説明

安全行動支援システム

【課題】 カメラの撮影範囲の死角を少なくし、通勤、通学または就業時の安全性を高めることができる安全行動支援システムを提供する。
【解決手段】 本発明の安全行動支援システム10は、ネットワーク11に接続され、受信した画像データを保存する画像記録装置12と、撮像した画像データを、ネットワーク11を介して画像記録装置12に無線で送信する全方位カメラ13とを備えているので、移動時の撮影範囲が広くなり、カメラの撮影範囲の死角を少なくすることができる。また、全方位カメラ13の動作状況を表示する装置を備えているので、全方位カメラ13によって周囲の状況が撮影されていることが一目でわかり、犯罪者に対して牽制する効果がある。このようにして、通勤、通学または就業時の安全性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラを用いて周囲の状況を監視する安全行動支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、児童や学生の登下校時や社会人の通勤時の安全性向上のため、ランドセルや鞄に防犯ベルを取付けることが行われている。児童等は、危険であると判断したときに、自分で防犯ベルのスイッチをオンにすると、警報によって周囲の人に危険を知らせる。
【0003】
また、繁華街の街頭、一般家庭の玄関、工場内の所定位置等に固定式の監視カメラを取り付けることも行われている。監視カメラの映像は、内蔵する記録装置に一定期間だけ保存されており、事故等が発生したときに、記録内容を再生することにより、事故発生時の映像を確認することができる。
【0004】
近年では、インターネットに無線接続して画像を送信するWebカメラと称するカメラを用いて、移動しながら画像を送信することが可能となっている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−125254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、防犯ベルは、操作の可否を自己で判断する必要があるが、非常時には、判断に迷って使用できない場合がある。また、誤った操作によって警報を鳴らしてしまうこともあるため、警報を聞いた人が、事故の発生かどうか迷うこともあり、事故発生後の対応が遅れることも考えられる。
【0007】
また、固定式の監視カメラは、設置されていない場所では当然に撮影することができない。また、固定式の監視カメラには死角があるため、物陰に隠れてしまうと、やはり撮影することができない。死角をなくすためには、多数の監視カメラを設置する必要があるが、監視カメラの台数を必要以上に増やすと、設置のためのコストが膨大となり、また、データ量も膨大になるために管理工数が増え、また、事故発生時の検索に時間がかかるという問題がある。
【0008】
ここで、移動可能なWebカメラを固定式の監視カメラの替わりに用いたとすると、撮影位置や方向を変えることができると考えられる。しかしながら、Webカメラは、防犯ベルと同様に自己で操作する必要があるため、事故発生時にとっさに操作することができない。また、一般のWebカメラは一方向しか撮影できないため、事故等がWebカメラの視野角の範囲外で発生した場合には、記録することができない。
【0009】
そこで本発明が解決しようとする課題は、カメラの撮影範囲の死角を少なくし、通勤、通学または就業時の安全性を高めることができる安全行動支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の安全行動支援システムは、ネットワークに接続され、受信した画像データを保存する画像記録装置と、撮像した画像データを、前記ネットワークを介して前記画像記録装置に無線で送信する全方位カメラとを備えている。
【0011】
ネットワークは、全方位カメラとの間で無線通信可能な無線基地局を有したものが利用でき、例えば、携帯電話回線、PHS回線、インターネット回線やLAN回線を利用することができる。画像記録装置は、ネットワークから受信した画像データを、予め登録された全方位カメラのIDナンバーに関連付けて保存する。
【0012】
全方位カメラは、例えば、レンズの前方に回転双曲面ミラーを設け、全方位を同時に撮影できるものを使用できる。また、全方位カメラとして、異なる方向に向けた複数のカメラを組み合わせ、撮影を同時に行って略全方位をカバーするものも用いることができる。
【0013】
全方位カメラは、画像データを動画(映像)方式で撮影し、連続的に送信することも可能であるが、静止画像データとして所定時間おきに撮影し、送信することも可能である。静止画像データとして間歇的に撮影した場合には、電源として使用する電池の消費量を少なくすることができる。
【0014】
全方位カメラは、無線通信手段を内蔵しており、無線で画像データを送信することができる。無線通信手段は、ハンドオーバー機能を有しており、自動的にネットワークの無線基地局を切り替えることができる。無線通信は、例えば、PHS(登録商標)や携帯電話等の移動体通信回線を利用して行うことができ、また、無線LANを利用することができる。
【0015】
安全行動支援システムを使用するときには、まず、画像記録装置に全方位カメラのIDナンバー(IPアドレス等)を登録し、ネットワークに接続する。次いで、全方位カメラの電源をオンにすると、全方位カメラが画像データを撮影し、無線通信手段によって、ネットワークの近接する基地局を介して画像記録装置に画像データを送信する。画像記録装置は、画像データを受信すると、全方位カメラのIDナンバーに関連付けて保存する。画像記録装置は、複数の全方位カメラから画像データを受信し、各全方位カメラのIDナンバーに関連付けて記録することができる。保存した画像データは、画像記録装置にビューワを接続することにより表示することができ、また、画像記録装置に他のコンピュータを接続し、画像データを転送することもできる。
【0016】
全方位カメラに、検出スイッチと、この検出スイッチのオンオフに連動して全方位カメラを動作させる電源制御部とを設けると、全方位カメラを人体等に装着したときに検出スイッチが動作し、電源制御部により無線通信回路を含む全方位カメラの電源がオンにされ、無線通信回線を介してネットワークに自動的に接続されるとともに撮影が自動的に開始される。画像記録装置は、全方位カメラがネットワークに接続されると、自動的に記録を開始する。また、人体等から外したときに検出スイッチが動作し、電源制御部により無線通信回路を含む全方位カメラの電源がオフにされて撮影が終了される。
【0017】
検出スイッチの種類は、接触型のスイッチでもよく、また、赤外線等を利用した非接触型のスイッチでもよい。なお、検出スイッチは、待機電力を小さくするために、メカニカルスイッチを使用したものが好ましい。
【0018】
全方位カメラに、肩掛け鞄の肩紐部に固定される肩紐ホルダを設け、検出スイッチを、前記肩紐ホルダの裏面に設けると、ランドセルやショルダーバッグ等の肩掛け鞄を肩部に掛けたときに、全方位カメラによる撮影が開始され、肩部から外したときに撮影が終了する。
【0019】
安全行動支援システムを使用するとき、全方位カメラは、肩部に載った状態となる。この状態で撮影すると、首部または頭部によって撮影範囲が一部だけ遮られるが、その他の部分はすべて撮影されるため、一方向のみを撮影するカメラに比べて死角は小さくなる。
【0020】
全方位カメラに、ヘルメットまたは帽子に固定される頭部ホルダを設け、検出スイッチを、ヘルメットまたは帽子の内側に設けると、ヘルメットまたは帽子を頭部に被せたときに、全方位カメラによる撮影が開始され、ヘルメットまたは帽子を脱いだときに撮影が終了する。
【0021】
安全行動支援システムを使用するとき、全方位カメラは頭部に載った状態となり、この状態で撮影すると、全方向の撮影を一度に行うことができる。
【0022】
全方位カメラに、全方位から視認可能な位置に設けられ、かつ、前記検出スイッチのオンオフに連動して動作する動作状態表示装置を設けると、全方位カメラを装着していることを外部の全方位から確認することができる。動作状態表示装置としては、例えば、LEDや電球等の発光装置や羽根等が回転動作するもの等を用いることができる。動作状態表示装置を設けることにより、安全行動支援システムを使用中であることを外部の全方位から視認することができる。特に発光装置を用いた場合には、全方位カメラが動作中であることを外部から視認することができる。
【0023】
一般に監視カメラでは画像の明瞭度(画素数)を上げると、1画面あたりの伝送時間が長くなるという問題があり、低速の伝送回線の場合はその時間が数秒から数十秒かかることも考えられる。また、本発明の安全行動支援システムを学童の安全保護に使用する場合、学童が登下校するときにシステムが一斉に稼動するので携帯電話などの回線負荷が大きくなり、より長い伝送時間がかかる事も考えられる。そういう状況では犯罪が行われた瞬間を撮影、記録できない可能性もあり例えば犯罪者の顔が記録されないこともある。しかし本発明では監視カメラが作動していることを周囲に明示する動作状態表示装置を保有しているため、もし犯罪を行おうとする者は常に監視され、記録されていると考えざるをえない。従って画像の伝送間隔が多少長くても犯罪者への牽制効果を減殺しない。極端な場合を言えば実際には画像を撮影、伝送していなくとも動作中であることを表示するだけでも牽制効果を期待できる。
【0024】
画像記録装置に、画像データと時刻とを同時に記録すると、画像データの再生時に、撮影時刻を特定することができる。
【0025】
画像記録装置に、全方位カメラとの通信が停止したときに、所定の携帯電話等の宛先にメールを送信する通信停止メール送信手段を設けると、全方位カメラの通信停止を他の場所から確認することができ、児童等が目的地に無事に到着したこと、または犯罪や事故等が発生した時に速やかにそれを知ることができる。
【0026】
各宛先を、全方位カメラのIDナンバーに関連付けて保存しておくと、例えば、全方位カメラを使用する各児童の保護者に通信停止を知らせることができる。なお、メールの送信データには、通信停止直前の画像データと、撮影時刻を含めることが好ましい。メールを受信した保護者等は、撮影時刻が通常の登校時間や帰宅時間であるか、また、画像データが正常である場合は、無事に到着したと判断できる。また、撮影時刻や画像データに異常がある場合は、別途、使用者に連絡をとって無事を確認することができ、万が一の犯罪や事故の場合は、迅速な対応を行うことができる。また、保護者等のメール受信者は、他の場所からネットワークを介して画像記録装置にアクセスし、任意の時間の画像データを確認することも可能である。
【0027】
画像記録装置に、受信した画像データの変化を検出する検出手段と、検出手段が、画像データの変化がないことを検出したときに、所定の宛先にメールを送信する画像停止メール送信手段とを設けると、画像データの変化がない場合、すなわち全方位カメラを使用中の者が倒れたりして所定時間静止している状態が続いている場合や、犯罪者がカメラのレンズを布等で覆った場合等には、事故等が発生した可能性があるものとして、メールを送信する。検出手段は、例えば、受信した画像データの最終フレームとその直前のフレームの差を比較することができ。また、3以上の所定枚数のフレームを比較して変化の有無を検出することができる。メールには、静止状態が続いていることの報告、画像データ、および撮影時刻を含めることが好ましい。保護者等のメール受信者は、他の場所からネットワークを介して画像記録装置にアクセスし、任意の時間の画像データを確認することも可能である。
【0028】
検出手段は、画像記録装置に保存された画像データを順次読み出して処理を行うか、または、画像記録装置に保存する前に処理を行うことができる。検出手段は、画像データが静止画像である場合、隣接する画像データを比較する。また、画像データが動画であれば、隣接するキーフレームを比較する。例えば、比較した画像データの各画素の変化の割合が設定した閾値以下であれば画像データの変化なしと判断し、この判断結果を保存するとともに画像停止通知メール送信手段を起動する。画像停止通知メール送信手段は、検出手段による判断結果を参照し、必要なデータを含んだメールを送信する。
【0029】
全方位カメラに、画像データから顔画像を検出し、この顔画像を含む領域を切り出して顔画像データを生成する顔画像抽出手段と、生成した顔画像データを画像記録装置に無線で送信する顔画像送信手段とを設けると、送信する画像データの量が減少し、通信負荷が軽減する。
【0030】
全方位カメラによって撮影された画像は、データ量が多く、毎回、全データを転送すると、通信回線に対する負荷が多くなる。一方、犯罪者による児童の誘拐事件等が発生した場合、顔画像から犯罪者を早期に特定することが急がれる。そこで、全方位画像のうちの顔画像データのみを抽出して送信することにより、送信する画像データの量を減らし、通信回線に対する負荷を軽減することができる。
【0031】
顔画像を検出するには、例えば、肌色の画素を検出し、その画素が一定の大きさの領域に集合しているかどうかを判別する方法を用いることができる。また、特徴点を抽出し、予め記録した顔画像とのマッチングを取る等の方法を用いることも可能である。顔画像を含む領域は、例えば矩形や多角形状に切り出すことができる。顔画像を含む領域を切り出すので、顔画像データのデータ量は、元の画像データのデータ量に比べて非常に少なくなる。
【0032】
全方位カメラに、所定時間おきに、撮像した画像データを、画像記録装置にそのまま無線で送信する全体画像送信手段を設けると、通常は撮影後に顔画像を切り出して送信することを繰り返し行い、ときどき、全方位画像を送信するので、記録された画像を再生するときに、全方位画像によって周囲の状況を判別しやすくなるとともに、顔画像によって近くにいる人物の特定が容易になる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば次の効果を奏する。
(1)本発明の安全行動支援システムは、ネットワークに接続され、受信した画像データを保存する画像記録装置と、撮像した画像データを、ネットワークを介して画像記録装置に無線で送信する全方位カメラとを備えているので、移動時の撮影範囲が広くなり、カメラの撮影範囲の死角を少なくして、通勤、通学または就業時の安全性を高めることができる。また、万一事故や犯罪等が発生した場合は、記録された画像によって、速やかな対応が可能となる。
また、画像記録装置と全方位カメラとを別体として配置しているので、移動時の全方位カメラを軽量にして、負荷を軽減することができるとともに、万が一の事故や犯罪等により、全方位カメラが故障したり破壊されたりして、通信不能となった場合でも、画像データを画像記録装置から取り出すことができる。別の場所で画像が記録されるので、犯罪者に対する牽制効果を高めることができる。
(2)全方位カメラに、検出スイッチと、この検出スイッチのオンオフに連動して全方位カメラを動作させる電源制御部とを設けると、全方位カメラを人体等に装着したときに検出スイッチが動作し、全方位カメラの電源をオンにして撮影が自動的に開始され、また、人体等から外したときに検出スイッチが動作し、全方位カメラの電源をオフにして撮影が終了されるので、スイッチの入れ忘れを防止して、確実に画像データを記録することができ、また、切り忘れを防止して、電池の消耗を抑えることができる。
(3)全方位カメラに、肩掛け鞄の肩紐部に固定される肩紐ホルダを設け、検出スイッチを、前記肩紐ホルダの裏面に設けると、ランドセルやショルダーバッグ等の肩掛け鞄を肩部に掛けたときに、全方位カメラによる撮影が開始され、肩部から外したときに撮影が終了するので装着忘れが無くなり、通勤時や通学時に思いがけず事故や犯罪等に遭遇した場合でも操作忘れが無く確実に記録することができるため、暴漢等を牽制して事故や事件を防止することができる。
(4)全方位カメラに、ヘルメットまたは帽子に固定される頭部ホルダを設け、検出スイッチを、ヘルメットまたは帽子の内側に設けると、ヘルメットまたは帽子を頭部に被せたときに、全方位カメラによる撮影が開始され、ヘルメットまたは帽子を脱いだときに撮影が終了するので、通勤、通学時の思いがけない事故や犯罪等に遭遇した場合でも装着忘れや操作忘れを防止して確実に記録することができる。また、作業中の事故等の発生状況を再現して確認することにより、確実な対策を行うことができ、事故の再発を防止することができる。
(5)全方位カメラに、全方位から視認可能な位置に設けられ、かつ、検出スイッチのオンオフに連動して動作する動作状態表示装置を設けると、全方位カメラが動作中であることを外部から確認することができるので、暴漢等を牽制して、事故や事件を防止することができる。また、他者に注意を促して、衝突等の事故を防止することができる。また、画像の伝送間隔が多少長くても犯罪者への牽制効果を減殺しないので、実際には画像を撮影、伝送していなくとも動作中であることを表示するだけでも牽制効果を期待できる。特に、新聞やテレビ等の広告やポスターを貼ること等で本発明による装置の存在について宣伝活動を広く行い、社会に広く認知させることにより、本発明による牽制効果をより一層高めることができる。
(6)画像記録装置に、画像データと時刻とを同時に記録すると、画像データの再生時に、撮影時刻を特定することができるので、事故等が発生した時間と状況を正確に再現して、事故の原因特定と再発防止を行うことができる。
(7)画像記録装置に、全方位カメラとの通信が停止したときに、所定の宛先にメールを送信する通信停止通知メール送信手段を設けると、通信停止を他の場所から確認することができるので、児童等が目的地に無事に到着したこと、または事件や事故等が発生したことを他の場所から確認することができ、安全確認、または事故等発生時の対応を迅速に行うことができる。
(8)画像記録装置に、受信した画像データの変化を検出する検出手段と、検出手段が、画像データの変化がないことを検出したときに、所定の宛先にメールを送信する画像停止通知メール送信手段とを設けると、画像データの変化がない場合、すなわち倒れて動かなくなったり、犯罪者がカメラのレンズを覆ったりしたこと等が想定される場合にメールを受信することができ、その後の対応を迅速に行うことができる。
(9)全方位カメラに、画像データから顔画像を検出し、この顔画像を含む領域を切り出して顔画像データを生成する顔画像抽出手段と、生成した顔画像データを画像記録装置に無線で送信する顔画像送信手段とを設けると、送信する画像データの量が減少して通信負荷が軽減されるので、無線回線が低速であってもデータを途切れることなく伝送でき、また、回線使用料を節約することができる。
(10)全方位カメラに、所定時間おきに、撮像した画像データを、画像記録装置にそのまま無線で送信する全体画像送信手段を設けると、通常は撮影後に顔画像を切り出して送信することを繰り返し行い、ときどき、全方位画像を送信するので、記録された画像を再生するときに、全方位画像によって周囲の状況を判別しやすくなるとともに、顔画像によって近くにいる人物の特定が容易になるので、回線負荷を低減しながら、情報の質をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態の安全行動支援システムの構成図である。図1に示すように、本発明の安全行動支援システム10は、ネットワーク11に接続され、受信した画像データを保存する画像記録装置12と、撮像した画像データを、ネットワーク11を介して画像記録装置12に無線で送信する全方位カメラ13とを備えている。
【0035】
ネットワーク11は、複数の無線基地局14a〜14cを有している。無線基地局14a〜14cは、全方位カメラ13との間で信号を無線で送受信することができ、全方位カメラ13から送信された信号を、ネットワーク11を介して画像記録装置12に送信する。
【0036】
画像記録装置12は、ネットワーク11に接続される通信インターフェース15と制御装置16と記憶装置17とを有している。画像記録装置12は、ネットワーク11と通信インターフェース15を介して全方位カメラ13から画像データを受信し、全方位カメラ13のIDと画像データを関連付ける制御装置16を介して記憶装置17に記憶する。
【0037】
制御装置16には、通信停止通知メール送信手段60と、検出手段61と、画像停止通知メール送信手段62とが設けられている。通信停止通知メール送信手段60は、全方位カメラ13との通信が停止したときに、所定の宛先にメールを送信する。検出手段61は、受信した画像データの変化を検出する。画像停止通知メール送信手段62は、検出手段61が、画像データの変化がないことを検出したときに、所定の宛先にメールを送信する。
【0038】
全方位カメラ13は、全方位の撮影を行うための光学系およびCCDやCMOSを用いて光を電荷に変換し、画像データを得るイメージセンサを有する撮像部18と、シャッター等のカメラ制御や撮影した画像データの圧縮等を行うカメラ制御部19と、カメラ制御部19に接続され、無線基地局14a〜14cとの間で無線通信を行う無線通信インターフェース20(無線通信回路)と、カメラ制御部19および無線通信インターフェースに電源を供給する電源制御部21と、電源制御部21に接続された検出スイッチ22とを有している。
【0039】
電源制御部21は、検出スイッチ22のオンオフに連動して全方位カメラを動作させる。すなわち、検出スイッチ22がオンになったときにカメラ制御部19および無線通信インターフェース20に電源供給を開始し、検出スイッチ22がオフになったときにカメラ制御部19および無線通信インターフェース20への電源供給を停止する。
【0040】
図2(A)は、本発明の第1の実施の形態の安全行動支援システムの全方位カメラの詳細説明図、(B)は同安全行動支援システムの画像記録装置の詳細説明図である。図2(A)に示すように、全方位カメラ13の撮像部18は、CCDまたはCMOSからなって光電変換を行うイメージセンサ32と、絞りやホワイトバランス等の撮像時の制御等を行うイメージセンサ制御部33とを有し、撮影した画像の圧縮等を行うカメラ制御部19を介して、システムバス40に接続されている。
【0041】
システムバス40には、イメージセンサ制御部33からの画像データを無線通信インターフェース20に画像データを送出するCPU41と、CPU41の処理に用いるメモリ42と、無線通信インターフェース20とが接続されている。電源制御部21は、検出スイッチ22に接続され、各部への電力供給の開始と停止を行う。
【0042】
図2(B)に示すように、画像記録装置12の通信インターフェース15と、制御装置16と、記憶装置17とは、システムバス43に接続されている。また、システムバス43には、制御装置16が行う演算に用いられるメモリ44が接続されている。画像記録装置12の電源部45は、画像記録装置12全体に電源を供給する。
【0043】
なお、画像記録装置12または全方位カメラ13には時計(図示せず)が設けられている。時計を画像記録装置12に設けている場合には、記憶装置17に画像を記録するときに時刻も同時に記録する。また、全方位カメラ13に設けている場合には、撮影した時刻を画像に重畳して同時に送信する。
【0044】
図3は、本発明の第1の実施の形態の安全行動支援システムの全方位カメラの正断面図である。図3に示すように、全方位カメラ13は、ABS等のプラスチックからなる円筒状の筐体23と、ガラスやアクリル等の透明板からなり、筐体23に接続して全方位から光が入射可能な透明筒24と、透明筒24に被さる円板状の蓋体25と、筐体23の底部に固定された肩紐ホルダ26とを有している。
【0045】
蓋体25の下部には、回転双曲面ミラー27が、下方に突出して設けられ、蓋体25の上部には、外部から視認可能な動作状態表示装置の一例である高輝度LED28が設けられている。
【0046】
筐体23の内部には、二次電池29が着脱可能に固定され、カメラ制御部19、無線通信インターフェース20および電源制御部21を備えた回路部30が設けられている。
【0047】
筐体23の上端部には、集光レンズ31が設けられ、集光レンズ31の直下方位置には、イメージセンサ32が配置されている。イメージセンサ32の下側には、イメージセンサ制御部33が配置されており、回転双曲面ミラー27、集光レンズ31、イメージセンサ32およびイメージセンサ制御部33によって、撮像部18が構成されている。
【0048】
全方位から透明筒24内に入射した光は、回転双曲面ミラー27で反射され、集光レンズ31により集光され、イメージセンサ32に当たる。イメージセンサ32は、入射した光を電荷に変え、イメージセンサ制御部33に電送する。イメージセンサ32には、カラーフィルタ(図示せず)が設けられており、カラー画像を出力することができる。
【0049】
肩紐ホルダ26は、金属またはプラスチックからなってU字状に形成され、開口部34を側方に向けて配置されている。検出スイッチ22は、薄型の感圧スイッチからなり、肩紐ホルダ26の裏面に固定されている。
【0050】
感圧スイッチは、例えば、例えば加圧導電性ゴムを、高弾性ゴム等の可撓性部材で被覆して構成され、高い防水性と柔軟性を有している。さらに、可撓性部材を皮革や布製のカバーで覆うことにより、汚れや、スイッチ押圧時の圧迫感を軽減することができる。また、感圧スイッチとして、弾力性を有する導体間の両端を絶縁保持する方式のものを用いてもよい。また、検出スイッチ22としては、押しボタンスイッチや、パネルスイッチ(タッチパネルやメンブレンスイッチ)等を用いることも可能である。
【0051】
図4(A)は、本発明の第1の実施の形態の安全行動支援システムの全方位カメラの使用状態を示す斜視図、(B)は、同全方位カメラ使用時の鉛直方向の視野角を示す説明図、(C)は、同全方位カメラ使用時の水平方向の視野角を示す説明図である。図3、図4(A)〜(C)に示すように、全方位カメラ13は、肩掛け鞄の一例であるランドセル35の一方の肩紐36に固定することができる。
【0052】
全方位カメラ13の肩紐ホルダ26は、開口部34に肩紐36を挿入することにより、開口部34のそれぞれ上下に配置された上板部37および下板部38で肩紐36を挟持する。挟持位置は、使用時に全方位カメラが垂直になるように調整する。なお、肩紐ホルダ26は、肩紐36にピンやボルト等を貫通させ、その両端部を上板部37及び下板部38で保持するように構成することも可能である。
【0053】
全方位カメラ13を右側の肩紐36に取り付け、ランドセル35を背負ったときの全方位カメラ13の鉛直方向の視野は、直上方と、直下方と、ランドセル35で隠れる後方の一部とを除いた範囲となる。また、水平方向の視野は、自己の頭部で隠れる左側の一部を除いた範囲となる。
【0054】
なお、全方位カメラ13は、左側の肩紐39に固定することも可能で、また、2台の全方位カメラ13を、両側の肩紐36,39にそれぞれ固定して使用することも可能である。2台の全方位カメラ13を両側の肩紐36,39に固定して使用すると、1台の全方位カメラ13では頭部で遮られていた左右の死角がなくなり、全方位の画像を撮影することができる。
【0055】
また、肩紐ホルダとして、第1の実施の形態の肩紐ホルダ26の両端部を接続して角筒状に形成したものを用いることも可能である。また、肩紐ホルダとして、本皮または布製の材料を用いて、肩紐36に縫い付けて固定することも可能である。
【0056】
使用者がランドセル35を背負うと、検出スイッチ22が肩部を検出し、自動的に全方位カメラ13による撮影が開始される。
【0057】
図1に示すように、ネットワーク11には複数の無線基地局14a〜14cが設けられている。使用者が全方位カメラ13を取り付けたランドセル35を背負うと、全方位カメラ13の無線通信インターフェース20は、伝送手順を自動的に遂行して、無線基地局14a〜14cとの通信を開始する。全方位カメラ13は、ハンドオーバー機能を有しており、複数の無線基地局14a〜14cの中から感度が一番高い無線基地局14aを選択して、通信を行う。そして、全方位カメラ13が移動することにより、他の無線基地局14bの感度が、現在通信中の無線基地局14aより高くなった場合は、無線基地局14bを選択して通信を行う。
【0058】
なお、自転車や自動車を利用して高速で移動する場合に備えて、常時複数の無線基地局と通信可能な状態を保持するようにしてもよい。すなわち、当初は、無線基地局14a、14bと通信を行い、次いで、無線基地局14b、14cと通信するように構成することも可能である。さらに、ネットワーク11として電話回線を利用する場合には、ローミング機能を使用できるようにしておき、無線基地局14a〜14cが、異なる通信事業者間で管理されている場合でも通信を切断せずに、画像を送信することができる。
【0059】
ここで、図1、図5を参照して、画像データ受信後の動作について説明する。図5は、通信停止通知メール送信手段、検出手段および画像停止通知メール送信手段の動作を示す説明図である。
通信停止通知メール送信手段60、検出手段61および画像停止通知メール送信手段62は、画像記録装置12の制御装置16の一部を構成している。
【0060】
画像記録装置12が受信した画像データは、記憶装置17に記録される。記憶装置17への記録が開始されると、検出手段61が起動する(S1)。検出手段61は、記憶装置17に記録された画像データを順に読み出す(S2)。画像データが存在する場合は、撮影が終了していないと判断し(S3)、連続する画像データの比較を行う(S4)。
【0061】
全方位カメラ13は、移動しながら撮影を行うため、使用者が完全に停止しない限り、同一の画像は撮影されない。しかし、使用者が事故等に遭遇して転倒し、移動できなくなった場合には、同一の画像が連続して撮影されることになる。また、誘拐事件に巻き込まれ、袋を被せて連れ去られそうになった場合には、真っ黒の画像が連続して撮影されることになる。
【0062】
そこで、検出手段61が連続する画像データを比較して(S3)、画像に変化なしと判断した場合は、画像停止通知メール送信手段62が起動され、画像停止通知メールが作成される(S5)。画像停止通知メールは、例えば、連続した画像データおよびその撮影時刻を含めて作成され、保護者等のメール受信者に自動的に送信される(S6)。メール受信者は、受信した画像データの内容からその後の対応を迅速に行うことができる。なお、メール受信者は、予め画像記録装置12に登録されている。
【0063】
画像停止通知メールを送信した後は、検出手段61による処理を一旦終了する(S7)。これは、通信エラーによって、検出手段61が誤って同一画像と判断し、画像停止通知メールを繰り返し送信することを防止するためである。
【0064】
画像停止通知メールを受け取ったメール受信者は、ネットワーク11を介して画像記録装置12にアクセスし、画像記録装置12に記録されている画像データを閲覧することができ、さらに検出手段61の誤作動と判断した場合には、検出手段61による処理を再開させることができる。
【0065】
検出手段61が連続する画像データを比較して(S3)、画像に変化ありと判断した場合は、使用者が問題なく移動中であると判断して、次の画像データを読み込む。
【0066】
連続する画像データがなくなった場合には、通信停止通知メール送信手段60が起動され、画像停止通知メールが作成される(S8)。画像停止通知メールには、最終の画像データおよびその撮影時刻を含めて作成され、保護者等のメール受信者に自動的に送信される(S9)。メール送信によって、処理は終了する(S10)。メール受信者は、送信されたメールの内容から、登校、帰宅等の時刻が通常通りであるか、画像データに異常がないかを確認して、登校、帰宅の状況やその時刻を知ることができる。また、異常がある場合には、ネットワーク11を介して画像記録装置12にアクセスし、画像記録装置12に記録されている画像データを閲覧することができる。また、使用者に連絡をとって無事を確認したり、事故等の可能性がある場合には、関係部署への連絡等、その後の対応を迅速に行うことができる。
【0067】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施の形態の安全行動支援システムの全方位カメラの正断面図である。第2の実施の形態の安全行動支援システムは、第1の実施の形態の安全行動支援システム10の全方位カメラ13の替わりに全方位カメラ50を用いたものであり、他の構成は同じであるので、説明は省略する。
【0068】
また、全方位カメラ50は、全方位カメラ13の肩紐ホルダ26と検出スイッチ22の替わりに頭部ホルダ51と検出スイッチ52をそれぞれ用いたもので、他の構成は同じであるので、同一の構成には同一番号を付して、説明は省略する。
【0069】
全方位カメラ50の頭部ホルダ51は、ヘルメット53の頂部に当接する球面状かつ凹形の底面を有する基台部54と、基台部54の下部に植設されて下方に突出したボルト部材55と、ボルト部材55に螺合するナット部材56とを有している。
【0070】
ヘルメット53は、外殻部57の内側に緩衝部58が設けられ、緩衝部58の内側には、人体の頭部に当接して固定する着装体59が設けられている。検出スイッチ52は、着装体59の下部に固定配置され、全方位カメラ50の本体部と有線で接続されている。検出スイッチ52は、人体の頭部に当接すると、スイッチがオンになり、頭部が離反するとオフになる。
【0071】
ヘルメットの構造によっては、緩衝部と着装体とが一体となったものがあるが、いずれの場合も、頭部が当接する部分に検出スイッチすることにより使用することができる。また、検出スイッチをあご紐に設け、あご紐を締結したときにスイッチがオンになるように構成することも可能である。
【0072】
ヘルメット53の頂部に貫通孔を形成することができない場合には、全方位カメラの基台部に複数の固定用ベルトの基端部を固定し、この固定用ベルトの先端部に、ヘルメットの外殻部の外周縁に掛合する複数のフックを取付けておく。なお、この場合は、ボルト部材は使用しない。このように構成することによって、ヘルメットに貫通孔を形成しないで、全方位カメラを固定することができる。
【0073】
全方位カメラを帽子(図示せず)に固定する場合には、頭部ホルダの基台部を布製の部材で形成し、帽子の頂部に縫い付けて固定することが可能である。この場合、検出スイッチは、帽子の内側に縫製等により固定する。
【0074】
図7(A)は、本発明の第2の実施の形態の安全行動支援システムの全方位カメラ使用時の鉛直方向の視野角を示す説明図、(B)は、同全方位カメラ使用時の水平方向の視野角を示す説明図である。図7(A)、(B)に示すように、全方位カメラ50は、ヘルメット53の頂部に固定して使用することができる。
【0075】
全方位カメラ50の鉛直方向の視野は、直上方と、ヘルメット53の外周縁で隠れる直下方とを除いた範囲となる。また、水平方向の視野は、360°の範囲となる。
【0076】
使用者がヘルメット53を被ると、検出スイッチ52が使用者の頭部を検出し、全方位カメラ50による撮影が自動的に開始される。例えば、工場内に無線LANによるネットワークが構築されている場合には、使用者が移動することにより、複数の無線基地局と通信を行って画像データを送信することができ、管理部に設けた画像記録装置でこの画像データを受信して記憶することができる。
【0077】
なお、工場内で使用する場合には、所定の宛先にメールを送信する通信停止通知メール送信手段の替わりに、通信停止を音声で知らせる通信停止警告音発生手段を用い、所定の宛先にメールを送信する画像停止通知メール送信手段の替わりに、警報音を発生する画像停止警報音発生手段を用いることも可能である。音声を利用することにより、事故等の発生に対して、より迅速に対応することができる。
【0078】
図8(A)は、全方位カメラにより撮影した全方位画像の参考図、(B)は、全方位画像をパノラマ画像に変換した状態を示す参考図である。図8(A)に示すように、上記実施の形態の全方位カメラ13,50は、回転双曲面ミラー27を用いたものであるため、撮影した全方位の画像はドーナツ状となっている。画像記録装置から取り出した映像は、例えば、全方位画像の同心円上に存在する点を矩形領域の横軸方向に並べることにより、図8(B)に示すように、矩形のパノラマ画像に変換することができる。画像記録装置に、パノラマ画像へ変換する機能を備えたモニタ装置を接続することにより、画像データをリアルタイムに監視することができ、また、後で確認することも可能になる。
【0079】
(第3の実施の形態)
図9は、本発明の第3の実施の形態の安全行動支援システムの顔画像抽出手段、顔画像送信手段および全体画像送信手段の動作を示すフローチャート、図10は、同安全行動支援システムの顔画像抽出手段の詳細な動作を示すフローチャートである。図1、図2、図9、図10に示すように、本発明の第3の実施の形態の安全行動支援システム70は、第1の実施の形態の安全行動支援システム10の全方位カメラ13の替わりに、顔画像抽出手段72、顔画像送信手段73および全体画像送信手段74を設けた全方位カメラ71を用いたものであるが、他の構成は安全行動支援システム10と同じであるので、説明は省略する。
【0080】
顔画像抽出手段72は、画像データから顔画像を検出し、この顔画像を含む領域を切り出して顔画像データを生成するプログラムである。また、顔画像送信手段73および全体画像送信手段74は、バッファに蓄積された顔画像データまたは全体画像データを、それぞれ画像記録装置に無線で送信するプログラムである。これらのプログラムは、図示しない記憶部に保存されており、メモリ42(図2参照)に展開されて使用される。なお、これらのプログラムを記憶部に保存しておく替わりに、無線通信インターフェース20を介して外部から受信する構成を用いることも可能である。
【0081】
次に顔画像抽出手段72、顔画像送信手段73および全体画像送信手段74の動作について説明する。図2、図9に示すように、検出スイッチ22がオンになったときに、全方位カメラ71の動作が開始される(S2−1)。検出スイッチ22の状態は、定期的にチェックされ(S2−2)、検出スイッチ22がオフになると処理は終了される(S2−3)。検出スイッチ22がオンであるとき、まず全方位カメラ71による全方位画像の撮影が行われる(S2−4)。本実施の形態においては、撮影された画像は静止画像となっている。
【0082】
全方位カメラ71には、全体画像の撮影および送信間隔を決めるための指定時間が、予め設定されている。この指定時間には、顔画像の抽出にかかる時間より長い時間が設定されている。全方位カメラ71による撮影(S2−4)の後、前回の撮影を行ってから指定時間が経過したか否かのチェックが行われる(S2−5)。
【0083】
指定時間がまだ経過していないときは、撮影された全方位画像から、顔画像を抽出する(S2−6)。ここで、図10を参照して、顔画像抽出手段72の動作について詳しく説明する。
【0084】
顔画像抽出手段72は、カメラ制御部19が撮影を行った後、撮影した画像データについて処理を開始する(S3−1)。なお、顔画像抽出手段72が使用する画像データは静止画像となっている。
【0085】
顔画像抽出手段72の使用時には、マスキング機能を使用することができる(S3−2)。マスキング機能をオンにすると、顔画像を切り出す前の画像データの任意の範囲を予め画像処理を行う範囲から除外することができ、マスキング機能をオフにすると、全範囲の画像処理を行う。
【0086】
図11は、本発明の第3の実施の形態の安全行動支援システムの全方位カメラ使用時の全方位画像の参考図、図12は、同全方位カメラ使用時の顔画像の加工手順を示す参考図である。図4、図11、図12に示すように、全方位カメラ71をランドセル35の右側の肩紐36に固定して使用したとき、全方位画像75の左側の略扇形の範囲A1には、使用者の顔が常時撮影される。本実施の形態においては、マスキング機能をオンに設定しているため、範囲A1がマスクされて、処理範囲から除外されている。なお、マスキングの範囲は変更可能で、例えば、全方位カメラ71をランドセル35の左側の肩紐39に固定したときは、図11の右側の二点鎖線で示す略扇形の範囲A2をマスクすることにより、使用者の顔画像を処理範囲から除外することができる。
【0087】
マスキング機能は、例えば、画像記録装置12から、マスキング範囲の設定信号を送信し、顔画像抽出手段72で、無線通信インターフェース20を介してこの設定信号を受信することにより、設定を行うことができる。
【0088】
マスキングの終了後は、全方位画像75の明るさや色調の補正を行い(S3−3)、次いで、全方位画像75の各画素から肌色の画素を検出する(S3−4)。肌色であるか否かの判定は、例えば、RGB値がR>G>Bとなるか否かによって行う。肌色の画素の検出は、マスキング範囲を除いた全ての範囲の画素について行う。
【0089】
次いで、肌色の画素が一定数以上固まって存在するかどうかを判定する(大きさ判定:S3−5)。大きさ判定を行うときは、まず、肌色の画素にラベルを付けて区分を行う。例えば、ある肌色の画素に隣接する肌色の画素があった場合、この2つの画素には同じ番号のラベルを付ける。一方、離れた位置に別の肌色の画素があった場合には、異なる番号のラベルを付ける。このようにして、異なる人物の顔画像に、それぞれ異なる番号のラベルを付けて、区分することができる。
【0090】
次いで、肌色の画素の大きさを比較するための補正を行う。すなわち、ドーナツ形状の全方位画像75を矩形のパノラマ画像に変換すると、形状や長さが変化する。例えば、長方形を、全方位画像上に表したとき、長方形の上下の辺の長さは、それぞれ全方位画像の中心からの距離に比例した長さとなり、形状も円弧状に変化する。このため、全方位画像75の各画素に半径の逆数を乗じた値を各画素の補正値とする。そして、各補正値を同じ番号のラベル毎に合計して閾値と比較し、大きさ判定を行う。
【0091】
閾値より大きい肌色画素の固まりが存在する場合は、次行程に進む。一方、肌色の画素が検出されなかった場合や、閾値より大きい肌色画素の固まりが存在しない場合には、判別可能な人物の顔が写っていないと考え、画像送信を行わず、処理を終了する(S3−9)。
【0092】
肌色画素の固まりが存在する場合は、この固まりが含まれた顔画像76の切り出しを行う(S3−6)。顔画像76を切り出すためには、同じ番号のラベルが付いた肌色画素の固まりより少し大きい範囲を、半径方向の直線と周方向の円弧とによって囲むように切り出す。この工程によって一又は二以上の顔画像76が切り出される。
【0093】
次いで、切り出した顔画像76の正規化を行う(S3−7)。正規化は、顔画像76のサイズを一定の大きさに揃えることによって行う。例えば、半径方向の長さと、周方向の長さとを規定しておき、切り出した顔画像76のサイズが規定の大きさになるように拡大または縮小する。この工程によって一又は二以上の顔画像76が正規化された顔画像77となる。
【0094】
顔画像抽出手段72は、正規化された顔画像77を顔画像データとしてカメラ制御部19に渡す(S3−8)。
【0095】
図9に示すように、カメラ制御部19は、受け取った顔画像データを、送信順に送信用バッファに待機させておき、無線通信インターフェース20を介して、一又は二以上の顔画像データを画像記録装置12に送信する(S2−7)。
【0096】
指定時間が経過したときは、撮影した全体画像を、そのまま、すなわち、全方位画像のまま、画像記録装置に無線で送信する(S2−8)。測定時間は、全方位画像を送信したときにリセットされるので、指定時間が経過する度に、全体画像が送信されることになる。
【0097】
顔画像送信(S2−7)、または全体画像送信(S2−8)が終了すると、検出スイッチ22のチェック工程(S2−2)に戻る。このようにして、全方位カメラ71は、検出スイッチ22がオフになるまで、顔画像または全体画像を送信する。
【0098】
画像記録装置12に送信された顔画像77は、全方位画像をパノラマ画像に変換する方法と同じ方法によって、矩形の顔画像78に変換することができる。なお、この処理は送信前の正規化の工程(S3−7)で行っておくことも可能である。また、全方位画像から切り出した顔画像に、顔画像の撮影方向のデータを付加しておくことも可能である。後に顔画像の撮影方向を確認することによって、撮影された人物が、どの方向から近づいてきたかを認識することができる。
【0099】
本実施の形態では、顔画像送信手段73と全体画像送信手段74とを用いて、顔画像と全体画像を保存できるので、近づいてきた人物だけでなく、周囲の状況も判別でき、どの場所で、事故や事件が発生したか知ることができる。
【0100】
なお、本実施の形態に、第1の実施の形態の通信停止通知メール送信手段60と、画像停止通知メール送信手段62とを組み合わせて用いることも可能である。画像停止通知メール送信手段62を使用する場合には、送信された全体画像同士を比較して、画像が停止したか否かを判断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、カメラの撮影範囲の死角を少なくし、通勤、通学または就業時の安全性を高めることができる安全行動支援システムに利用でき、また、監視カメラシステムや移動体用レコーダとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1の実施の形態の安全行動支援システムの構成図
【図2】(A)は、同安全行動支援システムの全方位カメラの詳細説明図、(B)は同安全行動支援システムの画像記録装置の詳細説明図
【図3】同安全行動支援システムの全方位カメラの正断面図
【図4】(A)は、本発明の第1の実施の形態の安全行動支援システムの全方位カメラの使用状態を示す斜視図、(B)は、同全方位カメラ使用時の鉛直方向の視野角を示す説明図、(C)は、同全方位カメラ使用時の水平方向の視野角を示す説明図
【図5】通信停止通知メール送信手段、検出手段および画像停止通知メール送信手段の動作を示す説明図
【図6】本発明の第2の実施の形態の安全行動支援システムの全方位カメラの正断面図
【図7】(A)は、本発明の第2の実施の形態の安全行動支援システムの全方位カメラ使用時の上下方向の視野角を示す説明図、(B)は、同全方位カメラ使用時の左右方向の視野角を示す説明図
【図8】(A)は、全方位カメラにより撮影した全方位画像の参考図、(B)は、全方位画像をパノラマ画像に変換した状態を示す参考図
【図9】本発明の第3の実施の形態の安全行動支援システムの顔画像抽出手段、顔画像送信手段および全体画像送信手段の動作を示すフローチャート
【図10】同安全行動支援システムの顔画像抽出手段の詳細な動作を示すフローチャート
【図11】同安全行動支援システムの全方位カメラ使用時の全方位画像の参考図
【図12】同全方位カメラ使用時の顔画像の加工手順を示す参考図
【符号の説明】
【0103】
10 安全行動支援システム
11 ネットワーク
12 画像記録装置
13 全方位カメラ
14a〜14c 無線基地局
15 通信インターフェース
16 制御装置
17 記憶装置
18 撮像部
19 カメラ制御部
20 無線通信インターフェース
21 電源制御部
22 検出スイッチ
23 筐体
24 透明筒
25 蓋体
26 肩紐ホルダ
27 回転双曲面ミラー
28 高輝度LED(動作状態表示装置)
29 二次電池
30 回路部
31 集光レンズ
32 イメージセンサ
33 イメージセンサ制御部
34 開口部
35 ランドセル(肩掛け鞄)
36 肩紐
37 上板部
38 下板部
39 肩紐
40 システムバス
41 CPU
42 メモリ
43 システムバス
44 メモリ
45 電源部
50 全方位カメラ
51 頭部ホルダ
52 検出スイッチ
53 ヘルメット
54 基台部
55 ボルト部材
56 ナット部材
57 外殻部
58 緩衝部
59 着装体
60 通信停止通知メール送信手段
61 検出手段
62 画像停止通知メール送信手段
70 安全行動支援システム
71 全方位カメラ
72 顔画像抽出手段
73 顔画像送信手段
74 全体画像送信手段
75 全方位画像
76 顔画像
77 顔画像
78 顔画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続され、受信した画像データを保存する画像記録装置と、
撮像した画像データを、前記ネットワークを介して前記画像記録装置に無線で送信する全方位カメラとを備えていることを特徴とする安全行動支援システム。
【請求項2】
前記全方位カメラは、検出スイッチと、この検出スイッチのオンオフに連動して前記全方位カメラを動作させる電源制御部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の安全行動支援システム。
【請求項3】
前記全方位カメラは、肩掛け鞄の肩紐部に固定される肩紐ホルダを備え、前記検出スイッチは、前記肩紐ホルダの裏面に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の安全行動支援システム。
【請求項4】
前記全方位カメラは、ヘルメットまたは帽子に固定される頭部ホルダを備え、前記検出スイッチは、前記ヘルメットまたは前記帽子の内側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の安全行動支援システム。
【請求項5】
前記全方位カメラは、全方位から視認可能な位置に設けられ、かつ、前記検出スイッチのオンオフに連動して動作する動作状態表示装置を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかの項に記載の安全行動支援システム。
【請求項6】
前記画像記録装置は、前記画像データと時刻とを同時に記録することを特徴とする請求項1から5のいずれかの項に記載の安全行動支援システム。
【請求項7】
前記画像記録装置は、前記全方位カメラとの通信が停止したときに、所定の宛先にメールを送信する通信停止通知メール送信手段を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれかの項に記載の安全行動支援システム。
【請求項8】
前記画像記録装置は、受信した画像データの変化を検出する検出手段と、
前記検出手段が、画像データの変化がないことを検出したときに、所定の宛先にメールを送信する画像停止通知メール送信手段とを備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれかの項に記載の安全行動支援システム。
【請求項9】
前記全方位カメラは、前記画像データから顔画像を検出し、この顔画像を含む領域を切り出して顔画像データを生成する顔画像抽出手段と、生成した前記顔画像データを前記画像記録装置に無線で送信する顔画像送信手段とを備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれかの項に記載の安全行動支援システム。
【請求項10】
前記全方位カメラは、所定時間おきに、撮像した画像データを、前記画像記録装置にそのまま無線で送信する全体画像送信手段を備えていることを特徴とする請求項9に記載の安全行動支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−235910(P2007−235910A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228899(P2006−228899)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000233697)株式会社日鉄エレックス (51)
【Fターム(参考)】