説明

室内位置情報管理システム及び室内位置管理方法

【課題】
室内における位置計測対象の位置情報を管理することができ、室内に物理的な制約を設けずとも、室内を滞在可能な区域と不可能な区域とに分割することができ、かつ位置計測対象毎に侵入可否区域を設定することができる室内位置情報管理システム及び室内位置情報管理方法を提供することを目的とする。
【解決方法】
送信装置の位置情報と、位置計測対象毎に固有に設定された少なくとも3種類の区域を設定する許可区域情報とに基づいて、前記位置計測対象が該許可区域情報で許可されない区域に存在する場合には警告を通知し、前記少なくとも3種類の区域が、侵入禁止区域、通過可能区域及び滞在可能区域を含むことを特徴とする室内位置情報管理システム及び室内位置情報管理方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内における人の位置やその移動履歴を管理するための室内位置情報管理システム及び室内位置管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、データセンター等に設けられるマシン室1(図1)は複数の顧客が利用する共用エリアとなっており、顧客毎のセキュリティはサーバラック2単位での施錠で確保している。
しかし、他の利用者をラックに近寄らせたくない利用者もあり、そのような高いセキュリティを求める利用者には、例えば図1(b)に示すように、ケージ3でサーバラックを囲った区域を設けることにより対応している。この対応は物理的に侵入できないので、セキュリティ確保は完全であるが、ケージ3の設置によってサーバラックの設置面積が減ってしまう。また、このような高セキュリティエリアを求める利用者が多く存在する場合、レイアウト変更や顧客入替え等といったサーバラックの柔軟な設置が非常に困難になる。
【0003】
一方、アクティブRFIDタグを用いて、特定の利用者のみが侵入可能な仮想高セキュリティエリア5を設けることにより、セキュリティ対策を施している例もある。しかし、この方式には1)仮想高セキュリティエリア5側に収容できる利用者は一顧客のみ(図1(c))、2)レイアウト変更や顧客入替え等に柔軟に対応できない、3)奥から順にセキュリティレベルが高くなるように顧客を配置する必要がある、といった問題がある。
【0004】
ところで、移動する人間等の位置情報を得る手段として、超音波を利用した3次元位置計測が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−292129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マシン室におけるセキュリティ管理は利用者の重要関心事項であり、データセンター等の管理者は、ケージ等の物理的な制約を設けることなく、多くの利用者に対して所望のセキュリティエリアを提供できるセキュリティ管理システムを望んでいる。また、室内のセキュリティを確保しつつも、サーバラック等のレイアウトの柔軟性を損なうことがないセキュリティ管理システムが望まれている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、室内における位置計測対象の位置情報を管理することができ、室内に物理的な制約を設けずとも、室内を滞在可能な区域と不可能な区域とに分割することができ、かつ位置計測対象毎に侵入可否区域を設定することができる室内位置情報管理システム及び室内位置情報管理方法を提供することを目的とする。
本発明に係る室内位置情報管理システム又は室内位置情報管理方法をデータセンター等のマシン室の管理に利用することにより、利用者の所望するセキュリティに応じた区域を提供することが可能となる。また、室内のレイアウト変更や利用者の入替え等にも柔軟に対応することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、室内の位置計測対象に取り付けられる送信装置と、該室内に設置され、該送信装置から送信される超音波を受信可能な受信装置と、該受信装置にて受信した超音波の情報に基づいて該送信装置の位置情報を求める処理装置とを備える室内位置情報管理システムが提供される。
該室内位置情報管理システムは、前記送信装置の位置情報と、前記位置計測対象毎に固有に設定された少なくとも3種類の区域を設定する許可区域情報とに基づいて、前記位置計測対象が該許可区域情報で許可されない区域に存在する場合には警告を通知し、前記少なくとも3種類の区域が、侵入禁止区域、通過可能区域及び滞在可能区域を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、室内の位置計測対象に取り付けられるRFIDタグと、該RFIDタグに電力を供給する装置と、該室内に設置され、該送信装置から電波送信される電波を受信可能な受信装置と、該受信装置にて受信した電波の情報に基づいて該送信装置の位置情報を求める処理装置とを備える室内位置情報管理システムが提供される。
該室内位置情報管理システムは、前記送信装置の位置情報と、前記位置計測対象毎に固有に設定された少なくとも3種類の区域を設定する許可区域情報とに基づいて、前記位置計測対象が該許可区域情報で許可されない区域に存在する場合には警告を通知し、前記少なくとも3種類の区域が、侵入禁止区域、通過可能区域及び滞在可能区域を含むことを特徴とする。
【0010】
上記構成からなる室内位置情報管理システムでは、室内における位置計測対象の位置情報を管理することができ、室内に物理的な制約を設けずとも、室内を滞在可能な区域と不可能な区域とに分割することができ、かつ位置計測対象毎に侵入可否区域を設定することができる。
【0011】
本発明の一態様によれば、前記位置計測対象が前記侵入禁止区域に存在するときには即時警告を通知し、前記位置計測対象が前記通過可能区域に存在するときには一定時間の経過後に警告を通知し、前記位置計測対象が前記滞在可能区域に存在するときには警告を通知しない。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、前記処理装置は、前記受信装置にて受信した超音波又は電波の情報に基づいて位置計測対象の位置情報を算出する位置情報演算部と、該位置情報を記憶する位置情報記憶部とを有している。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、前記位置情報演算部において、前記位置情報及び前記位置情報を取得した時間の時間情報に基づいて前記位置計測対象の移動履歴情報を算出し、該移動履歴情報を前記位置情報記憶部に記憶する。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、前記許可区域情報は前記送信装置の許可区域情報記憶部に記憶されている。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、前記警告は室内に設置された音声出力装置又は前記送信装置の有する音声出力部から出力される音声により行われる。
【0016】
また、本発明によれば、室内の位置計測対象に取り付けられる送信装置と、該室内に設置され、該送信装置から送信される電波を受信可能な受信装置と、該受信装置にて受信した電波の情報に基づいて該送信装置の位置情報を求める処理装置とを備える管理システムを利用する室内位置情報管理方法であって、前記送信装置の位置情報と、前記位置計測対象毎に固有に設定された少なくとも3種類の区域を設定する許可区域情報とに基づいて、前記位置計測対象が該許可区域情報で許可されない区域に存在する場合には警告を通知し、前記少なくとも3種類の区域が、侵入禁止区域、通過可能区域及び滞在可能区域を含むことを特徴とする室内位置情報管理方法が提供される。
【0017】
上記構成からなる室内位置情報管理方法では、位置計測対象の位置情報を管理することができ、室内に物理的な制約を設けずとも、室内を滞在可能な区域と不可能な区域とに分割することができ、かつ位置計測対象毎に侵入可否区域を設定することができる。
【0018】
また、本発明の一態様によれば、室内の位置計測対象に取り付けられるRFIDタグと、該RFIDタグに電力を供給する装置と、該室内に設置され、該送信装置から電波送信される電波を受信可能な受信装置と、該受信装置にて受信した電波の情報に基づいて該送信装置の位置情報を求める処理装置とを備える室内位置情報管理システムであって、前記送信装置の位置情報と、前記位置計測対象毎に固有に設定された少なくとも3種類の区域を設定する許可区域情報とに基づいて、前記位置計測対象が該許可区域情報で許可されない区域に存在する場合には警告を通知し、前記少なくとも3種類の区域が、侵入禁止区域、通過可能区域及び滞在可能区域を含むことを特徴とする室内位置情報管理方法が提供される。
【0019】
また、本発明の一態様によれば、前記位置計測対象が前記侵入禁止区域に存在するときには即時警告を通知し、前記位置計測対象が前記通過可能区域に存在するときには一定時間の経過後に警告を通知し、前記位置計測対象が前記滞在可能区域に存在するときには警告を通知しない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、室内における位置計測対象の位置情報を管理することができ、室内に物理的な制約を設けずとも、室内を滞在可能な区域と不可能な区域とに分割することができ、かつ位置計測対象毎に侵入可否区域を設定することができる室内位置情報管理システム及び室内位置情報管理方法が提供される。
本発明に係る室内位置情報管理システム又は室内位置情報管理方法をデータセンター等のマシン室の管理に利用することにより、利用者の所望するセキュリティに応じた区域を提供することが可能となる。また、室内のレイアウト変更や利用者の入替え等にも柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のマシン室のセキュリティ方法を示す図である。
【図2】本実施形態に係る室内位置情報管理システムによる区域分割の概念図である。
【図3】本実施形態に係る室内位置情報管理システムの利用フロー図である。
【符号の説明】
【0022】
1 マシン室
2 サーバラック
3 ケージ
4 RFIDタグ読み取り装置
5 仮想高セキュリティエリア
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、実施形態に基づいて本発明を詳細に説明するが、これらの実施形態は本発明の理解を助けるために記載するものであって、本発明を記載された実施形態に限定する趣旨で無いことは自明である。
【0024】
なお、本実施形態においては、本発明に係る室内位置情報管理システム及び室内位置情報管理方法を、複数の利用者が入退室する、複数のサーバラックが設置されたマシン室を例に挙げて説明する。また、本実施形態においては、送信装置及び受信装置間は超音波送信装置及び超音波受信装置であり、これらの装置間において送受信される電波は超音波である。
【0025】
本実施形態に係る室内位置情報管理システムは、室内の位置計測対象に取り付けられる超音波送信装置と、該室内に設置され、該超音波送信装置から送信される超音波を受信可能な少なくとも3つの超音波受信装置と、該超音波受信装置にて受信した超音波の情報に基づいて該超音波送信装置の位置情報を求める処理装置とを備える。
【0026】
上記室内位置情報管理システムにおいて、超音波送信装置は位置計測対象となる利用者毎に取り付けられる。超音波送信装置は、例えばネームプレートやカード形状のものであり、利用者の首から下げたり、服にピンなどで留めたりするようにしてもよい。
なお、超音波とは、人間の耳では聞こえない20kHz以上の周波数の音波を意味する。
【0027】
超音波受信装置は超音波送信装置から送信される超音波を受信するための装置であり、マシン室の天井や壁面の上部等に設置される。超音波受信装置は、超音波送信装置の位置計測のために少なくとも3つ以上必要であり、互いに所定の距離を隔てて設置される。
【0028】
処理装置は、超音波受信装置にて受信した超音波の情報に基づいて超音波送信装置の位置情報を求めるものであり、超音波受信装置及び超音波送信装置を制御する。超音波送信装置から発射される超音波信号を複数の超音波受信装置により受信して3次元位置計測を行う。
処理装置は、後述する距離計測サブシステム、無線式超音波発信装置制御装置、データ収集処理部、データ処理装置等を含んだ構成であってもよい。
【0029】
上記室内位置情報管理システムにおいて、処理装置は、利用者の位置計測を行う場合、超音波送信装置を識別情報のIDにより特定して制御し、超音波信号の反射タイミングを制御し、発射された超音波信号を複数の超音波受信装置により受信するタイミングを計測する。これらの信号により3次元位置計測処理を行い、後述する処理装置の位置情報記憶部に、その3次元位置データを、位置情報を取得した時間の時間情報と共に時系列データとして格納する。この場合、少なくとも3つ以上の超音波受信装置で受信した信号を用いてデータ処理を行うことにより、3次元位置が特定できる。
【0030】
上記室内位置情報管理システムには、公知の超音波3次元位置測位システム(超音波3次元タグシステム)が好ましく適用される。好ましい超音波3次元位置測位システムは、例えば先述の特許文献1等に開示されている。
超音波3次元位置測位システムは、計測を行う空間に設置された超音波受信装置と、位置計測の計測対象となる人間に取付けられた超音波発信装置器(超音波3次元タグ)からなる三次元位置計測システムであり、位置計測の対象には識別情報のIDにより特定されて制御される超音波発信装置が取り付けられている必要がある。
【0031】
超音波3次元位置測位システムは、位置計測対象に貼り付けられて所定のタイミングで超音波信号を発信する超音波発信装置(超音波3次元タグ)、天井等に設置され、超音波信号を受信する超音波受信装置、受信した超音波信号の位相差から距離を計測すると共に超音波発信装置が接続されている場合には当該超音波発信装置を制御して超音波レーダ計測を行う距離計測サブシステム、無線により超音波発信装置から超音波信号を発信するタイミングを制御する無線式超音波発信装置制御装置、距離計測サブシステムから得られた3次元位置データを収集するデータ収集処理部、並びに、システム制御を行うと共にデータ処理を行うデータ処理装置(例えばパーソナルコンピュータ等)等から構成されている。
【0032】
超音波発信装置が発信した超音波パルスは、複数の超音波受信装置により受信される。超音波受信装置は、超音波受信部及び増幅装置から構成されており、超音波パルスを受信し増幅して、距離計測サブシステムに受信信号を供給する。
距離計測サブシステムにおいては、超音波発信装置から発射された超音波パルスが超音波受信装置に到達するまでの時間を計測して、その間の距離を計測する。同じ超音波発信装置から発射された超音波パルスを異なる超音波受信装置によりそれぞれに受信することで、当該超音波発信装置の3次元位置が求められる。それぞれの超音波発信装置は識別情報のIDで区別されて制御される。三次元位置を求めるためのデータ処理は、データ処理装置により処理される。
【0033】
距離計測サブシステムでは、接続された超音波受信装置において、複数の超音波発信装置をそれぞれに区別して、それぞれの超音波発信装置からの超音波パルスを受信するために、それぞれの超音波発信装置の超音波パルスの発信タイミングが個別に制御される。即ち、距離計測サブシステムが行う距離計測では、超音波発信装置が超音波パルスを発信するタイミングに合わせて時間計測を開始して、それぞれの超音波受信装置が超音波パルスを受信するまでの時間と空気中を進む超音波の速度から、超音波発信装置と超音波受信装置との距離を計測する。また、超音波発信装置が接続されている場合には当該超音波発信装置を制御して超音波レーダ計測を行う。
そのため、無線式超音波発信装置制御装置が設けられており、無線式超音波発信装置制御装置が、複数の各超音波発信装置に対して、同期信号と識別符号IDを高周波信号により変調して送信し、各超音波発信装置の超音波パルスの発信のタイミングを個別に制御する。無線式超音波発信装置制御装置は、超音波発信装置に識別符号IDを無線で送信すると共に、システム全体に同期信号を送信する。
【0034】
データ収集処理部は、距離計測サブシステムにより計測された距離情報のデータを収集して、データ処理装置に送信する。データ処理装置では、複数の超音波発信装置と複数の超音波受信装置との間の距離情報に基づいて3次元位置を計算する。
【0035】
上記室内位置情報管理システムにおいては、40kHz程度の周波数の超音波が用いられ、3次元位置の計測精度は20〜80mm程度、計測距離は約50cm〜70m程度である。
【0036】
上記室内位置情報管理システムにおいては、人の位置検出であれば、平面的にどこからどこへ移動したといった情報の他に、立っている、座っている、しゃがんでいるといった3次元情報を取得することができる。
【0037】
上記室内位置情報管理システムは、前記超音波送信装置の位置情報と、前記位置計測対象毎に固有に設定された少なくとも3種類の区域を設定する許可区域情報とに基づいて、前記位置計測対象が該許可区域情報で許可されない区域に存在する場合には警告を通知し、前記少なくとも3種類の区域が、侵入禁止区域、通過可能区域及び滞在可能区域を含むことを特徴とする。
【0038】
本実施形態に係る位置情報管理システムでは、超音波送信装置の位置情報と、少なくとも3種類の区域を設定する許可区域情報とに基づいて利用者(位置計測対象)の位置情報をリアルタイムで管理することにより、室内にケージ等の物理的な制約を設けずとも、室内を滞在可能な区域と不可能な区域とに分割することができる。また、複数の利用者が入退室するようなマシン室内において、利用者(位置計測対象)毎に侵入可否区域を設定することができる。
【0039】
そのため、上記位置情報管理システムをデータセンター等のマシン室の管理に利用することにより、利用者の所望するセキュリティに応じた区域を適宜設定することが可能となる。また、室内のレイアウト変更や利用者の入替え等にも、利用者毎に許可区域情報を更新あるいは変更することにより、柔軟に対応することができる。
【0040】
上記室内位置情報管理システムにおいては、許可区域情報は位置計測対象毎に固有に設定されたものであり、少なくとも3種類の区域が、侵入禁止区域、通過可能区域及び滞在可能区域を含むことが好ましい。
そして、前記位置計測対象が前記侵入禁止区域に存在するときには即時警告を通知し、前記位置計測対象が前記通過可能区域に存在するときには一定時間の経過後に警告を通知し、前記位置計測対象が前記滞在可能区域に存在するときには警告を通知しない。
【0041】
許可区域情報は利用者毎に設定される情報であって、少なくとも侵入禁止区域、通過可能区域及び滞在可能区域を含む。
【0042】
侵入禁止区域は上記3つの区域の中で最もセキュリティの高い区域であり、利用者が当該区域に侵入したと判断された時点で警告が通知される。警告は、アラームやパトライトの点灯、現在の区域が利用者にとっての侵入禁止区域である旨を通知するようにした音声によるものであり、室内に設置された音声出力装置又は前記超音波送信装置の有する音声出力部から出力される音声により侵入禁止区域に侵入した利用者に対して行われる。利用者が当該区域に侵入してから警告が通知されるまでの時間は、高いセキュリティを確保するために、0〜2秒が好ましい。
【0043】
通過可能区域は、一定の時間内であれば通過することが可能であるが、一定時間以上滞在することが許可されていない区域である。そのため、一定時間が経過しても通過可能区域に滞在している場合には警告が通知される。警告は、一定時間が経過した後、現在の区域が利用者にとっての通過可能区域であることが通知される。利用者が当該区域に侵入してから警告が通知されるまでの時間は、5〜10秒が好ましい。
【0044】
例えば、マシン室の入り口付近や内壁に沿った通路等、多くの利用者が通過する区域が通過可能区域に設定されることが好ましい。このようにすれば、利用者の利便性を損なうことなく柔軟にマシン室のレイアウトを決定することができ、かつ通路側にサーバラックが設置されている利用者に対しても他の利用者と同等のセキュリティを提供することができる。
また、例えば利用者Aの滞在可能区域が、他の利用者Bの滞在可能区域を通らないとたどり着けないようなレイアウトであっても、利用者Bの滞在可能区域を利用者Aの通過可能区域とすることにより、利用者Bに対してもセキュリティを提供することができる。
【0045】
このような通過可能区域を設定することにより、マシン室のどの位置であっても利用者毎のセキュリティを確保することができる。また、室内のレイアウト変更や利用者の入替え等にも柔軟に対応することができる。
【0046】
滞在可能区域は、利用者が何の制限もなく滞在可能な区域である。滞在可能区域は、利用者のサーバラック周辺に設定される。
【0047】
次に、上記許可区域について、具体例を挙げて説明する。図2(a)は、サーバラックRA11〜RA18を使用する利用者「A社」の例である。図示しないが、この例ではマシン室の入り口はaの区域に設けられている。そのため、A社の滞在可能区域はサーバラックRA11〜RA18の両側のh1、h2及びiであり、通過可能区域はa、b、c、m、n及びoであり、その他の区域は侵入禁止区域である。このような利用者毎の許可区域の情報は次に示すようなデータテーブルによって管理される。
【0048】
【表1】

【0049】
図2(b)は、サーバラックRA21〜RA28を使用する利用者「B社」の例である。上記データテーブルにあるように、A社とは異なる許可区域の情報が与えられている。
【0050】
図2(c)は、サーバラックRA01、02、33及び34を使用する利用者「C社」の例である。上記データテーブルにあるように、マシン室の内壁に沿った通路以外にも、他の利用者の滞在可能区域であるg2、j1、j3、k1及びk3も通過可能区域として設定されている。
【0051】
また、利用者毎の許可区域情報は、表2のような各区域とその滞在可能時間とを対応させたデータテーブルを含んでいてもよい。
【0052】
【表2】

【0053】
また、上記表2のデータテーブルには、侵入禁止区域や通過可能区域などの制限区域への、所定時間内での侵入回数の上限が含まれていてもよい。侵入禁止区域や通過可能区域への繰り返しの侵入を検知することにより、所定時間内で何回も制限された区域を通過・侵入する利用者を不審者と判断して警告を行うことができる。
制限区域での繰り返し侵入回数は、表3のようなデータテーブルとして、記憶されることが好ましい。
【0054】
【表3】

【0055】
なお、上記データテーブルを含む利用者毎の許可区域情報は超音波送信装置の許可区域情報記憶部に記憶されていてもよい。あるいは、利用者毎の許可区域情報や、上記データテーブル等の管理情報は、上記処理装置内に設けられた記憶部や、処理装置の外部に設けられたデータサーバ等の記憶装置に格納されてもよい。
【0056】
また、上記処理装置は、超音波受信装置にて受信した超音波の情報に基づいて位置計測対象の位置情報を算出する位置情報演算部と、位置情報を記憶する位置情報記憶部とを有していてもよい。
そして、位置情報演算部において、位置情報及び位置情報を取得した時間の時間情報に基づいて位置計測対象の移動履歴情報を算出し、該移動履歴情報を前記位置情報記憶部に記憶するようにしてもよい。
【0057】
上記のように位置情報と時間情報とに基づいて位置計測対象の移動履歴情報を算出し、位置情報記憶部において記憶することにより、位置計測対象の移動履歴を管理することができる。
【0058】
また、マシン室内には、天井等に自走式カメラが設けられていてもよい。上記履歴情報と自走式カメラの画像情報とを併用することにより、マシン室内での不正行動などをより詳細に特定することができる。あるいは、上記移動履歴情報と自走式カメラの動作とを連携することにより、不審な行動を行う利用者に対してのみ画像情報を記録することも可能となる。
また、自走式カメラによる追尾動作は、不審な利用者に対する威嚇行為ともなるため、不正行動を未然に抑止することもできる。
【0059】
各自走式カメラは、許可区域情報に基づいて、監視対象とする区域を特定することができる。そして、特に警告が通知された区域について自動的に撮影及びその情報の記録を行うことができる。
自走式カメラは、位置情報演算部による測定対象の位置情報に基づいて、任意の測定対象について撮影を行い、その行動記録を記録することができる。その場合、例えば表4のように、撮影区域(エリア)のカメラ毎に、初期位置からのカメラの移動距離、進行方向に対するカメラ向きの水平方向の角度又は垂直方向の角度が指定される。
【0060】
このような本実施形態に係る室内位置情報管理システムと室内に設置された複数の自走式カメラとの連携により、マシン室内の状況の記録、あるいは、警告が通知された利用者の行動の記録を適切に行うことができ、特にセキュリティを重視しつつもある程度自由な行動が求められる、サーバールーム等のような設備に好ましく用いられる。
【0061】
【表4】

【0062】
次に、本実施形態に係る位置情報管理システムを利用したマシン室の管理の一例を、図3の利用フローを用いて説明する。
【0063】
先ず利用者はデータセンターまたはマシン室の受付で掌静脈認証等によって利用者本人であることを確認する(s100)。入退室管理システムにおいて利用者のラック番号などの情報を含む入室場所情報が確認され(s102)、位置情報管理システムにその情報が渡される(s104)。入室場所情報には、表5のようなラック情報が含まれる。
また、利用者に貸与されるIDカードにその情報が書き込まれてもよい(s106)。
【0064】
【表5】

【0065】
位置情報管理システムは、入室場所情報に応じた許可区域情報を、利用者に貸与されるSSタグ(3次元超音波タグ)に書き込む(s108)。
【0066】
利用者は掌静脈認証あるいはIDカードの認証によりサーバールーム(マシン室)へ入室する(s110)。利用者がサーバールームへ入室した時点で位置情報管理システムは利用者の動態監視を始める(s112)。
【0067】
利用者の監視は上記許可区域情報に基づいて自動的に行われるが(s114)、サーバールーム室内に設置された自走式カメラ等によって、監視室から室内の状況を確認できるようにしてもよい。
【0068】
サーバールーム室内において、利用者の不正行動が確認された場合(s116)、例えば利用者侵入禁止区域に侵入した場合等には、利用者に対して警告が通知される。
またこの時、監視室にも通知が行われ、不正行動を行った違反者の情報が監視室内の端末などに表示される(s118、s120)。また、監視室への通知と同時に、サーバールーム室内に設置された自走式カメラによる行動の確認・記録が行われる(s122)。
【0069】
不正行動は、侵入禁止区域への侵入や通過可能区域での滞在以外にも、SSタグを故意に隠して受信不可能な状態にした場合や、利用者がSSタグを取り外した場合も含まれる。
【0070】
IDカードの認証により利用者の退室が確認された場合(s124)、位置情報管理システムで退室が確認されない場合には不正行動の監視が続行される(s126)。位置情報管理システムで退室が確認された場合には利用者の動態監視を終了する(s128)。
その後、利用者はIDカード及びSSタグを返却する(s130、s132)。
【0071】
なお、IDカード及びSSタグはこの例のように別個のものであってもよいし、双方の機能を備える単一のものであってもよい。
【0072】
また、例えば、利用者に対して、携帯可能な表示装置(電子パーパー、液晶表示装置等)を貸与して、表示装置状に許可区域情報や自分が使用するサーバラックの位置情報が表示されるようにしてもよい。このようにすれば、利用者は現在の自分の位置及び許可される区域の情報を把握することができ、誤って制限区域に侵入してしまうことを防止することができる。
【0073】
なお、上記の実施形態においては、超音波を利用した室内位置情報管理システムについて説明したが、先述のように、本発明の室内位置情報管理システム及び室内位置情報管理方法に用いられる電波は超音波に限定されず、送信装置及び受信装置も用いられる電波に応じたものが適用される。
【0074】
例えば、3次元位置情報を測位可能な技術として、フェーズドアレイアンテナを受信装置として使用する、Mojix社(米国)の「Mojix STAR System (超遠距離Gen2タグ読み取り+高精度位置情報)」等を採用してもよい。
【0075】
上記Mojix STAR System」では、アンテナとしてフェーズドアレイアンテナを採用し、受信信号の増幅とノイズの除去を高いレベルで行えるようにしたものである。さらに、信号受信用のアンテナであるSTARと電力供給用のアンテナであるeNodesを分離し、電力供給によるノイズが信号受信に干渉しないようになっている。
また、「Mojix STAR System」では、タグ(RFIDタグ)の3次元位置情報を半径30センチという精度で取得できるため、本発明に係る室内位置情報管理システムに好ましく用いることができる。
【0076】
以上説明したように、本発明によれば、室内における位置計測対象の位置情報を管理することができ、室内に物理的な制約を設けずとも、室内を滞在可能な区域と不可能な区域とに分割することができ、かつ位置計測対象毎に侵入可否区域を設定することができる室内位置情報管理システム及び室内位置情報管理方法が提供される。
本発明に係る室内位置情報管理システム又は室内位置情報管理方法をデータセンター等のマシン室の管理に利用することにより、利用者の所望するセキュリティに応じた区域を提供することが可能となる。また、室内のレイアウト変更や利用者の入替え等にも柔軟に対応することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の位置計測対象に取り付けられる送信装置と、
該室内に設置され、該送信装置から送信される超音波を受信可能な受信装置と、
該受信装置にて受信した超音波の情報に基づいて該送信装置の位置情報を求める処理装置とを備える室内位置情報管理システムであって、
前記送信装置の位置情報と、前記位置計測対象毎に固有に設定された少なくとも3種類の区域を設定する許可区域情報とに基づいて、前記位置計測対象が該許可区域情報で許可されない区域に存在する場合には警告を通知し、
前記少なくとも3種類の区域が、侵入禁止区域、通過可能区域及び滞在可能区域を含むことを特徴とする室内位置情報管理システム。
【請求項2】
室内の位置計測対象に取り付けられるRFIDタグと、
該RFIDタグに電力を供給する装置と、
該室内に設置され、該送信装置から電波送信される電波を受信可能な受信装置と、
該受信装置にて受信した電波の情報に基づいて該送信装置の位置情報を求める処理装置とを備える室内位置情報管理システムであって、
前記送信装置の位置情報と、前記位置計測対象毎に固有に設定された少なくとも3種類の区域を設定する許可区域情報とに基づいて、前記位置計測対象が該許可区域情報で許可されない区域に存在する場合には警告を通知し、
前記少なくとも3種類の区域が、侵入禁止区域、通過可能区域及び滞在可能区域を含むことを特徴とする室内位置情報管理システム。
【請求項3】
前記位置計測対象が前記侵入禁止区域に存在するときには即時警告を通知し、前記位置計測対象が前記通過可能区域に存在するときには一定時間の経過後に警告を通知し、前記位置計測対象が前記滞在可能区域に存在するときには警告を通知しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の室内位置情報管理システム。
【請求項4】
前記処理装置は、前記受信装置にて受信した超音波又は電波の情報に基づいて位置計測対象の位置情報を算出する位置情報演算部と、該位置情報を記憶する位置情報記憶部とを有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の室内位置情報管理システム。
【請求項5】
前記位置情報演算部において、前記位置情報及び前記位置情報を取得した時間の時間情報に基づいて前記位置計測対象の移動履歴情報を算出し、該移動履歴情報を前記位置情報記憶部に記憶することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の室内位置情報管理システム。
【請求項6】
前記許可区域情報は前記超音波送信装置の許可区域情報記憶部に記憶されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の室内位置情報管理システム。
【請求項7】
前記警告は室内に設置された音声出力装置又は前記送信装置の有する音声出力部から出力される音声により行われることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の室内位置情報管理システム。
【請求項8】
室内の位置計測対象に取り付けられる送信装置と、
該室内に設置され、該送信装置から送信される超音波を受信可能な受信装置と、
該受信装置にて受信した超音波の情報に基づいて該送信装置の位置情報を求める処理装置とを備える管理システムを利用する室内位置情報管理方法であって、
前記送信装置の位置情報と、前記位置計測対象毎に固有に設定された少なくとも3種類の区域を設定する許可区域情報とに基づいて、前記位置計測対象が該許可区域情報で許可されない区域に存在する場合には警告を通知し、
前記少なくとも3種類の区域が、侵入禁止区域、通過可能区域及び滞在可能区域を含むことを特徴とする室内位置情報管理方法。
【請求項9】
室内の位置計測対象に取り付けられるRFIDタグと、
該RFIDタグに電力を供給する装置と、
該室内に設置され、該送信装置から電波送信される電波を受信可能な受信装置と、
該受信装置にて受信した電波の情報に基づいて該送信装置の位置情報を求める処理装置とを備える室内位置情報管理システムであって、
前記送信装置の位置情報と、前記位置計測対象毎に固有に設定された少なくとも3種類の区域を設定する許可区域情報とに基づいて、前記位置計測対象が該許可区域情報で許可されない区域に存在する場合には警告を通知し、
前記少なくとも3種類の区域が、侵入禁止区域、通過可能区域及び滞在可能区域を含むことを特徴とする室内位置情報管理方法。
【請求項10】
前記位置計測対象が前記侵入禁止区域に存在するときには即時警告を通知し、前記位置計測対象が前記通過可能区域に存在するときには一定時間の経過後に警告を通知し、前記位置計測対象が前記滞在可能区域に存在するときには警告を通知しないことを特徴とする請求項8又は9に記載の室内位置情報管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−214844(P2011−214844A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80320(P2010−80320)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(591106864)富士通エフ・アイ・ピー株式会社 (95)
【Fターム(参考)】