説明

容器、及び容器の製造方法

【課題】強度、遮光性、及び保温性に優れると共に、容易に圧縮廃棄でき、リサイクル性に優れる容器、及び該容器の製造方法の提供。
【解決手段】結晶性を有するポリマーからなり、長尺状の空洞をその長さ方向が第1の方向に配向した状態で内部に含有する結晶性高分子フィルムを容器に巻回してなる容器であって、前記結晶性高分子フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、下記式(1)の関係を満たす容器である。
h(avg)>T/100 ・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の側面に、内部に空洞を含有する結晶性高分子フィルムを巻回してなる容器、及び該容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳・乳飲料、ビール、ビタミン飲料、ジュ−ス、炭酸飲料、水、お茶等の飲料水、あるいは、オイル、調味料、その他種々の液状食品を充填包装するために、種々の形態からなるプラスチック製ボトル、ガラス瓶、金属缶等(以下「容器」という)が開発されている。これらの容器の表面には、製品の情報などを記載したフィルムが巻回されている。
【0003】
このようなフィルムを容器に巻回する方法としては、例えば、金型内にラベルを配置した状態でパリソンにガスを吹き込んでボトルを成形する、インモールドラベルブロー成形方法(例えば、特許文献1参照)などが提案されている。この方法によれば、金型に複雑な加工やラベル材質に制限を加えることなく、さらに短い冷却時間にて、ラベルにしわや浮きを起こさないようにすることができる。
【0004】
またビール等、遮光性を必要とする内容物を外部光より保護するために、着色のシュリンクフィルムが用いられている。
シュリンクフィルムに遮光性を付与する技術として、例えば、シュリンクフィルムに金属(アルミニウム等)の薄膜層を積層すること(特許文献2参照)、シュリンクフィルムにアルミペーストを含有する白色インキ層を積層すること(特許文献3参照)、紫外線吸収剤を含むシュリンクフィルムに更に酸化チタンを含有する遮光性粘着剤を積層すること(特許文献4参照)等がある。これらの技術は、シュリンクフィルムに遮光材層を積層することによって遮光性を付与したものであり、シュリンクフィルム自身が遮光性を有するものではなかった。さらに、顔料、染料、金属、無機粒子等を含有する層を有する積層体であって、簡易な構成のものでないため、リサイクルが困難であるという問題がある。
また、これまでのシュリンクフィルムには、容器の内容物の保存性を向上するために必要な断熱性を有するものは提供されていないのが現状である。
【0005】
また、昨今、オゾン層破壊あるいは地球の温暖化等、環境問題が社会的問題となりクローズアップされている。こういう状況下で、企業が作り出す製品にも環境問題への配慮がなされているかどうかが、消費者のニーズにこたえるという観点で極めて重要になっている。そのため、PETボトルに代表される樹脂製飲料容器もその製造に、出来るだけエネルギーを使わず、更に、それをリサイクルする過程で出来るだけエネルギーを使わないようにして、二酸化炭素の排出量を抑制しようという『環境に優しい商品を提供する』方向の模索も始まっている。その1つの方法として、PETボトルの減量(使用する樹脂の量を減らすこと)がある。
例えば、PETボトルの場合、通常500mL容器で20g程度のPET樹脂を使用している。この量を減ずることが出来れば、同じ500mLPETボトル入り飲料を製造するにしても、樹脂の加工に要するエネルギーを削減することが出来るため、トータルで資源やエネルギーを節約することが出来る。リサイクルの際にもエネルギーを節約でき、二酸化炭素排出量を削減することが出来ると考えられる。
【0006】
また、PETボトルなどの容器をリサイクルする際には、容器をつぶして工場へと搬送する。その際、容器が硬いとなかなかつぶせずに余計にエネルギーを要したり、十分につぶすことができないと、嵩高いまま運送しなければならずエネルギーの無駄使いだけではなく、搬送の効率が悪くなり、コストアップになる。したがって、容器をつぶしやすくするためにも、樹脂の使用量を減らすことが求められている。
【0007】
しかしながら、ただ樹脂の使用量を削減するのでは、容器の強度が低下してしまうという問題がある。例えば、上部が開放しているコップ状の容器では、容器がたわみやすく、容器の厚みを薄くし難いという問題がある。
上部が大きく開放している樹脂製容器、例えばコップ型の容器の場合、容器を持ち上げる際に、図1に示すような保持の仕方をすることが多い。この際、親指部分に比較的力が集中するため、この部分が柔らかいと、容器を保持できなくなる。更にこの状態から内部に入っている飲料などを飲もうとすると、容器を傾ける必要があり、その場合、容器を支持している点を中心に容器を折り曲げる力が加わるため、特に親指部分に力が集中する。もし、容器が脆弱であると、指に力を入れた際に、容器が容易に変形して中の飲料などがこぼれてしまったり、容器の変形を抑えようと指の力を緩めると容器を落としてしまう懸念がある。
容器の保持に大きな注意を払わないと、うまく持っていられないような商品では、その使用に際して非常に問題があり、特に指の力のコントロールが容易でない小児、児童、高齢者などに対しては、容器を持つことに格段の注意を払わなくても、普通に容器が保持できることが望ましい。
通常、コップ形状容器の開放部分はヒートシールによる密閉や、フタのはめ込み、さらには口に接した時の口当たりを良くすると共に飲料がこぼれないようにするために、開口部周囲にリムを設けて開口部の強度アップを図っていることが多い。
しかしながら、容器胴体部分に関しては、成形加工の容易性、コストダウン、ラベル巻きつけの容易性、などの観点から特殊な形状が付与しにくく、更に特殊な形状を付与すると使用樹脂量が大幅に増えてしまい、エコではなくなってしまう(エコを訴求し難くなる)という問題があり、それも薄肉化を促進し難い要因のひとつとなっている。
【0008】
したがって、強度、遮光性、及び保温性に優れると共に、容易に圧縮廃棄でき、リサイクル性に優れる容器、及び該容器の製造方法の速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−128837号公報
【特許文献2】特開2003−200965号公報
【特許文献3】特開2003−200966号公報
【特許文献4】特開2007−83518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、強度、遮光性、及び保温性に優れると共に、容易に圧縮廃棄でき、リサイクル性に優れる容器、及び該容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の結晶性を有するポリマーからなるポリマー成形体(ポリマーフィルム)を2倍〜10倍の延伸倍率に高速延伸すると、空洞含有フィルムになり、前記フィルム内部の空洞構造のため、保温性を有するという知見、及び、該フィルムが延伸により結晶化が促進されるためと考えられるが、該フィルムを巻回してなる容器の強度を増加することができるという知見、更に多層ボイド構造を発現するため、光の多重反射に起因すると考えられる、広い波長範囲にわたる、高い光線反射特性を有すると言う知見である。
【0012】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 結晶性を有するポリマーからなり、長尺状の空洞をその長さ方向が第1の方向に配向した状態で内部に含有する結晶性高分子フィルムを容器に巻回してなる容器であって、
前記結晶性高分子フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする容器である。
h(avg)>T/100 ・・・(1)
但し、前記式(1)中、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。
<2> 容器側面の角部の曲率半径Rが、1mm以上である前記<1>に記載の容器である。
<3> 容器における結晶性高分子フィルムの厚みが、30μm以上500μm以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の容器である。
<4> 容器の表面積(A)と、容器における結晶性高分子フィルムの面積(B)との比(B/A)が、1/4以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の容器である。
<5> 結晶性高分子フィルムと、容器とが一体化してなる前記<1>から<4>のいずれかに記載の容器である。
<6> 結晶性を有するポリマーからなり、長尺状の空洞をその長さ方向が第1の方向に配向した状態で内部に含有する結晶性高分子フィルムをブロー金型に配置する工程と、
前記結晶性高分子フィルムを配置したブロー金型にプリフォームを配置する工程と、
前記プリフォームをブローする工程とを含み、
前記結晶性高分子フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする容器の製造方法である。
h(avg)>T/100 ・・・(1)
但し、前記式(1)中、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、強度、遮光性、及び保温性に優れると共に、容易に圧縮廃棄でき、リサイクル性に優れる容器、及び該容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、コップ型の容器を保持した様子を示す図である。
【図2】図2は、本発明の結晶性高分子フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
【図3A】図3Aは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、結晶性高分子フィルムの斜視図である。
【図3B】図3Bは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図3Aにおける結晶性高分子フィルムのA−A’断面図である。
【図3C】図3Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図3Aにおける結晶性高分子フィルムのB−B’断面図である。
【図3D】図3Dは、フィルム表面から最も近くに位置する10個の空洞の、フィルム表面からの距離を測定する方法を説明するための図であって、図3AにおけるA−A’断面図である。
【図4A】図4Aは、扇形に加工した結晶性高分子フィルムを示す図である。
【図4B】図4Bは、結晶性高分子フィルムを治具に取り付ける様子を示す図である。
【図4C】図4Cは、ブロー金型の模式図である。
【図4D】図4Dは、ブロー金型の断面模式図である。
【図5】図5は、ブロー工程を説明するための模式図である。
【図6】図6は、実施例1の容器を説明する図である。
【図7】図7は、実施例2の容器への結晶性高分子フィルムを巻回する工程を説明する図である。
【図8A】図8Aは、電子顕微鏡により撮影した図3Aにおける結晶性高分子フィルムのA−A’断面図である。
【図8B】図8Bは、電子顕微鏡により撮影した図3Aにおける結晶性高分子フィルムのB−B’断面図である。
【図9A】図9Aは、実施例4の容器の形状を説明する図である。
【図9B】図9Bは、実施例5の容器の形状を説明する図である。
【図10】図10は、実施例1において印刷した意匠の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(容器)
本発明の容器は、容器と、結晶性高分子フィルムとを少なくとも有し、必要に応じて更にその他の構成を有する。
本発明の容器は、結晶性高分子フィルムと、容器とが一体化してなることが好ましい。
【0016】
<結晶性高分子フィルム>
前記結晶性高分子フィルムは、結晶性を有するポリマーからなり、長尺状の空洞をその長さ方向が第1の方向に配向した状態で内部に含有する。
【0017】
−結晶性を有するポリマー−
一般に、ポリマーは、結晶性を有するポリマーと非晶性(アモルファス)ポリマーとに分けられるが、結晶性を有するポリマーといえども100%結晶ということはなく、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶(アモルファス)領域とを含んでいる。
したがって、本発明の前記結晶性を有するポリマーとしては、分子構造の中に少なくとも前記結晶性領域を含んでいればよく、結晶性領域と非結晶領域とが混在していてもよい。
【0018】
前記結晶性を有するポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオレフィン類(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアミド類(PA)(例えば、ナイロン−6など)、ポリアセタール類(POM)、ポリエステル類(例えば、PET、PEN、PTT、PBT、PPT、PHT、PBN、PES、PBSなど)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンサルファイド類(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン類(PEEK)、液晶ポリマー類(LCP)、フッ素樹脂、アイソタクティックポリプロピレン(isoPP)などが挙げられる。その中でも、耐久性、力学強度、製造およびコストの観点から、ポリオレフィン類、ポリエステル類、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、液晶ポリマー類(LCP)が好ましく、ポリオレフィン類、ポリエステル類がより好ましい。また、これらのうち2種以上のポリマーをブレンドしたり、共重合させたりして使用してもよい。
【0019】
前記結晶性を有するポリマーは、結晶性高分子フィルムの紫外領域における光透過率を低くする(反射特性を高める)ために、例えば、芳香環などの、紫外領域において吸収が高い官能基を含まないことが好ましい。したがって、前記ポリエステル類のなかでも、脂肪族ポリエステルが特に好ましい。
【0020】
前記結晶性を有するポリマーの溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50Pa・s〜700Pa・sが好ましく、70Pa・s〜500Pa・sがより好ましく、80Pa・s〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、溶融製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形状が安定し、均一に製膜しやすくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、溶融製膜時の粘度が適切になって押出ししやすくなったり、フィルム製膜時の溶融膜がレベリングされて凹凸を低減できたりする点で好ましい。
ここで、前記溶融粘度は、プレートタイプのレオメーターやキャピラリーレオメーターにより測定することができる。
【0021】
前記結晶性を有するポリマーの極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.4が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記IVが0.4〜1.4であると、製膜されたフィルムの強度が高くなり、効率よく延伸することができる点で好ましい。
ここで、前記IVは、ウベローデ型粘度計により測定することができる。
【0022】
前記結晶性を有するポリマーの融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜350℃が好ましく、100℃〜300℃がより好ましく、100℃〜260℃がより好ましい。前記融点が40℃〜350℃であると、通常の使用で予想される温度範囲で形を保ちやすくなる点で好ましく、高温での加工に必要とされる特殊な技術を特に用いなくても、均一な製膜ができる点で好ましい。
ここで、前記融点は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0023】
−−ポリエステル樹脂−−
前記ポリエステル類(以下、「ポリエステル樹脂」と称する。)は、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物の総称を意味する。したがって、前記結晶性を有するポリマーとして好適な前記ポリエステル樹脂としては、前記例示したPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPT(ポリペンタメチレンテレフタレート)、PHT(ポリヘキサメチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PES(ポリエチレンサクシネート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)だけでなく、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合反応によって得られる高分子化合物が全て含まれる。
【0024】
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、多官能酸などが挙げられる。
【0025】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0026】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。前記オキシカルボン酸としては、例えば、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。前記多官能酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸の中では、前記結晶性高分子フィルムが紫外領域を含む広い波長範囲において低い透過率(優れた反射特性)を有する点で、コハク酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、コハク酸、アジピン酸がより好ましい。
【0027】
前記ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられ、これらの中でも、前記結晶性高分子フィルムが紫外領域を含む広い波長範囲において低い透過率(優れた反射特性)を有する点で、脂肪族ジオールが好ましい。
【0028】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられ、これらの中でも、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールが特に好ましい。
前記脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0029】
前記ポリエステル樹脂の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50Pa・s〜700Pa・sが好ましく、70Pa・s〜500Pa・sがより好ましく、80Pa・s〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が大きいほうが延伸時にボイドを発現しやすいが、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。また、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しづらくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・s以上であると、製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形態が維持しやすくなって、安定的に成形できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で好ましい。
【0030】
前記ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.4が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記IVが大きいほうが延伸時にボイドを発現しやすいが、前記IVが0.4〜1.4であると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。さらに、前記IVが0.4〜1.4であると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、装置に負荷がかかりにくい点で好ましい。加えて、前記IVが0.4〜1.4であると、製品が破損しにくくなって、物性が高まる点で好ましい。
【0031】
前記ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性や製膜性などの観点から、70℃〜300℃が好ましく、90℃〜270℃がより好ましい。
【0032】
なお、前記ポリエステル樹脂として、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とが、それぞれ1種で重合してポリマーを形成していてもよく、前記ジカルボン酸成分及び/又は前記ジオール成分が、2種以上で共重合してポリマーを形成していてもよい。また、前記ポリエステル樹脂として、2種以上のポリマーをブレンドして使用してもよい。
【0033】
前記2種以上でのポリマーのブレンドにおいて、主たるポリマーに対して添加されるポリマーは、前記主たるポリマーに対して、溶融粘度及び極限粘度が近く、添加量が少量であるほうが、製膜時や溶融押出し時に物性が高まり、押出ししやすくなる点で好ましい。
【0034】
また、前記ポリエステル樹脂の流動特性の改良、光線透過性の制御、塗布液との密着性の向上などを目的として、前記ポリエステル樹脂に対してポリエステル系以外の樹脂を添加してもよい。
【0035】
このように、前記結晶性高分子フィルムは、従来技術において添加されていた無機系微粒子、相溶しない樹脂などの空洞形成剤を特に添加しなくても、簡便な工程でボイドを形成させることができる。これにより、結晶性高分子フィルムのリサイクル性を高めることができる。さらに、不活性ガスを予め樹脂の中に溶け込ませるための特殊な設備も必要としない。なお、前記結晶性高分子フィルムの製造方法については、後記する。
【0036】
ここで、前記結晶性高分子フィルムは、空洞の発現に寄与しない成分であれば、必要に応じて前記結晶性を有するポリマー以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、耐熱安定剤、酸化防止剤、有機の易滑剤、核剤、染料、顔料、分散剤、カップリング剤などが挙げられる。前記その他の成分が空洞の発現に寄与したかどうかは、空洞内又は空洞の界面部分に、結晶性を有するポリマー以外の成分(例えば、後記する各成分など)が検出されるかどうかで判別できる。
【0037】
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のヒンダードフェノール類を添加してもよい。前記ヒンダードフェノール類としては、例えば、イルガノックス1010、同スミライザーBHT、同スミライザーGA−80などの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
また、前記酸化防止剤を一次酸化防止剤として利用し、更に二次酸化防止剤を組み合わせて適用することもできる。前記二次酸化防止剤としては、例えば、スミライザーTPL−R、同スミライザーTPM、同スミライザーTP−Dなどの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
【0038】
前記蛍光増白剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユビテック、OB−1、TBO、ケイコール、カヤライト、リューコプア、EGMなどの商品名で市販されているものを用いることができる。なお、前記蛍光増白剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。このように蛍光増白剤を添加することで、より鮮明で青味のある白色性を与え、高級感を持たせることができる。
【0039】
−空洞−
前記結晶性高分子フィルムは、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有し、前記空洞の空洞含有率及びアスペクト比に特徴を有している。
前記空洞とは、結晶性高分子フィルム内部に存在する、真空状態のドメイン又は気相のドメインを意味する。
【0040】
前記空洞含有率とは、結晶性高分子フィルムの固相部分の総体積と含有される空洞の総体積の和に対する、前記含有される空洞の総体積を意味する。
前記空洞含有率としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、3体積%〜50体積%が好ましく、5体積%〜40体積%がより好ましく、10体積%〜30体積%が更に好ましい。
ここで、前記空洞含有率は、比重を測定し、前記比重に基づいて算出することができる。
具体的には、前記空洞含有率は、下記の(2)式により求めることができる。
空洞含有率(%)={1−(延伸後の結晶性高分子フィルムの密度)/(延伸前のポリマー成形体の密度)} ・・・(2)
【0041】
前記アスペクト比とは、空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比を意味する。
前記アスペクト比としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。
【0042】
図3A〜3Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図3Aは、結晶性高分子フィルムの斜視図であり、図3Bは、図3Aにおける結晶性高分子フィルムのA−A’断面図であり、図3Cは、図3Aにおける結晶性高分子フィルムのB−B’断面図である。
【0043】
前記結晶性高分子フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、前記「空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))」は、結晶性高分子フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図3AにおけるA−A’断面)における空洞100の平均の厚みr(図3B参照)に相当する。また、「前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))」は、結晶性高分子フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、前記第一の延伸方向に平行な断面(図3AにおけるB−B’断面)における空洞100の平均の長さL(図3C参照)に相当する。
【0044】
なお、前記第一の延伸方向とは、延伸が1軸のみの場合には、その1軸の延伸方向を示す。通常は、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸を行うため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
また、延伸が2軸以上の場合には、空洞形成を目的とした延伸方向のうち少なくとも1方向を示す。通常は、2軸以上の延伸においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われ、かつ、この縦延伸により空洞を形成することが可能であるため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
【0045】
ここで、空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。同様に、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0046】
前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均の個数Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5個以上が好ましく、10個以上がより好ましく、15個以上が更に好ましい。
【0047】
前記結晶性高分子フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、前記「空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の個数」は、結晶性高分子フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図3AにおけるA−A’断面)において、膜厚方向に含まれる空洞100の個数に相当する。
ここで、前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均の個数Pは、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0048】
本発明の結晶性高分子フィルムの断面図の一例を図8A、及び図8Bに示す。
図8Aは、電子顕微鏡により撮影した図3Aにおける結晶性高分子フィルムのA−A’断面図である。図8Bは、電子顕微鏡により撮影した図3Aにおける結晶性高分子フィルムのB−B’断面図である。
なお、本発明の結晶性高分子フィルムの断面図は、前記図8A及び図8Bに限定されるものではない。
【0049】
結晶性を有するポリマー層と空洞層との屈折率差ΔNは、具体的には、波長589nmの光に対する結晶性を有するポリマー層の屈折率をN1として、波長589nmの光に対する空洞層の屈折率をN2とした際に、N1とN2との差であるΔN(=N1−N2)の値を意味する。
ここで、結晶性を有するポリマー層及び空洞層の屈折率N1、N2は、アッベ屈折計などにより測定することができる。
前記ΔNと前記Pとの積は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上が更に好ましい。
【0050】
更に、前記結晶性高分子フィルムは、前記空洞を含有しつつも、空洞を発現するための無機系微粒子、相溶しない樹脂、不活性ガスなどが添加されていないため、優れた表面平滑性を有している。
前記結晶性高分子フィルムの表面平滑性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Ra=0.3μm以下が好ましく、Ra=0.25μm以下が更に好ましく、Ra=0.1μm以下が特に好ましい。
【0051】
このように、前記結晶性高分子フィルムは、前記空洞を含有していることにより、例えば、熱収縮率、光線透過率、断熱性、強度などにおいて、様々な優れた特性を有している。言い換えると、前記結晶性高分子フィルムに含有される空洞の態様を変化させることで、熱収縮率、光線透過率、断熱性、強度などの特性を調節することができる。
【0052】
更に、前記結晶性高分子フィルムは、フィルム表面だけでなく、フィルム表面から所定の距離においても空洞が形成されていないことを特徴とする。
即ち、前記結晶性高分子フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、下記式(1)の関係を満たす。
h(avg)>T/100 ・・・(1)
但し、前記式(1)中、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。
【0053】
前記「空洞の中心」とは、前記断面における空洞の断面形状が、真円である場合にはその中心を意味し、それ以外の形状の場合には、例えば、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
前記「結晶性高分子フィルムの表面」とは、厚み方向における、結晶性高分子フィルムの最外面を意味する。通常、前記結晶性高分子フィルムを載置したときの上面を意味する。
【0054】
具体的には、結晶性高分子フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図3D参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300倍〜3,000倍の適切な倍率で検鏡し、断面写真を撮像する。前記断面写真内において、厚みの算術平均値Tを算出する。厚みの算術平均値Tとして、ロングレンジ接触式変位計などを用いて測定された厚さを用いてもよい。
次に、前記断面写真内において、厚み方向に平行な任意の一の直線を描画し、更に、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線を描画する。
そして、断面写真内の各空洞において、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
そして、前記一の直線と前記他の直線とで挟まれた領域内において、空洞の中心から結晶性高分子フィルムの表面までの距離が最も短い10個の空洞を選択する。なお、前記「空洞の中心から結晶性高分子フィルムの表面までの距離」は、前記「空洞の中心」を中心とした円を描画する際に、描画する円の半径を順次大きくし、円弧が最初に結晶性高分子フィルムの表面に接したときの円の半径とする。
そして、選択した10個の空洞について、各中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)を下記(3)式により算出する。
h(avg)=(Σh(i))/10 ・・・(3)
なお、前記「各中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離h(i)」は、前記結晶性高分子フィルムが、湾曲していたり、応力がかかっていたりすると、正確に測定することができないため、測定の際には平面状に載置した状態で測定することが好ましい。
前記結晶性高分子フィルムは、前記空洞を含有しつつも、結晶性高分子フィルムの表面近くに空洞が形成されていないため、優れた表面平滑性を有している。
【0055】
−光線透過率−
前記結晶性高分子フィルムの光線透過率とは、前記結晶性高分子フィルムの表面に対し、垂直に、所定波長の光を入射したときの、透過光の光強度/入射光の光強度×100(%)の値を意味する。
【0056】
前記結晶性高分子フィルムの、波長300nm〜780nmから選択される1つの波長の光に対する透過率(光線透過率)としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下が更に好ましい。
【0057】
また、前記結晶性高分子フィルムの、波長300nm〜780nmから選択される1つの波長の光に対する透過率をMλ(%)として、前記結晶性高分子フィルムと同じ厚みで、前記結晶性高分子フィルムを構成する結晶性を有するポリマーと同一の結晶性を有するポリマーからなり、空洞を含有しないポリマー成形体の、前記選択された波長の光に対する透過率をNλ(%)とした際のMλ/Nλ比が、0.2以下であることが好ましく、0.18以下であることがより好ましく、0.15以下であることが更に好ましい。
ここで、前記透過率は、分光光度計により測定することができる。
【0058】
以上のように、前記結晶性高分子フィルムは、紫外領域(300nm〜380nm)における低い透過率(高い反射率)を有し、更には、紫外領域における低い透過率(高い反射率)を有しつつ、可視領域(380nm〜780nm)においても低い透過率(優れた反射特性)を有するものである。前記結晶性高分子フィルムの低い透過率(優れた反射特性)は、前記結晶性高分子フィルム内部に形成された、空洞層及び結晶性を有するポリマー層からなる多重層間の、構造的な光干渉による。言い換えると、前記結晶性高分子フィルムに含有される空洞の態様(アスペクト比、屈折率など)を変化させることで、前記透過率などの反射特性を調節することができる。
【0059】
−厚み−
前記結晶性高分子フィルムの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30μm〜500μmが好ましく、50μm〜300μmがより好ましく、80μm〜150μmが特に好ましい。前記結晶性高分子フィルムの厚みが30μm未満であると、容器が手で保持できない懸念があり、500μmを超えると、容器に滑らかに沿わせることが出来ないことがある。一方、前記結晶性高分子フィルムの厚みが前記特に好ましい範囲内であると、容器として充分な機能が発現できる点で、有利である。
【0060】
−結晶性高分子フィルムの製造方法−
前記結晶性高分子フィルムの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくともポリマー成形体を2倍〜10倍延伸する延伸工程を含むことが好ましい。前記結晶性高分子フィルムの製造方法は、更に必要に応じて製膜工程などのその他の工程を含んでもよい。
なお、前記ポリマー成形体とは、前記結晶性を有するポリマーからなり、特に空洞を含有していないものを示し、例えば、ポリマーフィルム、ポリマーシートなどが挙げられる。
【0061】
−−延伸工程−−
前記延伸工程では、前記ポリマー成形体が少なくとも1軸に延伸される。そして、前記延伸工程により、ポリマー成形体が延伸されるとともに、その内部に第一の延伸方向に沿って配向した空洞が形成されることで、結晶性高分子フィルムが得られる。
【0062】
延伸により空洞が形成される理由としては、前記ポリマー成形体を構成する少なくとも1種類の結晶性を有するポリマーが、微結晶ドメイン又は、結晶ドメインを有し、延伸時に伸張し難い微結晶又は結晶を含む相と、アモルファス部分の樹脂が引きちぎられるような形で剥離延伸されることにより、これが空洞形成源となって空洞が形成されるものと考えられる。
なお、このような延伸による空洞形成は、結晶性を有するポリマーが1種類の場合だけではなく、2種類以上の結晶性を有するポリマーが、ブレンド又は共重合されている場合であっても可能である。
【0063】
前記延伸の方法としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸が挙げられるが、いずれの延伸方法においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われることが好ましい。
【0064】
一般に、縦延伸においては、ロールの組合せやロール間の速度差により、縦延伸の段数や延伸速度を調節することができる。
前記縦延伸の段数としては、1段以上であれば特に制限はないが、より安定して高速に延伸することができる点及び製造の歩留まりや機械の制約の点から、2段以上に縦延伸することが好ましい。また、2段以上に縦延伸することは、1段目の延伸によりネッキングの発生を確認したうえで、2段目の延伸により空洞を形成させることができる点においても、有利である。
【0065】
−−延伸速度−−
前記縦延伸の延伸速度としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10mm/min〜36,000mm/minが好ましく、800mm/min〜24,000mm/minがより好ましく、1,200mm/min〜12,000mm/minが更に好ましい。前記延伸速度が、10mm/min以上であると、充分なネッキングを発現させやすい点で好ましい。また、前記延伸速度が、36,000mm/min以下であると、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しづらくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。したがって、前記延伸速度が、10mm/min〜36,000mm/minであると、充分なネッキングを発現させやすく、かつ、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しづらくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。
【0066】
より具体的には、1段延伸の場合の延伸速度としては、1,000mm/min〜36,000mm/minが好ましく、1,100mm/min〜24,000mm/minがより好ましく、1,200mm/min〜12,000mm/minが更に好ましい。
【0067】
2段延伸の場合には、1段目の延伸を、ネッキングを発現させることを主なる目的とした予備的な延伸とすることが好ましい。前記予備的な延伸の延伸速度としては、10mm/min〜300mm/minが好ましく、40mm/min〜220mm/minがより好ましく、70mm/min〜150mm/minが更に好ましい。
【0068】
そして、2段延伸における、前記予備的な延伸(1段目の延伸)によりネッキングを発現させた後の2段目の延伸速度は、前記予備的な延伸の延伸速度と変えることが好ましい。前記予備的延伸によりネッキングを発現させた後の、2段目の延伸速度としては、600mm/min〜36,000mm/minが好ましく、800mm/min〜24,000mm/minがより好ましく、1,200mm/min〜15,000mm/minが更に好ましい。
【0069】
−−延伸温度−−
延伸時の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、
延伸温度をT(℃)、ガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)(℃)≦T(℃)≦(Tg+70)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが好ましく、
(Tg−25)(℃)≦T(℃)≦(Tg+70)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することがより好ましく、
(Tg−20)(℃)≦T(℃)≦(Tg+70)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが更に好ましい。
【0070】
一般に、延伸温度(℃)が高いほど延伸張力も低めに抑えられて容易に延伸できるが、前記延伸温度(℃)が、{ガラス転移温度(Tg)−30}℃以上、{ガラス転移温度(Tg)+70}℃以下であると、空洞含有率が高くなり、アスペクト比が10以上になりやすく、かつ、充分に空洞が発現する点で好ましい。
ここで、前記延伸温度T(℃)は、非接触式温度計により測定することができる。また、前記ガラス転移温度Tg(℃)は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0071】
なお、前記延伸工程において、空洞の発現の妨げにならない範囲で、横延伸はしてもよく、しなくてもよい。また横延伸をする場合には、横延伸工程を利用してフィルムを緩和させたり、熱処理を行ったりしてもよい。
また、延伸後の空洞含有樹脂成形体は、形状安定化などの目的で、更に熱を加えて熱収縮させたり、張力を加えたりする等の処理をしてもよい。
【0072】
前記ポリマー成形体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性を有するポリマーがポリオレフィン類、ポリエステル樹脂およびポリアミド類などである場合には、溶融製膜方法により好適に製造することができる。
また、前記ポリマー成形体の製造は、前記延伸工程と独立に行ってもよく、連続的に行ってもよい。
【0073】
図2は、本発明の結晶性高分子フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
図2に示すように、原料樹脂11は、押出機12(原料形状や、製造規模によって、二軸押出機を用いたり、単軸押出し機を用いたりする)内部で熱溶融、混練された後、Tダイ13から柔らかい板状(フィルム又はシート状)に吐出される。
次に、吐出されたフィルム又はシートFは、キャスティングロール14で冷却固化されて、製膜される。製膜されたフィルム又はシートF(「ポリマー成形体」に相当する)は、縦延伸機15に送られる。
そして、製膜されたフィルム又はシートFは、縦延伸機15内で再び加熱され、速度の異なるロール15a間で、縦に延伸される。この縦延伸により、フィルム又はシートFの内部に延伸方向に沿って空洞が形成される。そして、空洞が形成されたフィルム又はシートFは、横延伸機16の左右のクリップ16aで両端を把持されて、巻取機側(図示せず)へ送られながら横に延伸されて、結晶性高分子フィルム1となる。なお、前記工程において、縦延伸のみを行ったフィルム又はシートFを横延伸機16に供さず、結晶性高分子フィルム1として使用してもよい。
【0074】
<容器>
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、店頭でカップに注いで供されるような、テイクアウト用のコーヒーなどの用途が挙げられる。これら容器の表面に凹凸部を有さない容器が、後述するインサートブロー成形による容器の製造において前記結晶性高分子フィルムを巻回させやすい点で、有利である。更に表面に凹凸がなく形状が単純であると、材料も少なくてすみ、製造コストが抑えられるメリットもある。形状が単純であると、コンパクトに重ねることも出来、輸送、保管が効率的に行えるほか、印刷その他意匠を付与する際にも、特段の技術を使用しなくてすむ利点もある。形状が単純であれば、持ち方を意識しなくても、充分保持でき、乳児、幼児、高齢者が取り扱う時にもトラブルになりにくい。
【0075】
−曲率半径R−
前記容器側面の角部の曲率半径Rとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、5mm以上が特に好ましい。前記曲率半径Rが、1mm未満であると、曲げた部分の空洞がつぶれてフィルムの機能が発現し難くなることがある。一方、前記曲率半径Rが前記特に好ましい範囲内であると、成形後にフィルムの性能が充分発現できる点で、有利である。
前記曲率半径Rは、例えば、3次元形状測定装置 XYZAX RA1600A((株)東京精密製)などにより、測定することができる。
ここで、角部における結晶性高分子フィルム中の空洞がつぶれたか否かは、以下のようにして確認することができる。例えば、観察したい部位を樹脂包埋して切出した後、その断面を電子顕微鏡にて、観察して確認することができる。
【0076】
<巻回>
本発明の容器における前記結晶性高分子フィルムの積層枚数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1枚から10枚が好ましく、1枚から5枚が更に好ましい。前記積層枚数が、10枚以上になると、積層する際の接着などの前処理工数が多くなり、均質なフィルムが作りにくくなる。また、積層フィルムが厚くなって柔軟性が低くなり、金型内にセットする際に位置合わせが困難になる場合がある。
【0077】
本発明の容器における前記結晶性高分子フィルムの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30μm〜500μmが好ましく、80μm〜300μmがより好ましく、100μm〜200μmが特に好ましい。前記容器における結晶性高分子フィルムの厚みが、30μm未満であると、インサート成形の際にフィルムにシワがよることがあり、500μmを超えると、金型内にセットする際、治具への貼り付けが困難になることがある。一方、前記容器における結晶性高分子フィルムの厚みが前記特に好ましい範囲内であると、所定の位置に容易にフィルムをセットできる点で、有利である。
【0078】
また、前記容器における、容器の表面積(A)と、容器における結晶性高分子フィルムの面積(B)との比(B/A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1/4以上が好ましく、2/3以上がより好ましく、4/5以上が特に好ましい。前記比(B/A)が、1/4未満であると、フィルムで覆われている面の割合が少ないので、容器が変形しやすく、フィルムの性能を充分発揮できないことがある。一方、前記比(B/A)が前記特に好ましい範囲内であると、容器が変形しにくくなるだけでなく、フィルムの性能が充分発揮できる点で、有利である。
【0079】
本発明の容器における前記結晶性高分子フィルムの配置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、強度、断熱、意匠などの点で、容器の側面に用いるのが好ましい。
【0080】
(容器の製造方法)
本発明の容器の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形された容器に前記結晶性高分子フィルムを巻回する方法(以下、「第1の態様」と称することがある。)、容器の成形とともに前記結晶性高分子フィルムを巻回するインサートブロー成形法(以下、「第2の態様」と称することがある。)、などが挙げられる。
これらの中でも、インサートブロー成形法が、結晶性高分子フィルムと、容器とが一体化してなり、強度に優れる容器を製造することができる点で、有利である。
【0081】
<第1の態様>
前記第1の態様は、巻回工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0082】
−巻回工程−
前記巻回工程は、前記結晶性高分子フィルムを成形された容器に巻回する工程である。
【0083】
前記成形された容器の形状、大きさ、材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0084】
前記結晶性高分子フィルムを前記容器に巻回する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0085】
<第2の態様>
前記第2の態様は、結晶性高分子フィルムをブロー金型に配置する工程(以下、「結晶性高分子フィルム配置工程」と称することがある。)と、前記結晶性高分子フィルムを配置した金型にプリフォームを配置する工程(以下、「プリフォーム配置工程」と称することがある。)と、前記プリフォームをブローする工程(以下、「ブロー工程」と称することがある。)とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記第2の態様は、インサートブロー成形ともいう。前記インサートブロー成形は、プリフォーム(パリソンともいう。)をブロー金型内にセットする際、あらかじめブロー金型内壁に前記結晶性高分子フィルムを貼り付けておき、その後のブロー工程で、前記プリフォームが膨らむ。これにより、金型内壁に張り付く樹脂成形体(ブロー成形品)の外面に、前記結晶性高分子フィルムを貼り付け、意匠性その他の機能を有する容器を得る容器の製造方法である。
【0086】
−結晶性高分子フィルム配置工程−
前記結晶性高分子フィルム配置工程は、前記結晶性高分子フィルムをブロー金型に配置する工程である。
【0087】
−−ブロー金型−−
前記ブロー金型の形状、大きさ、材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ブロー金型は、後述するブロー工程で成形が完了した後に、容器(成形体)を取り出すため、通常、2つ以上の部材に分かれている(図5では、2分割)。
【0088】
−−配置−−
前記ブロー金型に前記結晶性高分子フィルムを配置する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ブロー金型に前記結晶性高分子フィルムを配置する方法の例を、図4A〜図4Dを参照して説明する。
図4Aは、扇形に加工した結晶性高分子フィルム41を示す図である。前記結晶性高分子フィルム41を治具42に取り付ける(図4B参照)。前記治具42は、前記ブロー金型の内壁とほぼ同じ角度(又は、前記ブロー金型にセットした際に下端に少し隙間が出来る角度)とすることが好ましい。図4B中、符号46は吸引穴を示し、矢印の方向に吸引することにより、結晶性高分子フィルム41を前記治具42に密着させることができる。
前記結晶性高分子フィルム41が密着させてずれないようにしたまま、前記結晶性高分子フィルム41を密着させた治具42を、前記ブロー金型(閉じたもの)の下から、金型内部に挿入する。
図4Cに示すようにブロー金型43には、エア吸引用のスリット44が設けられており、これにより、結晶性高分子フィルム41を吸引した後、前記治具42の吸引を止め、前記治具42をブロー金型から抜き取る。
これにより、結晶性高分子フィルム41をブロー金型に配置することができる。
なお、図4Dは、ブロー金型43の断面模式図であり、符号45は吸引ノズルを示し、矢印は吸引方向を示す。
【0089】
前記結晶性高分子フィルムには、接着剤を塗布することが好ましい。
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホットスタンプの熱転写フィルムに用いられる感熱接着剤、後述するブロー工程の加熱温度で活性化するホットメルト接着剤などが挙げられる。
前記ホットスタンプの熱転写フィルムに用いられる感熱接着剤としては、例えば、環化ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系などが挙げられる。
前記ブロー工程の加熱温度で活性化するホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン(APP)、エチレン−アクリル酸エチルコポリマー(EEA)、ポリアミド、ポリエステルなどをベースポリマーとしたものが挙げられ、これらベースポリマーに相溶する粘着付与剤として、ロジンおよびその誘導体やピネン系ポリマー、さらにワックス類を混合したものが挙げられる。
前記接着剤の塗布量としては、特に制限はなく、容器の商品形態に応じて、相溶性、粘着性を調整して、所望の張り付き強さが得られるようにする。これにより、使用後の容器から、前記結晶性高分子フィルムを剥がれやすくすることもできる。
【0090】
−プリフォーム配置工程−
前記プリフォーム配置工程は、前記結晶性高分子フィルムを配置した金型にプリフォームを配置する工程である。
【0091】
−−プリフォーム−−
前記プリフォーム(パリソンとも称する。)の材質、形状、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記プリフォームの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、射出成形法が挙げられる。
【0092】
−−配置−−
前記プリフォームを前記ブロー金型に配置する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記プリフォームを予備加熱した場合には、プリフォームの胴部の温度が所定の温度になった後、素早くブロー金型に配置することが好ましい。
【0093】
前記プリフォームは、ブロー金型に配置する前に予備加熱してもよい。
前記予備加熱の温度としては、特に制限はなく、プリフォームに用いた樹脂の種類、プリフォームの結晶化度、プリフォームの結晶サイズ、プリフォームの厚み、プリフォームの形状などに応じて適宜選択することができ、例えば、PET樹脂の場合では約90℃〜110℃で加熱することがある。
前記予備加熱の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、赤外線パネルヒータが挙げられる。
前記予備加熱の好ましい温度は、非接触式温度計などでプリフォーム胴部の温度を測定しながら加熱テストを行うことにより、決定することができる
【0094】
−ブロー工程−
前記ブロー工程は、前記プリフォームをブローし、容器を成形する工程である。
図5は、ブロー工程を説明するための模式図である。
前記ブロー工程では、ブロー金型51、及び52内に配置されたプリフォーム55に、エア流路59からプリフォーム内部へ高圧空気を導入しブローを行う。これにより、ブロー金型内部の形状に沿った形状の容器を得ることができる。
【0095】
前記ブローに際して、成形体(容器)の形状を安定的に得るため、又はその他必要に応じて、延伸ロッド58を用いての引き伸ばし(縦方向への延伸)を行ってもよい。前記延伸ロッド58を用いる引き伸ばしは、高圧空気を導入する前に行ってもよいし、高圧空気の導入と同時に行ってもよい。
図5の延伸ロッド58は、先端に延伸ロッドヘッド54が付いている。前記延伸ロッドヘッドの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上向きに丸みがある凸形状が挙げられる。
図5では、延伸ロッドヘッド54がプリフォーム55の先端内壁を押し上げている状態を示すが、延伸ロッド58が上昇する前は、延伸ロッドヘッド54はベース直上まで下がっており、プリフォーム55の先端内壁と延伸ロッドヘッド54は接触していない。
前記延伸ロッドは、例えば、油圧シリンダーによって持ち上げることができる。前記油圧シリンダーを持ち上げる速度(プリフォームを延伸する速度)としては、延伸ブローを行うことができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10cm/0.1sec〜10cm/2sec程度が、プリフォームがムラなく伸びる点で、好ましい。
前記延伸ロッドを持ち上げる距離としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ブロー金型のベース56の表面から、ブロー金型の天井(ブロー成形体の底が形成される部分)までの距離の50%〜80%が好ましい。
なお、図5に示すようにブロー成形体の開口部は下(ブロー金型のベース側)を向いている。
図5中、符号53は結晶性高分子フィルムを示し、符号56はベースを示し、符号57はガイドを示す。
【0096】
前記高圧空気の圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5MPa〜4MPaが好ましく、1MPa〜3MPaがより好ましく、1MPa〜2MPaが特に好ましい。前記圧力が、0.5MPa未満であると、充分膨らますことが出来ないことがあり、4MPaを超えると、ブローが均一にし難く、ブロー中に容器が破れることがある。一方、前記圧力が前記特に好ましい範囲内であると、安定して容器を膨らませることが出来る点で、有利である。
前記高圧空気の温度としては、特に制限はなく、プリフォームに用いた樹脂の種類、プリフォームの結晶化度、プリフォームの結晶サイズ、プリフォームの厚み、プリフォームの形状などに応じて適宜選択することができ、例えば、60℃が挙げられる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全ての本発明の技術的範囲に包含される。
【0098】
(製造例1−1)
極限粘度(IV)=0.72であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂)をスクリュー式の溶融押出し装置に、コートハンガータイプのダイヘッドを取り付けて255℃で押出し、15℃に冷却したキャスティングドラム上で固化させて、厚さ0.5mmのポリマーフィルムを得た。
このポリマーフィルムを1軸延伸(縦延伸)した。具体的には、42℃の加温雰囲気下で、6,000mm/minの速度でネッキング延伸(1軸)を行った。
なお、前記1段階の一軸延伸により、ポリマー成形体(ポリマーフィルム)は、5.2倍延伸された。
以上により、製造例1−1の結晶性高分子フィルムを作製した。前記結晶性高分子フィルムは、厚さが120μmであり、空洞(ボイド)を有し、金属様光沢を発現していた。また、前記フィルムは、フィルム表面から4μm〜10μmの深さにはボイドを有さず、空隙率(全体積に占める空洞体積の割合)は23%であった。
前記製造例1−1の結晶性高分子フィルムの電子顕微鏡により撮影した、図3Aにおける結晶性高分子フィルムのA−A’断面図を図8Aに示し、図3Aにおける結晶性高分子フィルムのB−B’断面図を図8Bに示す。
なお、前記延伸倍率は、一般的にroll to roll延伸で延伸ロールの速度差のことをいうが、ネッキング延伸の場合には、ロールの速度差が延伸フィルムの厚みに反比例しない。
【0099】
(製造例1−2)
極限粘度(IV)=0.67であるPET樹脂を、1軸溶融押出し装置にコートハンガータイプのダイヘッドを取り付けて290℃で押出し、58℃に冷却したキャスティングドラム上で固化させて、厚さ0.5mmのポリマーフィルムを得た。
このポリマーフィルムを遠赤外線ヒーターにより60℃に加熱し、5.5倍の1軸ネッキング延伸(延伸速度:6,000mm/min)を行った。
以上により、製造例1−2の結晶性高分子フィルムを作製した。前記結晶性高分子フィルムは、厚さが厚さ100μmであり、空洞を有し、金属光沢を発現していた。また、前記フィルムは、フィルム表面から4μm〜10μmの深さにはボイドを有さず、空隙率は19%であった。
【0100】
(比較製造例1)
極限粘度(IV)=0.68であるPET(ポリエチレンテレフタレート100%樹脂)をスクリュー式の溶融押出し装置に、コートハンガータイプのダイヘッドを取り付けて295℃で押出し、60℃に冷却したキャスティングドラム上で固化させて、厚さ0.5mmのポリマーフィルムを得た。
このポリマーフィルムを1軸延伸(縦延伸)した。具体的には、110℃の加温雰囲気下で、500mm/minの速度で延伸(1軸)を行った。
なお、前記1段階の一軸延伸により、ポリマー成形体(ポリマーフィルム)は、4.2倍延伸された。
以上により、比較製造例1の結晶性高分子フィルムを作製した。前記結晶性高分子フィルムは、厚さが120μmであり、空洞(ボイド)を有さず、金属様光沢を発現していなかった。
【0101】
前記製造例1−1〜1−2、及び比較製造例1のフィルムの構成などについて、表1にまとめて示す。
【0102】
【表1】

【0103】
(評価1)
前記製造例1−1〜1−2、及び比較製造例1で得られたフィルムについて、下記の評価を行った。
【0104】
(1)厚みの測定
キーエンス社製、ロングレンジ接触式変位計AF030(測定部)、AF350(指示部)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0105】
(2)遮光率の測定(遮光性)
日立製作所製分光光度計U−4100を用いて測定した。前記製造例1−1〜1−2、及び比較製造例1のフィルムの表面に垂直に波長550nmの光を入射させ、前記製造例1−1〜1−2、及び比較製造例1のフィルム(サンプル)を透過する光の強度と、前記製造例1−1〜1−2、及び比較製造例1のフィルムを置かないブランクの光の強度とを以下の評価基準で比較した。結果を表4に示す。
遮光率(%)=100−[{(サンプルの光の強度)/(ブランクの光の強度)}×100]
○・・・550nmの波長における遮光率が80%以上。
×・・・550nmの波長における遮光率が80%未満。
【0106】
(3)フィルム表面に最も近くに位置する空洞からフィルム表面までの距離の測定
前記製造例1−1〜1−2、及び比較製造例1−1のフィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図3D参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300倍〜3,000倍の適切な倍率で検鏡し、断面写真を撮像した。
撮像の際には、前記製造例1−1〜1−2、及び比較製造例1のフィルムを平面状に載置した状態で走査型電子顕微鏡にセットして撮像した。
前記断面写真内において、厚みの算術平均値Tを算出した。各前記製造例1−1〜1−2、及び比較製造例1のフィルムにおいて算出された厚みの算術平均値Tは、上記「(1)厚みの測定」で測定された厚み(表2参照)と同じであった。
次に、前記断面写真内において、厚み方向に平行な任意の一の直線を描画し、更に、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線を描画した。また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
そして、断面写真内の各空洞において、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とした。
そして、前記一の直線と前記他の直線とで挟まれた領域内において、空洞の中心から前記フィルム上面までの距離が最も近い10個の空洞を選択した。なお、前記「空洞の中心から前記フィルム上面までの距離」は、前記「空洞の中心」を中心とした円を描画する際に、描画する円の半径を順次大きくし、円弧が最初に前記フィルムの表面に接したときの円の半径とした。
そして、選択した10個の空洞について、各中心から前記フィルムの上面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)を下記(3)式により算出した。結果を表2に示す。
h(avg)=(Σh(i))/10 ・・・(3)
【0107】
フィルムの外観、厚み、h(ave)について、表2に示す。
【表2】

【0108】
(製造例2−1:PET樹脂を用いたプリフォームの成形)
ユニチカ製PETペレット(NEH2070)を用いてプリフォームを射出成形した。
射出温度は、ノズル先端から順に295℃−295℃−260℃−120℃−40℃とし、射出圧力2,000MPa、金型温度15℃とした。
以上により、製造例2−1のプリフォームを得た。
【0109】
(製造例2−2)
後述の実施例4、5の形状に適用するためボリュームを最適化した以外は、製造例2−1と同様に作製し、製造例2−2のプリフォームを得た。
【0110】
(実施例1)
前記製造例1−2の結晶性高分子フィルムと、前記製造例2−1のプリフォームを用い、以下のようにして、容器1を製造した。
【0111】
前記製造例1−2の結晶性高分子フィルムに所定の印刷を付した(EPSON社製 顔料インクジェットプリンターPX−9500Sを用いて、図10の意匠を印刷した)後、ブロー金型内壁に沿って、重なり、折れ曲がりがなく装着できるように、扇型にカットし、接着剤を塗布してインサートフィルムとした。前記接着剤として、エチレン−アクリル酸エチルコポリマー接着剤を使用した。
【0112】
前記結晶性高分子フィルムを図4Bに記載の治具に取り付け、矢印の方向に吸引することにより、結晶性高分子フィルムを治具に密着させた。
前記結晶性高分子フィルムを密着させた治具を、ブロー金型(閉じたもの)の下から、金型内部に挿入した。
その後、ブロー金型のエア吸引用のスリットから、結晶性高分子フィルムを吸引した後、前記治具の吸引を止め、治具をブロー金型から抜き取った。
以上により、結晶性高分子フィルムをブロー金型に配置した。
【0113】
前記結晶性高分子フィルムを配置したブロー金型に、予め加熱した前記製造例2−1のプリフォームをベース(56)の凸部にはめた状態でセットした。
前記プリフォームの加熱は、赤外線パネルヒータにより、前記プリフォームの胴部が90℃になるまで加熱した。
【0114】
次いで、高圧空気(圧力:2MPa、温度:100℃)の導入と同時に、延伸ロッドを油圧シリンダーにより、ブロー金型のベースの表面から、ブロー金型の天井(ブロー成形体の底が形成される部分)までの距離の80%まで、10cm/0.5secの速度で持ち上げた。
以上により、開口部の内径が75mm、高さが115mm、底面の外径が62mm、胴体部分の厚みが200μm(結晶性高分子フィルムの厚みは約100μm)の、結晶性高分子フィルムと容器とが一体化されてなる容器1を得た(図6参照)。
【0115】
前記容器1では、容器の胴部(側面)全体に結晶性高分子フィルムを配置した。このときの容器1の表面積(A)と、容器1における結晶性高分子フィルムの面積(B)との比(B/A)は、0.83(83%)であった。
また、前記容器1の側面の角部の曲率半径Rを三次元形状測定装置により測定したところ、容器底部のRの小さい部分でR=約42mmであった。
【0116】
(実施例2)
前記実施例1において、結晶性高分子フィルムをブロー金型に配置して容器をブロー成形していた点を、結晶性高分子フィルムをブロー金型に配置せず容器をブロー成形し、その後、結晶性高分子フィルムを容器に巻回した以外は、実施例1と同様にして、容器2を製造した。
前記ブロー成形した容器の胴部の厚みは、100μmであった。
前記容器への結晶性高分子フィルムの巻回は、前記結晶性高分子フィルムの巻き初めと巻き終わり(結晶性高分子フィルムの両端;図7のA部分)に、それぞれ2mm幅に接着剤を塗布し、ブロー成形した後の容器に巻回することにより行った(図7参照)。
【0117】
(実施例3)
前記実施例2において、結晶性高分子フィルムとして、前記製造例1−2の結晶性高分子フィルムを用いていた点を、前記製造例1−1の結晶性高分子フィルムに代えた以外は、実施例2と同様にして、容器3を製造した。
【0118】
(実施例4)
前記実施例1において、プリフォームとして、前記製造例2−1のプリフォームを用いていた点を、前記製造例2−2のプリフォームに代え、容器の形状を図6から以下の図9Aに変えた以外は、実施例1と同様にして、容器4を製造した。
前記容器4は、開口部の断面が□70mm、高さが100mm、底面の断面が□50mm、胴体部分の厚みが500μm(結晶性高分子フィルムの厚みは約120μm)である(図9A参照)。
前記容器4では、容器の胴部(側面)全体に結晶性高分子フィルムを配置した。このときの容器4の表面積(A)と、容器4における結晶性高分子フィルムの面積(B)との比(B/A)は、0.30(30%)とした。
また、前記容器4の側面の角部の曲率半径Rを三次元形状測定装置により測定したところ、容器底部のRの小さい部分でR=1mmであった。
【0119】
(実施例5)
前記実施例1において、プリフォームとして、前記製造例2−1のプリフォームを用いていた点を、前記製造例2−2のプリフォームに代え、容器の形状を図6から以下の図9Bに代えた以外は、実施例1と同様にして、容器5を製造した。
前記容器5は、開口部の断面が□70mm、高さが120mm、底面の断面が□40mm、胴体部分の厚みが500μm(結晶性高分子フィルムの厚みは約120μm)である(図9B参照)。
前記容器5では、容器の胴部(側面)全体に結晶性高分子フィルムを配置した。このときの容器5の表面積(A)と、容器5における結晶性高分子フィルムの面積(B)との比(B/A)は、0.30(30%)とした。
また、前記容器5の側面の角部の曲率半径Rを三次元形状測定装置により測定したところ、容器底部のRの小さい部分でR=0.8mmであった。
【0120】
(比較例1)
実施例2において、結晶性高分子フィルムを用いなかった以外は、実施例2と同様にして、容器6を製造した。
【0121】
(比較例2)
実施例1において、製造例1−2の結晶性高分子フィルムを用いていた点を、比較製造例1の空洞を含有しない結晶性高分子フィルムに代えた以外は、実施例1と同様にして、容器7を製造した。
【0122】
前記実施例1〜5、及び比較例1〜2の容器の構成などについて、表3にまとめて示す。
【0123】
【表3】

【0124】
(評価2)
前記実施例1〜5、及び比較例1〜2の容器について、下記の評価を行った。
【0125】
(1)断熱性(保温性)の測定
25℃の室内にて、容器に85℃の温水を上部つば部分までいっぱい入れ、容器の下から1/3の高さの容器の外面に温度計(熱電対)を貼り付けた。そして、温度計の温度変化を経時で測定した。
前記測定結果を基に以下の評価基準で評価した結果を表4に示す。
○: 3分後の容器外面と温水温度の差が10℃以上。
△: 3分後の容器外面と温水温度の差が5℃以上10℃未満。
×: 3分後の容器外面と温水温度の差が5℃未満。
【0126】
(2)強度の測定
容器に、付属の平型アタッチメントを取り付けたデジタルフォースゲージDS−2型((株)イマダ製)を圧縮用手動計測スタンドSV−1((株)イマダ製)にセットし、測定部を容器の側面の所定の位置に押し付け、3mm押し込んだ(変形した)ときのデジタルフォースゲージの値を計測した。このデジタルフォースゲージの値が大きいほど、強度が優れることを示す。
前記側面の所定の位置(測定位置)は、容器の開口部(上部)から底までの距離の1/2の位置とした。
前記結果を基に以下の評価基準で評価した結果を表4に示す。
◎:5N以上・・・問題なく普通に保持できる。
○:3N以上5N未満・・・少し柔らかいが何とか保持できる。
×:1.5Nより大きく3N未満・・・なんとか保持できるが、保持にかなりの注意を払う必要がある。小児などでは保持することが困難。
××:1.5N以下・・・容器が非常に脆弱で手で持つと容易につぶれてしまい、使用に耐えない。
【0127】
(3)容器側面の角部における結晶性高分子フィルム中の空洞の有無
サンプルを大きく切出し、樹脂包埋したのちミクロトームにより切断し、断面サンプルを得た。つぎに走査型電子顕微鏡にて断面を観察し、容器側面の角部における結晶性高分子フィルムの空洞の有無を調べた。
前記結果を基に以下の評価基準で評価した結果を表4に示す。
○:容器に巻回した後のフィルムの電子顕微鏡断面写真より測定した空洞部分の厚みが、容器に巻回する前のフィルムの電子顕微鏡断面写真より測定した空洞部分の厚みに対して、80%以上。
△:容器に巻回した後のフィルムの電子顕微鏡断面写真より測定した空洞部分の厚みが、容器に巻回する前のフィルムの電子顕微鏡断面写真より測定した空洞部分の厚みに対して、50%より大きく、80%未満。
×:容器に巻回した後のフィルムの電子顕微鏡断面写真より測定した空洞部分の厚みが、容器に巻回する前のフィルムの電子顕微鏡断面写真より測定した空洞部分の厚みに対して、50%未満(空洞がつぶれてしまっている)。
【0128】
(4)総合評価
以下の評価基準で、総合評価を行った結果を表4に示す。
○:前記各評価項目(遮光性、断熱性、強度、角部における空洞)に、1つも×、及び△がない。
△:前記各評価項目(遮光性、断熱性、強度、角部における空洞)に、少なくとも1つ△がある。
×:前記各評価項目(遮光性、断熱性、強度、角部における空洞)に、少なくとも1つ×、又は××がある。
【0129】
【表4】

【0130】
表4の結果から、空洞を内部に含有する結晶性高分子フィルムを巻回した実施例1〜5の容器1〜5は、空洞を内部に含有する結晶性高分子フィルムを巻回していない比較例1〜2の容器6〜7と比較して、総合的に優れた容器であることがわかった。
また、結晶性高分子フィルムと容器とを一体化した実施例1では、一体化していない実施例2〜3に比べ、優れた強度を有していることがわかった。
また、容器側面の角部のRが1mm以上である実施例1〜4の容器1〜4は、角部の空洞が特に保持されていた。
また、結晶性高分子フィルムと容器とを一体化した実施例1、4、及び5の中でも、比(B/A)が高い実施例1が特に優れていることがわかった。
以上の結果から、本発明の容器である実施例1〜5の容器は、強度、遮光性、及び保温性に優れると共に、容易に圧縮廃棄でき、リサイクル性に優れ、更に意匠性にも優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の容器は、強度、遮光性、及び保温性に優れると共に、容易に圧縮廃棄でき、リサイクル性に優れる、更に意匠性にも優れるため、例えば、飲料用容器などとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0132】
1 結晶性高分子フィルム
1a 表面
11 原料
12 押出機
13 Tダイ
14 キャスティングロール
15 縦延伸機
15a ロール
16 横延伸機
16a クリップ
100 空洞
F フィルム又はシート
L 空洞の配向方向における空洞の長さ
r 空洞の配向方向に直交する厚み方向における空洞の長さ
41 結晶性高分子フィルム
42 治具
43 ブロー金型
44 スリット
45 吸引ノズル
46 吸引穴
51 ブロー金型(1)
52 ブロー金型(2)
53 結晶性高分子フィルム
54 延伸ロッドヘッド
55 プリフォーム
56 ベース
57 ガイド
58 延伸ロッド
59 エア流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性を有するポリマーからなり、長尺状の空洞をその長さ方向が第1の方向に配向した状態で内部に含有する結晶性高分子フィルムを容器に巻回してなる容器であって、
前記結晶性高分子フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする容器。
h(avg)>T/100 ・・・(1)
但し、前記式(1)中、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。
【請求項2】
容器側面の角部の曲率半径Rが、1mm以上である請求項1に記載の容器。
【請求項3】
容器における結晶性高分子フィルムの厚みが、30μm以上500μm以下である請求項1から2のいずれかに記載の容器。
【請求項4】
容器の表面積(A)と、容器における結晶性高分子フィルムの面積(B)との比(B/A)が、1/4以上である請求項1から3のいずれかに記載の容器。
【請求項5】
結晶性高分子フィルムと、容器とが一体化してなる請求項1から4のいずれかに記載の容器。
【請求項6】
結晶性を有するポリマーからなり、長尺状の空洞をその長さ方向が第1の方向に配向した状態で内部に含有する結晶性高分子フィルムをブロー金型に配置する工程と、
前記結晶性高分子フィルムを配置したブロー金型にプリフォームを配置する工程と、
前記プリフォームをブローする工程とを含み、
前記結晶性高分子フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記結晶性高分子フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする容器の製造方法。
h(avg)>T/100 ・・・(1)
但し、前記式(1)中、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−116443(P2011−116443A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277878(P2009−277878)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】