軸の回転軸線を中心とした公転運動をする偏心軸と、当該偏心軸に滑面を介して装着されて当該偏心軸とともに上記公転運動をするクランクリンクロータと、このクランクリンクロータに一端を配置して滑面を介して連結し他端を上記回転軸線から見て放射方向に向けた複数のコンロッドとを備えた駆動部と、上記いずれかのコンロッドの他端に脱着機構を介して接続されて、当該他端の上記放射方向の往復運動により駆動される被駆動部と、上記いずれかのコンロッドの他端近傍に配置されて、上記被駆動部を支持し、かつ、当該被駆動部の脱着機構を有する本体部とを備えたことを特徴とする多機能装置。
【0006】
動力源は、出力軸とともに駆動軸を駆動して、クランクリンクロータを公転運動させる。クランクリンクロータは、放射方向に向けた複数のコンロッドを往復運動させる。各コンロッドの他端には、その放射方向の往復運動により駆動される任意の被駆動部を接続することができる。各被駆動部はコンロッドや本体部に脱着機構を介して連結支持されているので、被駆動部を自由に交換して、容易に希望する機能の装置を組み立てることができる。従って、例えば、装置を供給するメーカーは、ユーザの多様な要求にきめ細かく対応して特殊な多機能装置を生産できる。また、ユーザは装置を使用する際に、被駆動部を脱着機構により取り外して交換し、任意の多機能装置に変更できる。
【0007】
〈構成2〉
動力源と、この動力源の出力軸に固定された大陽歯車と、当該大陽歯車に噛合された複数の遊星歯車と、当該遊星歯車の回転軸線を中心として公転運動をする部分に一端を配置して滑面を介して連結し他端を上記大陽歯車の回転軸線から見て放射方向に向けた複数のコンロッドとを備えた駆動部と、上記いずれかのコンロッドの他端に脱着機構を介して接続されて、当該他端の上記放射方向の往復運動により駆動される被駆動部と、上記いずれかのコンロッドの他端近傍に配置されて、上記被駆動部を支持し、かつ、当該被駆動部の脱着機構を有する本体部とを備えたことを特徴とする多機能装置。
【0008】
クランクリンクロータの代わりに遊星歯車機構を利用して、コンロッドを放射方向に往復運動させることができる。
【0009】
〈構成3〉
構成1に記載の多機能装置において、上記複数の被駆動部のうちの少なくとも一の被駆動部は他の被駆動部と異なる機能を有することを特徴とする多機能装置。
【0010】
例えば、1つの被駆動部を吸引ポンプとし、他の被駆動部は圧縮ポンプとして機能させ、装置全体として複合的な動作をさせることができる。
【0011】
〈構成4〉
構成1に記載の多機能装置において、上記いずれかの被駆動部は、上記コンロッドの他端に脱着機構を介して接続されたピストンと、上記ピストンと嵌り合い、上記ピストンの上記放射方向の往復運動領域に室を有するシリンダ室と、当該シリンダ室の開口に配置され、当該シリンダ室への流体の吸入方向と排出方向とを制御する弁ヘッドとを備えた、シリンダユニットからなることを特徴とする多機能装置。
【0012】
被駆動部をシリンダユニットとして、気体や液体の吸入と排出処理を個別にあるいは協力して実行できる。
【0013】
〈構成5〉
構成1に記載の多機能装置において、上記複数のシリンダユニットのうち、2以上のシリンダユニットの吸入弁が、それぞれ被混合試料吸入パイプに接続され、上記2以上のシリンダユニットの排出弁が、いずれかの別のシリンダユニットの吸入弁に対して一括接続され、当該別のシリンダユニットの排出弁が、被混合試料排出パイプに接続されていることを特徴とする試料混合装置。
【0014】
複数のシリンダユニットのうちの2以上のシリンダユニットを用いて被混合試料を吸入し、別のシリンダユニットに送り込んで混合する。すなわち、自動的に複数の試料を吸入して、混合しながら順次送り出すことができる。
【0015】
〈構成6〉
構成1に記載の多機能装置において、上記2以上のシリンダユニットの被混合試料の排出量が、それぞれ、被混合試料の混合比と等しくなるように、各シリンダユニットの容積が選定されていることを特徴とする多機能装置。
【0016】
例えば、一方のシリンダユニットの被混合試料の排出量が100で、他方のシリンダユニットの被混合試料の排出量が50ならば、混合比を2対1にすることができる。すなわち、自動的に正確な混合比で試料を混合しながら順次送り出すことができる。
【0017】
〈構成7〉
構成1に記載の多機能装置において、上記被駆動部には、当該被駆動部の温度を設定温度に制御する温度制御機構が取り付けられていることを特徴とする多機能装置。
【0018】
被駆動部に温度制御機構を設けると、被駆動部により吸入しあるいは排出する試料の温度を制御することができる。
【0019】
〈構成8〉
動力源と、この動力源の出力軸に固定されて当該出力軸の回転軸線を中心として回転する円盤状のカムと、当該カムの溝に案内されて上記回転軸線から見て放射方向に往復運動をする複数のスライドシャフトとを有する駆動部と、上記いずれかのスライドシャフトの他端に脱着機構を介して接続されて、当該他端の上記放射方向の往復運動により駆動される被駆動部と、上記いずれかのスライドシャフトの他端近傍に配置されて、上記被駆動部を支持し、かつ、当該被駆動部の脱着機構を有する本体部とを備えたことを特徴とする多機能装置。
【0020】
クランクや歯車の代わりにカムを使用することもできる。
【0021】
〈構成9〉
構成8に記載の多機能装置において、上記いずれかの被駆動部は、上記スライドシャフトの他端に脱着機構を介して接続され、内部に所定容量のキャビティを有し、上記脱着機構の反対側に上記キャビティの開口部を有するベローズと、上記キャビティの開口部に配置され、上記キャビティへの流体の吸入方向と排出方向とを制御する弁ヘッドとを備えた、シリンダユニットとを有することを特徴とする多機能装置。
【0022】
カムに案内されるスライドシャフトでベローズを駆動してポンプを実現できる。
【0023】
〈構成10〉
構成9に記載の多機能装置において、上記複数のシリンダユニットのうち、2以上のシリンダユニットの吸入弁が、それぞれ被混合試料吸入パイプに接続され、上記2以上のシリンダユニットの排出弁が、いずれかの別のシリンダユニットの吸入弁に対して一括接続され、当該別のシリンダユニットの排出弁が、被混合試料排出パイプに接続されていることを特徴とする多機能装置。
【0024】
〈構成11〉
構成9に記載の多機能装置において、上記2以上のシリンダユニットの被混合試料の排出量が、それぞれ、被混合試料の混合比と等しくなるように、各シリンダユニットの容積が選定されていることを特徴とする多機能装置。
【0025】
〈構成12〉
構成8に記載の多機能装置において、上記被駆動部には、当該被駆動部の温度を設定温度に制御する温度制御機構が取り付けられていることを特徴とする多機能装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、実施例1の多機能装置を示す分解斜視図である。
この多機能装置は、動力源2と、この動力源の出力軸2Aに固定されて当該出力軸の回転軸線を中心とした公転運動をする偏心軸3Aと、当該偏心軸に滑面を介して装着されて当該偏心軸3Aとともに公転運動をするクランクリンクロータ4と、このクランクリンクロータ4に一端を配置して滑面を介して連結し他端を回転軸線Zから見て放射方向に向けた複数のコンロッド6とを備えた駆動部Mと、いずれかのコンロッド6の他端に脱着機構を介して接続されて、当該他端の放射方向の往復運動により駆動される被駆動部Fと、いずれかのコンロッド6の他端近傍に配置されて、被駆動部を支持し、かつ、当該被駆動部Fの脱着機構を有する本体部Hとを備える。
【0028】
駆動部Mは、被駆動部Fに対して動力を与える部分である。動力源2として、サーボモータやブラシレスモータ、あるいは直流モータなどを使用する。定速制御や定トルク制御などが自由に制御できるモータが好ましい。この動力源2の出力軸2Aには、クランク軸3が固定される。このクランク軸3の上端には、偏心軸3Aが設けられている。偏心軸3Aは、出力軸2Aの回転軸線Zを中心とした公転運動をするように構成されている。偏心軸3Aは、円盤状のクランクリンクロータ4の下面中心に設けられた受孔を有する支軸4Aに回動自在に差し込まれる。
【0029】
クランクリンクロータ4は、偏心軸3Aに滑り面を介して装着される。滑り面というのは、自由に相対移動ができるように接した面のことで、平面も曲面も含む。例えば、ベアリングやオイルレスメタルなどを介して偏心軸3A上でクランクリンクロータ4が自由回転できるようにして連結一体化されるとよい。偏心軸3Aの公転運動に応じてクランクリンクロータ4も回転軸線Zを中心とした公転運動をする。クランクリンクロータ4の上面には、この例では、6本のクランクピン5が、ねじ込み固定されている。このクランクピン5によってコンロッド6がその先端を自由に揺動するように連結される。
【0030】
この例では、6本のコンロッド6がそれぞれ回転軸線Zから見て放射方向にその他端を向けている。コンロッド6の一端は、クランクピン5に対し、滑り面を介して連結される。連結の仕方は、軸孔を利用してもよいし、その他自由に回転できるようなリンク機構を用いてもよい。また、この例では、コンロッド6の他端に、例えば、図1に示すようなピストン8を接続する。このピストン8は、E形止め輪18とピストンピン7によって脱着可能に接続されている。
【0031】
ピストンピン7は、ねじ込みなどにより容易にE形止め輪18に固定したり外したりできるようにする。このようにしてコンロッド6により駆動されるピストン8は、駆動部Mに対して脱着可能にされている。ピストン8やその付属品であるピストンピン7、E形止め輪18、あるいはピストン8と組み合わせて一定の機能を持つシリンダ本体13などが被駆動部Fに相当する。
【0032】
この実施例では、被駆動部Fを別の機能を持つものに取り替えることによって装置全体を多機能装置として動作させることができる。すなわち、各コンロッド6により各被駆動部にそれぞれ別々の動作をさせることができる。本体部Hは、任意の被駆動部を適切な位置に固定する機能を持つ。この例では、シリンダ本体13などを支持し、必要に応じて交換可能な状態で固定するために、板状の本体15を備える。本体15は、シリンダ本体13を支える板状のフレームであってもよいし、ブロック状のものでもよい。また、2以上の被駆動部の一部が部品を共有していても構わない。例えば、後で説明する例では、隣接するシリンダユニットがシリンダ本体13を共有している。
【0033】
この実施例では、シリンダ本体13を本体15に脱着可能にするためにビス16を使用する。ビス16はシリンダ本体13をネジ止め固定する。この構成により、クランクリンクロータ4を偏心軸3Aで公転させると、6本のコンロッド6がそれぞれ放射方向に往復運動する。すなわち、動力源2の矢印P1方向の回転運動をクランク軸3と偏心軸3Aにより矢印P2方向の公転運動に変換し、クランクリンクロータ4により各コンロッド6の矢印P3方向の往復運動に変えている。
【0034】
クランクリンクロータ4には、任意の数のコンロッドの一端を配置できる。従って、コンロッドの数だけ被駆動部Fを接続し、様々な機能を付与することができる。図示したピストン8は、シリンダ本体13のシリンダ室9に収容され、往復運動をすることによりポンプとして機能する。また、そのシリンダ室9の外側の開口部分には、シリンダ室9への流体の吸入方向と排出方向とを制御するチェック弁ヘッド10を設けている。このようなユニット全体を、以下、シリンダユニットと呼ぶことにする。
【実施例2】
【0035】
図2は、図1に示した多機能装置の各種態様の動作の説明図である。
図2(a)は、クランクリンクロータ4とコンロッド6の動作を説明する説明図である。
図2(a)において、クランクリンクロータ4には、この例では、6本のクランクピン5が偏心軸3Aを中心に軸対称に配置されている。偏心軸3Aは、既に説明したように、動力源の出力軸の回転軸線を中心に矢印P2の通り公転運動をする。なお、この図では、1本のコンロッドのみを図示した。
【0036】
コンロッド6の一端はクランクピン5に接続されており、他端はピストンピン7に接続される。クランクピン5の部分では、コンロッド6の一端は、矢印P4に示すような公転運動をする。その結果、ピストンピン7の部分は、矢印P3に示すような往復運動をする。なお、ここでは、ピストンピン7の部分の往復運動を利用するため、図1に示したシリンダ等により、他方向の動きを制限している。他のクランクピン5に接続されるコンロッド(図示せず)も同様である。従って、クランクリンクロータ4は、矢印P5方向に少しだけ自転し反転運動をするが、それ以上は回転しない。こうして、全てのコンロッド6に放射方向の往復運動をさせる。
【0037】
図2(a)の例では、クランクピン5の位置を、クランクリンクロータ4の径方向に調整することによって、各コンロッドの往復運動のストロークを調整できる。また、クランクリンクロータ4の代わりに、遊星歯車を用いてコンロッド6を往復運動させることもできる。その具体例は図11で説明するが、図2(b)と(c)には、遊星歯車によるコンロッドの制御方法を示す。
【0038】
図2(b)に示した遊星歯車32は、矢印P6方向に自転する。ここにクランクピン5を固定しておく。コンロッド6の一端は、クランクピン5に接続される。他端はピストンピン7に接続される。この場合、遊星歯車32の回転によって、ピストンピン7の部分は、矢印P7方向に往復運動する。また、図2(c)に示すように、クランクピン5の位置を遊星歯車32の回転中心に近づけると、遊星歯車32は矢印P8方向に自転し、ピストンピン7の部分は矢印P9方向に振幅の小さい往復運動をする。
【0039】
従って、個々のコンロッド6の取り付け位置を調整すると、各被駆動部に及ぼす作用を自由に調整できる。被駆動部全体を交換するだけでなく、被駆動部の一部の機能を変更するようにネジの位置やその他を変更すれば、容易に機能の変更が可能になる。例えば、シリンダの容量を変更して、それぞれ異なる機能を持ったポンプに変更できる。
【0040】
図2(d)は、図1に示したピストン8をシリンダ室9に収容したときの往復運動領域91を示す。ピストン8がシリンダ室9に嵌り合うと、その中で往復運動をして、気体や液体を圧縮したり吸入したり排出したりする。ピストン8の往復運動領域の容積が、ポンプの吸入量であり排出量である。縮小すると、ポンプの能力が下がる。図2(e)に示す往復運動領域92は、ピストン8のストロークの長さをそのままにしてピストン8及びシリンダ室9の半径を半分にしたときのものである。このようにすれば、容量を4分の1に変更することができる。また、図2(f)に示すように、ストロークの長さを2分の1に変更することにより、往復運動領域93の容量を2分の1に変更することができる。
【実施例3】
【0041】
図3は、図1に示した多機能装置の被駆動部Fの組み合わせ動作説明図である。
図3(a)は、全てのコンロッドにほぼ同一の構成の図1に示したようなシリンダユニットを接続したときの例を示す。この図に示すように、6台のシリンダユニット51〜56に、吸入配管61と排出配管62とが並列に接続されている。
【0042】
ここで全てのシリンダユニット51〜56を一斉に動作させると、それぞれのシリンダユニットによって、吸入配管61から吸入された空気が加圧されて、排出配管62に送り出される。排出配管62の先方に、図示しないボンベなどを接続し排出配管62側を逆止弁等で逆流防止にしておくと、シリンダユニット51〜56によって空気あるいはガスを圧縮してボンベに詰め込むことができる。この場合に、1台のポンプを使って圧縮する他の装置と比較すると、コンロッドのストロークが小さく、個々のシリンダ室を小容量にできるから、全体として小さいパワーで低騒音での運転ができるという効果がある。
【0043】
また、図3(b)に示すように、それぞれ2個一組のシリンダユニット51と52、53と54、あるいは55と56を直列接続して一斉に動作させると、空気を高圧縮に加圧することが可能になる。すなわち、吸入配管63をシリンダユニット51、53、55に接続し、これらの出力配管65、66、67をシリンダユニット52、54、56に接続する。その後、排出配管64を接続する。従って、例えば、シリンダユニット51により圧縮した空気をシリンダユニット52に送り込み、シリンダユニット52でさらにその空気を圧縮するといった処理が可能になる。このような方法によって、数段階でより高い圧縮処理を行うことが可能になる。
【0044】
上記の例は、気体の圧縮に本発明の多機能装置を使用した。一方、以下の例では、液体の送り込みに本発明の多機能装置を使用する場合を示す。
図3(c)の例では、3台のシリンダユニット51、52、53によって別々の配管からそれぞれ別々の液状の試料を吸入する。そして、配管71上でこれらの試料を混合し、4台目のシリンダユニット54に送り込む。シリンダユニット54は、配管71から供給された試料を図示しない別の送り先に向けて排出する。すなわち、配管71から流入した液状の試料に乱流を起こさせた上でシリンダユニット54に供給できる。従って、シリンダユニットを組み合わせることによって、複数の混合試料を1つのシリンダユニットで混合し、順次送り出すことができる。
【0045】
この場合、各シリンダユニット51、52、53の排出する液状の試料をシリンダユニット54の吸入弁に一括接続すれば足りるから、その組み立ても容易である。非圧縮性の液体をポンプで順次送る場合には、シリンダユニット51、52、53の3倍の容量をシリンダユニット54に与える必要がある。気体を圧縮しながら混合するときはその圧縮比に応じてシリンダの容量を決定すればよい。
【0046】
図3(d)は、それぞれ2種類ずつの液状の試料を2台のシリンダユニット51、52やシリンダユニット54、55で吸引し、それら混合する。シリンダユニット51と52で吸引した試料は、配管72で混合されてシリンダユニット53により送り出される。シリンダユニット54と55で吸引した他の試料は、配管73で混合され、シリンダユニット56で送り出される。図1に示した装置は6台のシリンダユニットを搭載することができるため、このように各シリンダユニットにそれぞれ分担して別々の仕事をさせることが可能になる。
【実施例4】
【0047】
図4(a)は、研究室等の試験設備に多機能装置を使用した実施例の説明図である。
この例では、例えば、ビーカ81に収容された試料を、配管61を経由してシリンダユニット51で吸引する。この試料を配管62上でヒータ84を用いて加熱する。加熱後の試料をビーカ82に送り出す。ビーカ82に収容された試料は、シリンダユニット52により吸引され、ビーカ83に送り出される。また、これとは別の試料がシリンダユニット53により吸引されビーカ83に送り出される。ビーカ83では、別の攪拌装置を用いて試料を攪拌して調合処理をする。
【0048】
このような薬剤の調整や混合に、本発明の多機能装置の各ユニットを使用することができる。このとき薬剤を送る量は、シリンダユニットの容量を選択することによって正確に特定できる。駆動速度の設定により、薬剤の送り速度も調整できる。全ての装置を機械的に同期させて動作させられるので、正確な処理が可能になる。
【0049】
図4(b)、(c)は、液体を送る場合の配管の説明図である。
図3(c)や(d)に示した例では、試料を送り込むシリンダユニットと試料を混合するシリンダユニットの容量を整合させておかないと、被圧縮性の液体の処理ではピストンに無用な負荷がかかる。そこで、図4(b)、(c)に示すように配管85を、例えば、シリコーンチューブなどの膨縮可能な材料により構成する。これによって装置各部で液体に加わる圧力が変動しバランスを崩したときには、図4(b)に示すように配管が膨らんだり、あるいは図4(c)に示すように収縮してその圧力を逃がし、機械的な負荷変動を吸収できる。
【0050】
図4(d)は、図1に示したシリンダユニットの説明図である。
図4(d)に示すように、板状の本体15をパネル状に構成し、例えばシリンダ本体13やチェック弁ヘッド10を複数本のビス16により固定できるようにする。これによって、必要に応じてこれらを脱着し、別の装置、別のユニットに変更することができる。なお、例えば、この図の例では、シリンダ13の温度を調整するために、ペルチェ素子17がシリンダ本体13の両側面にそれぞれ密着するように固定されている。ペルチェ素子17は、電流の制御によってシリンダ本体13の温度を制御することができるものである。すなわち、加熱したり冷却したり自由にその温度を設定することができる。このようにして被駆動部に機械的化学的な機能を持たせ、様々な試験研究に利用することが可能になる。
【実施例5】
【0051】
図5は、実施例5の多機能装置のシリンダユニットの具体的な構成を示す縦断面図である。
図5に示すように、ピストン102の先端には、ピストンヘッド104が取り付けられている。自動車のエンジンなどでは広く知られた一般的な構造のピストンである。シリンダ本体101とピストン102との間には、スラストベアリング103が介在されており、自由にピストン102が往復運動できるように支持されている。シリンダ本体101の左部分には、シリンダ室105が形成されている。
【0052】
なお、この実施例では、シリンダ本体101にシリンダ室105を形成するための筒体105aを嵌め込むようにしたが、シリンダ本体101の一部に孔を開けてシリンダ室にしてもよい。すなわち、シリンダ本体101に被駆動部の一部が一体に組み込まれていても構わない。ここでピストン102が往復動すると、ヘッド104がそれに伴ってシリンダ室105内部を往復動する。これによってシリンダ室105の内部の気体や液体に圧力が加えられる。なお、このピストンヘッド104は、ピストン102にネジ機構を利用して脱着可能に取り付けられている。従って、このピストンヘッド104をピストン102から取り外して交換することによって別の機能を付与することができる。
【実施例6】
【0053】
図6は、実施例6の多機能装置のシリンダユニットの具体的な構成を示す縦断面図である。
図6に示すように、この実施例では、衝撃試験や疲労試験に使用するピストンヘッド110は先端が尖っている。この先端を試料等に衝突させると、衝撃試験や耐久試験ができる。
【実施例7】
【0054】
図7は、実施例6の多機能装置のシリンダユニットの具体的な構成を示す縦断面図である。
図7に示すように、この実施例では、衝撃試験や疲労試験に使用するピストンヘッド112の先端が尖っており、されに、その先端部にスリット113を設けた。例えば、このスリットに何かを把持させて振動を与えることができる。
【実施例8】
【0055】
図8は、疲労試験機能を持つシリンダユニットの実施例を示す断面図である。
図8(a)に示すように、この例では、ピストン114の先端が尖っている。このヘッドの先端が到達する部分に、クランプ117を用いて板状の試料118を支持しておく。ピストン114は往復運動をし、試料118に繰り返し衝突する。これにより試料118の衝撃試験や屈曲疲労試験ができる。図8(b)に示すように、ピストン114を試料118に接したままの状態で往復運動させると、繰り返し曲げ疲労試験ができる。また、ピストン114を戻して試料118から離れた位置から試料118に衝突するよう動作させると、衝撃試験が可能になる。
【実施例9】
【0056】
図9は、本発明の多機能装置のクランクリンクロータとその周囲にあるコンロッド等を含む駆動部Mの具体例を示す平面図、図10はその駆動部Mの要部を示す縦断面図である。
この実施例では、6本のコンロッドに同一の構成のシリンダユニットを接続している。また、シリンダ本体13はその主要部の断面図のみを示した。なお、シリンダ本体13は、一体化されたアルミニウムボディの周囲6箇所にシリンダ室9を孔開け加工したものである。従って、このシリンダ本体13は、被駆動部Fの各部品を取り付ける本体部Hの役割をしている。以下この各部の構成について具体的に説明をする。
【0057】
すなわち、図9、図10において、本発明の駆動部Mは、例えばブラッシレスモータ等の単数の動力源2と、下側の中心軸孔に動力源の出力軸2Aが取り付けられ、上側に偏心軸3Aを有するクランク軸3と、クランク軸3の偏心軸3Aに取り付けられる円板状のクランクリンクロータ4と、クランクリンクロータ4外周の複数箇所、例えば円周上の等間隔の6箇所に形成された取付孔に、クランクピン5を介してそれぞれが揺動可能となるように枢着された6個のコンロッド6と、各コンロッド6の先端にピストンピン7を介してフリー回転可能となるように取り付けられた6個のピストン8と、各ピストン8をスライド可能に収容するよう円周方向に沿って等間隔毎に配置された6個のシリンダ室9を備え、各シリンダ室9の開口端側を個別のチェック弁ヘッド10の吸排気孔11に連通させ、上側に配した排気側チェック弁12A、下側に配した吸気側チェック弁12Bのそれぞれによって吸排気を行うものとした略ドーナツ状のシリンダ本体13とから概ね構成されている。
【0058】
クランクリンクロータ4は、その中心孔部周囲を薄板円盤状に形成されており、この部分の円周上に沿って60°間隔毎に等間隔に形成された6個の取付孔それぞれにクランクピン5を介してそれぞれが揺動可能となるようにコンロッド6の一端側が枢着されている。このとき、クランクピン5の先端側をDカット形状にしてコンロッド6の挿通後にクランクリンクロータ4の取付孔に先端側を嵌合させ、外周側面側からネジをねじ込んでDカット平面側を係止させることでクランクピン5とクランクリンクロータ4とが一体となるようにしてある。
【0059】
さらに、コンロッド6の他端側は、図10に示されるように、円柱形状のピストン8の後部平面側に形成された横長矩形状の凹部18(図1)に嵌挿され、コンロッド6の他端側に形成されている孔部と、ピストン8の後部平面側の上下を貫通するように形成されている孔部とを合致させてから両孔部に長目のピストンピン7を貫挿することによって固定してある。
【0060】
ピストン8の周面の前後二つの箇所にはOリング19を嵌装するための環状溝部19Aが形成されている。これらの環状溝部19Aに嵌装されたOリング19を介してシリンダ本体13が嵌合されている。シリンダ本体13は、6個のシリンダ室9内で6個のピストン8がそれぞれ摺動可能となっている。これによって、当該各ピストン8は、コンロッド6による支持を加えた三点支持構造となっている。
【0061】
シリンダ本体13は、全体形状が略ドーナツ状に構成され、6個のピストン8に対向して6個のシリンダ室9が円周上に沿って60°間隔毎に等間隔に形成されている。そして、ドーナツ形状のシリンダ本体13の内周面側にシリンダ室9の一端開口側が配置され、外周面側にシリンダ室9の他端開口側が配置されている。ピストン8は内周面側のシリンダ室9一端開口側から挿入されている。
【0062】
チェック弁ヘッド10は、各シリンダ室9の外側開口端側において、当該チェック弁ヘッド10に穿設されたT字型を呈する吸排気孔11の一方の孔側を臨ませるようにそれぞれ個別に配置されている。そして、チェック弁ヘッド10の吸排気孔11に連通した上側の排気側チェック弁12A、下側の吸気側チェック弁12Bそれぞれに接続した、例えば塩化ビニルパイプ製、シリコーンチューブ製もしくはステンレスパイプ製等の配管41等によって吸排気を行うものとしてある。これら両チェック弁12A、12Bは、弁座20と弁押え21の間に円筒状のスペーサーカラー22を介装させ、これら各部材の内部に球体状の弁体23が挿入された構成となっている。
【0063】
図9に示したように、左右に同一構成の被駆動部Fを配置し、運転をすると、左右の負荷がバランスよく加わるので、全体として滑らかな動作をさせることができる。これにより、低速で低騒音の効率よい運転が可能になる。なお、クランク軸3を延長することによって2組以上の多機能装置を積み上げることができる。
【実施例10】
【0064】
図11は、上記クランクリンクロータの代わりに太陽歯車と遊星歯車を使用した例を示す平面図である。
この実施例では、前記した構造のシリンダ本体13において遊星ギア機構を採用している。なお、ピストン8、シリンダ室9、チェック弁ヘッド10、配管41によるチェック弁ヘッド10の接続方法それぞれの構成は、上記した実施の形態とほぼ同じであるため、その説明を省略する。すなわち、本実施の形態では、動力源の出力軸には太陽歯車31が取り付けられ、該太陽歯車31にピストン8の数(6気筒)に対応した複数(6個)の遊星歯車32が噛合配置されている。そして、各遊星歯車32の外周箇所(遊星歯車の回転中心から偏心した位置)に揺動可能となるようにコンロッド6がそれぞれ枢着され、各コンロッド6の先端にはフリー回転可能となるように前記したピストン8が連繋されている。こうすることで単一の動力源によって回転する太陽歯車31を介して、周囲の遊星歯車32を従動回転させることで動力源の回転運動を複数のピストン8の直線運動に変換させ、複数の圧縮ステージを形成させるものとなる。
【0065】
図12は、排気側チェック弁12Aと下側の吸気側チェック弁12Bの具体例を示す分解斜視図である。
排気側チェック弁12Aは、図12(a)、(b)に示すように、一端にナット形状のパイプ連結孔を有するパイプ体によって形成され、この他端開口部側に、先ず、合成樹脂製の薄板ドーナツ状の弁座20を嵌め込み、次に、金属製の円筒状のスペーサーカラー22を挿入し、さらに、弁体23を挿入してから、底面側にクロス状のスリット部21Aを穿設してある円形キャップ状の合成樹脂製の弁押え21をそれぞれ底面側から嵌め込んである。
【0066】
一方、吸気側チェック弁12Bは、図12(c)、(d)に示すように、一端にナット形状のパイプ連結孔を有するパイプ体によって形成され、この他端開口部側に、先ず、底面側にクロス状のスリット部21Aを穿設してある円形キャップ状の合成樹脂製の弁押え21を底面側を外に向けて嵌め込み、次に、金属製の円筒状のスペーサーカラー22を挿入し、さらに、弁体23を挿入してから、合成樹脂製の薄板ドーナツ状の弁座20を嵌め込んである。
【0067】
次に、上記構成による多機能装置のスペック変更方法について説明すると、本発明においては、ピストン8の数だけ圧縮ステージを作ることができるので、これらの接続方法によって一台の多機能装置で排気量の変更が簡単に行えるようにしてある。具体的には、少なくとも或る1つのチェック弁ヘッド10の排気孔を他のチェック弁ヘッド10の吸気孔に例えば塩化ビニルパイプ製、シリコーンチューブ製もしくはステンレスパイプ製等の配管41等で接続することによって構成される。
【0068】
例えば、最大で6倍の排気量が望める6気筒の多機能装置の場合、吸気するピストン8、すなわち図示しないが、直接吸気孔を配管41を介して接続してあるチェック弁ヘッド10のピストン8を1段階目のものとすると、この1段階目のピストン8(チェック弁ヘッド10)の数が、排気量を決定する。また、2段階目とは、1段階目のチェック弁ヘッド10の排気孔を他のチェック弁ヘッド10の吸気孔に配管41で接続した際の当該他のチェック弁ヘッド10のピストン8である。さらに、3段階目とは、2段階目のチェック弁ヘッド10の排気孔を他のチェック弁ヘッド10の吸気孔に配管41で接続した際の当該他のチェック弁ヘッド10のピストン8である。
【実施例11】
【0069】
図13は、実施例11の多機能装置を示す縦断面図、図14は、図13の多機能装置の外観図である。
この実施例は複数組のシリンダ本体を積み上げたものである。すなわち、これらの図において、2組のシリンダ本体13を2段に重ね合わせて、下段シリンダ本体13におけるチェック弁ヘッド10の吸気孔に直列に接続してある。このとき、クランク軸3の回転中心からずらした突起状の偏心軸3Aは、当該クランク軸3の回転中心軸に対して互いに左右対称なずれ位置となるように当該偏心軸3Aの中央部分が段差状に屈曲しており、この中央部分を介して上下側にそれぞれクランクリンクロータ4を取り付けることで、上段シリンダ本体13と下段シリンダ本体13とのそれぞれのピストン8の動きが互いに正反対となるようにしてある。上下シリンダ本体13の各部の構成は、記述の一般シリンダ本体13と同一であるため説明を省略する。
【0070】
このように、2組の多機能装置を積み上げた場合には、この図に示すようにクランク軸3を左右のバランスを考慮して設計する。すなわち、上段と下段とにそれぞれクランクリンクロータ4が配置されており、これらが偏心軸3Aによって公転するとき、一方が左側にあると他方が右側にあるように変心軸3Aを図示のように折り曲げて構成する。これによって上下の多機能装置の間で相互の打ち消し合う力が働き、全体として力のバランスがとれる。従って、回転が滑らかになりより低騒音、高効率の運転が可能になる。
【実施例12】
【0071】
図15は、実施例12の多機能装置を示す斜視図である。
この実施例は2台のシリンダユニットで試料を吸入し、1台のシリンダユニットで混合する配管を備えたものである。すなわち、図15に示すように、シリンダ本体13には、6台のシリンダユニットが取り付けられている。正面の左右に配置されたチェック弁ヘッド10は、図3(d)のシリンダユニット51と52に取り付けられたものである。正面のチェック弁ヘッド10は、図3(d)のシリンダユニット53に取り付けられたものである。左右のチェック弁ヘッド10の吸気側チェック弁12Bから図示しない試料が吸入される。そして、排気側チェック弁12Aから配管41に試料が送り込まれる。この試料は、中央のチェック弁ヘッド10の吸気側チェック弁12Bで混ぜ合わせられ、その後、排気側チェック弁12Aを通じて図示しない配管に排出される。このように配管41を適宜付け替えることによって装置を多機能に動作させることができる。
【0072】
以上説明したような本発明の多機能装置では、コンロッド6の数を増やすことによって多数の被駆動部Fを駆動することができる。従って、例えば、多数の試験管の中の試料を汲み上げたり移したり混合したりするための実験装置に広く利用することができる。しかも、いずれもシリンダ室の設計により正確に自由にその吸入量などを設定できる。従って、非常に柔軟性のある多機能装置になる。また、自由に機能を変更できるため、様々な機能の装置を買い揃える必要がなく、経済的な万能試験補助装置にすることができる。また、この機構は、極めて低振動、低騒音に制御できるため、実験室などの環境を保持するために有効である。また、実験室だけでなく、顧客の様々な要求に応じて特別仕様の試験装置を生産する場合に、効率よく低コストで多機能装置の生産が可能になる。
【0073】
クランクリンクロータ4を用いて、軸対称に放射方向に向けた複数のコンロッド6を、ほぼ同一面上で往復運動させると、複数のコンロッドによりクランクリンクロータに加わる力がバランスして、クランクリンクロータの回転運動を滑らかにすることができる。従って、全体として効率よく運転ができる。特に、同一の機能を持つ被駆動部Fを動力源2の出力軸2Aの回転軸線Zに軸対称に配置すると、理想的な力のバランスが期待できる。その結果、低出力のモータを駆動源に利用できる。また、被駆動部Fを本体部Hに対して自由に着脱できると、各種の被駆動部Fの組み合わせによって、装置に任意の複雑な機能を付与することができる。従って、共通部品である駆動部Mと、個別部品である被駆動部Fとを別個に量産して、組み合わせることにより、顧客のニーズに応じた仕様の多機能装置を手軽に生産することができる。
【実施例13】
【0074】
図16は、実施例13の多機能装置を示す平面図である。
実施例1では駆動部に多数のクランク機構を採用した。この実施例では、円盤状のカム124を使用する。動力源は実施例1と同様にモータである。その出力軸122に円盤状のカム124が固定されている。このカム124は、下段シリンダ本体120のほぼ中心部に配置されて、出力軸122の回転軸線を中心に回転する。下段シリンダ本体120の外周には、既に説明したようなチェック弁ヘッド10が5台固定されている。スライドシャフト160にはベローズ140の一端が挿入されて固定されている。また、ベローズ140の他端の開口部142は、チェック弁ヘッド10の吸排気孔11(図10)に挿入されて固定されている。スライドシャフト160には、カム124のリブ130を挟むガイドローラ177とガイドピン178が設けられている。スライドシャフト160は下段シリンダ本体120に対してスラストベアリング182により支持されている。これにより、出力軸122が回転すると、スライドシャフト160は矢印200の方向に往復運動をする。
【0075】
この実施例では、カム124とスライドシャフト160により、実施例1等で説明した駆動部を構成している。また、この実施例ではベローズ140が被駆動部である。スライドシャフト160の往復運動によってベローズ140が圧縮されたり伸張されたりする。これが丁度ポンプの機能を果たす。もちろん、この実施例において、ベローズ140の代わりにピストンを配置してもよい。また、スライドシャフト160の往復運動によって仕事をする各種の装置を接続してもよい。以下では、被駆動部としてベローズ140を接続した実施例を説明する。
【0076】
図17は、カム124の例を示し、(a)は上面図、(b)はその中心を通るA−A断面図である。
カム124のやや偏心した位置に、モータの出力軸122(図1)を貫通させる軸孔126が設けられている。また、カム124の外周には、リブ130が設けられそのすぐ内側にカム溝128が設けられている。図の(b)に示すように、カム溝128は、ちょうどカム124の上面に、一定の深さの環状溝を形成している。
【0077】
図18は、スライドシャフトの説明図で、(a)は縦断面図、(b)はその上側面図、(c)は左端面図、(d)は右端面図、(d)はその軸を通るB−B断面図、である。
スライドシャフト160は、上記カム124(図2)のカム溝128に案内されて往復運動をする。図16に示したように、スライドシャフト160は出力軸122の回転軸線から見て放射方向(矢印200の方向)に往復運動するように配置されている。図18(a)に示すように、スライドシャフト160の右側にはローラ孔168とピン孔170が設けられている。ここに、図18の(e)に示したローラ軸176とガイドピン178を取り付ける。ビス孔172は、ピン孔170に取り付けたガイドピン178を固定するためのものである。
【0078】
スライドシャフト160のガイドピン178は、カム124(図2)のカム溝128にはまりこむ。ローラ軸176に取り付けられたガイドローラ177とガイドピン178で、カム124のリブ130を挟む。こうしてガイドピン178がカム溝128に案内されてスライドシャフト160を往復運動させる。スライドシャフト160の左端面には(a)に示すようにスリーブ164が設けられている。スリーブ164の内部には、窓162と止め穴166が設けられている。これによって後で説明するベローズ140の一端を固定する。
【0079】
図19は、ベローズの説明図で、(a)は側面図、(b)はその軸を通るC−C断面図、(c)は左端面図、(d)は右端面図である。
ベローズ140は、右端にストッパ148を備え、左端に開口部142を備えている。ストッパ148は、図の(d)に示すようにほぼ長円形の板である。このストッパ148を図18に示したスライドシャフト160の窓162にはめこむ。窓162の形状とストッパ148の形状はほぼ一致している。ストッパ148が窓162を通過して止め穴166に達した時、ストッパ148をその軸を中心に90度回転させる。こうすると、ストッパ148が止め穴166の内部で回転し、ストッパ148の両端がスリーブ164と止め穴166の間に設けられた壁に突き当たる。従って、この状態でベローズ140の一端がスライドシャフト160に固定される。
【0080】
ベローズ140の右端部近傍はスリーブ164に収容される。一方、図の(b)に示すように、ベローズ140の左端には開口部142が設けられている。開口部142の内部にはキャビティ146が設けられている。ベローズ140が長手方向に圧縮されたり伸長されたりすると、キャビティ146の容積が縮小したり拡大したりする。こうして、キャビティ146の内部に開口部142を通じて流体が出入りする。これがポンプの役割を果たす。
【0081】
開口部142はチェック弁ヘッド10に密着するように固定される。チェック弁ヘッド10は、既に説明した通りのシリンダユニットである。これまでの実施例に説明したポンプとこの実施例のベローズ140とは全く同様の機能を有する。従って、開口部142をチェック弁ヘッド10の開口に密着させてベローズ140を伸縮させると、既に説明した通りの多機能ポンプが実現する。
【0082】
図20は、実施例13の多機能装置の一部縦断面図である。
図に示したように、スライドシャフト160は、下段シリンダ本体120に設けられたスラストベアリング182によってその長手方向に自由に往復運動できるよう支持されている。モータ184の出力軸122が回転すると、これに固定されたカム124が回転する。カム124のカム溝128は、出力軸122に対して偏心するように形成されている。従って、カム124が回転すると、カム溝128にはまり合うガイドピン178は出力軸122に近づいたり離れたりする往復運動を強制される。
【0083】
ガイドローラ177とガイドピン178でカム124のリブ130を挟み付けているので、スライドシャフト160はカム124から外れることなく往復運動をする。スライドシャフト160に一端を固定されたベローズ140は、スライドシャフト160の往復運動によって伸縮される。ベローズ140の開口部142は、チェック弁ヘッド10に密着している。従ってチェック弁ヘッド10の内部とベローズ140のキャビティ146とが連通する。ベローズ140が伸縮し、キャビティ146の内部の流体が加減圧されると、チェック弁ヘッド10の内部の流体の吸入排出動作が可能になる。
【0084】
以上説明した実施例13の装置は、カム124を使用し、カム溝128あるいはリブ130を用いてスライドシャフト160を案内するので、クランク機構が不要になる。部品点数も実施例1等と比較して減少している。従ってコストが安くなり、小型軽量化が図れるという効果がある。また、駆動時の騒音も大幅に減少する。また、カムの部分を除いて全体を軸対称に構成して、バランスよく運転ができる。バランスがよいので、高速運転ができ、ポンプの場合には高圧での運転ができるという効果がある。実施例13の装置は実施例1の装置と同様に、実施例3や実施例4のような用い方をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施例1の多機能装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示した多機能装置の機能と様々な変形例を示す説明図である。
【図3】被駆動部の様々な組み合わせ動作説明図である。
【図4】試験設備で様々な薬剤を送ったり、混合したりするための応用例を示す説明図である。
【図5】シリンダユニットの具体的な例を示す断面図である。
【図6】衝撃試験や疲労試験に使用するヘッドを取り付けた状態を示す断面図である。
【図7】ヘッドの先端にスリットを設けたものを取り付けた例を示す断面図である。
【図8】疲労試験機能を持つ被駆動部の実施例を示す断面図である。
【図9】クランクリンクロータとその周囲にあるコンロッドや被駆動部の具体例を示す平面図である。
【図10】同一構造のシリンダユニットを軸対称に配置した場合の多機能装置主要部を示す断面図である。
【図11】実施例10の多機能装置を示す平面図である。
【図12】排気側チェック弁と下側の吸気側チェック弁の具体例を示す分解斜視図である。
【図13】2組の多機能装置を積み上げた例の多機能装置を示す縦断面図である。
【図14】図13の多機能装置を示す外観図である。
【図15】2台のシリンダユニットで試料を吸入し、1台のシリンダユニットで混合する配管を説明する多機能装置を示す斜視図である。
【図16】実施例13の多機能装置を示す平面図である。
【図17】カム124の例を示し、(a)は上面図、(b)はその中心を通るA−A断面図である。
【図18】スライドシャフトの説明図で、(a)は縦断面図、(b)はその上側面図、(c)は左端面図、(d)は右端面図、(d)はその軸を通るB−B断面図、である。
【図19】ベローズの説明図で、(a)は側面図、(b)はその軸を通るC−C断面図、(c)は左端面図、(d)は右端面図である。
【図20】実施例13の多機能装置の一部縦断面図である。
【符号の説明】
【0086】
M 駆動部
F 被駆動部
H 本体部
2 動力源
2A 出力軸
3 クランク軸
3A 偏心軸
4 クランクリンクロータ
5 クランクピン
6 コンロッド
7 ピストンピン
8 ピストン
9 シリンダ室
10 チェック弁ヘッド
13 シリンダ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源と、この動力源の出力軸に固定されて当該出力軸の回転軸線を中心とした公転運動をする偏心軸と、当該偏心軸に滑面を介して装着されて当該偏心軸とともに前記公転運動をするクランクリンクロータと、このクランクリンクロータに一端を配置して滑面を介して連結し他端を前記回転軸線から見て放射方向に向けた複数のコンロッドとを備えた駆動部と、
前記いずれかのコンロッドの他端に脱着機構を介して接続されて、当該他端の前記放射方向の往復運動により駆動される被駆動部と、
前記いずれかのコンロッドの他端近傍に配置されて、前記被駆動部を支持し、かつ、当該被駆動部の脱着機構を有する本体部とを備えたことを特徴とする多機能装置。
【請求項2】
動力源と、この動力源の出力軸に固定された大陽歯車と、当該大陽歯車に噛合された複数の遊星歯車と、当該遊星歯車の回転軸線を中心として公転運動をする部分に一端を配置して滑面を介して連結し他端を前記大陽歯車の回転軸線から見て放射方向に向けた複数のコンロッドとを備えた駆動部と、
前記いずれかのコンロッドの他端に脱着機構を介して接続されて、当該他端の前記放射方向の往復運動により駆動される被駆動部と、
前記いずれかのコンロッドの他端近傍に配置されて、前記被駆動部を支持し、かつ、当該被駆動部の脱着機構を有する本体部とを備えたことを特徴とする多機能装置。
【請求項3】
請求項1に記載の多機能装置において、
前記複数の被駆動部のうちの少なくとも一の被駆動部は他の被駆動部と異なる機能を有することを特徴とする多機能装置。
【請求項4】
請求項1に記載の多機能装置において、
前記いずれかの被駆動部は、
前記コンロッドの他端に脱着機構を介して接続されたピストンと、前記ピストンと嵌り合い、前記ピストンの前記放射方向の往復運動領域に室を有するシリンダ室と、当該シリンダ室の開口に配置され、当該シリンダ室への流体の吸入方向と排出方向とを制御する弁ヘッドとを備えた、シリンダユニットからなることを特徴とする多機能装置。
【請求項5】
請求項1に記載の多機能装置において、
前記複数のシリンダユニットのうち、2以上のシリンダユニットの吸入弁が、それぞれ被混合試料吸入パイプに接続され、前記2以上のシリンダユニットの排出弁が、いずれかの別のシリンダユニットの吸入弁に対して一括接続され、
当該別のシリンダユニットの排出弁が、被混合試料排出パイプに接続されていることを特徴とする試料混合装置。
【請求項6】
請求項1に記載の多機能装置において、
前記2以上のシリンダユニットの被混合試料の排出量が、それぞれ、被混合試料の混合比と等しくなるように、各シリンダユニットの容積が選定されていることを特徴とする多機能装置。
【請求項7】
請求項1に記載の多機能装置において、
前記被駆動部には、当該被駆動部の温度を設定温度に制御する温度制御機構が取り付けられていることを特徴とする多機能装置。
【請求項8】
動力源と、この動力源の出力軸に固定されて当該出力軸の回転軸線を中心として回転する円盤状のカムと、当該カムの溝に案内されて前記回転軸線から見て放射方向に往復運動をする複数のスライドシャフトとを有する駆動部と、
前記いずれかのスライドシャフトの他端に脱着機構を介して接続されて、当該他端の前記放射方向の往復運動により駆動される被駆動部と、
前記いずれかのスライドシャフトの他端近傍に配置されて、前記被駆動部を支持し、かつ、当該被駆動部の脱着機構を有する本体部とを備えたことを特徴とする多機能装置。
【請求項9】
請求項8に記載の多機能装置において、
前記いずれかの被駆動部は、
前記スライドシャフトの他端に脱着機構を介して接続され、内部に所定容量のキャビティを有し、前記脱着機構の反対側に前記キャビティの開口部を有するベローズと、前記キャビティの開口部に配置され、前記キャビティへの流体の吸入方向と排出方向とを制御する弁ヘッドとを備えた、シリンダユニットとを有することを特徴とする多機能装置。
【請求項10】
請求項9に記載の多機能装置において、
前記複数のシリンダユニットのうち、2以上のシリンダユニットの吸入弁が、それぞれ被混合試料吸入パイプに接続され、前記2以上のシリンダユニットの排出弁が、いずれかの別のシリンダユニットの吸入弁に対して一括接続され、
当該別のシリンダユニットの排出弁が、被混合試料排出パイプに接続されていることを特徴とする多機能装置。
【請求項11】
請求項9に記載の多機能装置において、
前記2以上のシリンダユニットの被混合試料の排出量が、それぞれ、被混合試料の混合比と等しくなるように、各シリンダユニットの容積が選定されていることを特徴とする多機能装置。
【請求項12】
請求項8に記載の多機能装置において、
前記被駆動部には、当該被駆動部の温度を設定温度に制御する温度制御機構が取り付けられていることを特徴とする多機能装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2007−64476(P2007−64476A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176373(P2006−176373)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(595077175)株式会社▲吉▼本製作所 (2)
【Fターム(参考)】