説明

安全弁

【課題】簡単な構造で容易に高圧側と低圧側に作動バネのバネ荷重を大幅に変更可能とする安全弁を提供する。
【解決手段】安全弁1は、二つの口部13,15を備えた弁箱10と、弁箱10内を一次室14と二次室16とに区画するダイヤフラム2と、ダイヤフラム2に結合されたダイヤフラム押さえ3と、一次室14と二次室16とを連通する弁孔34と、弁孔34を開閉自在とする弁体5と、ダイヤフラム押さえ3に受け止められてダイヤフラム2を付勢して一次室14内の超過圧力によりダイヤフラム2が応動して弁体5が開弁する圧力の設定を行う作動バネ4とを備える。弁箱10は、ダイヤフラム2を収容するダイヤフラムケース11と、作動バネ4を収容し作動バネ4の支点側となる端部を支持するバネケース12とにより構成され、バネケース12は、ダイヤフラムケース11に対して作動バネ4のバネ圧方向に移動可能に螺合接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水機器の流体配管等に取り付けられる安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の安全弁として、特許文献1に開示された逃し弁がある。図9、図10に示すように、この逃し弁100は、湯沸器等の配管に接続する接続口110と大気開放する排水口111とを具備する弁箱101と、弁箱101内における排水口111と通じる逃し口113を開閉する弁体121と、弁体121を設けたダイヤフラム102と、弁体121の閉弁方向にダイヤフラム102を付勢する作動バネ104とを備える。作動バネ104は、弁箱101の上端に組付けたバネケース114内に収容され、支点側となる一端がバネケース114の上端に配置した作動部材106のバネ支持座140に支持され、作用点側となる他端がダイヤフラム102の上面に設けたダイヤフラム押え103に受け止められている。作動部材106は、バネケース114内の上部のネジ溝114aにネジ部105aを螺合固定した調整ネジ105に対して移動自在に支持されている。また、バネケース114の上端には加圧室Kを形成したブロック170が組付けられ、加圧室K内には水道水圧力により移動する駆動部材Dが作動部材106の上面と衝合するように設けられている。
【0003】
そして、この逃し弁100によれば、加圧室K内に水道水が導入されない状態では、図9に示すように、作動バネ104のバネ圧により作動部材106のバネ支持座140が調整ネジ105の下面に当接する位置に押し上げられるので、作動バネ104のバネ荷重は、調整ネジ105による圧力(低圧側)に設定される。一方、図10に示すように、加圧室K内に水道水を導入して水道水圧により駆動部材Dを下降させると、作動部材106が下降して作動バネ104が押し縮められるので、作動バネ104のバネ荷重は、調整ネジ105で設定した圧力(低圧側)よりも高圧側に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−259142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の逃し弁100は、上述のように作動バネ104のバネ荷重を高圧側と低圧側とに変更可能とするが、そのためには、加圧室Kを形成したブロック170を設けたり、また加圧室Kに水道水を導入するための機構を設ける必要がある等、構成が複雑であった。しかも、高圧側での作動バネ104のバネ荷重は、水道水圧に依存するため、大幅にバネ荷重を変更することができなかった。なお、バネケース114内の調整ネジ105の螺入量を調節することにより作動バネ104のバネ荷重を変更することも考えられるが、この逃し弁100を組み立てる際に調整ネジ105を回動させて作動バネ104のバネ荷重を設定し、組立て後にはその設定圧力が固定となるため、組立て後の逃し弁100において調整ネジ105で作動バネ104のバネ荷重を調節することは困難であった(特許文献1の段落0003を参照。)。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で容易に高圧側と低圧側に作動バネのバネ荷重を大幅に変更可能とする安全弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る安全弁は、
二つの口部を備えた弁箱と、
弁箱内を第1の口部に通じる一次室と第2の口部に通じる二次室とに区画するダイヤフラムと、
ダイヤフラムに設けたダイヤフラム押さえと、
一次室と二次室とを連通する弁孔と、
ダイヤフラムに設けて弁孔を開閉自在とする弁体と、
ダイヤフラム押さえに受け止められてダイヤフラムを付勢して一次室内の圧力上昇によりダイヤフラムが応動して弁体が開弁する圧力の設定を行う作動バネとを備え、
弁箱は、ダイヤフラムを収容するダイヤフラムケースと、作動バネを収容し作動バネの支点側となる端部を支持するバネケースとにより構成され、
バネケースは、ダイヤフラムケースに対して作動バネのバネ圧方向に移動可能に螺合接続されているものである。
【0008】
上記構成より、作動バネを収容するバネケースをダイヤフラムケースに対して移動させることにより、バネケースの移動量に応じて作動バネが伸縮される。例えば、バネケースを回動させてダイヤフラムケースに対して高くなるように移動させると、バネケースの移動量に応じて作動バネが自身のバネ圧により伸長する。これにより、ダイヤフラムに作用する作動バネのバネ荷重が弱くなり低圧側の圧力設定とすることができる。一方、バネケースを回動させてダイヤフラムケースに対して低くなるように移動させると、バネケースの移動量に応じて作動バネがバネケースにより押し縮められる。これにより、ダイヤフラムに作用する作動バネのバネ荷重が強くなり高圧側の圧力設定とすることができる。このように、安全弁の組立て後でもバネケースを回動させるだけの簡単な操作によってダイヤフラムに作用する作動バネのバネ荷重を低圧側と高圧側とに容易に圧力設定することができる。しかも、バネケースの移動量に応じて作動バネのバネ荷重を低圧側から高圧側まで大幅に変更することができる。
【0009】
上記安全弁において、
一次室側に配置された弁体から延設されてダイヤフラム押さえに貫通形成したガイド孔を挿通して二次室側へ突出する弁棒と、
弁棒の二次室側の配置部分に外挿されて弁体を弁孔の閉弁方向に付勢する弁バネと、
弁棒の二次室側の端部に対向されて弁棒の端部と所定間隔を隔てて配設する調圧軸と、
バネケースに設けられて調圧軸を収容する調圧部とを備え、
調圧部は、バネケースに対して調圧軸が弁棒の端部に接近・離間する方向に移動可能に螺合接続されていることが望ましい。
【0010】
上記安全弁では、一次室側の圧力上昇により作動バネのバネ圧に抗してダイヤフラムが二次室側へ変位して弁体の弁棒が調圧軸に当接すると、更なるダイヤフラムの変位によって弁体が開弁される。これにより、弁孔を通じて一次室側の超過圧力が二次室側へ逃されて一次室側の圧力上昇が解消される。一方、一次室側が負圧化すると、二次室の圧力(大気圧)により弁孔を通じて弁バネのバネ圧に抗して弁体が開弁される。これにより、弁孔を通じて二次室から一次室へ大気圧が吸引されて一次室側の負圧が解消される。このような安全弁における作動バネのバネ荷重を変更するためバネケースをダイヤフラムケースに対して移動させると、バネケースと一緒に調圧部も移動して調圧軸と弁棒との間隔が変更されてしまう。
【0011】
しかるに、上記構成によれば、調圧部は、バネケースに対して調圧軸が弁棒の端部との間隔を調節自在に螺合接続されているので、バネケースをダイヤフラムケースに対して高くなるように移動させた場合は、調圧部を回動させてバネケースの移動量分だけバネケースに対して低くなるように移動させることができる。また、バネケースをダイヤフラムケースに対して低くなるように移動させた場合は、調圧部を回動させてバネケースの移動量分だけバネケースに対して高くなるように移動させることができる。
【0012】
このように、調圧部をバネケースに対して移動可能とすることにより、弁棒と調圧軸との間隔をバネケースの移動前後で同一に保持することができる。従って、弁体が開弁する低圧側と高圧側の圧力設定をバネケースの移動量分だけに応じて設定することができる。また、バネケースの移動前後においてダイヤフラムケースに対して調圧部の高さを同一高さに保持することができる。従って、安全弁としての高さをバネケースの移動前後で同一高さに保持することができ、周辺部と干渉を起こす等の不都合もない。さらには、調圧部の移動によっても一次室の超過圧力により弁体が開弁する圧力の設定を調節できるので、圧力設定を低圧側から高圧側まで大幅に変更することができる。
【0013】
上記安全弁において、
調圧軸は、調圧部において弁棒の端部との間隔を調節自在に螺合接続されていることが望ましい。
【0014】
これによれば、バネケースの移動量に応じて調圧軸を回動して移動させて弁棒の端部との間隔を調節することができ、バネケースの移動前後で弁棒と調圧軸との間隔を同一に保持することができる。従って、弁体が開弁する低圧側と高圧側の圧力設定をバネケースの移動量分だけに応じて設定することができる。さらには、調圧軸の移動によっても一次室の超過圧力により弁体が開弁する圧力の設定を調節できるので、圧力設定を低圧側から高圧側まで大幅に変更することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、安全弁の組立て後でもバネケースを回動させて移動させるだけで作動バネのバネ荷重を低圧側と高圧側とに容易に圧力設定することができ、しかも、バネケースの移動量に応じて作動バネのバネ荷重を低圧側から高圧側まで大幅に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態による安全弁の閉弁状態を示す断面図である。
【図2】実施形態による安全弁の外観を示す上面図である。
【図3】手動レバーを起立保持した強制開弁状態を示す断面図である。
【図4】一次側の圧力上昇時における開弁状態を示す断面図である。
【図5】一次側の負圧時における開弁状態を示す断面図である。
【図6】バネケースを高く移動させて作動バネのバネ荷重が低圧側に圧力設定された状態を示す断面図である。
【図7】バネケースを低く移動させて作動バネのバネ荷重が高圧側に圧力設定された状態を示す断面図である。
【図8】他の実施形態による安全弁の閉弁状態を示す断面図である。
【図9】従来の逃し弁において作動バネのバネ荷重が低圧側に圧力設定された状態を示す断面図である。
【図10】従来の逃し弁において作動バネのバネ荷重が高圧側に圧力設定された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、実施形態による安全弁1は、二つの口部13,15を直角に形成した弁箱10と、弁箱10内を第1の口部13に通じる一次室14と第2の口部15に通じる二次室16とに区画形成するダイヤフラム2と、ダイヤフラム2に結合されたダイヤフラム押さえ3と、ダイヤフラム押さえ3に形成されて一次室14と二次室16とを連通する弁孔34と、一次室14側に配置されて弁孔34を開閉自在とする弁体5と、ダイヤフラム2を一次室14側へ付勢して一次室14内の圧力上昇によりダイヤフラム2が応動して弁体5が開弁する圧力の設定を行う作動バネ4とを備える。
【0018】
弁箱10の第1の口部13は温水機器の流体配管や流体容器等に接続され、第2の口部15は大気開放されている。弁箱10は、ダイヤフラム2を収容するダイヤフラムケース11と、作動バネ4を収容し作動バネ4の支点側となる端部を天井面18で支持するバネケース12とを備えている。なお、弁箱10は、樹脂又は金属により形成されている。
【0019】
ダイヤフラムケース11は、上側部11Aと下側部11Bとを有し、これら上側部11Aと下側部11Bがダイヤフラム2の外縁部を挟持するように組み付けられている。ダイヤフラムケース11におけるダイヤフラム2の配設部側が大径部17aとなっており、この大径部17aに連設された段部17bにダイヤフラム2の一次室14側への移動を所定位置で停止させるための複数の凸部17cが周上に突設されている。これらの凸部17cには、ダイヤフラム2における一次室14側に対面する下面に一体形成された金属製の環状の座金23が当接される。
【0020】
バネケース12は、ダイヤフラムケース11の上側部11Aに設けた結合口11xに取り付けられている。バネケース12の下部の外面とダイヤフラムケースの結合口11xとにはネジ溝12a,11aが設けられており、バネケース12は、ダイヤフラムケース11に対して作動バネ4のバネ圧方向に移動可能に螺合接続されている。
【0021】
ダイヤフラム押さえ3は、ダイヤフラム2の二次室16側に対面する上面に形成されている。ダイヤフラム2はゴム製のシートからなり、ダイヤフラム押さえ3は樹脂製であり、これらダイヤフラム2とダイヤフラム押さえ3とは、射出成形の二色成形法等で一体形成した一部品として構成されている。ダイヤフラム押さえ3の外周部には、作動バネ4の作用点側となる端部を受け止める凹溝31が環状に形成されており、この凹溝31とバネケース12の天井面18との間に作動バネ4が圧縮状態に配設されている。これにより、圧縮状態の作動バネ4のバネ圧によりダイヤフラム2が一次室14側へ付勢される。従って、バネケース12のダイヤフラムケース11に対する高さを決めることにより、ダイヤフラム2へ作用する作動バネ4のバネ荷重を設定することができる。
【0022】
ダイヤフラム押さえ3の中央には、ダイヤフラム2の中心孔21を貫通して一次室14側へ突出する筒部32が一体形成されている。筒部32は、中央部に設けたガイド孔33と、ガイド孔33の周囲に設けた複数の弁孔34とを有する。筒部32には、ガイド孔33を延長するように二次室16側へ突出するガイド筒35が一体形成されている。そして、複数の弁孔34を開閉自在とする弁体5が一次室14側に配置され、この弁体5から延設された弁棒51がガイド孔33を挿通して二次室16内へ突出されている。弁体5と弁棒51とは、射出成形等で一体成形により形成した樹脂製の一部品で構成されている。
【0023】
弁棒51には、作動バネ4よりも弾性力の弱い弁バネ52が外装されており、弁バネ52の一端がガイド筒35の外周に受け止められ、他端が弁棒51の上端付近に外嵌されたスナップリング53に受け止められている。このようにして、弁バネ52がスナップリング53とダイヤフラム押さえ3との間に圧縮状態に配設され、この弁バネ52のバネ圧により弁棒51を二次室16側へ引き込んで弁体5が弁孔34を閉じる閉弁方向に付勢される。
【0024】
弁体5は、弁棒51の軸線に対し垂直方向に延びた円盤部54と、円盤部54の外周端からダイヤフラム2との対向側に突出する筒状の周壁部55とを有する。この弁体5の周壁部55の先端55aは、先細りに形成されており、この周壁部55の先端55aがダイヤフラム2の下面を弁座22(シール面)として着離自在に当接される。弁体5の周壁部55の先端55aが先細り形状となっているので、ダイヤフラム2に強く圧接させることができ、その結果、弁体5とダイヤフラム2間のシール性能が向上される。
【0025】
また、ガイド孔33の内径が弁棒51の外径と略同径(弁棒51の外径と同じか少し大径)に設定されている。これにより、弁棒51がガイド孔33の軸線方向に真っ直ぐに安定して挿通支持されるので、弁棒51に形成する弁体5の姿勢が弁座22をなすダイヤフラム面に対して傾くことなく平行に保持されて弁体5によるシール性能が一層安定して発揮される。
【0026】
バネケース12の上部には、調圧部6が設けられている。調圧部6は、バネケース12の上部壁に設けた接続口12xに取り付けられた筒体61と、筒体61内に摺動自在に収容された調圧ナット62と、調圧ナット62に螺合接続されて筒体61の底部の貫通孔64から二次室16内へ突出させた調圧軸63とを備える。筒体61の側壁下部の外面とバネケース12の接続口12xとにはネジ溝6a,12bが設けられており、筒体61は、バネケース12に対して調圧軸63が弁棒51の端部に接近・離間する方向に移動可能に螺合接続されている。
【0027】
調圧軸63は、シール材65により貫通孔64の水密性を確保した状態で貫通孔64に摺動自在に挿通されている。調圧軸63は、弁棒51の二次室16側の端部に対向されてこの弁棒51の端部との間隔を調節自在に配設されている。調圧軸63の上部の外面にはネジ溝63aが形成されており、調圧ナット62のネジ溝62aに螺合されている。筒体61内の底部にはリング状の押え板66が取り付けられ、この押え板66と調圧ナット62の下面に形成した環状凹部62bとの間に調圧バネ67が圧縮状態に配設されている。
【0028】
筒体61の上部の外面に全周にわたって凹部61aが連続形成され、この凹部61aと調圧ナット62の上部に形成した鍔部62bの上面との間に断面コ字状のアーム68を取り付け、調圧軸63及び調圧ナット62が抜け止め状態に保持されている。図2をも参照して、アーム68の上端部は、上方に屈曲形成された一対の舌片68aを有し、これら舌片68a間に手動レバー7が割りピン70によって上下回動自在に取り付けられている。
【0029】
手動レバー7は、常時は調圧軸63に直交する横向き姿勢に配置されており、この手動レバー7を上方又は下方へ回動させると、手動レバー7の前部に垂下形成した操作片71により調圧ナット62の鍔部62bの上面が下方へ押し込まれる。これにより、調圧ナット62とともに調圧軸63が下方に移動して弁棒51を一次室14側へ移動させることにより、弁体5が強制的に開弁される。そして、手動レバー7による調圧ナット62への押圧力を解除することにより、調圧バネ67の弾性力により調圧軸63が後退し、弁バネ52の弾性力により弁体5がダイヤフラム2に着座して閉弁状態に復帰する。
【0030】
また、図3に示すように、手動レバー7を押し上げて調圧ナット62上に起立させて調圧ナット62を押し下げ状態に保持すれば、上記同様に、弁体5がダイヤフラム2から離脱した強制開弁状態に保持される。この強制開弁状態を解除するには、手動レバー7を押し倒して元の横向き姿勢に戻すと弁体5は閉弁状態に復帰する。
【0031】
手動レバー7が横向き姿勢にあるときに、手動レバー7の先端近傍に形成された開口部72からドライバー等の工具を差し込んで調圧軸63の上端に設けた溝部63bに係合させ、調圧軸63を回動させて調圧軸63の調圧ナット62への螺入量を調節することにより、調圧軸63と弁棒51との間の間隔を調節することができる。従って、配管内等の一次側の超過圧力を逃すときの圧力設定を高圧側とするか低圧側とするかは、作動バネ4によるバネ荷重により決定できるが、そのときの圧力設定値を調圧軸63の下端と弁棒51の上端との間の間隔を適宜に接近又は離間することで調節することができる。
【0032】
次に、上記構成の安全弁1の動作を説明する。
図1とともに図4を参照して、一次室14側に接続する配管等の内圧が設定圧力以上に上昇した場合、一次室14内の圧力上昇により、作動バネ4のバネ圧に抗してダイヤフラム2が二次室16側へ変位する。このとき、弁体5も弁座22となるダイヤフラム2に着座した状態でダイヤフラム2と一緒に移動する。そして、弁体5と一体の弁棒51が調圧軸63に当接すると、これよりも更に二次室16側へ変位するダイヤフラム2によって弁体5がダイヤフラム2より離脱して開弁し(図4参照)、弁孔34を介して一次室14側の超過圧力相当分の流体を二次室16側へ逃がす。これにより、一次室14内の圧力が設定値まで降下すると、作動バネ4のバネ圧により、ダイヤフラム2が一次室14側へ変位し、弁体5が弁座22となるダイヤフラム2に着座し閉弁する。以上により、配管内等の圧力の異常上昇が防止される。
【0033】
一方、図1とともに図5を参照して、一次室14側に接続する配管内等が負圧化した場合、外部に連通している二次室16内の大気圧よりも一次室14内の圧力が降下(負圧)する。すると、弁孔34を通じて二次室16の圧力(大気圧)により弁バネ52のバネ圧に抗して弁体5を一次室14側へ押圧し、弁体5が弁座22となるダイヤフラム2から離脱して開弁し(図5参照)、弁孔34を介して二次室16から一次室14内に大気圧が吸引される。これにより、配管内等の負圧化が解消され一次室14内の圧力が設定値まで上昇すると、弁バネ52のバネ圧により、弁体5が弁座22となるダイヤフラム2に着座し閉弁する。以上により、配管内等の負圧化が防止される。このようにして、一次側の配管内等の圧力が異常上昇した場合のみならず負圧化した場合でも、素早く設定圧力に復帰させることができる。
【0034】
ところで、バネケース12は、ダイヤフラムケース11に対して作動バネ4のバネ圧方向に移動可能にネジ溝11a,12aによって螺合接続されている。これにより、作動バネ4を収容するバネケース12をダイヤフラムケース11に対して移動させることにより、バネケース12の移動量に応じて作動バネ4が伸縮される。
【0035】
図6に示すように、例えば、バネケース12を回動させてダイヤフラムケース11に対して高くなるように移動させると、バネケース12の移動量に応じて作動バネ4が自身のバネ圧により伸長する。これにより、ダイヤフラム2に作用する作動バネ4のバネ荷重が弱くなり低圧側の圧力設定とすることができる。一方、図7に示すように、バネケース12を回動させてダイヤフラムケース11に対して低くなるように移動させると、バネケース12の移動量に応じて作動バネ4がバネケース12により押し縮められる。これにより、ダイヤフラム2に作用する作動バネ4のバネ荷重が強くなり高圧側の圧力設定とすることができる。
【0036】
このように、安全弁1の組立て後においてもバネケース12を回動させるだけの簡単な操作によってダイヤフラム2に作用する作動バネ4のバネ荷重を低圧側と高圧側とに容易に圧力設定することができる。しかも、バネケース12の移動量に応じて作動バネ4のバネ荷重を低圧側から高圧側まで大幅に変更することができる。
【0037】
ここで、安全弁1における作動バネ4のバネ荷重を変更するためバネケース12をダイヤフラムケース11に対して移動させると、バネケース12と一緒に調圧部6も移動して調圧軸63と弁棒51との間隔が変更されてしまう。しかるに、調圧部6は、バネケース12に対して調圧軸63が弁棒51の端部との間隔を調節自在にネジ溝6a,12aによって螺合接続されている。従って、バネケース12をダイヤフラムケース11に対して高くなるように移動させた場合は、調圧部6を回動させてバネケース12の移動量分だけバネケース12に対して低くなるように移動させることができる(図6参照)。また、バネケース12をダイヤフラムケース11に対して低くなるように移動させた場合は、調圧部6を回動させてバネケース12の移動量分だけバネケース12に対して高くなるように移動させることができる(図7参照)。
【0038】
このように、調圧部6をバネケース12に対して移動可能とすることにより、弁棒51と調圧軸63との間隔をバネケース12の移動前後で同一に保持することができる。従って、弁体5が開弁する低圧側と高圧側の圧力設定をバネケース12の移動量分だけに応じて設定することができる。また、バネケース12の移動前後においてダイヤフラムケース11に対して調圧部6の高さを同一高さに保持することができる。従って、安全弁1としての高さをバネケース12の移動前後で同一高さに保持することができ、周辺部と干渉を起こす等の不都合もない。
【0039】
また、調圧軸63は、調圧部6において弁棒51の端部との間隔を調節自在に調圧ナット62に螺合接続されているので、バネケース12の移動量に応じて調圧軸63を回動させて弁棒51の端部との間隔を調節することができ、バネケース12の移動前後で弁棒51と調圧軸63との間隔を同一に保持することができる。このようにしても、弁体5が開弁する低圧側と高圧側の圧力設定をバネケース12の移動量分だけに応じて設定することができる。
【0040】
さらに、バネケース12を移動させて作動バネ4のバネ荷重を低圧側又は高圧側へ変更するとともに、調圧部6や調圧軸63を移動させて弁棒51と調圧軸63との間隔を調節することにより、一次室14側の超過圧力に対する開弁時の圧力設定を低圧側から高圧側まで一層大幅に変更することができる。
【0041】
(他の実施形態)
図8に示すように、他の実施形態は、一次室14側の超過圧力を逃すための安全弁1Xを構成するものである。この安全弁1Xは、ダイヤフラムケース11に二つの口部13,15が設けられ、第2の口部15に通じる二次室16に弁孔となる環状凸口部19が設けられている。この環状凸口部19に着座して開閉自在とする弁体5は、ダイヤフラム2の下面に一体形成されている。バネケース12は、ダイヤフラム2を二次室16側へ付勢する作動バネ4が収容され、ダイヤフラムケース11の結合口11xにネジ溝11a,12aによって螺合接続されている。従って、この安全弁1Xによっても、バネケース12を回動させて移動させるだけで作動バネ4のバネ荷重を低圧側と高圧側とに容易に圧力設定することができ、しかも、バネケース12の移動量に応じて作動バネ4のバネ荷重を低圧側から高圧側まで大幅に変更することができる。なお、図8に示した他の実施形態の安全弁1Xには、調圧部は設けられていないが、図8において図1と同一符号で示す部分は、上記実施形態の安全弁(図1)で説明したものと同一又は相当するものである。
【符号の説明】
【0042】
1,1X 安全弁
2 ダイヤフラム
3 ダイヤフラム押さえ
4 作動バネ
5 弁体
6 調圧部
6a,11a,12a,12b ネジ溝
7 手動レバー
10 弁箱
11 ダイヤフラムケース
11x 結合口
12 バネケース
12x 接合口
13,15 口部
14 一次室
16 二次室
33 ガイド孔
34 弁孔
51 弁棒
52 弁バネ
63 調圧軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの口部を備えた弁箱と、
弁箱内を第1の口部に通じる一次室と第2の口部に通じる二次室とに区画するダイヤフラムと、
ダイヤフラムに設けたダイヤフラム押さえと、
一次室と二次室とを連通する弁孔と、
ダイヤフラムに設けて弁孔を開閉自在とする弁体と、
ダイヤフラム押さえに受け止められてダイヤフラムを付勢して一次室内の圧力上昇によりダイヤフラムが応動して弁体が開弁する圧力の設定を行う作動バネとを備え、
弁箱は、ダイヤフラムを収容するダイヤフラムケースと、作動バネを収容し作動バネの支点側となる端部を支持するバネケースとにより構成され、
バネケースは、ダイヤフラムケースに対して作動バネのバネ圧方向に移動可能に螺合接続されている安全弁。
【請求項2】
請求項1に記載の安全弁において、
一次室側に配置された弁体から延設されてダイヤフラム押さえに貫通形成したガイド孔を挿通して二次室側へ突出する弁棒と、
弁棒の二次室側の配置部分に外挿されて弁体を弁孔の閉弁方向に付勢する弁バネと、
弁棒の二次室側の端部に対向されて弁棒の端部と所定間隔を隔てて配設する調圧軸と、
バネケースに設けられて調圧軸を収容する調圧部とを備え、
調圧部は、バネケースに対して調圧軸が弁棒の端部に接近・離間する方向に移動可能に螺合接続されている安全弁。
【請求項3】
請求項2に記載の安全弁において、
調圧軸は、調圧部において弁棒の端部との間隔を調節自在に螺合接続されている安全弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−256921(P2011−256921A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131012(P2010−131012)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】