説明

射出成型基板

【課題】 発熱量の大きな電子部品であっても、射出成型基板で一体化し、効率良く冷却をおこなうことが可能な基板アッセンブリ等を提供する。
【解決手段】 射出成型基板1は、電子部品搭載部9、発熱素子搭載部11が形成される。電子部品搭載部9は、電子部品等を搭載する部位であり、内部の回路導体15が露出する。第1の電子部品である電子部品13aは、電子部品搭載部9において、回路導体15と半田等によって電気的に接続される。発熱素子搭載部11は、発熱量の大きな電子部品を搭載する部位であり、内部の放熱板17が露出する。第2の電子部品である発熱素子13bは、発熱素子搭載部11において、放熱板17上に半田やボルト等によって設置される。発熱素子13bは、例えばスイッチング素子などである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、家電、産業機器等に用いられるDC−DCコンバータやインバータ等の大電流回路が設けられた射出成形基板と冷却モジュールとの射出成型基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車・家電・産業機器等に用いられる大電流回路を含む基板では、制御系回路や小電流が流れる回路は一般にプリント配線基板で構成され、大電流が流れるパワー系回路や素子は基板に搭載されず、別々に筺体に設置される。
【0003】
このような装置としては、例えば、トランスコイル、チョークコイル、全波整流回路、スイッチング素子などが、プリント配線基板とは別に、熱伝導グリスや絶縁シート、熱伝導性シリコンシートなどを介して筺体に取り付けられるDC−DCコンバータ装置がある(特許文献1)。
【0004】
また、プリント配線基板に搭載されない回路や素子を射出成型にて一体化する方法も採用されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−14149号公報
【特許文献1】特開平08−274431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような方法では、DC−DCコンバータやインバータ等の大電流回路を設置する筺体内部は、トランスコイル、チョークコイル、全波整流回路、スイッチング素子、プリント配線基板などの部品が別々に取り付けられるため、ネジ止めや半田付けなどの組立工程が多い。さらに部品同士を接続するバスバーやケーブルなど部品点数が多くなるため、コストダウンを阻害する。
【0007】
また、特許文献2のように、プリント配線基板以外の部分を射出成型基板化して、組み立て工数と部品点数減らす方法もあるが、射出成型基板は回路導体と部品が樹脂で覆われているため、電子部品の放熱性がネックとなり、省スペース化が不十分であり、スイッチング素子などの発熱量の大きい部品の一体化は困難であるという問題もある。
【0008】
例えば、図8は従来の基板アッセンブリ100を示す図(基板部は一部断面図)である。なお、本発明では、基板および冷却モジュールのサブアッセンブリを、基板アッセンブリと称する。
【0009】
図8に示すように、基板アッセンブリ100は、冷却モジュール101上に例えば、射出成型基板102が配置される。射出成型基板102には、電子部品搭載部105が形成されており、射出成型基板102内部の回路導体103が露出する。回路導体103には、電子部品107が接続される。
【0010】
射出成型基板102は、冷却モジュール101に対して、図示を省略した、たとえばボルト等で固定される。なお、冷却モジュール101は、金属製の筐体内部に冷却水等の冷媒が流されるものである。
【0011】
ここで、電子部品107は例えばコンデンサ等であり、その発熱量はそれほど大きくない。したがって、冷却モジュールとの間に樹脂が形成されていても問題がない。一方、スイッチング素子などの発熱素子109は、動作時に多くの熱を発生する。したがって、射出成型基板とは別に、直接冷却モジュール101上に図示を省略したボルト等で固定される。
【0012】
このように、従来は、発熱量の大きな電子部品は、基板とは別に冷却モジュール101上に直接配置されるため、組立工数を要し、部品点数も多くなる。しかしながら、発熱素子を基板と一体化すると、発熱素子の冷却が不足するという問題があった。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、発熱量の大きな電子部品であっても、射出成型基板で一体化し、効率良く冷却をおこなうことが可能な射出成型基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達するために本発明は、銅製の回路導体と、前記回路導体とは電気的に接続されない放熱部材と、を具備し、前記回路導体と前記放熱部材とが射出成型樹脂によって一体化され、前記放熱部材は、前記射出成型基板の裏面に露出し、第1の電子部品が前記回路導体と電気的に接続され、第2の電子部品が前記放熱部材に設けられることを特徴とする射出成型基板である。
【0015】
前記射出成型基板の裏面に露出する前記放熱部材の少なくとも一部はアルミニウムまたはアルミニウム合金製であってもよい。
【0016】
前記放熱部材の少なくとも一部は高熱伝導性の絶縁部材であってもよい。この場合、前記絶縁部材は、前記回路導体と接触してもよい。
【0017】
前記第2の電子部品はコイル部を含み、前記コイル部のコイル間が前記絶縁部材で構成されてもよい。
【0018】
前記放熱部材の一部には、アンカ効果によって前記射出成型樹脂からの脱落を防止するための放熱部材保持構造が設けられてもよい。
【0019】
本発明によれば、回路導体とは電気的に接続されない放熱部材が射出成型基板に一体で構成され、放熱部材上には、特に発熱量の大きな電子部品を搭載可能である。また、放熱部材が射出成型基板の裏面に露出するため、冷却モジュールと放熱部材とを直接接触させることができる。このため、高い放熱(冷却)効果を得ることができる。
【0020】
通常、冷却モジュールの筐体を構成する金属(合金)は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製であるため、放熱部材を構成する金属(合金)と冷却モジュールの筐体を構成する金属(合金)とを同種とすることで、異種金属の接触による電食の問題もなく、また、線膨張係数が近いため、過剰な応力等が放熱部材や筐体に付与されることがない。
【0021】
ここで、同種金属とは、必ずしも化学成分において全く同一の金属でなくてもよく、金属のイオン化傾向や線膨張係数の差が小さな同一系の金属種を含むものである。
【0022】
また、放熱部材の一部が高熱伝導の絶縁部材で構成されれば、放熱部材と回路導体を接触させても、電気的には絶縁された状態となる。このため、回路導体からの熱も放熱可能である。
【0023】
また、第2の電子部品の一部としてトランスコイルを含む場合において、トランスコイルのコイル間の絶縁を当該絶縁部材で行うことで、トランスコイルで発生する熱を、絶縁部材を介して基板の裏面側に接触する冷却モジュールに伝えることができる。このため、トランスコイルを効率良く冷却することができる。
【0024】
また、コイルの絶縁部材を高熱伝導性のものを用い、絶縁部材を基板の裏面側に露出させることで、コイルからの熱を効率良く放熱することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、発熱量の大きな電子部品であっても、射出成型基板で一体化し、効率良く冷却をおこなうことが可能な射出成型基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】射出成型基板1を示す斜視図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組立斜視図。
【図2】基板アッセンブリ10を示す図であり、射出成型基板1については、図1(b)のA−A線断面図。
【図3】射出成型基板20を示す斜視図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組立斜視図。
【図4】基板アッセンブリ30を示す図であり、射出成型基板20については、図3(b)のB−B線断面図。
【図5】放熱板21の各種保持構造を示す図で、図4のC部拡大図。
【図6】基板アッセンブリ50を示す図。
【図7】放熱板17、21の他の実施形態を示す図。
【図8】従来の基板アッセンブリ100を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は射出成型基板1を示す図で、図1(a)は分解斜視図、図1(b)は組立斜視図である。なお、以下の図においては、半田等の図示を省略する。射出成型基板1は、電子部品搭載部9、発熱素子搭載部11が形成される。
【0028】
電子部品搭載部9は、電子部品等を搭載する部位であり、内部の回路導体15が露出する。第1の電子部品である電子部品13aは、電子部品搭載部9において、回路導体15と半田等によって電気的に接続される。発熱素子搭載部11は、発熱量の大きな電子部品(以下発熱素子)を搭載する部位であり、内部の放熱板17が露出する。第2の電子部品である発熱素子13bは、発熱素子搭載部11において、放熱板17上に半田やボルト等によって設置される。発熱素子13bは、例えばスイッチング素子などである。
【0029】
図2は、射出成型基板1が冷却モジュール3に設置された状態の基板アッセンブリ10を示す図であり、射出成型基板1は、図1(b)のA−A線断面図である。射出成型基板1は、回路導体15および放熱板17が射出樹脂によって一体で形成されるものである。
【0030】
回路導体15は、例えば複数の回路素材からなり、一部の露出部(電子部品搭載部9等)を除き、樹脂によって被覆される。回路差材同士は、半田や絶縁部材その他の部材によって互いに接合されて回路を構成する。なお、回路導体15は、複数層に形成されてもよく、必要に応じて、回路素材間は射出樹脂によって絶縁される。
【0031】
回路素材としては、例えば400μm以上の厚さの銅板等が用いられる。400μm未満では、大電流に耐えることが難しく、また、射出成型時の樹脂圧によって変形等の恐れがあるためである。なお、導体回路素材の厚さとしてさらに望ましくは、400μm〜1000μmである。厚すぎると、コスト及び重量等が増加し、コンパクトな基板を形成することができなくなるためである。
【0032】
放熱部材である放熱板17は、例えばアルミニウム製(アルミニウム合金製)である。放熱板17は回路導体とは接触せず、回路導体と電気的には接続されていない。ここで、冷却モジュール3の筐体(射出成型基板1と接触する部位)は、熱伝導の良い例えばアルミニウム製(アルミニウム合金製)である。すなわち、放熱板17と冷却モジュール3の筐体とは、互いに同種の金属(イオン化傾向が近く、線膨張液数も近い材量)であることが望ましい。同種の金属とは、上記特性の近い金属で、例えば、JISの同系合金(純アルミ系など)を指すものである。
【0033】
放熱板17は射出成型基板1の裏面側にも露出する。露出した放熱板17には、冷却モジュール3が直接接触するように配置される。したがって、発熱素子13bで発生した熱は、放熱板17を介して冷却モジュール3に伝達される。このため、発熱素子13bを効率良く冷却することができる。
【0034】
ここで、射出成型基板1は以下のように製造される。まず、銅板等の導体である回路素材をプレスにより打ち抜き、必要な曲げ加工を施して所望の形状に形成する。銅板等には、必要に応じてSnメッキ等を施してもよい。次いで、複数の回路素材同士を溶接、または絶縁部材等を介して接合して回路導体を形成する。回路導体は、平面のみではなく、複数層に層状に形成されてもよい。同様に、プレスおよび曲げ加工等によって放熱板を形成する。
【0035】
得られた回路導体および放熱板を、互いに電気的に接触させずに所定位置にピン等で射出成型金型に固定する。次いで、金型に樹脂を射出して射出成型を行う。この際、必要な導体露出部以外の部位が樹脂により被覆され、また、回路素材同士の層間や回路導体と放熱板との間にも樹脂が射出される。このようにして射出成型基板1が形成される。
【0036】
なお、射出樹脂としては、絶縁性があり、射出成型が可能であればよく、例えば、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフタルアミド等が使用できる。
【0037】
次に、電子部品搭載部9に電子部品13aを搭載する。また、同時に、放熱素子搭載部11に発熱素子13bを搭載する。電子部品13aと電子部品搭載部9の導体露出部との接合は、例えば半田等を用いることができる。なお、発熱素子13bと放熱板17との接続は、半田であってもよく、ボルト等を用いてもよいが、発熱素子13bを半田で接合すれば、電子部品13aとともに、リフロー炉で一括して接合を行うことができるため、別途ボルト等による固定が不要である。
【0038】
また、発熱素子13bと放熱板17との熱伝達を確保するためには、発熱素子13bと放熱板17とを密着させることが望ましく、ボルトなどで固定する場合には必要に応じてサーマルインターフェース等を間に設けてもよい。また、放熱板17と冷却モジュール3の表面も密着させることが望ましく、必要に応じてサーマルインターフェース等を間に設けてもよい。
【0039】
なお、図示を省略するが、電子部品13aとは別に、プリント基板を設置してもよい。この場合、プリント基板に小型の電子部品をあらかじめ搭載しておき、プリント基板を射出成型基板1に形成される回路導体の一部と接続してもよい。このようなプリント基板は、従来のガラスエポキシ基板を用いて構成すればよい。すなわち、プリント基板は、たとえば、ガラスエポキシ基板上に、複数の電子部品(セラッミクコンデンサ等)が搭載されて、射出成型基板に半田等で接続されていればよい。
【0040】
なお、射出成型基板等の構成は、図に示すような配置および形状に限られることはなく、その他の部品等を適宜搭載することや、配置および形状を適宜変更することが可能なことは言うまでもない。
【0041】
本発明によれば、スイッチング素子などの発熱素子が他の電子部品と一体で射出成型基板1上に配置することができるため、部品点数が少なく、取り扱い性に優れる基板アッセンブリ10を得ることができる。また、発熱素子13bから発生した熱は、回路導体15とは接触していない独立した放熱板17上に配置される。このため、発熱素子13bの影響を、他の電子部品13aが受けることがない。
【0042】
また、放熱板17が直接冷却モジュール3の筐体を接触するため、発熱素子13bを効率良く冷却することができる。この際、冷却モジュール上に発熱素子13bをボルト等で接続する必要がなく、発熱素子13bを半田等によって射出成型基板1と一体化することができるため、組立作業も容易である。
【0043】
また、回路導体を構成する金属として電気伝導性の高い銅(銅合金)を用いた場合においても、放熱板17を構成する金属が冷却モジュール3の筐体を構成する金属と同種金属(アルミニウム製)であるため、接触による電食が防止され、接触部における線膨張係数の差による放熱板17の浮き上がり等も防止することができる。
【0044】
次に、第2の実施の形態について説明する。図3は、第2の実施の形態にかかる射出成型基板20を示す図であり、図3(a)は分解斜視図、図3(b)は組立斜視図である。また、図4は、射出成型基板20が冷却モジュール3に設置された状態の基板アッセンブリ30を示す図であり、射出成型基板20は、図3(b)のB−B線断面図である。なお、以下の実施の形態において、射出成型基板1、基板アッセンブリ10と同様の機能を奏する構成については、図1〜図2と同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0045】
射出成型基板20は、射出成型基板1と略同様であるが、コイル部が設けられる点で異なる。射出成型基板20は、例えば自動車用のDC−DCコンバータとして用いられる基板である。射出成型基板20に設けられるコイル5は、例えばチョークコイルであって、外部より入力された電流を平滑化するためのものである。なお、コイル部はトランスコイルであってもよい。
【0046】
また、本実施形態の基板としては、図示したような基板に限られず、コイル部を有し、大電流が流れる基板に対しては、当然に適用可能である。すなわち、図に示すような配置および形状に限られることはなく、その他の部品等を適宜搭載することや、配置および形状を適宜変更することが可能なことは言うまでもない。
【0047】
コイル5には、コア部7が形成される。コア部7はコア形成樹脂により形成される。コア部7は、少なくともコイル5の芯部6を覆うように(充填されるように)形成される。なお、コア部7は、コイル5の芯部6に形成されれば、図示したようにコイル5の全体を覆ってもよい。この場合、コア部7の幅がコイル5(基板形成樹脂で被覆された状態のコイル部)の幅よりも大きく、コア部7の側面は、コア部7の上下面に渡って連続して形成される。なお、本発明では、回路導体で形成されるコイル5も発熱素子である第2の電子部品に含まれるものとする。
【0048】
コア部7は、磁性材料で構成されるが、例えば、磁性フィラーを含むコア形成樹脂により形成されてもよい。この場合、コア形成樹脂の母材としては基板形成樹脂と同様の樹脂を用いることができるが、基板形成樹脂に対して溶融温度が低いものを選択することが望ましい。コア形成樹脂は、基板形成樹脂の射出成形後に射出成形基板に対して射出成形されるため、コア形成樹脂の射出時に、基板形成樹脂が溶融することを防止するためである。基板形成樹脂としては例えばポリフェニレンスルファイドが使用でき、コア形成樹脂としてはポリブチレンテレフタレートとすればよい。
【0049】
磁性フィラーとしては、ソフトフェライト、ハードフェライト、FeおよびFe系合金、Co系アモルファス等を用いることができる。なお、磁性フィラーとしては絶縁性を有することが望ましく、この場合、例えば株式会社神戸製鋼所のマグメルGC(登録商標)(鉄粉表面に高耐熱性および高絶縁性を有する無機系絶縁皮膜を形成した絶縁処理鉄粉)が使用できる。
【0050】
コイル5は、導体が円状に構成され、中心の孔(芯部6)を貫通するようにコア形成樹脂が射出されてコア部7が形成される。なお、コア形成樹脂に含まれる磁性フィラーが絶縁材であれば、コア部7は、基板形成樹脂で被覆されたコイル5の上層に形成されるのではなく、回路導体であるコイル5に直接射出されて被覆されてもよい。
【0051】
図4に示すように、コイル5の下面側であって、コア部7との境界には、放熱部材である放熱板21が設けられる。放熱板21は、例えば放熱板17と同一の材質で構成される。放熱板21の一方の端部はコイル5の近傍に配置され、放熱板21の他方の端部が、射出成型基板20の下面側に露出する。したがって、射出成型基板20を冷却モジュール3上に設置した際、放熱板21と冷却モジュール3とが接触する。放熱板21は、コイル5で発生した熱を、冷却モジュール3に伝達するものである。
【0052】
なお、図示した例では、放熱板21は、コイル5の下部から、コア部7に沿って段差を形成するように屈曲して射出成型基板20の下面に露出して、冷却モジュールと接触する。一方、基板の先端側では、放熱板21の端部は基板樹脂に沿ってまっすぐに形成され、冷却モジュールと接触する。すなわち、当該部位は、冷却モジュール3がコア部7に沿って凸状に形成される。このように、本発明では、放熱板が発熱部にできるだけ近い位置に形成され、射出成型基板の裏面に露出すれば、その形状は問わず、冷却モジュールまたは放熱板の少なくとも一方を屈曲(凹凸形状)して互いが接触可能に形成されれば、いずれの形状であってもよい。
【0053】
図5は、図4のC部拡大図である。例えば、図5(a)に示すように、放熱板21の端部に、放熱板保持構造である段部22aを設けてもよい。段部22aは、射出成型基板20の表面(裏面側)から深くなる位置が張り出すように段差が形成される。
【0054】
前述の通り、射出成型基板20は、下面に放熱板21が露出する。したがって、放熱板21が射出成型基板の樹脂から脱落(剥がれ)する恐れがある。しかしながら、放熱板21の一部に、段部22aのような放熱板保持構造を形成することで、段部22aによって、放熱板21が脱落する方向に対してアンカ効果を発揮し、放熱板21が保持される。したがって、放熱板21が強固に固定されると共に、樹脂部から脱落することがない。
【0055】
なお、放熱板保持構造としては、例えば、図5(b)に示すように、放熱板21の一部に、逆テーパ孔22bを設けてもよい。逆テーパ孔22bは、射出成型基板20の表面(裏面側)から深くなる方向に縮径する孔である。逆テーパ孔22bによって、放熱板21が脱落する方向に対してアンカ効果を発揮し、放熱板21が保持される。したがって、放熱板21が強固に固定されると共に、樹脂部から脱落することがない。
【0056】
同様に、放熱板保持構造としては、例えば、図5(c)に示すように、放熱板21の一部に、段付孔22cを設けてもよい。段付孔22cは、射出成型基板20の表面(裏面側)から深くなる方向に縮径する段差を有する孔である。段付孔22cによって、放熱板21が脱落する方向に対してアンカ効果を発揮し、放熱板21が保持される。したがって、放熱板21が強固に固定されると共に、樹脂部から脱落することがない。
【0057】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態にかかる基板アッセンブリ10と同様の効果を奏することができる。また、発熱部がコイルであっても、発生した熱を効率良く冷却モジュールに伝達することができる。
【0058】
また、放熱板保持構造が形成されるため、放熱板21が射出成型基板20から脱落することがない。
【0059】
次に、第3の実施の形態について説明する。図6は第3の実施の形態にかかる基板アッセンブリ50を示す図である。基板アッセンブリ50は基板アッセンブリ30と略同様の構成であるが、放熱板21に代えてセラミック絶縁体31が形成される点で異なる。
【0060】
セラミック絶縁体31は、高熱伝導性の絶縁体である。このような材料としては、例えばジルコニア、アルミナなどが適用可能である。セラミック絶縁体31は、絶縁部材であるため、回路導体と接触しても、電気的には絶縁状態を保つことができる。すなわち、放熱部材となるセラミック絶縁体と回路導体とが熱伝導率の低い樹脂を介さずに接触するため、回路導体をより効率よく冷却することができる。
【0061】
セラミック絶縁体31の少なくとも一部は、射出成型基板40の裏面側に露出する。射出成型基板40の裏面側に露出するセラミック絶縁体31は冷却モジュール3と接触する。したがって、コイル5と接触するセラミック絶縁体31がコイル5の熱を奪い、冷却モジュール3によって効率良くコイル5を冷却することができる。
【0062】
このようなセラミック絶縁体を用いた射出成型基板は、例えば以下のように製造される。まず、プレス等によって板状に成形したセラミック絶縁体を、射出成型金型の所定位置に設置し、さらに、回路導体等の部材を金型に設置する。コイルを形成する場合には、必要に応じて、板状セラミック絶縁体と一次コイルと二次コイルを構成する回路素材とを積層させて金型に設置する。この状態で金型に樹脂を射出して、回路導体およびセラミック絶縁体を一体に成形する。この際、セラミック絶縁体の一部が、放熱板17と同様に基板の裏面に露出するようにする。
【0063】
また、セラミック絶縁体自体を射出成型してもよい。例えば、一次コイルと二次コイルを構成する回路素材を金型に設置した状態で、セラミック粉末を射出して焼き固めることで、コイル部を形成し、その後、当該コイル部を射出金型に設置して、樹脂を射出し、射出成型基板を形成してもよい。なお、熱伝導の観点では、ジルコニアよりもアルミナが優れるが、強度の観点では、アルミナよりもジルコニアの方が優れる。
【0064】
第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態にかかる基板アッセンブリ10と同様の効果を奏することができる。また、セラミック絶縁体を用いることで、コイルを形成する導体同士の絶縁と、当該部位の放熱(冷却)とを簡易な構造で確実に行うことができる。
【0065】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0066】
例えば、上記説明した各構成は、互いに組み合わせることが可能である。また、図7に示すように、放熱板は射出成型基板に対して平行に形成されるだけでなく、L字状等に屈曲させて、上部が射出成型基板に垂直に突出するようにしてもよい(図7の放熱板17)。この場合、冷却モジュール3に熱を逃がすことと共に、上方へ熱を放熱させることができる。また、射出成型基板が冷却モジュール3の角に位置する場合には、放熱板をL字状等に屈曲させて射出成型基板の裏面および側面に露出させてもよい(図7の放熱板21)。
【符号の説明】
【0067】
1、20、40………射出成型基板
3………冷却モジュール
5………コイル
6………芯部
7………コア部
9………電子部品搭載部
10、30、50………基板アッセンブリ
11………発熱素子搭載部
13a………電子部品
13b………発熱素子
15………回路導体
17、21、23………放熱板
22a………段部
22b………逆テーパ孔
22c………段付孔
31、33………セラッミク絶縁体
100………基板アッセンブリ
101………冷却モジュール
102………射出成型基板
103………回路導体
105………電子部品搭載部
107………電子部品
109………発熱素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅製の回路導体と、
前記回路導体とは電気的に接続されない放熱部材と、を具備し、
前記回路導体と前記放熱部材とが射出成型樹脂によって一体化され、前記放熱部材は、射出成型基板の裏面に露出し、
第1の電子部品が前記回路導体と電気的に接続され、
第2の電子部品が前記放熱部材に設けられることを特徴とする射出成型基板。
【請求項2】
前記射出成型基板の裏面に露出する前記放熱部材の少なくとも一部はアルミニウムまたはアルミニウム合金製であることを特徴とする請求項1記載の射出成型基板。
【請求項3】
前記放熱部材の少なくとも一部は高熱伝導性の絶縁部材であること特徴とする請求項1または請求項2に記載の射出成型基板。
【請求項4】
前記絶縁部材は、前記回路導体と接触することを特徴とする請求項3記載の射出成型基板。
【請求項5】
前記第2の電子部品はコイル部を含み、前記コイル部のコイル間が前記絶縁部材で構成されること特徴とする請求項3または請求項4に記載の射出成型基板。
【請求項6】
前記放熱部材の一部には、前記射出成型樹脂からの脱落を防止するための放熱部材保持構造が設けられることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の射出成型基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−190955(P2012−190955A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52469(P2011−52469)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】