説明

媒体加圧装置および画像形成装置

【課題】
媒体に付与する圧力を変更可能とし、かつ、大型化が抑えられた媒体加圧装置を提供する。
【解決手段】
媒体加圧装置において、回転し、記録媒体を接触部に挟んで通過させる一対の回転ロールと、一方のロールに、このロールを他方のロールに押し付ける圧力を付与する圧力付与部材と、接触部よりも前記記録媒体搬送方向下流側に配置された駆動ロールと、記録媒体を駆動ロールとの間に挟んで搬送する中空の従動ロールと、従動ロールの中空を貫通して延び、回転駆動力を受ける軸部材と、軸部材に固定されるとともに軸部材の回転とともに回転して圧力付与部材を押すことにより、一方のロールを他方のロールに押し付ける圧力を変更するカム部材とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体加圧装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱ローラと加圧ローラを備えた定着装置において、加熱ローラを保持するブラケットと、加圧ローラを保持してブラケットに移動可能に支持された加圧レバーと、ブラケットに回転可能に支持され、加圧ローラを押すことで加圧ローラの加圧力を調整するカムとを備えた構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この定着装置で画像が定着された用紙は、排出用のロールによって外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−25571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、媒体に付与する圧力を変更可能とし、かつ、大型化が抑えられた媒体加圧装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る媒体加圧装置は、
互いに接触する接触部を形成しながら回転し、記録媒体をこの接触部に挟んで通過させる一対の回転体と、
上記一対の回転体のうちの一方の回転体に対し、この一方の回転体を他方の回転体に向けて押し付ける圧力を付与する圧力付与部材と、
上記接触部よりも上記記録媒体搬送方向下流側に配置され且つ、駆動力を受けて回転することによりこの記録媒体に搬送駆動力を伝える駆動ロールと、
上記駆動ロールに接触して配置され且つこの駆動ロールの回転に従動して回転することにより上記記録媒体をこの駆動ロールとの間に挟んで搬送する従動ロールと、
駆動力を受けて回転する軸部材と、
上記軸部材に固定されるとともに上記圧力付与部材に作用し、この軸部材の回転に伴って上記一方のロールを上記他方のロールに向けて押し付ける圧力を変更するカム部材と
を備え、
上記従動ロールは内部が中空状に形成されており、上記軸部材は当該中空状に形成された空間を貫通して設けられていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る媒体加圧装置は、上記記録媒体を排出する排出口が形成された筐体を備え、
上記駆動ロールおよび上記従動ロールは、上記排出口近傍に設けられ、上記記録媒体を排出する排出ロールであることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る媒体加圧装置は、上記従動ロール内部の前記中空状に形成された空間は、上記軸部材の外径に、上記一対の回転ロールの間を通過し得る記録媒体のうちの最大の厚みを有する記録媒体の厚みを加えた径よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る画像形成装置は、
互いに接触する接触部を形成して回転し、画像が形成された記録媒体をこの接触部に挟んで通過させることによりこの画像を該記録媒体上に定着させる一対の回転体と、
上記一対の回転体のうちの一方の回転体に対し、この一方の回転体を他方の回転体に向けて押し付ける圧力を付与する圧力付与部材と、
上記接触部よりも上記記録媒体搬送方向下流側に配置され且つ、駆動力を受けて回転することによりこの記録媒体に搬送駆動力を伝える駆動ロールと、
上記駆動ロールに接触して配置され且つこの駆動ロールの回転に従動して回転することにより上記記録媒体をこの駆動ロールとの間に挟んで搬送する従動ロールと、
駆動力を受けて回転する軸部材と、
上記軸部材に固定されるとともに上記圧力付与部材に作用し、この軸部材の回転に伴って上記一方のロールを上記他方のロールに向けて押し付ける圧力を変更するカム部材と
を備え、
上記従動ロールは内部が中空状に形成されており、上記軸部材は当該中空状に形成された空間を貫通して設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る媒体加圧装置は、記録媒体に付与する圧力を変更可能とし、かつ、装置の大型化が抑えられる。
【0010】
請求項2に係る媒体加圧装置は、記録媒体に付与する圧力を変更可能とし、かつ、排出口までの寸法の大型化が抑えられる。
【0011】
請求項3に係る媒体加圧装置は、本構成を有しない場合に比較して、厚みの異なる種々の記録媒体に適合した構成となっている。
【0012】
請求項4に係る画像形成装置は、記録媒体に付与する圧力を変更可能とし、かつ、装置の大型化が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】定着装置の構造を示す断面図である。
【図3】図2に示す定着装置の斜視図である。
【図4】通常加圧状態を示す図である。
【図5】圧力解除状態を示す図である。
【図6】排出ロールの支持構造を示す斜視図である。
【図7】図6に示す支持構造を、用紙の搬送方向下流側から見た図である。
【図8】図7に示す排出ロールの支持構造のA−A線断面を示す断面図である。
【図9】図8に示す排出ロール、および、ばねを示す斜視図である。
【図10】図1に示す画像形成装置の定着装置とその周辺部分を示す断面図である。
【図11】用紙の反転搬送を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す構成図である。
【0016】
図1に示す画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)および、ブラック(K)の各色毎に画像形成部10Y,10M,10C,10Kを並列的に配置してなるタンデム型のカラープリンタであり、単色の画像をプリントすることができるほか、4色のトナー像からなるフルカラーの画像をプリントすることができる。
【0017】
画像形成装置1は、露光光を画像形成部10Y,10M,10C,10Kのそれぞれに照射する露光器20と、CMYK各色のトナーを収容するトナーカートリッジ18Y,18M,18C,18Kと、各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kからトナー像が転写される中間転写ベルト30と、中間転写ベルト30からトナー像を用紙に転写する二次転写器50と、トナーを用紙に定着する定着装置60と、中間転写ベルト30からトナーを回収するベルトクリーナ70と、用紙を搬送する用紙搬送部80と、用紙を収容する用紙収容器Cと、画像形成装置1の各部を制御する制御部1Aとを備えている。
【0018】
4つの画像形成部10Y,10M,10C,10Kは、ほぼ同様の構成を有しているため、これらを代表してイエローに対応する画像形成部10Yを取り上げて説明すると、画像形成部10Yは、感光体11Yと、感光体11Yの表面を帯電させる帯電器12Yと、感光体11Y表面を露光後に帯電トナーで現像する現像器14Yと、トナー像を中間転写ベルト30に転写する一次転写器15Yと、転写後に感光体11Yの表面を清掃する感光体クリーナ16Yとを備えている。感光体11Yは円筒状の表面を有しており、表面に形成される像を保持して、円筒の軸周りである矢印a方向に回転する。
【0019】
露光器20は、外部から供給される画像信号に基づくレーザ光を発光する発光器21と、発光器21から発光したレーザ光で感光体11Y,11M,11C,11Kを走査するためのポリゴンミラー22を備えている。
【0020】
中間転写ベルト30は、ベルト支持ロール31,32,33,34によって支持された無端の帯状部材であり、画像形成部10Y,10M,10C,10K、および、二次転写器50を経由する矢印bに示す方向に循環移動する。中間転写ベルト30は、画像形成部10Y,10M,10C,10Kで形成された各色のトナー像を保持する。
【0021】
二次転写器50は、ベルト支持ロール31〜34の一つであるバックアップロール34との間に中間転写ベルト30および用紙を挟んで回転するロールであり、中間転写ベルト30上のトナー像を用紙上に転写する。ベルトクリーナ70は、中間転写ベルト30にブレードを接触させて中間転写ベルト30上のトナーを掻き取る。
【0022】
定着装置60は、加熱ロール61および加圧ロール62を備えており、定着前のトナー像が形成された用紙を挟んで通過させることによりトナー像を用紙上に定着させる。
【0023】
用紙搬送部80は、用紙を用紙収容器Cから取り出し、二次転写器50および定着装置60を経由する用紙搬送路rに沿って搬送するものであり、用紙収容器Cに収容された用紙を取り出すピックアップロール81、取り出された用紙を捌く捌きロール82、用紙を搬送する搬送ロール83、用紙を二次転写器50に搬送するレジストレーションロール84、用紙を外部に排出する排出ロール86,87、および、両面プリントの際に用紙を搬送する反転搬送ロール88,89を備えている。排出ロール86,87は、定着装置60の中に組み込まれており、定着装置60と一体で画像形成装置1本体に対し着脱される。
【0024】
図1に示す画像形成装置1の基本動作を説明すると、イエローの画像形成部10Yでは、感光体11Yが矢印a方向に回転駆動され、感光体11Yの表面に帯電器12Yによって電荷が付与される。このことは、イエロー以外の色に対応する画像形成部10M,10C,10Kでも同様である。露光器20は、感光体11Y,11M,11C,11Kに、画像信号中の各色に対応するデータに応じた露光光をそれぞれ照射する。代表としてイエロー(Y)について説明すると、露光器20は、外部から供給される画像信号のうちのイエローに対応する画像信号に基づく露光光を感光体11Yの表面に照射することで、感光体11Yの表面に静電潜像を形成する。現像器14Yは、静電潜像をイエローのトナーで現像することで、トナー像を形成する。現像器14Yには、トナーカートリッジ18Yからトナーが供給されている。感光体11Yは、表面に形成されたイエローのトナー像を保持して回転する。感光体11Yの表面に形成されたトナー像は、感光体11Y表面と中間転写ベルト30との間に転写用のバイアス電位を与える一次転写器15Yによって中間転写ベルト30に転写される。転写後、感光体11Yに残留したトナーは、感光体クリーナ16Yによって回収・除去される。
【0025】
中間転写ベルト30は、支持ロール31〜34によって矢印b方向に巡回移動されており、イエロー以外の色に対応する画像形成部10M,10C,10Kは、画像形成部10Yと同様にしてそれぞれの色に対応するトナー像を形成し、中間転写ベルト30に、画像形成部10Yで転写されたトナー像に重ねて、それぞれの色のトナー像を転写していく。
【0026】
一方、用紙収容器C内の用紙Pは、ピックアップロール81によって取り出され、捌きロール82、搬送ロール83、およびレジストレーションロール84によって用紙搬送路rを二次転写器50に向かう矢印c方向に搬送される。用紙Pは、レジストレーションロール84によって、中間転写ベルト30上にトナー像が転写されていくタイミングに合わせて、二次転写器50に送り込まれる。二次転写器50は、中間転写ベルト30と用紙との間に転写用のバイアス電位を与えることによって、中間転写ベルト30のトナー像を用紙に転写する。二次転写器50によって、トナー像が転写された用紙は定着装置60に搬送され、用紙上に転写されたトナー像が定着される。このようにして、用紙上に画像が形成される。画像が形成された用紙は排出ロール86,87によって排出口1Bから、画像形成装置1の上部に設けられた排出台1Cの上に排出される。この一方で、二次転写器50による転写後、中間転写ベルト30に残留したトナーは、ベルトクリーナ70によって除去される。
【0027】
また、画像が形成された面の裏面にも画像を形成する両面プリントの場合には、排出ロール86,87が排出口1Bから用紙を途中まで排出した後、逆向きに搬送する。逆向きに搬送された用紙は反転搬送ロール88,89によって反転搬送路r’を経由して搬送される。搬送された用紙は、レジストレーションロール84から、表裏反転した状態で二次転写器50に送り込まれ、裏面にも画像が形成される。
【0028】
[定着装置]
ここで、図1に示す画像形成装置1を構成する定着装置60について説明する。定着装置60は、本発明の媒体加圧装置の一実施形態である。
【0029】
図2は、定着装置60の構造を示す断面図である。
【0030】
定着装置60は、加熱ロール61、加圧ロール62、および排出ロール86,87に加え、用紙を案内する用紙案内部材63A,63B,63C,63D、および、定着装置60の構造を支持する支持フレーム64(64A,64B,64C,64D)を備えている。支持フレーム64は、各ロールの両端部分で支持する2つのロール支持フレーム64A,64Bと、加熱ロール61および加圧ロール62の回転軸に沿った軸方向X(図3参照)に延び、それぞれが2つのロール支持フレーム64A,64Bに連結された2つの連結フレーム64C,64Dと、を有する。図2には、2つのロール支持フレーム64A,64Bのうちの、一方のロール支持フレーム64Aが示されている。
【0031】
加熱ロール61は、円筒状芯金の外周面に耐熱性離型層が形成されてなる、中空円筒状の部材である。加熱ロール61の内部には、熱源であるハロゲンランプ612が配備されており、ハロゲンランプ612からの熱によって、加熱ロール61の周面が加熱されている。加熱ロール61は、ロール支持フレーム64Aに対し、図示しない軸受け部材を介して回転自在に支持されており、不図示の駆動モータから駆動力が伝達されて矢印dに示す方向に回転する。
【0032】
加圧ロール62は、円筒状芯金の外周面に例えばゴムからなる弾性体層が形成されてなる、中空円筒状の部材である。加圧ロール62は、加圧レバー65に、軸受部材62Aを介して回転自在に支持されている。
【0033】
ここで、加熱ロール61および加圧ロール62が、本発明にいう一対の回転体の一例に相当する。また加圧レバー65が、本発明にいう圧力付与部材の一例に相当する。
【0034】
図3は、図2に示す定着装置の斜視図である。図3には、定着装置60から、用紙案内部材63A〜63C、連結フレーム64C,64D、および排出ロール86,87を取り除いた構造が示されている。以降は、図2および図3の双方を参照して説明を続ける。
【0035】
加熱ロール61を支持するロール支持フレーム64A,64Bは、加熱ロール61の軸方向Xにおける両端部分に配置されている。加圧レバー65も、加圧ロール62の軸方向Xにおける両端部分に一対配置されており、加圧ロール62を軸方向Xの両端部分で支持している。
【0036】
加圧レバー65は、例えば金属板を切断および曲げ加工することにより形成された部材であり、支持フレーム64A,64Bに対し回転軸65aを中心として回転自在に支持されている。加圧レバー65が加圧ロール62を加熱ロール61に押し当てる向きに回転することで、加熱ロール61および加圧ロール62が互いに接触する接触部Nが形成される。
【0037】
加熱ロール61および加圧ロール62は、矢印d,eに示す向きに回転し、用紙を接触部Nに挟んで通過させる。加熱ロール61および加圧ロール62は、通過する用紙上のトナー像を圧力下で加熱して溶融させ、用紙上に定着させる。
【0038】
加圧レバー65と支持フレーム64A,64Bとの間には、ばね66が取り付けられている。支持フレーム64A,64Bに支持された加圧レバー65には、ばね66によって、加圧ロール62を加熱ロール61に押し付ける向きの力が付与されている。つまり、加圧レバー65は、加圧ロール62を加熱ロール61に接触部Nを介して押し付ける圧力を加圧ロール62に付与している。
【0039】
また、定着装置60には、回転して加圧レバー65を押す一対のカム部材67と、このカム部材67が固定された軸部材68とが備えられている。カム部材67は例えば樹脂材料で形成されており、軸部材68は例えば金属材料で形成されている。軸部材68は、図2に示すように、中空の排出ロール87が有する中空を貫通して延びているが、軸部材68と排出ロール87とは接していない。排出ロール87の支持構造については後に説明する。
【0040】
図3に示すように、軸部材68は、軸方向Xにおける両端側でロール支持フレーム64A,64Bに支持されている。軸部材68は、モータM1(図7参照)からの回転駆動力を受けて回転する部材であり、軸部材68の一端には、回転駆動力を受ける歯車681が固定されており、他端には、角度指示片682が固定されている。定着装置60には、角度指示片682が基準位置にあることを検知する検知器Sが設けられており、検知器Sは、検知結果の信号を制御部1A(図1参照)に表す信号を出力する。制御部1Aは、検知器Sからの信号によって、カム部材67が基準位置の角度(ホームポジション)まで回転したことを検知する。
【0041】
カム部材67は、軸部材68の回転とともに回転して加圧レバー65を押すことにより、加圧ロール62を加熱ロール61に押し付ける圧力を変更する。
【0042】
図4および図5は、図2に示す定着装置60のうちの、加熱ロール61、加圧ロール62、加圧レバー65、カム部材67、および軸部材68を示す断面図である。図4は、通常加圧状態を示す図であり、図5は、圧力解除状態を示す図である。
【0043】
図4に示す通常加圧状態は、画像形成装置1が用紙に画像を形成する状態である。通常加圧状態では、カム部材67は、加圧レバー65から離れている。通常加圧状態で加圧レバー65は、ばね66の弾性力によって、加圧ロール62に、この加圧ロール62を加熱ロール61に押し付ける圧力を付与する。加圧ロール62は押付力で弾性変形し、接触部Nに用紙を挟み込む面が形成される。
【0044】
図4に示す通常加圧状態から、カム部材67が回転し、加圧レバー65が加圧ロール62を加熱ロール61から引き離すことで、図5に示す圧力解除状態に移行する。移行動作は、より詳細には、制御部1A(図1参照)の制御に基づき図示しないモータから回転駆動力を受けて、軸部材68が予め定めた角度だけ回転する。カム部材67は、軸部材68の回転とともに回転して加圧レバー65に設けられたカムフォロワ65bを押すことで、加圧レバー65を、回転軸65aを中心として、ばね66による圧力に抗して回転させる。この結果、加圧ロール62が加熱ロール61から離れる。
【0045】
図5に示す圧力解除状態は、例えば、用紙詰まりが生じた場合に、加圧ロール62と加熱ロール61との間から用紙を除去するための状態である。圧力解除状態では、加圧ロール62と加熱ロール61とが離れており、接触部Nにおける圧力が解放されて、用紙が手で簡単に抜き取られる。
【0046】
図5に示す圧力解除状態から、カム部材67がさらに回転し、カム部材67が、加圧レバー65から離れる角度まで回転すると、図4に示す通常加圧状態となる。カム部材67が図4に示す角度となったとき、角度指示片682(図3)は検知器Sの位置に到達する。検知器Sからの信号に基づき、制御部1A(図1参照)がカム部材67の回転を基準位置(ホームポジション)で停止させることで、図4に示す通常加圧状態が維持される。
【0047】
[排出ロール]
再び図2を参照して排出ロール86,87について説明する。排出ロール86,87は、接触部Nよりも用紙が搬送される搬送方向cの下流側に配置されている。より詳細には、排出ロール86,87は、搬送方向cにおける加熱ロール61および加圧ロール62の下流側直近の位置に配置されている。また、ロール支持フレーム64A,64B、連結フレーム64C,64D、および用紙案内部材63A,63Bは、定着装置60の筐体としても機能しており、連結フレーム64Cと用紙案内部材63Bとの間には、定着装置60の排出口60Bが形成されている。本実施形態の定着装置60は、用紙に対する最終段の処理を行う装置であり、定着装置60の排出口60Bは、そのまま画像形成装置の排出口1Bに隣接している。排出ロール86,87は、用紙の搬送路r上に配設された用紙を搬送する各部材のうちの排出口60Bに最近接して配置されており、用紙Pを搬送して排出口60Bから排出する。
【0048】
図6は、排出ロール86,87の支持構造を示す斜視図である。また、図7は、図6に示す支持構造を、用紙の搬送方向下流側から見た図である。
【0049】
排出ロール86,87は、駆動側となる排出ロール86と、この駆動側の排出ロール86に駆動されて従動する排出ロール87とで構成されている。以降、一対の排出ロール86,87を互いに区別して、駆動側排出ロール86および従動側排出ロール87と称する。本実施形態の従動側排出ロール87は、下側、すなわち、用紙から見て加熱ロール(図4参照)と同じ、画像が形成された面の側に配置されており、駆動側排出ロール86は、上側、すなわち、従動側排出ロール87の反対側に配置されている。
【0050】
ここで、駆動側排出ロール86が本発明にいう駆動ロールの一例に相当し、従動側排出ロール87が本発明にいう従動ロールの一例に相当する。
【0051】
駆動側排出ロール86は、回転軸861に固定されており、回転軸861を介して、支持フレーム64に支持されている。排出ロール86および回転軸861は、例えば樹脂材料で形成されている。本実施形態では、回転軸861に2つの駆動側排出ロール86が設けられている。また、回転軸861の一端には、図7に示すモータM1からの駆動力を受ける歯車862が固定されている。
【0052】
本実施形態では、2つの駆動側排出ロール86に対応して2つの従動側排出ロール87が設けられている。従動側排出ロール87のそれぞれは、例えば樹脂材料で形成された中空の概略円筒状であり、外径が大きい大径部87aと、大径部87aを挟んで両側に設けられた、外径が小さい小径部87bとからなる。従動側排出ロール87は大径部87aで駆動側排出ロール86と接している。図6および図7には、従動側排出ロール87を貫通して延びる、カム部材67の軸部材68も示されているが、従動側排出ロール87は、軸部材68に支持されておらず、軸部材68と接触もしていない。従動側排出ロール87は、連結フレーム64Cの上部に設けられた、周面押さえ部材691,ばね692、および、ずれ留め部材693によって、連結フレーム64Cの上に支持されている。連結フレーム64Cは、T字状の断面を有し上部に平坦面が形成されており、周面押さえ部材691およびずれ留め部材693は、連結フレーム64Cの平坦面から上向きに突出して設けられている。周面押さえ部材691,ばね692、および、ずれ留め693は、従動側排出ロール87に設けられた2つの小径部87bのそれぞれに接触している。
【0053】
図8は、図7に示す排出ロール86,87の支持構造のA−A線断面を示す断面図である。
【0054】
周面押さえ部材691は、従動側排出ロール87に接する側が、二股状に分かれた形状を有しており、二股状に分かれた部分で、従動側排出ロール87を押さえている。周面押さえ部材691は、より詳細には2つの小径部87bのそれぞれを、駆動側排出ロール86と従動側排出ロール87とが対向する対向方向Uおよび軸方向X(図6参照)の双方と交わる方向Wの両側から押さえている。この方向Wは、駆動側排出ロール86および従動側排出ロール87によって用紙が搬送される方向であり、以降、搬送方向Wと称する。従動側排出ロール87は、周面押さえ部材691によって搬送方向Wへの移動が規制され、対向方向Uについては変位自在に支持されている。
【0055】
ばね692は、従動側排出ロール87と連結フレーム64Cとの間に挟み込まれており、反発力によって、従動側排出ロール87、より詳細には2つの小径部87bの双方を、駆動側排出ロール86に向かって押し付けている。
【0056】
図9は、図8に示す排出ロール86,87、および、ばね692を示す斜視図である。ばね692は、例えば1本の鋼線を曲げ加工して形成されたものであり、コイルばねの両端を直線状に延長させたほぼV字状の部分が、2つ並んでつながった形状を有している。この形状によって、従動側排出ロール87が有する2つの小径部87bの双方を、1つのばね692が、倒れることなく安定した姿勢で押し付ける。
【0057】
また、図6および図7に示す、ずれ留め部材693は、従動側排出ロール87の軸方向Xにおける端に接しており、従動側排出ロール87を軸方向X両側から押さえることで、従動側排出ロール87の軸方向Xへの移動を規制している。このようにして、従動側排出ロール87は、周面押さえ部材691およびずれ留め部材693によって、連結フレーム64Cに支持されており、ばね692によって、駆動側排出ロール86に向かって押し付けられている。
【0058】
この支持構造によって支持された従動側排出ロール87は、駆動側排出ロール86からの駆動力に応じて双方向に回転し得る。したがって、駆動側排出ロール86および従動側排出ロール87は、制御部1Aの制御に基づくモータM2(図7参照)の回転方向に応じて、双方向に回転し、用紙を、排出口60Bから外に排出する方向、およびその逆方向のいずれの方向にも搬送する。
【0059】
本実施形態の定着装置60では、図6に示すように従動側排出ロール87の中空を、カム部材67の軸部材68が貫通して延びた構造を有しており、カム部材67の回転によって、加圧ロール62および加熱ロール61(図2参照)が用紙に付与する圧力が変更される。
【0060】
ここで、仮に、カム部材が従動側排出ロールを貫通せず、排出ロールと並んだ構造の場合には、用紙が通過する向きに沿って、加圧ロール62および加熱ロール61の下流側に、カム部材およびその軸部材が配置され、そのさらに下流側に排出ロールが配置されることとなる。したがって、カム部材およびその軸部材と、排出ロールとが、用紙の通過する方向に沿ってほぼ直列に並んで配置されるため、装置が大型化する。
【0061】
本実施形態の定着装置60では、カム部材67の軸部材68が従動側排出ロール87の中空を貫通して延びた構造を有するため、加圧ロール62および加熱ロール61の下流側にカム部材67および軸部材68と従動側排出ロール87とが、用紙が通過する向きで同じ位置に配置されている。したがって、軸部材が排出ロールを貫通する構造ではなく、軸部材を排出ロールとは別に設けた構造に比べて、カム部材および軸部材の分装置が小型化する。また、定着装置60は、画像形成装置1(図1参照)において用紙に対する最終段の処理を行う装置であり、加圧ロール62および加熱ロール61と排出ロール87の間が近接して配置されるため、画像形成装置1において、これらの装置が占める空間が小型化することにより、画像形成装置1全体も小型化する。図1に示すように定着装置60が上部に配置された画像形成装置1では、軸部材が排出ロールを貫通する構造ではなく、軸部材を排出ロールとは別に設けた構造に比べて、低背化する。
【0062】
また、従動側排出ロール87が、周面押さえ部材691およびずれ留め部材693によって支持され、ばね692によって駆動側排出ロール86に向かって押し付けられた本実施形態の支持構造では、従動側排出ロール87および駆動側排出ロール86が、厚紙や封筒も含んだ記録媒体の厚みに応じて互いの間隔をあけ、記録媒体を滑らかに搬送する。
【0063】
ここで再び図8を参照して従動側排出ロール87とカム部材67の軸部材68との寸法の関係について説明する。従動側排出ロール87は、軸部材68の外径68rに、従動側排出ロール87および駆動側排出ロール86の間を通過し得る記録媒体のうち最大の厚みを有する記録媒体の厚みを加えた径よりも大きい径87rの中空を有する。例えば、通過し得る記録媒体、すなわち画像形成装置1(図1)が取扱い対象とする最大の記録媒体の厚みが1mmの場合には、従動側排出ロール87は、軸部材68の外径68rに1mmを加えた径よりも大きい径87rの中空を有する。これによって、厚紙や封筒に代表される厚手の記録媒体が通過する場合に、従動側排出ロール87が、従動側排出ロール87の中を貫通する軸部材68と干渉することなく、ばね692の力に抗して、駆動側排出ロール86から離れる向きに移動(変位)する。したがって、厚みの異なる種々の記録媒体が通過しても、従動側排出ロール87と駆動側排出ロール86との間隔が空いて、従動側排出ロール87と軸部材68との不用意な干渉がなく、記録媒体が滑らかに搬送される。
【0064】
[用紙の搬送と反転搬送]
ここで、従動側排出ロール87と駆動側排出ロール86からなる2つの排出ロール86,87による用紙の搬送について説明する。
【0065】
図10は、図1に示す画像形成装置1の定着装置60とその周辺部分を示す断面図である。図10には、定着装置60の周囲を覆う、画像形成装置1のカバー1Dおよび排出台1Cも示されている。
【0066】
定着装置60の加熱ロール61および加圧ロール62は、矢印d,eに示す向きに回転し、用紙を接触部Nに挟んで通過させ、用紙上のトナー像を用紙上に定着させる。2つの排出ロール86,87は互いに接触して矢印f,gに示す向きに回転することで、間に挟んだ用紙Pを搬送して排出口1Bから排出する。このとき用紙Pは、定着装置60内を、用紙案内部材63A〜63Dに案内されて搬送されている。なお、用紙案内部材63A〜63Dのうち、加圧ロール62の上方に配置された用紙案内部材63Aは、搬送方向を切り替えるため支点を中心として回転可能となっており、この用紙案内部材63Aは、用紙Pが排出口1Bから排出する向きに搬送される場合には、用紙により上方に持ち上げられる。
【0067】
何らかの原因で、加熱ロール61および加圧ロール62が用紙Pを挟んだ状態で回転を停止する用紙詰まりの状況となった場合には、図5に示すように、軸部材68の回転に伴いカム部材67が回転し、加圧ロール62が加熱ロール61から離れ、接触部Nにおける圧力が解放されて、用紙Pが手で簡単に抜き取られる。
【0068】
図11は、用紙の反転搬送を説明する図である。
【0069】
排出ロール86,87は、加熱ロール61および加圧ロール62を通過した用紙Pを排出する途中で、用紙Pの後端が加熱ロール61および加圧ロール62から離れた後、矢印h,iに示す向きに逆回転することで、用紙Pを逆向きに搬送する。このとき用紙案内部材63Aは自重で下方に回転し、用紙案内部材63Cの図示しないストッパー部により回転が止められ、用紙Pを、加熱ロール61および加圧ロール62の間とは別の反転搬送路r’に案内する。用紙Pは、カバー1Dと、可動式の用紙案内部材63Aおよび連結フレーム64C,64D、の間に設けられた反転搬送路r’を通って、下方に搬送される。
【0070】
なお、上述した実施形態では、本発明の媒体加圧装置の例として、定着装置を示したが、本発明にいう媒体加圧装置は、記録媒体を加圧する、定着装置以外の装置であってもよい。また、上述した実施形態では、本発明にいう一対の回転体の例として、加熱ロール61および加圧ロール62を示したが、本発明にいう一対の回転体はこれに限られるものではなく、例えば、加熱を行わないロールであってもよい。また、本発明にいう一対の回転体は、ロールに限られず、例えば、無端のベルトであってもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、本発明にいう駆動ロールの例として、駆動側排出ロール86を示し、本発明にいう従動ロールの例として、従動側排出ロール87を示したが、本発明にいう駆動ロールおよび従動ロールは、媒体を外部に排出する排出ロールに限られるものではなく、例えば、排出ロールよりも上流側に配置された搬送用のロールであってもよい。また、上述した実施形態では、駆動側排出ロール86および従動側排出ロール87が定着装置60の一部として組み込まれている例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、駆動ロールおよび従動ロールは、媒体加圧装置とは別の装置に組み込まれたものであってもよい。
【0072】
また、上述した実施形態では、本発明にいうカム部材の例として、通常加圧状態と圧力解除状態との間で回転するカム部材67を示したが、本発明にいうカム部材は、通常加圧状態および圧力解除状態に限られず、例えば、記録媒体の厚みに応じ、通常加圧状態および圧力解除状態の間の位置にすることで、通常加圧状態よりも弱い圧力の状態を生じさせるものであってもよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、本発明にいう画像形成装置の例としてタンデム型のカラープリンタを示したが、本発明にいう画像形成装置はこれに限られず、例えば、中間転写ベルトを有しないモノクロ専用プリンタであってもよい。
【0074】
また、上述した実施形態では、本発明にいう画像形成装置の例としてプリンタを示したが、本発明にいう画像形成装置はプリンタに限られず、例えば、画像読取装置で読み取られたデータに基づいて画像を形成する複写機やファクシミリであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 画像形成装置
60 定着装置
60B 排出口
61 加熱ロール
62 加圧ロール
65 加圧レバー
67 カム部材
68 軸部材
86 駆動側排出ロール
87 従動側排出ロール
N 接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接触する接触部を形成しながら回転し、記録媒体を該接触部に挟んで通過させる一対の回転体と、
前記一対の回転体のうちの一方の回転体に対し、該一方の回転体を他方の回転体に向けて押し付ける圧力を付与する圧力付与部材と、
前記接触部よりも前記記録媒体搬送方向下流側に配置され且つ、駆動力を受けて回転することにより該記録媒体に搬送駆動力を伝える駆動ロールと、
前記駆動ロールに接触して配置され且つ該駆動ロールの回転に従動して回転することにより前記記録媒体を該駆動ロールとの間に挟んで搬送する従動ロールと、
駆動力を受けて回転する軸部材と、
前記軸部材に固定されるとともに前記圧力付与部材に作用し、該軸部材の回転に伴って前記一方のロールを前記他方のロールに向けて押し付ける圧力を変更するカム部材と
を備え、
前記従動ロールは内部が中空状に形成されており、前記軸部材は当該中空状に形成された空間を貫通して設けられていることを特徴とする媒体加圧装置。
【請求項2】
前記記録媒体を排出する排出口が形成された筐体を備え、
前記駆動ロールおよび前記従動ロールは、前記排出口近傍に設けられ、前記記録媒体を排出する排出ロールであることを特徴とする請求項1記載の媒体加圧装置。
【請求項3】
前記従動ロール内部の前記中空状に形成された空間は、前記軸部材の外径に、前記一対の回転ロールの間を通過し得る記録媒体のうちの最大の厚みを有する記録媒体の厚みを加えた径よりも大きいことを特徴とする請求項1または2記載の媒体加圧装置。
【請求項4】
互いに接触する接触部を形成して回転し、画像が形成された記録媒体を該接触部に挟んで通過させることにより該画像を該記録媒体上に定着させる一対の回転体と、
前記一対の回転体のうちの一方の回転体に対し、該一方の回転体を他方の回転体に向けて押し付ける圧力を付与する圧力付与部材と、
前記接触部よりも前記記録媒体搬送方向下流側に配置され且つ、駆動力を受けて回転することにより該記録媒体に搬送駆動力を伝える駆動ロールと、
前記駆動ロールに接触して配置され且つ該駆動ロールの回転に従動して回転することにより前記記録媒体を該駆動ロールとの間に挟んで搬送する従動ロールと、
駆動力を受けて回転する軸部材と、
前記軸部材に固定されるとともに前記圧力付与部材に作用し、該軸部材の回転に伴って前記一方のロールを前記他方のロールに向けて押し付ける圧力を変更するカム部材と
を備え、
前記従動ロールは内部が中空状に形成されており、前記軸部材は当該中空状に形成された空間を貫通して設けられていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−93476(P2012−93476A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239365(P2010−239365)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】