説明

安定化熱可塑性組成物、作製方法、およびそれから形成される物品

熱可塑性組成物は、ポリカーボネートと、イオン化放射線用安定剤と、式(I)の多置換芳香族化合物とを含み、式中、Xは、アリール基であり、Yは、非水素置換基であり、aは、1から4であり、bは、0から4であり、a+bは、4以下であり、cは、0または1であり、ポリカーボネート、イオン化放射線用安定剤、および多置換芳香族化合物の量および属性は、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物を含む成形品が、83kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1925-70に従って測定した場合、非曝露熱可塑性組成物と比較して、黄色度指数(dYI)の増加が50以下となるように選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、安定化熱可塑性組成物、作製方法、ならびにその物品および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム(eビーム)放射、またはガンマ線(γ線)放射(「ガンマ放射」とも呼称される)を使用する照射は、病院、生物実験室、医療機器の製造、および滅菌装置の他の末端ユーザーにおいて使用するための軽量または使い捨てプラスチック物品を滅菌するために使用されることが益々増加している。例えば、1.17および1.33MeVでβ粒子およびガンマ線放射を放射する60Coなどのガンマ線源は、通常、こうした目的のために使用し得る。ガンマ線放射のいくつかの利点は、ガンマ線が、Eビームよりよく浸透し、残渣を全く残さず、熱および/または水分よりプラスチックに対する損傷を少なくし得ることである。ガンマ線がプラスチックに浸透可能であるために、既に包装および/または組立を行った物品を好都合に滅菌し得る。さらに、かかる放射の使用は、ガンマ放射線の浸透力のために、プラスチックから作製したものなどの多数の物品を滅菌するのに理想的であり、線源に近いユニットが、線源から最も遠いユニットと類似の線量を受けることができる。血液袋、ペトリ皿、シリンジ、ビーカー、バイアル、遠沈管、スパチュラなどの物品、およびプレパッケージした物品は、この方法を使用して、望ましくは滅菌される。
【0003】
熱可塑性プラスチックは、上記で列挙した物品などの物品を調製するのに有用である。特に、透明性、薄い色、耐衝撃性、延性、およびメルトフローを含めてのバランスのよい特性を有するポリカーボネートは、建築材料として使用するのに望ましい。しかし、滅菌に適したガンマ線量(通常、10〜85kGyの名目線量)にポリカーボネートを曝露すると、ポリカーボネートの黄色化が観察可能になる場合があり、さらに1つまたは複数の機械特性が劣化する場合がある。当技術分野で「耐放射剤」とも呼称される安定剤は、一般に、ガンマ線量のプラスチックに及ぼす影響を軽減するために使用し得る。ポリカーボネートを含む熱可塑性組成物における黄色化を低減するのに十分な量において存在する安定剤は、例えば、衝撃強度および/または延性などの熱可塑性組成物の1つまたは複数の望ましい機械特性にも影響する場合がある。ポリカーボネートの熱可塑性組成物のガンマ線曝露における黄色化を低減するための安定剤の有用性は、こうした仕方で、機械特性を第二次的に考察することによって軽減する場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、ガンマ線放射に対する耐性が改良されたポリカーボネートを含む熱可塑性組成物に対する当技術分野での必要性が以前存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、当技術分野での上記の欠点が、ポリカーボネートと、イオン化放射線用安定剤と、次式の多置換芳香族化合物と
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、Xは、アリール基であり、Yは、非水素置換基であり、aは、1から4であり、bは、0から4であり、a+bは、4以下であり、cは、0または1である]
を含み、ポリカーボネート、イオン化放射線用安定剤、および多置換芳香族化合物の量および属性(identities)は、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物を含む成形品が、83kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1925-70に従って測定した場合、非曝露熱可塑性組成物と比較して、黄色度指数(dYI)の増加が50以下となるように選択される熱可塑性組成物によって緩和される。
【0008】
他の実施形態では、熱可塑性組成物は、98.5から99.998重量%のポリカーボネートと、0.001から1重量%のイオン化放射線用安定剤と、0.001から0.5重量%の次式の多置換芳香族化合物と
【0009】
【化2】

【0010】
[式中、Xは、アリール基であり、Yは、非水素置換基であり、aは、1から4であり、bは、0から4であり、a+bは、4以下であり、cは、0または1である]
を含み、ポリカーボネート、イオン化放射線用安定剤、および多置換芳香族化合物の重量%の和は、100重量%であり、他のいかなる添加剤も含まない。
【0011】
他の実施形態では、熱可塑性組成物を作製する方法は、ポリカーボネートと、イオン化放射線用安定剤と、次式の多置換芳香族化合物と
【0012】
【化3】

【0013】
[式中、Xは、アリール基であり、Yは、非水素置換基であり、aは、1から4であり、bは、0から4であり、a+bは、4以下であり、cは、0または1である]
を溶融して混合するステップを含み、ポリカーボネート、イオン化放射線用安定剤、および多置換芳香族化合物の量および属性は、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物を含む成形品が、83kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1925-70に従って測定した場合、非曝露熱可塑性組成物と比較して、黄色度指数(dYI)の増加が50以下となるように選択される。
【0014】
他の実施形態では、熱可塑性組成物を含む物品が開示される。
【0015】
上記および他の特徴は、以下の詳細な説明によって例示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
驚くべきことに、ポリカーボネートと、多置換芳香族化合物と、イオン化放射線用安定剤とを含む熱可塑性組成物では、ガンマ放射線に曝露した際の黄色化に対する耐性が著しく改良されることが分かった。多置換芳香族化合物は、匹敵するポリカーボネート含有組成物においてガンマ放射線曝露に対して匹敵した黄色化耐性が得られるのに必要な他の周知の安定剤の量より少ない量で存在する。多置換芳香族化合物を使用することは、機械特性が、ポリカーボネートを含む非安定化熱可塑性組成物と同じまたは匹敵する水準で維持されるための助けになる。
【0017】
本明細書では、「脂肪族基」という用語は、環状でない直鎖または分枝の炭素原子配列を含む、少なくとも1つの価数を有する炭化水素基を指す;「芳香族基」とは、少なくとも1つの芳香族基を含む、少なくとも1つの価数を有する基を指す;「脂環状」とは、環状であるが芳香族でない炭素原子配列を含む、少なくとも1つの価数を有する基を指す;「アルキル」とは、直鎖または分枝鎖で一価の炭化水素基を指す;「アルキレン」とは、直鎖または分枝鎖で二価の炭化水素基を指す;「アルキリデン」とは、直鎖または分枝鎖で二価の炭化水素基であって、両方の価が単一で共通の炭素原子上にある基を指す;「アルケニル」とは、炭素-炭素二重結合によって結合されている少なくとも2つの炭素を有し、直鎖または分枝鎖で一価の炭化水素基を指す;「シクロアルキル」とは、少なくとも3個の炭素原子を有する非芳香族脂環状の一価の炭化水素基であって、少なくとも1つの不飽和度を有する基を指す;「シクロアルキレン」とは、少なくとも3個の炭素原子を有する非芳香族脂環状の二価の炭化水素基であって、少なくとも1つの不飽和度を有する基を指す;「アリール」とは、一価の芳香族ベンゼン環基、または少なくとも1つの任意選択で置換されたベンゼン環に縮合した任意選択で置換されたベンゼン環系の基系を指す;「アリーレン」とは、ベンゼン環二価基、または少なくとも1つの任意選択で置換されたベンゼン環に縮合したベンゼン環系二価基を指す;「アシル」とは、カルボニル炭素原子に結合した一価の炭化水素基であって、該カルボニル炭素が隣接した基にさらに結合している基を指す;「アルキルアリール」とは、上記で定義したようなアリール上で置換されている、上記で定義したようなアルキル基を指す;「アリールアルキル」とは、上記で定義したようなアルキル上で置換されている、上記で定義したようなアリール基を指す;「アルコキシ」とは、酸素基を介して隣接基に結合する上記で定義したようなアルキル基を指す;「アリールオキシ」とは、酸素基を介して隣接基に結合する上記で定義したようなアリール基を指す;ならびに、構造的に変形可能なものの一部である「直接結合」とは、「直接結合」であると見なされる、変形可能なものの前および後の置換基の直接結合を指す。
【0018】
熱可塑性組成物は、ポリカーボネートを含む。本明細書では、「ポリカーボネート」および「ポリカーボネート樹脂」とは、R1基の全数の少なくとも60%が芳香族有機基であり、その残りが脂肪族、脂環状、または芳香族基である次式(1)のカルボネート反復構造単位を有する組成物を意味する。
【0019】
【化4】

【0020】
一実施形態では、それぞれのR1は、芳香族有機基、例えば、次式(2)の基である
-A1-Y1-A2- (2)
[式中、A1およびA2はそれぞれ、単環状で二価のアリール基であり、Y1は、A1をA2から隔てる1つまたは2つの原子を有するは架橋基である]。例示的な実施形態では、1原子が、A1をA2から隔てる。この種の基の例示的な非限定例は、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O2)-、-C(O)-、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2-[2.2.1]-ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、およびアダマンチリデンである。架橋基Y1は、メチレン、シクロヘキシリデン、またはイソプロピリデンなどの炭化水素基もしくは飽和炭化水素基でよい。
【0021】
ポリカーボネートは、式(3)のジヒドロキシ化合物を含む、
HO-A1-Y1-A2-OH (3)
[式中、Y1、A1、およびA2は、上記で説明した通りである]
式HO-R1-OHを有するジヒドロキシ化合物の界面反応によって生成し得る。一般式(4)のビスフェノール化合物も含まれる
【0022】
【化5】

【0023】
[式中、RaおよびRbはそれぞれ、ハロゲン原子、または一価の炭化水素基を表し、同じでも異なっていてもよく、pおよびqは、それぞれ独立に、0から4の整数であり、Xaは、式(5)の基の1つを表す
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、または一価の直鎖もしくは環状の炭化水素基を表し、Reは、二価の炭化水素基である)]。
【0026】
適切なジヒドロキシ化合物の一部の例示的な非限定例として、以下:レゾルシノール、4-ブロモレゾルシノール、ヒドロキノン、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブテン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンチン、(α,α'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-n-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-sec-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(5-フェノキシ-4-ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フッ素、2,7-ジヒドロキシピレン、6,6'-ジヒドロキシ-3,3,3',3'-テトラメチルスピロ(ビス)インダン(''スピロビインダンビスフェノール'')、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6-ジヒドロキシジベンゾ-p-ジオキシン、2,6-ジヒドロキシチアントレン、2,7-ジヒドロキシフェノキサチン、2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジメチルフェナジン、3,6-ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6-ジヒドロキシジベンゾチオフェン、および2,7-ジヒドロキシカルバゾールなど、ならびに前記ジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。
【0027】
式(3)によって表されるビスフェノール化合物の種類の具体的な例として、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以後、「ビスフェノールA」または「BPA」)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-l-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(PPPBP)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)が挙げられる。前記ジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組合せも使用し得る。
【0028】
分枝ポリカーボネート、および直鎖ポリカーボネートと分枝ポリカーボネートとのブレンドも有用である。分枝ポリカーボネートは、重合中に分枝剤を添加することによって調製し得る。これらの分枝剤として、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル、および前記官能基の混合物から選択される少なくとも3つの官能基を含有する多官能性有機化合物が挙げられる。具体的な例として、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸トリクロリド、トリス-p-ヒドロキシフェニルエタン、イサチン-ビスフェノール、トリスフェノールTC(1,3,5-トリス((p-ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリスフェノールPA(4(4(1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)-エチル)α,α-ジメチルベンジル)フェノール)、4-クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸、およびベンゾフェノンテトラカルボン酸が挙げられる。分枝剤は、ポリカーボネートの0.05から2.0重量%の濃度で添加し得る。ポリカーボネート末端基の種類は全て、ポリカーボネート中で有用であることが企図されており、但し、こうした末端基は、熱可塑性組成物の所望の特性に著しい影響を与えない。
【0029】
特定の実施形態では、ポリカーボネートは、A1およびA2のそれぞれが、p-フェニレンであり、Y1がイソプロピリデンであるビスフェノールAから誘導される線状のホモポリマーである。ポリカーボネートは、25℃でクロロホルム中で測定した場合、0.3から1.5デシリットル/グラム(dl/g)、詳細には、0.45から1.0dl/gの固有の粘度を有し得る。ポリカーボネートは、試料濃度1ミリグラム/ミリリットルで、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定し、ポリカーボネート標準で較正した場合、10,000から100,000の重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0030】
一実施形態では、ポリカーボネートは、薄い物品を製造するのに適した流動特性を有する。メルトボリュームフローレート(MVRと略称することが多い)では、所定の温度および負荷におけるオリフィスからの熱可塑性プラスチックの押出速度を測定する。薄い物品を形成するのに適したポリカーボネートは、ASTM D1238-04に従って300℃/1.2kgで測定した場合、0.5から80立方センチメートル/10分(cc/10分)のMVRを有し得る。特定の実施形態では、適切なポリカーボネート組成物は、ASTM D1238-04に従って300℃/1.2kgで測定した場合、0.5から50cc/10分、詳細には、0.5から25cc/10分、より詳細には、1から15cc/10分のMVRを有する。様々な流動特性のポリカーボネートの混合物を使用することによって全体として所望の流動特性を実現し得る。
【0031】
ポリカーボネートは、ASTM D1003-00に従って、厚さ3.18ミリメートルで測定した場合、55%以上、詳細には、60%以上、より詳細には、70%以上の光透過率を有し得る。ポリカーボネートは、ASTM D1003-00に従って、厚さ3.18ミリメートルで測定した場合、50%以下、詳細には、40%以下、最も詳細には、30%以下のヘイズをも有し得る。
【0032】
本明細書で使用される「ポリカーボネート」および「ポリカーボネート樹脂」は、カルボネート鎖単位を含むコポリマーを含み得る。特定の適切なコポリマーは、コポリエステル-ポリカーボネートおよびポリエステル-カルボネートとも呼称されるポリエステル-ポリカーボネートである。ポリカーボネートとポリエステル-ポリカーボネートとの組合せも使用し得る。本明細書では、「組合せ」は、ブレンド、アロイ、反応生成物などの全ての混合物を含む。ポリエステル-ポリカーボネートは、式(1)のカルボネート鎖の反復単位に加えて、式(6)の反復単位を含有する
【0033】
【化7】

【0034】
[式中、Dは、ジヒドロキシ化合物から誘導される二価基であり、例えば、C2〜10アルキレン基、C6〜20脂環状基、C6〜20芳香族基、または、アルキレン基が2から6個の炭素原子、詳細には、2、3、もしくは4個の炭素原子を含有するポリオキシアルキレン基でよく;Tは、ジカルボン酸から誘導される二価基であり、例えば、C2〜10アルキレン基、C6〜20脂環状基、C6〜20アルキル芳香族基、またはC6〜20芳香族基でよい]。
【0035】
一実施形態では、Dは、C2〜6アルキレン基である。他の実施形態では、Dは、式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される
【0036】
【化8】

【0037】
[式中、Rfは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、C1〜10炭化水素基、またはC1〜10ハロゲン置換炭化水素基であり、nは、0から4である]。ハロゲンは通常臭素である。式(7)で表し得る化合物の例として、レゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、5-エチルレゾルシノール、5-プロピルレゾルシノール、5-ブチルレゾルシノール、5-t-ブチルレゾルシノール、5-フェニルレゾルシノール、5-クミルレゾルシノール、2,4,5,6-テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6-テトラブロモレゾルシノールなどの置換レゾルシノール化合物;カテコール;ヒドロキノン;2-メチルヒドロキノン、2-エチルヒドロキノン、2-プロピルヒドロキノン、2-ブチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2-フェニルヒドロキノン、2-クミルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラ-t-ブチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6-テトラブロモヒドロキノンなどの置換ヒドロキノン;または前記化合物の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。
【0038】
ポリエステルを調製するのに使用し得る芳香族ジカルボン酸の例として、イソフタルまたはテレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4'-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'-ビス安息香酸、および前記酸の少なくとも1つを含む混合物が挙げられる。1,4-、1,5-、または2,6-ナフタレンジカルボン酸などの縮合環を含有する酸も存在し得る。特定のジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはそれらの混合物である。特定のジカルボン酸は、イソフタル酸とテレフタル酸との混合物を含み、テレフタル酸とイソフタル酸との重量比は、91:1から2:98である。他の特定の実施形態では、Dは、C2〜6アルキレン基であり、Tは、p-フェニレン、m-フェニレン、ナフタレン、二価の脂環基、またはそれらの混合物である。この種類のポリエステルとして、ポリ(テレフタル酸アルキレン)が挙げられる。
【0039】
エステル単位に加えて、ポリエステル-ポリカーボネートは、本明細書中で上記したようなカルボネート単位を含む。式(1)のカルボネート単位は、式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導することもでき、特定のカルボネート単位は、レゾルシノールカルボネート単位である。
【0040】
詳細には、ポリエステル-ポリカーボネートのポリエステル単位は、イソフタル二酸およびテレフタル二酸の組合せ(またはその誘導体)と、レゾルシノール、ビスフェノールA、またはこれらの1つもしくは複数を含む組合せとの反応から誘導でき、イソフタレート単位とテレフタレート単位とのモル比は、91:9から2:98、詳細には85:15から3:97、より詳細には80:20から5:95、さらにより詳細には70:30から10:90である。ポリカーボネート単位は、レゾルシノールカルボネート単位とビスフェノールAカルボネート単位とのモル比0:100から99:1で、レゾルシノールおよび/またはビスフェノールAから誘導でき、ポリエステル-ポリカーボネート中の混合イソフタレート-テレフタレートポリエステル単位とポリカーボネート単位とのモル比は、1:99から99:1、詳細には5:95から90:10、より詳細には10:90から80:20でよい。ポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートとのブレンドを使用する場合、ブレンド中のポリカーボネートとポリエステル-ポリカーボネートとの比は、それぞれ、1:99から9:1、詳細には10:90から90:10でよい。
【0041】
ポリエステル-ポリカーボネートは、1,500から100,000、詳細には、1,700から50,000、より詳細には、2,000から40,000の重量平均分子量(Mw)を有し得る。分子量の決定は、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して、ポリカーボネート参照で較正して行う。試料は、約1mg/mlの濃度で調製し、約1.0ml/分の流速で溶離する。
【0042】
適切なポリカーボネートは、界面重合および溶融重合などの方法によって製造し得る。界面重合に対する反応条件は、変更し得るが、典型的な方法は、一般に、二価フェノール反応物質を苛性ソーダまたは炭酸カリウム水溶液に溶解または分散させるステップと、得られた混合物を適切な水不混和性溶媒媒体に加えるステップと、pHを制御した条件、例えば、8から10で、トリエチルアミンまたは相間移動触媒などの適切な触媒の存在で、反応物質をカルボネート前駆体と接触させるステップとを含む。最も普通に使用される、水不混和性溶媒として、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンなどが挙げられる。適切なカルボネート前駆体として、例えば、臭化カルボニルもしくは塩化カルボニルなどのハロゲン化カルボニル、または二価フェノールのビスハロギ酸(例えば、ビスフェノールA、ヒドロキノンなどのビスクロロギ酸)もしくはグリコール(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなどのビスハロギ酸)などのハロギ酸が挙げられる。前記の種類のカルボネート前駆体の少なくとも1つを含む組合せも使用し得る。連鎖停止剤(キャッピング剤とも呼称される)を重合中に含ませてもよい。連鎖停止剤は、分子量成長速度を制限し、それによってポリカーボネートの分子量を制御する。連鎖停止剤は、モノフェノール化合物、塩化モノカルボン酸、および/またはモノクロロギ酸のうちの少なくとも1つでよい。
【0043】
例えば、連鎖停止剤として適切なモノフェノール化合物として、フェノール、C1〜C22アルキル置換フェノール、p-クミルフェノール、p-第三級ブチルフェノール、ヒドロキシジフェニルなどの単環状フェノール;p-メトキシフェノールなどのジフェノールのモノエーテルが挙げられる。アルキル置換フェノールとして、8から9個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル置換基を含むフェノールが挙げられる。モノフェノールUV吸収剤をキャッピング剤として使用してよい。そうした化合物として、4-置換-2-ヒドロキシベンゾフェノンおよびその誘導体、サリチル酸アリール、レゾルシノールモノベンゾアート、2-(2-ヒドロキシアリール)-ベンゾトリアゾールおよびそれらの誘導体などのジフェノールのモノエステル、2-(2-ヒドロキシアリール)-1,3,5-トリアジンおよびその誘導体などが挙げられる。詳細には、モノフェノール連鎖停止剤として、フェノール、p-クミルフェノール、および/またはレゾルシノールモノベンゾアートが挙げられる。
【0044】
塩化モノカルボン酸も連鎖停止剤として適切であり得る。これらとして、塩化ベンゾイル、C1〜C22アルキル置換塩化ベンゾイル、塩化トルオイル、ハロゲン置換塩化ベンゾイル、塩化ブロモベンゾイル、塩化シンナモイル、塩化4-ナドイミドベンゾイル、およびそれらの混合物などの単環状塩化モノカルボン酸;塩化トリメリト酸無水物、および塩化ナフトイルなどの多環状塩化モノカルボン酸;ならびに単環状および多環状塩化モノカルボン酸の混合物が挙げられる。最高22個の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸の塩化物は、適切である。塩化アクリロイルおよび塩化メタクリオイルなどの脂肪族モノカルボン酸の官能化塩化物も適切である。フェニルクロロギ酸、アルキル置換フェニルクロロギ酸、p-クミルフェニルクロロギ酸、トルエンクロロギ酸、およびそれらの混合物などの、単環状モノクロロギ酸を含めてのモノクロロギ酸も適切である。
【0045】
ポリエステル-ポリカーボネートは、界面重合によって調製し得る。ジカルボン酸それ自体ではなく、対応する酸ハロゲン化物、特に二塩化酸および二臭化酸などの酸の反応性誘導体を用いることが可能であり、好ましくさえある場合がある。したがって、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、またはそれらの混合物を使用する代わりに、二塩化イソフタロイル、二塩化テレフタロイル、およびそれらの混合物を用いることが可能である。
【0046】
使用し得る相間移動触媒の中でも、式(R3)4Q+Xの触媒が存在する
[式中、それぞれのR3は、同じでも異なっていてもよく、C1〜10アルキル基であり、Qは、窒素またはリン原子であり、Xは、ハロゲン原子、またはC1〜8アルコキシ基、またはC6〜18アリールオキシ基である]。適切な相間移動触媒として、例えば、[CH3(CH2)3]4NX、[CH3(CH2)3]4PX、[CH3(CH2)5]4NX、[CH3(CH2)6]4NX、[CH3(CH2)4]4NX、CH3[CH3(CH2)3]3NX、およびCH3[CH3(CH2)2]3NXが挙げられ、Xは、Cl-、Br-、C1〜8アルコキシ基、またはC6〜18アリールオキシ基である。相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化用混合物中のビスフェノールの重量に対して0.1から10重量%でよい。他の実施形態では、相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化用混合物中のビスフェノールの重量に対して0.5から2重量%でよい。
【0047】
あるいは、溶融法を使用することによってポリカーボネートを作製することもできる。一般に、溶融重合法では、ポリカーボネートは、Banbury(登録商標)ミキサー、2軸押出機などにおいてエステル交換触媒の存在下、溶融状態でジヒドロキシ反応物質(複数可)と、ジフェニルカルボネートなどのジアリールカルボネートエステルとを共反応させることにより均一な分散物を形成することによって調製し得る。揮発性一価フェノールは、蒸留によって溶融反応物質から除去し、ポリマーは、溶融残渣から単離する。
【0048】
ポリカーボネート、ポリエステル-ポリカーボネート、および上記のこれらのものの組合せに加えて、ポリカーボネートおよびポリエステル-ポリカーボネートと、他の熱可塑性ポリマー、例えば、ポリカーボネートおよび/またはポリカーボネートコポリマーとポリエステルとの組合せを使用することも可能である。適切なポリエステルは、式(6)の反復単位を含み、例えば、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、液晶性ポリエステル、およびポリエステルコポリマーでよい。その中に、分枝剤、例えば、3個以上のヒドロキシル基を有するグリコール、または三官能性もしくは多官能性カルボン酸が組み込まれている分枝ポリエステルを使用することも可能である。さらに、組成物の究極の最終使用に応じて、多様な濃度の酸およびヒドロキシル末端基をポリエステル上に有することが望ましい場合もある。
【0049】
有用な種類のポリエステルの例は、ポリ(アルキレンテレフタレート)である。特定のポリ(アルキレンテレフタレート)の例として、限定されないが、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンナフタノアート)(PEN)、ポリ(ブチレンナフタノアート)(PBN)、(ポリプロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、および前記ポリエステルの少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。ポリマーが50モル%以上のポリ(エチレンテレフタレート)を含み、PETGと略称されており、ポリマーが50モル%以上のポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)を含み、PCTGと略称されている、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)-co-ポリ(エチレンテレフタレート)も有用である。上記のポリエステルは、ポリ(アルキレンシクロヘキサンジカルボキシレート)などの類似の脂肪族ポリエステルを含むことができ、その例は、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレン-l,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)(PCCD)である。コポリエステルを作製するために、脂肪族二酸および/または脂肪族ポリオールから誘導される、少量、例えば0.5から10重量%の単位を含む上記のポリエステルもまた企図されている。
【0050】
ポリカーボネートは、ポリシロキサン-ポリカーボネートとも呼称されるポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーをも含み得る。コポリマーのポリシロキサン(本明細書では「ポリジオルガノシロキサン」とも呼称される)ブロックは、式(8)の反復シロキサン単位(本明細書では「ジオルガノシロキサン単位」とも呼称される)を含む
【0051】
【化9】

【0052】
[式中、Rは出現するごとに、同じでも異なっていてもよく、C1〜13一価有機基である]。例えば、Rは、それぞれ独立に、Cl〜Cl3アルキル基、C1〜C13アルコキシ基、C2〜C13アルケニル基、C2〜C13アルケニルオキシ基、C3〜C6シクロアルキル基、C3〜C6シクロアルコキシ基、C6〜C14アリール基、C6〜C10アリールオキシ基、C7〜C13アリールアルキル基、C7〜C13アリールアルコキシ基、C7〜C13アルキルアリール基、またはC7〜C13アルキルアリールオキシ基でよい。前記の基は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、あるいはそれらの組合せによって全部または一部ハロゲン化されていてもよい。前記R基の組合せは、同じコポリマー中で使用してもよい。
【0053】
式(8)中のDの値は、熱可塑性組成物中のそれぞれの成分の種類および相対量、組成物の所望の特性、および類似の考察事項に応じて広範囲に変わってもよい。一般に、Dは、平均値2から1,000、詳細には2から500、より詳細には5から100でよい。一実施形態では、Dは、平均値10から75であり、さらなる他の実施形態では、Dは、平均値40から60である。Dがより小さい値、例えば、40未満では、比較的多量のポリカーボネート-ポリシロキサンコポリマーを使用することが望ましい場合がある。反対に、Dがより大きい値、例えば、40を超える場合では、比較的小量のポリカーボネート-ポリシロキサンコポリマーを使用することが必要である場合がある。
【0054】
第1および第2(またはそれを超える)のポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーの組合せを使用してもよく、第1コポリマーのDの平均値は、第2コポリマーのDの平均値未満である。
【0055】
一実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(9)の反復構造単位により提供される
【0056】
【化10】

【0057】
[式中、Dは、上記で定義した通りであり、Rは、それぞれ独立に、同じでも異なっていてもよく、上記で定義した通りであり、Arは、それぞれ独立に、同じでも異なっていてもよく、置換もしくは非置換C6〜C30アリーレン基であり、その結合は、芳香族部分に直接結合している]。式(9)中の適切なAr基は、C6〜C30ジヒドロキシアリーレン化合物、例えば、上記式(3)、(4)、または(7)のジヒドロキシアリーレン化合物から誘導してもよい。前記のジヒドロキシアリーレン化合物の少なくとも1つを含む組合せも使用し得る。適切なジヒドロキシアリーレン化合物の特定の例は、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニルスルフィド)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパンである。前記のジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組合せも使用し得る。
【0058】
式(9)の単位は、式(10)の対応するジヒドロキシ化合物から誘導し得る
【0059】
【化11】

【0060】
[式中、R、Ar、およびDは、上記の通りである]。式(10)の化合物は、相間移動条件下で、ジヒドロキシアリーレン化合物を、例えば、α、ω-ビスアセトキシポリジオルガノシロキサンと反応させることによって取得し得る。
【0061】
他の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(11)の単位を含み
【0062】
【化12】

【0063】
[式中、RおよびDは、上記の通りであり、R1は出現するごとに、それぞれ独立に、二価のC1〜C30アルキレンである]、重合ポリシロキサン単位は、その対応するジヒドロキシ化合物の反応残基である。特定の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(12)の反復構造単位により提供される
【0064】
【化13】

【0065】
[式中、RおよびDは、上記の通りである]。式(12)中のR2は、それぞれ独立に、二価のC2〜C8脂肪族基である。式(12)中のそれぞれのMは、同じでも異なっていてもよく、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C8アルキルチオ、C1〜C8アルキル、Cl〜C8アルコキシ、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルケニルオキシ基、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8シクロアルコキシ、C6〜C10アリール、C6〜C10アリールオキシ、C7〜C12アリールアルキル、C7〜C12アリールアルコキシ、C7〜C12アルキルアリール、またはC7〜C12アルキルアリールオキシでよく、nは、それぞれ独立に、0、1、2、3、または4である。
【0066】
一実施形態では、Mは、ブロモもしくはクロロ、メチル、エチル、もしくはプロピルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシ、もしくはプロポキシなどのアルコキシ基、またはフェニル、クロロフェニル、もしくはトリルなどのアリール基であり;R2は、ジメチレン、トリメチレン、またはテトラメチレン基であり;Rは、C1〜8アルキル、トリフルオロプロピル、シアノアルキルなどのハロアルキル、あるいはフェニル、クロロフェニル、またはトリルなどのアリールである。他の実施形態では、Rは、メチル、またはメチルとトリフルオロプロピルとの混合物、またはメチルとフェニルとの混合物である。さらなる他の実施形態では、Mはメトキシであり、nは1であり、R2は、二価のC1〜C3脂肪族基であり、Rはメチルである。
【0067】
式(12)の単位は、対応するジヒドロキシポリジオルガノシロキサン(13)から誘導し得る
【0068】
【化14】

【0069】
[式中、R、D、M、R2、およびnは、上記の通りである]。かかるジヒドロキシポリシロキサンは、式(14)のシロキサンヒドリド間の白金触媒付加を実施することによって作製し得る
【0070】
【化15】

【0071】
[式中、RおよびDは、既に定義した通りであり、脂肪族部分が不飽和の一価フェノールである]。適切な脂肪族部分が不飽和の一価フェノールとして、例えば、オイゲノール、2-アリルフェノール、4-アリル-2-メチルフェノール、4-アリル-2-フェニルフェノール、4-アリル-2-ブロモフェノール、4-アリル-2-t-ブトキシフェノール、4-フェニル-2-フェニルフェノール、2-メチル-4-プロピルフェノール、2-アリル-4,6-ジメチルフェノール、2-アリル-4-ブロモ-6-メチルフェノール、2-アリル-6-メトキシ-4-メチルフェノール、および2-アリル-4,6-ジメチルフェノールが挙げられた。前記の少なくとも1つを含む混合物も使用し得る。
【0072】
ポリシロキサン-ポリカーボネートは、50から99重量%のカルボネート単位、および1から50重量%のシロキサン単位を含み得る。この範囲内において、ポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーは、70から98重量%、詳細には75から97重量%のカルボネート単位、および2から30重量%、詳細には3から25重量%のシロキサン単位を含み得る。
【0073】
一実施形態では、ポリシロキサン-ポリカーボネートは、ポリシロキサン単位、ならびに、ビスフェノールA、例えば、A1およびA2がそれぞれ、p-フェニレンであり、Y1がイソプロピリデンである式(3)のジヒドロキシ化合物から誘導されるカルボネート単位を含み得る。ポリシロキサン-ポリカーボネートは、試料濃度1ミリグラム/ミリリットルで、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを用いてゲル浸透クロマトグラフィーによって測定し、ポリカーボネート標準で較正した場合、2,000から100,000、詳細には5,000から50,000の重量平均分子量を有し得る。
【0074】
ポリシロキサン-ポリカーボネートは、300℃/1.2kgで測定した場合、1から50立方センチメートル/10分(cc/10分)、詳細には2から30cc/10分のメルトボリュームフローレートを有し得る。異なる流動特性のポリシロキサン-ポリカーボネート混合物を使用することによって全体として所望の流動特性を実現し得る。
【0075】
熱可塑性組成物は、式(15)の多置換芳香族化合物をさらに含む
【0076】
【化16】

【0077】
ここで、式(15)中のXは、それぞれ独立に、C6〜C20アリールまたは置換C6〜C20アリールである。存在する場合、X基上の置換基として、例えば、ニトロ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルキルエーテル、C6〜C20アリールが挙げられる。適切なX基の例として、フェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、2,3-ジメチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,5-ジメチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、2,3,4-トリメチルフェニル、2,3,5-トリメチルフェニル、3,4,5-トリメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、4-エチルフェニル、4-ブチルフェニル、4-tert-ブチルフェニル、2-トリフルオロメチルフェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-tert-ブトキシフェニル、4-フルオロフェニル、4-クロロフェニル、4-ブロモフェニル、ナフチル、C1〜C8アルキル置換ナフチル、Cl〜C8アルキルエーテル置換ナフチル、ハロゲン置換ナフチル、これらのうちの少なくとも1つを含む組合せなどが挙げられる。
【0078】
また式(15)では、Yは、それぞれ独立に、C1〜C20アルキル、置換C1〜C20アルキル、C6〜C20アリール、置換C6〜C20アリール、ハロゲン、ニトロ、Cl〜C20カルボキシレート、C1〜C20アルキルエーテル、またはC1〜C20アシルである。存在する場合、Y基上の置換基として、例えば、ニトロ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルキルエーテル、C6〜C20アリールなどを挙げ得る。適切なY基の例として、限定されないが、ハロゲン(フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード);カルボン酸メチル、カルボン酸エチル、カルボン酸t-ブチル、カルボン酸シクロヘキシル、カルボン酸フェニルなどのカルボキシレート;-OCH3、-OCH2CH3、-O-t-ブチル、-O-n-ブチル、-O-n-オクチルなどを含めてのアルキルエーテル;アセチル、ピバロイル、n-オクチロイル、n-ドデコイル、n-ステアロイル、ベンゾイルなどを含めての芳香族環のフリーデル-クラフト型のアシル化から誘導されるアシル基;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、オクタデシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル、ノルボルニルなどを含めてのアルキル基;および、フェニル、C1〜C8アルキルフェニル、C1〜C8アルコキシフェニル、ハロフェニルを含めてのアリール基が挙げられる。Y基が指定されていない場合、水素が存在すると理解されたい。
【0079】
さらに式(15)では、aは、1から4であり、bは、0から4であり、a+bは、4未満である。a+bが、4以下である場合、芳香環上の残存する価数は、水素原子で充足されている。
【0080】
多置換芳香族化合物は、3個以上のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ置換芳香族化合物とカルボニル化合物とを適切に縮合(エステル化またはカルボニル化)させることによって調製し得る。適切なポリヒドロキシ置換芳香族化合物として、限定されないが、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン(フロログルシノール)、1-メチル-3,4,5-トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。詳細には、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン、および1,3,5-トリヒドロキシベンゼンが適切である。
【0081】
式(15)中の-O-C(O)-Oc-がエステル基になるように、cがゼロである場合、酸ハロゲン化物、無水物、混合無水物、エステル、N-ヒドロキシスクシニミジルエステルなどのような芳香族カルボン酸または芳香族カルボン酸の誘導体を使用することによってエステル化を実施し得る。あるいは、ジシクロヘキシルカロボジイミド(DCC)などの脱水剤を使用した酸もしくは塩基触媒によるエステル化または脱水性エステル化をも使用し得る。適切な芳香族カルボン酸として、限定されないが、安息香酸、2-メチル安息香酸、3-メチル安息香酸、4-メチル安息香酸、3,5-ジメチル安息香酸、2,3-ジメチル安息香酸、2,4-ジメチル安息香酸、2,5-ジメチル安息香酸、2,6-ジメチル安息香酸、2,3,4-トリメチル安息香酸、2,3,5-トリメチル安息香酸、3,4,5-トリメチル安息香酸、2,4,6-トリメチル安息香酸、4-エチル安息香酸、4-ブチル安息香酸、4-tert-ブチル安息香酸、4-メトキシ安息香酸、4-tert-ブトキシ安息香酸、4-フルオロ安息香酸、4-クロロ安息香酸、4-ブロモ安息香酸、ナフトエ酸、C1〜C8アルキルナフトエ酸、C1〜C8アルキルオキシナフトエ酸、ハロ置換ナフトエ酸、これらの少なくとも1つを含む組合せなどが挙げられる。
【0082】
式(15)中の-O-C(O)-Oc-がカルボネート基になるように、cが1である場合、ホスゲン;トリホスゲン、カルボニルジイミダゾール、または二酸化炭素などのホスゲン均等物などのカルボニル源を使用したカルボニル化反応を使用することによってカルボネート形成を実施し得る。同様に、カルボネートは、適切なフェノール化合物のピロカルボネート、クロロギ酸のどのハロギ酸を使用することによって、または、ジアリールカルボネートを使用したカルボニル交換反応によって形成し得る。ホスゲンもしくは他のカルボニル源との縮合に対して、またはピロカルボネート、クロロギ酸、カルボネートなどの適切な誘導体の調製において適切なヒドロキシ芳香族化合物として、限定されないが、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、3,5-キシレノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、2,3,4-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、4-エチルフェノール、4-n-ブチルフェノール、4-tert-ブチル-フェノール、4-メトキシフェノール、4-tert-ブトキシフェノール、4-フルオロフェノール、4-クロロフェノール、4-ブロモフェノール、ナフトール、Cl〜C8アルキルナフトール、C1〜C8アルキルオキシナフトール、ハロ置換ナフトールなど、および前記ヒドロキシ芳香族化合物の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。これらの中で、フェノールが特に有用である。適切なジアリールカルボネートとして、限定されないが、ジフェニルカルボネート、ジトリルカルボネート、ビス-(3,4-ジメチルフェニル)カルボネート、ビス-(3,5-ジメチルフェニル)カルボネート、ビス-クロロフェニルカルボネート、ビス-(4-メトキシフェニル)カルボネート、および前記カルボネートの少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。これらの中で、ジフェニルカルボネートが特に有用である。適切なクロロギ酸として、限定されないが、フェニルクロロギ酸、トリルクロロギ酸、3,4-ジメチルフェニルクロロギ酸、3,5-ジメチルフェニルクロロギ酸、クロロフェニルクロロギ酸、4-メトキシフェニルクロロギ酸、および前記クロロギ酸の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。これらの中で、フェニルクロロギ酸が特に有用である。縮合反応は、塩基の存在で有機溶媒を使用して単一相において実施し得る。あるいは、縮合反応は、塩基の存在で有機溶媒および水を使用して二相反応においても実施し得る。
【0083】
熱可塑性組成物中で、多置換芳香族化合物は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.1から5ミリモル/キログラム(mmol/Kg)、詳細には0.2から4mmol/Kg、詳細には0.3から3mmol/Kg、さらにより詳細には0.5から2.5mmol/Kgの量において使用される。多置換芳香族化合物のモル量が、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の重量の0.5重量%を超えるような場合、使用される多置換芳香族化合物の全重量は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量の0.5重量%を超えない。
【0084】
通常、熱可塑性組成物中で、多置換芳香族化合物は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.001から0.5重量%、より詳細には0.002から0.4重量%、より詳細には0.003から0.3重量%、さらにより詳細には0.004から0.25重量%の量において使用し得る。
【0085】
熱可塑性組成物は、イオン化放射線用安定剤をさらに含む。イオン化放射線用安定剤の例として、ある種の脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂肪族ジオール、脂肪族エーテル、エステル、ジケトン、アルケン、チオール、チオエーテルおよび環状チオエーテル、スルホン、ジヒドロ芳香族化合物、ジエーテル、窒素化合物、前記の少なくとも1つを含む組合せなどが挙げられる。アルコール系安定剤は、モノ、ジ-、または多置換アルコールから選択することができ、直鎖、分枝、環状、および/または芳香族でよい。適切な脂肪族アルコールとして、不飽和部位を有するアルケノールを挙げることができ、その例として、4-メチル-4-ペンテン-2-オール、3-メチル-ペンテン-3-オール、2-メチル-4-ペンテン-2-オール、2,4-ジメチル-4-ペンテン-2-オール、2-フェニル-4-ペンテン-2-オール、および9-デセン-l-オール;3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、2-フェニル-2-ブタノールなどを含めての第三級アルコール;1-ヒドロキシ-1-メチル-シクロヘキサンなどのヒドロキシ置換第三級脂環状体;メチロール基(-CH2OH)、または(-CRHOH)もしくは(-CR2OH)などのより複雑な炭化水素基などのカルビノール置換基を備える芳香族環を有するヒドロキシメチル芳香族化合物であって、Rが、直鎖C1〜C20アルキル、または分枝C1〜C20アルキルであるヒドロキシメチル芳香族化合物が挙げられる。ヒドロキシカルビノール芳香族化合物の例として、ベンズヒドロール、2-フェニル-2-ブタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、ベンジルアルコール、4-ベンジルオキシ-ベンジルアルコール、およびベンジルーベンジルアルコールが挙げられる。
【0086】
有用な種類のイオン化放射線用安定剤は、ジ-および多官能性脂肪族アルコールである。具体的には、式(16)の脂肪族ジオールが有用である
HO-(C(A')(A''))d-S-(C(B')(B''))e-OH (16)
[式中、A'、A''、B'、およびB''は、それぞれ独立に、H、またはC1〜C6アルキルであり、Sは、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルキレンオキシ、C3〜C6シクロアルキル、またはC3〜C6置換シクロアルキルであり、dおよびeは、それぞれ、0または1であり、但し、dおよびeが、それぞれ、0である場合、Sは、両方の-OH基が、単一の共通の炭素原子に直接結合しないように選択される]。
【0087】
式(16)では、A'、A''、B'、およびB''は、それぞれ独立に、H、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、および前記アルキル基の少なくとも1つを含む組合せから選択される。
【0088】
スペーサ基Sは、メタンジイル、エタンジイル、1,1-エタンジイル、1,1-プロパンジイル、1,2-プロパンジイル、1,3-プロパンジイル、2,2-プロパンジイル、1,1-ブタンジイル、1,2-ブタンジイル、1,3-ブタンジイル、1,4-ブタンジイル、2,2-ブタンジイル、2,3-ブタンジイル、1,1-ペンタンジイル、1,2-ペンタンジイル、1,3-ペンタンジイル、1,4-ペンタンジイル、1,5-ペンタンジイル、2,2-ペンタンジイル、2,3-ペンタンジイル、2,4-ペンタンジイル、3,3-ペンタンジイル、2-メチル-1,1-ブタンジイル、3-メチル-1,1-ブタンジイル、2-メチル-1,2-ブタンジイル、2メチル-1,3-ブタンジイル、2-メチル-1,4-ブタンジイル、2-メチル-2,2-ブタンジイル、2-メチル-2,3-ブタンジイル、2,2-ジメチル-1,1-プロパンジイル、2,2-ジメチル-1,2-プロパンジイル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジイル、3,3-ジメチル-1,1-プロパンジイル、3,3-ジメチル-1,2-プロパンジイル、3,3-ジメチル-2,2-プロパンジイル、1,1-ジメチル-2,3-プロパンジイル、3,3-ジメチル-2,2-プロパンジイル、1,1-ヘキサンジイル、1,2-ヘキサンジイル、1,3-ヘキサンジイル、1,4-ヘキサンジイル、1,5-ヘキサンジイル、1,6-ヘキサンジイル、2,2-ヘキサンジイル、2,3-ヘキサンジイル、2,4-ヘキサンジイル、2,5-ヘキサンジイル、3,3-ヘキサンジイル、2-メチル-1,1-ペンタンジイル、3-メチル-1,1-ペンタンジイル、2-メチル-1,2-ペンタンジイル、2-メチル-1,3-ペンタンジイル、2-メチル-1,4-ペンタンジイル、2-メチル-2,2-ペンタンジイル、2-メチル-2,3-ペンタンジイル、2-メチル-2,4-ペンタンジイル、2,2-ジメチル-1,1-ブタンジイル、2,2-ジメチル-1,2-ブタンジイル、2,2-ジメチル-1,3-ブタンジイル、3,3-ジメチル-1,1-ブタンジイル、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジイル、3,3-ジメチル-2,2-ブタンジイル、1,1-ジメチル-2,3-ブタンジイル、3,3-ジメチル-2,2-ブタンジイルなど;オクタンジイル、デカンジイル、ウンデカンジイル、ドデカンジイル、ヘキサデカンジイル、オクタデカンジイル、イコサナンジイル、およびドコサナンジイルの異性体;ならびに置換および非置換のシクロプロパンジイル、シクロブタンジイル、シクロペンタンジイル、シクロヘキサンジイルから選択することができ、置換基は、1,4-ジメチレンシクロヘキサンの場合のように基の結合点でよく、あるいは、分枝および直鎖アルキル、シクロアルキルなどを含んでよい。さらに、スペーサ基Sは、エチレンオキシ、1,2-プロピレンオキシ、1,3-プロピレンオキシ、1,2-ブチレンオキシ、1,4-ブチレンオキシ、1,6-ヘキシレンオキシなど、およびこれらの少なくとも1つを含む組合せなどの、ポリアルキレンオキシ単位を含む1つまたは複数の二価基から選択し得る。
【0089】
適切な脂肪族ジオールの具体的な例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、meso-2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,4-ヘキサンジオールなど;1,3-シクロブタンジオ-ル、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタンジオール、1,2-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジメチロールシクロヘキサンなどの脂環状アルコール;2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール(ピナコール)、および2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)などの分枝非環状ジオール;ならびに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブロックまたはランダムポリ(エチレングリコール-co-プロピレングリコール)などのポリアルキレンオキシ含有アルコール;ならびに前記の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。具体的には、適切なジオールとして、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0090】
適切な脂肪族エーテルとして、例えば、1,2-ジアルコキシエタン、1,2-ジアルコキシプロパン、1,3-ジアルコキシプロパン、アルコキシシクロペンタン、アルコキシシクロヘキサンなどのアルコキシ置換環状または非環状アルカンを挙げ得る。エステル化合物(-COOR)は、安定剤として有用である場合があり、Rは、置換または非置換、芳香族または脂肪族の炭化水素であり、母体カルボキシ化合物は、同様に、置換もしくは非置換、芳香族もしくは脂肪族、および/または単官能性もしくは多官能性でよい。存在する場合、置換基として、例えば、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルキルエーテル、C6〜C20アリールなどを挙げ得る。有用であることが分かったエステルとして、テトラキス(メチレン[3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマート])メタン、2,2'-オキサミドビス(エチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、およびB.F.Goodrich、Cleveland OHから入手可能であるGOOD-RITE(登録商標)3125などの三官能性ヒンダードフェノールエステル化合物が挙げられる。
【0091】
ジケトン化合物、具体的には、例えば2,4-ペンタジオンなどの、2つのカルボニル官能基を有し、単一の介在炭素原子によって分離されているものも使用し得る。
【0092】
安定剤として使用するのに適した硫黄含有化合物として、チオール、チオエーテル、および環状チオエーテルを挙げ得る。チオールとして、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾールが挙げられ;チオエーテルとして、チオプロピオン酸ジラウリルが挙げられ;環状チオエーテルとして、1,4-ジチアン、1,4,8,11-テトラチオシクロテトラデカンが挙げられる。1つを超えるチオエーテル基を含有する環状チオエーテル、具体的には、例えば1,3-ジチアンの場合のように、2つのチオエーテル基の間の単一介在炭素を有するものが有用である。環状環は、酸素または窒素メンバーを含有してもよい。
【0093】
一般構造R-S(0)2-R'のアリールまたはアルキルスルホン安定剤も、使用することができ、RおよびR'は、C1〜C20アルキル、C6〜C20アリール、C1〜C20アルコキシ、C6〜C20アリールオキシ、それらの置換誘導体などであり、RまたはR'の少なくとも1つは、置換または非置換ベンジルである。存在する場合、置換基として、例えば、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルキルエーテル、C6〜C20アリールなどを挙げ得る。特に有用なスルホンの例は、ベンジルスルホンである。
【0094】
アルケンは、安定剤として使用し得る。適切なアルケンとして、一般構造RR'C=CR''R'''のオレフィンを挙げることができ、R、R'、R''、およびR'''は、それぞれ独立に、同じでも異なっていてもよく、水素、C1〜C20アルキル、C1〜C20シクロアルキル、C1〜C20アルケニル、C1〜C20シクロアルケニル、C6〜C20アリール、C6〜C20アリールアルキル、C6〜C20アルキルアリール、C1〜C20アルコキシ、C6〜C20アリールオキシ、およびそれらの置換誘導体から選択し得る。存在する場合、置換基として、例えば、Cl〜C8アルキル、C1〜C8アルキルエーテル、C6〜C20アリールなどを挙げ得る。オレフィンは、非環状、環外、または環内でよい。特に有用なアルケンとして、1,2-ジフェニルエタン、アリルフェノール、2,4-ジメチル-1-ペンテン、リモネン、2-フェニル-2-ペンテン、2,4-ジメチル-1-ペンテン、1,4-ジフェニル-l,3-ブタジエン、2-メチル-l-ウンデセン、1-ドデセン、前記の少なくとも1つを含む組合せなどが挙げられる。
【0095】
部分水素化芳香族化合物、および不飽和環と組み合わせた芳香族化合物を含めてのヒドロ芳香族化合物も安定剤として有用である場合がある。具体的な芳香族化合物として、ベンゼンおよび/またはナフタレン系システムが挙げられる。適切なヒドロ芳香族化合物の例として、インダン、5,6,7,8-テトラヒドロ-1-ルナフトール、5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフトール、9,10-ジヒドロアントラセン、9,10-ジヒドロフェナントレン、1-フェニル-1-シクロヘキサン、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフトール、前記の少なくとも1つを含む組合せなどが挙げられる。
【0096】
水素化および非水素化、置換および非置換のピランを含めてのジエーテルも安定剤として使用し得る。存在する場合、置換基として、例えば、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルキルエーテル、C6〜C20アリールなどを挙げ得る。ピランは、C1〜C20アルキル、C6〜C20アリール、C1〜C20アルコキシ、C6〜C20アリールオキシなどを含む置換基を有してもよく、それらは、ピラン環の任意の炭素上に位置してもよい。特に有用な置換基として、6つの位置で環上に位置するC1〜C20アルコキシ、またはC6〜C20アリールオキシが挙げられる。水素化ピランは、特に有用である。適切なジエーテルの例として、ジヒドロピラニルエーテル、およびテトラヒドロピラニルエーテルが挙げられる。
【0097】
安定剤として機能し得る窒素化合物として、高分子量オキサミドフェノール、例えば、2,2-オキサミドビス-[エチル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、高分子量シュウ酸アニリド、およびそれらの誘導体、ならびにチオ尿素などのアミン化合物が挙げられる。
【0098】
イオン化放射線用安定剤は、通常、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して0.001から1重量%、詳細には0.005から0.75重量%、より詳細には0.01から0.5重量%、さらにより詳細には0.05から0.25重量%の量において使用される。
【0099】
熱可塑性組成物は、エステルおよび/またはカルボネート基の加水分解を低減するための加水分解安定剤をさらに含み得る。通常の加水分解安定剤として、2,2',6,6'-テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドのように位置2および2'で置換された芳香族および/または脂環状モノカルボ-ジイミドなどのカルボジイミド系添加剤を挙げ得る。分子量が500グラム/モルを超えるポリカルボジイミドも適切である。加水分解安定剤として有用な他の化合物として、エポキシ修飾アクリル酸オリゴマーまたはポリマー、および脂環状エポキシドに基づくオリゴマーが挙げられる。適切なエポキシ官能化安定剤の具体的な例として、Union Carbide Corporation (Dow Chemicalの関係会社)、Danbury、CTから供給される脂環状エポキシド樹脂、ERL-4221;ならびにJohnson Polymer Inc、Sturtevant、WI.から入手可能なJONCRYL(登録商標)ADR-4300およびJONCRYL(登録商標)ADR-4368が挙げられる。加水分解安定剤は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して0.05から1重量%、詳細には0.1から0.5重量%、より詳細には0.12から0.3重量%の量において使用し得る。
【0100】
上記で議論したように、ガンマ放射線に曝露されると、ポリカーボネートは、黄色になり、黄色度の程度は、ガンマ放射線の曝露線量の増加とともに増加する。十分に大きい放射線量では、黄色が十分に濃厚になる恐れがあるために、ポリカーボネートから調製される物品はその有用性が損なわれる。同様に、ガンマ放射線量の増加とともに透明性も減少する。
【0101】
発明がいかに動作するかを説明する必要はないが、かかる理論は、読者がその発明を理解するよい助けとして有用である場合がある。特許請求の範囲は、以下の動作理論によって限定されないことは理解されよう。ガンマ放射線への曝露によって、ポリカーボネートの分解フリーラジカル生成物が発生し、その生成物が反応することによってパイ共役結合が拡張した種が形成され、したがって、黄色になると考えられる。安定剤は、ポリカーボネート中に含ませることができ、これらのラジカル種を安定化するために、あるいはラジカル種と反応させるために使用することができ、したがって、ポリカーボネートの劣化を遅延させるが、いずれの安定剤も、黄色化を完全に防止するほど十分に活性ではない。83kGyのガンマ放射線量に曝露した後、従来技術のイオン化放射線用安定剤のみを含むポリカーボネートの黄色度指数は、通常、曝露前の該組成物に対する1未満の黄色度指数と比較して約50を超える。同様に、この仕方で安定化され、同じガンマ放射線量で処理されたポリカーボネートの透明性の損失は、約15%以上になり得る。
【0102】
スルホン酸を生成する光酸発生剤(光酸発生剤1分子当り1または2当量の酸)に基づくものなどの他の種類の安定剤の使用には、組成物の0.5重量%を超える安定剤の添加が必要であることが分かっている。発生酸の量が増加すると、ポリカーボネート中に他の分解生成物の形成がもたらされる恐れがあり、したがって、ポリカーボネートのさらなる分解を引き起こし、安定剤の有効性を軽減させる可能性がある。例えば、臭素化ビスフェノールAなどの臭素化化合物も、ポリカーボネート化合物の黄色化を低減するのに有用であることが分かっている。しかし、臭素などのハロゲン化物の環境へのインパクトについての心配のために、この種の化合物を使用することがより望ましくない。
【0103】
驚くべきことに、カルボキシレートエステルおよび/またはカルボネートで置換された多置換芳香族化合物と組み合わせてイオン化放射線用安定剤を使用すると、ガンマ放射線への曝露において、前述の種類の安定剤で見られるのに比較して、使用される多置換芳香族化合物単位当りでポリカーボネートを含む熱可塑性組成物の安定度がより高くなることが分かった。熱可塑性組成物中に加水分解安定剤をさらに含ませると追加の安定化がもたらされる場合がある。熱可塑性組成物では、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量の0.5重量%未満という多置換芳香族化合物の低い添加濃度で、熱可塑性組成物のガンマ放射線安定性が増加する。したがって、ポリカーボネート、イオン化放射線用安定剤、および多置換芳香族化合物の量および属性は、それらと一緒に調製した熱可塑性組成物から成形された物品の黄色度の増加が、ガンマ放射線への曝露後最小になるように選択される。他の実施形態では、ポリカーボネート、イオン化放射線用安定剤、多置換芳香族化合物、および加水分解安定剤の量は、それらと一緒に調製した熱可塑性組成物から成形された物品の透明度の減少が、ガンマ放射への曝露後最小になるように選択される。
【0104】
理論によって拘束されることを望むものではないが、上記の多置換芳香族化合物は、モノ-またはジ置換芳香族化合物より有効な活性ラジカル種の発生剤であるので、ガンマ放射線エネルギー吸収量単位当りの活性ラジカルの濃度がより大であると考えられる。この理論により、これらの活性ラジカルは、ポリカーボネートから発生する反応種を中和すると考えられる。この反応種は、中和されないと、黄色度の増加、および熱可塑性組成物において入射光の透過を可能にする透明度の減少の元になり得るポリカーボネート分解生成物をもたらすであろう。加水分解安定剤は、存在する場合、反応種をやはり中和し、それによって追加の安定化効果を提供することがさらに考えられる。
【0105】
ガンマ放射線への曝露後、熱可塑性組成物の黄色度の増加は、熱可塑性組成物から調製された成形品の黄色度指数(YI)を測定し、曝露前の物品のYIと比較することによって決定し得る。熱可塑性組成物のYIは、熱可塑性組成物から成形される物品の透明度、色彩、および表面仕上げ外観の組合せに応じて、透過率および/または反射分光分析法を使用して測定し得る。熱可塑性組成物から調製された成形品が、透明、または半透明いずれかであり;無色、白色、またはオフホワイトであり;光沢、半光沢、または無光沢である場合、成形品のYIは、ASTM DI925-70に従って決定し得る。成形品が、不透明であり;オフホワイトまたは非白色であり;光沢のある表面仕上げである場合、YIは、ASTM E313-73による反射率測定を使用して決定し得る。
【0106】
一実施形態では、83kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1925-70に従って測定した場合、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物を含む成形品は、非曝露熱可塑性組成物と比較して、黄色度指数(dYI)の増加が50以下、詳細には40以下、より詳細には35以下、さらにより詳細には30以下である。他の実施形態では、51kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1925-70に従って測定した場合、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物を含む成形品は、非曝露熱可塑性組成物と比較して、黄色度指数(dYI)の増加が24以下、詳細には20以下、より詳細には15以下、さらにより詳細には13以下である。他の実施形態では、適切であれば、黄色度指数の変化は、ASTM E313-73に従って測定し得る。
【0107】
さらなる実施形態では、83kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1925-70に従って測定した場合、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物と加水分解安定剤とを含む成形品は、非曝露熱可塑性組成物と比較して、黄色度指数(dYI)の増加が40以下、詳細には38以下、より詳細には35以下、さらにより詳細には30以下であり得る。他の実施形態では、適切であれば、黄色度指数の変化は、ASTM E313-73に従って測定し得る。
【0108】
同様に、熱可塑性組成物から調製された成形品が、入射光の透過を可能にする、つまり、不透明でない場合、曝露後の熱可塑性組成物の透明度の減少は、熱可塑性組成物から調製された成形品を通る入射光の透過率%(%T)を測定し、曝露前の物品の%Tと比較することによって決定し得る。したがって、一実施形態では、83kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1003-00に従って測定した場合、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物を含む成形品は、非曝露熱可塑性組成物と比較して、透過率%(d%T)の減少が15%以下、詳細には13%以下、より詳細には11%以下、さらにより詳細には10%以下であり得る。他の実施形態では、51kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1003-00に従って測定した場合、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物を含む成形品は、非曝露熱可塑性組成物と比較して、透過率%(d%T)の減少が5%以下、詳細には4.5%以下、より詳細には4%以下、さらにより詳細には3.5%以下であり得る。
【0109】
他の実施形態では、83kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1003-00に従って測定した場合、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物と、加水分解安定剤とを含む成形品は、非曝露熱可塑性組成物と比較して、透過率%(d%T)の減少が12%以下、詳細には10%以下、より詳細には9.5%以下、さらにより詳細には9%以下であり得る。
【0110】
ポリカーボネート、イオン化放射線用安定剤、多置換芳香族化合物、および所望であれば加水分解安定剤に加えて、熱可塑性組成物は、この種の熱可塑性組成物に通常組み込まれる多様な添加剤を含み得るが、但し、添加剤は、熱可塑性組成物の所望の特性に悪い影響を与えないように選択される。添加剤の混合物も使用し得る。かかる添加剤は、熱可塑性組成物を形成するための成分の混合中に適切な時間混合し得る。
【0111】
熱可塑性組成物は、顔料および/または染料添加剤などの着色剤を含み得る。適切な顔料として、例えば、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物および混合金属酸化物などの無機顔料;硫化亜鉛などのスルフィド;アルミナート;ナトリウムスルホシリカート、スルファート、クロマートなど;カーボンブラック;亜鉛フェライト;ウルトラマリンブルー;茶色顔料24;赤色顔料101;黄色顔料119;アゾ、ジアゾ、キナクリドン、ペリレン、ナフタレンテトラカルボン酸、フラバントロン、イソインドリノン、テトラクロロイソインドリノン、アントラキノン、アンタントロン、ジオキサジン、フタロシアニン、およびアゾレーキなどの有機顔料;青色顔料60、赤色顔料122、赤色顔料149、赤色顔料177、赤色顔料179、赤色顔料202、紫色顔料29、青色顔料15、緑色顔料7、黄色顔料147、および、黄色顔料150、または前記顔料の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。顔料は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して0.01から10重量%の量において使用し得る。
【0112】
適切な染料は、有機材料でよく、適切な染料として、例えば、クマリン460(青)、クマリン6(緑)、ナイル赤などのクマリン染料;ランタニド錯体;炭化水素および置換炭化水素染料;多環状芳香族炭化水素染料;オキサゾールもしくはオキサジアゾール染料などの蛍光染料;アリール-もしくはヘテロアリール置換ポリ(C2〜8)オレフィン染料;カルボシアニン染料;インダントロン染料;フタロシアニン染料;オキサジン染料;カルボスチリル染料;ナフタレンテトラカルボン酸染料;ポルフィリン染料;ビス(スチリル)ビフェニル染料;アクリジン染料;アントラキノン染料;シアニン染料;メチン染料;アリールメタン染料;アゾ染料;インジゴイド染料、チオインジゴイド染料、ジアゾニウム染料;ニトロ染料;キノンイミン染料;アミノケトン染料;テトラゾリウム染料;チアゾール染料;ペリレン染料、ペリノン染料;ビス-ベンゾオキサゾリルチオフェン(BBOT);トリアリールメタン染料;キサンテン染料;チオキサンテン染料;ナフタルイミド染料;ラクトン染料;近赤外波長を吸収し、可視波長を発光するアンチストークスシフト染料などのフルオロフォア;7-アミノ-4-メチルクマリンなどの発光染料;3-(2'-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン;2-(4-ビフェニリル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール;2,5-ビス-(4-ビフェニリル)-オキサゾール;2,2'-ジメチル-p-クアテルフェニル;2,2-ジメチル-pターフェニル;3,5,3'''',5''''-テトラ-t-ブチル-p-キンクフェニル;2,5-ジフェニルフラン;2,5-ジフェニルオキサゾール;4,4'-ジフェニルスチルベン;4ジシアノメチレン-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン;1,1'-ジエチル-2,2'-カルボシアニンヨウ化物;3,3'-ジエチル-4,4',5,5'-ジベンゾチアトリカルボシアニンヨウ化物;7-ジメチルアミノ-l-メチル-4-メトキシ-8-アザキノロン-2;7-ジメチルアミノ-4-メチルキノロン-2;2-(4-(4-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジエニル)-3-エチルベンゾチアゾリウムペルクロレート;3-ジエチルアミノ-7-ジエチルイミノフェノキサゾニウムペルクロレート;2-(1-ナフチル)-5-フェニルオキサゾール;2,2'-p-フェニレン-ビス(5-フェニルオキサゾール);ローダミン700;ローダミン800;ピレン;クリセン;ルブレン;コロネンなど、または前記染料の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。染料は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.01から10重量%の量において使用し得る。
【0113】
熱可塑性組成物は、その耐衝撃性を増加させるために衝撃改質剤を含み得、該衝撃改質剤は、熱可塑性組成物の所望の特性に悪い影響を与えない量において存在する。これらの衝撃改質剤は、(i)10℃未満、より詳細には-10℃未満、より詳細には-40℃から-80℃のTgを有するエラストマー性(つまり、ゴム状の)ポリマー基材と、(ii)エラストマー性ポリマー基材にグラフト化された剛性ポリマースーパーストレートとを含むエラストマー修飾グラフトコポリマーを含む。周知のように、エラストマー修飾グラフトコポリマーは、最初にエラストマー性ポリマーを用意するステップと、次いでエラストマーの存在で剛性相の成分モノマー(複数可)を重合させることによってグラフトコポリマーを得るステップとによって調製し得る。グラフトは、エラストマーコアに対してグラフト分枝またはシェルとして結合し得る。シェルは、コアを単に物理的にコアを封入してもよいし、あるいはシェルは、部分的または基本的に完全にコアにグラフト化されてもよい。
【0114】
エラストマー相として使用するのに適した材料として、例えば、共役ジエンゴム;共役ジエンと50重量%未満の共重合可能なモノマーとのコポリマー;エチレンプロピレンコポリマー(EPR)またはエチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM)などのオレフィンゴム;エチレン-酢酸ビニルゴム;シリコーンゴム;エラストマー性C1〜8アルキル(メタ)アクリレート;C1〜8アルキル(メト)アクリレートとブタジエンおよび/またはスチレンとのエラストマー性コポリマー;あるいは前記エラストマーの少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。
【0115】
エラストマー相を調製するために適した共役ジエンモノマーは、式(17)である
【0116】
【化17】

【0117】
[式中、Xbは、それぞれ独立に、水素、C1〜C5アルキルなどである]。使用し得る共役ジエンモノマーの例は、ブタジエン、イソプレン、l,3-ヘプタジエン、メチル-l,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン;1,3-および2,4-ヘキサジエンなど、ならびに前記共役ジエンモノマーの少なくとも1つを含む混合物である。特別の共役ジエンホモポリマーとして、ポリブタジエンおよびポリイソプレンが挙げられる。
【0118】
共役ジエンゴムのコポリマー、例えば、共役ジエンおよびそれらと共重合可能な1つまたは複数のモノマーの水性ラジカルエマルジョン重合によって生成するものも使用し得る。ビニル芳香族化合物は、エチレン性不飽和ニトリルモノマーと共重合することによってコポリマーを形成することができ、ビニル芳香族化合物は、式(18)のモノマーを含み得る
【0119】
【化18】

【0120】
[式中、Xcは、それぞれ独立に、水素、C1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C12アリール、C7〜C12アリールアルキル、C7〜C12アルキルアリール、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ、またはヒドロキシであり、Rは、水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロである]。使用し得る適切なモノビニル芳香族モノマーとして、スチレン、3-メチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、4-n-プロピルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチルビニルトルエン、α-クロロスチレン、α-ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラ-クロロスチレンなど、および前記化合物の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。スチレンおよび/またはα-メチルスチレンは、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとして使用し得る。
【0121】
共役ジエンと共重合し得る他のモノマーは、イタコン酸、アクリルアミド、N-置換アクリルアミドまたはメタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイミド、N-アルキル-、アリール-、またはハロアリール置換マレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、および一般式(19)のモノマーなどのモノビニル性モノマーである
【0122】
【化19】

【0123】
[式中、Rは、水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロであり、XCは、C1〜C12アルコキシカルボニル、C1〜C12アリールオキシカルボニル、ヒドロキシカルボニルなどである]。式(17)のモノマーの例として、アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど、および前記モノマーの少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。n-ブチルアクリレート、エチルアクリレート、および2-エチルヘキシルアクリレートなどのモノマーは、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとして通常使用される。前記モノビニルモノマーとモノビニル芳香族モノマーとの混合物も使用し得る。
【0124】
エラストマー相として使用するのに適した適切な(メタ)アクリレートモノマーは、C1〜8アルキル(メタ)アクリレート、特にC4〜6アルキルアクリレート、例えば、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、および前記モノマーの少なくとも1つを含む組合せの架橋した粒子状エマルジョンホモポリマーまたはコポリマーでよい。C1〜8アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、最高15重量%の式(17)、(18)、または(19)のコモノマーと混合されて任意選択で重合し得る。コモノマーの例として、限定されないが、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ペネチルメタクリレート、N-シクロヘキシルアクリルアミド、ビニルメチルエーテル、および前記コモノマーの少なくとも1つを含む混合物が挙げられる。任意選択で、最高5重量%の多官能性架橋コモノマー、例えば、ジビニルベンゼン、グリコールビスアクリレート、アルキレントリオールトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスアクリルアミド、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、マレイン酸ジアリル、フマール酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、クエン酸のトリアリルエステル、リン酸のトリアリルエステルなどのアルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、および前記架橋剤の少なくとも1つを含む組合せが、存在してよい。
【0125】
エラストマー相は、バルク-サスペンジョン、エマルジョン-バルク、バルク-溶液、または他の技法などのマス、エマルジョン、サスペンジョン、溶液、または組合せ法によって、連続、セミ回分式、または回分法を使用して重合し得る。エラストマー基材の粒径は、重要でない。エマルジョン系重合ゴムラテックスでは、例えば、0.001から25マイクロメートル、詳細には0.01から15マイクロメートル、さらにより詳細には0.1から8マイクロメートルの平均粒径を使用し得る。バルク重合ゴム基材には、0.5から10マイクロメートル、詳細には0.6から1.5マイクロメートルの粒径を使用し得る。粒径は、簡単な光透過率法、または毛細管流体力学クロマトグラフィー(CHDF)によって測定し得る。エラストマー相は、粒状の中位架橋共役ブタジエン、またはC4〜6アルキルアクリレートゴムでよく、好ましくは、ゲル含有量が70重量%を超える。ブタジエンと、スチレンおよび/またはC4〜6アルキルアクリレートゴムとの混合物も適している。
【0126】
エラストマー相は、全グラフトコポリマーの5から95重量%、より詳細には、エラストマー修飾グラフトコポリマーの20から90重量%、さらにより詳細には、40から85重量%を占めることができ、その残りは、剛性グラフト相である。
【0127】
エラストマー修飾グラフトコポリマーの剛性相は、1つまたは複数のエラストマー性ポリマー基材の存在で、モノビニル芳香族モノマーと、任意選択で1つまたは複数のコモノマーとを含む混合物をグラフト重合することによって形成し得る。スチレン、α-メチルスチレン、ジブロモスチレンなどのハロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ブチルスチレン、パラ-ヒドロキシスチレン、メトキシスチレンなど、または前記モノビニル芳香族モノマーの少なくとも1つを含む組合せを含めての、式(18)の上記の前記モノビニル芳香族モノマーが、剛性グラフト相において使用し得る。適切なコモノマーとして、例えば、上記のモノビニル性モノマーおよび/または一般式(19)のモノマーが挙げられる。一実施形態では、Rは、水素またはC1〜C2アルキルであり、XCは、シアノまたはC1〜C12アルコキシカルボニルである。剛性相において使用するのに適したコモノマーの具体的な例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレートなど、および前記コモノマーの少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。
【0128】
剛性グラフト相におけるモノビニル芳香族モノマーとコモノマーとの相対的な比は、エラストマー基材の種類、モノビニル芳香族モノマー(複数可)の種類、コモノマー(複数可)の種類、および衝撃改質剤の所望の特性に応じて、広範に変わり得る。剛性相は、一般に、最高100重量%のモノビニル芳香族モノマー、詳細には30〜100重量%、より詳細には50〜90重量%のモノビニル芳香族モノマーを含むことができ、残りはコモノマー(複数可)である。
【0129】
存在するエラストマー修飾ポリマーの量に応じて、非グラフト化剛性ポリマーまたはコポリマーの独立マトリックスまたは連続相は、エラストマー修飾グラフトコポリマーとともに同時に得ることができる。通常、かかる衝撃改質剤は、衝撃改質剤の全重量に対して、40から95重量%のエラストマー修飾グラフトコポリマーと、5から65重量%のグラフト(コ)ポリマーとを含む。他の実施形態では、かかる衝撃改質剤は、衝撃改質剤の全重量に対して、15から50重量%、より詳細には15から25重量%のグラフト(コ)ポリマーと一緒に、50から85重量%、より詳細には75から85重量%のゴム修飾グラフトコポリマーを含む。
【0130】
他の具体的な種類のエラストマー修飾衝撃改質剤は、シリコーンゴムモノマー、式H2C=C(Rd)C(O)OCH2CH2Reを有する分枝アクリレートゴムモノマーの少なくとも1つから誘導される構造単位を含み、Rdは、水素またはC1〜C8直鎖もしくは分枝アルキル基であり、Reは、C3〜C16分枝アルキル基;第1のグラフトリンクモノマー;重合可能なアルケニル含有有機材料;および第2のグラフトリンクモノマーである。シリコーンゴムモノマーは、例えば、環状シロキサン、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、(アクリロキシ)アルコキシシラン、(メルカプトアルキル)アルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、またはアリルアルコキシシランを単独または組合せで含むことができ、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはテトラエトキシシランを含むことができる。
【0131】
分枝アクリレートゴムモノマーの例として、単独または組合せで、イソ-オクチルアクリレート、6-メチルオクチルアクリレート、7-メチルオクチルアクリレート、6-メチルヘプチルアクリレートなどが挙げられる。重合可能なアルケニル含有有機材料は、例えば、式(18)または(19)のモノマー、例えば、単独または組合せで、スチレン、α-メチルスチレン、またはメチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレートなどの非分枝(メタ)アクリレートでよい。
【0132】
少なくとも1つの第1のグラフトリンクモノマーは、単独または組合せで、(アクリロキシ)アルコキシシラン、(メルカプトアルキル)アルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、またはアリルアルコキシシランでよく、例えば、(γ-メタクリロキシプロピル)(ジメトキシ)メチルシランおよび/または(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランでよい。少なくとも1つの第2のグラフトリンクモノマーは、単独または組合せで、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、またはトリアリルイソシアヌレートなどの少なくとも1つのアリル基を有するポリエチレン性不飽和化合物である。
【0133】
シリコーン-アクリレート衝撃改質剤組成物は、エマルジョン重合によって調製することができ、例えば、少なくとも1つのシリコーンゴムモノマーを、ドデシルベンゼンスルホン酸などの界面活性剤の存在で、30℃から110℃の温度で少なくとも1つの第1のグラフトリンクモノマーと反応させることによってシリコーンゴムラテックスを形成する。あるいは、シクロオクタメチルテトラシロキサンおよびテトラエトキシオルトシリケートなどの環状シロキサンを(γ-メタクリロキシプロピル)メチルジメトキシシランなどの第1のグラフトリンクモノマーと反応させることによって100ナノメートルから2マイクロメートルの平均粒径を有するシリコーンゴムを得ることもできる。次いで、少なくとも1つの分枝アクリレートゴムモノマーは、過酸化ベンゾイルなどのフリーラジカル発生重合触媒の存在で、任意選択でアリルメタクリレートなどの架橋モノマーの存在で、シリコーンゴム粒子と重合させる。次いで、このラテックスは、重合可能なアルケニル含有有機材料および第2のグラフトリンクモノマーと反応させる。グラフトシリコーン-アクリレートゴムハイブリッドのラテックス粒子は、凝固(凝固剤による処理によって)を介して水相から分離し、微粉末になるまで乾燥させることによってシリコーン-アクリレートゴム衝撃改質剤組成物を生成する。この方法は、100ナノメートルから2マイクロメートルの粒径を有するシリコーン-アクリレート衝撃改質剤を生成するために一般に使用し得る。
【0134】
前記エラストマー修飾グラフトコポリマーを形成するための周知の方法として、連続、セミ回分式、または回分法を使用する、バルク-サスペンジョン、エマルジョン-バルク、バルク-溶液、または他の技法などのマス、エマルジョン、サスペンジョン、および溶液法または組合せ法が挙げられる。
【0135】
SANコポリマーを含めての前記の種類の衝撃改質剤は、C6〜30脂肪酸のアルカリ金属塩、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなど;アルカリ金属炭酸塩、ドデシルジメチルアミン、ドデシルアミンなどのアミン;およびアミンのアンモニウム塩などの塩基性材料を含まないエマルジョン重合法によって調製し得る。かかる材料は、エマルジョン重合において界面活性剤として通常使用され、ポリカーボネートのエステル交換および/または分解を触媒し得る。代わりに、イオン性スルファート、スルホナート、またはホスファート界面活性剤が、衝撃改質剤、特に衝撃改質剤のエラストマー性基材部分を調製する際に使用し得る。適切な界面活性剤として、例えば、スルホン酸C1〜22アルキルまたはC7〜25アルキルアリール、硫酸C1〜22アルキルまたはC7〜25アルキルアリール、リン酸C1〜22アルキルまたはC7〜25アルキルアリール、置換シリカート、およびそれらの混合物が挙げられる。具体的な界面活性剤は、C6〜16、詳細にはスルホン酸C8〜12アルキルである。実用上、脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ金属炭酸塩、および他の塩基性材料を含まなければ、任意の上記衝撃改質剤が使用し得る。
【0136】
この種の具体的な衝撃改質剤は、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)衝撃改質剤であり、ブタジエン基材は、界面活性剤として上記のスルホナート、スルファート、またはホスファートを使用して調製する。ABSおよびMBSの他に、エラストマー修飾グラフトコポリマーの他の例として、限定されないが、アクリロニトリル-スチレン-ブチルアクリレート(ASA)、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)、およびアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン(AES)が挙げられる。存在する場合、衝撃改質剤は、熱可塑性組成物中に、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して0.1から30重量%の量において存在し得る。
【0137】
熱可塑性組成物は、フィラーまたは強化剤を含み得る。使用される場合、適切なフィラーまたは強化剤として、例えば、ケイ酸アルミニウム(ムライト)、合成ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、黒鉛、天然ケイ砂などのケイ酸塩およびシリカ粉末;窒化ホウ素粉末、ホウ素-シリケート粉末などのホウ素粉末;TiO2、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの酸化物;硫酸カルシウム(その無水物、二水和物または三水和物として);チョーク、石灰石、大理石、合成沈降性炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム;繊維状、モジュラー状、針状、層状タルクを含めてのタルク;ウォラストナイト;表面処理ウォラストナイト;中空および密実ガラス球、シリケート球、セノ球、アルミノシリケート(アルモ球)などのガラス球;硬質カオリン、軟質カオリン、仮焼カオリン、ポリマーマトリックス樹脂との適合性を促進するための当技術分野で周知の多様な被覆を含むカオリンなどを含めてのカオリン;炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、鉄、ニッケル、銅などの単結晶繊維または「ウイスカー」;アスベスト、炭素繊維、E、A、C、ECR、R、S、D、もしくはNEガラスなどのガラス繊維などの繊維(連続およびチョップド繊維を含めて);硫化モリブデン、硫化亜鉛などのスルフィド;チタン酸バリウム、バリウムフェライト、硫酸バリウム、重晶石などのバリウム化合物;粒状もしくは繊維状アルミニウム、ブロンズ、亜鉛、銅およびニッケルなどの金属および金属酸化物;ガラスフレーク、フレーク状炭化ケイ素、二ホウ化アルミニウム、アルミニウムフレーク、スチールフレークなどのフレーク状フィラー;繊維状フィラー、例えば、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、および硫酸カルシウム半水和物など少なくとも1つを含むブレンドから誘導されるものなどの無機短繊維;木材を粉砕することによって得られる木材粉などの天然フィラーおよび強化材、セルロース、綿、サイザル麻、ジュート、スターチ、コルク粉、リグニン、粉砕ナッツ殻、コーン、米、穀類モミなどの繊維状生成物;ポリテトラフルオロエチレンなどの有機フィラー;ポリ(エーテルケトン)、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエステルス、ポリエチレン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル酸樹脂、ポリ(ビニルアルコール)などの繊維の形成が可能な有機ポリマーから形成される強化用有機繊維状フィラー;ならびに雲母、粘土、長石、煙道ダスト、フィライト、石英、ケイ岩、パーライト、トリポリ、珪藻土、カーボンブラックなどの追加のフィラーおよび強化剤、または前記フィラーもしくは強化剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。
【0138】
フィラーおよび強化剤は、導電性を促進するために金属材料の層によって被覆、あるいは、ポリマー性マトリックス樹脂に対する接着性および分散性を改良するためにシランによって表面処理してもよい。さらには、強化用フィラーは、モノフィラメントまたはマルチフィラメントの形態で供給してもよく、単独で、または、例えば、共織りまたはコア/シース、サイド-バイ-サイド、オレンジタイプまたはマトリックスおよびフィブリル構造、あるいは繊維製造の技術分野で当業者に周知の他の方法を介して他の種類の繊維と組み合わせて使用し得る。適切な共織り構造として、例えば、ガラス繊維-カーボン繊維、カーボン繊維-芳香族ポリイミド(アラミド)繊維、および芳香族ポリイミドファイバーガラス繊維などが挙げられる。繊維状フィラーは、例えば、0〜90度織物などのロービング、織布強化材;連続ストランドマット、チョップドストランドマット、ティッシュー、紙およびフェルトなどの不織布強化材;または組みひもなどの三次元強化材の形態で供給し得る。フィラーは、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0から90重量%の量において使用し得る。
【0139】
適切な酸化防止剤として、例えば、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)、亜リン酸トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスフィット、ジステアリルペンタエリトリトールジホスフィットなどのオルガノ亜リン酸;アルキル化モノフェノールもしくはポリフェノール;ポリフェノールとテトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタンなどのジエンとのアルキル化反応生成物;パラクレゾールまたはジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物;アルキル化ヒドロキノン;ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル;アルキリデン-ビスフェノール;ベンジル化合物;β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価もしくは多価アルコールとのエステル;β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3メチルフェニル)プロピオン酸と一価もしくは多価アルコールとのエステル;チオプロピオン酸ジステアリル、チオプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジトリデシル、プロピオン酸オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)、プロピオン酸ペンタエリトリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)などのチオアルキルもしくはチオアリール化合物のエステル;プロピオン酸β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)のアミドなど、または前記酸化防止剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。酸化防止剤は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.0001から1重量%の量において使用し得る。
【0140】
適切な熱安定剤として、例えば、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス-(2,6-ジメチルフェニル)、亜リン酸トリス-(混合モノ-およびジノニルフェニル)などのオルガノ亜リン酸;ホスホン酸ジメチルベンゼンなどのホスホナート;リン酸トリメチルなどのホスファート;または前記熱安定剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。熱安定剤は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.0001から1重量%の量において使用し得る。
【0141】
光安定剤および/または紫外光(UV)吸収剤も使用し得る。適切な光安定剤として、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、および2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾトリアゾール、または前記光安定剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。光安定剤は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.0001から1重量%の量において使用し得る。
【0142】
適切なUV吸収剤として、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン;ヒドロキシベンゾトリアゾール;ヒドロキシベンゾトリアジン;シアノアクリレート;オキサニリド;ベンゾオキサジノン;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノール(CYASORB(商標)5411);2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン(CYASORB(商標)531);2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)-フェノール(CYASORB(商標)1164);2,2'-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)(CYASORB(商標)UV-3638);1,3-ビス[(2-シアン-3,3-ジフェエニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアン-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(UVINUL(商標)3030);2,2'-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン);1,3-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン;全てが100ナノメートル未満の粒径を有する、酸化チタン、酸化セリウム、および酸化亜鉛などのナノサイズの無機材料;類似物、または前記UV吸収剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。UV吸収剤は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.0001から1重量%の量において使用し得る。
【0143】
可塑剤、潤滑剤、および/または離型剤用添加剤も使用し得る。これらの種類の材料の間にはかなりのオーバーラップが存在し、それらとして、例えば、ジオクチル-4,5-エポキシ-ヘキサヒドロフタレートなどのフタル酸エステル;トリス-(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌレート;トリステアリン;レゾルシノールテトラフェニルジホスファート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスファート、およびビスフェノール-Aのビス(ジフェニル)ホスファートなどの二または多官能性芳香族ホスファート;ポリ-α-オレフィン;エポキシ化大豆油;シリコーン油を含めてのシリコーン;エステル、例えば、アルキルステアリルエステル、例えば、ステアリン酸メチルなどの脂肪酸エステル;ステアリン酸ステアリル、ペンタエリトリトールテトラステアレートなど;ステアリン酸メチルとポリエチレングリコールポリマー、ポリプロピレングリコールポリマーおよびそれらのコポリマーを含む親水性および疎水性ノニオン界面活性剤との混合物、例えば、適切な溶媒中のステアリン酸メチルとポリエチレン-ポリプロピレングリコールコポリマー;ミツロウ、モンタンロウ、パラフィンロウなどのロウが挙げられる。かかる材料は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.001から1重量%、詳細には0.01から0.75重量%、より詳細には0.1から0.5重量%の量において使用し得る。
【0144】
「帯電防止剤」という用語は、導電特性および全体の物理性能を改良するために、ポリマー樹脂に加工および/または材料もしくは物品上にスプレーし得るモノマー性、オリゴマー性、またはポリマー性材料を指す。モノマー性帯電防止剤の例として、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、トリステアリン酸グリセリン、エトキシル化アミン、第一級、第二級および第三級アミン、エトキシル化アルコール、硫酸アルキル、硫酸アルキルアリール、リン酸アルキル、硫酸アルキルアミン、スルホン酸ステアリルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸アルキル塩、第四級アンモニウム塩、第四級アンモニウム樹脂、イミダゾリン誘導体、ソルビタンエステル、エタノールアミド、ベタインなど、または前記モノマー性帯電防止剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。
【0145】
ポリマー性帯電防止剤の例として、ある種のポリエステルアミドポリエーテル-ポリアミド(ポリエーテルアミド)ブロックコポリマー、ポリエーテエステルアミドブロックコポリマー、ポリエーテルエステル、またはポリウレタンが挙げられ、それぞれが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール部分ポリアルキレンオキシド単位を含有する。かかるポリマー性帯電防止剤は、市販されており、例えば、Pelestat(商標)6321(Sanyo)またはPebax(商標)MH1657 (Atofina)、Irgastat(商標)P18およびP22 (Ciba-Geigy)がある。帯電防止剤として使用し得る他のポリマー性材料は、高温での溶融加工後それらの固有導電性の一部を保持しているポリアニリン(PanipolからPANIPOL(登録商標)EBとして市販)、ポリピロールおよびポリチオフェン(Bayerから市販)などの固有に導電性のポリマーである。一実施形態では、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、または前記の任意の組合せは、組成物を電気的に散逸性にする化学的な帯電防止剤を含有するポリマー樹脂中で使用し得る。帯電防止剤は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.0001から5重量%の量において使用し得る。
【0146】
添加し得る適切な難燃剤は、リン、臭素、および/または塩素を含む有機化合物でよい。非臭素化および非塩素化リン含有難燃剤、例えば、有機ホスフェートおよびリン-窒素結合を含有する有機化合物が、法規制の理由からある種の用途で好ましい場合がある。
【0147】
1つの種類の有機ホスフェートの例は、式(GO)3P=Oの芳香族ホスファートであり、Gは、それぞれ独立に、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル基であるが、但し、少なくとも1つのGは、芳香族基である。G基のうち2つは、一緒に結合することによって環状基、例えば、ジフェニルペンタエリトリトールジホスファートを提供し得る。他の適切な芳香族ホスファートは、例えば、リン酸ビス(ドデシル)フェニル、リン酸ビス(ネオペンチル)フェニル、リン酸ビス(3,5,5'-トリメチルヘキシル)フェニル、リン酸エチルジフェニル、リン酸2-エチルヘキシルジ(p-トリル)、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)p-トリル、リン酸トリトリル、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)フェニル、リン酸トリ(ノニルフェニル)、リン酸ビス(ドデシル)p-トリル、リン酸ジブチルフェニル、リン酸2-クロロエチルジフェニル、リン酸ビス(2,5,5'ートリメチルヘキシル)p-トリル、リン酸2-エチルヘキシルジフェニルなどでよい。特別な芳香族ホスファートは、それぞれのGが、芳香族であるもの、例えば、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、リン酸イソプロピル化トリフェニルなどである。
【0148】
二または多官能性芳香族リン含有化合物も有用であり、例えば、以下の式の化合物である。
【0149】
【化20】

【0150】
[式中、G1は、それぞれ独立に、1から30個の炭素原子を有する炭化水素であり;G2は、それぞれ独立に、1から30個の炭素原子を有する炭化水素またはヒドロカルボノキシであり;Xaは、それぞれ独立に、1から30個の炭素原子を有する炭化水素であり;Xは、それぞれ独立に、臭素または塩素であり;mは、0から4であり、nは、1から30である]。適切な二または多官能性芳香族リン含有化合物の例として、それぞれ、レソルシノールテトラフェニルジホスファート(RDP)、ヒドロキノンのリン酸ビス(ジフェニル)、およびビスフェノールAのリン酸ビス(ジフェニル)、それらのオリゴマー性およびポリマー性対応物などが挙げられる。
【0151】
リン-窒素結合を含有する適切な難燃剤化合物の例として、ホスホニトリル酸クロリド、リンエステルアミド、リン酸アミド,ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、トリス(アジリジニル)ホスフィンオキシドが挙げられる。存在する場合、リン含有難燃剤は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.1から10重量%の量において存在し得る。
【0152】
ハロゲン化材料、例えば、式(20)のハロゲン化化合物および樹脂も、難燃剤として使用し得る
【0153】
【化21】

【0154】
[式中、Rは、アルキレン、アルキリデン、または脂環状結合基、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、イソプロピリデン、ブチレン、イソブチレン、アミレン、シクロヘキシレン、シクロペンチリデンなど;または、酸素エーテル、カルボニル、アミン、もしくはイオウ含有結合基、例えば、スルフィド、スルホキシド、スルホンである]。Rは、芳香族、アミノ、エーテル、カルボニル、スルフィド、スルホキシド、スルホンなどの基によって結合された2つ以上のアルキレンまたはアルキリデン結合基からなる場合もある。
【0155】
式(20)中のArおよびAr'は、それぞれ独立に、フェニレン、ビフェニレン、ターフェニレン、ナフチレンなどのモノ-、またはポリ炭素環状芳香族基である。
【0156】
Yは、有機、無機、または有機金属基、例えば、ハロゲン、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素;Eが、Xに類似した一価の炭化水素基である一般式OEのエーテル基;Rによって表される種類の一価の炭化水素基;または、他の置換基、例えば、ニトロ、シアンなどであって、前記置換基が基本的に不活性であるが、但し、アリール核当り少なくとも1個、好ましくは2個のハロゲン原子が存在する置換基である。
【0157】
存在する場合、Xは、それぞれ独立に、一価の炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、デシルなどのアルキル基;フェニル、ナフチル、ビフェニル、キシリル、トリルなどのアリール基;および、ベンジル、エチルフェニルなどのアリールアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシルなどの脂環状基である。一価の炭化水素基は、それ自体が不活性な置換基を含有してもよい。
【0158】
dは、それぞれ独立に、1から、ArまたはAr'を含む芳香族環上で置換された置換可能な水素数に等しい最大値までである。eは、それぞれ独立に、1から、R上の置換可能な水素数に等しい最大値までである。a、b、cは、それぞれ独立に、0を含む整数である。bが0でない場合、aもcも0になることができない。そうでなければ、aまたはcのいずれかは、0になることができるが、しかし両方は不可能である。bが0である場合、芳香族基は、直接に炭素-炭素結合によって結合する。
【0159】
芳香族基、ArおよびAr'上のヒドロキシルおよびY置換基は、芳香族環上でオルト、メタ、またはパラ位に変わることができ、基は、相互に任意の可能な幾何学的関係にあり得る。
【0160】
以下が、その代表であるビスフェノールは、上記の式の範囲内に含まれる:2,2-ビス-(3,5-ジクロロフェニル)-プロパン;ビス-(2-クロロフェニル)-メタン;ビス(2,6-ジブロモフェニル)-メタン;1,1-ビス-(4-ヨードフェニル)-エタン;1,2-ビス-(2,6-ジクロロフェニル)-エタン;1,1ビス-(2-クロロ-4-ヨードフェニル)エタン;1,1-ビス-(2-クロロ-4-メチルフェニル)-エタン;1,1ビス-(3,5-ジクロロフェニル)-エタン;2,2-ビス-(3-フェニル-4-ブロモフェニル)-エタン;2,6-ビス-(4,6-ジクロロナフチル)-プロパン;2,2-ビス-(2,6-ジクロロフェニル)-ペンタン;2,2-ビス-(3,5-ジブロモフェニル)ヘキサン;ビス-(4-クロロフェニル)-フェニル-メタン;ビス-(3,5-ジクロロフェニル)-シクロヘキシルメタン;ビス-(3-ニトロ-4-ブロモフェニル)-メタン;ビス-(4-ヒドロキシ-2,6-ジクロロ-3-メトキシフェニル)-メタン;および2,2-ビス-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン 2,2-ビス-(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン。上記の構造式内に以下も含まれる:1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジブロモベンゼン、1,3-ジクロロ-4-ヒドロキシベンゼン、および2,2'-ジクロロビフェニル、多臭素化1,4-ジフェノキシベンゼン、2,4'-ジブロモビフェニル、および2,4'-ジクロロビフェニルなどのビフェニル、ならびにデカブロモジフェニルオキシドなど。
【0161】
ビスフェノールAと、テトラブロモビスフェノールAと、カルボネート前駆体、例えば、ホスゲンとのコポリカーボネートなどのオリゴマー性およびポリマー性ハロゲン化芳香族化合物も有用である。金属共力剤、例えば、酸化アンチモンも難燃剤とともに使用し得る。存在する場合、ハロゲン含有難燃剤は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.1から10重量%の量において存在し得る。
【0162】
無機難燃剤、例えば、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム(リマール塩)、ペルフルオロクタンスルホン酸カリウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、およびジフェニルスルホンスルホン酸カリウムなどのスルホン酸C2〜16アルキル塩の塩;例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびバリウム)と、無機酸複合体、例えば、Na2CO3、K2CO3、MgCO3、CaCO3、およびBaCO3などのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸塩におけるオキソ-アニオンと、あるいは、Li3A1F6、BaSiF6、KBF4、K3AIF6、KAIF4、K2SiF6、および/またはNa3AIF6などにおけるフルオロ-アニオン複合体とを反応させることによって形成される塩も使用し得る。存在する場合、無機難燃剤塩は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.1から5重量%の量において存在し得る。
【0163】
ドリップ防止剤、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフィブリル形成または非フィブリル形成フルオロポリマーも使用し得る。ドリップ防止剤は、上記したような剛性コポリマー、例えば、スチレンアクリロニトリルコポリマー(SAN)によって封入され得る。SAN中に封入されたPTFEは、TSANと呼ばれる。封入フルオロポリマーは、フルオロポリマーの存在で、封入用ポリマーを重合させることによって、例えば、水性分散によって作製し得る。TSANは、組成物中に容易に分散し得るという点で、PTFEよりも著しく優れた利点を提供し得る。適切なTSANは、封入フルオロポリマーの全重量に対して、例えば、50重量%のPTFEと50重量%のSANとを含み得る。SANは、コポリマーの全重量に対して、例えば、75重量%のスチレンと25重量%のアクリロニトリルとを含み得る。あるいは、フルオロポリマーは、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂またはSANなどの第2のポリマーと何らかの仕方で予備ブレンドすることによって、ドリップ防止剤として使用するための凝集材料を形成することもできる。封入フルオロポリマーを生成するために、いずれの方法も使用し得る。ドリップ防止剤は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.1から5重量%の量において使用し得る。
【0164】
一実施形態では、熱可塑性組成物は、98.5から99.998重量%のポリカーボネートと、0.001から0.5重量%の多置換芳香族化合物と、0.001から1重量%のイオン化放射線用安定剤とを含む。他の実施形態では、熱可塑性組成物は、98.85から99.993重量%のポリカーボネートと、0.002から0.4重量%の多置換芳香族化合物と、0.005から0.75重量%のイオン化放射線用安定剤とを含む。他の実施形態では、熱可塑性組成物は、99.2から99.987重量%のポリカーボネートと、0.003から0.3重量%の多置換芳香族化合物と、0.01から0.5重量%のイオン化放射線用安定剤とを含む。さらなる他の実施形態では、熱可塑性組成物は、99.5から99.946重量%のポリカーボネートと、0.004から0.25重量%の多置換芳香族化合物と、0.05から0.25重量%のイオン化放射線用安定剤とを含む。それぞれのこれらの実施形態では、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の重量%の和は、100重量%であり、いかなる他の添加剤をも含まない。
【0165】
特定の実施形態では、熱可塑性組成物は、衝撃改質剤、フィラー、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外光吸収剤、可塑剤、離型剤、潤滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、難燃剤、ドリップ防止剤、またはこれらの少なくとも1つを含む組合せから選択される添加剤をさらに含む。
【0166】
熱可塑性組成物は、当技術分野で一般に利用される方法、例えば、一実施形態では、粉末ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤、および/または他の任意選択の成分をHENSCHEL-Mixer(登録商標)高速ミキサーでまず最初にブレンドすることで進めるという1つの仕方で製造し得る。限定されないが、ハンドミキシングを含めての他の低せん断法もこのブレンディングを実施し得る。次いで、ブレンドをホッパーを介して押出機の投入口に供給する。あるいは、1つまたは複数の成分は、投入口および/または下降部でサイドスタッファーから押出機に直接供給することによって組成物中に組み込んでもよい。添加剤は、所望のポリマー性樹脂とともにコンパウンド化してマスターバッチにして、押出機に供給してもよい。押出機は、一般に、組成物を流動させるのに必要とされるより高い温度で操作する。押出物は、水バッチ内で直ちに急冷し、ペレット化する。こうして調製したペレットは、押出物を切断する場合、長さ1/4インチでよく、所望であればより短くてもよい。かかるペレットは、次の成形、成型、または形成のために使用し得る。
【0167】
特定の実施形態では、熱可塑性組成物を調製する方法は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤を溶融混合をすることによって熱可塑性組成物を形成するステップを含む。溶融混合は、押出しによって行い得る。一実施形態では、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の割合は、機械性能を望ましい水準に保ちつつ、熱可塑性組成物の光学特性が最高になるように選択される。
【0168】
特定の実施形態では、押出機は、二軸押出機である。押出機は、通常、180から385℃、詳細には200から330℃、より詳細には220から300℃の温度で操作されるが、金型温度は異なっていてもよい。押し出された熱可塑性組成物は、水中で急冷され、ペレット化される。
【0169】
熱可塑性組成物を含む成型、形成、成形品も提供される。熱可塑性組成物は、射出成形、押出、回転成形、ブロー成形、および熱成形などの多様な手段によって有用な成型品に成形し得る。特定の実施形態では、成形は、射出成形によって行われる。望ましくは、熱可塑性組成物は、優れた金型充填能力を有し、例えば、ボトル、シリンジ、透析付属品、管類、試料用バイアル、血液袋、ペトリ皿、ビーカー、遠沈管、スパチュラ、連結器、トロカール、ストップコック、ルアロック、Y部位、カテーテル、人工肺格納器、トレイ、歯科器具、ピペット、グルコースメーター、吸引器などの物品を形成するのに有用である。
【0170】
熱可塑性組成物は、以下の非限定的実施例によってさらに例示される。
【0171】
熱可塑性組成物は全て、Werner & Pfleiderer共回転式二軸押出機(長さ/直径(L/D)比=30/1、真空ポートは、金型面近傍に位置する)でコンパウンドにした。二軸押出機は、ポリマー組成物間の良好な混合をもたらすのに十分な分布および分散要素を有していた。続いて、組成物は、HuskyまたはBOY射出成形機でISO294に従って成形される。組成物は、250から330℃の温度でコンパウンド化および成形されるが、当業者には、本方法は、これらの温度に限定されない場合があることが理解されよう。
【0172】
熱可塑性組成物は、以下の特性に対して試験される:実験室規模の試料に対する黄色度指数(YI)は、厚さ3.18ミリメートルの成形プラークについてASTM D1925-70に従ってHunterLab Color Systemを使用して、発光観測器C/2°で測定した。YI(dYI)の増加は、同じ組成の照射試料の黄色度指数値から非照射試料の黄色度指数値を減ずることによって計算される。透過率(%T)は、厚さ3.18ミリメートルの成形プラークについて、ASTM D1003-00に従ってGardner Haze Guard Dualを使用して測定した。%T(d%T)の増加は、同じ組成の照射試料の透過率値から非照射試料の透過率値を減ずることによって計算される。分子量変化は、以下の手順に従って、乾燥した窒素パージされたオーブン内で80℃の加熱条件下、あるいは80℃および相対湿度80%(80/80)で加熱および湿潤条件下いずれかで試験した:ポリカーボネートの試料100gを、80℃±3℃のオーブン内に入れ、水蒸気を導入することによって相対湿度80%を確立した;あるいは、オーブンを80℃まで予熱し、乾燥空気流でチャンバ内をパージした。試料を所望の温度で2週間(wk)保持した。試料を、オーブンから取り出し、塩化メチレンに溶解し、1mg/mlの濃度まで稀釈し、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを使用してゲル透過クロマトグラフィーによって分析し、ポリカーボネート標準に対して較正した。重量平均分子量の差は、試料および対照の重量平均分子量の比較から求める。
【0173】
熱可塑性組成物は、表1に示す成分を使用して調製した。
【0174】
【表1】

【0175】
三置換芳香族化合物、ピロガロールトリベンゾアート(PTB)、およびピロガロールトリフェニルカルボネート(PTPC)を以下の手順に従って調製した。
【0176】
ピロガロールトリベンゾアート(PTB)。磁気攪拌器を備えた三口の丸底500mlフラスコに、塩化ベンゾイル20.0g(0.142mol)、ピロガロール6.2g(0.05mol)、塩化メチレン400ml、およびテトラヒドロフラン(THF)50mlを仕込んだ。トリエチルアミン(TEA;15.3g、0.15mol)を10分間かけて追加のロートを介して滴下した。TEAを添加した後、溶液をさらに15分間攪拌し、続いて1000mlの分液ロートに移した。溶液を、1.0MHCl溶液150ml(1×)、0.1M NaOH溶液100ml(2x)、1.0M HCl溶液100ml(1×)、および脱イオン水100ml(3x)で洗浄した。塩化メチレン層を抽出し、MgSO4上で1時間乾燥し、ろ過した。塩化メチレンを真空中で除去し、粘性のある油を回収した。粘性のある油を最小量の塩化メチレン中に入れ、2〜3週間後にヘキサンから結晶化して(結晶化中に溶媒の蒸発がゆっくり行われた)白色の結晶性固体が得られた。固体をろ過し、真空中で(30mmHg)終夜乾燥した。
【0177】
ピロガロールトリフェニルカルボネート(PTPC)。磁気攪拌器を備えた三口の丸底500mlフラスコに、クロロギ酸フェニル20.0g(0.128mol)、ピロガロール5.85g(0.046mol)、塩化メチレン400ml、およびテトラヒドロフラン(THF)50mlを仕込んだ。トリエチルアミン(TEA;15.3g、0.15mol)を10分間かけて追加のロートを介して滴下した。TEAを添加した後、溶液をさらに15分間攪拌し、続いて1000mlの分液ロートに移した。溶液を、1.0 M HCl溶液150ml(1×)、0.1M NaOH溶液100ml(2x)、1.0MHCl溶液100ml(1×)、および最後に脱イオン水100ml(3x)で洗浄した。塩化メチレン層を抽出し、MgSO4上で1時間乾燥し、ろ過した。塩化メチレンを真空中で除去し、白色固体を回収した。固体を最小量の塩化メチレン中に入れ、ヘキサンから結晶化して白色粉末が得られた。固体をろ過し、真空中で(30mmHg)終夜乾燥した。
【0178】
(実施例)
(実施例1〜4(Exs.1〜4))および(比較例1(CEx.1))
実施例1〜4および比較例1のそれぞれを、表1に記載の成分を使用して、上記の手順に従って溶融ブレンドすることによって調製した。組成物を調製するために使用した割合を以下の表2に示す。
【0179】
【表2】

【0180】
表2(上記)に記載された組成物をプラークに成形し、多様な機械、熱的、および物理特性について評価した。得られたデータの比較を以下の表3に示す。
【0181】
【表3】

【0182】
dYIデータの比較によって、それぞれピロガロールに基づく三置換芳香族化合物PTB(実施例1〜3)、またはPTPC(実施例4)いずれかの存在は、高線量(83kGy)、またはより低い線量(51kGy)いずれかにおけるガンマ線を使用して照射した場合、高エネルギー滅菌後、比較例1(三置換芳香族化合物なし)に比較して、ポリカーボネート樹脂の改良された光学外観を提供したことが明確に分かる。エポキシド系の加水分解安定剤(JONCRYL(登録商標)ADR 4368)を調合物に添加(実施例2および3)する場合、高線量(83kGy)における熱可塑性組成物のガンマ線照射後、dYl値の追加の改良(つまり、より少ない利得)および少し劣るが、d%T値の追加の改良(より少ない損失)が存在するように思われる。熱可塑性組成物は、一般に、ガンマ線照射後の分子量損失、および高温および湿度(80℃/80%相対湿度(RH)試験、または80℃/低RH試験)における2週間の耐候性では、比較例1に匹敵する。
【0183】
本明細書では、化合物は、標準の命名法を使用して記載されている。2つの文字または記号の間にないハイフン(「-」)は、置換基に対する結合点を示す。例えば、-CHOは、カルボニル(C=0)基の炭素を介して結合している。単数形「a」、「an」、および「the」は、別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。同じ特性もしくは成分を指す範囲の全ての終端点は、独立に組合せ可能であり、指示された終端点を含む。参照文献は全て、参照により本明細書に組み込まれている。本明細書における「第1」、「第2」などの用語は、いかなる順序、量、または重要性をも示すものでなく、むしろ、1つの要素を他から区別するために使用される。
【0184】
代表的な実施形態を例示のために述べたが、前記説明は、本明細書の範囲を限定するものと見なすべきではない。したがって、本明細書の精神および範囲を逸脱することなく、当業者なら多様な変形形態、適応形態、および代替形態を実施し得るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートと、
イオン化放射線用安定剤と、
次式の多置換芳香族化合物と
【化1】

[式中、Xは、アリール基であり、Yは、非水素置換基であり、aは、1から4であり、bは、0から4であり、a+bは、4以下であり、cは、0または1である]
を含み、
ポリカーボネート、イオン化放射線用安定剤、および多置換芳香族化合物の量および属性は、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物を含む成形品が、83kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1925-70に従って測定した場合、非曝露熱可塑性組成物と比較して、黄色度指数(dYI)の増加が50以下となるように選択される熱可塑性組成物。
【請求項2】
多置換芳香族化合物が、熱可塑性組成物中でポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量に対して、0.1から5ミリモル/キログラム(mmol/Kg)の量において使用され、但し、使用する多置換芳香族化合物の全量は、ポリカーボネート、多置換芳香族化合物、およびイオン化放射線用安定剤の全重量の0.5重量%を超えない請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
98.5から99.998重量%のポリカーボネートと、
0.001から1重量%のイオン化放射線用安定剤と、
0.001から0.5重量%の多置換芳香族化合物と
を含み、ポリカーボネート、イオン化放射線用安定剤、および多置換芳香族化合物の重量%の和が、100重量%であり、他のいかなる添加剤も含まない、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
イオン化放射線用安定剤が、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂肪族ジオール、脂肪族エーテル、エステル、ジケトン、アルケン、チオール、チオエーテル、環状チオエーテル、スルホン、ジヒドロ芳香族化合物、ジエーテル、窒素化合物、または前記の少なくとも1つを含む組合せを含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
イオン化放射線用安定剤が、次式の脂肪族ジオールを含む、請求項4に記載の熱可塑性組成物
HO-(C(A')(A''))d-S-(C(B')(B''))e-OH
[式中、A'、A''、B'、およびB''は、それぞれ独立に、HまたはC1〜C6アルキルであり、Sは、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルキレンオキシ、C3〜C6シクロアルキル、またはC3〜C6置換シクロアルキルであり、dおよびeは、それぞれ0または1であり、但し、dおよびeが、それぞれ0である場合、Sは、両方の-OH基が、共通の単一炭素原子に直接結合しないように選択される]。
【請求項6】
Xが、それぞれ独立に、C6〜C20アリール、または置換C6〜C20アリールである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項7】
Xが、フェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、2,3-ジメチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,5-ジメチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、2,3,4-トリメチルフェニル、2,3,5-トリメチルフェニル、3,4,5-トリメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、4-エチルフェニル、4-ブチルフェニル、4-tert-ブチルフェニル、2-トリフルオロメチルフェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-tert-ブトキシフェニル、4-フルオロフェニル、4-クロロフェニル、4-ブロモフェニル、ナフチル、C1〜C8アルキル置換ナフチル、C1〜C8アルキルエーテル置換ナフチル、またはハロゲン置換ナフチルである、請求項6に記載の熱可塑性組成物。
【請求項8】
Yが、それぞれ独立に、C1〜C20アルキル、置換C1〜C20アルキル、C6〜C20アリール、置換C6〜C20アリール、ハロゲン、ニトロ、C1〜C20カルボキシレート、C1〜C20アルキルエーテル、またはC1〜C20アシルである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項9】
Yが、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、カルボン酸メチル、カルボン酸エチル、カルボン酸t-ブチル、カルボン酸シクロヘキシル、カルボン酸フェニル、-OCH3、-OCH2CH3、-O-t-ブチル、-O-n-ブチル、-O-n-オクチル、アセチル、ピバロイル、n-オクチロイル、n-ドデコイル、n-ステアロイル、ベンゾイル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、オクタデシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル、ノルボルニル、フェニル、C1〜C8アルキルフェニル、C1〜C8アルコキシフェニル、またはハロフェニルである、請求項8に記載の熱可塑性組成物。
【請求項10】
多官能性芳香族化合物が、cが0であるエステルである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項11】
多官能性芳香族化合物が、cが1であるカルボネートである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項12】
51kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1925-70に従って測定した場合、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物を含む成形品が、非曝露熱可塑性組成物と比較して、黄色度指数(dYI)の増加が24以下である、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項13】
83kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1003-00に従って測定した場合、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物を含む成形品が、非曝露熱可塑性組成物と比較して、透過率%(d%T)の減少が15%以下であってよい、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項14】
51kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1003-00に従って測定した場合、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物を含む成形品が、非曝露熱可塑性組成物と比較して、透過率%(d%T)の減少が5%以下であってよい、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項15】
加水分解安定剤をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項16】
83kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1925-70に従って測定した場合、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物および加水分解安定剤を含む成形品が、非曝露熱可塑性組成物と比較して、黄色度指数(dYI)の増加が40以下である、請求項15に記載の熱可塑性組成物。
【請求項17】
83kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1003-00に従って測定した場合、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物および加水分解安定剤を含む成形品が、非曝露熱可塑性組成物と比較して、透過率%(d%T)の減少が12%以下であってよい、請求項15に記載の熱可塑性組成物。
【請求項18】
衝撃改質剤、フィラー、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外光吸収剤、可塑剤、離型剤、潤滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、難燃剤、ドリップ防止剤、または1つもしくは複数のこれらを含む組合せから選択される添加剤をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項19】
98.5から99.998重量%のポリカーボネートと、
0.001から1重量%のイオン化放射線用安定剤と、
0.001から0.5重量%の次式の多置換芳香族化合物と
【化2】

[式中、Xは、アリール基であり、Yは、非水素置換基であり、aは、1から4であり、bは、0から4であり、a+bは、4以下であり、cは、0または1である]
を含み、ポリカーボネート、イオン化放射線用安定剤、および多置換芳香族化合物の重量%の和が、100重量%であり、他のいかなる添加剤も含まない熱可塑性組成物。
【請求項20】
ポリカーボネートと、
イオン化放射線用安定剤と、
次式の多置換芳香族化合物と
【化3】

[式中、Xは、アリール基であり、Yは、非水素置換基であり、aは、1から4であり、bは、0から4であり、a+bは、4以下であり、cは、0または1である]
を溶融して混合するステップを含み、ポリカーボネート、イオン化放射線用安定剤、および多置換芳香族化合物の量および属性は、厚さ3.18ミリメートルを有し、熱可塑性組成物を含む成形品が、83kGyでガンマ放射線に曝露した後、ASTM D1925-70に従って測定した場合、非曝露熱可塑性組成物と比較して、黄色度指数(dYI)の増加が50以下となるように選択される、熱可塑性組成物を作製する方法。
【請求項21】
請求項1に記載の熱可塑性組成物を含む物品。

【公表番号】特表2009−511666(P2009−511666A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534599(P2008−534599)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/038469
【国際公開番号】WO2007/044303
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】