説明

封入されたポリ不飽和脂肪酸

本発明は、ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する油を含有する粒子の製造方法、前記方法により得られることが可能な粒子、及び70℃を上回る温度での油中でのPUFAsの安定性増加方法に関する。この方法は、PUFAsが豊富な油を封入する粒子の形でガラス状材料を得るための、PUFAsが豊富な油のエマルションを炭水化物マトリックス内で製造する工程及びエマルションを低温液体中に押出する工程を伴う。本発明は更に、本発明の粒子を含有する食品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)が豊富な油を含有する粒子の製造方法、炭水化物材料中に分散された、PUFAsが豊富な油を含有する粒子、及び70℃を上回る温度での油中でのPUFAsの酸化防止及び/又は安定性増加のための方法に関する。本発明は更に、前記粒子を含有する食品に関する。
【0002】
発明の背景及び解決課題
ヒトの健康に対するポリ不飽和脂肪酸(PUFAs)の有益な効果は、繰り返し確認されている。PUFAsのうち、特に長鎖のオメガ−3脂肪酸、例えばエイコサペンタエン酸(EPA)又はドコサヘキサエン酸(DHA)は例えば、血清コレステロールレベルを低く維持し、不規則な心臓拍動を安定化し、血圧を減少し、自己免疫疾患を改善し、うつ病を改善し、そして大腸癌を予防することが示されている。
【0003】
これらの及びその他の健康的な有益性からPUFAsを、経口摂取可能な物質、例えば食品、栄養補助剤、飲料、錠剤に対する、機能性添加剤として提供することが一般的な興味となっている。
【0004】
ヒトの食料品又はサプリメントの要素へのPUFAsの添加はしかしながら、PUFAsが酸化しやすいために問題である。いたるところに存在する酸素の存在中では、PUFAsを含有する油は、迅速に酸敗し、かつ忌避的な臭気及び風味を生じ、従って酸化されていない状態においでですら問題のない消費に対して障害を引き起こす。
【0005】
高温ではPUFAsの酸化は、反応速度論の理由から更に促進され、これは、熱処理を伴う食品製造又は封入プロセスにおけるPUFAsの使用の困難性を説明する。
【0006】
上述の問題と取り組むための基本的な解決策は、酸化防止剤をPUFAsが豊富な油中に添加することを提案する。Daeseok et al, "Solubilisation of Vitamin C in Fish Oil and Synergistic Effect with Vitamin E in retarding Oxidation", JOACS, Vol. 68, No. 10, (1991年10月)は、周囲温度での組み合わせた酸化防止剤、ビタミンE及びCの相乗作用を見出した。貯蔵可能かつ安定な、PUFAsの調製物を提供するための多くの公知技術の解決策は従って、PUFAsを含有する油中でのビタミンC及びビタミンEの相乗作用を活用する。
【0007】
Ock-Sook et al "Synergistic Antioxidative Effects of Tocopherol and Ascorbic Acid in Fish oil/Lecithin/Water system"は、少なくとも0.01〜0.02%の添加されたアスコルビン酸が、魚油の安定化において、添加されたδ−トコフェロールとの考慮できるほどの相乗作用を得るために必要であると結論づけている。この参照文献はしかしながら、80℃を上回る温度でのPUFAsの挙動については記載しておらず、加えて、基本的に理論的であって、かつ、中期間又は長期間の貯蔵可能なPUFAsの形態を提供するための製造方法におけるPUFAsの処理を伴う、実際的かつより複雑な系に関連したものではない。
【0008】
酸化防止剤の添加と組み合わせて、PUFAsが豊富な油は、酸素との接触を妨げるとの、そして容易に処理可能であり、かつ食品又はその他の消費可能な物品と組み合わせることができる材料を提供するとの意図でもって封入されている。有利な封入系は、噴霧乾燥を含む。
【0009】
US 2003/00444490 A1は、PUFAs、デンプンへと変換されるデンプン加水分解産物及び更に選択的な成分を含有する、乾燥した安定な油組成物を開示し、前記組成物は、前述の成分をベースとするエマルションの凍結乾燥又は噴霧乾燥により得られる。この公知技術文献において開示される方法はしかしながら、60%までの水含有率を有するエマルションの乾燥のために、極めてエネルギー消費性であるようである。加えて、この文献は、この得られる噴霧乾燥した粒子の表面上に残留する油(未だ酸化しやすい)の問題について言及していない。更に、噴霧乾燥した粒子はしばしば、極めて小さくつ多孔性であり、酸素は迅速に前記孔を通じて拡散し、かつPUFAsと接触できる。
【0010】
US 6,048,557は、水溶性の多孔性キャリアー粒子を開示し、前記粒子の上にPUFAsは被覆又は吸収されている。多孔性キャリアーの被覆又は吸収はしかしながら、前記粒子の表面上に保護されていないPUFAsを生じ、この結果ここに教示されているPUFAsを酸素に曝し、従ってこのPUFA調製物を、周囲温度での貯蔵に不適当なものにする。
【0011】
不安定性材料を、押出された、ガラス状の湿分安定性基材中に固定する方法は、US 5,972, 395に教示されている。相応して、均質な基材が、特定の量の、炭水化物、糖アルコール、及びその他の成分からなるいかなる添加される湿分なしに、スクリュー押出機中で加工される。しかしながら、スクリュー押出機は、高い圧力で、かつこのスクリューの剪断力下で運転し、これは感受性であるPUFAsには通常は致命的である。従って、PUFAsが豊富なカプセルの製造において、高圧及び剪断力の使用を回避する方法を得ることが有利である。加えて、この文献の例はしかしながら、この不安定性材料がその他の成分と混合可能でない場合には、少量(11%以下)の不安定性材料のみが封入されることができることが明らかになっている。この公知技術の観点において、PUFAsのより高い負荷を有する、安定な、粉末化された調製物を提供することが望ましい。
【0012】
この公知技術の観点において、PUFAsの安定性を保証する形態で、数ヶ月の時間範囲にわたり室温でPUFAsを提供することに対して必要性が存在する。言い換えれば、PUFAsは、貯蔵安定な製品への適用を可能にする様式で封入されていることが望ましい。特に、封入されたPUFAsを提供する必要性があり、その際カプセルは、酸素に対する顕著なバリヤーを提供し、かつ、公知技術の比較可能な系と比較してより高い負荷の、封入すべきPUFAsが豊富な油を有する。他方では、PUFAsに対する高温の暴露を伴う方法において、この封入プロセスの間の酸化及び、結果として発生する異味を妨げつつ、PUFAsを封入する可能性を提供することが目的である。公知技術のPUFAsを封入するための多くの提案の観点において、PUFAsの封入のための様々な方法、有利にはコストに対して効果のより高い方法を提供することが更なる課題である。
【0013】
更に、十分に高いガラス転移温度(TG)を有するカプセルを室温での安定性を保証すべく提供することが課題である。有利には、封入性粒子を含有する粉末のTGは25℃より高く、更には30℃より高いことが望ましい。
【0014】
更に、上述の利点がパイロットプラント及び/又は工業規模で維持される方法を提供することが課題である。
【0015】
更に、PUFAsを有する食品を、貯蔵時間及び/又は保存期限にわたり食品の官能特性を変更することなしに提供することが本発明の課題である。
【0016】
発明の要旨
驚くべきことに、本発明の発明者は、PUFAsが豊富な油を、70℃を上回る、所望の場合には100℃をも上回る温度を伴う方法において、封入するための方法を見出した。意外にもこの方法により封入される油は、悪臭又は異味を発達させることなしに数ヶ月にわたり貯蔵安定性なままであった。本発明の方法は、比較的高い負荷の封入された油を有するものの、カプセルの表面上に取るに足らない量の残留する油を有する有利なカプセルを提供する。更に、前記カプセルは意外にも、有効な酸素バリヤーを提供し、かつこれを酸化−感受性材料を封入するために適したものにする。
【0017】
相応して、本発明は、第一の観点において、ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する油を含有する粒子の製造方法であって、この方法が次の工程:
−水を少なくとも1つの炭水化物材料に添加して、水性混合物を得る工程;
−この水性混合物を加熱して濃縮したシロップを形成する工程;
−場合により酸化防止剤を含有するPUFAsが豊富な油を、濃縮したシロップ中で乳化してエマルションを得る工程;
−このエマルションをダイを通じて押出して押出されたエマルションを得る工程;
−この押出されたエマルションを、低温液体中に装入又は滴下することにより冷却して固体の押出された材料を形成する工程;
−この固体の押出された材料を溶媒液体で洗浄する工程、及び
−前記材料を乾燥させる工程
を含む、ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する油を含有する粒子の製造方法を提供する。
【0018】
第二の観点において、本発明は、炭水化物材料中に分散された、PUFAsが豊富な油を含有する粒子において、前記粒子がこの粒子の合計質量の、残留表面油含有量≦0.2%を有することを特徴とする、PUFAsが豊富な油を含有する粒子を提供する。
【0019】
第三の観点において、本発明は、70℃を上回る温度での油中でのPUFAsの酸化防止のため及び/又は安定性増加のための方法であって、油に、レシチン少なくとも0.6%を、70℃を上回る温度に油を曝す前に添加する工程を含む方法を提供する。
【0020】
更なる観点において、本発明は、本発明の粒子を含有する食品を提供する。
【0021】
本発明の粒子は、極めて限定された量の表面油のために、延長された貯蔵時間の間に、より少ない魚の風味になるか又は全く魚の風味を有さないという利点を有する。同時に、本発明のカプセルは、その他の粒子、例えば噴霧乾燥又はスクリュー押出された粒子とは異なり、酸素に対して有効なバリヤーを提供することが示された。
【0022】
発明の詳細な説明
本明細書の文脈において、"含有する"との用語は、"含む、その他の物質の他に"を意味するものとして理解されるべきである。この用語は、"のみから成る"として解釈されることを意図するものではない。
【0023】
本発明の文脈において、パーセンテージは、特に記載がなければ、乾燥物質の質量に対するパーセンテージである。同様に、割合が部として示される場合には、乾燥物質の質量部が意味されるものである。
【0024】
"PUFAsが豊富な油"との用語は、PUFAs少なくとも5質量%を含有する油を指す。有利には、PUFAs少なくとも10質量%、有利には少なくとも25質量%を含有する油である。例えば、DHA及び/又はEPAを含有する油である。
【0025】
本発明の基本的な方法工程の幾つかは、公知技術から報告されているが、PUFAsが豊富な油の封入のために適していることは示されてはいない。例えば、US 4,707,367は、水性混合物の調整工程、エマルションの調整工程及びこれを低温溶媒中に押出する工程を含む、エッセンシャルオイルフレーバー組成物を封入するための方法を記載する。従って、この特許文献は、本発明に参照により明示的に組み込まれる。
【0026】
本発明の方法は、少なくとも1つの炭水化物材料に水に添加して水性混合物を得る工程を含有する。他方では、本発明の粒子は、炭水化物材料中に分散されたPUFAsが豊富な油を含有する。
【0027】
本発明における方法及び粒子中の炭水化物材料として、押出技術を介して乾燥した押出された固体を形成すべく処理されることができる任意の炭水化物又は炭水化物誘導体が使用できる。
【0028】
有利には、前記炭水化物材料は、少なくとも1つの水溶性炭水化物を含有する。"水溶性炭水化物"との用語は、この炭水化物は、L. Prosky et al., J. Assoc. Off. Anal. Chem. 71, 1017-1023 (1988)により説明された方法により、少なくとも50%溶解性であることを意味する。
【0029】
適した材料の特定の例は、スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、フルクトース、マルトース、リボース、デキストロース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、ペンタトール、アラビノース、ペントース、キシロース、ガラクトース、水素化されたデンプン加水分解産物、マルトデキストリン、寒天、カラギナン、その他のゴム、ポリデキストロース、シクロデキストリン、合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、半合成ポリマー、例えばスクシニル化デンプン、例えばアルケニルスクシニル化デンプン、セルロースエーテル及びこれらの誘導体及び混合物からなる群から選択される材料を含む。
【0030】
有利には、マルトデキストリン又はマルトデキストリン及び、スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、マルトース、デキストロース、マルトトリオース、フルクトース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール及び水素化されたデンプン加水分解産物からなる群から選択される少なくとも1つの材料の混合物が使用される。有利には、マルトデキストリンは、デキストロース当量(DE)≦20を有し、より有利には約18のDEを有する。
【0031】
有利には、炭水化物材料は、マルトデキストリン30〜70%、より有利には40〜60%を含有する。
【0032】
本発明の一実施態様において、前記炭水化物材料は、分子量>950を有する炭水化物30〜70質量%、より有利には40〜60質量%を含有する。
【0033】
有利には、前記炭水化物材料は、スクロース40〜60%、より有利には30〜49%を含有する。
【0034】
本発明の一実施態様において、本発明の粒子の炭水化物材料又は本発明の方法において使用される炭水化物材料は、分子量<950を有する炭水化物30〜49質量%を含有する。
【0035】
上述の炭水化物材料はここでは、例示として示したものであり、かつこれらを本発明を限定するものとして解釈してはならない。特定の例として様々の炭水化物が上述されたものの、押出可能であってかつ現在、PUFAsが豊富な油を含有する適用にとって適した、押出された固形物の産生においてマトリックス材料として使用されている任意の材料は、本発明の目的にとって適当であり、かつ従って本発明において以下では包含される。
【0036】
水が、水性混合物を得るべく前記炭水化物材料に添加される。有利には、水性混合物は、水を約12〜40%、より有利には18〜30%含有する。炭水化物材料が一般的には吸湿性であり、かつ約2〜4%の残留水分を有することを考慮すれば、実際に添加される水は、上で示された値よりも少なくてよい。
【0037】
水性混合物を得る工程は、圧力抵抗性の撹拌容器中で実施されてよく、前記容器に炭水化物材料及び水の両方が添加されている。
【0038】
本発明は更に、水性混合物を加熱して濃縮したシロップを形成する工程を含む。有利には、水性混合物は十分に加熱され、水がこの混合物から蒸発することができる。例えば、前記混合物は、110〜135℃の範囲の温度に、圧力抵抗性の撹拌容器中で加熱されてよい。
【0039】
水は、水3〜15%、有利には4〜12%を有する濃縮したシロップが得られるまで水性混合物から蒸発されてよい。
【0040】
本発明は、PUFAsが豊富な油を含有する粒子を提供する。更に、本発明の方法は、PUFAsが豊富な油を濃縮したシロップ中で乳化して、エマルションを得る工程を含む。
【0041】
PUFAsが豊富な油は、市販されている。この種の油は、様々な由来、魚又は藻類由来であってよい。PUFA含有量の点で、様々な方法、例えば分子蒸留を通じてこれらの油が富化されることも可能であり、この方法を介して、選択された脂肪酸の濃度は増加されてよい。
【0042】
本発明による方法又は粒子の一実施態様において、PUFAsが豊富な油は、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(ARA)及びこれらのうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるPUFAsを含有する。
【0043】
PUFAsが豊富な油は、場合により、酸化防止剤が補われていてよい。例えば、酸化防止剤が補われた油は、添加されたアスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)、又はこの両方を含有してよい。トコフェロールは、α−、β−又はδ−トコフェロールであってよく、又はこれらのうち2つ以上を含有する混合物であってよく、かつ市販されている。
【0044】
トコフェロールは、油中で溶解性であり、かつ、酸化防止剤を含有する補われた油の0.05〜2%、有利には0.1〜0.9%の範囲の量で容易に添加されてよい。
【0045】
アスコルビン酸は、例えば、補われた油の0.05〜5%の量で添加されてよい。
【0046】
アスコルビン酸は、油中に容易に溶解性ではないが、例えば、界面活性剤としてレシチン又はホスファチジルコリン及び水を用いた逆ミセルを介して、油中に可溶化されてよい。Han及びShin,"Antioxidative effect of Ascorbic Acid olubilized in Oils via Reversed Micelles", Journal of Food Science, Vol 55, No. 1, 1990, 247-249を参照のこと。
【0047】
本発明の一実施態様において、PUFAsを含有する油は、添加されたアスコルビン酸を1質量%よりも少なく含有する。有利には、前記油は添加されたアスコルビン酸を0.5%よりも少なく含有する。より有利には、前記油は、添加されたアスコルビン酸を0.05%よりも少なく含有する。最も有利には、前記油はアスコルビン酸を含有しない。
【0048】
意外にも、本発明の発明者は、PUFAsを含有する油の安定性は、アスコルビン酸が全く添加されないか、又はほとんど添加されない場合にも、高めた温度でですら維持され得ることを見出した。同じように、PUFAsを含有する油の安定性は、トコフェロールが全く添加されないか、又はほとんど添加されない(油の0.1〜0.9質量%)場合にも維持され得る。理論により束縛されることを望むことなしに、本発明の発明者は、十分な量のレシチンの添加により、PUFAsが豊富な油を酸化から防止するために添加されるべき酸化防止剤は全く必要ないか、又はわずかな量のみが必要であることを確信している。レシチンは、十分な量で添加された場合に、自体が酸化防止剤として作用できかつ/又は十分に残りのトコフェロール(つまり、トコフェロールはPUFAsが豊富な油中に天然に存在するか、又は0.1〜0.9質量%の量で添加される)の酸化防止特性を促進できることが仮説立てられる。これは重要な利点であり、レシチンはアスコルビン酸又はトコフェロールよりもより容易に入手可能であり、従ってより安価であるとの事実のためでもある。
【0049】
従って、本発明は、一観点において、70℃を上回る、より有利には90℃を上回る、100℃を上回る、110℃を上回る、120℃をも上回る、かつ135℃までの温度での油中でのPUFAsの酸化防止のため及び/又は安定性増加のための方法であって、前記油に、PUFAsが豊富な油の質量に対してレシチン少なくとも1.5%を、上述の温度に油を曝す前に添加する工程を含む方法を提供する。有利には、レシチン少なくとも2質量%が添加され、より有利には、以下に挙げる範囲により示されるレシチンが添加される。
【0050】
従って、本発明の粒子及び方法の一実施態様において、PUFAsが豊富な油は更に、添加されたレシチン1.5〜15%を含有する。有利には、前記油は、場合によりアスコルビン酸及び/又はトコフェロールで補われた、PUFAsが豊富な油の質量に対して、添加されたレシチン3〜12%、より有利には4〜10%を含有する。
【0051】
有利には、PUFAsが豊富な油は、比較的低い剪断力下で、濃縮されたシロップ中にPUFAsが豊富な油を均一に分散すべく、濃縮したシロップと混合される。例えば、撹拌された容器が、この工程の実施のために使用されてよい。しかしながら、エマルションの別の製造方法が、例えば、PUFAsが豊富な油を有するマイクロエマルションの製造、及び前記マイクロエマルションの濃縮されたシロップ中への混合に適している可能性がある。
【0052】
従って、本発明の粒子の一実施態様において、PUFAsが豊富な油は、この粒子の製造の間に、100℃を上回る、より有利には110℃上回る、更により有利には120℃を上回る温度に曝されている。
【0053】
押出工程は、前記エマルションをダイの孔を通じて押出し、押出されたエマルションのストランドをこのようにして形成することを含み、前記エマルションは、この後、低温溶媒、例えば低温溶媒浴中に落下されてよい。押出は、ガス又は機械的圧力を用いて実施されてよい。押出圧力は有利には、1.5〜7×105Pa、有利には1.5〜3×105Paの範囲にある。押出のための力は、ポンプ、例えば、固定速度で作動し、一定の押出率を生じる歯車ポンプにより、又は加圧した空気又はガス、例えば加圧した窒素により供給されてよい。
【0054】
ダイプレート中の孔は、本発明のカプセルの最終的な適用に調節させた直径を有してよい。有利には、孔は、例えば0.3〜5mm、有利には0.5〜2mmの直径を有する。
【0055】
本発明の方法の一実施態様において、エマルションは、前記ダイを離れそして低温液体中で冷却される前に、100〜135℃、有利には110〜130℃、より有利には115〜130℃、最も有利には120〜130℃の温度を有する点で特徴付けられる。実際には、この温度は押出容器中で既に得られ、かつPUFAsが豊富な油が、前記エマルション中で100℃を上回りかつ130℃までの、又は135℃までの温度に曝されるという事実を示す。
【0056】
更なる工程において、本発明は、このエマルションを、低温液体中に装入又は滴下することにより冷却して固体の押出された材料を形成することを提供する。有利には、押出工程は、垂直に押出されたストランドを生じ、これはその下に配置された低温液体の浴へと重力により案内される。この低温液体は、有利には、−200〜100℃の範囲の液体を保持するのに適した容器内に存在する。この容器は、低温液体の撹拌を可能にし、かつ同時に、低温液体に到達する、押出されたエマルションのストランドの破砕を可能にするブレードインペラーを含んでよい。低温液体中で、前記ストランドはこのようにして冷却され、かつより小さな粒子へと破壊される。
【0057】
低温液体は、低温有機溶媒、例えばヘキサンであってよい。有利には、有機溶媒はイソプロパノールである。又は、低温液体は、液体窒素であってよい。又は、低温液体は、リモネン及び/又は多量のリモネンを含有する柑橘類の植物エキスであってよい。低温液体は有利には、撹拌される容器中に維持される。更に、低温液体は、いくつかの溶媒の混合物であってよい。有利には、低温液体は、リモネン及びイソプロパノールを含有する。より有利には、低温液体は、イソプロパノール5〜30%及びリモネン95〜70%を含有する。
【0058】
有利には、低温液体は、20〜−200℃、より有利には15〜−80℃、最も有利には5〜20℃の範囲の温度を有する。一般的にこの温度は、押出されたエマルションからの固体の、ガラス状態の形成を可能にすべく十分に低い。有利には、温度は、低温液体の沸点よりも低い。この温度は有利には、押出されたエマルションが前記液体中に滴下される前の、低温液体の温度である。
【0059】
冷却の間に、粒子は固体の押出された材料を形成する。特に、冷却は迅速に起こるので、この押出されたエマルションはすぐさま、固体の、ガラス状態へと変形する。
【0060】
この後で、粒子を前記低温液体から取り除き、例えば遠心分離又はふるい分けにより取り除く。従って、一実施態様において、本発明の方法は、低温液体から固体の押出された材料を分離する工程を含む。この工程は、出口弁及び、前記出口弁の上流に配置されるふるいを、低温液体を含有する容器内に提供することにより容易に実施されてよい。この場合、十分冷却された後に、固体の押出された材料は、出口弁を通じて低温液体を放出させることでこの容器を単に空にすることにより、低温液体から分離されてよい。
【0061】
更なる工程において、本発明は、固体の押出された材料の洗浄を提供する。有利には、固体の押出された材料は、これは有利には粒子の形を有するが、溶媒液体中で洗浄される。有利には、前記溶媒液体は、ガラス状材料により形成される粒子の表面上に存在する、表面の油を実質的に除去するのに適している。
【0062】
有利には、溶媒液体は、リモネンが豊富な柑橘類からの抽出物である。リモネンは、柑橘類の皮中に存在する。ジュースの製造の間に、皮の油が分離され、そして価値のあるフレーバーがフレグランス化され、回収される。大部分の油はしかしながらリモネンであり、これはこれまでには廃棄されていた。意外にも、豊富かつ安価に入手可能な、柑橘類油製造の廃棄物が、固体の押出された材料からの表面の油を除去するのに特に適する。このようにして、本発明の発明者は、リモネンのための極めて有用かつ有利な使用を見出した。従って、本発明による方法の一実施態様において、溶媒液体は、柑橘類から得られるテルペン類を含有する。
【0063】
従って、上述の低温液体から分離された粒子は、溶媒、有利にはリモネンを含有する容器中に移送されてよい。この洗浄は有利には、撹拌又はかき混ぜ下で、前記粒子が更に破砕又は破断されないように、例えば溶媒を、粒子と接触しないブレードインペラーでゆっくりと撹拌することにより行う。この洗浄工程の後で、溶媒液体は、低温液体のために上述した様式と同様に、取り除かれてよい。
【0064】
本発明の方法の一実施態様において、冷却工程及び洗浄工程が両方共に同一の低温溶媒液体中で実施される。本発明の発明者はかくして意外にも、固体のガラス状材料を形成するための押出された材料の冷却工程の間に、表面の油が効果的に同時に取り除かれ得ることを見出した。
【0065】
更に一層意外にも、冷却工程及び洗浄工程は両者共に、前述したリモネンが豊富な植物抽出物を含有する溶媒中で実施されてよい。これは、天然の低温溶媒液体のみが使用され、前記液体は引き続き完全に取り除かれる必要はなく、かつ取り扱い性及び制御性の観点からは問題がないという特別な利点を有する。更に、本発明の方法におけるリモネンが豊富な天然の植物抽出物の使用は、慣用の溶媒の使用よりもはるかにより安価である。有利には、リモネン又はリモネンを含有する溶媒は、上記で定義した低温液体と同様の温度を有する。
【0066】
しかしながら、冷却工程及び洗浄工程は、同じ手順工程内で低温溶媒液体中で実施されてよく、前記溶媒液体は、例えば、イソプロパノール、液体窒素、ヘキサンその他、又はこれらの2つ以上の混合物であってもよい。例えば、低温溶媒液体は、リモネン不含であってよい。
【0067】
冷却工程及び洗浄工程が同一の低温溶媒液体中で実施されるこの実施態様は、PUFAsが豊富な油を封入するための、例えば公知技術のスクリュー押出機方法による公知技術方法に対してかなりの利点を有し、というのも低温溶媒の使用は、押出直後にまず最初により密なマトリックスを生じ、この結果より効果的な酸素バリヤー及び従って増加した安定性を生じ、その一方で同時に(かつ同じ工程で)、表面の油を効果的に取り除き、従って酸化された表面の油に基づく異味を妨げる。
【0068】
更なる工程において、本発明の方法は、洗浄された固体の押出材料の乾燥を含む。この工程は、粒子からの残留する溶媒の除去のために実施されてよい。適した乾燥装置は、例えば、多段型乾燥器、回転ドラム乾燥器又は流動層乾燥器であってよく、それぞれ、典型的な滞留時間、1〜8時間(回転ドラム)又は30〜60分間(流動床)を有する。
【0069】
有利には、洗浄された固体の押出された材料の粒子は、水を含有するカプセルの質量に対して2〜7%の範囲の水含有量を達成すべく乾燥される。
【0070】
乾燥工程の間に、抗ケーキング剤が添加されてよい。粒子が乾燥されると、この粒子は更に、流動助剤と混合され、引き続きサイズ規格に沿うようふるい分けされる。
【0071】
本発明の粒子は、この粒子の合計質量の、低い表面残留油含有量≦0.2%を有することが見出され、有利にはこの粒子の合計質量の質量に対して、表面の油は≦0.1%、より有利には≦0.08%、更により有利には≦0.05%、最も有利には≦0.04%である。表面残留油は、また、表面の油とも本明細書においては呼称され、次のプロトコルにより決定される:
1)溶液
検量線の準備のため:残留表面油含有量を見積もり、予想される含有量を含有するヘキサン中のPUFAsが豊富な油の溶液を作成。可能であれば、封入系中で使用される同じ油を使用。可能でなければ、同じ又は極めて類似した特性を有する油を使用。
【0072】
2)標準
エルレンマイヤー中に粒子50000gを装入した。
ヘキサン15mLを添加し、前記エルレンマイヤーをすぐさま20分間撹拌した
(粒子の破壊を回避すべく電磁撹拌棒無しで)。
この溶媒−粉体混合物を、25mLのメスフラスコ中に濾過した。
このエルレンマイヤーを2×5mLのヘキサンで洗浄し、このフィルターを1×2mLのヘキサンで洗浄し、この容積を正確に25mLに調整した。
【0073】
3)注入条件
HPLC MERCK
ダイオードアレー検出器 MERCK L-7450
カラムサーモスタット(thermostst)L-5020
オートサンプラーAS-4000
ループ:20μl
ポンプを使用し、アイソクラティックに1.0ml/minの流速で
溶媒B:ヘキサン(50)
溶媒C:テトラヒドロフラン(50)
圧力制限:
min:2bars
max:250bars
運転:5分間
【0074】
4)計算
検量線を、上述の項目1)で得た情報をもとに決定した。
この試料の表面の油のパーセンテージを、前記検量線に基づいて計算できる。
【0075】
本発明の粒子は、意外にも、酸素に対する効果的なバリヤーを提供することが見出され、前記バリヤーは、理論によって束縛されることが望まれずに、低温液体中への押出されたエマルションの冷却工程の間の炭水化物材料により構成された無定形マトリックスの比較的高い密度により説明されてよい。本発明の粒子は、スクリュー押出により得られる粒子とは相違し、というのもスクリュー押出中では通常はより高い圧力が使用され、この結果押出されたエマルションのより高い膨張が、押出孔直後に生じるからである。この方法においては、炭水化物のガラス状材料のより低い密度を有する粒子が得られ、あまり有効でない酸素バリヤーが提供される。
【0076】
従って、一実施態様において、本発明の粒子は、10%の油含有量に対して、≧1.3g/cm3、有利には≧1.35g/cm3の密度を有する。この密度は、粒子の乾燥質量に基づいて決定される。
【0077】
一実施態様において、本発明の粒子は、本発明のプロセスにより得ることができる。より有利には、前記粒子はこの方法により得られる。
【0078】
有利には、本発明による粒子は、20℃より高い、より有利には25℃より高い、更により有利には30℃より高い、最も有利には37℃より高いガラス転移温度(TG)を有する。TGは、Perkin-Elmer DSC 7を用いて決定された。試料(それぞれ約10mg)を−20℃に冷却し、5分間維持した。温度を、10℃/minで120℃に増加させ、この後−20℃で急冷した。5分間の維持の後、この温度を10℃/分の率で120℃に増加させた。TGは、再走査の熱流曲線の屈曲により決定された。それぞれの生成物の二重の試料に対して実施した。
【0079】
本発明は、本発明の粒子を含有する食品を提供する。一実施態様において、食品は0.5よりも少ない水分活性を有する。有利には、食品は0.45よりも少ない、0.4よりも少ない、0.35よりも少ない、又は0.3よりも少ない水分活性を有する。最も有利には、この水分活性は0.25、0.2、0.15よりも少なく、又は0.1よりも少ない。食品中の自由水の比較的少ない入手可能性でもって、上述したとおりの水分活性のパラメーターの場合と同様に、本発明の粒子のマトリックスはより長期間にわたり完全なままであり、従ってPUFAsが豊富な油を酸素からより良好に保護する。
【0080】
水分活性は有利には、Aqualab CX-2装置(Decagon Devices, Inc., Pullman, Washington, USA)を用いて測定される。前記装置は、使用者のマニュアルに従って使用されるべきである。特に、前記装置に連結された恒温水槽は、20℃に調節されている。試料がこのために予定されているこのチャンバー中で恒温になった後に、手順を開始した。この手順の終了後に、温度が未だ20±0.5℃であることを確認する。
【0081】
一実施態様において、本発明の食品は、インスタントスープ、朝食用シリアル、粉末状ミルク、ベビーフード、粉末状子供用飲料、粉末状チョコレート飲料、スプレッド、粉末状シリアルドリンク、チューイングガム、発泡タブレット、シリアルバー、及びチョコレートバーからなる群から選択される。
【0082】
粉末状ミルク又は飲料は、水、ミルク及び/又はジュース又はその他の水性液体で、この製品の再構成後に通常は消費される製品である。ベビーフードは、例えば、幼児用処方であってよい。
【0083】
本発明の食品は有利には、粒状又は粉末状食品であり、かつ本発明の粒子は、乾燥混合により前記食品に容易に添加されてよい。有利には、粒子は、食品供給量につき、PUFAsの推奨一日所要量(RDA)の10〜100%、有利には20〜80%を提供する量で添加される。より有利には、食品の供給量は、DHAの前述のパーセンテージのRDAを提供する。
【0084】
次の実施例は、本発明の特定の実施態様を、本発明の包括的な範囲を限定することなしに示す。
【0085】
例1
魚油を含有する粒子の製造
アラビアゴムの20質量%水溶液を調整した。前記溶液3.166kgを、水3.66kgと、10barまでの圧力に耐えるのに適し、かつ底部に、ダイ孔を有する出口弁を有するタンク中で混合した。このタンクは機械的攪拌機を備えていた。
【0086】
この溶液に、DE=18を有するマルトデキストリン7.5kg、スクロース9.96kg及びレシチン16g(合計のレシチンの10%)を添加した。
【0087】
炭水化物のこの生じる水性混合物を撹拌下で、水含有率約8〜10%を有する濃縮したシロップが得られるまで加熱した。これは約115℃で生じた。
【0088】
並行して、レシチン140gをポリ不飽和脂肪酸が豊富な魚油1.7kg中に溶解させた。この生じる油を、撹拌下で濃縮したシロップ中に乳化させた。この結果、エマルションが得られた。
【0089】
このエマルションを次いで約130℃に加熱し、このタンクを5barまでの窒素で加圧した。この後で、底部の出口弁を開放し、このエマルションをダイ中に押し込み、長い薄いストランドを形成し、前記ストランドは、ブレードインペラーを備え、かつ−4℃でイソプロパノールを含有する容器中に落下した。
【0090】
押出されたエマルションのストランドは、撹拌された低温イソプロパノール中に落下する際に固化し、かつ引き続き小さなロッドの形を有するガラス状材料へと破砕された。
【0091】
このイソプロピルアルコールを、出口弁を通じて破砕反応器から取り除いた。小ロッドは、出口弁前に配置された細かいふるいのために、容器中に維持された。
【0092】
前記ガラス状材料全てのうち半分を容器中に維持し、もう半分を取り除き、かつ更に以下に説明するとおり乾燥させた。
【0093】
リモネン二部を、ロッド一部を含有する容器に添加した。この撹拌を再度、反応器中のロッドが更に破砕されないような様式で開始した。このプロセスは、洗浄プロセスとして呼称される。
【0094】
洗浄プロセスは10分間続いた。この時間の後、リモネンを容器の出口弁を通じて排出させた。
【0095】
リモネンで洗浄した小ロッドを、ドラム乾燥器中に配置し、抗ケーキング剤(SiO2)1質量%を添加した。乾燥を80℃で8時間の間実施した。
【0096】
リモネンの添加前に破砕反応器から回収した前記ロッドをもドラム乾燥器中に配置し、抗ケーキング剤を供給し、かつ上述したとおり乾燥させた。
【0097】
乾燥工程が終了した後に、ロッド試料10グラムを各ドラム乾燥器から取り出し、合計の油含有量と表面の油含有量とを分析した。ロッドの形にあるガラス状材料が、洗浄試料においても、また同様に非洗浄試料においても魚油10質量%を含有することが見出された。
【0098】
表面の油の評価のために、発明の詳細な説明による方法が使用された。これに応じて、非洗浄ロッド中のガラス状材料の表面上に残留する油は、ガラス状材料の合計の質量の0.1〜0.5%の範囲内にあった。リモネンで更に洗浄されている試料は、ガラス状材料の合計の質量の0.01〜0.05%の範囲内の表面油含有量を有した。
【0099】
例2
全体のカプセルの15質量%のPUFAsが豊富な油の負荷を有する粒子を調整した。これに応じて、以下の表中の成分を、例1のプロトコルに応じて処理した。
【表1】

【0100】
例3
例1及び2において得られた粒子を30℃で6ヶ月の間貯蔵した。規則的な間隔で、粒子をスニッフィング(sniffing)により試験した。6ヶ月の期間の間に、魚油臭又は典型的な酸敗臭は検知されなかった。
【0101】
例4〜34
封入された魚油を含有する食品
0.5未満の水分活性を有する市販の食品を、例1において得られる粒子の変動量(2〜5g)と共に乾燥混合した。発泡タブレット、圧縮タブレットは、標準的な処方及び有効成分無しの手順に従って製造された(標準的なフィルター材料のみ)。同様に、技術水準の手順及び成分でシリアルバーを製造した。これらの粒子の二(2)グラムは、DHAの推奨一日所要量の30%に相当した。
【0102】
適用できる場合には再構成又は短時間の調理の後に前記製品を、スニッフィングによる魚油風味に関して試験した(10〜30人)。以下の表1は、市販の食品及び前記食品が属する食料分類を列記する。更にこの表は、それぞれの食品の水分活性、それぞれの食品の量につき添加された粒子の量、及び官能評価の結果の要約を列記する。水分活性0.5未満を有する全ての製品において、消費の際に魚の風味は観察されなかった。
【0103】
表1:本発明の粒子を含有する食品
【表2】

【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)が豊富な油を含有する粒子の製造方法において、この方法が次の工程:
−水を少なくとも1つの炭水化物材料に添加して、水性混合物を得る工程;
−この水性混合物を加熱して濃縮したシロップを形成する工程;
−場合により酸化防止剤を含有するPUFAsが豊富な油を、濃縮したシロップ中で乳化してエマルションを得る工程;
−このエマルションをダイを通じて押出して押出されたエマルションを得る工程;
−この押出されたエマルションを、低温液体中に装入又は滴下することにより冷却して固体の押出された材料を形成する工程;
−この固体の押出された材料を溶媒液体で洗浄する工程、及び
−前記材料を乾燥させる工程
を含む、ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)が豊富な油を含有する粒子の製造方法。
【請求項2】
更に、この固体の押出された材料を低温液体から分離する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記冷却工程及び洗浄工程が両方共に同一の低温溶媒液体中で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
PUFAsが豊富な油が、1質量%よりも少ない添加されたアスコルビン酸を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
PUFAsが豊富な油が、更にレシチン1.5〜15質量%を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
溶媒液体が、柑橘類から得られるテルペン類を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記エマルションが、前記ダイを離れ、そして低温液体中で冷却される前に、100〜135℃の温度を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
PUFAsが豊富な油が、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(ARA)及びこれらのうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるPUFAsを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
炭水化物材料中に分散された、PUFAsが豊富な油を含有する粒子において、前記粒子がこの粒子の合計質量の、残留表面油含有量≦0.2%を有することを特徴とする、PUFAsが豊富な油を含有する粒子。
【請求項10】
PUFAsが豊富な油が更に、レシチン1.5〜15質量%を含有することを特徴とする、請求項9記載の粒子。
【請求項11】
10%の油含有量に対して、≧1.3g/cm3の密度を有することを特徴とする、請求項9記載の粒子。
【請求項12】
前記炭水化物材料が、分子量>950を有する炭水化物30〜70%を含有することを特徴とする、請求項9記載の粒子。
【請求項13】
前記炭水化物材料が、分子量<950を有する炭水化物30〜49質量%を含有することを特徴とする、請求項9記載の粒子。
【請求項14】
PUFAsが豊富な油が、前記粒子の製造の間に、100℃を上回る温度に曝されていることを特徴とする、請求項9記載の押出された粒子。
【請求項15】
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により得られることを特徴とする、請求項9記載の押出された粒子。
【請求項16】
70℃を上回る温度での油中でのPUFAsの酸化防止のため及び/又は安定性増加のための方法であって、油に、油の質量に対してレシチン少なくとも1.5%を、70℃を上回る温度に油を曝す前に添加する工程を含む方法。
【請求項17】
請求項9から15までのいずれか1項記載の粒子を含有する食品。
【請求項18】
0.5よりも少ない水分活性を有することを特徴とする、請求項17記載の食品。
【請求項19】
インスタントスープ、朝食用シリアル、粉末状ミルク、ベビーフード、粉末状子供用飲料、粉末状チョコレート飲料、スプレッド、粉末状シリアルドリンク、チューイングガム、発泡タブレット、シリアルバー、及びチョコレートバーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項17又は18記載の食品。

【公表番号】特表2008−524424(P2008−524424A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547717(P2007−547717)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053939
【国際公開番号】WO2006/067647
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】