説明

多気筒エンジンの吸気装置

【課題】 気筒毎の独立吸気通路に長い低速用通路と短い高速用通路とを備えて低速域及び高速域での動的効果を高め得るようにしつつ、各気筒に対して吸気通路長を等長化し、しかもコンパクトな構造とする。
【解決手段】 集合部5の上流の共通通路6の方向を左右方向に見て複数の独立吸気通路1〜4が集合部5の左右両側に配設され、これらの独立吸気通路1〜4の各高速用通路1a〜4aの上流側端部1c〜4cと各低速用通路1b〜4bの上流側端部1d〜4dとが互いに略直角方向に向いた状態で集合部5に接続されている。各高速用通路1a〜4aの上流側端部1c〜4cは集合部5に対して略1点に向うように接続され、各低速用通路1b〜4bの上流側端部1d〜4dは束ねられるように配置された状態で集合部5に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は多気筒エンジンの吸気装置に関し、より詳しくは、長い低速用通路と短い高速用通路とを有する独立吸気通路が気筒毎に設けられている装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、多気筒エンジンにおいて、低速域と高速域とでそれぞれ吸気の動的効果が得られるようにするため、長い低速用通路と短い高速用通路とを有する独立吸気通路が気筒毎に設けられている吸気装置は種々知られている。
【0003】例えば特許第28294294号公報に示される吸気装置では、低速用通路に相当する複数の湾曲した長い分岐通路が気筒別に設けられて、これらの分岐通路の上流端が束ねられて集合部に接続されるとともに、各分岐通路の下流部と集合部とを結ぶ短絡通路(高速用通路に相当)が設けられ、この各短絡通路に開閉弁が設けられている。なお、集合部の上流側には上流通路(共通通路)が接続されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この種の吸気装置においては、各気筒に対して均等に吸気の動的効果を及ぼすために、各気筒に対して吸気通路を等長化することが要求される。この場合、集合部を気筒列方向に長い形状のサージタンクとしてこのサージタンクとエンジン本体への連結部との間に低速用通路及び高速用通路を気筒別に設けるようにすれば、サージタンク下流側の通路を各気筒に対して等長化することができるが、サージタンクにおいて吸気流入口から気筒別の通路までの距離に格差が生じるので、上流側通路から各気筒までの通路長にばらつきができ、このような通路長のばらつきがあると、耳障りな吸気騒音(気筒毎の周波数のばらつきによるうなり)が生じて商品性を損ねる。このため上流側通路部分から各気筒までにわたる範囲で各気筒に対する通路の等長化が望まれる。
【0005】また、低速域と高速域とでそれぞれ動的効果を有効に発揮させるためには充分に長い低速用通路と短い高速用通路とが必要になるが、エンジンルーム内の限られたスペースに収納するため、これら低速用通路及び高速用通路と集合部及び上流側通路を含む吸気装置をコンパクトに構成することが要求される。
【0006】これらの要求に対し、上記の特許第28294294号公報に示される吸気装置では、低速用通路に相当する分岐通路の上流端が束ねられてコンパクトな集合部に接続されることにより各気筒に対して低速用通路の等長化は図られているが、高速用通路の等長化については充分に配慮されておらず、低速用通路及び高速用通路の双方を各気筒に対して等長化しつつコンパクトな集合部に接続するためにはさらなる工夫が望まれる。
【0007】また、上記装置では各分岐通路が気筒配列方向と直交する方向に大きく湾曲しつつ気筒配列方向に拡がり、また上流側通路が集合部から分岐通路とは反対方向に延びているため、コンパクト化の面でも改善の余地がある。
【0008】本発明はこのような点に鑑み、気筒毎の独立吸気通路に長い低速用通路と短い高速用通路とを備えて低速域及び高速域での動的効果を高め得るようにしつつ、各気筒に対して吸気通路長を等長化し、しかもコンパクトな構造とすることができる多気筒エンジンの吸気装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、短い高速用通路と長い低速用通路とを有する独立吸気通路が気筒毎に設けられ、各独立吸気通路の高速用通路及び低速用通路の各上流側端部が集合部に接続されるとともに、各独立吸気通路の下流側端部がエンジン本体への連結部に接続されている多気筒エンジンの吸気装置において、集合部からスロットル弁配置部分へ延びる共通通路の方向を左右方向に見て、複数の独立吸気通路が集合部の左右両側に配設され、これらの独立吸気通路の各高速用通路の上流側端部と各低速用通路の上流側端部とが、互いに略直角方向に向いた状態で集合部に接続され、かつ、上記各高速用通路の上流側端部が集合部に対して略1点に向うように接続されるとともに、上記各低速用通路の上流側端部が束ねられるように配置された状態で集合部に接続されているものである。
【0010】この構成によると、短い高速用通路と長い低速用通路とにより低速域及び高速域でそれぞれ吸気の動的効果が得られる。とくに、共通通路から集合部および各高速用通路わたる部分、並びに共通通路から集合部および各低速用通路わたる部分が各気筒に対して等長化され、吸気の動的が高められるとともに、吸気騒音が低減される。しかも、集合部に対して各高速用通路及び各低速用通路が三次元的にコンパクトに接続されるとともに、集合部、独立吸気通路及び共通通路がコンパクトにレイアウトされる。
【0011】この発明において、上記共通通路と平行な方向をX方向、この方向と直交する特定方向をY方向、これらX方向及びY方向を含む特定平面をX−Y平面として、上記集合部に対する各高速用通路の上流側端部の接続方向が上記X−Y平面に沿った方向となるように設定するとともに、上記集合部に対する各低速用通路の上流側端部の接続方向が上記X−Y平面と直交するZ方向となるように設定し、かつ、各低速用通路が上流側端部から上記共通通路を巻くように屈曲して下流側端部に至るように形成されていることが好ましい。
【0012】このようにすると、各低速用通路が充分に長くされつつ、集合部に対して低速用,高速用の各通路及び共通通路がコンパクトに配設される。
【0013】また、X方向を水平方向、Y方向を上下方向として、上記各高速用通路の上流側端部が集合部の上部に接続され、この集合部における各高速用通路上流側端部との接続部分が上記X−Y平面状で略扇状に形成され、一方、上記各低速用通路の上流側端部と集合部との接続部分においては気筒列方向中央側の気筒に対する低速用通路の高さ位置が両側の気筒に対する低速用通路の高さ位置よりも低くなっていることが好ましい。
【0014】このようにすると、各高速用通路及び各低速用通路において吸気抵抗が軽減されるとともに各気筒に対する吸気の分配性が高められる。
【0015】また、集合部に接続される上流側端部からエンジン本体への連結部に接続される下流側端部の近傍までにわたり、X方向の片側から見た側面視で高速用通路と低速用通路との双方が同方向に湾曲し、下流側端部で高速用通路と低速用通路とが束ねられるように合流していることが好ましい。
【0016】このようにすると、高速用通路、低速用通路のうちの一方を通して吸気が行われている状態から他方を通して吸気が行われている状態に切換ったときなどにも、吸気抵抗の増大や吸気慣性力の低下を招くようなことがない。
【0017】また、上記各独立吸気通路における高速用通路と低速用通路との合流部に、高速用通路を閉じて低速用通路を開く状態と高速用通路を開いて低速用通路を閉じる状態とに切換可能な切換弁が設けられていることが好ましい。
【0018】このようにすると、切換弁の作動によって高速用通路、低速用通路のうちの一方が開く状態と他方が開く状態とに切換えられることにより、低速域及び高速域でそれぞれ吸気の動的効果が得られる。そして、切換弁により高速用、低速用のうちの一方の通路が開かれたときに、他方の通路が閉じられた状態でその通路の切換弁より上流側が集合部に連通し、この部分が共鳴室として機能することにより、動的効果が高められる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0020】図1〜図6は、本発明の吸気装置を4気筒エンジンの吸気マニホールドに適用した場合の一実施形態を示している。これらの図に示す吸気マニホールドMは、気筒毎に設けられる独立吸気通路1〜4と、その上流側の集合部5と、集合部5の上流側の共通通路6と、独立吸気通路1〜4の下流側にあるフランジ部7(エンジン本体への連結部)とを一体に備えており、フランジ部7がエンジン本体のシリンダヘッド(図示せず)にボルト締結により連結されるようになっている。
【0021】上記共通通路6は集合部5とフランジ部7との間に位置し、集合部5に連なる部分からスロットル弁配置部分へ延びており、スロットル弁が収容されたスロットルボディ8に共通通路6の上流端がボルトで連結されている。
【0022】以下の説明では、共通通路6が左右方向に延びるとともにその前側に独立吸気通路1〜4及び集合部5が表れる状態に吸気マニホールドMを見た図1を正面図、これに対して一側方から吸気マニホールドMを見た図2を側面図、図1に対して裏側から吸気マニホールドMを見た図3を背面図、図1の上方側からに吸気マニホールドMを見た図4を平面図とし、図1の正面図において左右方向(共通通路4と平行な方向)をX方向、図1R>1の正面図において上下方向(X方向と直交する特定方向)をY方向、X方向及びY方向を含む特定平面である図1の紙面に沿った平面をX−Y平面、X方向及びY方向と直交する方向(図2の側面図における左右方向)をZ方向と呼ぶ。また、単に上下、左右等の方向を言うときは図1の正面図における上下、左右等を意味する。
【0023】図1の正面図において、集合部5は、上部が横方向に比較的広い幅を有し、その上辺部分5aが略水平に形成され、この上辺部分5aの両側に下拡がりの斜辺部分5bを有し、この斜辺部分5bより下方側で幅が次第に狭まった形状となっている。集合部5の前後幅は略一定となっている(図2,図5参照)。この集合部5の背面側に上記共通通路6が位置している。そして、図5の断面図に示すように、共通通路6と集合部5とは、共通通路6と直交する方向の連通部9を介して連通している。
【0024】また、共通通路の方向を左右方向に見た図1R>1において、独立吸気通路1〜4は集合部5の左右両側に対称的に配置されている。つまり、図1において吸気マニホールドMの右側から順に第1〜第4独立吸気通路1〜4と呼ぶと、集合部5の右側に第1,第2独立吸気通路1,2が、また集合部5の左側に第3,第4独立吸気通路3,4がそれぞれ配列されている。各独立吸気通路1〜4は、それぞれ、短い高速用通路1a〜4aと、長い低速用通路1b〜4bとを有している。
【0025】各独立吸気通路1〜4の共通する構成を第1の独立吸気通路1について具体的に説明すると、この独立吸気通路1の高速用通路1aと低速用通路1bとは上流側で分離し、高速用通路1aの上流側端部1cが集合部5の上端部にX−Y平面に沿った方向から接続される一方、低速用通路1bの上流側端部1dが集合部5の背面部にZ方向から接続されることにより、これら高速用通路1aの上流側端部と低速用通路1bの上流側端部とが互いに略直角方向を向いた状態で集合部5に接続されている。
【0026】高速用通路1aは集合部5の上方から後方へ向うように湾曲している。一方、低速用通路1bは集合部5の背後において共通通路6を巻くように屈曲して共通通路6の周囲を略1周してから後方へ向うように形成されることにより、高速用通路1aと比べてかなり長く形成されている。このように高速用通路1aと低速用通路1bとは長さが異なるが、図2,図5に示すようにX方向の片側から見た側面視で両通路1a,1bが同方向に湾曲し、つまりこれらの図において両通路1a,1bはともに下流側に向うにつれて右回り(時計回り)の方向に湾曲している。
【0027】そして、上記のように共通通路6の周囲を略1周した低速用通路1bの下流側端部と高速用通路1aの下流側端部とは集合部5の後方において束ねられるように合流し、この合流した下流側端部1eがフランジ部7に接続されている。
【0028】以上が第1独立吸気通路1の構成であるが、第2〜第4独立吸気通路2〜4も同様に構成され、つまり、高速用通路2a,3a,4aと低速用通路2b,3b,4bとが上流側で分離して、高速用通路2a,3a,4aの上流側端部2c,3c,4cと低速用通路2b,3b,4bの上流側端部2d,3d,4dとが互いに略直角方向を向いた状態で集合部5の上部及び背面部にそれぞれ接続されるとともに、集合部5の後方において、低速用通路2b,3b,4bの下流側端部と高速用通路2a,3a,4aの下流側端部とが束ねられるように合流し、この合流した下流側端部2e,3e,4eがフランジ部7に接続されている。
【0029】次に、複数の独立吸気通路1〜4全体の配置構成を説明する。
【0030】各高速用通路1a〜4aの上流端部1c〜4cが接続される集合部5の上部は、上辺部分5aとその両側の斜辺部分5b,5bとにわたって略扇形に形成されている。そして、第2及び第3の独立吸気通路2,3における高速用通路2a,3aの上流端部2c,3cが集合部5の上辺部分5aに左右の斜め上側方から接続されるとともに、第1及び第4の独立吸気通路1,4における高速用通路1a,4aの上流端部1c,4cが集合部5の斜辺部分5b,5bに左右の斜め上側方から接続されることにより、各高速用通路1a〜4aの上流端部1c〜4cが集合部の中央部の略1点に向かうように接続されている。
【0031】各低速用通路1b〜4bの上流端部1d〜4dは束ねられるように配置された状態で集合部5の背面部分に接続されている。そして、この低速用通路1b〜4bの上流端部1d〜4dと集合部5との接続部分においては、第2,第3独立吸気通路2,3の低速用通路2b,3b(気筒列方向中央側の気筒に対する低速用通路)の高さ位置が第1,第4独立吸気通路1,4の低速用通路2b,3b(気筒列方向両側の気筒に対する低速用通路)の高さ位置よりも低くなっている。
【0032】すなわち、集合部5の背面部分の上部に第1,第4独立吸気通路1,4の低速用通路上流端部1d,4dが互い隣接する状態で接続されるとともに、その下方部に第2,第3独立吸気通路2,3の低速用通路上流端部2d,3dが接続されている。
【0033】このような低速用通路上流端部の高さ方向の位置関係に対応して、共通通路6の下方においても、第2,第3独立吸気通路2,3の低速用通路2b,3bの最下端位置が第1,第4独立吸気通路1,4の低速用通路1b,4bの最下端位置よりも低くなっている。
【0034】そして、第2,第3独立吸気通路2,3の低速用通路2b,3bは、集合部5の背後より共通通路6の下方を通って前方へ湾曲してから集合部5の左右側辺部分に沿って上方に向かい、さらに後方へ湾曲して下流側端部2e,3eに至り、一方、第1,第4独立吸気通路1,4の低速用通路1b,4bは、集合部5の背後で低速用通路2b,3bの外側を通り、さらに共通通路6の下方を通って前方へ湾曲してから低速用通路2b,3bの外側部に沿って上方に向かい、さらに後方へ湾曲して下流側端部1e,4eに至るように形成されている。
【0035】また、上記各独立吸気通路1〜4において、高速用通路1a〜4aと低速用通路1b〜4bとの合流部分には、図6に示すような通路切換弁10が設けられている。この通路切換弁10は、各独立吸気通路1〜4に共通の弁軸10aと、この弁軸10aに一端が取付けられた弁体10bとからなり、弁軸10aが高速用通路1a〜4aと低速用通路1b〜4bとの合流点に軸支され、弁体10bが弁軸10aから通路下流側に向くように配置され、かつ、弁軸10aを中心に弁体10bが回動することにより、高速用通路1a〜4aを閉じて低速用通路1b〜4bを開く状態(図6中の実線)と、高速用通路1a〜4aを開いて低速用通路1b〜4bを閉じる状態(図6中の二点鎖線)とに切換可能となっている。なお、弁軸10aは各独立吸気通路1〜4を横切ってX軸方向に延び、一端部が図外のアクチュエータに連結されている。
【0036】以上のような当実施形態の装置によると、共通通路6が集合部5とフランジ部7との間に位置し、この共通通路6の方向を左右方向に見て独立吸気通路1〜4が集合部5の左右両側に配列されることにより、共通通路6、集合部5、独立吸気通路1〜4等がコンパクトにレイアウトされる。
【0037】特に、独立吸気通路1〜4の各高速用通路1a〜4aの上流側端部1c〜4cと各低速用通路1b〜4bの上流側端部1d〜4dとが互いに略直角方向に向いた状態で集合部5に接続されることにより、集合部5に対して各高速用通路1a〜4aと各低速用通路1b〜4bとが三次元的にコンパクトに接続されるとともに、高速用通路1a〜4aは集合部5の上部から後方へ湾曲して下流側端部1e〜4eに至り、また低速用通路1b〜4bは集合部5の背後から共通通路6を巻くようにその周囲を略1周してから下流側端部1e〜4eに至るようにしているため、低速域で動的効果をもたせるべく低速用通路1b〜4bを充分に長くしつつ、高速用通路1a〜4a及び低速用通路1b〜4bを集合部5の周辺及び集合部5とフランジ部7との間にコンパクトに配設される。
【0038】こうして吸気マニホールドM全体がコンパクトになり、エンジンルーム内の限られたスペースに容易に納まることとなる。
【0039】しかも、各高速用通路1a〜4aの上流側端部1c〜4cが略1点に向うように集合部5の上部に接続されるとともに、上記各低速用通路1b〜4bの上流側端部1d〜4dが束ねられるように配置されて集合部5の背面部分に接続されていることにより、共通通路6、集合部5及び高速用通路1a〜4aにわたる範囲で各気筒に対して高速時の吸気流通経路が等長化され、かつ、共通通路6、集合部5及び低速用通路1b〜4bにわたる範囲で各気筒に対して低速時の吸気流通経路も等長化される。従って、吸気の動的効果が各気筒に均等に及ぶとともに、吸気騒音(特に気筒毎の周波数のばらつきによる耳障りな音)を抑制することができる。
【0040】また、集合部5の上部は上辺部分5a及びその両側の斜辺部分5b,5bからなる略扇形とされ、その上辺部分5aに第2,第3独立吸気通路2,3の高速用通路上流側端部2c,3cが接続されるとともに、斜辺部分5b,5bに第1,第4独立吸気通路1,4の高速用通路上流側端部1c,4cが接続されていることにより、高速用通路を通して吸気が行われるときに、集合部5から各高速用通路1a〜4aへの吸気の流通がスムーズに行われて、吸気抵抗が軽減されるとともに、各気筒に対する吸気の分配性が向上される。一方、各低速用通路1b〜4bの上流側端部1d〜4dと集合部5との接続部分においては第2,第3独立吸気通路2,3の低速用通路2b,3bの高さ位置が第1,第4独立吸気通路1,4の低速用通路1b,4bの高さ位置よりも低くされて、これらの低速用通路1b〜4bの上流側端部1d〜4dが束ねられた配置で集合部に接続されているため、低速用通路1b〜4bが等長化されるとともに、低速用通路1b〜4bを通して吸気が行われるときに吸気抵抗の軽減及び各気筒に対する吸気の分配性の向上が図れる。
【0041】また、各独立吸気通路1〜4における高速用通路1a〜4aと低速用通路1b〜4bとが同方向に湾曲しているので、高速用通路1a〜4aを吸気が流れる状態から低速用通路1b〜4bを吸気が流れる状態へ切換わったときやその逆の切換わりがあったときなどにも、スムーズに吸気が流れ、吸気抵抗の増大や吸気慣性力の低下等が防止される。
【0042】ところで、各独立吸気通路1〜4における高速用通路1a〜4aと低速用通路1b〜4bとの合流部に設けられた切換弁10は、図外のエンジンコントロールユニットにより運転状態に応じて制御されて、所定エンジン回転数以下の低速域では高速用通路1a〜4aを閉じて低速用通路1b〜4bを開く低速用吸気流通状態とされ、所定エンジン回転数を越える高速域では高速用通路1a〜4aを開いて低速用通路1b〜4bを閉じる高速用吸気流通状態とされる。
【0043】そして、切換弁10が上記低速用吸気流通状態とされたときは、長い低速用通路1b〜4bを通して吸気が行われることにより、低速域で吸気の動的効果が得られて、低速トルクが高められる。この場合、切換弁10が高速用通路1a〜4aを閉じた状態で、この切換弁10より上流の高速用通路1a〜4aが集合部5に連通することにより、この部分が共鳴室として機能し、動的効果が高められる。
【0044】一方、切換弁10が上記高速用吸気流通状態とされたときは、短い高速用通路1a〜4aを通して吸気が行われることにより、高速域で吸気の動的効果が得られて、高速トルクが高められる。この場合も、切換弁10が低速用通路1b〜4bを閉じた状態で、この切換弁10より上流の低速用通路1b〜4bが集合部5に連通することにより、この部分が共鳴室として機能し、動的効果が高められる。
【0045】また、切換弁10は高速用通路1a〜4aと低速用通路1b〜4bとの分岐箇所に位置していて、一方の通路を開いたときにその通路内には介在しないので、吸気抵抗の増大を招くことはない。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の吸気装置は、集合部上流の共通通路の方向を左右方向に見て複数の独立吸気通路が集合部の左右両側に配設され、これらの独立吸気通路の各高速用通路の上流側端部と各低速用通路の上流側端部とが互いに略直角方向に向いた状態で集合部に接続されているため、これら集合部、独立吸気通路及び共通吸気通路がコンパクトに配設される。しかも、各高速用通路の上流側端部が集合部に対して略1点に向うように接続されるとともに、各低速用通路の上流側端部が束ねられるように配置されているため、共通通路から集合部およびその下流にわたる通路が高速用及び低速用のいずれにおいても各気筒に対して等長化され、吸気の動的が高められるとともに、吸気騒音が低減される。
【0047】従って、エンジンルーム内の限られたスペースに合理的に配置し得るようにしつつ、吸気充填効率の向上及び吸気騒音の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による吸気マニホールドの正面図である。
【図2】上記吸気マニホールドの側面図である。
【図3】上記吸気マニホールドの背面図である。
【図4】上記吸気マニホールドの平面図である。
【図5】図1のV−V線断面図である。
【図6】切換弁配置部分の断面図である。
【符号の説明】
M 吸気マニホールド
1〜4 独立吸気通路
1a〜4a 高速用通路
1b〜4b 低速用通路
5 集合部
6 共通通路
7 フランジ部
9 連通部
10 切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 短い高速用通路と長い低速用通路とを有する独立吸気通路が気筒毎に設けられ、各独立吸気通路の高速用通路及び低速用通路の各上流側端部が集合部に接続されるとともに、各独立吸気通路の下流側端部がエンジン本体への連結部に接続されている多気筒エンジンの吸気装置において、集合部からスロットル弁配置部分へ延びる共通通路の方向を左右方向に見て、複数の独立吸気通路が集合部の左右両側に配設され、これらの独立吸気通路の各高速用通路の上流側端部と各低速用通路の上流側端部とが、互いに略直角方向に向いた状態で集合部に接続され、かつ、上記各高速用通路の上流側端部が集合部に対して略1点に向うように接続されるとともに、上記各低速用通路の上流側端部が束ねられるように配置された状態で集合部に接続されていることを特徴とする多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項2】 上記共通通路と平行な方向をX方向、この方向と直交する特定方向をY方向、これらX方向及びY方向を含む特定平面をX−Y平面として、上記集合部に対する各高速用通路の上流側端部の接続方向が上記X−Y平面に沿った方向となるように設定するとともに、上記集合部に対する各低速用通路の上流側端部の接続方向が上記X−Y平面と直交するZ方向となるように設定し、かつ、各低速用通路が上流側端部から上記共通通路を巻くように屈曲して下流側端部に至るように形成されていることを特徴する請求項1記載の多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項3】 X方向を水平方向、Y方向を上下方向として、上記各高速用通路の上流側端部が集合部の上部に接続され、この集合部における各高速用通路の上流側端部との接続部分が上記X−Y平面状で略扇状に形成され、一方、上記各低速用通路の上流側端部と集合部との接続部分においては気筒列方向中央側の気筒に対する低速用通路の高さ位置が両側の気筒に対する低速用通路の高さ位置よりも低くなっていることを特徴とする請求項2記載の多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項4】 集合部に接続される上流側端部からエンジン本体への連結部に接続される下流側端部の近傍までにわたり、X方向の片側から見た側面視で高速用通路と低速用通路との双方が同方向に湾曲し、下流側端部で高速用通路と低速用通路とが束ねられるように合流していることを特徴とする請求項2又は3記載の多気筒エンジンの吸気装置。
【請求項5】 上記各独立吸気通路における高速用通路と低速用通路との合流部に、高速用通路を閉じて低速用通路を開く状態と高速用通路を開いて低速用通路を閉じる状態とに切換可能な切換弁が設けられていることを特徴とする請求項4記載の多気筒エンジンの吸気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2003−49728(P2003−49728A)
【公開日】平成15年2月21日(2003.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−238118(P2001−238118)
【出願日】平成13年8月6日(2001.8.6)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】