説明

容器の判別方法

【課題】画像処理によって廃棄物中に混在しているペットボトルを確実に判別可能とする方法を提供する。
【解決手段】選別対象の容器を撮影する撮影工程S1と、前記撮影工程で撮影して得られた画像情報から二値化画像を作成する二値化工程S2と、前記二値化画像から前記容器の口部分の形状を抽出する口部分形状抽出工程S3と、前記口部分形状抽出工程で前記形状が抽出された二値化画像から容器の首部及び口部の幅を計測する工程S4・S5と、前記工程で計測された首部の幅及び口部の幅の計測値を演算し、演算して求めた演算値と事前に設定した閾値とを比較する形状判断工程S6とからなり、前記形状判断工程での前記比較結果に基づいて前記容器が判別対象の容器であるか否かを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル処理施設等において廃棄物中に混在するペットボトル(PET製容器)を判別する方法に関し、詳細には、廃棄物を撮像して得られた画像情報によってペットボトルを判別する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リサイクル処理施設等においては、飲料用容器(以下、「容器」という)のリサイクル対象物として、ペットボトル、アルミ製容器、ガラス瓶、プラスチック容器等、様々な種類の容器が回収されている。これらの容器は分別して回収されてはいるものの、該分別は完全ではなく、種類の異なる容器が混在した状態で回収されている。
【0003】
このため、リサイクル処理の前処理として、容器を種類毎に選別する必要があり、該選別を効率良く行うために、従来、画像処理を用いた各容器の判別方法が考えられている。例えば、ペットボトルを判別する方法として、特許文献1には、搬送されている容器を撮影し、撮影して得られた画像情報から、事前に登録されたペットボトルの外形及び口部の形状が抽出された容器をペットボトルと判別し選別することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−219128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、容器には様々な形状の物が存在し、ペットボトルに非常に類似した形状の容器(例えば、アルミ製容器等)も存在し、特許文献1に記載の判別方法では、同容器をペットボトルとして判別してしまうという問題が生じる。
【0006】
そこで本発明は、画像処理によって廃棄物中に混在しているペットボトルを確実に判別可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、被判別対象の容器を撮影する撮影工程と、該撮影工程で撮影して得られた画像情報から二値化画像を作成する二値化工程と、前記二値化画像から前記容器の口部分形状を抽出する口部分形状抽出工程と、該口部分形状抽出工程で前記口部分形状が抽出された二値化画像から容器の首部の幅を計測する首部幅計測工程と、前記口部分形状抽出工程で前記口部分形状が抽出された二値化画像から容器の口部の幅を計測する口部幅計測工程と、前記首部幅計測工程で計測された首部の幅の計測値と前記口部幅計測工程で計測された口部の幅の計測値との二つの計測値に基づいて判別値を求め、該判別値と事前に設定した閾値とを比較する形状判断工程とからなり、該形状判断工程での比較の結果に基づいて前記容器が判別目標の容器であるか否かを判断する、という技術的手段を講じた。
【0008】
また、前記演算値が、前記首部幅計測工程で計測された首部の幅の計測値と、前記口部幅計測工程で計測された口部の幅の計測値との差又は比であることを特徴とする。
【0009】
なお、本発明における容器の「口部分」とは、容器の口部(図4の符号B)とその付近を含む部分のことを示し、少なくとも容器の口部と首部(図4の符号A)とを含む部分のことである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の容器の判別方法によれば、ペットボトルに特有の形状である、口部の下方の首部の幅の値と口部の幅の値との二つの値を用いて判別値を求め、該判別値に基づいて判別を行うので、廃棄物中に混在するペットボトルを確実に判別することが可能となる。
【0011】
また、容器の判別を、口部分の形状と、前記判別値との2段階で行うことになるので、最初の判別となる、口部分形状による判別の判別基準を緩めに設定することが可能となり、一度での判別に比べ、ペットボトルの判別漏れを少なくすることができる。
【0012】
さらに、容器の口部分形状の画像情報のみを利用するので、容器本体が破損又は変形していても判別に影響がないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の方法の手順を示したフローチャートである。
【図2】本発明の方法に使用する装置の模式図である。
【図3】本発明の方法に使用する装置の模式図である。
【図4】撮影した容器がペットボトル(蓋有り)の場合の二値化画像の説明図である。
【図5】撮影した容器がペットボトル(蓋無し)の場合の二値化画像の説明図である。
【図6】撮影した容器がアルミ製容器の場合の二値化画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態を図1〜図6を参照しながら説明する。図1は、本発明の判別方法の手順を示したフローチャートである。図2及び図3は、本発明の実施の形態において使用する判別装置1の模式図であって、図2は容器の搬送方向下流側から見た図、図3は図2の模式図を上から見た図をそれぞれ示す。
【0015】
本実施の形態で使用される判別装置1は、容器2を搬送するコンベア3と、容器2に向けて光を照射する光源4と、容器2を撮影するために配置されるCCDエリアセンサを備えるカメラ5とを備えるものである。また、前記判別装置1は、前記カメラ5に接続されるコンピュータ7と、該コンピュータ7に接続されるモニタ8を備えるものである。
【0016】
本実施形態で使用する判別装置1は、コンベア3上を搬送されている容器をカメラ5により撮像し、当該撮像データ、即ちカメラ5におけるCCDエリアセンサの各画素出力をコンピュータ7に入力して画像処理(二値化処理等)し、容器の種類を判別するとともに、その結果をモニタ8等に出力するものである。
【0017】
前記光源4は、カメラ5で容器2を撮影するための照明であって、蛍光灯、LED又はハロゲンランプ等の一般的な照明手段を使用することが可能であり、配設する位置は特に限定されない。また、コンベア3上が、照明無しでもカメラ5での撮影が可能な程度に明るいのであれば、光源4を省略することが可能である。
【0018】
前記カメラ5は、CCDエリアセンサを備えるものであるが、容器の二値化画像を得られるものであれば、どの様な撮像手段でも用いることが可能である。
【0019】
前記判別装置1よりも上流側には、コンベア3上を搬送されている容器2を整列させるための整列装置(図示しない)が設けられている。このため、整列された状態で判別装置1に容器2が搬送されてくる。
【0020】
次に本実施形態の判別装置1の作用について説明する。まず、撮影工程(ステップS1)にて、コンベア3上を搬送されている容器2をカメラ5にて撮影し、該容器2の画像情報を取得する。
【0021】
前記撮影工程で撮影して得られた画像情報を、二値化工程(ステップS2)にて二値化処理し、判別する容器2の二値化画像を作成する。
【0022】
そして、口部分形状抽出工程(ステップS3)で、パターンマッチング等の画像処理手段によって、前記二値化画像から事前にペットボトルの口部分の形状として設定している形状を抽出する。図4に、前記二値化画像のうち、前記形状が抽出された画像を示す。なお、事前に設定する形状は一つに限定されるわけではなく、ペットボトルの口部分の形状として、複数の形状を設定し、これら複数の形状のいずれか一つにでも該当するのであれば抽出するようにすることも可能である。
【0023】
前記口部分形状抽出工程にて抽出する形状を容器2の全体でなく口部分に限定したのは、ペットボトルの容器全体の大きさ及び形状が様々で一定でないことにもよるが、回収後のペットボトルにおいて、最も形状が維持されている箇所が口部分であるからである。ペットボトルの口部分の下方側(飲料が貯留される部分)は、口部分に比べて変形しやすいので、リサイクル用廃棄物として収集されたペットボトルにおいては、その形状が変形しているものが多く含まれている。このため、形状の抽出には適さず、口部分の形状のみを抽出することが好ましい。
【0024】
口部分形状抽出工程にて口部分の形状が抽出されなかった場合は、その容器はペットボトルではない(非ペットボトル)と判断される。本発明においては、口部分形状抽出工程が最初の判別工程となる。
【0025】
口部分形状抽出工程で口部分の形状が抽出された場合は、首部幅計測工程(ステップS4)にて、容器の首部の幅を計測する。なお、首部とは、容器の口部(飲み口部)の下方の最も細い(幅の狭い)部分のことであり、図4に示すペットボトルの口部分の二値化画像においては、符号Aで示す部分である。
【0026】
容器2の二値化画像から首部を抽出する際は、該二値化画像の中で容器の画像と判断されている領域9で最も横幅の狭い位置を首部とし、該位置の幅を首部の幅とすればよい。
【0027】
首部幅の計測後、口部幅計測工程(ステップS5)にて、容器の口部の幅を計測する。なお、口部とは、容器の飲み口部分のことであり、図4に示すペットボトルの口部分の二値化画像においては、符号Bで示す部分である。
【0028】
なお、リサイクル処理施設に収集されるペットボトルには、蓋をした状態のものと、蓋が取り外されたものとが混在しており、蓋が取り外されているペットボトルの二値化画像は、図5に示すような形状となる。このため、図5の符号Dで示す部分の幅を口部の幅と認識してしまうと、首部及び口部の幅が同一又は略同一と計測されるおそれがある。
【0029】
このため、容器2の二値化画像から口部を抽出する際は、該二値化画像中で容器の画像と判断されている領域9で、前記首部幅計測工程にて首部とした位置よりも上方で、最も幅のある位置(図5の符号C)を口部とし、該位置の幅を口部の幅とすればよい。また、前記首部幅計測工程にて首部とした位置から2mm〜3mmほど上方の位置を口部とし、該位置の幅を口部の幅としてもよい。
【0030】
口部幅の計測後、形状判断工程(ステップS6)にて、計測した容器の首部幅の計測値及び口部幅の計測値を用いて演算を行い、演算して求めた値を判別値として、該判別値と事前に設定した閾値とを比較し、計測した容器がペットボトルであるかどうかを判断する。
【0031】
前記演算方法の一つとして、首部幅と口部幅との差を用いることができる。また、前記比較の方法として、例えば、前記閾値を1.4mmとした場合、前記差(判別値)が1.4mm以上であればペットボトル、1.4mm未満であればペットボトルではないと判断するようにすればよい。なお、閾値は適宜最適な値を設定すればよく、好ましくは1.0mm〜1.8mm、より好ましくは1.3mm〜1.5mmの範囲で設定すればよい。また、前記差は画素数など、その他の差の単位を用いてもよい。
【0032】
また、その他の演算方法として、首部幅と口部幅との比を用いることもできる。
【0033】
ところで、ペットボトルと外形が類似した容器としてアルミ製容器が存在する。図6は、ペットボトルに外形が類似するアルミ製容器の口部分を含む二値化画像を示したものである。該二値化画像は、ペットボトルの二値化画像と類似しており、前記口部分形状抽出工程で、ペットボトルとして抽出されることがある。これは、本発明が、リサイクル用に集められた、様々な形状のものが混在するペットボトルを扱うために、それら全てのペットボトルに対応した基準によって前記口部分形状抽出工程で抽出を行う必要があるため、前記基準を厳しくできない、という事情による。
【0034】
しかし、本発明では、口部分形状抽出工程後に、首部及び口部の幅をそれぞれ二値化画像から計測し、該計測により求めた計測値を演算することで、計測した容器がペットボトルであるかどうかを判断している。このため、例えば、図6に示す二値化画像において、首部幅と口部幅とが同一又は略同一である場合には、ペットボトルと異なる容器と判断可能である。
【0035】
本発明は、上記実施の形態に限らず発明の範囲を逸脱しない限りにおいてその構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の判別方法は、ペットボトルだけでなく、形状の一部分に特徴を有する物品であれば利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 判別装置
2 容器
3 コンベア
4 光源
5 カメラ
7 コンピュータ
8 モニタ
9 容器と判断されている領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被判別対象の容器を撮影する撮影工程と、
該撮影工程で撮影して得られた画像情報から二値化画像を作成する二値化工程と、
前記二値化画像から前記容器の口部分の形状を抽出する口部分形状抽出工程と、
該口部分形状抽出工程で前記口部分形状が抽出された二値化画像から容器の首部の幅を計測する首部幅計測工程と、
前記口部分形状抽出工程で前記口部分形状が抽出された二値化画像から容器の口部の幅を計測する口部幅計測工程と、
前記首部幅計測工程で計測された首部の幅の計測値と、前記口部幅計測工程で計測された口部の幅の計測値との二つの計測値に基づいて判別値を求め、該判別値と事前に設定した閾値とを比較する形状判断工程とからなり、
該形状判断工程での比較の結果に基づいて前記容器が判別目標の容器であるか否かを判別することを特徴とする容器の判別方法。
【請求項2】
前記判別値が、前記首部幅計測工程で計測された首部の幅の計測値と、前記口部幅計測工程で計測された口部の幅の計測値との差であることを特徴とする請求項1に記載の容器の判別方法。
【請求項3】
前記判別値が、前記首部幅計測工程で計測された首部の幅の計測値と、前記口部幅計測工程で計測された口部の幅の計測値との比であることを特徴とする請求項1に記載の容器の判別方法。
【請求項4】
判別目標の容器がペットボトルであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の容器の判別方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−88082(P2012−88082A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232894(P2010−232894)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】