説明

射出圧縮成形金型

【課題】 成形時の側面形成ブロックとコアブロックの間でのカジリの発生を防止するとともに成形品への問題となるバリの形成を防止することができる射出圧縮成形金型を提供する。
【解決手段】 金型本体部15と一体に設けられるコアブロック18と、コアブロック18に対して型開閉方向に相対位置変更される側面形成ブロック29,30,31とが第1の金型12に設けられ、側面形成ブロック29,30,31と第2の金型13とが面当接されて容積可変のキャビティC1,C2が形成される射出圧縮成形金型11において、側面形成ブロック29,30はコアブロック18に向けて押圧されるとともに、側面形成ブロック29,30,31の内側面29b,30b,31bおよびコアブロック18の外側面18bの少なくとも一方には耐摩耗加工Wがなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出圧縮成形金型に関するものであり、特には金型本体部と一体に設けられるコアブロックとコアブロックに対して型開閉方向に相対位置変更される側面形成ブロックとが第1の金型に設けられ、第1の金型の側面形成ブロックと第2の金型とが当接されて、容積可変のキャビティが形成されるタイプの射出圧縮成形金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第1の金型と第2の金型の間に容積可変のキャビティが形成され、前記キャビティ内に射出された溶融樹脂が圧縮される射出圧縮成形金型としては、特許文献1ないし特許文献3に記載のものが知られている。特許文献1は、いわゆるインロー金型と称されるもので、可動金型の凸状部が固定金型の凹状部に侵入して容積可変のキャビティを形成するものである。しかしながら特許文献1は、金型を取付ける際の位置のずれや、固定盤に対する可動盤の位置ずれなどにより前記凸状部と前記凹状部が正確に嵌合できずカジリが生じる場合があるものであった。また前記カジリに対応するために、前記凸状部と前記凹状部のクリアランスを大きくすると成形時に大きなバリが発生するものであった。
【0003】
また前記問題に対応する射出圧縮成形金型として特許文献2、特許文献3に記載された成形金型が知られている。特許文献2、特許文献3に記載された成形金型は、平当金型と称されるもので、可動金型のコアブロックに対して型開閉方向に相対位置変更可能な側面形成ブロックが固定金型と当接されることにより容積可変のキャビティを形成するものである。しかし特許文献2と特許文献3に示されるように従来の平当金型は、コアブロックと側面形成ブロックの間に、5〜20μm程度のベント(間隙)やクリアランスが形成され、両方の面が摺動によってカジリを生じないようにしている。また特に特許文献3では円盤プレートの外周面に硬度の高いコーティング層を形成することにより、かじりの発生をより防止することが記載されている。しかしながら成形時においては、前記クリアランスに溶融樹脂が入り込みバリが形成されるという問題があった。そして前記バリは成形品として問題となる場合の他、バリが折れた小片や粉体が成形品の他の部分やキャビティ内に付着して問題となる場合があった。
【0004】
【特許文献1】特開2001−341177号公報(0036、図1)
【特許文献2】特開2003−145593号公報(0024、図3)
【特許文献3】特開2002−361688号公報(0036、0037、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では上記の問題を鑑みて、成形時の側面形成ブロックとコアブロックの間でのカジリの発生を防止するとともに成形品への問題となるバリの形成を防止することができる射出圧縮成形金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の射出圧縮成形金型は、金型本体部と一体に設けられるコアブロックとコアブロックに対して型開閉方向に相対位置変更される側面形成ブロックとが第1の金型に設けられ、側面形成ブロックと第2の金型とが当接されて容積可変のキャビティが形成される射出圧縮成形金型において、側面形成ブロックはコアブロックに向けて押圧されるとともに、側面形成ブロックの内側面およびコアブロックの外側面の少なくとも一方には耐摩耗加工がなされていることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に記載の射出圧縮成形金型は、金型本体部と一体に設けられるコアブロックとコアブロックに対して型開閉方向に相対位置変更される側面形成ブロックとが第1の金型に設けられ、側面形成ブロックと第2の金型とが当接されて容積可変のキャビティが形成される射出圧縮成形金型において、側面形成ブロックは型開閉方向と直交方向に移動可能に設けられるとともに、側面形成ブロックの内側面およびコアブロックの外側面の少なくとも一方には耐摩耗加工がなされていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に記載の射出圧縮成形金型は、請求項1または請求項2において、側面形成ブロックの内側面およびコアブロックの外側面は摺動面であり、キャビティ側接合部において当接していることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に記載の射出圧縮成形金型は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、耐摩耗加工は、WC/CまたはDLCからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の射出圧縮成形金型は、第1の金型に金型本体部と一体に設けられるコアブロックと、コアブロックに対して型開閉方向に相対位置変更される側面形成ブロックとが設けられ、側面形成ブロックと第2の金型とが当接されて、第1の金型と第2の金型の間に容積可変のキャビティが形成される射出圧縮成形金型において、側面形成ブロックはコアブロックに向けて押圧されるとともに、側面形成ブロックの内側面およびコアブロックの外側面の少なくとも一方には耐摩耗加工がなされているので、カジリの発生を防止するとともに成形品への問題となるバリの形成を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の射出圧縮成形金型について、図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本実施形態の導光板の射出圧縮成形金型の断面図であって型当接された際の状態を示す図である。図2は、本実施形態の導光板の射出圧縮成形金型の可動金型の正面図である。図3は、本実施形態の導光板の射出圧縮成形金型の要部の断面図である。
【0012】
本実施形態の導光板の射出圧縮成形金型11は、対角寸法3インチ、板厚0.3mmの携帯電話用導光板を射出圧縮成形により成形する金型である。射出圧縮成形は、成形開始時から成形終了時までの間に可動金型12のキャビティ主面形成面18aと固定金型13のキャビティ主面形成面42aの間隔が可変となりキャビティC1,C2の容積が変更されるものである。従って型閉完了位置より手前に可動金型12を停止させ、溶融樹脂を射出後に可動金型12をそのまま前進させ圧縮する射出プレスと呼ばれるタイプも射出圧縮成形に含まれる。このような射出圧縮成形は、特に出光面等の面積と比較して板厚が薄い導光板(サイズについては限定されない)の成形を行う際に特に有利である。
【0013】
図1に示されるように射出圧縮成形金型11は、第1の金型である可動金型12と第2の金型である固定金型13とからなり、型合わせされた両金型12,13の間には容積および厚さが可変のキャビティC1,C2が形成されるようになっている。図示しない射出圧縮成形機の可動盤に取付けられる可動金型12には、可動盤側に断熱板14が取付けられた金型本体部15と、本体部側のコアブロック17、キャビティ主面形成用のコアブロック18、ランナ形成ブロック19等から形成されるコアブロック16と、枠基部20と側面形成ブロック29,30,31等から形成される可動枠部22が設けられている。
【0014】
本体部側のコアブロック17を挟んで金型本体部15と一体に設けられるキャビティ主面形成用のコアブロック18の固定金型13と対向する面は、導光板の一方の主面である出光面を形成するキャビティ主面形成面18aとなっており、成形される導光板の形状に略一致した略四角形をしている。前記キャビティ主面形成面18aは、鏡面からなっているが、グルーブや粗面加工等がなされたものでもよい。また前記キャビティ主面形成用のコアブロック18内には、キャビティ主面形成面18aと平行に冷却媒体流路24が配設され、キャビティC1,C2内の溶融樹脂が冷却されるようになっている。本実施形態ではキャビティ主面形成用のコアブロック18は、ステンレス鋼の焼入焼戻し鋼からなり、ELMAX(商品名:ウッデホルム社の商品名:ロックウエルCスケール硬度(HRC硬度)57〜60)が用いられている。またそれ以外にSTAVAX(ウッデホルム社の商品名:HRC硬度52〜53)や、ステンレス鋼であるSUS420J2(HRC硬度50〜54)等を用いてもよい。
【0015】
また金型本体部15の固定金型13側の面における略中央であって2個のキャビティ主面形成用のコアブロック18の間には、ランナ形成ブロック19が金型本体部15と一体に設けられている。そして図2に示されるようにランナ形成ブロック19の前面にはランナ形成面19aが形成されている。また図1に示されるように前記ランナ形成ブロック19には、金型本体部15を貫通して、エジェクタ装置の突き出しピン25が前後進可能に配設されている。そしてランナ形成ブロック19の内部には突き出しピン25を囲むように冷却媒体流路26が形成されている。更にランナ形成ブロック19と上記キャビティ主面形成用のコアブロック18との間には、ゲートカッタ装置のゲートカッタ27が前後進可能に配設されている。なお可動金型12のゲートカッタ27についても後述するWC/Cをコーティングしてもよい。
【0016】
前記金型本体部15の固定金型13側の面における上下の四隅近傍の4箇所には、凹部が形成され、該凹部内にはバネ28が前記固定金型13側に向けて取付けられている。そして前記バネ28の前記固定金型13側は、前記コアブロック16の周囲を囲むよう配設された可動枠部22のうちの枠基部20に固定されている。枠基部20は、本体側のコアブロック17の周囲を一定の間隙を隔てて取囲むよう形成されている。また前記金型本体部15には図示しないガイドロッドが固定金型13側に向けて設けられ、ガイドロッドが枠基部20の穴に挿通されることにより、枠基部20の型開閉方向の移動が安定するようにガイドしている。
【0017】
図1ないし図3に示されるように、枠基部20の固定金型13側には、側面形成ブロック29,30,31が配設されている。側面形成ブロック29,30,31は、それらを合わせてキャビティ主面形成用のコアブロック18を囲繞する枠形状となっている。側面形成ブロック29,30,31の内側面29b,30b,31bは、キャビティ主面形成用のコアブロック18の外側面18bと少なくとも型開閉方向に相対位置変更可能に略当接されている。また側面形成ブロック29,30,31の前面は固定金型13との当接面29a,30a,31aとなっている。本実施形態では側面形成ブロックはプリハードン鋼であるHPM38が用いられている。ただし他のプリハードン鋼、焼入焼戻し鋼、或いはマルテンサイト系ステンレス鋼のSUS420J2等であってもよい。側面形成ブロック31を除く側面形成ブロック29,30はそれぞれ、キャビティ主面形成用のコアブロック18に向けて押圧手段であるバネ34,35により押圧されている。そして側面形成ブロック29,30,31の内側面29b,30b,31bとキャビティ主面形成用のコアブロック18の外側面18bが摺動面として当接されるようになっている。なお側面形成ブロック29,30,31は、他の数に分割されるものでもよい。また側面形成ブロック30には入光面を形成する入光面形成ブロックを設けてもよい。
【0018】
側面形成ブロック29,30とキャビティ主面形成用のコアブロック18の関係は、どちらも略同じであるので、側面形成ブロック30とキャビティ主面を形成するブロック18の関係について図3により詳しく説明する。枠基部20の上方(または下方)には、ブラケット23が固定金型13側に延設されるよう張り出して固定されている。そして該ブラケット23の内側面には凹部が形成され、該凹部には押圧手段であるバネ34が固着されている。そして前記バネ34の先端は、側面形成ブロック30の外壁面に当接されている。また側面形成ブロック30は、型開閉方向に貫通孔32が設けられ、前記貫通孔32の内径よりも本体の外径が小さいショルダボルト33が挿通されて枠基部20のネジ穴に固定されている。従って側面形成ブロック30は、キャビティ主面形成用のコアブロック18の中心方向に向けて押圧された状態で枠基部20に固定されている。そして前記側面形成ブロック30による押圧力は、バネ34または別の固定ボルトを調整することにより、貫通孔32内のショルダボルト33の位置が僅かに移動されてキャビティC1内の射出樹脂圧に対抗できてかつ摺動面18b1,30b2の摺動に支障をきたさない適切な押圧力に調整することができる。
【0019】
図2に示されるように本実施形態では、側面形成ブロック30の内側面30bはキャビティ主面形成用のコアブロック18の他に、側面形成ブロック29の側面29cに向けても押圧されている。そして側面形成ブロック29については、バネ35を用いてキャビティ主面形成用のコアブロック18のみに向けて押圧されている。しかし一方の側面形成ブロック29のみがバネで前記コアブロック18に押圧されることにより、前記コアロック18に対して両側の側面形成ブロック29が圧着されるものでもよい。従って本発明においては全ての側面形成ブロックがコアブロックに押圧されていなくてもよく、押圧される側面形成ブロックは少なくとも1以上であればよい。また押圧手段はバネ以外のボルトの締め込みで押圧されるものやシリンダ等のアクチュエータにより型開閉方向と直交方向に移動可能に設けられたものでもよい。更には常時はコアブロックと側面形成ブロックとの間隙はバネにより一定間隔に開いているが、型閉時に他方の金型にガイドされてコアブロックに対して側面形成ブロックが型開閉方向と直交する方向に移動されて押圧され、型開時には再びバネの弾発力によりコアブロックから離れる方向に側面形成ブロックが移動されるものでもよい。
【0020】
そして側面形成ブロック30の固定金型13と対向する前面は、固定金型13との当接面30aとなっており、内側面30bにおける前側部分(固定金型13寄り部分)は、キャビティ側面形成面30b1となっている。また前記内側面30bのうちキャビティC1近傍側のキャビティ主面形成用のコアブロック18と当接する部分は、所定幅(一例として10〜20mm)の摺動面30b2となっており、その金型本体部15近傍側には摩擦面を減らす目的とガスを逃がす目的から一部にスリット30b3が形成されている。なお側面形成ブロック30のキャビティ側面形成面30b1と摺動面30b2は、キャビティ主面形成用のコアブロック18の移動によりその割合が変化する。
【0021】
また前記側面形成ブロック30が当接されるキャビティ主面形成用のコアブロック18の外側面18bについても摺動面となっている。そして前記コアブロック18の外側面18bもキャビティ側は所定幅の部分が摺動面18b1となっており、キャビティC1へ臨むキャビティ側接合部21において当接している。
【0022】
本実施形態ではキャビティ主面形成用のコアブロック18の外側面18bは、硬質材料Wがコーティングされ、耐摩耗加工されている。硬質材料Wは、側面形成ブロック30等との摺動時の摩擦係数が低く、硬度が高い材料が望ましく、タングステン系のタングステンカーバイド(WC、W2C、W3C)や、タングステンカーバイドカーボンコンポジット(WC/C)が特にステンレス系の鋼との摩擦係数に優れており好適に用いられる。なかでもタングステンカーバイド系の硬質材料WであるWC/Cの場合では、側面形成ブロック30等を構成するHPM38やSUS420J2との摩擦係数(無潤滑)は、0.2であり、ビーカース硬度HV1000〜1800程度であり、コスト面でも好適な硬質材料Wである。
【0023】
次に表で示すのは無潤滑下での金属部材の摺動テストである。テストでは超精密研磨機(SPEED FAM)にそれぞれの異なる金属材料のテストピースを取付け、回転および円運動により10,000回の摺動耐久テストを行った。その結果WC/Cコーティングを行わなかったサンプル1,2では摩耗粉の発生や表面傷が発生したが、WC/Cコーティングを行ったサンプル3,4では摩耗粉、振動・異音、表面状態ともに良好な結果が示された。
【0024】
【表1】

【0025】
なお前記外側面18bへのWC/Cのコーティングは、真空室内に前記コアブロック18を載置した上で、WC/Cの蒸着物質と不活性ガス等を導入し蒸着により行われ、膜厚は1〜10μm程度に形成される。従ってキャビティ主面形成面18aにマスキングをし、本体部側を底面としてキャビティ主面形成用のコアブロック18を載置すれば同時に4側面のコーティングが可能である。なお前記外側面18bに対する耐摩耗加工については、蒸着を行う場合は蒸着方法は限定されず、メッキや溶射処理を行った上で仕上加工したものでもよい。
【0026】
なお硬質材料Wとしては前記のWC/C以外に、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)も好適に用いられる。DLCの場合も、SUS420J2との摩擦係数(無潤滑)は、0.2前後であり、ビーカース硬度HV2000〜4000程度である。他にも硬質材料WとしてはTiN、TiCN、CrN、TiAIN等の窒化物等も用いることが可能であるが、いずれもSUS420J2との摩擦係数(無潤滑)は、0.4前後であるので、出来れば前記摩擦係数が0.3以下の硬質材料の方が低摩擦という点で好ましい。
【0027】
なお上記においてはキャビティ主面形成用のコアブロック18側に耐摩耗加工が行った例について記載したが、側面形成ブロック30等に耐摩耗加工を行ってもよく、前記コアブロック18と側面形成ブロック30等の少なくとも一方に耐摩耗加工が行われたものであればよい。ただし側面形成ブロック30等に耐摩耗加工を行う場合、耐摩耗加工を行う部品点数が多くなるという不利がある。なお両面に耐摩耗加工を行う場合は、硬質材料を替えることが望ましい。またコアブロック18または側面形成ブロック30等のうちカジリが発生しやすい部分のみ耐摩耗加工を行い、耐摩耗加工がされていない部分があってもよい。更にはランナ形成ブロック19の側面や側面形成ブロック31の内側面31bにも対摩耗加工を行ってもよい。
【0028】
またキャビティ主面形成用のコアブロック18の外側面18bと側面形成ブロック30等の内側面30b等の形状的な部分に関しては、金型本体部15側に形成されるスリット30b3は前記コアブロック18の外側面18bに形成してもよい。更には、前記コアブロック18と側面形成ブロック30等とを金型本体部15側で面当接させ、側面形成ブロック30等を押圧した状態で、キャビティ近傍側の両者の間隙が2μm以下の間隙を保つようにしてもよい。または前記コアブロック18の外側面18bと側面形成ブロック30の内側面30bのキャビティ近傍側の部分を一部だけ摺動面18b1,30b2とし前記摺動面18b1,30b2の間に間隙が2μm以下のスリットを形成したり、摺動面を微細な波状面としてもよい。更には前記コアブロック18または側面形成ブロック30等のいずれか一方にキャビティ主面形成面18aと平行方向にエア供給溝を形成し、前記エア供給溝と金型外部を管路により接続し、前記間隙や溝からキャビティC1等に向けて離型エアを供給するようにしてもよい。
【0029】
次に固定金型13について説明すると、図1に示されるように、図示しない射出圧縮成形機の固定盤に取付けられる固定金型13には、金型本体部41、キャビティ主面形成用のブロック42、インサートブロック43、スプルブッシュ44、固定ゲートカッタ45、当接ブロック46が配設されている。そして金型本体部41の固定盤側には、断熱板47が取付けられるとともに、図示しない射出装置のノズルが挿入される穴48が形成され、その周囲にはロケートリング49が取付けられている。金型本体部41の可動金型12側にはキャビティ主面形成用のブロック42が取付けられ、該キャビティ主面形成用のブロック42の可動金型12と対向する面は、キャビティ主面形成面42aとなっている。本実施形態においてこのキャビティ主面形成面42aは、導光板の反射面を形成する部分であり、微細なドットが刻設されている。なおキャビティ形成面についてはスタンパが表面に配設されるものであってもよい。またキャビティ主面形成用のブロック42の内部には、前記キャビティ主面形成面42aと平行に、冷却媒体流路50が形成されており、金型外部の温調器に接続されている。
【0030】
また前記キャビティ主面形成用のブロック42の下方には、インサートブロック43が金型本体部41に固着されている。そしてインサートブロック43の内部には、スプルブッシュ44が固定され、スプルブッシュ44の先端面とインサートブロック43のランナ形成面は、可動金型12のランナ形成ブロック19のランナ形成面19aと対向している。そして前記ランナ形成面は、前記ランナ形成面19aとともにランナP2を形成する面である。前記ランナ形成面の溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅は、スプルブッシュ44に隣接する部分からキャビティC1,C2に向けて徐々に広くなっている。そしてインサートブロック43の内部には前記スプルブッシュ44を囲むように冷却媒体流路51が形成されている。
【0031】
そしてインサートブロック43と、キャビティ主面形成用のブロック42との間には、固定ゲートカッタ45が固着されている。そして固定ゲートカッタ45の溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅は、可動側のゲートカッタ27と同じか僅かに幅広に形成されている。当接ブロック46の可動金型12側は、側面形成ブロック29,30,31の当接面29a,30a,31aと当接する当接面46aとなっている。なお固定金型13のキャビティ主面形成用のブロック42と当接ブロック46の間には図示しないエア通路を形成してもよい。
【0032】
次に本実施形態の射出圧縮成形金型11を用いた導光板の射出圧縮成形方法について説明する。そして本実施形態では対角寸法3インチ、板厚0.3mmの導光板を射出圧縮成形の一種である射出プレスにより成形する。図示しない型締装置の駆動により、固定盤に取付けられた固定金型13に対して可動盤に取付けられた可動金型12を当接させることにより型閉が行われ、図1に示されるように容積可変のキャビティC1,C2が形成される。次に所定の遅延時間が経過すると、図示しない射出装置のノズルからスプルブッシュ44を介して100〜400mm/secの射出速度により320〜380℃(加熱筒前部温度)のポリカーボネートの溶融樹脂を射出する。
【0033】
そして射出によりスクリュが所定位置まで前進したことが検出されると、図示しない型締装置を駆動させ型締を行う。型締装置の駆動によって可動金型12が前進されることにより側面形成ブロック29,30,31に対して相対的にキャビティ主面形成用のコアブロック18等からなるコアブロック16が前進し、キャビティC1,C2内の溶融樹脂の圧縮を行うことができる。この際、前記コアブロック18の外側面18bにはWC/Cがコーティングされているので、側面形成ブロック29,30が前記コアブロック18に向けてバネ34,35により押圧され、側面形成ブロック29,30,31の内側面29b,30b,31bと前記外側面18bが摺動状態であっても摩擦係数が低く、カジリを生じることはない。また両者のキャビティC1,C2側の面は摺動面18b1,30b2でありキャビティ側接合部21において当接しているので、溶融樹脂により成形される導光板にバリが形成されることが全くないか、或いは問題となるほどの大きさのバリとはならない。
【0034】
なお成形を重ねるにつれてキャビティ主面形成用のコアブロック18は溶融樹脂により昇温され熱膨張するが、側面形成ブロック29,30がバネ34,35で押圧されており、僅かに型開閉方向に直交方向に移動可能であるので、前記コアブロック18が熱膨張しても常に略一定の当接状態が保たれる。また前記の場合に、可動枠部22のうち枠基部20は移動されずに側面形成ブロック29,30のみが移動されるので、バネ28による押圧方向は、常に型開閉方向と平行であり、摺動面18b1,30b2等にカジリを発生させる原因とならない。なお本実施形態ではキャビティ主面形成用のコアブロック18の外側面18bと側面形成ブロック30等の内側面30bには、潤滑材等はまったく使用せずに成形を行うことができる。
【0035】
コアブロック16(キャビティ主面形成用のコアブロック18とゲートカッタ27とランナ形成ブロック19を含む)が前進し、所定時間が経過すると、ゲートカッタ装置によりゲートカッタ27を前進して、ゲートP3の切断を行う。本実施形態では、ゲートカッタ27によりゲートP3の切断が行われた後は、キャビティC1,C2内の溶融樹脂へは射出装置側からの保圧が完全に及ばなくなるが、型締装置の駆動によって可動金型12が前進されることにより側面形成ブロック29,30,31に対して相対的にキャビティ主面形成用のコアブロック18等が前進し、キャビティC1,C2内の溶融樹脂の圧縮を行うことができる。そして冷却媒体流路24,26,50,51には冷却媒体が流されているから、キャビティC1,C2やランナP2、スプルP1の溶融樹脂の冷却・固化が進行する。そして離型エアを用いる場合は、型開前から離型エアがキャビティC1,C2に向けて及ぼされ、圧抜・型開とともに、更に離型が促進される。また圧抜が行われると、バネ28の力によりキャビティ主面形成用のコアブロック18に対して側面形成ブロック29,30,31が前方に向けて相対的に移動する。そして型開されると図示しない取出用ロボットにより取出しが行われる。
【0036】
次に別の実施形態の導光板の射出圧縮成形金型について図4の要部の断面図により説明する。なお別の実施形態を示す図4については、先の実施形態と同一部材については同一符号で表わし、説明についても相違点のみ説明を行う。別の実施形態ではキャビティ主面形成用のコアブロック18の側面形成ブロック30等に隣接する部分に帯状の突条部61が備えられている。突条部61は頂上面部61aと斜面部61bからなり、その高さは20〜100μm、基部の幅は20〜200μmとなっている。そして突条部61の外側面は、摺動面18b1でありWC/C等のコーティングがされている。なお前記突条部61は、最もバリが発生しやすいキャビティ主面形成用のコアブロック18の両側部分と側面形成ブロック29,29との間だけに形成してもよい。
【0037】
前記突条部61が形成されていれば、射出時の樹脂圧力により側面形成ブロック30等のバネ34等が僅かに収縮し、摺動面18b1と30b2の間が僅かに開いてその部分によりバリが出来てしまう場合であっても導光板の出光面等よりも低い位置にバリが形成されるのでバリがほとんど問題とならない。またバネ34等の押圧力が余りに強すぎると摺動面18b1,30b2等にカジリが生じたり、側面形成ブロック30等が円滑に移動できない可能性があるが、この突条部61を設ければ、バネ34等の押圧力を必要以上に強力なものとしなくてもよい。そして前記の場合でも問題となるバリは形成されない。
【0038】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。上記の本実施形態および別の実施形態では第1の金型が可動金型12であり第2の金型が固定金型13の例について説明したが、第1の金型が固定金型であり第2の金型が可動金型であってもよい。また第1の金型と第2の金型は、縦型射出成形機の上型と下型(いずれか一方が可動金型でありいずれか他方が固定金型)であってもよい。
【0039】
また射出圧縮成形金型で成形される成形品は、導光板に限定されず、ディスク基板、レンズ、各種パネル、各種枠体、自動車部品等、限定されない。また成形材料についても樹脂の種類は限定されず、また樹脂以外の材料であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態の導光板の射出圧縮成形金型の断面図であって型当接された際の状態を示す図である。
【図2】本実施形態の導光板の射出圧縮成形金型の可動金型の正面図である。
【図3】本実施形態の導光板の射出圧縮成形金型の要部の断面図である。
【図4】別の実施形態の導光板の射出圧縮成形金型の要部の断面図である。
【符号の説明】
【0041】
11 射出圧縮成形金型
12 可動金型
13 固定金型
15 金型本体部
16 コアブロック
18 キャビティ主面形成用のコアブロック
18a キャビティ主面形成面
18b 外側面
18b1、30b2 摺動面
22 可動枠部
29,30,31 側面形成ブロック
29b,30b,31b 内側面
C キャビティ
W 硬質材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型本体部と一体に設けられるコアブロックと前記コアブロックに対して型開閉方向に相対位置変更される側面形成ブロックとが第1の金型に設けられ、前記側面形成ブロックと第2の金型とが当接されて容積可変のキャビティが形成される射出圧縮成形金型において、
前記側面形成ブロックは前記コアブロックに向けて押圧されるとともに、
前記側面形成ブロックの内側面およびコアブロックの外側面の少なくとも一方には耐摩耗加工がなされていることを特徴とする射出圧縮成形金型。
【請求項2】
金型本体部と一体に設けられるコアブロックと前記コアブロックに対して型開閉方向に相対位置変更される側面形成ブロックとが第1の金型に設けられ、前記側面形成ブロックと第2の金型とが当接されて容積可変のキャビティが形成される射出圧縮成形金型において、
前記側面形成ブロックは型開閉方向と直交方向に移動可能に設けられるとともに、
前記側面形成ブロックの内側面およびコアブロックの外側面の少なくとも一方には耐摩耗加工がなされていることを特徴とする射出圧縮成形金型。
【請求項3】
前記側面形成ブロックの内側面およびコアブロックの外側面は摺動面であり、キャビティ側接合部において当接していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の射出圧縮成形金型。
【請求項4】
前記耐摩耗加工は、WC/CまたはDLCからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の射出圧縮成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−36495(P2010−36495A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203314(P2008−203314)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】