説明

多眼カメラ装置および電子情報機器

【課題】ハード的に光学系間の視差のない。
【解決手段】多眼を構成する例えば3つまたは4つの多眼光学系11に対して、元の入射光を例えば3つまたは4つ、それ以上の段数のビームスプリッタ(ここではビームスプリッタ2〜4)などを用いて、入射光の同じ画像光から、各色(例えば3原色のR、G、B)に応じた周波数範囲(光波長範囲)に対応して複数(例えば3原色のR、G、B)に分割/分離する。多眼光学系11から複数の波長領域光がそれぞれ入射されて、各波長領域光をそれぞれ光電変換して撮像する多眼撮像装置7が多眼光学系11直下に対応して配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体からの画像光を光電変換して撮像するCCD(Charge Coupled Device)およびCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)に代表される固体撮像素子を用いた多眼カメラ装置および、この多眼カメラ装置を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばデジタルビデオカメラおよびデジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、監視カメラなどの画像入力カメラ、スキャナ装置、ファクシミリ装置、テレビジョン電話装置、カメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のカメラモジュールは、高解像性能、低背化および低コスト化が求められ、これらの要求に対する一つの案として古くから多眼カメラ構造が提案されている。
【0003】
特許文献1には、従来の多眼カメラ装置の一つであり、複数の光学系を信号処理により合成する多眼構造が開示されている。即ち、この多眼カメラ装置では、画質を向上させるために、複数の光学系を持ち、その各々の光軸に対応した複数の撮像素子を配置しそれらの出力信号を用いて信号処理を行い、最終的に1つの撮像出力信号を得る多眼多板式であって、近接撮影時に視差の影響を受け難くして撮像を可能とする機能を付加している。
【0004】
図7は、特許文献1に開示されている従来構成例であって、図7(a)は多眼多板方式撮像素子を簡単に示す模式図、図7(b)は単板撮像素子を簡単に示す模式図である。
【0005】
図7(a)に示すように、従来の多眼多板撮像素子100において、撮像素子101に入射する被写体からの光は平行光、即ち被写体からの距離は無限が基本的には前提であり、従って独立した各光学系には同様の光束が入射する。光102は、絞り103を通過し各レンズ104に入り、カラーフィルタ105により、赤(以下R)、青(以下B)、緑(以下G)などの各帯域光を選択し、その後は、撮像素子101により電気信号に変換される。この撮像素子は、各光学系が被写体像を結ぶ有効像円に対応して独立した複数の撮像画素エリアで構成されている。
【0006】
ここで、光学系は各色毎に必要となるが、カラーフィルタ105に原色を用いると、各光学系は各色の帯域のみを通過させればいいので、色収差については考慮することがなく、レンズの枚数、コーティングの簡素化などが可能となる。
【0007】
一方、図7(b)に示すように、単板撮像素子110において、同様に被写体からの入射光112は絞り113、レンズ114を通過し、カラーフィルタ115を通って撮像素子111に入射する。ここで、カラーフィルタ115は、撮像素子111の各画素単位に通過色帯域の異なるモザイク状の物を使用している。
【0008】
単板式では、全ての色帯域を通過させる必要があるため、光学系は各色毎に屈折率が異なることから発生する色収差を補正するため、通常は、複数のレンズの組み合わせが用いられている。
【0009】
ここで、2つの撮像素子101と撮像素子111と構造の違いを更に説明する。多眼多板式撮像素子100は各色毎の独立した撮像画素エリアからの複数の信号を得るために、そのそれぞれの撮像画素エリアの画素数は少なく、撮像素子101上の被写体像は小さいため、焦点距離は短い。一方、単板撮像素子は110は、全ての色を1つの撮像素子で処理するために、その素子上の被写体像は大きくなり、焦点距離は長くなる。
【0010】
以上のように、特許文献1では、多眼多板式撮像素子100は、光学系の焦点距離が短くなるため、既述の光学系の簡易化も併せて撮像系の厚み方向が非常に薄くできる大きなメリットがある。このような特徴を持つ多眼多板式撮像素子を用いてダイナミックレンジを広げることが次の特許文献2に示されている。また、多眼多板式撮像素子の製造方法としては次の特許文献3に示されている。多眼多板式撮像素子の欠点としての視差の問題を解決する方法につては次の特許文献4に示されている。
【0011】
特許文献2では、各レンズの輝度に対する感度を変えてダイナミックレンジの広いカメラを実現する多眼構造が開示されている。要するに、多眼構造において、一方は、絞りを開いて暗いところまで撮像可能にしておき、他方は、絞りを絞って明るすぎる所であっても撮像可能にしておき、両者を画像合成することにより、ダイナミックレンジの広いカメラを実現する。
【0012】
特許文献3では、隣接レンズを同一材料で一体成型することにより、多眼レンズを安価に製造する方法が開示されている。
【0013】
特許文献4では、被写体を複数のカメラ2A〜2Eで撮影することによる視差の画像補正をソフトウェアにて行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−128762号公報
【特許文献2】特開2002−171430号公報
【特許文献3】特開2005−338505号公報
【特許文献4】特開2009−60378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、これらの特許文献1〜4に開示されている従来の多眼カメラ装置では、光学系間の視差が生じ、特に、特許文献4では、ソフトウェアで視差の画像補正を行っているが、このような場合においても、光学系間の視差を完全に補正することが困難であった。
【0016】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、ハード的に光学系間の視差のない多眼カメラ装置、この多眼カメラ装置を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばカメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の多眼カメラ装置は、被写体からの入射光を複数の波長領域の光に分割する多眼光学系と、該多眼光学系から複数の波長領域光がそれぞれ入射されて、各波長領域光をそれぞれ光電変換して撮像する多眼撮像装置とを有するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0018】
また、好ましくは、本発明の多眼カメラ装置における多眼光学系は、複数段のビームスプリッタの反射と透過に対して波長依存性を付与して前記入射光の同じ画像光を複数の波長範囲の光に分割する。
【0019】
さらに、好ましくは、本発明の多眼カメラ装置における複数の波長範囲は、赤、緑および青の三原色の波長範囲かまたは、該緑の波長範囲を2分割した赤、緑、緑および青の三原色の波長範囲、シアン、マゼンダおよびイエローの補色の波長範囲である。
【0020】
さらに、好ましくは、本発明の多眼カメラ装置における多眼光学系が3眼光学系または4眼光学系で構成され、前記多眼撮像装置が3眼撮像装置または4眼撮像装置で構成されている。
【0021】
さらに、好ましくは、本発明の多眼カメラ装置における多眼光学系は、前記被写体からの入射光が入射され、第1波長領域の透過光を出射し、それ以外の波長領域の反射光を反射する第1ビームスプリッタと、該第1ビームスプリッタからの反射光が入射され、第2波長領域の反射光を出射し、それ以外の波長領域の透過光を透過する第2ビームスプリッタと、該第2ビームスプリッタからの透過光が入射され、該透過光の一部または全部が反射される第3ビームスプリッタとを有し、該入射光の同じ画像光から3つの画像光に分割される。
【0022】
さらに、好ましくは、本発明の多眼カメラ装置における多眼光学系は、前記被写体からの入射光が入射され、第1波長領域の透過光を出射し、それ以外の波長領域の反射光を反射する第1ビームスプリッタと、該第1ビームスプリッタからの反射光が入射され、第2波長領域の反射光を出射し、それ以外の波長領域の透過光を透過する第2ビームスプリッタと、該第2ビームスプリッタからの透過光が入射され、第3波長領域の反射光を出射し、それ以外の波長領域の透過光を透過する第3ビームスプリッタと、該第3ビームスプリッタからの透過光が入射され、該透過光の一部または全部が反射される第4ビームスプリッタとを有し、該入射光の同じ画像光から4つの画像光に分割される。
【0023】
さらに、好ましくは、本発明の多眼カメラ装置における最終段の光学系は、前記ビームスプリッタに代えて、ミラーまたはプリズムで構成されている。
【0024】
さらに、好ましくは、本発明の多眼カメラ装置における多眼撮像装置は、前記多眼光学系からの透過光および反射光がそれぞれ入射される一または複数枚積層されたレンズアレイと、該レンズアレイからの入射光がそれぞれ集光される撮像センサとの組みを複数組分有する。
【0025】
さらに、好ましくは、本発明の多眼カメラ装置における撮像センサは、CCDセンサまたはCMOSセンサで構成された固体撮像素子である。
【0026】
さらに、好ましくは、本発明の多眼カメラ装置における撮像センサには、前記波長領域に対応した色のカラーフィルタが設けられているかまたは該カラーフィルタが不要である。
【0027】
さらに、好ましくは、本発明の多眼カメラ装置におけるレンズアレイの平面視レンズ数は、前記光学系の数に対応し、一列に配列された複数のサブレンズから構成され、該サブレンズは、前記波長範囲の波長特性に合わせたレンズ焦点距離を有している。
【0028】
本発明の電子情報機器は、本発明の上記多眼カメラ装置を画像入力デバイスとして撮像部に用いたものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0029】
上記構成により、以下、本発明の作用を説明する。
【0030】
本発明においては、被写体からの入射光を複数の波長領域の光に分割する多眼光学系と、該多眼光学系から複数の波長領域光がそれぞれ入射されて、各波長領域光をそれぞれ光電変換して撮像する多眼撮像装置とを有する。この多眼光学系は、複数段のビームスプリッタの反射と透過に対して波長依存性を付与して入射光の同じ画像光を複数の波長範囲の光に分割することが可能である。
【0031】
これによって、多眼を構成する例えば3つまたは4つの光学系に対して、元の入射光を例えば3つまたは4つ、それ以上の段数のビームスプリッタなどを用いて、入射光の同じ画像光から、各色(例えば3原色;RGB)に応じた周波数範囲(光波長範囲)に対応して複数(例えば3原色;RGB)に分割/分離することによって、視差を生じない多眼カメラ装置を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
以上により、本発明によれば、多眼を構成する例えば3つまたは4つの光学系に対して、元の入射光を例えば3つまたは4つ、それ以上の段数のビームスプリッタなどを用いて、入射光の同じ画像光から、各色(例えば3原色のR、G、BまたはR、G1、G2、B)に応じた周波数範囲(光波長範囲)に対応して複数(例えば3原色のR、G、BまたはR、G1、G2、B)に分割/分離することによって、視差を生じない多眼カメラ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態1における多眼カメラ装置の要部構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の多眼カメラ装置における3眼撮像装置の一例を示す縦断面図である。
【図3】(a)は、3原色(RGB)の光波長範囲を示す図、(b)は、3原色(R、G1、G2、B)の光波長範囲を示す図である。
【図4】本発明の実施形態2における多眼カメラ装置の要部構成例を示すブロック図である。
【図5】図4の多眼カメラ装置における4眼撮像装置の一例を示す縦断面図である。
【図6】本発明の実施形態3として、本発明の実施形態1または2の多眼カメラ装置を撮像部に用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【図7】特許文献1に開示されている従来構成例であって、(a)は多眼多板方式撮像素子を簡単に示す模式図、(b)は単板撮像素子を簡単に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明の多眼カメラ装置の実施形態1、2および、この多眼カメラ装置の実施形態1または2を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばカメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器の実施形態3について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図における構成部材のそれぞれの厚みや長さなどは図面作成上の観点から、図示する構成に限定されるものではない。
【0035】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1における多眼カメラ装置の要部構成例を示すブロック図である。
【0036】
図1において、本実施形態1の多眼カメラ装置1は、被写体からの入射光を複数(ここでは3つ)の波長領域光に分割する多眼光学系としての3眼光学系11と、3眼光学系11から複数の波長領域光がそれぞれ入射されて、各波長領域光をそれぞれ光電変換して撮像する多眼撮像装置(多眼撮像モジュール)としての3眼撮像装置7とを有している。
【0037】
3眼光学系11は、一つの画像光から三つの画像光に分割することにより視差を生じない多眼光学系を構成し、被写体からの入射光Lが入射され、第1波長領域の透過光L1を出射し、それ以外の波長領域の反射光L11を反射する第1ビームスプリッタ2と、第1ビームスプリッタ2からの反射光L11が入射され、第2波長領域の反射光L2を出射し、それ以外の波長領域の透過光L12を透過する第2ビームスプリッタ3と、第2ビームスプリッタ3からの透過光L12が入射され、その透過光L12の一部または全部が反射される第3ビームスプリッタ4とを有している。
【0038】
ビームスプリッタ2〜4は、同一の入射光を複数(ここでは緑、赤、青の三原色)に分離し、多眼を構成する各色毎の光学系にそれぞれ分割する。ビームスプリッタ2〜4は、その後段においてカラーフィルタが不要であって、センサ構造の簡素化を図るべく、ビームスプリッタ2〜4の反射と透過に対して波長依存性を付与し、多眼を構成する光学系毎に受光する波長を緑、赤、青の三原色など、取得する色情報で複数に分割している。
【0039】
3眼撮像装置7は、第1〜3ビームスプリッタ2〜4からの透過光および各反射光がそれぞれ入射される一または複数のレンズ5と、レンズ5からの入射光がそれぞれ集光されて入射される撮像センサ6との組みを3組分有している。
【0040】
撮像センサ6は、高解像度のデジタルカメラを実現するべく、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子で構成されている。
【0041】
図2は、図1の多眼カメラ装置1における3眼撮像装置7の一例を示す縦断面図である。
【0042】
図2において、3眼撮像装置7は、開口絞りアレイ71と、レンズアレイ72と、透明ガラス基板などの平面板73と、遮光マスク74と、撮像素子基板75とをこの順次に積層した3眼撮像モジュールである。
【0043】
レンズアレイ72は、サブ撮像モジュール毎にサブレンズ72a、72bおよび72cのそれぞれを備えている。
【0044】
撮像素子基板75は、遮光マスク74により、分割撮像領域75a、75bおよび75cに3分割されて互いに隔離されており、ここでは、それぞれ単色のカラーフィルタは不要である。例えば分割撮像領域75aがR(赤)、分割撮像領域75bがG(緑)および分割撮像領域75cがB(青)に対応させる。サブレンズ72a、72bおよび72c毎に3眼光学系11から入射される入射光は、それぞれが各色の波長毎(色毎)に選択的に透過または反射されて入射され、各サブレンズの直下に存在する分割撮像領域75a、75bおよび75c上にそれぞれ結像される。これらのサブレンズ72aはR(赤)、サブレンズ72bはG(緑)、サブレンズ72cはB(青)の入射光を結像する。さらに、遮光マスク74によって、互いに隣接するサブカメラへの迷光は遮断される。
【0045】
以上により、本実施形態1によれば、多眼を構成する例えば3つの多眼光学系11に対して、元の入射光を例えば3つの段数のビームスプリッタ2〜4などを用いて、入射光の同じ画像光から、各色(例えば3原色のR、G、B)に応じた周波数範囲(光波長範囲)に対応して複数(例えば3原色のR、G、B)に分割/分離する。この多眼光学系11から複数の波長領域光がそれぞれ入射されて、各波長領域光をそれぞれ光電変換して撮像する多眼撮像装置7が多眼光学系11直下に対応して配設されている。
【0046】
したがって、多眼を構成する三つの光学系に対して、元の入射光を三つのビームスプリッタ2〜4を用いて、同じ入射光画像から、各色(3原色;RGB)に応じた、図3(a)に示す周波数範囲(波長範囲)に対応して複数(3原色;RGB)に分割/分離することにより、視差を生じない多眼カメラ装置1を得ることができる。
【0047】
なお、本実施形態1では、最終の光学系として、第3ビームスプリッタ4を用いたが、これに限らず、最終の光学系としては反射だけでよいため、反射鏡、即ちミラーであってもプリズムであってもよい。
【0048】
なお、本実施形態1では、第1〜第3ビームスプリッタ2〜4に波長域分離機能を持たせて、被写体からの入射光を三つの波長領域光、即ち、RGBの三原色光に分割/分離する3眼光学系11を構成し、カラーフィルタを用いなかったが、これに限らず、カラーフィルタを用いて、入射する光線波長を制限することもできる。各光学系について色収差を考慮する必要がなくなり、レンズ枚数削減の高解像化を実現することができる。カラーフィルタとして、例えばベイヤー色配列(RGBの三原色)のカラーフィルタを用いることができる。
【0049】
(実施形態2)
上記実施形態1では、図3(a)に示すように3原色(RGB)の光波長範囲に対応して、三つのビームスプリッタ2〜4を用いて、同じ入射光画像から三つのR,G,B成分に分割/分離したが、本実施形態2では、図3(b)に示すように3原色(RGB)であっても、高い緑(G)感度に合わせて、3原色(R、G、G、B)の光波長範囲に対応して、4つのビームスプリッタ2〜4および14を用いて、同じ入射光画像から4つのR、G、G、B成分に分割/分離する場合について説明する。
【0050】
図4は、本発明の実施形態2における多眼カメラ装置の要部構成例を示すブロック図である。
【0051】
図4において、本実施形態1の多眼カメラ装置1Aは、被写体からの入射光を複数(ここでは4つ)の波長領域光に分割する多眼光学系としての4眼光学系11Aと、4眼光学系11Aから複数の波長領域光がそれぞれ入射されて、各波長領域光をそれぞれ光電変換して撮像する多眼撮像装置(多眼撮像モジュール)としての4眼撮像装置7Aとを有している。
【0052】
4眼光学系11Aは、一つの画像光から4つの画像光に分割することにより視差を生じない多眼光学系を構成し、被写体からの入射光Lが入射され、第1波長領域の透過光L1を出射し、それ以外の波長領域の反射光L11を反射する第1ビームスプリッタ2と、第1ビームスプリッタ2からの反射光L11が入射され、第2波長領域の反射光L2を出射し、それ以外の波長領域の透過光L12を透過する第2ビームスプリッタ14と、第2ビームスプリッタ14からの透過光L12が入射され、第3波長領域の反射光L3を出射し、それ以外の波長領域の透過光L13を透過する第3ビームスプリッタ15と、第3ビームスプリッタ15からの透過光L13が入射され、その透過光L13の一部または全部が反射される第4ビームスプリッタ3とを有している。
【0053】
ビームスプリッタ2、14、15および4は、同一の入射光を複数(ここでは赤、緑、緑、青の三原色;緑の波長域を二つに分割)に分離し、多眼を構成する各色毎の光学系にそれぞれ分割する。ビームスプリッタ2、14、15および4は、その後段において、カラーフィルタが不要であって、センサ構造の簡素化を図るべく、ビームスプリッタ2、14、15および4の反射と透過に対して波長依存性を付与し、多眼を構成する光学系毎に受光する波長を赤(R)、緑(G1とG2)、青(B)の三原色など、取得する色情報で複数(ここでは4つ)に分割している。
【0054】
4眼撮像装置7Aは、第1〜4ビームスプリッタ2、14、15および4からの透過光および各反射光がそれぞれ入射される一または複数のレンズ5と、レンズ5からの入射光がそれぞれ集光されて入射される撮像センサ6との組みを4組分有している。
【0055】
撮像センサ6は、高解像度のデジタルカメラを実現するべく、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子で構成されている。
【0056】
図5は、図4の多眼カメラ装置1Aにおける4眼撮像装置7Aの一例を示す縦断面図である。
【0057】
図5において、4眼撮像装置7Aは、開口絞りアレイ71と、レンズアレイ72と、透明ガラス基板などの平面板73と、遮光マスク74と、撮像素子基板75とをこの順次に積層した4眼撮像モジュールである。
【0058】
レンズアレイ72は、サブ撮像モジュール毎にサブレンズ72a、72b、72cおよび72dのそれぞれを備えている。
【0059】
撮像素子基板75は、遮光マスク74により、分割撮像領域75a、75b、75cおよび75dに4分割されて互いに隔離されており、ここでは、それぞれ単色のカラーフィルタは不要である。例えば分割撮像領域75aがR(赤)、分割撮像領域75bがG1(緑)、分割撮像領域75cがG2(緑)および分割撮像領域75dがB(青)に対応させる。サブレンズ72a、72b、72cおよび72d毎に4眼光学系11Aから入射される入射光は、それぞれが各色の波長毎(色毎)に選択的に透過または反射されて入射され、各サブレンズの直下に存在する分割撮像領域75a、75b、75cおよび75d上にそれぞれ結像される。これらのサブレンズ72aはR(赤)、サブレンズ72bはG1(緑)、サブレンズ72cはG2(緑)、サブレンズ72dはB(青)の入射光を結像する。さらに、遮光マスク74によって、互いに隣接するサブカメラへの迷光は遮断される。なお、G(緑)の波長域を、G1(緑)とG2(緑)の二つに分割している。
【0060】
この場合、レンズアレイ72のサブレンズ72a、72b、72cおよび72dはそれぞれ、各サブレンズに対応した各色の波長範囲の波長特性に合わせたレンズ焦点距離を有している。例えばサブレンズ72a、72b、72cおよび72dの被写体側レンズ面(上側レンズ面)から、対応する撮像素子基板75の撮像領域75a、75b、75cおよび75dのそれぞれまでの距離を、所定波長範囲の波長毎(色毎)のレンズ焦点距離に合わせて最適化している。このレンズ焦点距離は、レンズアレイ72のサブレンズ72a、72b、72cおよび72dのそれぞれ毎の厚みによって最適化かされている。
【0061】
以上により、本実施形態2によれば、多眼を構成する例えば4つの多眼光学系11Aに対して、元の入射光を例えば4つの段数のビームスプリッタ2、14、15および4などを用いて、入射光の同じ画像光から、各色(例えば3原色のR、G1、G2、B)に応じた周波数範囲(光波長範囲)に対応して複数(例えば3原色のR、G1、G2、B)に分割/分離する。この多眼光学系11Aから複数の波長領域光がそれぞれ入射されて、各波長領域光をそれぞれ光電変換して撮像する多眼撮像装置7Aが多眼光学系11A直下に対応して配設されている。
【0062】
したがって、多眼を構成する4つの光学系に対して、元の入射光を4つのビームスプリッタ2、14、15および4を用いて、同じ入射光画像から、各色(3原色;R、G1、G2、BでGが2つ)に応じた、図3(b)に示す周波数範囲(波長範囲)に対応して複数(3原色;R、G1、G2、B)に分割/分離することにより、視差を生じない多眼カメラ装置1Aを得ることができる。しかも、色毎に、その色に応じた焦点距離の正確なレンズを用いて、色収差をなくして高解像度とすることができる。したがって、高解像度と薄型化が両立した4眼式カメラ装置1Aを実現することができる。
【0063】
なお、本実施形態2では、最終段の光学系として、第4ビームスプリッタ4を用いたが、これに限らず、最終の光学系としては反射だけでよいため、反射鏡、即ちミラーであってもプリズムであってもよい。
【0064】
なお、本実施形態2では、第1〜第4ビームスプリッタ2、14、15および4に波長域分離機能を持たせて、被写体からの入射光を4つの波長領域光、即ち、R、G1、G2、Bの三原色光に分割/分離する4眼光学系11Aを構成し、カラーフィルタを用いなかったが、これに限らず、カラーフィルタを用いて、入射する光線波長を制限することもできる。各光学系について色収差を考慮する必要がなくなり、レンズ枚数削減の高解像化を実現することができる。カラーフィルタとして、例えばベイヤー色配列(RGBの三原色)のカラーフィルタを用いることができる。
【0065】
また、上記実施形態1では、多眼光学系が入射光の同じ画像光から分割する複数の波長範囲は、赤、緑および青の三原色の波長範囲とし、本実施形態2では、緑の波長範囲を2分割した赤、緑、緑および青の三原色の波長範囲としたが、これらに限らず、複数の波長範囲として、シアン、マゼンダおよびイエローの補色の波長範囲であってもよい。
【0066】
(実施形態3)
図6は、本発明の実施形態3として、本発明の実施形態1、2の多眼カメラ装置1または1Aを撮像部に用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【0067】
図6において、本実施形態3の電子情報機器90は、上記実施形態1、2の多眼カメラ装置1または1Aからの撮像信号を所定の信号処理を行ってカラー画像信号を得る固体撮像装置91と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を記録用に所定の信号処理した後にデータ記録可能とする記録メディアなどのメモリ部92と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を表示用に所定の信号処理した後に液晶表示画面などの表示画面上に表示可能とする液晶表示装置などの表示部93と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を通信用に所定の信号処理をした後に通信処理可能とする送受信装置などの通信部94と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を印刷用に所定の印刷信号処理をした後に印刷処理可能とするプリンタなどの画像出力部95とを有している。なお、この電子情報機器90として、これに限らず、固体撮像装置91の他に、メモリ部92と、表示部93と、通信部94と、プリンタなどの画像出力部95とのうちの少なくともいずれかを有していてもよい。
【0068】
この電子情報機器90としては、前述したように例えばデジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、監視カメラ、ドアホンカメラ、車載用後方監視カメラなどの車載用カメラおよびテレビジョン電話用カメラなどの画像入力カメラ、スキャナ装置、ファクシミリ装置、カメラ付き携帯電話装置および携帯端末装置(PDA)などの画像入力デバイスを有した電子機器が考えられる。
【0069】
したがって、本実施形態3によれば、この固体撮像装置91からのカラー画像信号に基づいて、これを表示画面上に良好に表示したり、これを紙面にて画像出力部95により良好にプリントアウト(印刷)したり、これを通信データとして有線または無線にて良好に通信したり、これをメモリ部92に所定のデータ圧縮処理を行って良好に記憶したり、各種データ処理を良好に行うことができる。
【0070】
なお、本実施形態1、2では、特に説明しなかったが、被写体からの入射光を複数の波長領域の光に分割する3眼光学系11または4眼光学系11Aと、3眼光学系11または4眼光学系11Aから複数の波長領域光がそれぞれ入射されて、各波長領域光をそれぞれ光電変換して撮像する3眼撮像装置7または4眼撮像装置7とを有することにより、ハード的に光学系間の視差のない多眼カメラ装置1または1Aを得ることができる本願発明の目的を達成することができる。
【0071】
以上のように、本発明の好ましい実施形態1〜3を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態1〜3に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態1〜3の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、被写体からの画像光を光電変換して撮像するCCD(Charge Coupled Device)およびCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)に代表される固体撮像素子を用いた多眼カメラ装置および、この多眼カメラ装置を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばデジタルビデオカメラおよびデジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、監視カメラなどの画像入力カメラ、スキャナ装置、ファクシミリ装置、テレビジョン電話装置、カメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器の分野において、多眼を構成する例えば3つまたは4つの光学系に対して、元の入射光を例えば3つまたは4つ、それ以上の段数のビームスプリッタなどを用いて、入射光の同じ画像光から、各色(例えば3原色のR、G、BまたはR、G1、G2、B)に応じた周波数範囲(光波長範囲)に対応して複数(例えば3原色のR、G、BまたはR、G1、G2、B)に分割/分離することによって、視差を生じない多眼カメラ装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0073】
1、1A 多眼カメラ装置
2 第1ビームスプリッタ
3 第2ビームスプリッタ
4 第3ビームスプリッタ
5 集光レンズ
6 撮像センサ
7 3眼撮像装置(3眼撮像モジュール)
7A 4眼撮像装置(4眼撮像モジュール)
71 開口絞りアレイ
72 レンズアレイ
72a、72b、72c、72d サブレンズ
73 平面板(透明ガラス基板)
74 遮光マスク7
75 撮像素子基板
75a、75b、75c、75d 分割撮像領域
11、11A 多眼光学系
12、12A 多眼撮像装置(多眼撮像モジュール)
L 入射光
L1、L12、L13、 透過光
L11、L2、L3、L4 反射光
90 電子情報機器
91 固体撮像装置
92 メモリ部
93 表示手段
94 通信手段
95 画像出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの入射光を複数の波長領域の光に分割する多眼光学系と、該多眼光学系から複数の波長領域光がそれぞれ入射されて、各波長領域光をそれぞれ光電変換して撮像する多眼撮像装置とを有する多眼カメラ装置。
【請求項2】
前記多眼光学系は、複数段のビームスプリッタの反射と透過に対して波長依存性を付与して前記入射光の同じ画像光を複数の波長範囲の光に分割する請求項1に記載の多眼カメラ装置。
【請求項3】
前記複数の波長範囲は、赤、緑および青の三原色の波長範囲かまたは、該緑の波長範囲を2分割した赤、緑、緑および青の三原色の波長範囲、シアン、マゼンダおよびイエローの補色の波長範囲である請求項2に記載の多眼カメラ装置。
【請求項4】
前記多眼光学系が3眼光学系または4眼光学系で構成され、前記多眼撮像装置が3眼撮像装置または4眼撮像装置で構成されている請求項3に記載の多眼カメラ装置。
【請求項5】
前記多眼光学系は、前記被写体からの入射光が入射され、第1波長領域の透過光を出射し、それ以外の波長領域の反射光を反射する第1ビームスプリッタと、該第1ビームスプリッタからの反射光が入射され、第2波長領域の反射光を出射し、それ以外の波長領域の透過光を透過する第2ビームスプリッタと、該第2ビームスプリッタからの透過光が入射され、該透過光の一部または全部が反射される第3ビームスプリッタとを有し、該入射光の同じ画像光から3つの画像光に分割される請求項2または4に記載の多眼カメラ装置。
【請求項6】
前記多眼光学系は、前記被写体からの入射光が入射され、第1波長領域の透過光を出射し、それ以外の波長領域の反射光を反射する第1ビームスプリッタと、該第1ビームスプリッタからの反射光が入射され、第2波長領域の反射光を出射し、それ以外の波長領域の透過光を透過する第2ビームスプリッタと、該第2ビームスプリッタからの透過光が入射され、第3波長領域の反射光を出射し、それ以外の波長領域の透過光を透過する第3ビームスプリッタと、該第3ビームスプリッタからの透過光が入射され、該透過光の一部または全部が反射される第4ビームスプリッタとを有し、該入射光の同じ画像光から4つの画像光に分割される請求項2または4に記載の多眼カメラ装置。
【請求項7】
最終段の光学系は、前記ビームスプリッタに代えて、ミラーまたはプリズムで構成されている請求項2に記載の多眼カメラ装置。
【請求項8】
前記多眼撮像装置は、前記多眼光学系からの透過光および反射光がそれぞれ入射される一または複数枚積層されたレンズアレイと、該レンズアレイからの入射光がそれぞれ集光される撮像センサとの組みを複数組分有する請求項1に記載の多眼カメラ装置。
【請求項9】
前記撮像センサは、CCDセンサまたはCMOSセンサで構成された固体撮像素子である請求項8に記載の多眼カメラ装置。
【請求項10】
前記撮像センサには、前記波長領域に対応した色のカラーフィルタが設けられているかまたは該カラーフィルタが不要である請求項8に記載の多眼カメラ装置。
【請求項11】
前記レンズアレイの平面視レンズ数は、前記光学系の数に対応し、一列に配列された複数のサブレンズから構成され、該サブレンズは、前記波長範囲の波長特性に合わせたレンズ焦点距離を有している請求項8に記載の多眼カメラ装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の多眼カメラ装置を画像入力デバイスとして撮像部に用いた電子情報機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−254265(P2011−254265A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126342(P2010−126342)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】