説明

封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた電子部品装置

【課題】流動性等信頼性を損なうことなく、低応力化及び高接着性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)固形のシリコーン化合物のコアと有機重合体のシェルからなる構造を有し、コアの固形シリコーンが[RR’SiO2/2]単位であるコアシェル型シリコーン化合物であって(ここで、Rは炭素数6以下のアルキル基、アリール基、又は末端に炭素二重結合を有する置換基であり、R’は炭素数6以下のアルキル基またはアリール基を示す。)、前記有機重合体が反応性官能基を有する重合体を含有することを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた電子部品装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC等の電子部品装置の素子封止の分野では生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性などの諸特性にバランスがとれているためである。また近年、電子部品のパッケージ形態は、小型・薄型化等が進み、多ピン化、狭ピッチ化が可能であるBGAパッケージが増大している。しかし、これらの電子部品のパッケージは、冷熱サイクル時にパッケージがクラックするという問題が生じ、耐熱衝撃性の改善が望まれている。エポキシ樹脂組成物の耐熱衝撃性を改善するものとして、固形のシリコーン化合物のコアとビニル重合により得られる有機重合体のシェルからなるコアシェル型シリコーン化合物を可撓剤としてエポキシ樹脂組成物に分散させる方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−134179号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
可撓剤としてコアシェル型シリコーン化合物を分散させる方法は、何れもエポキシ樹脂組成物の弾性率を低減し、電子部品のパッケージ内部で発生する応力を低減する効果がある。しかし、一般に可撓剤を添加すると流動性が悪くなる傾向がある。BGAパッケージの封止方法は、複数のICを一括して封止するMAP成形が増加しており、薄く大きな面積を一括封止するため高い流動性が必要である。本発明は、これらを解決するものであり、流動性等の信頼性を損なうことなく、低応力化及び高接着性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、(1)(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)固形のシリコーン化合物のコアと有機重合体のシェルからなる構造を有し、コアの固形シリコーンが[RR’SiO2/2]単位であるコアシェル型シリコーン化合物であって(ここで、Rは炭素数6以下のアルキル基、アリール基、又は末端に炭素二重結合を有する置換基であり、R’は炭素数6以下のアルキル基またはアリール基を示す。)、前記有機重合体が反応性官能基を有する重合体を含有することを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0005】
また、本発明は、(2)前記(C)コアシェル型シリコーン化合物のコアの固形シリコーン化合物が、[RSiO3/2]及び/又は[SiO4/2]からなる単位を1〜20モル%有する[RR’SiO2/2]単位のシリコーン化合物であることを特徴とする前記(1)記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。(ここで、Rは炭素数6以下のアルキル基、アリール基、又は末端に炭素二重結合を有する置換基であり、R’は炭素数6以下のアルキル基またはアリール基を示す。)
また、本発明は、(3)前記(C)コアシェル型シリコーン化合物のシェルの有機重合体が、ビニル重合により得られる重合体を含むことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0006】
また、本発明は、(4)前記ビニル重合により得られる重合体が、反応性官能基を有しないアクリル樹脂と反応性官能基を有するアクリル樹脂の共重合体を含むことを特徴とする前記(3)記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、(5)前記反応性官能基を有するアクリル樹脂の含有比率(反応性官能基を有するアクリル樹脂量/反応性官能基を有するアクリル樹脂と反応性官能基を有しないアクリル樹脂との総量×100)が、5〜50重量%であることを特徴とする前記(4)記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、(6)前記反応性官能基を有するアクリル樹脂の含有比率(反応性官能基を有するアクリル樹脂量/反応性官能基を有するアクリル樹脂と反応性官能基を有しないアクリル樹脂との総量×100)が、10〜30重量%であることを特徴とする前記(4)記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、(7)前記反応性官能基がエポキシ基であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、(8)前記(A)エポキシ樹脂が、下記一般式(I)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂を含有することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【化2】

【0011】
(式(I)中、R〜Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
また、本発明は、(9)前記(A)エポキシ樹脂が、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル型エポキシ樹脂の少なくとも1種を含有することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、(10)前記(B)硬化剤が、ビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル樹脂、フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂及び共重合型フェノール・アラルキル樹脂の少なくとも1種を含有することを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、(11)(D)硬化促進剤をさらに含有することを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、(12)(E)シランカップリング剤をさらに含有することを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、(13)前記(1)〜(12)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えた電子部品装置に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、流動性を損なうことなく低弾性率化及び高接着性に優れた効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明において用いられる(A)エポキシ樹脂は、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているエポキシ樹脂であれば特に制限は無く、たとえば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの(ノボラック型エポキシ樹脂);ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のジグリシジルエーテル(ビスフェノール型エポキシ樹脂);アルキル置換又は非置換のビフェノール等のジグリシジルエーテル(ビフェニル型エポキシ樹脂);スチルベン型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノ−ル類の共縮合樹脂のエポキシ化物(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);ナフタレン環を有するエポキシ樹脂(ナフタレン型エポキシ樹脂);フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるアラルキル型フェノール樹脂;ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;テルペン変性エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;脂環族エポキシ樹脂;硫黄原子含有エポキシ樹脂;などが挙げられる。これらエポキシ樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記エポキシ樹脂のなかでも、耐リフロー性の観点からはビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく、硬化性の観点からはノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、低吸湿性の観点からはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましく、耐熱性及び低反り性の観点からはナフタレン型エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂が好ましく、難燃性の観点からはビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂の少なくとも1種を含有していることが好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂を含有していることがより好ましい。
【0019】
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、下記一般式(I)で示されるものが、流動性、耐リフロー性の観点から好ましい。
【化3】

【0020】
式(I)におけるR〜Rは、水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。
【0021】
上記一般式(I)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂としては、たとえば、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル又は4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと4,4’−ビフェノール又は4,4’−(3,3’,5,5’−テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。n=0を主成分とするYX−4000、YX−4000H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0022】
本発明において用いられる(B)硬化剤は、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はなく、たとえば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂;ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;フェノール・ノボラック構造とフェノール・アラルキル構造がランダム、ブロック又は交互に繰り返された共重合型フェノール・アラルキル樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;などが挙げられる。これら硬化剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
これら硬化剤のなかでも、難燃性の観点からはビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル樹脂及び共重合型フェノール・アラルキル樹脂が好ましく、耐リフロー性及び硬化性の観点からはフェノール・アラルキル樹脂及びナフトール・アラルキル樹脂が好ましく、低吸湿性の観点からはジシクロペンタジエン型フェノール樹脂が好ましく、耐熱性、低膨張率及び低そり性の観点からはトリフェニルメタン型フェノール樹脂が好ましく、硬化性の観点からはノボラック型フェノール樹脂が好ましい。これらのフェノール樹脂の少なくとも1種を含有していることが好ましく、ビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂を含有していることがより好ましい。
【0024】
本発明において、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との当量比、すなわちエポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する硬化剤中の水酸基数の比(硬化剤中の水酸基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために上記当量比は0.5〜2の範囲に設定されることが好ましく、0.6〜1.3がより好ましい。成形性、耐リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物を得るためには上記当量比は0.8〜1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0025】
本発明において用いられる(C)コアシェル型シリコーン化合物は、固形シリコーン化合物のコアと有機重合体のシェルからなる構造を有する、常温で固形のシリコーン重合物である。
【0026】
コアのシリコーン化合物は、[RR’SiO2/2]単位を有するジオルガノシロキサンを主原料とする重合物であり、架橋成分として3官能性シロキサン単位([RSiO3/2])及び/又は4官能性シロキサン単位([SiO4/2])を用いることが好ましい(ここで、Rは炭素数6以下のアルキル基、アリール基、又は末端に炭素二重結合を有する置換基であり、R’は炭素数6以下のアルキル基またはアリール基を示す。)。前記架橋成分の割合が多くなるとコアとなる固形シリコーン化合物の硬度、弾性率が高くなり、目的とする封止用エポキシ樹脂組成物の弾性率低減、発生応力の低減効果が小さくなってしまう傾向がある。したがって、固形シリコーン化合物の構成単位である[RR’SiO2/2]単位は、[RSiO3/2]及び/又は[SiO4/2]単位を1〜20モル%有することが好ましく、2〜10モル%有することがさらに好ましい。前記[RSiO3/2]及び/又は[SiO4/2]単位が少なくなると、弾性率の低い固形シリコーン化合物を得ることができるが、架橋密度が低くなるため未反応シロキサン成分が多くなり、この結果、未反応成分の移行により、成形品のマーキング性などを低下させてしまう可能性がある。したがって、[RSiO3/2]及び/又は[SiO4/2]単位は、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がさらに好ましい。半導体素子に対する発生応力が小さく、耐熱衝撃性が良好であり、さらに成形品表面に係わる問題も無く、信頼性に優れた封止用エポキシ樹脂組成物とするためには、コアとなる固形シリコーン化合物の硬度が重要である。本発明では、固形シリコーン化合物の硬度は[RSiO3/2]及び/又は[SiO4/2]単位量を調整することによって、設計値通りの最適の硬度に制御することが容易となる。
【0027】
コアの固形シリコーン化合物の構成単位である[RSiO3/2]、[RR’SiO2/2]単位について、Rは炭素数6以下のアルキル基、アリール基、又は末端に炭素二重結合を有する置換基であり、R’は炭素数6以下のアルキル基またはアリール基である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの炭素数6以下のアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基などのアリール基;またはビニル基、アリル基、メタクリル基、メタクリロキシ基、またはこれらを末端に持つアルキル基などの末端に炭素二重結合を有する置換基が例示される。R’としては、Rと同様の炭素数6以下のアルキル基またはアリール基である。R及びR’は一種類でも二種以上であっても良く、RとR’は同種でも異種でも良い。Rとしては、少なくとも一部に末端に炭素二重結合を有する置換基を持つことが好ましい。この理由としては、コアである固形シリコーン化合物を重合により作製した後、ビニル重合により得られる有機重合体をシェルとして重合を行う際に、コアに含まれる炭素二重結合とシェルの有機重合体がグラフト化することでコア/シェル界面を有機結合により強固に結合できるためである。この場合の炭素二重結合の割合は、1〜10モル%の範囲が好ましい。この理由としては、1モル%未満ではグラフト化の効果が少なくなる傾向にあり、10モル%を超える場合は炭素二重結合を有する置換基の影響で耐熱性や弾性率等のコアの物性が低下する傾向にあるためである。R’としては、低弾性率、コストの点からはメチル基が好ましい。
【0028】
(C)コアシェル型シリコーン化合物のシリコーン重合物の表面にはビニル重合により得られる有機重合体がシェルとして形成されている。かかる有機重合体は、封止用エポキシ樹脂組成物のベース樹脂である(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤と相溶性の良い樹脂であることが好ましく、例えば、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂やその共重合体などがあげられ、特にアクリル樹脂またはアクリル樹脂の共重合体が好適である。アクリル樹脂としてはアクリル酸及びそのエステル、メタクリル酸及びそのエステル、アクリルアミド、アクリロニトリルなどの重合物や、一般的に行われるようにスチレンなど他のモノマとの共重合体があげられる。アクリル樹脂については特に限定するものではないが、強靭性、耐加水分解性の面からポリメタクリル酸エステルが好ましく、さらには価格、反応性を考慮すればポリメタクリル酸メチル及びその共重合体が好ましい。また、耐熱性の面から芳香族環を有するビニルエステル樹脂が好適である。
【0029】
本発明では、前記有機重合体が反応性官能基を有する重合体を含有することが特徴である。すなわち、有機重合体としては、反応性官能基を有する重合体単独で構成される場合、または反応性官能基を有しない重合体と反応性官能基を有する重合体とから構成される場合が考えられる。弾性率低減効果、流動性及び接着性の観点から、有機重合体は、反応性官能基を有しないアクリル樹脂と反応性官能基を有するアクリル樹脂の共重合体を含むことが好ましい。
【0030】
反応性官能基を有する重合体としては、例えば、反応性官能基を有するポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂やその共重合体などがあげられ、これらのなかでも反応性官能基を有するアクリル樹脂またはアクリル樹脂の共重合体が好適である。アクリル樹脂としてはアクリル酸及びそのエステル、メタクリル酸及びそのエステル、アクリルアミド、アクリロニトリルなどの重合物や、一般的に行われるようにスチレンなど他のモノマとの共重合体が挙げられる。アクリル樹脂については特に限定するものではないが、強靭性、耐加水分解性の面からポリメタクリル酸エステルが好ましく、さらには価格、反応性を考慮すればポリメタクリル酸メチル及びその共重合体が好ましい。また、耐熱性の面から芳香族環を有するビニルエステル樹脂が好適である。反応性官能基としては、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤と反応または相互作用するものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、アミド基、無水酸基、マレイミド基等が挙げられ、これらのなかでも、エポキシ基が好ましい。反応性官能基を有する重合体の具体的としては、ポリグリシジルメタクリル酸メチル、ポリグリシジルビニルエステルなどが挙げられる。またグルシジルビニルエーテル、α,β―不飽和酸、α,β―不飽和酸無水物、イタコン酸、クロトン酸、メタアクリルアミド、マレイン酸無水物、マレイン酸イミド等の重合体も例示される。これらのなかでも、弾性率低減効果、流動性及び接着性の観点から、ポリグリシジルメタクリル酸メチルが好ましい。
【0031】
有機重合体中の反応性官能基を有する重合体の含有比率(反応性官能基を有する重合体量/反応性官能基を有しない重合体と反応性官能基を有する重合体との総量×100(重量%))は、封止用エポキシ樹脂組成物の要求性能などに応じて適宜選択される。例えば、有機重合体が反応性官能基を有しないアクリル樹脂と反応性官能基を有するアクリル樹脂の共重合体とから構成される場合、弾性率低減効果、流動性の観点から、反応性官能基を有するアクリル樹脂の含有比率(反応性官能基を有するアクリル樹脂量/反応性官能基を有するアクリル樹脂と反応性官能基を有しないアクリル樹脂との総量×100)は5〜50重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明では、有機重合体シェルの量はコアの固形シリコーン化合物を均一に被覆できる最少量が良く、この観点から固形シリコーン化合物と有機重合体の重量比(固形シリコーン化合物:有機重合体)は1:1〜5:1の範囲が好ましい。
【0033】
(C)コアシェル型シリコーン化合物を得る方法としては、1段目の重合として乳化重合によりコアとなる固形シリコーン化合物を合成し、次に2段目の重合として有機重合体の構成モノマ(例えば、アクリルモノマ)と開始剤を添加して重合を行うことでシェルを形成する方法などがある。この方法の場合、1段目の重合に用いるシロキサンモノマまたはオリゴマ成分に二重結合を有する置換基を持つシロキサン化合物を適度に配合することで、二重結合を介して有機重合体(例えば、アクリル樹脂)がグラフト化してコアとシェルの界面が強固になるため、この様にして得られたシリコーン重合物を使用することで成形品の強度を高めることができる。また、(C)コアシェル型シリコーン化合物の粒径は封止用エポキシ樹脂組成物を均一に変性するためには細かい方が良好であり、平均1次粒子径が0.05〜1.0μmの範囲であることが好ましく、0.05〜0.5μmの範囲であることが更に好ましい。
【0034】
本発明では、予め(C)コアシェル型シリコーン化合物を(A)エポキシ樹脂の一部又は全部に分散させることが好ましく、これにより流動性を損なうことなく低弾性率化に優れる樹脂組成物を得られやすくなる。分散させる方法としては、(C)コアシェル型シリコーン化合物を他の材料と混合する前に予めエポキシ樹脂の一部又は全部と混合することにより行われる。また、(C)コアシェル型シリコーン化合物を、(A)エポキシ樹脂の一部又は全部の存在下に合成することにより、(C)コアシェル型シリコーン化合物を(A)エポキシ樹脂の一部又は全部に分散させることができる。この場合、(A)エポキシ樹脂中に(C)コアシェル型シリコーン化合物を高分散することができる。合成法としては、例えば、(A)エポキシ樹脂の一部又は全部と溶媒中で、固形シリコーン化合物の合成を行い、次いで、有機重合体の構成モノマと開始剤を添加して重合を行ってシェルを形成し、最後に溶媒を除く方法などが挙げられる。
【0035】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の反応を促進させるために必要に応じて(D)硬化促進剤を用いることができる。(D)硬化促進剤としては、封止用エポキシ樹脂組成物で一般に使用されているものであれば特に限定はなく、たとえば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2―フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類及びこれらのホスフィン類に無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムエチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられる。これら硬化促進剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記硬化促進剤なかでも、硬化性及び流動性の観点からは第三ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が好ましく、保存安定性の観点からはシクロアミジン化合物とフェノール樹脂との付加物が好ましく、ジアザビシクロウンデセンのノボラック型フェノール樹脂塩がより好ましい。これらの好ましい硬化促進剤の配合量は硬化促進剤全量に対して合わせて60重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。
【0037】
第三ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いられる第三ホスフィン化合物としては特に制限はないが、たとえば、ジブチルフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメチル−4−エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−エトキシフェニル)ホスフィン等のアルキル基、アリール基を有する第三ホスフィン化合物が挙げられ、成形性の点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。また、キノン化合物としては特に制限はないが、たとえば、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、ジフェノキノン、1,4−ナフトキノン、アントラキノン等が挙げられ、耐湿性又は保存安定性の観点からはp−ベンゾキノンが好ましい。
【0038】
(D)硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に限定されるものではないが、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.3〜5重量部がより好ましい。0.1重量部未満では短時間の硬化性に劣る傾向があり、10重量部を超えると硬化速度が速すぎて良好な成形品が得られない傾向がある。
【0039】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤を配合することが出来る。
無機充填剤を用いる場合は、樹脂成分と無機充填剤との接着性を高めるために、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には(E)シランカップリング剤をさらに配合することが好ましい。(E)シランカップリング剤としては、封止用エポキシ樹脂組成物で一般に使用されているものであれば特に限定はなく、たとえば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらシランカップリング剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでもN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが賞用される。
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、上記(E)シランカップリング剤以外に従来公知のカップリング剤を併用してもよい。シランカップリング剤以外のカップリング剤としては、たとえば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤;アルミニウムキレート類;アルミニウム/ジルコニウム系化合物;等の公知のカップリング剤を1種以上併用することができる。
【0040】
(E)シランカップリング剤とシランカップリング剤以外のカップリング剤の全配合量は特に制限はないが無機充填剤に対して0.01〜2.0重量%配合されることが好ましく、0.1〜1.6重量%がより好ましい。0.01重量%未満では接着性が低下する傾向があり、2.0重量%を超えると成形性が低下する傾向がある。
【0041】
本発明で用いられる無機充填剤としては、特に制限はないが、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ等の単結晶繊維、ガラス繊維等が挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛などが挙げられる。これら無機充填剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これら無機充填剤の中で、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。無機充填剤の形状は成形時の流動性及び金型磨耗性の点から球形もしくは球状に近い形が好ましい。
【0042】
無機充填剤の配合量は、成形性、吸湿性、線膨張係数の低減及び強度向上の観点から封止用エポキシ樹脂組成物に対して60重量%以上が好ましく、70〜95重量%がより好ましく、75〜92重量%がさらに好ましい。無機充填剤の配合量が60重量%未満では耐リフロー性が低下する傾向がある。
【0043】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて離型剤を添加してもよい。離型剤としては、酸化型又は非酸化型のポリオレフィンを(A)エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部用いることが好ましく、0.1〜5重量部用いることがより好ましい。0.01重量部未満では離型性が不十分となる傾向があり、10重量部を超えると接着性が低下する傾向がある。酸化型又は非酸化型のポリオレフィンとしては、ヘキスト株式会社製H4やPE、PEDシリーズ等の数平均分子量が500〜10000程度の低分子量ポリエチレンなどが挙げられる。また、これ以外の離型剤としては、たとえばカルナバワックス、モンタン酸エステル、モンタン酸、ステアリン酸等が挙げられる。これら離型剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。酸化型又は非酸化型のポリオレフィンに加えてこれら他の離型剤を併用する場合、その全配合量は合わせて(A)エポキシ樹脂100重量部に対して0.l〜10重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。0.1重量部未満では離型性が不十分となる傾向があり、10重量部を超えると接着性が低下する傾向がある。
【0044】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製することができる。一般的な手法として、所定の配合量の各種成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、ニーダ、押出機等によって溶融混練行い、次いで冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。たとえば、上述した各種成分の所定量を均一に撹拌、混合し、予め70〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダーなどで混練を行い、次いで冷却し、粉砕するなどの方法で本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。なお、組成物は成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化すると取り扱いやすい。
【0045】
本発明による電子部品装置は、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えた電子部品装置である。かかる電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止した、電子部品装置などが挙げられる。このような電子部品装置としては、たとえば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を用いてトランスファ成形等により封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などが挙げられる。また、プリント回路板にも本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は有効に使用できる。
【0046】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【実施例】
【0047】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
合成例:(C)可撓剤[1]〜[6]の合成
表1に示すコアの構成成分を用いて分散媒中で乳化重合を行い、コアの固形シリコーン化合物を形成した後、表1に示すシェル構成成分を加えグラフト重合を行い有機重合体のシェルを形成し、洗浄後、スプレードライヤー法で分散媒から単離して、可撓剤[1]〜[6]を得た。可撓剤[1]及び[5]はメチルイソブチルケトンを分散媒として用い、可撓剤[2]〜[4]及び[6]はビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名YX−4000)及びメチルイソブチルケトンを分散媒として用いた。
【0049】
可撓剤[1]〜[6]のパウダー濃度(重量%)及びコア/シェル(重量%)を表1に示す。なお、表中のパウダー濃度とは、得られた可撓剤中のコアシェル型シリコーン化合物の濃度を表す。すなわち、可撓剤[2]〜[4]及び[6]はコアシェル型シリコーン化合物が30重量%でエポキシ樹脂が70重量%でエポキシ樹脂中にコアシェル型シリコーン化合物が分散されており、可撓剤[1]及び[5]はエポキシ樹脂を含まないのでコアシェル型シリコーン化合物100重量%からなる。
【表1】

【0050】
実施例1〜10:封止用エポキシ樹脂組成物の作製
エポキシ当量196、融点106℃のビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名YX−4000H)(エポキシ樹脂1)、水酸基当量199、軟化点89℃のビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル樹脂(明和化成株式会社製、商品名MEH−7851)(硬化剤1)、水酸基当量104、軟化点83℃のトリフェニルメタン型フェノール樹脂(明和化成株式会社製、商品名MEH−7500−3S)(硬化剤2)、可撓剤(合成例で得られた可撓剤[1]〜[4])、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤1)、トリ−p−トリルホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤1)、平均粒径21.7μm、比表面積1.3m/gの球状溶融シリカ(無機充填剤1)、その他の添加成分として酸化ポリエチレン、モンタン酸エステル、カーボンブラックを用い、表2に示す重量比で配合し、混練温度80〜90℃、混練時間15分の条件でロール混練を行い、封止用エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0051】
なお、実施例1〜10の可撓剤[1]〜[4]は前記合成例で得られたものであり、可撓剤[2]〜[4]はビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名YX−4000)中にコアシェル型シリコーン化合物30重量%分散されている。実施例2〜10のエポキシ樹脂は、可撓剤[2]〜[4]に含まれるエポキシ樹脂とエポキシ樹脂1との総重量が100重量部になる。
【表2】

【0052】
比較例1〜3:封止用エポキシ樹脂組成物の作製
可撓剤として合成例で得られた可撓剤[5]〜[6]を用い、それ以外は実施例1〜10と同様の各成分を用い、表3に示す重量比で配合し、混練温度80〜90℃、混練時間15分の条件でロール混練を行い、封止用エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0053】
なお、比較例1〜2の可撓剤[5]〜[6]は前記合成例で得られたものであり、可撓剤[6]はビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名YX−4000)中にコアシェル型シリコーン化合物30重量%分散されている。比較例2のエポキシ樹脂は、可撓剤[6]に含まれるエポキシ樹脂とエポキシ樹脂1との総重量が100重量部になる。
【表3】

【0054】
実施例1〜10及び比較例1〜3で作製した封止用エポキシ樹脂組成物の特性について、以下の(1)〜(8)の各種特性試験を行い評価した。評価結果を表4及び5に示す。
【0055】
なお、封止用エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファ成形機を用い、封止用エポキシ樹脂組成物を金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で成形後、180℃で5時間にわたって後硬化することによって行った。
【0056】
(1)ゲルタイム
JSR製キュラストメータを用いて、封止用エポキシ樹脂組成物3gを温度180℃で測定、トルク曲線の立ち上がりまでの時間をゲルタイム(秒)とした。
【0057】
(2)スパイラルフロー
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、封止用エポキシ樹脂組成物を上記条件で成形し、流動距離(インチ)を求めた。
【0058】
(3)円板フロー
200mm(W)×200mm(D)×25mm(H)の上型と200mm(W)×200mm(D)×15mm(H)の下型を有する円板フロー測定用平板金型を用いて、上皿天秤にて秤量した封止用エポキシ樹脂組成物5gを180℃に加熱した下型の中心部にのせ、5秒後に、180℃に加熱した上型を閉じて、荷重78N、硬化時間90秒の条件で圧縮成形し、ノギスで成形品の長径(mm)及び短径(mm)を測定して、その平均値(mm)を円板フローとした。
【0059】
(4)曲げ試験
A&D社製テンシロンを用い、JIS−K−6911に準拠した3点支持型曲げ試験を室温及び260℃にて行い、弾性率を求めた。なお、測定は寸法70mm×10mm×3mmの試験片を用いた。
【0060】
(5)接着強度
厚み30μmの東海金属製アルミホイルを金型に敷き、70mm×10mm×3mmの寸法に成形した試験片を用いて、熱処理なし(AM)、175℃/6時間の熱処理あり(AC)としてサンプルを作製、これをA&D社製テンシロンを用いて、アルミホイルを垂直に引き剥がし、その時の力を接着強度(N/m)として測定した。
【0061】
(6)耐リフロー性
8mm×10mm×0.4mmのシリコンチップを搭載した外形寸法20mm×14mm×2mmの80ピンフラットパッケージ(QFP)(リードフレーム材質:銅合金、リード先端銀メッキ処理品)を、封止用エポキシ樹脂組成物を用いて上記条件で成形、後硬化することによって作製した。次いで、得られたQFPを85℃、85%RHの条件で加湿して所定時間毎に240℃、10秒の条件でリフロー処理を行い、クラックの有無を観察し、試験パッケージ数(5個)に対するクラック発生パッケージ数で評価した。
【0062】
(7)耐熱衝撃性
8mm×10mm×0.4mmのシリコンチップを搭載した外形寸法20mm×14mm×2mmの80ピンフラットパッケージ(QFP)(リードフレーム材質:銅合金、リード先端銀メッキ処理品)を、封止用エポキシ樹脂組成物を用いて上記条件で成形、後硬化することによって作製した。次いで、得られたQFPを−120℃⇔150℃のサイクル試験を行い、クラックの有無を観察し、試験パッケージ数(5個)に対するクラック発生パッケージ数で評価した。
【0063】
(8)熱時硬度
封止用エポキシ樹脂組成物を、上記成形条件下、直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD硬度計を用いて測定した。
【表4】

【表5】

【0064】
表4、5に見られるように実施例1〜5,8では同一樹脂組成、可撓剤の同一パウダー濃度で従来の可撓剤を用いた比較例1,2と比べて流動性を表すスパイラルフロー及び円板フローにおいて良好な特性を示し、比較例3と比べて可撓剤成分の添加により流動性を大きく低下させていない。実施例6,7,9,10は比較例と比べて流動性が劣っているが、これは可撓剤成分が2倍以上添加されているためである。また、実施例1〜10は比較例に比べて、低弾性率化及び高接着性に優れている。また耐リフロー性、耐熱衝撃性にも優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、
(C)固形のシリコーン化合物のコアと有機重合体のシェルからなる構造を有し、コアの固形シリコーンが[RR’SiO2/2]単位であるコアシェル型シリコーン化合物であって(ここで、Rは炭素数6以下のアルキル基、アリール基、又は末端に炭素二重結合を有する置換基であり、R’は炭素数6以下のアルキル基またはアリール基を示す。)、前記有機重合体が反応性官能基を有する重合体を含有することを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)コアシェル型シリコーン化合物のコアの固形シリコーン化合物が、[RSiO3/2]及び/又は[SiO4/2]からなる単位を1〜20モル%有する[RR’SiO2/2]単位のシリコーン化合物であることを特徴とする請求項1記載の封止用エポキシ樹脂組成物。(ここで、Rは炭素数6以下のアルキル基、アリール基、又は末端に炭素二重結合を有する置換基であり、R’は炭素数6以下のアルキル基またはアリール基を示す。)
【請求項3】
前記(C)コアシェル型シリコーン化合物のシェルの有機重合体が、ビニル重合により得られる重合体を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記ビニル重合により得られる重合体が、反応性官能基を有しないアクリル樹脂と反応性官能基を有するアクリル樹脂の共重合体を含むことを特徴とする請求項3記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記反応性官能基を有するアクリル樹脂の含有比率(反応性官能基を有するアクリル樹脂量/反応性官能基を有するアクリル樹脂と反応性官能基を有しないアクリル樹脂との総量×100)が、5〜50重量%であることを特徴とする請求項4記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記反応性官能基を有するアクリル樹脂の含有比率(反応性官能基を有するアクリル樹脂量/反応性官能基を有するアクリル樹脂と反応性官能基を有しないアクリル樹脂との総量×100)が、10〜30重量%であることを特徴とする請求項4記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記反応性官能基がエポキシ基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記(A)エポキシ樹脂が、下記一般式(I)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式(I)中、R〜Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【請求項9】
前記(A)エポキシ樹脂が、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル型エポキシ樹脂の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記(B)硬化剤が、ビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル樹脂、フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂及び共重合型フェノール・アラルキル樹脂の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
(D)硬化促進剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
(E)シランカップリング剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えた電子部品装置。

【公開番号】特開2007−146150(P2007−146150A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293944(P2006−293944)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】