説明

室用のアンテナ装置

【課題】室内の物品に付された無線タグの必要な情報を正確に読み取ることができるようにする。
【解決手段】試着室1の天井部に設けられ、下方に向けて電波を照射してこの試着室1内に位置する無線タグと通信を行う電界型アンテナ2と、試着室1の登上台に設けられ、上方に向けて電波を照射してこの試着室1内に位置する無線タグと通信を行う磁界型アンテナ3とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、各種のアパレルショップに設置される試着室等に用いられる室用のアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アパレルショップ等では、その店内に試着室を備え、顧客は、売り場で選択した物品、例えば、スカートやスラックスなどの衣服を試着室内に持ち込んで試着している。
【0003】
ところで、近時においては、試着室内には、リーダ・ライタの電界型アンテナが設けられ、顧客が試着室内に持ち込んだ物品に付された無線タグの情報を読み取って物品の管理などを行なっている(例えば、特許文献1参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、電界型アンテナを試着室の内側壁の上下方向略中央部に取り付けていたため、電界型アンテナから放射される電波ビームは、顧客の前面、或いは背面側から照射されることになり、顧客の動きによっては、電界型アンテナと物品に取り付けられた無線タグとの間を顧客が遮ってしまい、無線タグの読取精度が低下するという問題があった。
【0005】
また、電界型アンテナから放射される電波ビームは水平方向に照射されるため、隣接する試着室に漏れてしまい、この隣接する試着室内に置かれた物品に取り付けられた無線タグの情報を読み取って情報を誤読する虞があった。
【0006】
さらに、垂直方向に放射される範囲は限られているので、試着室内に入った顧客の頭上から足元まで電波ビームを照射することができず、例えば、顧客の足元に置かれた物品の無線タグの情報は読み取ることができないという不都合があった。なお、垂直方向の照射範囲を広げるために電波強度を高めると、水平方向の照射範囲も広がることから、隣接する試着室内に置かれた物品に設けられた無線タグの情報を読んでしまうという問題がより顕著に現れてしまう。
【0007】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、物品に付された無線タグの情報を正確に読み取ることができ、また、隣接する室の情報を読むことによる誤読を防止し、しかも、利用者の足元に置かれた物品の無線タグ情報を読み取ることができるようにした試着室用のアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、縦長の室の上部に設けられ、下方に向けて電波を照射してこの室内に位置する無線タグと通信を行う物品情報読取用の電界型アンテナと、前記室の下部に設けられ、上方に向けて電波を照射してこの室内に位置する無線タグと通信を行う物品情報読取用の磁界型アンテナとを具備することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、縦長の室の下部に設けられ、上方に向けて電波を照射してこの室内に位置する無線タグと通信を行う物品情報読取用の電界型アンテナと、前記室の上部に設けられ、下方に向けて電波を照射してこの室内に位置する無線タグと通信を行う物品情報読取用の磁界型アンテナとを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、室内の物品に付された無線タグの必要な情報を正確に読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態であるアンテナ装置を備える試着室を示す斜視図。
【図2】図1のアンテナ装置から放射される電波ビームの放射領域を示す平面図。
【図3】図1のアンテナ装置から放射される電波ビームの放射領域を示す斜視図。
【図4】図1のアンテナ装置を備える物品管理システムを示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態であるアンテナ装置を備える室としての試着室1を示す斜視図である。
【0014】
試着室1は縦長のボックス状をなし、アパレルショップなどの売り場に設置される。この試着室1は、通常、例えば、図2、及び図3に示すように隣接する状態で複数配置される。これら試着室1の上部としての天井部には、電界型アンテナ(パッチ等)2が設けられ、下部としての登上台には磁界型アンテナ(コイル型)3が設けられている。
【0015】
電界型アンテナ2は、下方に向けて電波を照射して試着室1内に位置する後述する無線タグと通信を行もので、磁界型アンテナ3は、上方に向けて電波を照射して試着室1内に位置する後述する無線タグと通信を行うものである。
【0016】
電界型アンテナ2及び磁界型アンテナ3は、図4に示すようにリーダ・ライタ(RW)5に接続され、リーダ・ライタ(RW)5には、無線LANを介して管理PC6、さらに物品管理サーバ7が接続されて物品管理システム8が構成されている。
【0017】
物品管理サーバ7は、制御部、物品DB、情報DB、及び物品管理プログラム(図示しない)を備えている。管理PC6は、出力部、及び入力部(図示しない)を備え、物品10の管理処理を行うようになっている。
【0018】
リーダ・ライタ(RW)5は、上記した電界型アンテナ2、及び磁界型アンテナ3から電波ビームを出力させて物品10に付された無線タグ11から物品情報を読み取るようになっている。
【0019】
物品管理システム8は、例えば、洋服売り場の管理PC6に、洋服が試着された回数などを表示して顧客の嗜好性などを分析できるようにするものである。
【0020】
図2は、上記した電界型アンテナ(パッチ等)2から放射される電波ビームの放射領域aを示す平面図で、図3は、電界型アンテナ(パッチ等)2から放射される電波ビームの放射領域a及び磁界型アンテナ(コイル型)3から放射される電波ビームの放射領域bを示す斜視図である。
【0021】
電界型アンテナ(パッチ等)2から放射される電波ビームの放射領域aは、中央部が広がり、上下部がしぼむ状態で、垂直方向に沿って長く形成され、磁界型アンテナ(コイル型)3から放射される電波ビームの放射領域bは、垂直方向には短かく、水平方向に沿って広く形成される。
【0022】
上記した構成において、顧客が、売り場で選択した物品(図4に示す)10を手に持って試着室1内に入ると、電界型アンテナ2から電波ビームが下方に向けて放射されるとともに、磁界型アンテナ3から電波ビームが上方に向けて放射される。この電波ビームの放射により、物品10の無線タグ11の情報が読み取られ、この情報の読取回数は、無線ランを介して管理サーバ7の物品DBに格納される。
【0023】
物品管理サーバ7は、読み取り回数や、読み取り回数に基づくメッセージを、売り場の管理PC6に出力する。売り場の販売員は、この出力をみて物品の嗜好性などを分析する。
【0024】
なお、読取回数は、顧客と物品とのミスマッチを早期に発見するために使用されてもよい。例えば、読取回数が高いにもかかわらず物品が購入されない場合は、何らかの問題があると判断して、物品管理サーバ7が管理PC6に警告を出力する。
【0025】
上記したように、この実施の形態によれば、試着室1の天井部に電界型アンテナ(パッチ等)2を設け、天井部から下方に向かって垂直に電波ビームを放射するため、試着室1内に持ち込まれた物品10の無線タグ11に対し、顧客に遮られることなく電波ビームを放射でき、タグ情報を正確に読み取ることができる。
【0026】
また、隣接する試着室への電波ビームの漏れも防止でき、隣接する試着室1内に置かれた物品10に取り付けられた無線タグ11の情報を読み取って情報を誤読する虞もない。
【0027】
さらに、試着室1内の登上台部には磁界型アンテナ(コイル型)3を設け、電波ビームを水平方向に広く放射するため、物品10が足元に置かれた場合でも、そのタグ情報を確実に読み取ることができる。従って、電界型アンテナ(パッチ等)2と磁界型アンテナ(コイル型)3とを同時に使用することにより、電界型アンテナ(パッチ等)2の電波強度を強めることなく、試着室1内の顧客に対し、その頭上から足元まで電波ビームを照射でき、より一層広い範囲でタグ情報を確実に読み取ることができるとともに、隣接する試着室1内に置かれた物品10に取り付けられた無線タグ11の情報を読み取って情報を誤読する虞もない。
【0028】
なお、リーダ・ライタ(RW)5には、電界型アンテナ2からの出力と磁界型アンテナ3からの出力とを選択的に切換える切換部5aが設けられている。無線タグ11の読取時には、この切換部5aを動作させることにより、電界型アンテナ2、或いは磁界型アンテナ3からのみ出力させて省エネ化を図ることができるようになっている。
【0029】
また、上記一実施の形態では、試着室1の天井部に下方に向けて電波を照射する電界型アンテナ(パッチ等)2を設け、登上台に上方に向けて電波を照射する磁界型アンテナ(コイル型)3を設けたが、これとは、逆に、試着室1の天井部に下方に向けて電波を照射する磁界型アンテナ(コイル型)3を設け、登上台に上方に向けて電波を照射する電界型アンテナ(パッチ等)2を設けるようにしても良い。
【0030】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【符号の説明】
【0031】
1…試着室、2…電界型アンテナ、3…磁界型アンテンナ、a、b…放射領域。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2009−140280号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦長の室の上部に設けられ、下方に向けて電波を照射してこの室内に位置する無線タグと通信を行う物品情報読取用の電界型アンテナと、
前記室の下部に設けられ、上方に向けて電波を照射してこの室内に位置する無線タグと通信を行う物品情報読取用の磁界型アンテナと
を具備することを特徴とする室用のアンテナ装置。
【請求項2】
縦長の室の下部に設けられ、上方に向けて電波を照射してこの室内に位置する無線タグと通信を行う物品情報読取用の電界型アンテナと、
前記室の上部に設けられ、下方に向けて電波を照射してこの室内に位置する無線タグと通信を行う物品情報読取用の磁界型アンテナと
を具備することを特徴とする室用のアンテナ装置。
【請求項3】
前記電界型のアンテナから放射される電波ビームは、垂直方向に沿って照射され、前記磁界型のアンテンから放射される電波ビームは、水平方向に沿って照射されることを特徴とする請求項1または2記載の室用のアンテナ装置。
【請求項4】
前記電界型アンテナからの出力と前記磁界型アンテナからの出力とを選択的に切換える切換部を備えたことを特徴とする請求項1ないしは3いずれか記載の室用のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−155614(P2011−155614A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17345(P2010−17345)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】