説明

容器形成装置及び容器形成方法

【課題】容器の薄肉化を図り、その作成を容易とする。
【解決手段】壁部21及び壁部21の周縁に設けられている複数の接合部22を有する複数の板20の互いの接合部22を、壁部21によって多面体を形作るように、押さえつける押さえ治具63を備え、押さえ治具63によって互いに押さえつけられた接合部22同士を一括して圧着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器形成装置及び容器形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型の電子機器においては、その多機能化による消費電力の増加に対応した新たな電力源として燃料電池が注目されている。中でも、アルコール類及びガソリンといった液体燃料を改質して用いる改質型の燃料電池が、その原燃料が常温で液体であり取り扱いや貯蔵が容易であるという利点から一般的である。
【0003】
改質型燃料電池においては、液状の原燃料を気化する気化器と、気化した燃料から触媒を利用して改質して水素を取出す改質器、改質器の副反応によって発生する一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去器等といった反応器が設けられている。これらの反応器は高温で動作するため、断熱容器に収納されて保温されることが好ましい。
【0004】
断熱容器は内部に高温の溶液や反応器が収納され、外気との断熱により内部に収納された高温の溶液や反応器の熱を断熱容器の外側に放出させないためのものである。
【0005】
一方、パッケージの形成方法としては、図10に示すように、内容物1000が入った容体1001の上縁に金属メッキ1002を施し、その上に上蓋1003を載せ、レーザビーム等で容体1001の上縁と上蓋1003とを接合する方法がある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−46075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、容体1001のような構造体は、板材を折り曲げ加工したり、或いは複数の板材を接合することによって形成することができる。このようにして形成された容体1001の各辺をキャップ1003で接合することになる。
【0007】
折り曲げ加工して容体1001を形作る場合、容体1001の厚さが薄いと、容体1001の接合部と、キャップ1003の接合部との突合せ精度が低くなりやすく、特に小型のパッケージの場合、位置ズレが深刻なものとなり、仮に断熱容器に転用しようとすると、気密性が維持できずに十分に断熱できないといった問題を生じる恐れがある。
また、複数の板材を接合して容体1001を形作る場合も、容体1001の厚さが薄いと、容体1001を接合して形成する段階で容体1001が歪んでしまい、キャップ1003との接合部の突合せ精度が低くなるといった問題を生じていた。
【0008】
本発明の課題は、薄くても精度よく容器を作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、壁部及び前記壁部の周縁に設けられている複数の接合部を有する複数の板の互いの接合部を、前記壁部によって多面体を形作るように、押さえつける押さえ治具を備え、前記押さえ治具によって互いに押さえつけられた前記接合部同士を一括して圧着することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の容器形成装置であって、対向配置された一対の加圧治具をさらに備え、前記各加圧治具の間には、前記押さえ治具が配置され、前記加圧治具には前記押さえ治具を挟持して前記壁部の方向へ摺動させる摺動部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の容器形成装置であって、前記加圧部の先端部及び前記押さえ治具を囲む真空チャンバを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の容器形成装置であって、冷間圧接により前記接合部同士を圧着することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項2または3に記載の容器形成装置であって、前記加圧部の先端部及び前記押さえ治具を加熱する加熱装置を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の容器形成装置であって、ロウ付けまたは拡散接合により前記接合部同士を圧着することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の容器形成装置であって、前記多面体は直方体であり、前記接合部は、前記壁部の面に対して前記多面体の外側となる方向に45°に傾斜していることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、容器形成方法であって、壁部及び前記壁部の周縁に設けられている複数の接合部を有する複数の板の互いの接合部を、前記壁部によって多面体を形作るように、押さえつけて一括して圧着することを特徴とする。
【0017】
前記容器は、反応物が供給されて反応生成物を生成する反応部と、前記反応部を内部に収容する断熱容器とを備える反応装置を収容してもよい。
【0018】
前記反応装置は前記反応部への反応物の供給を行う流入部及び前記反応部から反応生成物の排出を行う流出部を備え、前記流入部及び前記流出部は前記いずれかの壁部を貫通している構造であってもよい。
【0019】
前記反応装置は、前記反応物が組成に水素原子を含む燃料及び水であり、前記反応生成物が水素分子を含むような反応である反応装置であってもよい。
【0020】
前記容器は、前記反応装置と、前記反応生成物の電気化学反応により電力を生成する燃料電池セルとを収容してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、薄くても精度よく容器を作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0023】
図1は本発明に係る容器10を示す斜視図であり、図2は図1のII−II切断線において切断した状態を示す斜視図である。図1、図2に示すように、容器10は、数cm角の略直方体形状をしており、複数の凹板20をその外周部で互いに接合して形成されている。
【0024】
図3は容器10に用いられる凹板20を示す斜視図である。凹板20は、略長方形状の壁部21と、壁部21の周縁の4辺に接合部22が設けられている。接合部22はそれぞれ壁部21の面に対して容器10の外側となる方向に45°に傾斜しており、これにより凹板20は盆状に形成されている。なお、容器10を断熱容器として用いる場合には、壁部21の内側となる面に容器10内部で生じる熱輻射を反射して容器10外への輻射を抑制する輻射防止膜が形成される。輻射防止膜は、例えば金(Au)等から形成することができる。
接合部22が隣接する他の凹板20の接合部22と接合されることで、図1、図2に示すように容器10が形成される。
【0025】
凹板20の素材は、用途や目的に合わせて適宜選択可能であるが、薄肉化が可能となるように軽量かつ充分な強度を有する素材が望ましい。このような素材としては、例えばチタン合金、ニッケル合金、ステンレス合金等が挙げられる。凹板20はプレス成型により成型される。
【0026】
図4は容器10を使用した反応装置30を示す断面図である。反応装置30の内部には、例えば図4に示すように、反応器40が収容される。このような反応器40の例としては、例えば燃料電池や、燃料電池に用いる水素を原燃料から生成する改質器や一酸化炭素除去器、液体の原燃料を気化させる気化器、燃料電池のオフガスを燃焼する触媒燃焼器等が挙げられる。
【0027】
反応器40には外部から反応器40に反応物を流入させる配管を有する流入部41や流入部41から流入した反応物を反応させてなる生成物を反応器40の外部へ流出させる配管を有する流出部42が設けられている。流入部41及び流出部42は容器10のいずれかの凹板20の壁部21を貫通した状態でその凹板20に固定されている。流入部41及び流出部42の壁部21への固定は、ロウ付け、ガラス封止等により行われる。流入部41及び流出部42を介して反応器40は壁部21の内壁面と間隔を空けて容器10内に固定される。
【0028】
次に、容器10の組立装置50について説明する。図5は容器10の組立装置50を示す概略図である。組立装置50は、高温真空加熱装置51と、圧延装置60とからなる。
高温真空加熱装置51は、真空チャンバ52と、真空ポンプ53と、加熱装置54とを備える。
【0029】
真空チャンバ52は圧延装置60の加圧部61の先端部分を覆うように設けられている。真空チャンバ52内は真空ポンプ53により負圧(10-4Pa程度)に保たれる。負圧の環境下で圧着を行うことにより、接合面の不純物を取り除くことができ、圧着に必要な押圧力を小さくすることができる。また、完成した容器10内を負圧(10-4Pa程度)にすることで、熱を伝搬する媒体が希薄になり容器10を断熱容器として最適に用いることができる。
【0030】
加熱装置54は、真空チャンバ52内に加熱部55を備える。加熱部55は例えばヒーターコイルまたは高周波誘導コイルであり、加圧部61A,61Bの先端部分を加熱する。加圧部61A,61Bの先端部分を加熱することで、後述するようにロウ付けや拡散接合による圧着が可能となる。
【0031】
圧延装置60は下部加圧部61A及び上部加圧部61Bを備え、その先端部が真空チャンバ52内に配置されている。加圧部61A,61Bの先端にはそれぞれ下部加圧治具62A及び上部加圧治具62Bが設けられ、加圧治具62A,62Bの間に押さえ治具63A,63B,63Cが設けられている。加圧治具62A,62Bの材料としては、例えばモリブデン合金等の高融点金属を用いることができる。また、押さえ治具63A,63B,63Cの材料としては、例えばセラミック等を用いることができる。
【0032】
図6は加圧部61A,61Bの先端に設けられた加圧治具62A,62B及び押さえ治具63A,63B,63Cを示す模式図である。2つの加圧治具62A,62Bはそれぞれ上下の加圧部61A,61Bに固定されている。上部加圧治具62Bの下面、及び下部加圧治具62Aの上面には、それぞれ四角錐台形状の凹部64B,64Aが形成され、凹部64A,64B内は押さえ治具63A,63B,63C及び組み立てられる複数の凹板20が収容される空間になっている。なお、凹部64A,64Bの形状は作製する容器10の形状により異なり、例えば多角柱状の容器を形成する場合には多角錐台形状の凹部を形成する。
【0033】
凹部64A,64Bの底部には、それぞれ下部押さえ治具63A、上部押さえ治具63Bが配置されている。凹部64の4つの傾斜面には、上下の加圧治具62A,62Bで挟持するように4つの側部押さえ治具63Cが配置されている。
【0034】
下部押さえ治具63Aは、下部加圧治具62Aの凹部64Aの底部に配置され、上面に容器10の底面となる底部凹板20Aが配置されている。下部押さえ治具63Aの上面の周縁部は面取りされており、底部凹板20Aの接合部22と当接する押圧部65Aとなっている。
【0035】
4つの側部押さえ治具63Cは、外側面で凹部64A,64Bの傾斜面に当接し、内側面に容器10の側面となる側部凹板20Cがそれぞれ配置されている。側部押さえ治具63Cの内側面の周縁部は面取りされており、側部凹板20Cの接合部22と当接する押圧部65Cとなっている。
【0036】
4枚の側部凹板20Cは底部凹板20Aに対して垂直に配置され、各側部凹板20Cの下側の接合部22が底部凹板20Aの4辺の接合部22とそれぞれ当接した状態で押圧部65A,65Cにより挟持される。また、図示しないが、側部凹板20Cの両側部の接合部22は隣接する他の側部凹板20Cの接合部22と当接した状態で押圧部65C,65Cにより挟持される。
【0037】
上部押さえ治具63Bは、下面が上部凹板20Bと当接し、上面が上部加圧治具62Bの凹部64Bの底部に当接するように配置されている。上部押さえ治具63Bの下面の周縁部は面取りされており、上部凹板20Bの接合部22と当接する押圧部65Bとなっている。
上部凹板20Bはその4つの接合部22が各側部凹板20Cの上部の接合部22と当接した状態で押圧部65B,65Cにより挟持される。
【0038】
圧延装置60を駆動して下部加圧治具62Aと上部加圧治具62Bとが近づく方向に加圧すると、下部押さえ治具63Aが下部凹板20Aを上方向に押さえるとともに、上部押さえ治具63Bが上部凹板20Bを下方向に押さえる。また、側部押さえ治具63Cが凹部64A,64Bの傾斜面に沿って摺動し側部凹板20Cを内側方向に押さえる。これにより、各凹板20A,20B,20Cの隣接する接合部22同士が押さえ治具63A,63B,63Cにより挟持された状態で押圧される。
【0039】
この組立装置50は、ロウ付け、冷間圧接、拡散接合に兼用で用いることができる。ここで、それぞれの接合方法について説明する。
【0040】
1.ロウ付け
ロウ付けは、ロウ材を加熱し溶解し接合面で再固着させて行う方法であり比較的扱いやすい。面接合では、接合強度と使用温度が選定したロウ材の許す範囲であれば十分に利用できる。そのため、接合部22を持つ凹板20同士の接合には有効な手段である。ロウ付けにより接合を行う際は、接合部22の接合面にロウ材を塗布しておく必要がある。
【0041】
ロウ付けによる容器10の組立方法について説明する。まず、下部加圧治具62Aと上部加圧治具62Bとの間に押さえ治具63A,63B,63C及び凹板20A,20B,20Cを図6の状態に配置し、各凹板20A,20B,20Cの隣接する接合部22同士が押さえ治具63A,63B,63Cにより挟持する。次に、真空ポンプ53を駆動し、真空チャンバ52内を負圧(10-4Pa程度)にする。その後、圧延装置60を駆動して下部加圧治具62Aと上部加圧治具62Bとが近づく方向に加圧する。
【0042】
次に、加熱装置54を駆動して加熱部55により加圧部61部分を加熱すると、ロウ材が溶解して接合部22の隙間等に流れ込み隙間を埋める。その後、冷却することでロウ材が固化し、接合が完了する。
【0043】
ロウ材を塗布して行う場合は、接合面の形状は平坦な方が良い。また圧延装置60は、接合部22の接合面に設けられたロウ材が溶解する際に接合面から多量に漏洩しない程度に凹板20A,20B,20Cを加圧するので、接合部22間でロウ材が溶解して、接合前にロウ材が固化していた接合部22の隙間を密接に埋めてくれるため、張り合わせ精度はあまり高くなくとも良好な接合が可能である。
【0044】
2.冷間圧接
冷間圧接とは、常温下において、洗浄を行った接合面同士を密着させて金属結合を促す方法である。常温下で圧接を行うため、入熱によるゆがみが生じにくい利点がある。この場合、接触部の隙間を作らないために、接合面の淵、もしくは平面上に凸型のラインを作製することが好ましい。接合面に凸型のラインを作成すると、加圧時に、ラインがつぶれ密着性が増す。
【0045】
冷間圧接による容器10の組立方法について説明する。まず、下部加圧治具62Aと上部加圧治具62Bとの間に押さえ治具63及び凹板20を図6の状態に配置する。次に、真空ポンプ53を駆動し、真空チャンバ52内を負圧(10-4Pa程度)にする。その後、圧延装置60を駆動して下部加圧治具62Aと上部加圧治具62Bとが近づく方向に加圧し、接している接合部22同士を圧接する。
以上により、接合面同士が圧着し、接合が完了する。
【0046】
3.拡散接合
熱拡散を用いた接合の場合、圧接による金属結合のほかに接合面での相互拡散が生じる。このため、選定した方法の中では、最も強固で信頼性の高い接合方法と思われる。この場合も、冷間圧接と同様に、接合面上に凸型のラインがあるほうが好ましい。
【0047】
次に、拡散接合による容器10の組立方法について説明する。まず、下部加圧治具62Aと上部加圧治具62Bとの間に押さえ治具63及び凹板20を図6の状態に配置する。次に、真空ポンプ53を駆動し、真空チャンバ52内を負圧(10-4Pa程度)にする。
【0048】
次に、圧延装置60を駆動して下部加圧治具62Aと上部加圧治具62Bとが近づく方向に加圧する。その後、加熱装置54を駆動して加熱部55により加圧部61部分を加熱する。以上により、接合部22同士が相互拡散して圧着し、接合が完了する。
このように、組立装置50を用いることで、容易に容器10を作成することができる。
【0049】
図7は加圧部61に設けられた加圧治具62及び押さえ治具63の他の形態を示す模式図である。いずれかの凹板20を流入部41及び流出部42が貫通し、容器10の内部に反応器40が収容される場合には、図7に示すように、流入部41及び流出部42が貫通する凹板20と対応する押さえ治具63に、凹板20から突出する流入部41及び流出部42が配置される凹部66を設ける。この状態で上記いずれかの方法により容器10を組み立てることができる。
【0050】
このように形成した容器10では、壁部21よりも外側に突出した接合部22が骨組みとして機能するため、容器10の薄肉化を図りながら強度を高めることができる。
また、接合部22が凹板20から容器10の外側に突出する形状となるため、容器10とこれが設置される装置筐体とが接合部22において線接触する。このため、容器10から装置への熱伝導を抑えることができ、断熱容器としての性能を向上させることができる。このように、組立装置50は、加圧治具62で複数の接合部22を保持しながら複数の接合部22を同時に接合するので良好に接合できる。
なお、接合部22に放熱フィンを設け、積極的に放熱を行うようにさせてもよい。
【0051】
図8は容器10の他の使用例を示す断面図である。図8に示すように、凹板20の外側に平板23を配置した状態で、平板23の周縁部と接合部22の外側端部とを接合することで、凹板20と平板23との間に断熱空間24を形成してもよい。これにより、熱伝導をさらに抑えることができ、断熱容器としての性能をさらに向上させることができる。
【0052】
なお、以上の実施形態においては、略直方体形状の容器10について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば正四面体形状、正六面体形状、正八面体形状等、複数の凹板を接合してなる任意の多面体形状とすることができる。ただし加圧治具62によって加えられる圧力が均等に分散されるように、接合された容器10が上下、左右が対称の構造となるような多面体であることが好ましい。
【0053】
図9は本発明に係る容器10が適用される電子機器100を示すブロック図である。この電子機器100はノート型パーソナルコンピュータ、PDA、電子手帳、デジタルカメラ、携帯電話機、腕時計、ゲーム機器等といった携帯型の電子機器である。
【0054】
電子機器100は、燃料電池装置101と、燃料電池装置101により生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換するDC/DCコンバータ191と、DC/DCコンバータ191に接続される二次電池192と、DC/DCコンバータ191から供給される電気エネルギーにより駆動される電子機器本体193と、等から概略構成される。
【0055】
燃料電池装置101は後述するように、電気エネルギーを生成しDC/DCコンバータ191に出力する。DC/DCコンバータ191は燃料電池装置101により生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換したのちに電子機器本体193に供給するとともに、燃料電池装置101により生成された電気エネルギーを二次電池192に充電する。
【0056】
次に、燃料電池装置101について説明する。この燃料電池装置101は、DC/DCコンバータ191に出力する電気エネルギーを生成するものであり、燃料容器102、ポンプ103、気化器104、改質器105、一酸化炭素除去器106、燃料電池セル107、触媒燃焼器108等を備える。
【0057】
燃料容器102には、液体の原燃料(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル)と水との混合液が貯留されている。なお、液体の原燃料と水とを燃料容器102内で別々に貯留してもよい。
燃料容器102内の混合液は、ポンプ103により気化器104に送液される。
【0058】
気化器104は燃料容器102から送られた混合液を改質器105や図示しないヒータ等からの伝熱等により約110〜160℃程度に加熱し、気化させる。気化器104で気化した混合気は改質器105へ送られる。
【0059】
改質器105は内部に流路が形成され、流路の壁面に改質触媒が担持されている。改質触媒としては、Cu/ZnO系触媒やPd/ZnO系触媒等が用いられる。改質器105は気化器104から送られる混合気を約300〜400℃程度に加熱し、流路内の触媒により改質反応を起こさせる。すなわち、原燃料と水の触媒反応によって、燃料としての水素、二酸化炭素、及び、副生成物である微量な一酸化炭素等の混合気体(改質ガス)が生成される。
【0060】
ここで、原燃料がメタノールの場合、改質器105では主に次式(1)に示すような主反応である水蒸気改質反応が起こる。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 …(1)
なお、化学反応式(1)についで逐次的に起こる次式(2)のような副反応によって、副生成物として一酸化炭素が微量に(1%程度)生成される。
2+CO2→H2O+CO …(2)
(1)式及び(2)式の反応による生成物(改質ガス)は一酸化炭素除去器106に送出される。
【0061】
一酸化炭素除去器106の内部には流路が形成され、その流路の壁面に一酸化炭素を選択的に酸化する選択酸化触媒が担持されている。選択酸化触媒としては、例えばPt/Al23等を用いることができる。
【0062】
一酸化炭素除去器106には改質器105で生成された改質ガス及び、外部の空気が送られる。改質ガスが空気と混合して一酸化炭素除去器106の流路を流れ、約110〜160℃程度に加熱される。そして、改質ガスのうち一酸化炭素が触媒により次式(3)のような主反応により優先的に酸化される。これにより主生成物として二酸化炭素が生成され、改質ガス中の一酸化炭素を燃料電池セル107に供給可能な10ppm程度まで低濃度化することができる。
2CO+O2→2CO2 …(3)
一酸化炭素除去器106を通過した改質ガスは燃料電池セル107に送出される。
【0063】
燃料電池セル107は固体高分子型燃料電池であり、固体高分子電解質膜171と、固体高分子電解質膜171の両面に形成された燃料極172(アノード)及び酸素極173(カソード)と、燃料極172に改質ガスを供給する燃料供給流路174aが設けられた燃料極セパレータ174と、酸素極173に酸素を供給する酸素供給流路175aが設けられた酸素極セパレータ175と、が積層されている。
【0064】
固体高分子電解質膜171は水素イオンを透過するが、酸素分子や水素分子、電子を通さない性質を有する。
燃料極172には燃料供給流路174aを介して一酸化炭素除去器106から送出された改質ガスが送られる。燃料極172では改質ガス中の水素による次式(4)のような反応が起こる。
2→2H++2e- …(4)
生成した水素イオンは固体高分子電解質膜171を透過して酸素極173に到達する。生成した電子はアノード出力電極176に供給される。
【0065】
酸素極173には、空気が酸素供給流路85aを介して送られる。酸素極173では固体高分子電解質膜171を透過した水素イオンと、空気中の酸素とカソード出力電極177より供給される電子とにより、次式(5)に示すように水が生成される。
2H++1/2O2+2e-→H2O …(5)
アノード出力電極176及びカソード出力電極177は外部回路であるDC/DCコンバータ191と接続されており、アノード出力電極176に到達した電子はDC/DCコンバータ191を通ってカソード出力電極177に供給される。
【0066】
触媒燃焼器108の内部には流路が形成され、その流路の壁面に燃料供給流路174aを通過した改質ガス(オフガス)を燃焼させる燃焼触媒が担持されている。燃焼触媒としては、例えばPt/Al23等を用いることができる。
【0067】
触媒燃焼器108には燃料供給流路174aを通過した改質ガス(オフガス)及び外部の空気が送られ、改質ガス中に残留する水素が空気により燃焼される。燃焼熱は改質器105に供給され、改質器105における改質反応の反応熱として用いられる。
【0068】
改質器105、一酸化炭素除去器106及び触媒燃焼器108は断熱容器110内に収容される。また断熱容器110内に気化器104の一部もしくは全部を収容させてもよい。本発明に係る容器10は、この断熱容器110として用いることができる。本発明を断熱容器110に適用することで熱伝導を抑えることができ、断熱性能を向上させることができる。
なお、燃料電池として反応温度が数百℃〜千数百℃の固体酸化物型燃料電池を適用する場合、一酸化炭素除去器106が不要となり、断熱容器110内に固体酸化物型燃料電池を収容させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る容器10を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II切断線において切断した状態を示す斜視図である。
【図3】容器10に用いられる凹板20を示す斜視図である。
【図4】容器10の使用例を示す断面図である。
【図5】容器10の組立装置50を示す概略図である。
【図6】加圧部61に設けられた加圧治具62及び押さえ治具63を示す模式図である。
【図7】加圧部61に設けられた加圧治具62及び押さえ治具63の他の形態を示す模式図である。
【図8】容器10の他の使用例を示す断面図である。
【図9】本発明に係る容器10が適用される電子機器100を示すブロック図である。
【図10】従来の断熱容器の形成方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0070】
10 容器
20A,20B,20C 凹板
21 壁部
22 接合部
23 平板
30 反応装置
40 反応部
41 流入部
42 流出部
50 容器形成装置
52 真空チャンバ
54 加熱装置
61A,61B 加圧部
62A,62B 加圧治具
63A,63B,63C 押さえ治具
64 摺動部
100 電子機器
101 燃料電池装置
105 改質器(反応部)
107 燃料電池セル
193 電子機器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部及び前記壁部の周縁に設けられている複数の接合部を有する複数の板の互いの接合部を、前記壁部によって多面体を形作るように、押さえつける押さえ治具を備え、
前記押さえ治具によって互いに押さえつけられた前記接合部同士を一括して圧着することを特徴とする容器形成装置。
【請求項2】
対向配置された一対の加圧治具をさらに備え、
前記各加圧治具の間には、前記押さえ治具が配置され、
前記加圧治具には前記押さえ治具を挟持して前記壁部の方向へ摺動させる摺動部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の容器形成装置。
【請求項3】
前記加圧部の先端部及び前記押さえ治具を囲む真空チャンバを備えることを特徴とする請求項2に記載の容器形成装置。
【請求項4】
冷間圧接により前記接合部同士を圧着することを特徴とする請求項3に記載の容器形成装置。
【請求項5】
前記加圧部の先端部及び前記押さえ治具を加熱する加熱装置を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の容器形成装置。
【請求項6】
ロウ付けまたは拡散接合により前記接合部同士を圧着することを特徴とする請求項5に記載の容器形成装置。
【請求項7】
前記多面体は直方体であり、前記接合部は、前記壁部の面に対して前記多面体の外側となる方向に45°に傾斜していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の容器形成装置。
【請求項8】
壁部及び前記壁部の周縁に設けられている複数の接合部を有する複数の板の互いの接合部を、前記壁部によって多面体を形作るように、押さえつけて一括して圧着することを特徴とする容器形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−61487(P2009−61487A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232780(P2007−232780)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】