説明

射出成形装置

【課題】加熱手段の埋設又は加熱媒体を供給するための加熱媒体通路の形成と、冷却媒体を供給するための冷却媒体通路の形成とが、構造が簡単で安価にできる射出成形装置を提供すること。
【解決手段】上金型本体6の上面には断面が縦長のU字形状を呈し、成形部30に沿って蛇行して折り返すように収納溝34が形成される。この収納溝34内にはこの収納溝34に沿ってこの収納溝34の半円形状の底面に当接するように、この収納溝34の最深部に電熱ヒーター42が圧入されて埋設された状態で、この収納溝34を形成する内壁に固定される。更に、この電熱ヒーター42を封止剤43により水封止して、上金型基体5との間で形成されるこの収納溝34内における上面が水平面とされた封止剤43の上方の空間は冷却水が流れる冷却媒体通路44となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上金型と下金型を閉じた状態でゲートを介してキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の射出成形装置は、例えば特許文献1などに開示されているように、キャビティを構成する上金型と下金型の熱伝導を高速化させるように、それらの両金型の肉厚を可能な限り薄く形成して、それら金型の肉厚削減に伴う強度低下部分へ断熱補強材を設けて二重構造を形成し、それら両金型の肉薄構造部分の側壁に電熱ヒーターと冷却媒体通路とを交互に並設する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−174552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加熱手段である電熱ヒーターの埋設のための溝と、これとは別に冷却媒体通路を形成するための溝を交互にわざわざ設けねばならず、構造が複雑で金型に溝を形成するための切削加工に要する時間及び手間が掛かって高価なものとなる。また、電熱ヒーターによる加熱及び冷却媒体通路に冷却水を供給させることによる冷却を更に高めようとすると、電熱ヒーターの埋設のため及び冷却媒体通路の形成のための溝の数を増やさねばならず、切削加工に要する時間及び手間が尚更掛かる。更には、加熱及び冷却を更に高めようとすると、電熱ヒーターの埋設のための溝と冷却媒体通路を形成するための溝との間隔を狭める必要があり、形成する溝の数に限りがあるから、その面でも問題がある。
【0005】
そこで本発明は、上記の点に鑑み、加熱手段の埋設又は加熱媒体を供給するための加熱媒体通路の形成と、冷却媒体を供給するための冷却媒体通路の形成とが、構造が簡単で安価にできる射出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため第1の発明は、上金型と下金型とを閉じた状態でゲートを介してキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する射出成形装置において、少なくとも前記上金型又は前記下金型のいずれか一方を前記キャビティ表面を形成する金型本体と、前記キャビティ表面を形成しない金型基体とで形成し、前記金型本体の裏面側に前記キャビティに沿って溝を形成して、この溝内に加熱手段を埋設すると共にこの溝を冷却媒体が流れる冷却媒体通路としたことを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、上金型と下金型とを閉じた状態でゲートを介してキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する射出成形装置において、少なくとも前記上金型又は前記下金型のいずれか一方を前記キャビティ表面を形成する金型本体と、前記キャビティ表面を形成しない金型基体とで形成し、前記金型本体の裏面側に前記キャビティに沿って溝を形成して、この溝内に加熱手段を封止剤により封止した状態で埋設すると共にこの溝を冷却媒体が流れる冷却媒体通路としたことを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、上金型と下金型とを閉じた状態でゲートを介してキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する射出成形装置において、少なくとも前記上金型又は前記下金型のいずれか一方を前記キャビティ表面を形成する金型本体と、前記キャビティ表面を形成しない金型基体とで形成し、前記金型本体の裏面側に前記キャビティに沿って溝を形成して、この溝内に加熱手段を収納した保護パイプを埋設すると共にこの溝を冷却媒体が流れる冷却媒体通路としたことを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、上金型と下金型とを閉じた状態でゲートを介してキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する射出成形装置において、少なくとも前記上金型又は前記下金型のいずれか一方を前記キャビティ表面を形成する金型本体と、前記キャビティ表面を形成しない金型基体とで形成し、前記金型本体の裏面側に前記キャビティに沿って溝を形成して、この溝内に加熱手段を収納した保護パイプを埋設すると共にこの保護パイプの前記溝の壁面に接していない前記溝の開口側の外周部の中央部を除いて固定剤により固定し、前記溝を冷却媒体が流れる冷却媒体通路としたことを特徴とする。
【0010】
第5の発明は、上金型と下金型とを閉じた状態でゲートを介してキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する射出成形装置において、少なくとも前記上金型又は前記下金型のいずれか一方を前記キャビティ表面を形成する金型本体と、前記キャビティ表面を形成しない金型基体とで形成し、前記金型本体の裏面側に前記キャビティに沿って溝を形成して、この溝内に加熱媒体が流れる加熱媒体通路と冷却媒体が流れる冷却媒体通路とを形成したことを特徴とする。
【0011】
第6の発明は、上金型と下金型とを閉じた状態でゲートを介してキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する射出成形装置において、少なくとも前記上金型又は前記下金型のいずれか一方を前記キャビティ表面を形成する金型本体と、前記キャビティ表面を形成しない金型基体とで形成し、前記金型本体の裏面側に前記キャビティに沿って溝を形成して、この溝内にその内部に加熱媒体が流れる中空パイプを埋設すると共にこの溝内の前記中空パイプを除いた部分を冷却媒体が流れる冷却媒体通路としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱手段の埋設又は加熱媒体を供給するための加熱媒体通路の形成と、冷却媒体を供給するための冷却媒体通路の形成とが、構造が簡単で安価にできる射出成形装置を提供することができる。また、埋設された加熱手段を冷却媒体封止しているので、確実に漏電を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態の射出成形装置の縦断正面図である。
【図2】上金型の底面図である。
【図3】溶融した合成樹脂の射出前の状態の図2のA−A断面図である。
【図4】溶融した合成樹脂の射出した状態の図2のA−A断面図である。
【図5】図3の部分拡大図である。
【図6】図5の部分拡大図である。
【図7】第2の実施形態を示す図である。
【図8】第3の実施形態を示す図である。
【図9】第4の実施形態を示す図である。
【図10】第5の実施形態を示す図である。
【図11】第6の実施形態を示す図である。
【図12】射出成形装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図1乃至図5に基づき、本発明の射出成形装置の第1の実施の形態について説明する。先ず、図1に基づいて、射出成形装置の全体構成について説明する。1は図示しない固定プラテンにボルトによって取り付けられた固定側組立体であり、この固定側組立体1は固定側第1ベースプレート2と、この固定側第1ベースプレート2にボルトによって固定された固定側第2ベースプレート3と、この固定側第2ベースプレート3にボルトによって固定された固定側第3ベースプレート4と、この固定側第3ベースプレート4の下面に開設された凹部内に配設されてこの固定側第3ベースプレート4にボルトにより固定される上金型基体5と、この上金型基体5底面に形成された凹部に嵌合してこの上金型基体5に固定されて上金型基体5とで上金型(固定金型)を構成する上金型本体6と、前記固定側第1ベースプレート2の前記固定プラテン寄りに設けられ固定側第1ベースプレート2を固定プラテンに対して位置決めするロケートリング7と、このロケートリング7に隣設して配設されたスプルーブッシュ8等とから成る。
【0015】
そして、前記スプルーブッシュ8の中心には射出ノズルから射出される溶融した合成樹脂を通すための第1スプルー9が形成され、その下端部には第1ランナー10が形成され、この第1ランナー10の出口たる第2スプルー11が形成され、更にこの第2スプルー11の下端部には第2ランナー12が形成され、この第2ランナー12の出口たるゲート13が形成される。
【0016】
一方、20は図示しない可動プラテンにボルトによって取り付けられた可動側組立体であり、この可動側組立体20は可動側第1ベースプレート21と、この可動側第1ベースプレート21にボルトによって固定された可動側第2ベースプレート22(エジェクタプレート)と、この可動側第2ベースプレート22を囲むように前記可動側第1ベースプレート21にボルトによって固定された可動側第3ベースプレート23と、この可動側第3ベースプレート23にボルトによって固定された可動側第4ベースプレート24と、この可動側第4ベースプレート24の上面に開設された凹部内に嵌合してこの可動側第4ベースプレート24に固定される可動金型である下金型26等から成る。
【0017】
そして、前記可動側第3ベースプレート23に立設されたガイド棒(図示せず)が、固定側第3ベースプレート4に設けられたガイド孔に挿入して、このガイド孔に前記ガイド棒が案内されて可動側組立体20が上下可能となる。
【0018】
そして、前記下金型26上面と前記上金型本体6の下面に形成された凹部とでキャビティSが形成され、このキャビティS内に前記ゲート13を介して溶融した合成樹脂が射出され、成形品が作製される。14はエジェクターピンで、型開き時に前記下金型26と前記上金型本体6との間のキャビティS内で成形された成形品を前記下金型26から離型するためのものである。
【0019】
次に、上金型本体6の底面図である図2乃至図4に基づき、前記上金型本体6について詳述する。前記固定側第3ベースプレート4には各外側面に冷却媒体である、例えば冷却水の入り口15と出口16とが複数設けられており、またこの固定側第3ベースプレート4には前記入り口15と出口16とにそれぞれ連通する6つの入り口通路17A、出口通路18Aが形成され、また前記上金型基体5には前記入り口通路17A、出口通路18Aにそれぞれ連通する6つの入り口通路17B、出口通路18Bが形成される。
【0020】
そして、上金型本体6の下面には前記キャビティSを形成する凹んだ成形部30が形成され、この上金型本体6の上面(裏面側)には前記上金型基体5の各入り口通路17B、出口通路18Bに各端部が連通する6条の収納溝34が形成される。これらの収納溝34は断面が縦長のU字形状を呈し、前記成形部30に沿って(キャビティSに沿って)蛇行して折り返すように形成された6条の溝である。
【0021】
なお、前記上金型本体6の上面にはこの上金型本体6が薄いために、これを補強するために補強用リブ36が突設されている。この補強用リブ36は前後方向に延びたもの1本と、左右方向に延びた2本とが互いに交差するように延びたもの2本とで構成される。そして、上金型基体5の底面には前記上金型本体6を収納して嵌合される凹部40が形成され、この凹部40内に前記上金型本体6を収納する際に、上金型本体6の周縁部6Aが上金型基体5の凹部40を形成する開口縁部5Aに当接すると共に、前記補強用リブ36が前記上金型基体5底面に形成された嵌合溝41に嵌合される。
【0022】
そして、図2のA−A断面図である図3及び図4、図3の部分拡大図である図5に示すように、前記収納溝34内にはこの収納溝34に沿ってこの収納溝34の半円形状の底面に当接するように、この収納溝34の最深部に加熱手段である電熱ヒーター42が圧入されて埋設された状態で、この収納溝34を形成する内壁に固定される。更に、この電熱ヒーター42を封止剤43により水封止(「冷却媒体封止」であり、以下同じ。)して、前記上金型基体5との間で形成されるこの収納溝34内における上面が水平面とされた封止剤43の上方の空間は、冷却媒体である、例えば冷却水が流れる冷却媒体通路44となる。
【0023】
なお、前記電熱ヒーター42は前記収納溝34の半円形状の底面の半径と断面の外径が略同径の円形状を呈しており、前述したように、前記収納溝34の底面に当接するように前記電熱ヒーター42が圧入されて埋設されることとなる。
【0024】
前記封止剤43は、超耐熱性及び熱伝導性が良好な材質であって、電熱ヒーター42を水封止した状態で前記収納溝34内に固定するために接着効果を有する。従って、前記冷却媒体通路44に冷却水が流れても、漏電することが防止され、安全であって、長期間使用することができる。
【0025】
以上の構成により、以下第1の実施形態の射出成形装置の動作について説明すると、初めに前記電熱ヒーター42に通電して前記上金型本体6のキャビティ形成面側がキャビティS内に射出する合成樹脂の種類に応じた所定温度となるように昇温を開始させ、固定側組立体1と可動側組立体20とを型閉めする。
【0026】
このように、昇温を開始した後に型閉めする場合に限らず、昇温の開始と同時に型閉めしたり、型閉めしてから昇温を開始してもよく、以後特別に限定する説明がない場合には、「昇温を開始した後に型閉めする」と表現しても、そのように解釈すべきものである。
【0027】
この場合、前記上金型本体6のキャビティ形成面側の温度が射出する合成樹脂の軟化点温度の周辺温度(軟化点温度を含むその前後の温度範囲内、以下同様である。)となるように加熱させる。そして、前記上金型本体6のキャビティ形成面側を加熱する前記電熱ヒーター42によっても、前記封止剤43は超耐熱性を有するので、水封止の効果を長期間持続することができる。
【0028】
そして、前記上金型本体6のキャビティ形成面側が軟化点温度の前記周辺温度となると、前記電熱ヒーター42への通電を停止する。そして、射出ノズルをスプルーブッシュ8に通して、溶融した合成樹脂Jを第1スプルー9、第1ランナー10、第2スプルー11、第2ランナー12、ゲート13を介して前記下金型26と上金型本体6とで形成されるキャビティS内に射出する(図4参照)。
【0029】
そして、この溶融した合成樹脂Jを射出した後、この合成樹脂Jの圧縮密度を高めるため、圧縮を開始すると共に射出圧力を維持して保圧する。そして、射出された合成樹脂Jの固化が始まる前の合成樹脂Jの流れが止まる直前(又は合成樹脂Jの流れが止まった直後)で、即ち射出圧力又は保持圧力がピークに達する直前で、図示しないゲートカット部材を上昇させ、キャビティS内の合成樹脂JとキャビティS外の合成樹脂とを分離する。
【0030】
そして、前記分離がなされたら、前記上金型本体6と上金型基体5とで形成される前記冷却媒体通路44内に前記固定側第3ベースプレート4の入り口15、入り口通路17A及び前記上金型基体5の前記入り口通路17Aを介して冷却水の供給を開始する。従って、前記キャビティS内の合成樹脂Jを固化させる。そして、このキャビティS内の合成樹脂Jが固化して、成形品として両金型6、26から取り出せる程度まで冷却を持続する。前記封止剤43により前記電熱ヒーター42は水封止されるので、漏電することが防止され、安全であって、長期間使用することができる。そして、キャビティSより取り出すのに十分なほど合成樹脂Jが固化したら、前記冷却媒体通路44内への冷却水の供給を停止する。
【0031】
この冷却水が前記冷却媒体通路44内を流れるときには、前記封止剤43が熱伝導性が良好な材質であるから、前記冷却水の冷たい熱がこの封止剤43を介して前記電熱ヒーター42及び前記上金型本体6を迅速に冷却することができるから、成形サイクル時間を短縮することができる。そして、冷却水の供給を停止した後に、型開きして、エジェクターピンによる成形品を離型して、次の成形品の生産に備える。
【0032】
次に、図7に基づいて、射出成形装置の第2の実施の形態、具体的にはキャビティS内の合成樹脂Jの加熱及び冷却についての第2の実施形態について説明する。以上説明した第1の実施形態と同一の番号・符号は同一の機能を有するものとして説明は省略し、特に異なる部分についてのみ説明する。前記上金型本体6の上面には前記上金型基体5の各入り口通路17B、出口通路18Bに各端部が連通する6条の収納溝34Aが形成される。これらの収納溝34Aは断面が縦長のU字形状を呈し、前記成形部30に沿って蛇行して折り返すように形成された6条の溝である。
【0033】
そして、前記収納溝34A内にはこの収納溝34Aに沿ってこの収納溝34Aの半円形状の底面に当接するように、この収納溝34Aの最深部に加熱手段である電熱ヒーター42Aを収納した断面外形が円である保護パイプ45が圧入されて埋設された状態で、この収納溝34Aを形成する内壁に固定される。また、前記保護パイプ45を接着剤により前記収納溝34A内に固定してもよい。
【0034】
なお、内部に前記電熱ヒーター42Aが埋設された前記保護パイプ45は前記収納溝34Aの半円形状の底面の半径と断面の外径が略同径の円形状を呈しており、前述したように、前記収納溝34Aの底面に当接するように前記保護パイプ45が圧入されて埋設されることとなる。
【0035】
前記保護パイプ45は腐食しない又は腐食しにくい耐腐食性に優れる材質で構成されるため、漏電することが防止され、安全であって、長期間使用することができる。また、前記保護パイプ45は超耐熱性及び熱伝導性が良好な材質である。
【0036】
従って、前記上金型基体5との間で形成されるこの収納溝34A内におけるこの保護パイプ45の上方の空間は、冷却媒体である、例えば冷却水が流れる冷却媒体通路である冷却媒体通路44Aとなる。
【0037】
なお、この第2の実施形態の射出成形動作については、前述した第1の実施形態と同様であり、簡単に説明する。初めに、前記電熱ヒーター42Aに通電して前記上金型本体6のキャビティ形成面側を、前述したように、昇温を開始させ、型閉めする。
【0038】
この場合、前記上金型本体6のキャビティ形成面側の温度が射出する合成樹脂の軟化点温度の前記周辺温度となるように加熱させる。そして、前記保護パイプ45は超耐熱性を有するので、前記上金型本体6のキャビティ形成面側を加熱する前記電熱ヒーター42Aを長期間保護することができる。
【0039】
そして、前記上金型本体6のキャビティ形成面側が軟化点温度の前記周辺温度となると、前記電熱ヒーター42Aへの通電を停止する。そして、溶融した合成樹脂Jを前記ゲート13を介して前記下金型26と上金型本体6とで形成されるキャビティS内に射出する。
【0040】
そして、この溶融した合成樹脂Jを射出した後、この合成樹脂Jの圧縮密度を高めるため、圧縮を開始すると共に射出圧力を維持して保圧する。そして、射出された合成樹脂Jの固化が始まる前の合成樹脂Jの流れが止まる直前(又は合成樹脂Jの流れが止まった直後)で、即ち射出圧力又は保持圧力がピークに達する直前で、前記ゲートカット部材を上昇させ、キャビティS内の合成樹脂JとキャビティS外の合成樹脂とを分離する。
【0041】
そして、前記分離がなされたら、前記上金型本体6と上金型基体5とで形成される前記冷却媒体通路44A内に冷却水の供給を開始させ、前記キャビティS内の合成樹脂Jを固化させる。そして、この合成樹脂Jが固化して、成形品として両金型6、26から取り出せる程度まで冷却を持続する。この場合、前記保護パイプ45は耐腐食性に優れる材質で構成されるため、漏電することが防止され、安全であって、長期間使用することができる。そして、キャビティSより取り出すのに十分なほど合成樹脂Jが固化したら、前記冷却媒体通路44A内への冷却水の供給を停止する。
【0042】
この冷却水が前記冷却媒体通路44A内を流れるときには、前記保護パイプ45が熱伝導性が良好な材質であるから、前記冷却水の冷たい熱がこの保護パイプ45を介して前記電熱ヒーター42A及び前記上金型本体6を迅速に冷却することができるから、成形サイクル時間を短縮することができる。そして、冷却水の供給を停止した後に、型開きして、エジェクターピンによる成形品を離型して、次の成形品の生産に備える。
【0043】
次に、図8に基づいて、射出成形装置の第3の実施の形態について説明する。以上説明した第2の実施形態と同一の番号・符号は同一の機能を有するものとして説明は省略し、特に異なる部分についてのみ説明する。第2の実施形態で説明したように、前記収納溝34A内にはこの収納溝34Aに沿ってこの収納溝34Aの半円形状の底面に当接するように、電熱ヒーター42Aの外周囲を覆った状態の保護パイプ45が圧入されて埋設された状態で、この収納溝34Aを形成する内壁に固定される。また、前記保護パイプ45を接着剤により前記収納溝34A内に固定してもよい。
【0044】
そして、前記保護パイプ45の前記収納溝34Aの壁面に接していない前記収納溝34Aの開口側の上半分の外周部の中央部を除いた状態で、言い換えれば前記中央部を冷却媒体通路44Bに臨ませた状態で、前記収納溝34A内に埋設された前記保護パイプ45を固定剤46で前記収納溝34Aを形成する壁面に固定する。即ち、前記保護パイプ45の上半分の外周部における中央部以外の部分と前記収納溝34Aとの空間SS内に前記固定剤46を装填して、前記保護パイプ45を前記収納溝34Aを形成する壁面に固定する。前記固定剤46は超耐熱性を有し、前記上金型本体6のキャビティ形成面側を加熱する前記電熱ヒーター42Aを長期間保護することができる。
【0045】
前記固定剤46を装填する理由は、以下の通りである。先ず、前記固定剤46を装填しないと、前記冷却媒体通路44B内に冷却水を流した際に、前記空間SSに冷却水が常時滞留して流れにくいので、冷却水の供給を停止して冷却媒体通路44B内の冷却水を射出成形装置外に排出しても、前記空間SSには冷却水が残ることとなる。このため、次の射出成形の際に、前記電熱ヒーター42Aに通電した際に、前述の残された前記空間SSに冷却水は蒸気となって、膨張するので内圧が高まるので、前記上金型基体5と下金型6との密閉度を高める構造にする必要があり、構造が複雑なものとなるという問題がある。そこで、前記保護パイプ45の上半分の外周部における中央部以外の部分と前記収納溝34Aとの空間SS内に前記固定剤46を装填するものである。
【0046】
従って、前記上金型基体5との間で形成されるこの収納溝34A内におけるこの保護パイプ45の上半分の外周部における中央部及び前記固定剤46の上方の空間は、冷却媒体である、例えば冷却水が流れる冷却媒体通路44Bとなる。
【0047】
なお、前記固定剤46で覆うことなく、前記保護パイプ45の上半分の外周部の前記中央部を前記冷却媒体通路44Bに臨ませたのは、この冷却媒体通路44B内に冷却水を供給した際に、前記冷却水の冷たい熱が熱伝導性が良好な材質で作製された前記保護パイプ45の前記中央部を介して前記電熱ヒーター42A及び前記上金型本体6を迅速に冷却することができ、成形サイクル時間を短縮することができるからである。
【0048】
なお、この第3の実施形態の射出成形動作については、前述した第1及び第2の実施形態と同様であり、簡単に説明する。初めに、前記電熱ヒーター42Aに通電して前記上金型本体6のキャビティ形成面側を、前述したように、昇温を開始させ、型閉めする。
【0049】
この場合、前記上金型本体6のキャビティ形成面側の温度が射出する合成樹脂の軟化点温度の前記周辺温度となるように加熱させる。そして、前記保護パイプ45は超耐熱性を有するので、前記上金型本体6のキャビティ形成面側を加熱する前記電熱ヒーター42Aを長期間保護することができる。
【0050】
そして、前記上金型本体6のキャビティ形成面側が軟化点温度の前記周辺温度となると、前記電熱ヒーター42Aへの通電を停止する。そして、溶融した合成樹脂Jを前記ゲート13を介して前記下金型26と上金型本体6とで形成されるキャビティS内に射出する。
【0051】
そして、この溶融した合成樹脂Jを射出した後、この合成樹脂Jの圧縮密度を高めるため、圧縮を開始すると共に射出圧力を維持して保圧する。そして、射出された合成樹脂Jの固化が始まる前の合成樹脂Jの流れが止まる直前(又は合成樹脂Jの流れが止まった直後)で、即ち射出圧力又は保持圧力がピークに達する直前で、前記ゲートカット部材を上昇させ、キャビティS内の合成樹脂JとキャビティS外の合成樹脂とを分離する。
【0052】
そして、前記分離がなされたら、前記上金型本体6と上金型基体5とで形成される前記冷却媒体通路44B内に冷却水の供給を開始させ、前記キャビティS内の合成樹脂Jを固化させる。そして、この合成樹脂Jが固化して、成形品として両金型6、26から取り出せる程度まで冷却を持続する。この場合、前記保護パイプ45は耐腐食性に優れる材質で構成されるため、漏電することが防止され、安全であって、長期間使用することができる。そして、キャビティSより取り出すのに十分なほど合成樹脂Jが固化したら、前記冷却媒体通路44A内への冷却水の供給を停止する。
【0053】
この冷却水が前記冷却媒体通路44B内を流れるときには、前記保護パイプ45が熱伝導性が良好な材質であるから、前記冷却水の冷たい熱がこの前記保護パイプ45の上半分の外周部の前記中央部を介して前記電熱ヒーター42A及び前記上金型本体6を迅速に冷却することができるから、成形サイクル時間を短縮することができる。そして、冷却水の供給を停止した後に、型開きして、エジェクターピンによる成形品を離型して、次の成形品の生産に備える。
【0054】
なお、前記保護パイプ45の上半分の外周部における中央部以外の部分と前記収納溝34Aとの空間SS内に前記固定剤46を装填したから、この空間SS内に冷却水が残ることがなくなるので、冷却水が残ることによる前述したような問題が解消され、前記上金型基体5と下金型6との密閉度を高める構造にする必要がなくなる。
【0055】
次に、図9に基づいて、射出成形装置の第4の実施の形態について説明する。以上説明した第1の実施形態と同一の番号・符号は同一の機能を有するものとして説明は省略し、特に異なる部分についてのみ説明する。第1の実施形態で説明したように、前記収納溝34内にはこの収納溝34に沿ってこの収納溝34の半円形状の底面に当接するように電熱ヒーター42が圧入されて埋設された状態で、この収納溝34を形成する内壁に固定される。更に、この電熱ヒーター42をセラミック系の第1の封止剤43A及びエポキシ系の第2の封止剤43Bにより水封止して、前記上金型基体5との間で形成されるこの収納溝34内における前記封止剤43Bの上方の空間は、例えば冷却水が流れる冷却媒体通路44Cとなる。前記第1の封止剤43A及び第2の封止剤43Bは、超耐熱性及び熱伝導性が良好な材質で作製される。
【0056】
以上の構成により、以下第4の実施形態の射出成形装置の動作について説明すると、初めに前記電熱ヒーター42に通電して前記上金型本体6のキャビティ形成面側がキャビティS内に射出する合成樹脂の種類に応じた所定温度となるように昇温を開始させ、型閉めする。
【0057】
この場合、前記上金型本体6のキャビティ形成面側の温度が射出する合成樹脂の軟化点温度の前記周辺温度となるように加熱させる。そして、前記上金型本体6のキャビティ形成面側を加熱する前記電熱ヒーター42によっても、前記第1の封止剤43A及び第2の封止剤43Bは超耐熱性を有するので、水封止の効果を長期間持続することができる。
【0058】
そして、前記上金型本体6のキャビティ形成面側が軟化点温度の前記周辺温度となると、前記電熱ヒーター42への通電を停止する。そして、溶融した合成樹脂JをキャビティS内に射出する。そして、この溶融した合成樹脂Jを射出した後、この合成樹脂Jの圧縮密度を高めるため、圧縮を開始すると共に射出圧力を維持して保圧する。そして、射出された合成樹脂Jの固化が始まる前の合成樹脂Jの流れが止まる直前(又は合成樹脂Jの流れが止まった直後)で、即ち射出圧力又は保持圧力がピークに達する直前で、前記ゲートカット部材を上昇させ、キャビティS内の合成樹脂JとキャビティS外の合成樹脂とを分離する。
【0059】
そして、前記分離がなされたら、前記上金型本体6と上金型基体5とで形成される前記冷却媒体通路44C内に冷却水の供給を開始して、前記キャビティS内の合成樹脂Jを固化させる。そして、このキャビティS内の合成樹脂Jが固化して、成形品として両金型6、26から取り出せる程度まで冷却を持続する。前記第1の封止剤43A及び第2の封止剤43Bにより前記電熱ヒーター42は水封止されるので、漏電することが防止され、安全であって、長期間使用することができる。そして、キャビティSより取り出すのに十分なほど合成樹脂Jが固化したら、前記冷却媒体通路44C内への冷却水の供給を停止する。
【0060】
この冷却水が前記冷却媒体通路44C内を流れるときには、前記第1の封止剤43A及び第2の封止剤43Bが熱伝導性が良好な材質であるから、前記冷却水の冷たい熱がこの前記第1の封止剤43A及び第2の封止剤43Bを介して前記電熱ヒーター42及び前記上金型本体6を迅速に冷却することができるから、成形サイクル時間を短縮することができる。そして、冷却水の供給を停止した後に、型開きして、エジェクターピンによる成形品を離型して、次の成形品の生産に備える。
【0061】
次に、図10に基づいて、射出成形装置の第5の実施の形態について説明する。以上説明した第1の実施形態と同一の番号・符号は同一の機能を有するものとして説明は省略し、特に異なる部分についてのみ説明する。前記上金型本体6の上面には断面が縦長の概ねU字形状を呈し、成形部30に沿って蛇行して折り返すように通路形成溝34Yが形成される。
【0062】
そして、この通路形成溝34Yは前記キャビティSに近い幅狭な加熱媒体通路35を形成する加熱媒体通路形成溝34Y1と、前記キャビティSに遠い幅広な冷却媒体通路44Cを形成する冷却媒体通路形成溝34Y2とから構成される。この加熱媒体通路形成溝34Y1と冷却媒体通路形成溝34Y2との間には段差部37が形成されることとなり、この段差部37上に仕切り部材38が載置した状態で通路形成溝34Yの内壁に固定されて、前記加熱媒体通路35と前記冷却媒体通路44Cとがそこに流れる加熱媒体と冷却媒体とが行き来できないように遮断される。
【0063】
この加熱媒体は、例えば加熱された油、蒸気、気体などがあり、冷却媒体は、例えば水、油などがあり、適宜選択して使用することができる。
【0064】
以上の構成により、以下第5の実施形態の射出成形装置の動作について説明すると、初めに前記加熱媒体通路35内に加熱媒体を供給して前記上金型本体6のキャビティ形成面側がキャビティS内に射出する合成樹脂の種類に応じた所定温度となるように昇温を開始させ、型閉めする。この場合、前記上金型本体6のキャビティ形成面側の温度が射出する合成樹脂の軟化点温度の前記周辺温度となるように加熱させる。
【0065】
そして、前記上金型本体6のキャビティ形成面側が軟化点温度の前記周辺温度となると、前記加熱媒体通路35内への前記加熱媒体の供給を停止する。そして、溶融した合成樹脂JをキャビティS内に射出する。そして、この溶融した合成樹脂Jを射出した後、この合成樹脂Jの圧縮密度を高めるため、圧縮を開始すると共に射出圧力を維持して保圧する。そして、射出された合成樹脂Jの固化が始まる前の合成樹脂Jの流れが止まる直前(又は合成樹脂Jの流れが止まった直後)で、即ち射出圧力又は保持圧力がピークに達する直前で、前記ゲートカット部材を上昇させ、キャビティS内の合成樹脂JとキャビティS外の合成樹脂とを分離する。
【0066】
そして、前記分離がなされたら、前記冷却媒体通路44C内に前記冷却水の供給を開始して、前記キャビティS内の合成樹脂Jを固化させる。そして、このキャビティS内の合成樹脂Jが固化して、成形品として両金型6、26から取り出せる程度まで冷却を持続する。そして、キャビティSより取り出すのに十分なほど合成樹脂Jが固化したら、前記冷却媒体通路44C内への冷却水の供給を停止した後に、型開きして、エジェクターピンによる成形品を離型して、次の成形品の生産に備える。
【0067】
次に、図11に基づいて、射出成形装置の第6の実施の形態について説明する。以上説明した第1の実施形態と同一の番号・符号は同一の機能を有するものとして説明は省略し、特に異なる部分についてのみ説明する。前記上金型本体6の上面には断面が縦長の概ねU字形状を呈し、成形部30に沿って蛇行して折り返すように通路形成溝34Zが形成される。
【0068】
そして、この通路形成溝34Z内にはこの通路形成溝34Zに沿ってこの通路形成溝34Zの半円形状の底面に当接するように、この通路形成溝34Zの最深部に、例えば中空円筒状の加熱媒体通路35Aを形成するパイプ39が圧入されて埋設された状態で、この通路形成溝34Zを形成する内壁に固定される。また、前記パイプ39を接着剤により前記通路形成溝34Z内に固定してもよい。
【0069】
従って、前記通路形成溝34Z内において、前記キャビティSに近い部位には前記パイプ39により加熱媒体通路35Aが形成され、このパイプ39の上方の前記キャビティSに遠い部位には冷却媒体通路44Dが形成されることとなり、前記パイプ39の外面が前記加熱媒体通路35Aと前記冷却媒体通路44Dとがそこに流れる前記加熱媒体と前記冷却媒体とが行き来できないように遮断される。
【0070】
以上の構成により、以下第6の実施形態の射出成形装置の動作について説明すると、初めに前記パイプ39により形成された前記加熱媒体通路35A内に前記加熱媒体を供給して前記上金型本体6のキャビティ形成面側がキャビティS内に射出する合成樹脂の種類に応じた所定温度となるように昇温を開始させ、型閉めする。この場合、前記上金型本体6のキャビティ形成面側の温度が射出する合成樹脂の軟化点温度の前記周辺温度となるように加熱させる。
【0071】
そして、前記上金型本体6のキャビティ形成面側が軟化点温度の前記周辺温度となると、前記加熱媒体通路35A内への前記加熱媒体の供給を停止する。そして、溶融した合成樹脂JをキャビティS内に射出する。そして、この溶融した合成樹脂Jを射出した後、この合成樹脂Jの圧縮密度を高めるため、圧縮を開始すると共に射出圧力を維持して保圧する。そして、射出された合成樹脂Jの固化が始まる前の合成樹脂Jの流れが止まる直前(又は合成樹脂Jの流れが止まった直後)で、即ち射出圧力又は保持圧力がピークに達する直前で、前記ゲートカット部材を上昇させ、キャビティS内の合成樹脂JとキャビティS外の合成樹脂とを分離する。
【0072】
そして、前記分離がなされたら、前記冷却媒体通路44D内に前記冷却水の供給を開始して、前記キャビティS内の合成樹脂Jを固化させる。そして、このキャビティS内の合成樹脂Jが固化して、成形品として両金型6、26から取り出せる程度まで冷却を持続する。そして、キャビティSより取り出すのに十分なほど合成樹脂Jが固化したら、前記冷却媒体通路44C内への冷却水の供給を停止した後に、型開きして、エジェクターピンによる成形品を離型して、次の成形品の生産に備える。
【0073】
なお、図12に示すように、第1の実施形態を示す図6において、前記上金型基体5及び前記上金型本体6に施した構造を、後述する下金型基体27及び下金型本体26Xに施してもよい。即ち、可動側第4ベースプレート24の上面に開設した凹部内に下金型基体27を配設して、この可動側第4ベースプレート24にこの下金型基体27をボルトにより固定し、この下金型基体27上面に形成された凹部に下金型本体26Xを嵌合して下金型基体27に下金型本体26Xを固定する。この下金型基体27と下金型本体26Xとで、下金型を構成する。
【0074】
そして、前記下金型26X本体にも、第1の実施形態で説明した上金型本体6と同様な構造を施す。即ち、成形部30Xに沿ってその下面に断面が縦長のU字形状を呈する収納溝34Xを形成し、前記下金型本体26Xの下面にはこの下金型本体26Xが薄いために、これを補強するために前記下金型基体27上面に形成された嵌合溝41X内に嵌合する複数条の補強用リブ36Xを突設する。
【0075】
そして、前記収納溝34X内にはこの収納溝34Xに沿ってこの収納溝34Xの半円形状の上面に当接するように加熱手段である電熱ヒーター42Xが圧入されて埋設された状態で、この収納溝34Xを形成する内壁に固定される。更に、この電熱ヒーター42Xを封止剤43Xにより水封止して、前記下金型基体27との間で形成されるこの収納溝34X内におけるこの封止剤43Xの下方の空間は、例えば冷却水が流れる冷却媒体通路44Xとなる。
【0076】
なお、前記電熱ヒーター42Xは前記収納溝34Xの半円形状の底面の半径と断面の外径が略同径の円形状を呈しており、前述したように、前記収納溝34Xの上面に当接するように前記電熱ヒーター42Xが圧入されて埋設されることとなる。
【0077】
前記封止剤43Xは、超耐熱性及び熱伝導性が良好な材質であって、電熱ヒーター42Xを水封止した状態で前記収納溝34X内に固定するために接着効果を有する。従って、前記冷却媒体通路44Xに冷却水が流れても、漏電することが防止され、安全であって、長期間使用することができる。
【0078】
この図12に示す構造にあっても、前記電熱ヒーター42Xに通電又は通電を停止するタイミング、また冷却媒体通路44X内に冷却水を供給するタイミングは、前記電熱ヒーター42に通電又は通電を停止するタイミング、また冷却媒体通路44内に冷却水を供給するタイミングと同様であり、第1の実施形態での射出成形動作と同様であるため、説明は省略する。
【0079】
なお、第2の実施形態を示す図7、第3の実施形態を示す図8、第4の実施形態を示す図9において、第5の実施形態を示す図10、第6の実施形態を示す図11において、前記上金型基体5や前記上金型本体6に施した構造を、前記下金型基体27や下金型本体26Xに施してもよい。
【0080】
即ち、第1乃至第6の実施形態で前記上金型基体5及び前記上金型本体6に施した構造を、前記下金型基体27及び前記下金型本体26Xにのみ施してもよく、少なくとも、前記上金型基体5と前記上金型本体6、又は前記下金型基体27と前記下金型本体26Xのいずれか一方に施すものとする。
【0081】
なお、以上の実施形態において、使用した電熱ヒーター42、42A、42Xに代えて、他の加熱手段を使用してもよい。
【0082】
従来、電熱ヒーターの埋設のための溝と、これとは別に冷却媒体通路を形成するための溝をわざわざ設けねばならず、構造が複雑で金型に溝を形成するための切削加工に要する時間及び手間が掛かって高価なものとなり、また電熱ヒーターによる加熱及び冷却媒体通路に冷却水を供給させることによる冷却を更に高めようとすると、電熱ヒーターの埋設のため及び冷却媒体通路の形成のための溝の数を増やさねばならず、切削加工に要する時間及び手間が尚更掛かり、更に加熱及び冷却を高めようとすると、電熱ヒーターの埋設のための溝と冷却媒体通路を形成するための溝との間隔を狭める必要があり、形成する溝の数に限りがあるから、その面でも問題があった。しかし、以上の実施形態によれば、構造が簡単で安価に、電熱ヒーターの埋設及び冷却媒体通路を形成することができる射出成形装置を提供することができる。また、埋設された電熱ヒーターを水封止しているので、漏電を防止することができる。
【0083】
以上のように、本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0084】
5 上金型基体
6 上金型本体
26 下金型
26X 下金型本体
27 下金型基体
34、34A、34X 収納溝
34Y、34Z 通路形成溝
35、35A 加熱媒体通路
38 仕切り部材
39 パイプ
42、42A、42X 電熱ヒーター
43、43A、43B 封止剤
44、44A、44B 冷却媒体通路
44C、44D 冷却媒体通路
45 保護パイプ
46 固定剤
S キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上金型と下金型とを閉じた状態でゲートを介してキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する射出成形装置において、少なくとも前記上金型又は前記下金型のいずれか一方を前記キャビティ表面を形成する金型本体と、前記キャビティ表面を形成しない金型基体とで形成し、前記金型本体の裏面側に前記キャビティに沿って溝を形成して、この溝内に加熱手段を埋設すると共にこの溝を冷却媒体が流れる冷却媒体通路としたことを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
上金型と下金型とを閉じた状態でゲートを介してキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する射出成形装置において、少なくとも前記上金型又は前記下金型のいずれか一方を前記キャビティ表面を形成する金型本体と、前記キャビティ表面を形成しない金型基体とで形成し、前記金型本体の裏面側に前記キャビティに沿って溝を形成して、この溝内に加熱手段を封止剤により封止した状態で埋設すると共にこの溝を冷却媒体が流れる冷却媒体通路としたことを特徴とする射出成形装置。
【請求項3】
上金型と下金型とを閉じた状態でゲートを介してキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する射出成形装置において、少なくとも前記上金型又は前記下金型のいずれか一方を前記キャビティ表面を形成する金型本体と、前記キャビティ表面を形成しない金型基体とで形成し、前記金型本体の裏面側に前記キャビティに沿って溝を形成して、この溝内に加熱手段を収納した保護パイプを埋設すると共にこの溝を冷却媒体が流れる冷却媒体通路としたことを特徴とする射出成形装置。
【請求項4】
上金型と下金型とを閉じた状態でゲートを介してキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する射出成形装置において、少なくとも前記上金型又は前記下金型のいずれか一方を前記キャビティ表面を形成する金型本体と、前記キャビティ表面を形成しない金型基体とで形成し、前記金型本体の裏面側に前記キャビティに沿って溝を形成して、この溝内に加熱手段を収納した保護パイプを埋設すると共にこの保護パイプの前記溝の壁面に接していない前記溝の開口側の外周部の中央部を除いて固定剤により固定し、前記溝を冷却媒体が流れる冷却媒体通路としたことを特徴とする射出成形装置。
【請求項5】
上金型と下金型とを閉じた状態でゲートを介してキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する射出成形装置において、少なくとも前記上金型又は前記下金型のいずれか一方を前記キャビティ表面を形成する金型本体と、前記キャビティ表面を形成しない金型基体とで形成し、前記金型本体の裏面側に前記キャビティに沿って溝を形成して、この溝内に加熱媒体が流れる加熱媒体通路と冷却媒体が流れる冷却媒体通路とを形成したことを特徴とする射出成形装置。
【請求項6】
上金型と下金型とを閉じた状態でゲートを介してキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する射出成形装置において、少なくとも前記上金型又は前記下金型のいずれか一方を前記キャビティ表面を形成する金型本体と、前記キャビティ表面を形成しない金型基体とで形成し、前記金型本体の裏面側に前記キャビティに沿って溝を形成して、この溝内にその内部に加熱媒体が流れる中空パイプを埋設すると共にこの溝内の前記中空パイプを除いた部分を冷却媒体が流れる冷却媒体通路としたことを特徴とする射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−224067(P2012−224067A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96327(P2011−96327)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(300045558)株式会社富士精工 (14)
【Fターム(参考)】