説明

定着装置およびこれを用いた画像形成装置

【課題】三次転写定着ニップ部において微小オフセットを低減させる課題に鑑みてなされたもので、微小オフセットの低減ならびにクリーニング性能の余裕度向上を実現させた定着装置並びに画像形成装置を提供する。
【解決手段】転写定着部材に対抗して圧接された加圧部材により構成される転写定着ニップに、紙などの記録媒体を通すことによって、記録媒体に像を定着させる定着装置において、該転写定着部材と該加圧部材との間に線速差を生じさせる手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式の複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置およびこれらに用いられる画像の定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真の定着装置は記録媒体上に転写された未定着トナーを記録媒体とともに狭持搬送しつつ、加熱し定着している(例えば、〔特許文献1〕、〔特許文献2〕参照)。〔特許文献1〕の発明は、転写不良をなくすとともに、プレニップ部でのブラーの発生を押さえ、高画質の画像記録が可能な画像記録装置を提供することを目的とするもので、像担持体とそれに対向した圧力ロールで形成したニップ間に記録媒体を通過させ、ニップ部でトナーを像担持体から静電的に転写させると同時に、圧力ロールによる高圧力で記録媒体へのトナーの定着を行っている。この発明では、トナーの定着は圧力によってのみなされるため、定着強度が加熱溶融による定着と比べて、得られる定着強度が著しく低いと言う課題を残している。また、ニップ部での転写は静電力を利用したもので、プレニップ部での電界の作用によるトナーの飛散を防ぐため、記録媒体の搬送ローラを用いて記録媒体に電荷を付与するような機構を有している。〔特許文献2〕では、多重転写定着装置部に中間転写体を用いている。
【0003】
加熱定着の際、加熱定着部材としてはローラ・ベルトが良く知られており、狭持するための相手部材である加圧部材はローラ、ベルト、固定のパッドが知られている(例えば、〔特許文献3〕では中間転写体として中間転写ベルトを用いている)。このような定着装置の狭持部分はニップと呼ばれるが、ニップでの熱移動では、定着部材側に接するトナー表面温度と、記録媒体表面に接するトナー・記録媒体界面温度とが重要である。前者は光沢などの画質にとって重要であり、後者は記録媒体との密着性(いわゆる定着性)にとって重要である。
【0004】
従来、一般的なカラー画像形成装置では光沢を十分に得るために定着部では記録媒体も含め、白黒の画像形成装置に比べ1.5倍ほどの熱量を与えていた。そのため、記録媒体も過剰に熱せられ、高速で多数枚の画像形成に際しては加熱電力が不足し、一般に広く用いられる100V15Aなどの電源では対応できないと言う課題があった。それだけでなく、近年の環境問題に対する関心の高まりから、省エネルギー性は今日非常に重要視されている。加えて、過剰に熱せられた記録媒体はユーザーが欲しないばかりか、画像形成装置出口で記録媒体同士が接着されてしまうような不具合も生じていた。
【0005】
上述したかかる不具合を解消するためのカラー画像形成装置の一つとして、記録媒体をトナー像担持体上のトナー像を間に挟むようにしてトナー像担持体に重ね合わせてこれらトナー像担持体および記録媒体に挟まれたトナー像を加熱するとともに加圧することによりトナー像担持体上のトナー像を記録媒体に転写するとともに定着する方式が知られている。このような方式はいわゆる転写同時定着方式として知られている。転写同時定着方式ではトナーは記録媒体とは別に充分加熱されたのち記録媒体上に転写定着されるので、記録媒体は過剰な熱を与えられることがない。また、トナー像はトナー像担持体上で均一に加熱されるため、記録媒体上に転写定着された画像はなだらかな表面が得られ、均一感のある高い光沢が得られる。
【0006】
このような転写同時定着方式の一つとして、〔特許文献4〕に、中間転写体の駆動ローラの内部に熱源を設け、該中研転写体に加圧部材を圧接してニップを形成する方式が提案されている。これは、像担持体上に形成されたトナー像は静電吸着により中間転写体へと一次転写され、中間転写体上のトナーはニップ手前で加熱され、加熱されたトナーをニップで記録媒体に転写すると同時に定着するものである。この方式によれば、中間転写体から記録媒体への二次転写は静電気力ではなく、熱エネルギーによるトナーの凝集により行われる。また、記録媒体とは別にトナーの加熱時間のみを長く設定することができる。
【0007】
しかし、〔特許文献4〕に記載の方式では、トナー加熱時間と同じだけ中間転写体も加熱されるため、中間転写体が次に一次転写領域に入ると、像担持体も加熱され、トナーの固着、溶融などの問題や像担持体の性能劣化等の問題が発生してしまう。
【0008】
上記難点に鑑みて、〔特許文献5〕では、三次転写定着技術を提案している。つまり、一次転写による中間転写体上までのトナー像の形成はこれまでと同様に行われるが、中間転写体からさらに転写定着部材上にトナー像を二次転写した後、加熱され、記録媒体へ接触し、三次転写と同時に定着される。この方式によれば、転写定着部材の低温化が可能でウォームアップが早く、省エネに優れた高画質な画像形成装置を提供できると同時に、二次転写定着方式に比べ像担持体の昇温が少なく過熱を防ぐことができる。
【0009】
【特許文献1】特開平6−175513号公報
【特許文献2】特許第3095480号公報
【特許文献3】特開2005−189612号公報
【特許文献4】特開平10−063121号公報
【特許文献5】特開2004−145260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の三次転写定着技術においては、三次転写定着部における微量トナーのオフセットが問題となっている。三次転写定着技術では、転写定着部材上でトナー像が加熱されるプロセスにおいて、トナー像は溶融しながら凝集し、ドットなどの画像のかたまりごとにクラスターを形成するが、クラスターとなったトナー象は、三次転写定着時の記録媒体への像転写がしやすくなる。一方、チリまたは画像エッジ部などに見られる、クラスター化(凝集化)していない孤立トナー(微量トナー)は、記録媒体への転写がされずに転写定着部材上に取り残されやすい傾向にある。特に表面の平滑度が低い、目の粗い紙を通紙する場合に、この傾向が大きい。これは、孤立トナーは記録媒体の繊維による表面の凹凸の影響を受けやすく、繊維の凹部には接触しにくいため、転写定着部材上に取り残されるためである。また、ハーフトーンや孤立ドット画像において、クラスター化しないトナーが生じやすい傾向が大きい。そして、このようにして転写定着部材上に残った溶融トナーは、クリーニング手段で回収しない限り、一回転後には記録媒体後端部にオフセットしてしまい、次の形成画像へ悪影響を及ぼしてしまう。この現象を以下、微小オフセットと呼ぶこととする。
【0011】
この微小オフセットの問題の解決手段としては、クリーニング手段を設けることがあげられるが、オフセットが発生すると、画像への影響をなくすため、転写定着部材表層を一拭き、つまり一周(一回転)で確実に溶融トナーを完全に除去できる性能を備えていなければならず、通紙の紙種や画像パターンによっては、クリーニング手段には大きな負荷がかかる可能性も考えられる。例えばオフセットの量が多い画像パターンで大量に出力する場合は、クリーニング部材には大きな負荷がかかってしまう。
【0012】
従って、本発明は、上述したように三次転写定着ニップ部において微小オフセットを低減させる課題に鑑みてなされたもので、微小オフセットの低減ならびにクリーニング性能の余裕度向上を実現させた定着装置並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
三次転写定着ニップ部において微小オフセットを低減させる手段として、三次転写定着ニップ部で転写定着部材と記録媒体の間に線速差を生じさせることが有効であることを発明者らは見出した。かかる手段により、微小オフセットの低減ならびにクリーニング性能の余裕度向上を実現させることができる。
【0014】
すなわち、本発明は、像担持体上に未定着画像を形成し、続いて該未定着画像を中間転写体に転写し、次に、該中間転写体に転写された未定着画像を少なくとも離型層を有する転写定着部材に転写した後、さらに該転写定着部材上で未定着画像を外部加熱手段により加熱し、該転写定着部材と該転写定着部材に対抗して圧接された加圧部材により構成される転写定着ニップに、記録媒体を通すことによって、記録媒体に像を定着させる定着装置において、該転写定着部材と該加圧部材との間に線速差を生じさせる手段を有することを特徴とする。このように、転写定着部材と加圧部材との間に線速差を設けることにより、記録媒体がニップ中に進入する際には、転写定着部材と記録媒体の間に線速差を生じさせることができ、従って、孤立トナーと記録媒体の繊維の凹凸部との接触機会が増加することになり、それによりオフセットを低減させることができる。
【0015】
本発明では、更に、前記加圧部材表面の摩擦係数が転写定着部材表面よりも高くなっているようにしても良い。これにより、記録媒体の加圧部材側への連れ回りをより確実なものとすることができ、転写定着部材と記録媒体との線速差の発生がより確実なものとなり、オフセットをより好適に低減させる。また、更に、前記加圧部材表面に静電気を付与する手段を有するようにしてもよく、加圧部材表面への静電的な吸着力を利用することにより、記録媒体の加圧部材側への連れ回りをより確実なものとし、転写定着部材と記録媒体との線速差の発生がより確実なものとし、オフセットをより好適に低減させることができる。本発明に係る画像形成装置は、上記した如くの定着装置のいずれかを用いたことを特徴とするもので、定着装置部でのオフセットが低減する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、転写定着部材と加圧部材との間に線速差を設けることにより、定着装置部での微小オフセットを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の実施の形態について、図面に従って説明する。図1に本発明の第1の実施形態における画像形成装置の全体を示す。この画像形成装置は、本発明の転写定着装置(209)を含み構成されている。図1に基づいて本実施形態における画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機の構成及び動作の概要を説明する。カラー複写機201は、装置本体中央部に位置する画像形成部201Aと、該画像形成部201Aと接離可能な位置に設置される転写定着装置209と、該画像形成部201Aの下方に位置する給紙部201Bと、画像形成部201Aの上方に位置する図示しない画像読取部を有している。
【0018】
画像形成部201Aには、水平方向に延びる転写面を有する中間転写体としての中間転写ベルト202が配置されており、該中間転写ベルト202の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。すなわち、補色関係にある色のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)による像を担持可能な像担持体としての感光体204Y、204M、204C、204Bが中間転写ベルト202の転写面に沿って並置されている。
【0019】
各感光体204Y、204M、204C、204Bはそれぞれ同じ方向(反時計回り方向)に回転可能なドラムで構成されており、その周りには、回転過程において画像形成処理を実行する帯電装置208、光書き込み手段としての書き込み装置206、現像装置205、1次転写装置207、及びクリーニング装置8が配置されている。各符号に付記しているアルファベットは、感光体と同様、トナーの色別に対応している。各現像装置205には、それぞれのカラートナーが収容されている。中間転写ベルト202は、駆動ローラ9と、従動ローラ10に掛け回されて感光体204Y、204M、204C、204Bとの対峙位置において同方向に移動可能な構成を有している。従動ローラ10と対向する位置には、中間転写ベルト202の表面をクリーニングするクリーニング装置11が設けられている。
【0020】
感光体204Yの表面が帯電装置208により一様に帯電され、画像読取部からの画像情報に基づいて感光体204Y上に静電潜像が形成される。該静電潜像はイエローのトナーを収容した現像装置205Yにて帯電した粉体または液体等によりトナー像として可視像化され、該トナー像は所定のバイアスが印加される1次転写装置207Yにより中間転写ベルト202上に1次転写される。他の感光体204M、204C、204Bでもトナーの色が異なるだけで同様の画像形成がなされ、それぞれの色のトナー像が中間転写ベルト202上に順に転写されて重ね合わせられる。転写後感光体204上に残留したトナーはクリーニング装置8により除去され、また、転写後図示しない除電ランプにより感光体204の電位が初期化され、次の作像工程に備えられる。
【0021】
給紙部201Bは、記録媒体としての用紙Pを積載収容する給紙トレイ16と、該給紙トレイ16内の用紙Pを最上のものから順に1枚ずつ分離して給紙する給紙コロ17と、給紙された用紙Pを搬送する搬送ローラ対18と、用紙Pが一旦停止され、斜めずれを修正された後、転写定着ローラ1および加圧ローラ2上の画像の先端と搬送方向の所定位置とが一致するタイミングでニップNに向けて送り出されるレジストローラ対19を有している。
【0022】
駆動ローラ9の近傍には、転写定着装置209が設けられている。転写定着装置209には、転写定着部材としての転写定着ローラ1と加圧部材としての加圧ローラ2とが設けられ、転写定着ローラ1と加圧ローラ2は互いに対峙して設けられ、ニップNを形成している。転写定着ローラ1と加圧ローラ2は互いにバネなどの不図示の加圧手段によって押圧されている。また、転写定着ローラ1の表面に対し、クリーニング部材21が一定の加圧力により押圧されている。クリーニング部材21は表層が樹脂または金属からなっている。
【0023】
転写定着ローラ1は鉄、アルミなどからなる金属基体1a、多孔質なセラミック、ガラスなどからなる硬質の断熱層1b、シリコーンゴムなどからなる弾性層1cおよびフッ素系樹脂などからなる離型層1dにより形成される。金属基体1aはウォームアップの高速化のために厚さ1mm以下が望ましい。断熱層1bは高い断熱性能とニップにかかる荷重に耐えうる圧縮強度を兼ね備えるために、熱伝導率は0.1W/mK以下、圧縮強度は3MPa以上であることが望ましい。弾性層1cは一定の表層ユニバーサル硬さを確保するために、厚さの下限は0.1mm以上が望ましく、ウォームアップの高速化のためには厚さの上限は0.5mm以下が望ましい。離型層1dは一定の表層ユニバーサル硬さを確保するために、厚さは30μm以下が望ましい。
【0024】
加圧ローラ2は鉄などからなる金属基体2a、多孔質なセラミック、ガラスなどからなる硬質の断熱層2b、シリコーンゴムなどからなる弾性層2cおよびフッ素系樹脂などからなる離型層2dにより形成される。金属基体2aはウォームアップの高速化のために厚さ1mm以下が望ましい。断熱層2bは高い断熱性能とニップにかかる荷重に耐えうる圧縮強度を兼ね備えるために、熱伝導率は0.1W/mK以下、圧縮強度は3MPa以上であることが望ましい。弾性層2cは一定の表層ユニバーサル硬さを確保するために、厚さの下限は0.1mm以上が望ましく、ウォームアップの高速化のためには厚さの上限は0.5mm以下が望ましい。離型層2dは一定の表層ユニバーサル硬さを確保するために、厚さは30μm以下が望ましい。
【0025】
転写定着装置209の転写定着ローラ1と加圧ローラ2との間には線速差を生じさせる駆動手段が設けられている。この駆動手段としては、歯数を変更した歯車による連れ回りや、別体の独立駆動による手段などを用いてもよい。図2に駆動手段の具体的一例を概略図として示す。駆動源は加圧ローラ駆動モータ44aであり、加圧ローラ駆動ギア43a、加圧ローラギア42aを介して加圧ローラ2に伝達される。加圧ローラ2の回転は、加圧ローラ駆動ギア42aを介して転写定着ローラ1の転写定着ローラギア41aに伝達される。加圧ローラギア42aと転写定着ローラギア41aとは互いに連れ回りするようになっているが、歯数が異なっており、これにより転写定着ローラ1と加圧ローラ2に線速差が生じさせることができる。更に、駆動手段の別な具体例を図3の概略図に示す。図3では転写定着ローラ1と加圧ローラ2は連れ周りではなく、それぞれ独立駆動するようになっている。転写定着ローラ1は駆動源の転写定着ローラ駆動モータ46から転写定着ローラギア45を介して駆動されており、加圧ローラ2は駆動源の加圧ローラ駆動モータ44bから加圧ローラギア43bを介して駆動される。すなわち、転写定着ローラ1と加圧ローラ2はそれぞれ別な駆動源とギア対によって速度制御されている。このようにして転写定着ローラ1と加圧ローラ2は互いに異なる線速で回転させることが可能である。さらに、加圧ローラ2表面の摩擦係数は転写定着ローラ1表面の摩擦係数よりも高くなっており、記録媒体はニップ中に挿入されたときには加圧ローラ2表面と一体的に搬送され、記録媒体と転写定着ローラ1との間には線速差が生じるようになっている。
【0026】
転写定着ローラ1の表層を加熱する外部加熱手段14はヒータ3および反射板4により構成される。ハロゲンヒータなどからなるヒータ3は、定着ローラ1の外部近傍でニップ上流直前の位置に備えられる。ヒータ3からの輻射エネルギーを反射する反射板4がヒータ3を覆うように備えられ、開口部を定着ローラ1の表層に向けることにより、定着ローラ1の表層へ熱エネルギーを集中させ、定着ローラ1の表層のみを効率的に加熱することができる。また、転写定着ローラ1の表面温度を測定するための非画像領域に設けられた不図示のサーミスタとそれぞれの表面温度に基づいてヒータ3のオンオフをコントロールする不図示の温度コントローラが設けてあり、温度をコントロールできるようになっている。
【0027】
感光体104Y、104M、104C、104Bから中間転写ベルト202上に一次転写されたトナー6aは、転写定着ローラ1上へと図のとおりに二次的に転写される。この転写の駆動力は転写定着ローラ1から受ける熱エネルギーによるトナーの凝集によるものが主であるが、不図示の二次バイアス印加手段によって駆動ローラ9に印加されるバイアス(AC、パルスなどの重畳を含む)によりトナーに静電気力を加えることで、さらに良好な二次転写性を確保することができる。
【0028】
図1に示すとおり、転写定着装置209は、画像形成部201Aが熱の影響をできるだけ受けないように熱遮蔽部材20によって覆われている。この熱遮へい部材20は発泡性の樹脂などの断熱性の高い材料からなり、転写定着ローラ1から中間転写ベルト202への熱放射(熱移動)を抑制する熱移動抑止部材としての役割を持っている。熱遮蔽部材20は、中間転写ベルト202から転写定着ローラ1への二次転写を阻害しない状態で中間転写ベルト202への熱放射を極力抑えるように、二次転写ニップ部に開口部を有する形状に形成されている。記録媒体の通過する入口部には入口ガイド板12、出口部には出口ガイド板23と出口搬送コロ22がそれぞれ備えてある。
【0029】
次に、具体的な動作について説明する。中間転写ベルト202上に形成されたトナー6aは、マイナスに帯電しており、駆動ローラ9側が-0.5kV〜-2kV、転写定着ローラ1の芯金基体1aが0Vになるようにバイアスが印加されることと転写定着ローラ1より受ける熱で、転写定着ローラ1に順次転写される。この際、転写定着ローラ1上のトナー6bはヒータ3により所定の温度まで加熱されている。
【0030】
記録媒体Pが入口ガイド板12に沿って転写定着装置209内へと搬送される過程で、記録媒体Pは入口ガイド板12から受ける熱により予備的に加熱される。転写定着ローラ1及び加圧ローラ2は図示しない駆動機構により回転駆動されており、記録媒体Pは両者が形成するニップNへと搬送され、そこで加熱溶融されたトナー像6bが熱と圧力により転写定着され、画像が記録媒体上に形成される。
【0031】
また、転写定着ローラ1および加圧ローラ2の離型層をカーボン等の導電物質を分散させた導電性のフッ素系樹脂材料あるいは10umといった極薄い絶縁性のフッ素系樹脂材料で構成し芯金と接続することで、該離型層間に転写バイアスを印加することが可能となり、転写バイアスを低電圧にでき、かつ、転写時の飛び散りを抑制できる。
【0032】
この様に、トナー6のみを予め加熱する過程が十分に得られ、かつ、ニップNでは高面圧をかけることができるので、トナー6と記録媒体Pを同時に加熱する従来方式に比べて加熱温度を低くできる。加えて、ニップN中で転写定着ローラ1と記録媒体Pに線速差を生じさせることにより、微小オフセットを大幅に低減することが可能となった。
【0033】
〔実験例〕
第1実施形態の構成に対応する画像形成装置を用いて黒トナーを使用した場合の実験を行い、発生したオフセットのIDを測定した(下表〔表1〕;実験No1〜No6)。得られた線速度比率に対するオフセット改善率を図4のグラフに示す。実験の結果、2%の線速差を生じさせることでオフセットIDの値が最大で90%程度低減することが確かめられた。
【0034】
【表1】

【0035】
〔第2実施形態〕
図5に本発明の第2の実施形態における画像形成装置の全体を示す。第2実施形態では、転写定着装置209の構成は、第1の実施形態とほぼ同様であるが、転写定着ローラ1の芯金と加圧ローラ2の芯金との間には電気的なバイアスが印加されている点が主に異なっている。±1〜10kV程度の高圧を印加することによって、ニップ中に挿入されてきた記録媒体を加圧ローラ2側に吸着させることにより、転写定着ローラ1との間に線速差を生じさせることができる。
【0036】
なお、外部加熱手段14には、加熱源にコイル26とコア27からなる誘導加熱式のものを使っている。対応して、転写定着ローラ1には弾性層1cと断熱層1bの間(境界部)に極薄い発熱層1eが設けられている。発熱層1eは強磁性体などの金属薄層からなり、コア17から発せられる磁界により内部に誘起される渦電流により発熱する。厚さは発熱量と熱容量との兼ね合いから200um〜1mm程度が望ましい。これにより転写定着部材のより効率的な加熱が可能であり、また、加熱手段の小型化が可能となる。外部加熱手段14はこれに限らず、転写定着ローラ1の芯金と加圧ローラ2の芯金との間には電気的なバイアスが印加されるようにし、外部加熱手段として輻射加熱方式のものを用いた構成としても勿論かまわない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態における画像形成装置を示す概要図である。
【図2】本発明における駆動手段の具体例を示す概略図である。
【図3】駆動手段の別な具体例を示す概略図である。
【図4】第1実施形態の画像形成装置を用いた実験結果を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施形態における画像形成装置を示す概要図である。
【符号の説明】
【0038】
1…転写定着ローラ(転写定着部材)
1e…発熱層
2…加圧ローラ(加圧部材)
3…ヒータ
4…反射部材
5…遮蔽板
6…トナー
7…入口ガイド
8…記録媒体
9…中間転写体支持部材
10…支持部材
11…クリーニング部材
12…入口ガイド板
14…外部加熱手段
16…給紙トレイ
17…給紙ローラ
18…搬送ローラ
19…レジストローラ
20…熱遮蔽部材
21…クリーニング部材
22…出口搬送コロ
23…出口ガイド板
26…コイル
27…コア
41a…転写定着ローラギア
42a…加圧ローラギア
43a…加圧ローラ駆動ギア
43b…加圧ローラギア
44a…加圧ローラ駆動モータ
44b…加圧ローラ駆動モータ
45…転写定着ローラギア
46…転写定着ローラ駆動モータ
201…カラー複写機
202…中間転写ベルト(中間転写体)
204…感光体
209…転写定着装置
N…ニップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に未定着画像を形成し、続いて該未定着画像を中間転写体に転写し、次に、該中間転写体に転写された未定着画像を少なくとも離型層を有する転写定着部材に転写した後、さらに該転写定着部材上で未定着画像を外部加熱手段により加熱し、該転写定着部材と該転写定着部材に対抗して圧接された加圧部材により構成される転写定着ニップに、記録媒体を通すことによって、記録媒体に像を定着させる定着装置において、
該転写定着部材と該加圧部材との間に線速差を生じさせる手段を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1において、前記加圧部材表面の摩擦係数が転写定着部材表面よりも高くなっていることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記加圧部材表面に静電気を付与する手段を有することを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−226009(P2007−226009A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48479(P2006−48479)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】