説明

安定なヒドロアルコール組成物

【課題】皮膚消毒用製品として有用な組成物を提供すること。
【解決手段】約35:65〜100:0の重量比の低級アルコールおよび水と、少なくとも2種の乳化剤を含む少なくとも0.5〜8.0重量%の増粘剤系とを含む組成物であって、各乳化剤が少なくとも0.05重量%で存在し、補助増粘剤を含まない当該組成物が23℃で少なくとも4,000の粘度を有し、各乳化剤が少なくとも1つの疎水性基および少なくとも1つの親水性基を含む組成物を開示する。この組成物は術前洗浄代用品、ローションまたは他の手製剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚消毒薬、手術用手製剤(surgical hand preparation)、患者皮膚製剤および抗菌ハンドローションとして有用な組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、混合された乳化剤系を用いて増粘された安定なヒドロアルコール組成物(hydroalcoholic composition)に関する。
【背景技術】
【0002】
感染性疾患に対する院内感染および暴露の制御は、医師、看護婦、および病院や手術センターで働く医療スタッフに最重要の関心事である。感染を制御する最も効果的な方法の内の1つは、各患者との接触前後、特に各手術処置前後の系統化された手の消毒である。手の消毒は、一般に、水と共に抗菌石鹸を用いて達成される。これらの石鹸は、通常はポビドン−ヨウ素(通常7.5重量%)またはグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)(通常2または4重量%)のいずれかを、抗菌剤として含有するように配合される。さらに、これらの配合石鹸は、界面活性剤およびできるだけ低レベルのグリセリン等の保湿剤を含有してもよい。
【0003】
手の消毒は、術前洗浄代用品を用いることによっても達成される。術前洗浄代用品は石鹸および水洗浄の代わりに用いられる。術前洗浄代用品は、理想的には、短時間で従来の石鹸および水洗浄と同様にあるいはそれ以上に細菌を死滅させる。また、それらは、許容できる触質性を提供しつつ、微生物や化学汚染に対して皮膚の自然バリアーを維持または改善する。術前洗浄代用品の例としては、一般に高レベルのエタノールまたはイソプロパノールのいずれかを消毒剤として含み、増粘剤およびさらに所望により保湿剤(例えばグリセリン)を含むヒドロアルコールゲルが挙げられる。現在まで、ヒドロアルコールゲルに使用される増粘剤としては、ポリアクリル酸(米国オハイオ州、クレーブランドのBF Goodrich Specialty Polymers and Chemicals DivisionによりCarbopolなる商標名で販売される)等のアニオンポリマーベースであった。Tomlinsonに対する米国特許第4、915,934号は、ヒドロアルコール溶媒、脂肪アルコール、および界面活性剤をベースとするCHG含有抗菌フォームの使用を開示している。界面活性剤は、エトキシル化ソルビタンアルキレート、エトキシル化脂肪アルコールおよびエトキシル化ノニルフェノールよりなる群から選択される。
【0004】
安定な粘性ヒドロアルコールエマルジョンを配合するのは2つの理由から困難である。第1に、短鎖アルコール(エタノール等)を水性系に添加すると、表面張力は劇的に減少する。例えば、20℃で約72ダイン/cmの表面張力を示す純水にくらべて、40重量%エタノール水溶液は、約31ダイン/cmの表面張力を示す。60重量%エタノールのヒドロアルコール溶液は、水と比較して表面張力が劇的に減少する。このような組成物は、20℃で約27ダイン/cmの表面張力を示す。第2に、典型的に化粧用エマルジョンに使用される多くの界面活性剤は、ヒドロアルコール系で完全にまたは部分的に可溶性となる。
【0005】
スキンケアについての報告書51−0001−259において、米国デラウエア州、ウィルミントンのICI AmericaのSpecialty Chemicalsは、エタノールはスキンケア用エマルジョンにいくつかの利点を提供できるが、製造者がエタノールの存在下で安定なエマルジョンを製造するのが困難であるため、しばしばエタノールを避けると述べている。事実、この報告では、引き続いてエマルジョンを分離するのにエタノールをしばしば用いると述べている。
【0006】
Leeに対する米国特許第4,956,170号は、ヒドロアルコール皮膚用保湿/コンディショニング抗菌ゲルを開示している。このゲルは、60〜75%のエタノールおよび0.4〜2%の高分子増粘剤を含む。その配合物は、脂肪アルコールに加えて、添加皮膚軟化剤油を安定化するポリエトキシル化非イオン界面活性剤/乳化剤も含む。
【0007】
Linsに対する米国特許第5,167,950号は、高アルコール含量を有する抗菌エアゾールムースを開示している。該ムースは、アルコール、水、高分子ゲル化剤、ならびに炭素数16〜22のアルコール、エアゾール噴射剤および非イオンポリエトキシル化界面活性剤を含む界面活性剤系から構成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、術前手製剤、患者製剤、ローション等の皮膚消毒用製品として有用な組成物を提供する。本発明の好ましい配合物は、一般に、一回および数回の適用後に非常に素晴らしい触感を有する。また、好ましい配合物は数回適用後に皮膚状態を維持または改善し、適用後手洗い中にべたべた感や異常感がない。術前洗浄の代用品として用いると、本発明は、微生物および化学汚染に対する皮膚の自然バリアーを維持または改善しつつ、短時間で従来の石鹸および水洗浄と同様にあるいはそれ以上に細菌、真菌およびウイルスを死滅させる。本発明は高濃度の低級アルコールを含有する粘稠組成物を提供することによって従来の組成物の欠点を克服するが、組成物を粘稠にするための高分子増粘剤系を必要としない。さらに、該組成物は化粧品的に上品な触感を有するとともに、ローションまたはフォームとして供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、重量比約35:65〜100:0の低級アルコールおよび水と少なくとも2種の乳化剤を含む少なくとも0.5〜8.0重量%の増粘剤系であって、各々の乳化剤が少なくとも0.05重量%存在し、補助増粘剤を含まない当該組成物が23℃で少なくとも4000センチポアズの粘度を有するように前記乳化剤が選択され、かつ、各々の乳化剤が少なくとも1つの疎水性基および少なくとも1つの親水性基を含み、
(i)前記疎水性基が炭素原子数が少なくとも16のアルキル基、炭素原子数が少なくとも16のアルケニル基または炭素原子数が少なくとも20のアラルキルもしくはアラルケニル基を含み、
(ii)前記親水性基が、構造式−NHR’’’により表されるアミド(式中R’’’は水素または有効な位置においてN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基を含む);短鎖アルコールまたは酸のエステル(例えば、−C(O)OR’または−OC(O)R’)(式中R’は有効な位置においてヒドロキシル基で任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4の分岐または直鎖アルキルである);1〜10個のグルコース単位を有するポリグルコシド;1〜15個のグリセロール単位を有するポリグリセロールエステル;二級アミン;三級アミン、四級アミン;スルフェート(−OSO2-M)、スルホネート(−SO2-M)、ホスフェート((−O)2P(O)O-Mまたは−OP(O)(O-2M)、ホスホネート(−PO(O-2M)およびカルボキシレート(−CO2-M)を含むアニオン基;構造式:−N+(R”)2(CHQ)xL’または
【0010】
【化1】

【0011】
(式中R”は水素、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄原子で任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアルキレン基、またはアルキレンカルボキシル基であって、アルキルもしくはアルキレンカルボキシル基は1〜6個の炭素原子を含み、Qは水素またはヒドロキシルであり、xは1〜4の値であり、L’は−CO2-M,−OP(O)(O-2M,(−O)2P(O)O-Mまたは−SO2-Mまたは−OSO2-M(式中Mは乳化剤の正味の電荷を中性にするのに必要なモル比で存在する正電荷対イオンであって、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムまたはN+R’3(各R’は独立にN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基である)よりなる群から選択される)である)で示される両性イオン化合物;および任意にアルコール;および/または疎水性物質1モルあたり2〜150モルのエチレンオキシド単位を有するエーテルまたはエステル結合を介して疎水性基に結合されたポリエチレングリコール、疎水性物質1モルあたり2〜150モルのエチレンオキシド単位を有し、任意に炭素原子数1〜36アルキルまたはアルカリールエステルを末端基としていてもよいポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールコポリマー;および/または多価アルコールおよびそれらのポリエトキシル化誘導体のエステル;ソルビタンおよびポリエトキシル化ソルビタン;ならびにこれらの群の組合せ、を含む組成物を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、安定なヒドロアルコール組成物を製造する方法であって、少なくとも2種の乳化剤を含む増粘剤系を調製する工程であって、各々の乳化剤が少なくとも0.05重量%存在し、補助増粘剤を含まない当該組成物が23℃で少なくとも4000センチポアズの粘度を有するように前記乳化剤が選択され、かつ、各々の乳化剤が少なくとも1つの疎水性基および少なくとも1つの親水性基を含み、(i)前記疎水性基が炭素原子数が少なくとも16のアルキル基、炭素原子数が少なくとも16のアルケニル基および炭素原子数が少なくとも20のアラルキルまたはアラルケニル基を含み、(ii)前記親水性基が、構造式−NHR’’’により表されるアミド(式中R’’’は水素または有効な位置においてN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基を含む);短鎖アルコールまたは酸のエステル(例えば、−C(O)OR’または−OC(O)R’)(式中R’は有効な位置においてヒドロキシル基で任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4の分岐または直鎖アルキルである);1〜10個のグルコース単位を有するポリグルコシド;1〜15個のグリセロール単位を有するポリグリセロールエステル;二級アミン;三級アミン;四級アミン;スルフェート(−OSO2-M)、スルホネート(−SO2-M)、ホスフェート((−O)2P(O)O-Mまたは−OP(O)(O-2M)、ホスホネート(−PO(O-2M)およびカルボキシレート(−CO2-M)を含むアニオン基;構造式:−N+(R”)2(CHQ)xL’または
【0013】
【化2】

【0014】
(式中R”は水素、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄原子で任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアルキレン基またはアルキレンカルボキシル基であり、L’は−CO2-M,−OP(O)(O-2M,(−O)2P(O)O-Mまたは−SO2-Mまたは−OSO2-M(式中Mは乳化剤の正味の電荷を中性にするのに必要なモル比で存在する正電荷対イオンであって、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムまたはN+R’3(各R’は独立にN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基である)よりなる群から選択される)であり、Qは水素またはヒドロキシルであり、xは、1〜4の値である)で示される両性イオン化合物;および任意にアルコール;および/または疎水性物質1モルあたり2〜150モルのエチレンオキシド単位を有するエーテルまたはエステル結合を介して疎水性基に結合されたポリエチレングリコール、疎水性物質1モルあたりエチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位を合計2〜150モル有し、任意にC1〜C36アルキルまたはアルカリールエステルを末端基としていてもよいポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールコポリマー;および/または多価アルコールおよびそれらのポリエトキシル化誘導体のエステル;ソルビタンおよびポリエトキシル化ソルビタン;ならびにこれらの群の組合せ、を含む増粘剤系を製造する工程と;前記増粘剤系を少なくとも約0.5〜8.0重量%を含む組成物を提供する量でヒドロアルコール溶媒および前記増粘剤系を、前記増粘剤系を溶融するのに十分な温度で組み合わせる工程とを含む方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、安定なヒドロアルコール組成物を製造する方法であって、(a)少なくとも2種の乳化剤を含む増粘剤系をそれを溶融させるのに十分な温度に加熱する工程であって、各々の乳化剤が少なくとも0.05重量%存在し、補助増粘剤を含まない当該組成物が23℃で少なくとも4000センチポアズの粘度を有するように前記乳化剤が選択され、かつ、各々の乳化剤が少なくとも1つの疎水性基および少なくとも1つの親水性基を含み、(i)前記疎水性基が炭素原子数が少なくとも16のアルキル基、炭素原子数が少なくとも16のアルケニル基または炭素原子数が少なくとも20のアラルキルまたはアラルケニル基を含み、(ii)前記親水性基が、構造式−NHR’’’を有するアミド(式中R’’’は水素または有効な位置においてN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基を含む):短鎖アルコールまたは酸のエステル(例えば、−C(O)OR’または−OC(O)R’)(式中R’は有効な位置においてヒドロキシル基で任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4の分岐または直鎖アルキルである);1〜10個のグルコース単位を有するポリグルコシド;1〜15個のグリセロール単位を有するポリグリセロール;二級アミン;三級アミン;四級アミン;スルフェート(−OSO2-M)、スルホネート(−SO2-M)、ホスフェート((−O)2P(O)O-Mまたは−OP(O)(O-2M)、ホスホネート(−PO(O-2M)およびカルボキシレート(−CO2-M)を含むアニオン基;構造式:−N+(R”)2(CHQ)xL’または
【0016】
【化3】

【0017】
(式中R”は水素、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄原子で任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアルキレン基、またはアルキレンカルボキシル基であって、アルキルもしくはアルキレンカルボキシル基は1〜6個の炭素原子を含み、Qは水素またはヒドロキシルであり、xは1〜4の値であり、L’は−CO2-M,−OP(O)(O-2M,(−O)2P(O)O-M、−SO2-Mまたは−OSO2-M(式中Mは乳化剤の正味の電荷を中性にするのに必要なモル比で存在する正電荷対イオンであって、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムまたはN+R’3(各R’は独立にN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基である)よりなる群から選択される)である)で示される両性イオン化合物;および任意にアルコール;および/または疎水性物質1モルあたり2〜150モルのエチレンオキシド単位を有するエーテルまたはエステル結合を介して疎水性基に結合されたポリエチレングリコール、疎水性物質1モルあたりエチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位を合計2〜150モル有し、任意にC1〜C36アルキルまたはアルカリールエステルを末端基としていてもよいポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールコポリマー;および/または多価アルコールのエステルおよびエーテルならびにそれらのポリエトキシル化誘導体;ソルビタンおよびポリエトキシル化ソルビタン;ならびにこれらの群の組合せからなる工程と;(b)前記増粘剤系および水性相を組み合わせる工程と;(c)低級鎖アルコールを水性/増粘剤系の組合せに添加する工程であって、当該組成物中のアルコールと水の重量比が約35:65〜100:0であり、増粘剤系が組成物中に少なくとも約0.5〜8.0重量%存在する工程を含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
定義
ここで用いる「周囲温度」とは、約21〜25℃の範囲の温度をいう。
ここで用いる「補助増粘剤」とは、増粘剤系の不在下でも溶媒相の粘度を増大させる添加剤(後記増粘剤系を含む乳化剤以外)をいう。ある種の補助増粘剤は増粘剤系と相乗的に作用して、得られる配合物の粘度を増大させる。補助増粘剤は特に限定しないが、可溶性/膨潤性ポリマーおよびシリカ、ケイ酸マグネシウムアルミニウム等の会合性コロイド増粘剤が例として挙げられる。
ここで用いる「皮膚軟化剤」とは、繰り返して使用した時に皮膚の水分量、コンプライアンスまたは外観を維持または改善できる物質を広範的にいう。
ここで用いる「乳化剤」は、「界面活性剤」と同じ意味であり、同一分子中に親水性(極性)および疎水性(非極性)領域を有する分子をいう。
ここで用いる「エマルジョン」とは、1つの液体の第2の不混和液中への安定な分散体をいう。
ここで用いる「ローション」とは、全く噴射剤を含まない液体またはクリームをいう。
ここで用いる「溶融温度(Tm)」とは、本発明の組成物またはエマルジョンがその粘度を劇的に失う温度をいう。
ここで用いる「ポリマー」とは、繰り返し単位を有し、かつ、少なくとも20,000の数平均分子量を有する天然または合成分子をいう。
ここで用いる「溶媒」、「溶媒系」または「ヒドロアルコール溶媒」は本発明におけるアルコールと水の組合せをいう。
ここで用いる「安定」とは、周囲温度で30分、遠心分離(2275xg)した後、10体積%以下の分離を示す組成物をいう。
ここで用いる「界面活性剤」は、「乳化剤」と同じ意味であり、その定義は上述の通りである。
ここで用いる「増粘剤系」とは、少なくとも2つ以上の乳化剤の組合せであって、各々の乳化剤が、補助増粘剤を用いずに23℃で少なくとも4000センチポアズ以上の粘度を本発明の組成物に付与することができる少なくとも0.05重量%以上の濃度で存在する組合せをいう。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、低級鎖アルコール、水および増粘剤系を含む組成物を提供する。まず本発明に使用されるアルコールについて議論した後、増粘剤系について議論する。抗菌剤および乳化剤等の所望により組成物に添加される成分について議論した後、本発明の組成物の製造法について議論する。
【0020】
アルコール
本発明で使用されるアルコールは、C1〜C4のアルコールのような低級炭化水素鎖アルコールである。好ましい具体例において、アルコールは、エタノール、2−プロパノールおよびn−プロパノールから選択されるが、エタノールが最も好ましい。エタノールは広範囲の抗菌スペクトルおよび微生物の急速死滅を提供し、医師、看護婦および臨床医のような消費者に許容される匂いを有するので、好ましいアルコールである。本発明では、単独のアルコールを使用してもよく、2種以上のアルコールの配合物が組成物のアルコール内容物を構成してもよいことが予測される。
【0021】
本発明におけるアルコールと水の比率は、重量比で約35:65〜100:0である。アルコールと水の比率が40:60〜95:5である組成物は、効力のある即時滅菌を確実にする。好ましい具体例において、アルコールと水の比率は、重量比で約50:50〜85:15であり、さらに好ましくは約60:40〜約75:25、最も好ましくはアルコールと水の重量比は約64:36〜72:28である。高級アルコールと水の比率は、好ましい抗菌活性のための好ましい具体例で使用され、組成物を早く乾燥させることができる。
【0022】
増粘剤系
本発明において有用な増粘剤系は、最終組成物の化粧品特性に影響を及ぼす。好ましくは、本発明の手製剤およびハンドローションは、以下の望ましい化粧品特性を示す。当該組成物は、粉を適用した手術用手袋の下の方に手袋用パウダーを過剰に凝集させるものではなく、そして手袋用素材の保全性に影響を及ぼすものでない。当該組成物は、25℃で、好ましくは35℃まで許容しうる粘度を保持するものである。最後に、ほとんどの配合の好ましい具体例において、加熱および冷却のサイクル(50℃までまたはそれ以上の加熱および周囲温度までの冷却)ならびに凍結/解凍サイクル(−30℃までの冷却および周囲温度までの加熱)に対して安定である。これらすべての化粧用特性は、本発明の増粘剤系を構成する以下で議論される乳化剤のタイプおよび量によって影響される。
【0023】
本発明の増粘剤系は、許容しうる化粧品特性および好適な粘度を提供するために、上述のヒドロアルコール溶媒と相溶性でなければならない。本発明の組成物は、Brookfield LVDV −I+粘度計およびヘリオパスアダプターを有するTスピンドルのような低剪断粘度計を使用して測定した場合に少なくとも23℃で4000cps、好ましくは少なくとも20,000cps、さらに好ましくは少なくとも50,000cps、最も好ましくは約80,000〜500,000cpsの粘度を有する。皮膚軟化剤系および他の任意の成分は粘度に(好ましいまたは好ましくない)影響を及ぼす可能性があるので、測定粘度は全く補助増粘剤を添加しない最終組成物のものである。
【0024】
本発明の粘度は、少なくとも2種の乳化剤で構成される増粘剤系によって付与される。好ましい具体例では、乳化剤の少なくとも1種は、室温で固体であり、炭素原子数が少なくとも16、好ましくは炭素原子数が少なくとも18、さらに好ましくは炭素原子数が少なくとも22の少なくとも1種の長鎖炭化水素を含む。本発明の乳化剤は、同一分子中に親水性(極性)および疎水性(非極性)領域を有する分子であって、一般構造式:
(R)(L)
で表される分子を含む。式中、「R」は、疎水性基を示し、Lは親水性基を示す。本発明において、「R」は炭素原子数が少なくとも16、好ましくは炭素原子数が少なくとも18、より好ましくは炭素原子数が20、最も好ましくは炭素原子数が少なくとも約22のアルキル基:炭素原子数が少なくとも16、好ましくは18、最も好ましくは20のアルケニル基;または炭素原子数が少なくとも20、好ましくは少なくとも24、最も好ましくは少なくとも26のアラルキルまたはアラルケニル基を含む。好ましい態様では、Rは枝分かれしていない。。「L」は、構造式−NHR’’’により表されるアミド(式中R’’’は、水素、もしくは有効な位置においてN,OおよびSで任意置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基である);短鎖アルコールまたは酸のエステル(例えば、L=−C(O)OR’または−OC(O)R’、式中R’は、有効な位置においてヒドロキシル基で任意に置換されていてもよい炭素数1〜4の分岐鎖または直鎖アルキルである);1〜10個のグルコース単位、さらに好ましくは1〜3個のグルコース単位を有するポリグルコシド;1〜15個のグリセロール単位、好ましくは2〜12個、最も好ましくは3〜10個のグリセロール単位を有するポリグリセロールエステル;二級アミン;三級アミン;四級アミン;スルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネートおよびカルボキシレートを包含するアニオン基を含む。「L」は、さらに構造式:−N+(R”)2(CHQ)xL’または
【0025】
【化4】

【0026】
(式中R”は水素、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄原子で任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアルキレン基、またはアルキレンカルボキシル基であって、アルキルもしくはアルキレンカルボキシル基は1〜6個の炭素原子を含む;Qは水素またはヒドロキシル基である;xは1〜4の値である;L’は−CO2-M,−OP(O)(O-2M,(−O)2P(O)O-M,−SO2-Mまたは−OSO2-M(式中Mは、乳化剤の正味の電荷を中性にするのに必要なモル比で存在する正電荷対イオンであって、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムまたはR+R’3(各R’は独立にN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基である)。さらに、Lは任意にアルコール;および/または疎水基1モル当たり2〜150モルのエチレンオキシド単位を有するエーテルまたはエステルを介して疎水性基に結合されたポリエチレングリコール、疎水性物質1モル当たりエチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位を合計2〜150モル有し、任意にC1〜C36アルキルまたはアルカリールエステルを末端基としていてもよいポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールコポリマー;および/または多価アルコールのエステルおよびエーテルならびにそれらのポリエトキシル化誘導体;ソルビタンおよびポリエトキシル化ソルビタン;ならびにこれらの群の組合せ、例えばポリエトキシル化ポリグルコシドである。「a」および「b」は、独立に1〜4の値である。一般的に、非イオン乳化剤での疎水性基および親水性基は、2〜20、さらに好ましくは4〜16の親水性新油性バランス(HLB)を示すように選択される。さらに、増粘剤系の重量平均HLBは、好ましくは4〜16、そしてさらに好ましくは8〜12である、(例えば、HLB10を示す乳化剤を40重量%、およびHLB15を示す乳化剤を60重量%含む増粘剤系は、13の重量平均HLBを示す。)
【0027】
増粘剤系を含む乳化剤は、単一の種類の界面活性剤(例えば、鎖長アルキルポリグリコシドの混合物)から選択されてもよいが、乳化剤の種類に属する混合物であるのが好ましい。多くの入手可能な乳化剤は、実際には、種々の鎖長を有するものの混合物で構成される。例えば、入手可能ビフェニルアルコールは、実際には、一級のC22およびC20分画から構成されるアルコールの混合物であるが、検出可能なレベルのC24,C18およびC16分画を含む。この理由から、本明細書に明記された鎖長は、数平均鎖長を意味する。さらに、本発明の複数の乳化剤増粘剤系で、増粘剤系の成分と見なされる程度に各乳化剤は、少なくとも0.05重量%、さらに好ましくは少なくとも0.1重量%の濃度で存在する。本発明の増粘剤系は、比較的低い全乳化剤濃度で高い粘度を達成できる。増粘剤系として存在する乳化剤の全濃度は、一般に本発明の全組成物に対して、約8重量%未満、好ましくは約5重量%未満、さらに好ましくは4重量%未満、最も好ましくは3重量%未満である。本明細書において、配合物内に乳化剤が存在することによって組成物の粘度に増加を生じる場合、乳化剤は増粘剤系の一部であるとみなされる。ある種の乳化剤が組成物の粘度を増加させない場合、以下に規定されるように、皮膚軟化剤または安定化剤とみなされる。
【0028】
実質的に高分子増粘剤を含まない本発明の好ましい組成物は、「溶融温度」(Tm)を有する。組成物をこの溶融温度より上に加熱すると、劇的に粘度を失う。室温で高い粘度を維持するために、本発明の組成物は25℃以上の溶融温度を有することが好ましい。さらに好ましくは、皮膚に塗布した時に粘度を維持するために、溶融温度は35℃以上である。冷蔵なしの配送および取扱いを可能とするように、最も好ましい配合物は40℃以上の溶融温度を有する。増粘剤系は、提供される組成物の溶融温度に影響を及ぼす。好ましい溶融温度を得るために、好ましい増粘剤系は、周囲温度で固体である少なくとも1種乳化剤を含む。増粘剤系の全ての乳化剤は、得られる組成物の溶融温度を増加させるために周囲温度で固体であるのが好ましい。
【0029】
増粘剤系での乳化剤の構造は、得られる組成物の溶融温度に影響を及ぼす。好ましい態様では、増粘剤系中の少なくとも1種の乳化剤は、結晶構造を発達させることができる。結晶化度は長い直鎖アルキル基によって高められるため、少なくとも1種の乳化剤は炭素原子数が少なくとも16、好ましくは少なくとも18、最も好ましくは少なくとも20の飽和直鎖炭化水素を含むのが好ましい。特に、ある種の親水性先端基(head group)が会合と結晶化を促進することが判明した。好適な結晶乳化剤としては、アルキルアルコール、アルキルポリグリコシド、ポリグリセロールアルキルエステル、アルキルアルコールのC1−C4エステル、カルボン酸アルキルのC1−C4エステル類、任意に置換されたアルキルアミド、アルキルベタインおよびリン酸アルキルまたはリン脂質アルキル、アルキル四級アミン、アルキルアミンオキシドポリエトキシル化アルキルアルコールおよびポリエチレングリコールのアルキルエステルが挙げられる。
【0030】
当該組成物の溶融温度に影響を及ぼすことに加えて、乳化剤鎖長は、当該組成物に使用することができるエタノールの最大量および増粘剤系で必要とされる乳化剤の濃度を決定する助けにもなる。より高いレベルのアルコールでは、粘性のある安定なエマルジョンを生成するための長鎖乳化剤が必要とされる。より高いレベルのアルコールが、より低いレベルのアルコールより高い程度まで増粘剤を膨張または溶解する傾向にあると考えられる。したがって、エタノールの濃度が増加するにつれて、溶融温度を35℃以上に維持するために、増粘剤系中の炭化水素鎖の鎖長も増大する。例えば、68:32のエタノール:水中、C18ポリエトキシレート(米国デラウエア州、ウイルミントンのICIから入手可能なBrij 76)との組合せでC16/C18アルキルポリグリコシド(米国ニュージャージー州、フェアーフィールドのSeppic,Inc.から入手可能なMontanov 68)ベースの系は、約35℃の溶融温度を有する。C22炭化水素鎖を有する同様の系は、45℃以上の溶融温度を有する。また、増粘剤系中の疎水性成分の鎖長が増加するにつれて、ある粘度に達するのに必要とされる乳化剤の量は減少する。例えば、Montanov 68(C16/C18アルキルポリグリコシド)/Brij 76(ポリエトキシ化C18アルコール)増粘剤系は、好適な粘度に達するために、約5%の全乳化剤を必要とする。C22疎水性基ベースの同様の系は、わずか2%の全乳化剤で好適な粘度を達成する。
【0031】
乳化剤の親水性先端基の性質および大きさは重要で、どの増粘剤系が粘性の安定な系を作るかを決定する助けとなる。乳化剤の特定の組み合わせによって、粘性のある安定なエマルジョンが生じる。理論に拘束されずに、大きさ、電荷および水素結合の程度は、どのように乳化剤が相互作用するかを決定する重要なパラメーターである。
【0032】
多くの好ましい増粘剤系は、非常に安定な粘弾性組成物を製造できる。乳化剤の比率を変化させることによって、弾性の程度は、ほとんど純粋な粘性組成物から高弾性でかなり粘質の組成物まで調整することができる。皮膚軟化剤を加える場合、系の粘弾性を増加させると、非混和性の皮膚軟化剤の分離を抑げるように安定性が増大する。しかし、通常、粘性組成物は化粧品として魅力のある製品を提供しないので、過剰の弾性は好まれない。少なくとも2種の疎水性成分と一緒にある種の乳化剤を添加すると、粘弾性が制限される一方で、確実に粘性の安定な組成物になる。好ましい種類の複疎水性成分乳化剤は、実質的に以下の構造:
【0033】
【化5】

【0034】
(式中、R’およびR”は、炭素原子数が少なくとも16の長鎖アルキルまたはアルケニル炭化水素鎖であり;
R’’’は、炭素原子数1〜4の短鎖アルキル基であって、好ましくはメチルまたはエチルであり;
R’’’’は、R’またはR’’’のいずれかと同じであり、好ましくはR’’’と同じであり;
Xは、ハロゲン、R’’’SO3-、R’’’SO4-またはR’’’CO2-である)で表される四級アンモニウム塩である。
【0035】
いくつかの好ましい構造としては、ジステアリルメチルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジメチルアンモニウムクロリドおよびジベヘニルジメチルアンモニウムメトスルフェートが挙げられ、ジベヘニルジメチルアンモニウムメトスルフェートがより好ましい構造である。他の好適な複疎水性乳化剤としては、ジアルキルグリセロールエステル、トリアルキルグリセロールエステル、ポリグリセロールアルキルエステル、エチレングリコールジアルキルエステル、ポリエチレングリコールジアルキルエステル、エチレンジアミンのようなジアミンのジアルキルアミド、ペンタエリトリトールとジアルキル(任意にエトキシル化)ホスフェートのポリアルキルエステル類およびポリエトキシル化アルキルアルコールのアルキルエステルが挙げられる。
【0036】
以下の乳化剤の種類は、本発明に使用するための好適な乳化剤の非限定実施例として供される。いくつかの好ましい乳化剤の例を各乳化剤の種類に対して示す。本発明において、乳化剤は安定な粘性組成物を生成する増粘剤系を提供するために少なくとも1種の共乳化剤と共存しなければならない。
【0037】
1.アルキルまたはアルケニルポリグルコシド:
【0038】
【化6】

【0039】
式中、Rは炭素原子数が少なくとも16、好ましくは少なくとも18、最も好ましくは少なくとも20の直鎖アルキルまたはアルケニル基、または炭素原子数が少なくとも22、好ましくは少なくとも24、最も好ましくは少なくとも26のアラルキルまたはアラルケニル基であり;
nは1〜10、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3である。
【0040】
好ましいアルキルまたはアルケニルポリグルコシド乳化剤の非限定例としては、米国ニュージャージー州、フェアフィールドのSeppic,Inc.によってMontanov 68として販売されているセテアリールグルコシド、Essai 624 MPとして試験的に製造されているベヘニルグルコシド、Seppic,Inc.によって92%C−22アルコールとトウモロコシ誘導グルコシドを用いて製造されたアルキルポリグルコシド、およびオレイルグルコシドが挙げられる。
【0041】
2.長鎖アルコールまたは酸の短鎖エステル
RC(O)OR’またはROC(O)R’
式中、Rは上記定義に同じであり;
R’は、有効な位置においてヒドロキシル基で任意に置換されていてもよいC1〜C4の分岐または直鎖アルキルである。
【0042】
長鎖アルコールまたは酸のいくつかの好ましい短鎖エステルとしては、米国テネシー州、メンフィスのWitco Humko Chemical DivisionによってKemester 9022として販売されるベヘン酸メチル、WitcoによってKemester 4516として販売されるステアリン酸メチル、WitcoによってKemester 205として販売されるオレイン酸メチル、米国ニュージャージー州、セイルビルのAlzoによってWaxenol 801として入手可能なプロピオン酸アラキジル、乳酸ベヘニル、酢酸ステアリル、および米国ニュージャージー州、パルシパニーのCroda,Inc.から入手可能なグリセロールモノエルケートが挙げられるが、それに限定されない。
【0043】
3.アルキルおよびアルケニルアルコール
6−OH
式中、R6は、炭素原子数が少なくとも16、好ましくは少なくとも18、最も好ましくは少なくとも20の直鎖または分岐鎖アルキルまたはアルケニル炭化水素鎖、または有効な位置においてN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数が少なくとも22、好ましくは少なくとも24、最も好ましくは少なくとも26のアラルキルまたはアルケニル基である。
【0044】
本発明の増粘剤系に有用な好ましいアルキルおよびアルケニルアルコール乳化剤の非限定例としては、米国オハイオ州、シンシナティーのHenkel’s Emery Division からLanette 18として入手可能なステアリルアルコール、HenkelからLanette 22として入手可能なベヘニルアルコール、CrodaからNovolとして入手可能なオレイルアルコール、米国オクラホマ州、ツルサのPetroliteからUnilin 350として入手可能なC−24アルコール、PetroliteからUnilin 425として入手可能なC−31アルコール、米国ニューヨーク州、ニューヨークのM.Michel and Co.からAR−20として入手可能なアラキジルアルコールが挙げられる。
【0045】
4.ポリグリセロールエステル
【0046】
【化7】

【0047】
式中、R1は、独立に水素または炭素原子数が少なくとも16、好ましくは少なくとも18、さらに好ましくは少なくとも20の直鎖アルキル基、または炭素原子数が少なくとも22、好ましくは少なくとも24、さらに好ましくは少なくとも26のアラルキルまたはアラルケニル基であり;nは0〜15、好ましくは1〜12、最も好ましくは2〜10の値である。
【0048】
本発明の増粘剤系に有用な好ましいポリグリセロールエステル乳化剤のいくつかの例としては、米国ニュージャージー州、フェアーローンのLonza Inc.からPolyaldo 10−1−Sとして入手可能なモノステアリン酸デカグリセロール、米国ニュージャージー州、パターソンのBarnet Products CorporationによってTetraglyn 1−Sとして入手可能なモノステアリン酸テトラグリセロールが挙げられるが、これに限定されない。
【0049】
5.四級アミン
【0050】
【化8】

【0051】
式中、Rは上記定義の通りであり;R2は、R3と同じであるかまたは、有効な位置においてN、OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数が少なくとも16、好ましくは少なくとも18、より好ましくは少なくとも20の長鎖アルキルまたはアルケニル炭化水素鎖、または炭素原子数が少なくとも22、好ましくは少なくとも24、最も好ましくは少なくとも26のアラルキルまたはアラルケニル基であり;
3は、炭素原子数1〜4の短鎖アルキル基であって、好ましくはメチルまたはエチルであり:
4は、R2またはR3のいずれかと同じであり、好ましくはR3と同じであり;
Xは、ハロゲン、R3SO3-、R3SO4-、R3CO2-、(R32PO4-または(R32PO4=である。
【0052】
四級アミン乳化剤の非限定例としては、CrodaからDBM−90として入手可能なジベヘニルジメチルアンモニウムメトスルフェート、BarnetからNikkol CA−2580として入手可能な塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、および米国イリノイ州、シカゴのAkzo Chemicals Inc.からArguad T−27Wとして入手可能な塩化牛脂トリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0053】
6.三級アミンおよびそのプロトン化塩
【0054】
【化9】

【0055】
式中、R、R2およびR3は上記定義の通りであり;R2およびR3は、乳化剤1モル当たり1〜50モルのエチレンオキシド基またはプロピレンオキシド基を有するポリエトキシル化またはポリプロキシル化アルキルまたはアルケニルアルコール鎖から選択されてもよく;Yは、ハロゲン、R5SO3-、R5SO4-、R5CO2-、(R5)PO4-または(R52PO4-(R5は有効な位置においてN、OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜22のアルキルまたはアルケニル基を示す)を示す。
【0056】
本発明の増粘剤系に有用な三級アミンおよびプロトン性塩の種類からの乳化剤のいくつかの例としては、CrodaからIncromine BBとして入手可能なベヘナミドプロピルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジメチルアミングルコネート、牛脂ジメチルアミン塩酸塩、二水素化牛脂メチルアミン、ステアリルジエタノールアミン塩酸塩、ポリエトキシル化ステアリルジエタノールアミン塩酸塩が挙げられるが、これに限定されない。
【0057】
7.アミンオキシド類
【0058】
【化10】

【0059】
式中、R2、R3およびR6は上記定義に同じ。
【0060】
本発明の増粘剤系に好適なアミンオキシドの種類からの乳化剤の非限定例としては、CrodaからIncromine B−30Pとして入手可能なベヘナミンオキシド(ベヘニルジメチルアミンオキシド)、CrodaからIncramine Oxide Sとして入手可能なステアラミンオキシド、ベヘナミドプロピルジメチルアミンオキシド、およびAkzoからAromox T/I2として入手可能なビス(2−ヒドロキシエチル)牛脂アミンオキシドが挙げられる。
【0061】
8.ポリエトキシル化アルコールおよびエステルおよびそれらの誘導体
【0062】
【化11】

【0063】
式中、R6は上記定義に同じ;mは0〜200、好ましくは2〜50、最も好ましくは4〜20の値であり;pは0または1である;
8はHまたは
【0064】
【化12】

【0065】
(式中R12はN、OまたはSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜36のアルキル基または炭素原子数6〜36のアラルキルまたはアルキル基である);rは0〜50の値である。
【0066】
ポリエトキシル化アルコールおよびエステルの種類からの好ましい乳化剤のいくつかの例としては、米国デラウエア州、ワーミングトンのICI Americas Inc.からBriji 72として入手可能なSteareth−2、ICIからBriji 76として入手可能なSteareth−10、Barnet Products Inc.からNikkol BB−5として入手可能なべへネス−5、BarnetからNikkol BB−10として入手可能なべへネス−10、米国オクラホマ州、ツルサのPetrolite Corp.からUnitbox 450として入手可能なC31アルキル−10 EO、PetroliteからUnitbox 480nとして入手可能なC31アルキル−40 EO、およびX−5171としてPetroliteから入手可能なUnithox 480のラウリン酸が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0067】
9.両性イオン
【0068】
【化13】

【0069】
式中、Rは上記定義と同じ;各R7は独立に水素またはN、O、およびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基またはアルキレンカルボキシル基であり;L’は、−CO2-、−OP(O)(O-2、(−O)2P(O)O-、−SO2-または−OSO2-であり;各Qは独立にHまたはOHであり;xは1〜4の値である。
【0070】
本発明の増粘剤系に有用な両性イオンの種類からの乳化剤の非限定例としては、ニュージャージー、パターソンのMona IndustriesからPhospholipid SVとして入手可能なステアラミドプロピルPG−ジモニウム クロリドホスフェート、およびCrodaからIncronam B−40として入手可能なベヘニルベタインが挙げられる。
【0071】
10.アルキルおよびアルケニルアミド
【0072】
【化14】

【0073】
式中、R6およびR7は上記定義に同じ。
【0074】
本発明の増粘剤系に有用なアルキルおよびアルケニルアミドの種類からのいくつかの好ましい乳化剤の例としては、WitcoからKemamide Bとして入手可能なベヘナミド、PetroliteからUniwax 1750として入手可能なステアラミド、CrodaからIncromine BBとして入手可能なベヘナミドプロピルジメチルアミン、米国ニュージャージー州、パターソンのLipo Chemicals Inc.からLipamide Dとして入手可能なステアリルジエタノールアミド、およびAkzoからArmid Eとして入手可能なユーカミドが挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0075】
11.多価アルコールのエステル類およびエーテル類
【0076】
【化15】

【0077】
式中、tは0〜4の値であり;各R9は独立にH、CH2OR100または炭素原子数1〜4の炭化水素鎖から選択され、好ましくはC1であり;Sは0または1であり;R10は−Hまたは−R12であり;R12は上記定義の通りであり;Xは−Hまたは−OR10である。
【0078】
エステルおよびエーテルの例としては、モノベヘン酸グリセロール、ジステアリル酸ペンタエリトリトールおよびトリベヘン酸グリセロールが挙げられる。
ポリエトキシル化多価アルコールのエステルおよびエーテルも有用である。例えば、ポリエトキシル化モノステアリン酸グリセロール、ポリエトキシル化ベヘン酸ペンタエリトリトール、ポリエトキシル化モノステアリン酸プロピレングリコールが挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0079】
12.アニオン系
〔(R12a-cd〕(M+be
式中、R12はアルキルまたはアルケニル鎖内または上に置換された酸素、窒素または硫黄原子を任意に含有していてもよい炭素原子数が少なくとも16、好ましくは少なくとも18、もっとも好ましくは少なくとも20のアルキルまたはアルケニル;またはアルキルまたはアルケニル基がアルキルまたはアルケニル鎖内または上に任意に置換された酸素、窒素または硫黄原子を含んでいてもよい炭素原子数が少なくとも16、好ましくは少なくとも18、最も好ましくは少なくとも20のポリエトキシル化および/またはポリプロポキシル化アルキルまたはアルケニル基であり、R12は、ポリエトキシル化またはポリプロポキシル化置換基またはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの共重合体であり、これらのポリマーサブ単位は疎水性物質1モル当たり1〜100モル、好ましくは1〜20モルの量で存在する;Lはスルフェート(−OSO2-)、スルホネート(−SO2-)、ホスフェート((−O)2P(O)O-または−OP(O)(O-2)またはカルボキシレート(−CO2-)であり;Mは水素(H+)、ナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、リチウム(Li+)、アンモニウム(NH4+)、カルシウム(Ca+2)、マグネシウム(Mg+2)またはR”A+(R”はRであり、Rは水素または炭素原子数約1〜10のアルキルまたはシクロアルキル基であり、A+はN+3(例えば、N+(CH3R)4、HN+(CH2CH2OH)3、HN(CH2CH2OH)2)よりなる群から選択される))または複素環式N+B(Bは、窒素含有複素環式環を完成する炭素、窒素、硫黄および酸素原子からなる群から選択される3〜7個の原子を有する。)を示し、Rは有効な位置において酸素、窒素または硫黄原子で置換されていてもよい;
aおよびcは独立に1または2であり;
bおよびdは独立に1、2または3であり;
eは(cxb)/bに等しい。
【0080】
本発明の増粘剤系に使用するのに好適な乳化剤のアニオン種からの好ましい乳化剤の非限定例としては、Croda Inc.からCroacid Bとして入手可能なベヘン酸、サウスカロライナ、スパルタンバーグのSpecialty Industrial Products,Inc.からSippostat 0018として入手可能なリン酸ステアリル、およびWitcoから入手可能なステアリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0081】
13.ソルビタン脂肪酸エステル類
【0082】
【化16】

【0083】
式中、R6は、上記定義に同じ;R13はHまたは
【0084】
【化17】

【0085】
を示し;各vは独立に0〜30の値である。
【0086】
ソルビタンの脂肪酸エステル類およびそのポリエトキシル化誘導体、モノおよびポリ脂肪エステルのポリオキシエチレン誘導体も、本発明に有用な追加の乳化剤の例である。
上記乳化剤のある種の組合せは、本発明の粘性で安定な増粘剤系を形成する幾つかの好ましい具体例に有用である。これらの好ましい系を以下に挙げる。
【0087】
【表1】

【0088】
好適な増粘剤系を提供するかどうかを決定するためにある種の組合せの乳化剤を試験することは簡単である。選別方法は、実施例において示す。実施例は、安定なエマルジョンを作るのに必要とされる混合乳化剤の比率について先端基サイズの重要さを示す。例えば、種々のレベルのエトキシル化(Brij)のC18ポリエトキシレートと組合わせたC16/C18アルキルポリグルコシドをベースとする系は、安定なエマルジョンを広範な種々の比率で製造する。
【0089】
理論に拘束されるつもりはないが、本発明の組成物の物理的構造は、エマルジョンのそれであると考えられる。エマルジョンの古典的な定義は、1つの液体の第2の不混和性液体中への安定な分散体である。しかし、先に述べたとおり、本発明の組成物は、室温でワックスである少なくとも1つの乳化剤を使用して形成されるのが好ましい。本発明の組成物は、十分には特徴づけられていないが、第2の液層中での固体、半固体または液層からなる粘性で安定な混合物であると考えられる。ある種の疎水性皮膚軟化剤が本発明に加えられる場合、疎水性乳化剤および不混和性皮膚軟化剤が、「油」を形成するか、または「ヒドロアルコール液層中に分散される疎水性層が「水」中「油」エマルジョンを形成すると思われる。ヒドロアルコール層は、ここで「水」層と見なされる。多くの好ましいエマルジョンは多分に粘弾性であるので、これらのエマルジョンは、選択の乳化剤の結晶化温度より下まで冷却されて、半結晶ゲル状網目構造を形成する液晶エマルジョンであると思われる。ある種の配合剤は、ヒドロアルコール層(いわゆるコアゲル層)強力に相互作用する網目構造を形成する単純に膨張した結晶性沈殿であってよい。本発明の組成物は、この構造の組合せでも存在できる。水系中の液晶およびコアゲル層は、Cosmetics and Toiletries、101巻、73−93頁(1986年)、「可動性および半固体O/Wエマルジョンについてのエマルジョン安定性理論の応用」およびCosmetics and Toiletries、92巻、21−28頁(1977年)、「化粧用ローションおよびクリームの安定性および稠度についての長鎖アルコール(または酸)および界面活性剤の影響」に記載されている。生じる分子会合の実際の型は、特定温度で増粘剤系を含む乳化剤の極性および炭化水素部分の特色、サイズ、および物理的および化学的状態を含めた多くの因子に左右される。
【0090】
増粘剤樹脂系を提供する組成物に要求されるもの以外の乳化剤も皮膚軟化剤または安定化剤として添加してもよい。これらの乳化剤は、ここで乳化助剤という。例えば、ある種の皮膚軟化剤は疎水性および親水性領域から構成され、液晶網目構造に取り込まれると考えられるので本発明に有用である。以下でさらに十分に議論されるように、これらの皮膚軟化剤は、組成物の安定性を増大させる傾向にある。さらに、ある種のジメチコンコポリオール界面活性剤は、実際に皮膚軟化剤を取り込んだ配合物の安定性を改善できる。これは、以下で更に詳細に議論する。
【0091】
任意成分
アルコール、水および増粘剤系に加えて、本発明の組成物は、所望により塩、皮膚軟化剤、安定剤、抗菌剤、香料、治療薬、賦形剤および追加の乳化剤を含んでもよい。最終組成物の特性に及ぼすこれらの所望成分の各々の効果を以下で議論する。
【0092】

本発明の組成物の溶融温度は、塩を添加することによって増大できる。塩の濃度が増加するにつれて、安定な組成物を維持するために、必要とされる乳化剤の比率がしばしば変化する。不安定な系を作らず、系中に存在する全ての抗菌剤と相溶できる塩を選択するのは重要である。例えば、クロロヘキシジンジグルコネート(CHG)は、約0.1Mの濃度より高いハロゲン化物塩の存在下で急速に沈殿する。したがって、系がCHGを含む場合、グルコン酸トリエタノールアミンまたはグルコン酸ナトリウムのようなグルコン酸塩が使用される。
【0093】
安定化剤
試験管の縦中間点で測定された場合、安定な組成物は2275×gで30分間遠心分離した後10体積%以上分離しない。安定性は、系中に存在する乳化剤および/または皮膚軟化剤の結晶化、皮膚軟化剤、乳化剤等の凝集のために時間依存性を示す可能性があることも確認され、したがって、好ましい組成物は、周囲条件で6ヶ月間放置した後に、10%以上の分離を示さない。2つの型の安定剤が本発明に有用である。これらとしては、(1)乳化剤の親水性先端基と錯体を作る安定化剤、および(2)乳化剤の疎水性末端と会合するものが挙げられる。ある種の安定剤は、両方の機能を奏することができる。例えば、アルキルポリグルコシド類、モノアルキルグリセリド類、およびポリグリセロールアルキルエステル類のような1,2−ジオール含有先端基を有する乳化剤は、ホウ酸イオンを添加することによって「安定化」されうる。理論に拘束されるつもりはないが、ホウ酸イオンは、それらを近接して保持することによって疎水性末端の会合を増加させることができる隣接先端基と共に錯体を形成すると思われる。ステアリル変性コラーゲン誘導体、小麦タンパク質等のステアリル変性タンパク質、ステアリル変性コラーゲン等の(炭素数12以上、好ましくは16以上)ペンダント長鎖アルキル基で構成される天然または合成重合体は、本発明の組成物を安定化できる。このような添加成分は、本発明の組成物の溶融温度を増加させることもできる。これらの重合体中のペンダントアルキル基は、増粘剤系の疎水性基とファンデルワールス力で会合すると思われ、それによって、結晶構造の安定性を増強する。ペンダントアルキル鎖と会合的でない高分子増粘剤系は、おそらく連続層の粘度を増加させることによって、溶融温度を上昇させうる。このような増粘剤の限定されない例としては、米国ニュージャージー州、ブリッジウォーターのNational Starchから入手可能なCelquat(登録商標)230Mのような四級セルロースが挙げられる。好ましい態様において、米国ニュージャージー州、パルシパニーのCroda Inc.からCrodacel QSとして入手可能なステアリルジモニウムヒドロキシプロピルセルロースが安定剤として添加される。
【0094】
皮膚軟化剤
皮膚軟化剤は、それらが皮膚層の水分含量を増加させる働きのある特にハンドローションまたは手製剤に添加される。皮膚軟化剤は、一般にそれらの機能に基づいて2つの広範な種類に分けられる。第一の種類の皮膚軟化剤は皮膚層から水の蒸発を防ぐ閉塞バリアーを形成することによって機能する。第二の種類の皮膚軟化剤は角層に浸透して、物理的に水と結合して蒸発を防ぐ。第一の種類の皮膚軟化剤は室温でワックスである化合物および液状油である化合物のサブグループに分けられる。第二の種類の皮膚軟化剤としては水溶解性のものが挙げられ、しばしば保湿剤として見なされる。
【0095】
本発明の目的のため、乳化剤が閉塞作用のある皮膚軟化剤として機能でき、皮膚症状を維持または改善する助けとなると認められるが、増粘剤系は添加される任意の皮膚軟化剤とは分離され、区別されると考えられる。皮膚軟化剤は本発明の好ましい具体例に含まれ、好ましくは、配合物に対して、約3〜30重量%、さらに好ましくは約4〜20重量%、最も好ましくは約5〜12重量%含まれる。
【0096】
本発明の好ましい態様における液体皮膚軟化剤(油および保湿剤)とワックスの比率は、約5:1〜1:5、好ましくは約1:3〜3:1である。皮膚軟化剤は、当該分野で公知の任意のクラスから選択できる。有用な皮膚軟化剤は、米国特許第4,478,852号および欧州特許出願0 522 624 A1およびワシントン.ディー.シー.のThe Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association(1992年)によって出版されたCTFA Cosmetic Ingredient Handbookの「皮膚コンディショニング剤」、「皮膚軟化剤」、「保湿剤」、「その他」および「閉塞」として示されている。
【0097】
好ましい態様において、皮膚軟化剤は一般の皮膚軟化剤、閉塞皮膚軟化剤および保湿剤の以下の非限定例から選択される。一般の皮膚軟化剤の例としては、長鎖または分枝アルキルまたはアルケニルアルコールまたは酸(C8−C36)の短鎖アルキルまたはアリールエステル類(C1−C6)およびそられのポリエトキシル化誘導体;有効な位置で−OHによって任意に置換されていてもよいC4−C12ジ酸またはジオールの短鎖アルキルまたはアリールエステル類(C1−C6);グリセロール、ペンタエリトリトール、エチレングリコール、プロピレングリコールのアルキルまたはアリールC1−C9エステルならびにこれらおよびポリエチレングリコールのポリエトキシル化誘導体;ポリプロピレングリコールのC12−C22アルキルエステルまたはエステル;ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコール共重合体のC12−C22アルキルエステルまたはエステル;およびポリエーテルポリシロキサン共重合体が挙げられる。好ましい増粘剤系の多くの乳化剤に加えて、閉塞作用のある皮膚軟化剤の追加の例としては、環状ジメチコン、ポリジアルキルシロキサン、ポリアリール/アルキルシロキサン、長直鎖または分枝アルキルまたはアルケニルアルコールまたは酸の長鎖(C8−C36)アルキルおよびアルケニルエステル;長直鎖または分枝アルキルまたはアルケニルアミンまたは酸の長鎖(C8−C36)アルキルおよびアルケニルアミド;スクアレン、スクアランおよび鉱油のような直鎖および分枝アルカンおよびアルケンを包含する炭化水素;ポリシロキサンポリアルキレン重合体、ジアルコキシジメチルポリシロキサン、有効な位置においてOHにより任意に置換されていてもよいC12−C22二酸またはジオールの短鎖アルキルまたはアリールエステル(C1−C6);およびC12−C22アルキルおよびアルケニルアルコールが挙げられる。好ましい保湿剤型の皮膚軟化剤の非限定例としては、グリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプレピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、パントテノール、グルコン酸塩等が挙げられる。
【0098】
増粘剤系は、本発明の組成物の安定性および全稠度に効果を示すが、皮膚軟化剤は組成物の粘性、安定性および溶融温度に影響を与えることができる。単独の皮膚軟化剤は、本発明に添加できるか、または2つまたはそれ以上の皮膚軟化剤が、組成物に添加できることが予測される。広範な範囲の皮膚軟化剤が本発明の配合物に添加できる。好ましくは、水溶性皮膚軟化剤と一緒にワックスおよび油性皮膚軟化剤が使用される。好ましい具体例において、皮膚軟化剤系は、閉塞ワックス(occlusive wax)および油性皮膚軟化剤に加えて、繰返使用時にも皮膚の状態を維持し改善する、保湿するが油っぽくない組成物を達成する濃度で保湿剤を含む。理想的には、皮膚軟化剤は、面皰性ではなく、皮膚刺激または感作反応が起らないことが確実であるように選択される。本発明の組成物は手術用手袋に覆われた閉塞条件で使用されるおそれがあるので、これは特に臨界的である。さらに、手袋の材料の結合性に影響を及ぼさない皮膚軟化剤を選択するべきである。例えば、鉱油やペトロラタム等の炭化水素系皮膚軟化剤は、手術用手袋の引裂き強さに決定的に影響を及ぼす可能性があるので、これらの皮膚軟化剤は、術前消毒薬として使用される組成物には避ける必要がある。
【0099】
理論に拘束または限定されることなく、本発明の組成物に皮膚軟化剤が添加される場合、それらは4つの異なった領域で存在できると思われる。皮膚軟化剤は、(1)溶媒層中に可溶性種として、(2)混合乳化剤ミセルまたは結晶ゲル網目構造中に乳化液滴として分散される、(3)混合乳化剤ミセルまたは結晶ゲル網目構造中に組込まれる、または(4)分離および別のエマルジョンとして生じる。先に述べたように、皮膚軟化剤は組成物の溶融温度に影響を及ぼす可能性がある。溶媒層に対して可溶性であるかまたは分散できるそれらの皮膚軟化剤は、溶融温度にほとんどまたはまったく影響を及ぼさない傾向にあり、好ましい。これらの皮膚軟化剤としては、保湿剤または一般の皮膚軟化剤が挙げられる。最も好ましい一般の皮膚軟化剤は、基本的に水に対して不溶性であるがヒドロアルコール溶媒に可溶性であるものである。溶融温度以上の温度でさえ可溶性でありそして均質に分散され、室温まで冷却する時に均一な組成物を生じるため、これらの皮膚軟化剤も好ましい。さらに、それらは手術用手袋にほとんど影響を与えないとも考えられる。このような一般の皮膚軟化剤は、一般には炭素原子数約14以上のアルキルまたはアルケニル鎖を持たず、好ましくは炭素原子数12以下、もっとも好ましくは炭素原子数約9以下である。
【0100】
ヒドロアルコール溶媒に対して不溶性であるこれらの皮膚軟化剤は、増粘剤系の乳化剤と会合でき、および/またはミセルまたは液晶網目構造に組込まれることができる。この種類の範囲内の好ましい皮膚軟化剤は、高い溶融温度を維持する傾向にあるので、非常に疎水性であるような皮膚軟化剤である。例えば、保湿剤は、ある種の増粘剤系の粘弾性を増大させることが分かった。増粘剤系の乳化剤と会合しかつ分散できるこれらの皮膚軟化剤は、組成物の溶融温度を減少させ、安定性に影響を及ぼすことができる。疎水性基当たり約12以上の炭素数を示すある種の分枝アルキルエステルは、溶融温度を減少させる場合に特に効果的であることが分かっている。例えば、クエン酸トリオクチルは、いくつかの系の溶融温度を非常に減少させることが分かっている。
【0101】
増粘剤系に組込まれた皮膚軟化剤は、溶融温度を減少させる傾向にある。例えば、Iauteth−4(Brij 30)は、約1重量%より低い濃度で溶融温度以上に加熱しても段階的に除去されないので、増粘剤系に組込まれるようである。Laureth−4も組成物の溶融温度を減少しない傾向にある。
【0102】
ヒドロアルコール溶媒に不溶性である種の皮膚軟化剤は、分離および個別のエマルジョンになると考えられるもので乳化できる。これらの皮膚軟化剤は、組成物の溶融温度にほとんど影響を及ぼさない。例えば、ある種の環状シリコーン、ポリシロキサン、およびジアルコキシポリシロキサンは、ポリエーテル/ポリシロキサン共重合体界面活性剤を使用してヒドロアルコール溶媒で乳化できる。バージニア、ホープウエルのGoldschmidt Chemical Corp.から入手可能なAbil B88183のようなある種のポリエーテル/ポリシロキサン共重合体の存在下でDC344(ミシガン、ミッドランドのDow Corningから入手可能)のような環状シリコーン類は、溶融温度の前後で組成物が均質性を残すような熱的に安定なエマルジョンを形成できる。事実、長鎖ジアルコキシポリシロキサンおよびポリエーテル/ポリシロキサン共重合体の組合せは、実際にある種の増粘剤系の安全性を促進することが分かっている。ジアルコキシポリシロキサンは増粘剤系ならびにポリエーテル/ポリシロキサン共重合体と作用すると思われる。これらの化合物は以下の構造を有する。
【0103】
ジアルコキシジメチコン
R―O−Si(CH32―O[Si(CH32−O]z−Si(CH32−OR
式中、Rは炭素原子数14〜50、好ましくは16〜24の直鎖アルキル基であり;zは5〜300の値である。
【0104】
ポリエーテル/ポリシロキサン共重合体(ジメチコンコポリオール):
(CH33−Si−O−[Si(CH3)R11―O]z[Si(CH3)R8−O]y−Si(CH33式中、R8は構造式:
−R9−O(C24O)p(C36O)q10により表されるポリエーテル置換アルキル基であり;
9は炭素原子数1〜6のアルキル基であり;
10は水素または炭素原子数1〜22のアルキル基であり;
11は炭素原子数1〜22のアルキル基またはフェニルである。
【0105】
上記の2つの構造で示されるとおり修飾された分枝鎖ポリシロキサンも可能であることに注目されたい。
【0106】
以下は、本発明の組成物の増粘/安定性を改善する乳化剤/皮膚軟化剤成分の限定されない例である。
【0107】
a.ある種のワックス状乳化剤/皮膚軟化剤は、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ミリスチル、ベヘン酸ステアリル、イソステアリン酸ベヘニル、ベヘン酸イソステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ラウリル、エルカ酸ベヘニルのような固形ワックス状エステル類が特に有用であることが分かった。
これらは、以下の式:
1−CO2−R2
(式中、R1は少なくともC14の炭素原子であり;
2は少なくとも炭素原子数4のアルキルまたはアルケニルである)で表される。
【0108】
b.23℃より高い融点を示す多価アルコールの長鎖炭化水素ジエステル、トリエステルとしては、トリベヘン酸グリセロールおよびトリステアリン酸ソルビタンなどの固形エステルが挙げられる。
【0109】
c.純ラノリンおよびラノリン誘導体(例えば、水素化ラノリン)は、優れた皮膚軟化剤性を供与するが、油皮膚軟化剤と組合わせて使用する場合にエマルジョンの安定性をも改善できる。
【0110】
d.ペトロラタムは、優れた皮膚軟化剤性を供与し、油性皮膚軟化剤と組合わせて使用する場合にエマルジョンの安定性を改善できる。ペトロラタムは、油状およびワックス状の長鎖炭化水素の混合物である。
【0111】
e.50℃以上の融点と、400以上の分子量を示す微細結晶性ワックスおよび分枝炭化水素ワックス。この例としては、数平均分子量2800を有し、米国オクラホマ州、ツルサのPetrolite Corp.から入手可能である分枝炭化水素であるVybar 103、Petrolite Corp.から入手可能でもある微細結晶であるUltraflex(登録商標)が挙げられるが、これに限定されない。
【0112】
f.酸化ワックスおよび改質炭化水素ワックスは本発明の用途を見出すことができる。これらは、酸化によって改質されたワックス、酸化ワックスの塩、ポリオレフィンの無水マレイン酸付加物および酸化合成または石油ワックスのウレタン誘導体から製造される。使用できるワックスとしては、PetroliteのCardisまたはPetronauba微細結晶およびポリエチレンを基にした酸化生成物、Polymekon(塩類)およびCeramer(無水アダクト)が挙げられる。
【0113】
g.ポリエチレンまたは種々のアルケン単量体の共重合体の十分に飽和したホモポリマーは、3000以下の分子量を有し、130℃以下の融点および低い融解粘性を示す重合体を形成するのに使用できる。使用できるワックスとしては、Petrolite Corp.から入手可能なPolywax(登録商標)が挙げられる。
【0114】
香料
配合物は、香料を含有していてもよい。香料が含まれる場合、ある種の香料は皮膚刺激および/または感作反応を起こすことが知られているので、香料は注意深く選択されなければならない。
【0115】
抗菌剤
本発明の組成物に存在する低級アルコールに加えて、他の抗菌剤を添加して、本発明の組成物の抗菌作用を増強することができる。これは、特に、術前の手の洗浄または術前の患者皮膚洗浄のような重大な用途に望むことができる。好適な追加の抗菌剤としては、ポビドン/ヨウ素のようなヨウ素およびその複合物、グルコン酸クロロヘキシジン(CHG)のようなクロロヘキシジン塩、パラクロロメタキシレノール(PCMX)、フェノール類、長鎖疎水性基(C12−C22)および四級基を有する界面活性剤、トリクロサン、ラクリチジン、四級シラン類、過酸化水素、フェノール、銀、塩化銀、酸化銀および銀スルファジアジンのような銀塩類などが挙げられる。刺激の可能性を減少させ、効力を維持するために、抗菌剤レベルは、適用後6時間、最も好ましくは適用後12時間、低細菌数を維持する最小レベルに調整すべきである。
【0116】
長期抗菌効力を確保することができるため、最も好ましい追加の抗菌剤は、クロロヘキシジンである。クロロヘキシジンを本発明に添加する場合、可溶性塩として存在するのが好ましい。ジ酢酸塩およびジグルコン酸塩が好ましい。最も好ましい抗菌剤は、ジグルコン酸クロロヘキシジンである。CHGは、好ましくは0.05〜5.0重量%、より好ましくは0.1〜3重量%、最も好ましくは0.25〜2重量%の濃度で存在する。クロロヘキシジンは、ビス(ジグアニド)であり、したがって非常に塩基性が高く、アニオン物質と多種イオン結合を形成できる。この理由のために、増粘剤系を含むクロロヘキシジンは、非イオン性および/または陽イオン性乳化剤ベースが好ましい。ある種の両性イオン、非常に不溶性または沈殿しないアニオン性乳化剤も有用である。
【0117】
発泡剤
本発明の組成物は、追加の好適な噴射剤を添加することによってエアゾール発泡剤またはムースに製剤することもできる。噴射剤は、バルブの目詰まりを防ぐために、容器から好適な排出量を確保するように選択されなければならない。噴射剤は、クロロフルオロカーボン(CFCs)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFCs)、過フッ素化アルカン、および低級アルカン(C1−C5)ならびに窒素酸化物ジメチルエーテルおよび他の溶媒可溶性液体発泡剤から選択されることができる。好ましい噴射剤は、配合物を容易に排出させる粘度に劇的に減少させるプロパン、ブタンおよびイソブタンのような低級アルカン類である。プロパン/イソブタンの70/30混合物は、特に好ましい具体例である。エアゾール組成物を製造するために、まず抗菌ローションを調製し、そして好適な耐圧容器に注入した。有利には、充填を促進するために、配合物を溶融温度以上に加熱してもよい。その後、噴射剤を、約2〜30体積%、好ましくは3〜20体積%、圧力下で添加する。噴射剤は、別の層を形成することができるか、または組成物中で乳化状態を保つことができる。
【0118】
ヒドロアルコール液体結晶溶液についての他の用途
本発明の組成物は、UV吸収剤および油とブレンドして、早乾性日焼け止め剤を配合されてもよい。過酸化ベンゾイルのような抗菌剤は、配合物に添加もでき、配合物はアクネ投薬として有用である。本発明の系は、バリアー化合物と配合してバリアークリームおよびローションを形成することもできる。おむつ疹から保護する皮膚バリアーとして使用するためのバリアー保護を提供するために添加される材料としては、0.1〜60%アルジオキサ、アラントイン、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ビスマスサブナイトレイト、ホウ酸、カラミン、セルロース(微細孔)、コレカルシフェロール、ココアバター、タラ肝油(組合せ)、コロイドオートミール、塩酸システイン、デキスパンテノール、ジメチコーン、グリセリンカオリン、ラノリン(組合せで)、生酵母細胞誘導体、鉱油、天然バルサム、天然バルサム油、ペトロラタム、タンパク質加水分解物(1−ロイシン、1−イソロイシン、1−メチオニン、1−フェニルアラニン、および1−チロシン)、ラセメチオニン、サメ肝油、炭酸水素ナトリウム、硫黄、タルク、タンニン酸、トピカルスターチ(topical starch)、ビタミンA、白色ペトロラタム、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛および酸化亜鉛が挙げられるが、これに限定されるものではない。水虫のような皮膚の真菌感染を治療するための抗真菌剤を含めた配合も考えられる。
【0119】
関連特許出願は、「安定なヒドロアルコール組成物」の名称で、弁理士審理番号51800USA 7Aで、発明者Asmus,ScholzおよびCharpentierによって1995年6月22日に出願された。
【0120】
製造方法
本発明の組成物は、種々の技術によって製造できる。例えば、その方法は、増粘剤系をヒドロアルコール溶媒に、乳化剤の融点以上の温度で添加し、軽く混合し、冷却するというように、簡単である。それにもかかわらず、最大安定性を有する組成物を確保するため、好ましくは、一定時間、増粘剤系の融点以上で、成分を高剪断(例えば、均質化)に付した後、冷却しながら低剪断混合する。非常に小さな「液滴」サイズを確保するのに十分な時間、高剪断下で系を混合すべきであるが、過剰の高剪断混合は粘度および安定性を減少させる。
【0121】
冷却速度は、特定の増粘剤系によっては重要である。ある種の増粘剤系は、均質化した後にゆっくりと冷却させることができるが、急速冷却はほとんどの系で有利であると思われる。
【0122】
成分の添加の順番は、系の安定性および粘度に影響を及ぼす。一般に、それは、1つの容器で混合乳化剤を水不溶性皮膚軟化剤と溶融するのに上手く作用する。ヒドロアルコール溶媒および任意の水性ミセル皮膚軟化剤は第2の容器内で混合される。両方の成分を増粘剤系の溶融温度以上に加熱する。500グラムの典型的バッチについて約1〜5分間の均質化を急速に行うことによって熱い液体成分を一緒に混合する。粘度がまだ低い間に、系を適度に撹拌し、冷却する。温水(すなわち、溶融温度以上の温度の水)に、任意の溶媒不溶性皮膚軟化剤と共に溶融増粘剤系を添加した後、高剪断混合を行い、アルコールで希釈を行うことも可能である。高剪断混合の量および強度、冷却速度、および添加順序等の作業変数は当業者によって容易に決定される。
【実施例】
【0123】
試験方法
粘度
以下の実施例(指摘した場合を除く)において、モデルD BrookfieldヘリオパスおよびTスピンドルB−Fを備えたBrookfield LVD V−I+粘度計を使用して、粘度を23℃、周囲圧力で測定した。粘度計がその範囲の中央で操作するように、各特別のサンプルについてスピンドルおよび速度を選択した。すべてのサンプルは、測定前に23℃で24時間平衡させた。好ましくは、粘度計範囲の20〜80%、さらに好ましくは30〜70%に維持しつつ、できるだけ遅い速度で粘度を計測する。全ての場合に、壁面効果がないことを確保するために、サンプルサイズおよび容器形状寸法が選択された。「壁面効果」によって、容器によって粘度の値が影響されず、そして基本的に無限に大きな容器で測定された粘度と同じである。このため、低粘度のサンプルは、より大きなスピンドルを収容する大きなサンプルサイズを必要とする。以下の表は、種々のサンプルの粘度についての好ましいスピンドルを示す。
【0124】
【表2】

【0125】
ヘリオパスアダプターを用い、移動したスピンドルが最初の経路に達した時の最大の比較的安定な読取り値を各サンプルの粘度とした。
【0126】
安定性
ローション/クリームを形成した12mlの配合物を15ml目盛の遠心管中に置いて周囲条件で状態調整し、24時間後、各サンプルの粘度を測定した。その後、管をLabofuge B(Heraeus Sepatech GmbH モデル2650、ローター2150およびバケット番号2101)で、3000rpm(試験管の縦中央点で測定する場合2275g)、30分間、23℃で遠心分離した。以下の実施例において、体積%分離として安定性を記録する。
【0127】
溶融温度(Tm)
約15グラムのサンプルを25cc密閉ガラスバイアル中に配置し、水浴にそのバイアルを配置することによって溶融温度を測定した。離散インクレメントにおいて、経時的に浴の温度を上げ、一定温度で約1時間後内容物をチェックした。混合物の粘度が非常に低くなる温度を溶融温度とした。
【0128】
最小阻害濃度(MIC)
トリプチカーゼ大豆寒天平板上で成長させたE.coli ATCC 8739(実験室株223)および/またはS.Aureus ATCC 14154(実験室株502)の一夜培養物を、Mueller−Hinton Brothで1ミリリットル当たり0.6−1.2×106コロニー形成単位の細胞密度に再懸濁した。Mueller−Hinton肉汁で512μg/mlにCHGを調整し、Mueller−Hinton Brothで2倍段階に連続して希釈することによって、クロロヘキシジンサンプルを調製した。CHG含有Mueller−Hinton Brothを、96穴無菌マイクロリッター平板に配置し、各穴に細菌を接種した。その後、平板を24〜48時間、37℃でインキュベートした。平板を比較することによって、細菌成長を目視により観察した。試験細菌が完全に死滅する最低濃度のCHGでMICを測定した。
【0129】
化粧特性/触感試験
術前消毒薬の用途として、本発明の組成物および皮膚軟化剤を配合して保湿させるのが好ましいが、相対的に乾燥した触感を有する。過剰の皮膚軟化剤を含むローションは、べたべたした触感を付与する傾向にあり、手術用手袋に覆われて粉末を過剰に凝集させる。本発明の配合物は、適用する間、高湿度環境でさえべたべたした、またはねばねばした感感覚を付与しない。本発明の配合物は、滑らかで、柔らかく、粘着性がなく、保湿感を生じるのが好ましい。組成物の化粧特性または触感特性テストは、予め測定された量の製品を約2ml塗布した10人以上のパネラーによって行われるのが好ましい。手の洗浄は、組成物の触感に影響を及ぼすことができるので、パネラーは、サンプルを適用する前に、米国オハイオ州、コネチカットのProcter and Gambleから入手可能なIvory Skin Cleansing Liquid Gelハンドソープで十分に洗浄した。乾燥後、組成物が乾燥するまで、両手の表面上で組成物を均一に擦った。石鹸および水で連続洗浄する間、皮膚上の組成物の触感は重要でもあった。組成物を適用して約30〜60分後の洗浄中の触感を評価した。好ましい配合物は、べたべたした、ぬるぬるした、またはねばねばした特性のような異常な触感を生じない。
【0130】
実施例
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0131】
実施例1:アルキルポリグルコシド増粘剤系
炭素数16〜18のアルキル鎖を有するアルキルポリグリコシド乳化剤を、米国ニュージャージー州、フェアーフィールドのSeppi Inc.からMontanov 68として得た。この高結晶性乳化剤を他の乳化剤と合して、ヒドロアルコール溶媒中で増粘剤系を形成した。溶媒は、重量比で60:40または68:32のエタノール:水であった。200度エタノールおよび蒸留水を使用した。Montanov 68と乳化助剤の比は、以下の表により、全乳化剤濃度を5重量%に固定しつつ変化する。
【0132】
【表3】

【0133】
各共乳化剤/Montanov 68組成物を以下の手順で調製した。
1.乳化剤を上記溶解温度以上の75℃まで加熱した。
2.ヒドロアルコール溶媒を密閉ジャー中で75℃まで加熱した。
3.熱ヒドロアルコール溶媒を、溶融乳化剤に急速添加した。
4.ウォーターサイド・イングランドのSilverson Machinesから入手可能なSilverson L4Rホモジナイザーを用いて、混合物を4分間、最大速度で均質化した。
5.その後、オーバーヘッド櫂形羽根車を用いて適度に撹拌しながら、15〜20℃の水中に20分間浸漬した。
【0134】
【表4】

【0135】
この結果は、ある種の増粘系が安定で粘性な組成物を形成することを示す。安定な組成物を形成するそれらの増粘剤系は、乳化剤、および共乳化剤に対するアルキルポリグリコシドの比率によって広範に変化する粘度を有する。例えば、Montanov 68とBrij 52との混合物は、950〜240,000cpsの範囲で変化する粘度を示す。この実施例も、アルコールと水の比が得られた安定性および粘性に影響することを示す。例えば、エタノール:水の比が60:40では、Montanov 68:Brij 72系は、4:1の重量比で470,000cpsの最大粘度を示した(配合物A)。エタノールと水の比が68:32に増加されたときに、4:1の比ではもはや安定でなく、そして最大粘度は、2:3の重量比で、ほんの34,000cpsであった(配合物C)。同様のシフトは、Montanov 68:Nikkol BB5およびMontanov 68:Brij 78で現れる。高粘弾性は、おそらく乳化剤の低い安定性のために低アルコール量で達成可能であり、ピークの粘弾性はおそらくアルキルポリグリコシド乳化剤の高結晶性のために高濃度で現れると思われる。
【0136】
この結果は、安定な系を生み出す混合乳化剤の基の範囲内においてモータ親水性基の大きさが安定性および粘度に影響を及ぼすことも示す。例えば、エトキシ化の程度が増加すると、親水性基の大きさが増大し、一般にピークの粘度は減少する。例えば、セテス・シリーズ(Brij 52−58)の範囲で、最大粘度は、Ceteth−2については240,000cpsであり、Ceteth−20は、60,000cpsの最大粘度を示す。同様の結果が、ステアレス・シリーズ(Brij 72−78)およびベヘネス・シリーズ(Nikkol BBシリーズ)で見られた。
【0137】
実施例2:アルキルポリグリコシド/Brij 72最適化
実施例1の結果に基づいた3成分混合物を用いて、一連の15の配合物を調製した。エタノールと水の溶媒比(68:32)を用いて、以下の濃度範囲を調べた。
【0138】
【表5】

【0139】
各配合物を調製した後、安定性および粘度について試験した。得られた配合物の粘弾性は、50cps〜93,600cpsの範囲より小さかった。安定性の結果0〜83%の範囲であった。いくつかの最適配合物の例を以下に示す。
【0140】
【表6】

【0141】
実施例1およびこれらの結果は、この増粘剤系に対する配合物の粘度は、乳化剤の比率によって左右されることを示す。結果は、増粘剤系での乳化剤の比率が変化する場合でさえ、高い粘弾性がまだ得られる一方で、許容しうる安定性の値を維持することを示す。さらに、特定の粘度に達するのに必要な増粘剤系の全濃度は、乳化剤の比率によってかなり変化する。例えば、配合物Dは、わずか4.12重量%の全乳化剤濃度で30,000cpsの粘度を示す。
【0142】
実施例3:アルキルポリグリコシド第3増粘剤系:
実施例2で得られた結果に基づいて、さらに粘度を増加するために第3の乳化剤を加えた基剤系として使用するために配合物EおよびFを選択した。以下の表にしたがって、0.3,0.8,1.3および1.8重量%の濃度で、実施例2の配合物EおよびFで有効であると分かった比率で、Montanov 68およびBrij 72の比率を維持しながら第三の乳化剤を添加した。
【0143】
【表7】

【0144】
使用した溶媒は、68:32のエタノール/水であった。配合物を調製した後、安定性および粘度について試験した。使用した第三の共乳化剤は、ベヘニルアルコール(Lanette 22,Henkel Corp.)およびステアラミドジエタノールアミン(Lipamide S、ニュージャージー、パターソンのLipo Chemical)であった。以下の粘度結果を得た。
【0145】
【表8】

【0146】
全配合物は、配合A/Lanette 22が痕跡(<5%)量の分離を示す以外は0%分離の安定性の値を示した。結果は、増粘剤系に第三の乳化剤を添加すると、粘度を増加することができることを示した。結果は、第三の乳化剤の炭化水素の長さが、必然的には粘度を予測しないことも示す。この実施例では、Lipamide Sは、それがLanette 22より明らかに短い炭化水素鎖を有するが一般に高粘度度の組成物を生成することを示す。
【0147】
実施例4:粘度および安定性に対する剪断の効果
組成物の得られた粘度および安定性に対する異なったレベルの剪断の効果を試験するために、実施例2から得られた配合物Cを、基剤系として使用した。増粘剤および溶媒を別々の容器で75℃に加熱した。急速に乳化剤に溶媒を添加し、組成物を以下に記載したとおりに混合した。
【0148】
【表9】

【0149】
以下に示すように、種々の稠度が得られた。
【0150】
【表10】

【0151】
結果は、この増粘剤系については、混合の強度および程度が得られた生成物に影響を与えることを示す。ほとんど混合していない(配合物A)およびよく混合したもの(配合物H)の両方が、粘度に有害な影響を示した。混合の好ましい方法は、簡単な(1−2分)高剪断均質化と10分間オーバーヘッド撹拌との組合せである(配合物およびF)。
【0152】
実施例5:添加重合体の効果
この実施例では、種々の重合体((1)ペンダントアルキル基を含む重合体、(2)線状で溶媒に対して可溶性を示す、(3)架橋され、溶媒中で膨張性を示す)を増粘剤系に添加する効果を調べた。使用した重合体は、
(1)Crodacel QS(米国ニュージャージー州、パルシパニーのCroda,Inc.)−ステアリルジモニウム ヒドロキシプロピルオキシエチル セルロース
(2)Quatrisoft LM−200(米国ニュージャージー州、エジソンのAmerchol Corp.)−ラウリルジモニウム改質ヒドロキシエチルセルロース(CTFA Polyquatermium 24)
(3)Salcare 96(米国ニュージャージー州、サフォークのAllied Colloids)−ポリメタクリロイルオキシエチル トリメチルアンモニウム クロリド(CTFA Polyquatermium 37)
【0153】
以下の表にしたがって、0.1,0.25,0.37,0.5および0.75重量%の重合体を配合物に加えた。
【0154】
【表11】

【0155】
混合前に重合体を溶媒(エタノールと水の重量比68:32)に加えた以外は、実施例1と同様に配合物を調製した。配合番号は、重合体の重量%を示すことに注意されたい。重合体を水に供給すると、溶媒系中の水は上記の正確な配合に影響するので補正した。結果を以下に示す。
【0156】
【表12】

【0157】
この結果は、ペンダントステアリル基を有するCrodacel QSが組成物の粘度に相互効果を示すことを示す。これは、重合体それ自身は増粘剤にほとんど寄与していないことの証拠である。Crodacel QSは、20%水溶液として供給され、1重量%より下の濃度で、68:32エタノール:水中でのこの実施例の粘度は、50cpsより低い。この重合体は、配合物で増粘剤系と会合していると考えられる。Quatrisoft重合体も、配合物の粘度を上げるのに寄与する。組成物を製造して、室温に冷却した後に重合体を増粘剤系に添加する以外は、ピークの粘度を示すCrodacel QSおよびQuatrisoft重合体を再度調製した。これらの条件下でさえ、該重合体を含有する配合物は、該重合体を含まない組成物より高い粘度を示した。配合物を調製するための好ましい方法は、増粘剤系を添加する前に、熱溶媒に重合体を添加して、それにより重合体および乳化剤が上記溶融温度で間相互作用することができる。Crodacel配合物も安定であって、分離を示さないことがわかった。
【0158】
実施例6:皮膚緩和薬の添加効果
一連のワックス、油性閉塞皮膚緩和薬および保湿剤タイプの皮膚緩和薬を増粘剤系に添加して粘度についての効果を評価した。以下に示す2つの配合物に各皮膚緩和薬を添加した。
【0159】
【表13】

【0160】
混合の前に皮膚軟化剤を熱溶媒または増粘剤系に添加する以外は、実施例1と同様にして配合物を調製した。グリセリンおよびQuamectantを溶媒に添加した。他の皮膚軟化剤を増粘剤系に添加した。粘度を以下に示す。
【0161】
【表14】

【0162】
この実施例は、幾つかの皮膚軟化剤が組成物の最終粘度に影響を及ぼすことを示す。系に対して可溶性である保湿剤は、グリセリンのようにあまり大きな効果を示さないようである。粘度の最大減少は、分岐炭化水素と皮膚軟化剤の添加によると思われる(例えば、JarcolI−16)。
【0163】
実施例7:ホウ酸イオンの添加効果
この実施例では、ホウ酸ナトリウムを予め製造した増粘剤組成物に添加した。ホウ酸イオンは隣接するポリグルコール親和性先端基に会合して「ミセル」構造中に保持することにより、溶融温度を上昇させると思われる。
【0164】
水中ホウ酸ナトリウムを0.7重量%の濃度でフィトデルム(Fitoderm)スクアランを含有する実施例6Aの配合物に添加した。得られたホウ酸ナトリウムを有する配合物は高い溶融温度を有し、明らかに増粘されていた。ホウ酸ナトリウムを含まないサンプルは、手の平に適用すると急速に融解した。ホウ酸イオンを含むサンプルは、手に適用すると融解しなかった。
【0165】
様々なpH値でのホウ酸イオンの効果を評価するため、10.21グラムのホウ酸を160グラムの蒸留水に添加した。pHメータを使用して、pH5に達するまで撹拌しながら、ホウ酸ナトリウムを添加した。(0.33グラムのホウ酸ナトリウム)。57グラムのサンプルを取り出した。残りの溶液に、pH6.0になるまでホウ酸ナトリウムを添加した(1.6グラムのホウ酸ナトリウム)。再度、57グラムのサンプルを取り出し、残りの溶液にpH7.0に達するまで1.94グラムのホウ酸ナトリウムを添加した。これら3つの溶液を以下の配合物に添加した。
【0166】
【表15】

【0167】
混合前に溶媒系にCrodacel QSを添加した以外は、実施例1と同様にしてベース配合物を調製した。増粘剤系を室温に冷却した後にホウ酸溶液を添加して以下の表に示すホウ酸を得た。以下の観察および溶融温度を記録した。
【0168】
【表16】

【0169】
この結果は、ホウ酸イオンを添加すると、溶融温度が上がることを示している。pH値が低い場合、より顕著である。
【0170】
実施例8:溶融温度に対するエタノール濃度の効果
実施例5と同様にして、7%Montanov 68,1.76%Brij 76,0.5%Crodacel QS重合体(固体基準)を含む配合物を調製した。各配合物について、溶媒の含量は90.74%で一定に保ったが、エタノールと水の比率は、50:50〜68:32の範囲で変化させた。以下のようにして、溶融温度を測定した。
【0171】
【表17】

【0172】
結果は、アルコールと水の比が増加すると、この増粘剤系の溶融温度が下がることを示す。
【0173】
実施例9:グルコン酸クロロヘキシジンを含有する組成物の抗菌効力
グルコン酸クロロヘキシジンを用いるまたは用いずに以下の増粘剤系を調製し、増粘剤系でCHGが有効に排出されるかどうかを測定した。実施例7から得られたホウ酸化物pH5溶液を使用した。
【0174】
【表18】

【0175】
上述した試験法にしたがって、E.coliおよびS.Aureusの両方について最小阻害濃度(MIC)を測定した。結果を以下の表に示す。
【0176】
【表19】

【0177】
結果は、本発明のこの配合物が、いずれもCHGを不活性化しないことを示す。
【0178】
実施例11:増粘剤系を含むアルキルポリグリコシドを用いた術前抗菌ハンドローション
実施例6と同様にして、以下の配合物を調製した。
【0179】
【表20】

【0180】
得られた配合物はエタノールと水の比(68:32)を示した。数名のボランティアによって、1日中、この配合物を繰り返して手に適用した。適用する間に、Ivory石鹸で手を洗浄した。ローションの触感は、十分に良く、皮膚の状態を維持した。
【0181】
実施例12:アルキルポリグリコシド/ポリグリコシル化アルキルアルコール/短鎖アルコールのエステル/アミンオキシド/四級アミン増粘剤系
溶媒(アルコールおよび水)および増粘剤系を70℃まで別々に加熱することによって、以下の組成物を調製した。溶媒を増粘剤系に急速添加し、Silverson L4Rホモジナイザーで均質化した。その後、10〜15℃水浴に浸漬したガラス製容器中で逆T型パドルスターラーで10分間撹拌を行った。組成物A〜Cを10分間混合し、組成物CおよびDをそれぞれ4および5分間混合した。その後、組成物を冷却し、乳化剤を凝固させた。
【0182】
【表21】

【0183】
組成物A,BおよびCは、ほとんど弾性のない粘性クリームであった。目視によって、サンプルCは、Aより粘性であるBよりさらに粘性であった。これは、アミンオキシドが組成物の粘度に寄与していることを示す。組成物DおよびEは、非常に粘性でまったく自然に弾性であった。組成物Eは、非常に粘着性であった。これは、この四級アミンがより弾性のある組成物に寄与することを示す。サンプルFおよびGは、優れた稠度を示す不透明な白色クリームであった。サンプルGは、サンプルFよりさらに粘性であった。サンプルFは、ある程度離液を示した。
【0184】
上述のプロトコールにしたがって、組成物の溶融温度(Tm)を測定した。結果を以下に示す。
【0185】
【表22】

【0186】
実施例13:長鎖アルキルポリグリコシド/ポリエトキシル化アルキルアルコール/四級アミン増粘剤系
2重量%で固定された全乳化剤レベルを示す3つの成分の混合物を使用して、一連の10の配合物を調製した。さらに、0.5重量%のCHGを含有するエタノールと水の溶媒比68:32を用いて、以下の濃度範囲を調べた。
【0187】
【表23】

【0188】
Eassi 624MPは、92重量%のベヘニルアルコールのアルコール供給原料から製造されたアルキルポリグリコシドであり、米国ニュージャージー州、フェアーフィールドのSeppic Inc.から得られた。生成物は、83℃の融点を有し、5%水溶液は、pH6.4を示した。80℃で49グラムの溶媒を、80℃で2グラムの増粘剤系に添加した後、45秒間の均質化を行い、さらに15℃水浴浸漬しながら3分間オーバーヘッド混合することによって、各配合物を調製した。続いて、49グラムの溶媒混合物を添加することによって、サンプルを2%固型分に希釈した。その後、各組成物を粘度およびTmについて試験した。得られた配合物の粘弾性は165,000cps未満〜309,000cpsの範囲であった。いくつかの好ましい配合物の例を以下に示す。
【0189】
【表24】

【0190】
結果は、ベヘニルポリグリコシドが溶融温度を上昇することを示す。この実施例の融解温度と実施例12Fのものを比較すると、増粘剤系で疎水性基の鎖長が増加すると、Tmが増加することを示す。この実施例の組成物の増粘剤系は、比が変化する乳化剤を有する均質な粘性のクリームを生成する。
【0191】
実施例14:アルキルポリグリコシド/ポリエトキシル化アルキルアルコール/四級アミン増粘剤系ベースの消毒用ハンドローション
実施例13Fの増粘剤系ベースの消毒用ハンドクリーム/ローションを調製する。組成を以下に示す。
【0192】
【表25】

【0193】
1つの容器中で溶媒およびSilwetを75℃に加熱し、第2の容器中で残りの成分を75℃に加熱することによって、組成物を調製した。乳化剤/皮膚軟化剤に溶媒を急速添加した後、その後の混合なしに45秒間均質化した。両方の配合物を2mLを手に適用し、皮膚に擦りつけたときに素晴らしい触感を示した。配合Bは手の触感がより優れているために余計に魅力的である。Aについては48℃で、Bについては45.5℃でTmを測定した。
【0194】
実施例15:増粘剤系を含むポリグリセロールエステル
別のジャーで増粘剤系および溶媒を75℃で加熱し、急速に増粘剤に溶媒を添加し、勢いよく振盪し、オーバーヘッド・スターラーで10分間、10〜15℃の水浴に浸漬しながら撹拌することにより、実施例15(以下の表に示すとおり)の配合物を調製した。Tmを上述のとおりに測定した。
【0195】
【表26】

【0196】
安定性についてサンプルを試験した。サンプルA,BおよびCは、粘度の変化する安定な組成物を生成した。目視観察により、サンプルAが、Cより高いBよりさらに高い粘度を示したことを示している。より長いポリグリセロール鎖長はこの増粘剤系で好ましく、より長鎖のポリグリセロール乳化剤が溶媒系により可溶であることが予測される場合でさえ、配合物のTmを増加させる。
【0197】
実施例16:増粘剤系を含有するより多くのポリグリセロールエステル
実施例15と同様にして、以下の組成物を調製した。
【0198】
【表27】

【0199】
サンプルAおよびBは、均質で粘性な半透明なゲル状組成物であった。サンプルBは全く素晴らしい触感を示したが、少しべたべたした。
【0200】
実施例17:ポリグリセロールエステル/アミンオキシド/四級アミン増粘剤系
実施例15と同様にして、以下に示す組成物を調製した。各サンプルについて粘度(Tm)を測定した。
【0201】
【表28】

【0202】
サンプルを溶融後、冷却した。全てのサンプルは、許容しうる粘度および溶融温度の半透明のゲル状組成物を生成した。サンプルCおよびDは、上記融解温度より高く加熱し、そしてゆっくりと冷却させた後、均質な外観になった。
【0203】
実施例18:増粘剤系を含有するデカグリセロールテトラベヘネート
増粘剤系および溶媒を別々のジャーで80℃に加熱し、急速に増粘剤に溶媒を添加し、20秒間均質化し、そしてオーバーヘッド・スターラーで10分間、10−15℃の水浴に浸漬しながら撹拌することにより、以下に示す組成物を調製した。Tmおよび粘度を、いくつかのサンプルについて測定した。
【0204】
【表29】

【0205】
サンプルB−Dは、低粘度の均質な組成物を生成した。サンプルAは、非常に高い溶融温度を示す不透明の粘性なクリームであった。サンプルE−Hは、サンプルAより低い粘性および溶融温度であった。
【0206】
実施例19:エステル/アミンオキシド/四級アミン増粘剤系
実施例15と同様にして、以下に示す組成物を調製した。
【0207】
【表30】

【0208】
サンプルAおよびBは、安定で均質な組成物を生成しなかった。組成物CおよびDは、粘性の組成物を生成したが、組成物Dは、均質でないように見えた。組成物の溶融温度は全く高かった。
【0209】
実施例20:アミンオキシド/エステル/四級アミン増粘剤系
3つの成分混合物を使用して、一連の18の配合物を調製した。全増粘剤レベルは、2.45〜4.55重量%で変化した。エタノールと水の溶媒比68:32を使用して、以下に示す濃度範囲を調べた。
【0210】
【表31】

【0211】
増粘剤系および溶媒を別々のジャーで75℃に加熱し、急速に増粘剤に溶媒を添加し、勢いよく振盪させ、オーバーヘッド・スターラーで5分間、10−15℃の水浴に浸漬しながら撹拌することにより、以下に示す組成物を調製した。溶融温度(Tm)、粘度および安定性を、上述のとおり測定した。全ての比は、10,000−270,000cpsの範囲の粘度および45−47℃のTmを有する安定な組成物を生成した。サンプルを穏やかに撹拌することによって、弾性を測定し、5が非常に粘質な組成物であり、そして1が粘性であるが弾性でない1〜5の等級で判定した。製造した組成物の幾つかを以下に示す。
【0212】
【表32】

【0213】
結果は、この増粘剤系が、種々の比率の乳化剤を有する安定な組成物を生成するが、その組成物の物理的特性は広範に変化することを示す。組成物Dは、低全固形分(2.83%)で粘度が高いので、好ましい配合物であって、弾性は非常に少なく、融解温度が高いことを示す。
【0214】
実施例14の増粘剤系および手順を用いて、以下に示す消毒用ハンドローションを調製した。
【0215】
【表33】

【0216】
この組成物は、優れた粘度および41℃のTmを有し、安定であった。
【0217】
実施例21:アルキルアルコール/四級アミン増粘剤系
Lanette 22(米国ペンシルベニア州、アンバーのHenkel Corp)、ベヘニルアルコールNikkol CA−2580(ニュージャージー、パターソンのBarnet Products Corp.)、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムを使用して、以下に示す混合物を調製した。
【0218】
【表34】

【0219】
溶媒および増粘剤系を別々に65−70℃に加熱することで、以下に示す組成物を調製した。溶媒を、急速に増粘剤に添加した後、オーバーヘッド・ペダル・スターラーを用いて10℃の水浴に浸漬したガラス製容器で撹拌した。乳化剤を凝固させるのに十分に組成物を冷却した後、各組成物を4.5分間混合した。
【0220】
3つの全ての組成物は、粘弾性であった。サンプルは、顕微鏡下で明確な結晶領域を有する真珠様である。結晶は、顕微鏡下で事実上ラメラである。23℃で一夜放置すると、少量の離液が見られた。サンプルCのTmは約47℃であった。(サンプルは均一には溶融せず、47℃でもいくらか固体領域を有した。)
【0221】
実施例22:アルキルアルコール/エステル/四級アミン増粘剤系
3つの成分混合物を使用して、一連の10の配合物を調製した。全増粘剤を2.00重量%一定に維持した。エタノールと水の溶媒比68:32を使用して、以下に示す濃度範囲を調べた。
【0222】
【表35】

【0223】
増粘剤系および溶媒を別々のジャーで75℃に加熱し、急速に増粘剤に溶媒を添加し、Silverson L4Rホモジナイザーで最大速度で40秒間均質化し、オーバーヘッド・スターラーで5分間、10〜15℃の水浴に浸漬しながら撹拌することによって、以下に示す組成物を調製した。Tm、粘度および安定性を測定した。唯一の選択比は、76,000〜274,000cpsの範囲の粘度と47〜53℃のTmを示す粘性の高い安定な組成物を生成した。実施例1と同様にして、安定性を測定した。幾つかの配合物を以下に示す。
【0224】
【表36】

【0225】
結果は、この増粘剤系が乳化剤の比率が異なる安定な組成物を生成するが、該組成物の物理的特性はかなり異なることを示す。組成物Cは、高い粘度および高い融解温度を有するとともにほとんど分離しないため、特に好ましい配合物である。1〜2日間、23℃で放置した後、すべての上記配合物は少量の離液を示す。すなわち、少量の透明な低粘度の溶媒層がサンプルの上部で分離した。
【0226】
実施例23:アルキレンアルコールの添加
溶媒と混合する前に溶融増粘剤にオレイルアルコールを加えることによって、実施例22Cで示された組成物にオレイルアルコールを配合した。組成を以下に示す。
【0227】
【表37】

【0228】
安定で相当に粘性なゲル状組成物が生じた。Tmを測定し、50℃であった。安定性を測定し、5%であった。
【0229】
実施例24:増強した安定性についてジアルコキシジメチコンおよびポリエーテル−ポリシロキサン共重合体の添加
実施例22の組成物は、非常に優れた粘度、Tmおよび安定特性を示したが、放置時にわずかの量の離液を示した。驚くべきことに、ジアルコキシジメチコンとポリエーテル−ポリシロキサン重合体の組合せで添加すると、離液はないことが保証され、そして滑らかな非鑞質の触感も供した。実施例22Cと同じ増粘剤比および実施例22の手順を使用して、以下に示す系を調製した。Abil wax2440を乳化剤と一緒に加熱した一方で、Abil B88183を溶媒中で加熱した。
【0230】
【表38】

【0231】
系は安定であり、そして室温での13日間の保存後でさえ、離液の兆候は示さなかった。溶媒中のエタノールのレベルでの増加のために、基剤配合物の溶融温度は、実施例22Cのものに比較して減少した。
【0232】
この配合物を0.5重量%でのCHGの活性について評価し、そして以下に示す配合物を調製することによって、多くの皮膚軟化剤を含有するハンドローションを調製するために使用した。
【0233】
【表39】

【0234】
0.5%CHGスタンダードを行い、両方の菌株について、4のMICを有することが分かった。これらの結果は、増粘剤系がCHG活性に干渉しないこと、エタノール:水溶媒系によること以外は、組成物は固有の抗菌活性を示さないことを示す。サンプル7は優れた化粧特性を示した。
【0235】
実施例25:好ましいハンドローション組成物の繰返し使用
実施例23と同様にして、以下に示すハンドローション組成物を調製した。
【0236】
【表40】

【0237】
一方の手の平に2ml適用し、両方の手で十分にローションを擦することによって、配合物を、最初触感試験で評価した。この組成物は、優れた化粧特性を示した。その後、5名のボランティアのパネルは、最初に水とIvory液体石鹸(米国オハイオ州、シンシナティーのProcter and Gamble)で洗い、そして各適用前に十分に手を乾燥した後、1日に8回、約1時間の間隔で記述とおりローションを適用した。これを全数5日間繰返し、任意の潜在的乾燥効果をますます激しくするために冬の間じゅう行った。全体の触感、油分の欠乏、湿潤性、適用中の滑らかさおよび洗浄中の感覚を含めた全ての化粧カテゴリーで明確にローションを評価した。専門家の等級づけは、皮膚の状況を判断するのに使用した。以下の5ポイント等級で評価した。1=非常にわずかな鱗状−均質に分配されている必要のない一時的な鱗屑、2=わずかな鱗状−溝とプラトーに鱗屑。より均質に分配されたより目視できる鱗屑。3=鱗状−皮膚表面の全体的外観に白っぽい外観を示す目視できる鱗屑。明確な端の隆起または鱗屑の断面。手は触れると荒い。4=鱗状〜非常に鱗状−皮膚表面に平面に乗っていても、鱗屑および皮膚から鱗屑の端の著しい分離。溝とプロトーでの亀裂の証拠がいくらかある。赤みが現れることもある。5=非常に鱗状−皮膚表面の過剰の亀裂。皮膚は、広がった赤みで非常に刺激される。
【0238】
初期、3日および5日後に皮膚コンディションを評価し、結果を表に示す。
【0239】
【表41】

【0240】
結果は、全体の皮膚症状が非常に改善されたことを示す。
【0241】
実施例26:ポリエトキシル化アルコールエステル/エステル/四級アミン増粘剤系
溶媒および増粘剤系を別々に75℃に加熱することによって、以下に示す増粘剤系組成物を調製した。増粘剤系に溶媒を添加し、Silverson L4Rで、最大速度で45秒間均質化し、その後オーバーヘッド・スターラーを用いて、10−15℃の水浴に浸漬したガラス製容器で撹拌することで、以下に示す増粘剤系組成物を調製した。各組成物を3分間混合し、組成物を増粘剤が凝固するまで、十分に冷却した。
【0242】
【表42】

【0243】
全4つの配合物は、粘性の組成物を形成した。配合Bは、Aよりいっそう半透明でゲル状であった。配合物Dは、粘性が減少していることが分かった。0.66〜1.5のUnithox 450:Kemester 9022の比で溶融温度を上げたが、全ての配合物で高かった。
【0244】
実施例27:ポリエトキシル化アルコール/エステル/四級アミン増粘剤系
実施例26と同様にして、以下に示す増粘剤系を調製した。
【0245】
【表43】

【0246】
配合物Aは、44−45℃のTmを示す安定で粘稠なクリーム状組成物を生成した。配合物BおよびCは低い粘度であり、配合物Dは粘度の増加はほとんどない。
【0247】
実施例28:アルキレンアルコール/エステル/四級アミン増粘剤系
組成物がわずか15秒間均質化されること以外は、実施例26と同様にして以下に示す増粘剤系を調製した。
【0248】
【表44】

【0249】
配合物Aは、不安定で、明らかな層分離を示した。配合物Bは均質でそして非常に低い粘度を示した。配合物Cは粘性のクリームであるが放置するとある場合には離液を示した。配合物Dは、高い粘度を示す不透明でゲル状であり、そしてわずかな量の離液のみを示した。
【0250】
実施例29:アルキレンアルコール/エステル/アミンオキシド増粘剤系
実施例28と同様にして、以下に示す増粘剤系を調製した。
【0251】
【表45】

【0252】
組成物Aは、半透明で、弾性で粘度が低い。組成物Bは半透明で、真珠箔で、そして十分に弾性であるが、組成物Aに比べて十分に粘性である。組成物CおよびDは真珠様で、わずかに不透明で高い粘度を示しながら明らかに弾性を示した。
【0253】
実施例30:アルキレンリン脂質/ポリエトキシル化アルキルアルコール増粘剤系
実施例28と同様にして、以下に示す増粘剤系を調製した。
【0254】
【表46】

【0255】
サンプルA,B,EおよびFは均質であり、安定であるが、低い粘度を示した。サンプルC,D,GおよびHは、より高い粘度の値を示しながら不透明で真珠様であった。CHGを水中20%溶液として添加し、配合物C,D,GおよびHに対して最終濃度0.5重量%になった。粘度はCHGを添加した1日後に測定した。結果は、増粘剤系がCHG添加に耐性があること、CHGの添加が実際にこれらの系の粘度を増加させることを示している。Phospholipid SVは、多くの単一の長鎖四級アミン含有界面活性剤と同様に明白な抗菌活性を示すことが報告されている。
【0256】
実施例31:アルキルベタイン/ポリエトキシル化アルキルアルコール増粘剤系
実施例28と同様にして、以下に示す配合物系を調製した。粘度を測定した後、CHGを20%溶液として添加して0.5重量%の最終濃度にした。一日後に粘度を測定した。
【0257】
【表47】

【0258】
配合物AおよびBは不透明であり、若干の弾性を有していた。配合物CおよびDは同様であったが、弾性はより高かった。全ての配合物が、CHGを添加後に均質であり、CHGはこれらの配合物の粘度を実際に増加させた。
【0259】
実施例32:増粘剤系を含むヒドロキシ官能エステル
以下の方法にしたがって、トランスエステル化反応により、乳酸メチル(米国ウイスコンシン州、ミルウォーキーのAldrich Chemical Company,Inc.)をLanette 22(ベヘニルアルコール、90%、米国ペンシルベニア州、アンバーのHenkel Corp.)と反応させて乳酸ベヘニルを調製した。0.2gのナトリウムハイドライド(鉱油中60%)を、窒素でパージされかつオーバーヘッド・スターラー、Dean Starkトラップ、温度計およびコンデンサーを挿入した三つ口250mLガラスフラスコ中に、70℃で32.6グラムのLanette 22に添加した。これに、9.4gの乳酸メチルをゆっくりと添加し、内容物をゆっくりと160℃まで加熱し、同温度で1時間保持した。この温度で2mL以上のメタノールを回収した。内容物を窒素掃引で200℃に加熱して、任意の揮発性成分を除去した。200℃で約15分保持後、内容物を冷却した。冷却によって生成物が結晶化し、約57℃の融点を示した。
【0260】
CHGの連続添加をはじめとして、実施例31と同様にして以下に示す増粘剤系を調製した。
【0261】
【表48】

【0262】
結果は、乳酸ベヘニルは、本発明の目的に有用な乳化剤であることを示す。乳酸ベヘニルは広範な範囲の増粘剤比で種々の系で均質で高い粘度の乳化剤を形成する。サンプルAは粘度では低いが、サンプルB〜Dは非常に真珠様の粘弾性組成物を形成した。サンプルE〜Lは、非常に粘性のゲル状組成物を形成した。組成物は、CHG添加に対して安定である。
【0263】
実施例33:アルキレンモノグリセライド/エステル/アミンオキシド増粘剤系
溶媒および増粘剤系を別々に75℃に加熱することによって、以下に示す増粘剤系を製造した。溶媒を増粘剤系に急速添加し、Silverson L4Rを用いて最大速度で15秒間均質化を行い、5−10℃の水浴に浸漬したガラス容器中、オーバーヘッド・パドル・スターラーで撹拌した。組成物が乳化剤を凝固するのに十分に冷却した後、各組成物を3分間混合した。上述のとおり、粘度を測定した。その後、各サンプルにCHGを水中に20%溶液として最終濃度0.5重量%にするために添加した。スパチュラを使用してCHGを十分に混合し、サンプルを24時間平衡化させた。その後、再度粘度を測定した。
【0264】
【表49】

【0265】
組成物Aは青みのかかった半透明であるが、低い粘度を示した。組成物BはAと類似したが組成物Aよりかなり大きく粘性であった。
組成物Cは半不透明で、組成物Bは粘性であった。サンプルDは不透明で非常に高い粘度を示した白色であった。
【0266】
実施例34:剪断速度の関数としての粘度
以下の実施例は本発明の組成物の類似塑性レオロジーおよび剪断感受性を示す。0.1ラッドのコーン角で、25℃の温度で25mmコーン/平板取り付け具を備えた、Rheometrics Dyanamic Analyzer(RDA−II)を用い、剪断速度の関数として粘度を測定した。遠心分離によって試験する前に、取り込まれた空気をサンプルから除去した。回転速度を一定に維持するために、一定の剪断で粘度を測定した。これは、1秒当たり0.06〜40の剪断速度で行われた。この試験に使用されたサンプルを実施例1、サンプル(Brij 78)および試験例32、サンプルBによって製造した。
【0267】
【表50】

【0268】
この結果は、粘度が非常に剪断に対して感受性を示すことを示している。これは、組成物を、流れることなく十分に手を供給し、該組成物が容易に皮膚表面全面に広がることを可能にする。
【0269】
実施例35:発泡配合物
実施例25の90gの配合物をガラス製加圧容器に室温で仕込んだ。これにプロパン7gとイソブタン3gを添加した。噴射剤を添加したことにより、粘度の劇的な低下を生じた。粘度は、ほぼ水の粘度であると思われる。配合物は、単一の乳化した不透明な白色液体であった。数日放置後、噴射剤は別の層を形成したが、振盪することによって容易に再乳化される。配合物は、白色フォームを生じた。
【0270】
実施例36
この実施例は、酸の一価の塩が本発明中の共乳化剤として有用であることを示す。
【0271】
以下の表に示す配合にしたがい、全成分を4オンス・ジャーに仕込むことによってサンプルを調製した。ジャーに栓をし、全成分が溶解するまで65℃に加熱した。その後、ジャーを回転させて成分を混合し、除熱し、周囲温度まで冷却させた。表に示すように、粘度測定を行った。実施例3と同様に分離試験を行なった。
【0272】
【表51】

【0273】
特許法にしたがい、好ましい重量分率、処理条件および生成物使用法を説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、種々の修飾および変形を加えることができることは当業者に明らかである。本出願に記載した実施例は、組成物のタイプ、量および比率ならびに本発明の配合物の調製方法の可能性を説明するためのものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)重量比約35:65〜100:0の低級アルコールおよび水、ならびに、
b)少なくとも2種の乳化剤を含む少なくとも0.5〜8.0重量%の増粘剤系であって、各々の乳化剤が少なくとも0.05重量%存在し、補助増粘剤を含まない当該組成物が23℃で少なくとも4000センチポアズの粘度を有するように前記乳化剤が選択され、かつ、各々の乳化剤が少なくとも1つの疎水性基および少なくとも1つの親水性基を含み、
(i)前記疎水性基が炭素原子数が少なくとも16のアルキル基、炭素原子数が少なくとも16のアルケニル基または炭素原子数が少なくとも20のアラルキルもしくはアラルケニル基を含み、
(ii)前記親水性基が、構造式−NHR’’’により表されるアミド(式中R’’’は水素または有効な位置においてN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基を含む);短鎖アルコールまたは酸のエステル(例えば、−C(O)OR’または−OC(O)R’)(式中R’は有効な位置においてヒドロキシル基で任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4の分岐または直鎖アルキルである);1〜10個のグルコース単位を有するポリグルコシド;1〜15個のグリセロール単位を有するポリグリセロールエステル;二級アミン;三級アミン、四級アミン;スルフェート(−OSO2-M)、スルホネート(−SO2-M)、ホスフェート((−O)2P(O)O-Mまたは−OP(O)(O-2M)、ホスホネート(−PO(O-2M)およびカルボキシレート(−CO2-M)を含むアニオン基;構造式:−N+(R”)2(CHQ)xL’または
【化1】

(式中R”は水素、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄原子で任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアルキレン基、またはアルキレンカルボキシル基であって、アルキルもしくはアルキレンカルボキシル基は1〜6個の炭素原子を含み、Qは水素またはヒドロキシルであり、xは1〜4の値であり、L’は−CO2-M,−OP(O)(O-2M,(−O)2P(O)O-Mまたは−SO2-Mまたは−OSO2-M(式中Mは乳化剤の正味の電荷を中性にするのに必要なモル比で存在する正電荷対イオンであって、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムまたはN+R’3(各R’は独立にN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基である)よりなる群から選択される)である)で示される両性イオン化合物;および任意にアルコール;および/または疎水性物質1モルあたり2〜150モルのエチレンオキシド単位を有するエーテルまたはエステル結合を介して疎水性基に結合されたポリエチレングリコール、疎水性物質1モルあたりエチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位を合計2〜150モル有し、任意にC1〜C36アルキルまたはアルカリールエステルを末端基としていてもよいポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールコポリマー;および/または多価アルコールのエステルおよびエーテルならびにそれらのポリエトキシル化誘導体;ソルビタンおよびポリエトキシル化ソルビタン;ならびにこれらの群の組合せを含む増粘剤系;を含む組成物。
【請求項2】
前記増粘剤系が約8〜12の間の重量平均親水性新油性バランスを有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
抗菌剤をさらに含有する請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記抗菌剤がCHG、ヨウ素およびその錯体、トリクロサンおよび/またはPCMXを含む請求項3記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の皮膚軟化剤をさらに含有する請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記皮膚軟化剤がワックス、油、または保湿剤を含む請求項5記載の組成物。
【請求項7】
粘度が少なくとも50000センチポアズである請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記増粘剤系がアルキルポリグルコシド、ポリエトキシル化アルコールおよび四級アミンを含む請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記増粘剤系がアルキルまたはアルケニルアルコール、ポリエトキシル化アルコールおよび四級アミンを含む請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記乳化剤が一般式:
(R)a(L)b
〔式中、Rは炭素原子数が少なくとも16のアルキル基、炭素原子数が少なくとも16のアルケニル基または炭素原子数が少なくとも20のアラルキルまたはアラルケニル基;
Lは構造式−NHR’’’により表されるアミド(式中R’’’は水素もしくは有効な位置においてN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基である);短鎖アルコールまたは酸のエステル(例えば、−C(O)OR’または−OC(O)R’)(式中R’は有効な位置においてヒドロキシル基で任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4の分岐または直鎖アルキルである);1〜10個のグルコース単位を有するポリグルコシド;1〜15個のグリセロール単位を有するポリグリセロール;二級アミン;三級アミン;四級アミン;スルフェート(−OSO2-M)、スルホネート(−SO2-M)、ホスフェート((−O)2P(O)O-Mまたは−OP(O)(O-2M)、ホスホネート(−PO(O-2M)およびカルボキシレート(−CO2-M)(式中Mは乳化剤の正味の電荷を中性にするのに必要なモル比で存在する正電荷対イオンであって、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムまたはN+R’3(各R’は独立にN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基である)よりなる群から選択される)を含むアニオン基;構造式:−N+(R”)2(CHQ)xL’または
【化2】

(式中R”は水素、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄原子で任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアルキレン基、またはアルキレンカルボキシル基であって、アルキルもしくはアルキレンカルボキシル基は1〜6個の炭素原子を含み、Qは水素またはヒドロキシルであり、xは1〜4の値であり、L’は−CO2-M,−OP(O)(O-2M,(−O)2P(O)O-Mもしくは−SO2-Mまたは−OSO2-M(Mは前記定義に同じ)である)で示される両性イオン化合物;および任意にアルコール;および/または疎水性物質1モルあたり2〜150モルのエチレンオキシド単位を有するエーテルまたはエステル結合を介して疎水性基に結合されたポリエチレングリコール、疎水性物質1モルあたりエチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位を合計2〜150モル有し、任意にC1〜C36アルキルまたはアルカリールエステルを末端基としていてもよいポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールコポリマー;および/または多価アルコールのエステルおよびエーテルならびにそれらのポリエトキシル化誘導体;ソルビタンおよびポリエトキシル化ソルビタン;ならびにこれらの群の組合せ;ならびに
aおよびbは独立に1〜4の値である〕により表される請求項1記載の組成物。
【請求項11】
a)各々の乳化剤が少なくとも1つの疎水性基および少なくとも1つの親水性基を有する少なくとも2種の乳化剤を含有する増粘剤系であって、
(i)前記疎水性基が炭素原子数が少なくとも16のアルキル基、炭素原子数が少なくとも16のアルケニル基および炭素原子数が少なくとも20のアラルキルもしくはアラルケニル基を含み、
(ii)前記親水性基が、構造式−NHR’’’により表されるアミド(式中R’’’は水素または有効な位置においてN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基を含む);短鎖アルコールまたは酸のエステル(例えば、−C(O)OR’または−OC(O)R’)(式中R’は有効な位置においてヒドロキシル基で任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4の分岐または直鎖アルキルである);1〜10個のグルコース単位を有するポリグルコシド;1〜15個のグリセロール単位を有するポリグリセロール;二級アミン;三級アミン;四級アミン;スルフェート(−OSO2-M)、スルホネート(−SO2-M)、ホスフェート((−O)2P(O)O-Mまたは−OP(O)(O-2M)、ホスホネート(−PO(O-2M)およびカルボキシレート(−CO2-M)を含むアニオン基;構造式:−N+(R”)2(CHQ)xL’または
【化3】

(式中R”は水素、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄原子で任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアルキレン基、またはアルキレンカルボキシル基であって、アルキルもしくはアルキレンカルボキシル基は1〜6個の炭素原子を含み、Qは水素またはヒドロキシルであり、xは1〜4の値であり、L’は−CO2-M,−OP(O)(O-2M,(−O)2P(O)O-M、−SO2-Mまたは−OSO2-M(式中Mは乳化剤の正味の電荷を中性にするのに必要なモル比で存在する正電荷対イオンであって、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムまたはN+R’3(各R’は独立にN,OおよびSで任意に置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基である)よりなる群から選択される)である)で示される両性イオン化合物;および任意にアルコール;および/または疎水性物質1モルあたり2〜150モルのエチレンオキシド単位を有するエーテルまたはエステル結合を介して疎水性基に結合されたポリエチレングリコール、疎水性物質1モルあたりエチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位を合計2〜150モル有し、任意にC1〜C36アルキルまたはアルカリールエステルを末端基としていてもよいポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール;および/または多価アルコールのエステルおよびエーテルならびにそれらのポリエトキシル化誘導体;ソルビタンおよびポリエトキシル化ソルビタン;ならびにこれらの群の組合せを含む増粘剤系を調製する工程と;
b)前記増粘剤系を少なくとも約0.5〜8.0重量%を含む組成物を提供する量でヒドロアルコール溶媒および前記増粘剤系を、前記増粘剤系を溶融するのに十分な温度で組み合わせる工程であって、前記増粘剤系中の乳化剤の各々が少なくとも0.05重量%存在し、補助増粘剤を含有しない当該組成物が23℃で少なくとも4000センチポアズの粘度を有するように前記乳化剤が選択さる工程を含む請求項1記載の組成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−84283(P2009−84283A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−261893(P2008−261893)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【分割の表示】特願平9−503854の分割
【原出願日】平成8年6月4日(1996.6.4)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】