説明

導電性エンドレスベルト

【課題】所望の弾性率、耐屈曲性、耐久性を備えるとともに、異物の付着による表面光沢度の低下がなく、長期使用時においても良好な光沢度を保持することができる導電性エンドレスベルトを提供する。
【解決手段】結晶融点210℃以上のポリエステル系エラストマーからなるか、または、該ポリエステル系エラストマーを主成分とし、熱可塑性ポリエステル系樹脂を49重量%以下にて含有する基材に対し、フッ素系樹脂またはシリコーン系化合物が添加されてなる導電性エンドレスベルトである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター等の電子写真装置や静電記録装置等における静電記録プロセスにおいて、表面に静電潜像を保持した潜像保持体等の画像形成体表面に現像剤を供給して形成されたトナー像を、紙等の記録媒体へと転写する際に用いられる導電性エンドレスベルト(以下、単に「ベルト」とも称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンター等における静電記録プロセスでは、まず、感光体(潜像保持体)の表面を一様に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して光の当たった部分の帯電を消去することによって静電潜像を形成し、次いで、この静電潜像にトナーを供給してトナーの静電的付着によりトナー像を形成し、これを紙、OHP、印画紙等の記録媒体へと転写することにより、プリントする方法が採られている。
【0003】
この場合、カラープリンターやカラー複写機においても、基本的には前記プロセスに従ってプリントが行われるが、カラー印刷の場合には、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを用いて色調を再現するもので、これらのトナーを所定割合で重ね合わせて必要な色調を得るための工程が必要であり、この工程を行うためにいくつかの方式が提案されている。
【0004】
まず、第1には、モノクロ印刷を行う場合と同様に、感光体上にトナーを供給して静電潜像を可視化する際に、前記マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを順次重ねていくことにより現像を行い、感光体上にカラーのトナー像を形成する多重現像方式がある。この方式によれば比較的コンパクトに装置を構成することが可能であるが、この方式では階調の制御が非常に難しく、高画質が得られないという問題点がある。
【0005】
第2に、4つの感光ドラムを設け、各ドラムの潜像を夫々マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックのトナーで現像することにより、マゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像およびブラックによるトナー像の4つのトナー像を形成し、これらトナー像が形成された感光ドラムを1列に並べて各トナー像を紙等の記録媒体に順次転写して記録媒体上に重ねることにより、カラー画像を再現するタンデム方式がある。この方式は、良好な画像が得られるものの、4つの感光ドラムと、各感光ドラムごとに設けられた帯電機構および現像機構が1列に並べられた状態となり、装置が大型化するとともに高価なものとなる。
【0006】
図2にタンデム方式の画像形成装置の印字部構成例を示す。感光体ドラム1、帯電ロール2、現像ロール3、現像ブレード4、トナー供給ロール5およびクリーニングブレード6で構成する印字ユニットをイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBの各トナーに対応して4個並べており、駆動ローラ(駆動部材)9により循環駆動されて転写搬送ベルト10で搬送した用紙上に、トナーを順次転写しカラー画像を形成する。転写搬送ベルトの帯電および除電は夫々帯電ロール7および除電ロール8で行う。また、用紙をベルトへ吸着させるための用紙帯電には吸着ローラ(図示せず)が使用される。これらの対応により、オゾンの発生を抑えることができる。吸着ローラでは、用紙を搬送路から転写搬送ベルトに乗せるとともに、転写搬送ベルトへの静電吸着を行う。また、転写後の用紙分離は、転写電圧を低くすることにより用紙と転写搬送ベルトの吸着力を弱くして、曲率分離のみで行うことができる。
【0007】
転写搬送ベルト10の材料としては抵抗体と誘電体があり、夫々に長所、短所を持っている。抵抗体ベルトは電荷の保持が短時間であるため、タンデム型の転写に用いた場合、転写での電荷注入が少なく4色の連続する転写でも比較的電圧の上昇が少ない。また、次の用紙の転写に繰り返して使用されるときも電荷が放出されており、電気的なリセットは必要としない。しかし、環境変動により抵抗値が変化するため、転写効率に影響すること、用紙の厚さや幅の影響を受けやすいことなどが短所となっている。
【0008】
一方、誘電体ベルトの場合は注入された電荷の自然放出はなく、電荷の注入、放出とも電気的にコントロールしなければならない。しかし、安定に電荷が保持されるので、用紙の吸着が確実で高精度な紙搬送が行える。誘電率は温湿度への依存性も低いため、環境に対しても比較的安定な転写プロセスとなる。欠点は、転写が繰り返されるごとにベルトに電荷が蓄積されるため、転写電圧が高くなることである。
【0009】
第3に、紙等の記録媒体を転写ドラムに巻き付けてこれを4回転させ、周回ごとに感光体上のマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックを順次記録媒体に転写してカラー画像を再現する転写ドラム方式もある。この方式によれば比較的高画質が得られるが、記録媒体が葉書等の厚紙である場合には、これを前記転写ドラムに巻き付けることが困難であり、記録媒体種が制限されるという問題点がある。
【0010】
前記多重現像方式、タンデム方式および転写ドラム方式に対して、良好な画質が得られ、かつ装置が特に大型化するようなこともなく、しかも記録媒体種が特に制限されるようなこともない方式として、中間転写方式が提案されている。
【0011】
即ち、この中間転写方式は、感光体上のトナー像を一旦転写保持するドラムやベルトからなる中間転写部材を設け、この中間転写部材の周囲にマゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像およびブラックによるトナー像を形成した4つの感光体を配置して4色のトナー像を中間転写部材上に順次転写することにより、この中間転写部材上にカラー画像を形成し、このカラー画像を紙等の記録媒体上に転写するものである。従って、4色のトナー像を重ね合わせて階調を調整するものであるから、高画質を得ることが可能であり、かつタンデム方式のように感光体を1列に並べる必要がないので装置が特に大型化することもなく、しかも記録媒体をドラムに巻き付ける必要もないので記録媒体種が制限されることもないものである。
【0012】
中間転写方式によりカラー画像の形成を行う装置として、中間転写部材として無端ベルト状の中間転写部材を用いた画像形成装置を図3に例示する。
【0013】
図3中、11はドラム状の感光体であり、図中矢印方向に回転するようになっている。この感光体11は、一次帯電器12によって帯電され、次いで画像露光13により露光部分の帯電が消去され、第1の色成分に対応した静電潜像がこの感光体11上に形成され、更に静電潜像が現像器41により第1色のマゼンタトナーMで現像され、第1色のマゼンタトナー画像が感光体11上に形成される。次いで、このトナー画像が、駆動ローラ(駆動部材)30により循環駆動されて感光体11と接触しながら循環回転する中間転写部材20に転写される。この場合、感光体11から中間転写部材20への転写は、感光体11と中間転写部材20とのニップ部において、中間転写部材20に電源61から印加される一次転写バイアスにより行われる。この中間転写部材20に第1色のマゼンタトナー画像が転写された後、前記感光体11はその表面がクリーニング装置14により清掃され、感光体11の1回転目の現像転写操作が完了する。以降、感光体が3回転し、各周回ごとに現像器42〜44を順次用いて第2色のシアントナー画像、第3色のイエロートナー画像、第4色のブラックトナー画像が順次感光体11上に形成され、これが周回ごとに中間転写部材20に重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が中間転写部材20上に形成される。なお、図3の装置にあっては、感光体11の周回ごとに現像器41〜44が順次入れ替わってマゼンタトナーM、シアントナーC、イエロートナーY、ブラックトナーBによる現像が順次行われるようになっている。
【0014】
次に、前記合成カラートナー画像が形成された中間転写部材20に転写ローラ25が当接し、そのニップ部に給紙カセット19から紙等の記録媒体26が給送される。これと同時に二次転写バイアスが電源29から転写ローラ25に印加され、中間転写部材20から記録媒体26上に合成カラートナー画像が転写されて加熱定着され、最終画像となる。合成カラートナー画像を記録媒体26へと転写した後の中間転写部材20は、表面の転写残留トナーがクリーニング装置35により除去され、初期状態に戻り次の画像形成に備えるようになっている。
【0015】
また、タンデム方式と中間転写方式とを組み合わせた中間転写方式もある。図4に、無端ベルト状の中間転写部材を用いてカラー画像の形成を行う中間転写方式の画像形成装置を例示する。
【0016】
図示する装置においては、感光体ドラム52a〜52d上の静電潜像を夫々イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックにより現像する第1現像部54a〜第4現像部54dが、中間転写部材50に沿って順次配置されており、この中間転写部材50を図中の矢印方向に循環駆動させて、各現像部54a〜54dの感光体ドラム52a〜52d上に形成された4色のトナー像を順次転写することにより、この中間転写部材50上にカラーのトナー像を形成し、このトナー像を紙等の記録媒体53上に転写することにより、プリントアウトを行う。ここで、上記いずれの装置においても、現像に用いるトナーの配列順は特に制限されるものではなく、任意に選択可能である。
【0017】
なお、図中、符号55は、中間転写部材50を循環駆動するための駆動ローラ若しくはテンションローラを示し、符号56は記録媒体送りローラ、符号57は記録媒体送り装置、符号58は記録媒体上の画像を加熱等により定着させる定着装置を示す。また、符号59は中間転写部材50に電圧を印加する電源装置(電圧印加手段)を示し、この電源装置59は、トナー像を、感光ドラム52a〜52dから上記中間転写部材50に転写する場合と、中間転写部材50から記録媒体53上に転写する場合とで、印加する電圧の正負を反転させることができるようになっている。
【0018】
従来、かかる無端ベルト状の転写搬送ベルト10や中間転写部材20,50等として使用される導電性エンドレスベルトとしては、半導電性の樹脂フィルムベルトまたは繊維補強体を有するゴムベルトが主に用いられている。このうち樹脂フィルムベルトとしては、例えば、特許文献1に、熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂、または、これと他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイ若しくはポリマーブレンドを基材として用いた導電性エンドレスベルトが開示されている。また、特許文献2には、融点が160℃〜210℃の範囲のポリエステル系エラストマーを導電性ベース層に用いた導電性シームレスベルトが開示されている。
【特許文献1】特開2002−132053号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2000−62993号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献1に開示されているベルトでは、弾性率が高いためにベルト回転時に伸びが発生せず、したがって画像ズレは生じないものの、耐屈曲性が十分ではなく、ベルト耐久性の点で十分ではなかった。また、特許文献2に開示されているベルトでは、低融点のエラストマーを使用していることから耐久性に優れる反面、伸びの発生による画像ズレや高温高湿環境での変形による画像悪化の問題があった。
【0020】
さらに、これら特許文献1,2に係るベルトに共通する問題点として、繰り返し使用時において、中間転写方式の画像形成装置に適用するとトナーの付着、タンデム転写方式の画像形成装置に適用すると紙粉の付着により、いずれもベルト表面の光沢度低下が生ずるという問題があった。
【0021】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、所望の弾性率、耐屈曲性および耐久性を備えるとともに、トナーや紙粉の付着による表面光沢度の低下がなく、長期使用時においても良好な光沢度を保持することができる導電性エンドレスベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ベルトの基材として高融点のエラストマーを用いて、これにフッ素系樹脂またはシリコーン系化合物を添加することで、ベルトの弾性率およびクリープ性を向上することができるとともに、ベルト表面にトナー離型性を付与して、使用に伴う表面光沢度の低下を防止することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0023】
すなわち、本発明の導電性エンドレスベルトは、画像形成体と記録媒体との間に配設され、駆動部材により循環駆動されて、前記画像形成体表面に形成されたトナー像を一旦自己の表面に転写保持し、これを記録媒体へと転写する中間転写部材用の導電性エンドレスベルトにおいて、
結晶融点210℃以上のポリエステル系エラストマーからなるか、または、該ポリエステル系エラストマーを主成分とし、熱可塑性ポリエステル系樹脂を49重量%以下にて含有する基材に対し、フッ素系樹脂またはシリコーン系化合物が添加されてなることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の他の導電性エンドレスベルトは、静電吸着により保持した記録媒体を、駆動部材により循環駆動されて、複数種の画像形成体に搬送し、各トナー像を該記録媒体に順次転写するタンデム方式の転写、搬送用導電性エンドレスベルトにおいて、
結晶融点210℃以上のポリエステル系エラストマーからなるか、または、該ポリエステル系エラストマーを主成分とし、熱可塑性ポリエステル系樹脂を49重量%以下にて含有する基材に対し、フッ素系樹脂またはシリコーン系化合物が添加されてなることを特徴とするものである。
【0025】
本発明のベルトにおいて前記フッ素系樹脂またはシリコーン系化合物の添加量は、好適には、前記基材100重量部に対し0.5〜10重量部の範囲内である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、上記構成としたことにより、所望の弾性率、耐屈曲性および耐久性を備えるとともに、トナーや紙粉の付着による表面光沢度の低下がなく、長期使用時においても良好な光沢度を保持することができる導電性エンドレスベルトを実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
導電性エンドレスベルトには、一般に、ジョイントありのものとジョイントなしのもの(いわゆるシームレスベルト)とがあるが、本発明においてはいずれのものであってもよい。好ましくはシームレスベルトである。本発明の導電性エンドレスベルトは、前述したように、タンデム方式および中間転写方式の転写部材等として用いることができるものである。
【0028】
本発明の導電性エンドレスベルトが、例えば、図2に参照符号10で示す転写搬送ベルトの場合、駆動ローラ9等の駆動部材により駆動され、これに伴い搬送される記録媒体上にトナーが順次転写され、カラー画像が形成される。
【0029】
また、本発明の導電性エンドレスベルトが、例えば、図3に参照符号20で示す中間転写部材の場合、これを駆動ローラ30等の駆動部材により循環駆動させ、感光体ドラム(潜像保持体)11と紙等の記録媒体26との間に配設することで、前記感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像を一旦転写保持し、次いでこれを記録媒体26へと転写する。なお、図3の装置は、上述したように、中間転写方式によりカラー印刷を行うものである。
【0030】
さらに、本発明の導電性エンドレスベルトが、例えば、図4に参照符号50で示す中間転写部材の場合、感光体ドラム52a〜52dを備える現像部54a〜54dと紙等の記録媒体53との間に配設されて、駆動ローラ55等の駆動部材により循環駆動され、各感光体ドラム52a〜52dの表面に形成された4色のトナー像を一旦転写保持し、次いでこれを記録媒体53へと転写することで、カラー画像を形成する。なお、上記ではトナーが4色の場合について説明しているが、いずれの装置においても、トナーの色数が4色に限られないことは言うまでもない。
【0031】
本発明の導電性エンドレスベルトは、結晶融点210℃以上、好適には210〜250℃のポリエステル系エラストマーからなるか、または、該ポリエステル系エラストマーを主成分とし、熱可塑性ポリエステル系樹脂を49重量%以下にて含有する基材に対し、フッ素系樹脂またはシリコーン系化合物が添加されてなるものである。
【0032】
本発明においては、基材としてかかる高融点のポリエステル系エラストマーを用いたことで、ベルトの高弾性率を確保するとともに、優れた屈曲耐久性を確保でき、さらに耐クリープ性についても改善することが可能となり、かつ、この基材に対して表面性改良剤としてフッ素系樹脂またはシリコーン系化合物を添加したことで、使用に伴う光沢度の低下についても改善することが可能となった。
【0033】
本発明においては、基材として、上記ポリエステル系エラストマーを単独で用いることもできるが、好適にはこれに加えて、熱可塑性ポリエステル系樹脂を49重量%以下、特には20〜40重量%にて含有させる。上記ポリエステル系エラストマーとともに熱可塑性ポリエステル系樹脂を用いることで、さらに高弾性のベルトとすることができる。但し、熱可塑性ポリエステル系樹脂の配合量が49重量%を超えると、ベルトの耐屈曲性が低下してしまい、本発明の所期の効果が得られない。
【0034】
本発明において用いるポリエステル系エラストマーとしては、結晶融点210℃以上を満足するものであれば特に制限されず、ハードセグメントおよびソフトセグメントにポリエステルを用いたポリエステル−ポリエステル型のもの、並びに、ハードセグメントにポリエステル、ソフトセグメントにポリエーテルを用いたポリエステル−ポリエーテル型のものの双方を好適に用いることができる。なお、ポリエステル系エラストマーのハードセグメントは、一般的にポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリブチレンナフタレート(PBN)を主成分として用いられているが、本発明においては、いずれのものも使用可能である。
【0035】
また、熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、具体的には例えば、熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、PBN樹脂等)や、熱可塑性ポリアルキレンテレフタレート樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、グリコール変性PET(PETG)樹脂、PBT樹脂等)等を挙げることができるが、特に制限されるものではない。
【0036】
本発明において上記基材に対し添加するフッ素系樹脂としては、特に制限されるものではないが、250℃以下、特には240℃以下程度の低融点のものが好適であり、具体的には、例えば、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ECTFE)、ビニリデンフルオライド(VDF)とテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体、および、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレン(HFP)とビニリデンフルオライドとの3元共重合体(THV)等を挙げることができる。上記フッ素樹脂は市場で容易に入手可能であり、例えば、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体としては、ダイキン工業(株)製、商品名:ネオフロンVT100等、THVとしては、住友スリーエム(株)製、商品名:ダイニオンTHV220G、THV500G等を代表的に挙げることができる。また、PTFEを効率よくフィブリル化し、樹脂へ分散させやすくするために、PTFEを特殊アクリル樹脂で変性したものも好適に使用することができ、例えば、三菱レーヨン(株)製、商品名:メタブレンA3000等を代表的に挙げることができる。
【0037】
上記フッ素樹脂は1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよいが、中でも融点が低いPVdFやTHVが特に好適であり、他材料と同時に混練した際に容易に溶融して、効果を発現することができる。THVは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびビニリデンフルオライドの3種のモノマーからなる低融点熱可塑性樹脂であり、耐熱性、耐薬品性、耐候性、非粘着性、難焼性などの汎用フッ素樹脂の特長に加え、優れた加工性や溶解性、架橋性、柔軟性、接着性、透明性等を併せ持つ樹脂材料である。THVにおいては、上記モノマー比を調整することにより融点を変動させることが可能である。
【0038】
また、本発明において上記基材に対し添加するシリコーン系化合物としては、シロキサン結合を骨格とし、そのケイ素に有機基などが直接結合した有機ケイ素化合物であれば、いかなるものを用いてもよく、かかる有機基としては、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等が挙げられる。また、有機基の一部がアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、ポリエーテル基、エステル基、クロロアルキル基、炭素数3個以上のアルキル基、ヒドロキシル基などを有する置換基で置換されていてもよい。
【0039】
シリコーン系化合物は、一般に、架橋の程度などに基づき、シリコーンオイル、シリコーンエラストマー、シリコーンレジンに分類される。これらシリコーン系化合物については、例えば、「シリコーン材料ハンドブック」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)、1993年8月発行)に記載がある。
【0040】
本発明においては、上記のうちいずれの分類のシリコーン系化合物も使用可能であるが、取り扱い性等の観点からは、シリコーンオイルを好適に用いることができる。シリコーンオイルとしては、具体的に例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪族エステル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0041】
本発明で用いるシリコーンオイルとしては、25℃における粘度が150,000cSt以上、特には500,000cSt以上のものが好ましい。
【0042】
本発明に用いるシリコーン系化合物は、各種樹脂との高濃度マスターバッチ、または、各種樹脂とのグラフト共重合体等の形態で容易に入手できる。具体的には例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のシリコーンコンセントレートシリーズや、日本ユニカー(株)製のシルグラフトシリーズ、ダウコーニングアジア(株)製のSPシリーズ等を挙げることができ、中でも、基材との相溶性の観点から、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のシリコーンコンセントレートのうち、BY27−009(ベース樹脂としてPBTを用いてシリコーンオイルを50重量%含有させたペレット)、BY27−112(ベース樹脂としてPETを用いてシリコーンオイルを50重量%含有させたペレット)等を好適に用いることができる。
【0043】
本発明において、かかるフッ素系樹脂またはシリコーン系化合物の添加量は、基材100重量部に対し、0.5〜10重量部の範囲内とすることが好ましい。これらの添加量がこの範囲よりも少ないと、表面光沢度低下の防止効果が十分でない場合があり、一方、この範囲を超えて添加するとベルト表面外観が悪化するので、いずれも好ましくない。
【0044】
なお、本発明において基材として用いるポリエステル系エラストマーおよび熱可塑性ポリエステル樹脂は、成形加熱時において加水分解による分子量低下を引き起こしやすいという難点があるため、特には、基材に対しカルボジイミド基を有する化合物を添加することで、カルボジイミド基とカルボン酸との反応により熱可塑性ポリエステル系エラストマーを再架橋させて、分子量の低下を防止することが好ましい。これにより、ベルトの脆化を防止することができ、耐久時におけるベルトの耐割れ性を向上することが可能となる。かかるカルボジイミド化合物は市場で容易に入手可能であり、例えば、日清紡績(株)製の商品名:カルボジライト等を挙げることができる。また、カルボジイミド化合物は、あらかじめマスターバッチ化されたペレット等の形態でも用いることができ、例えば、日清紡績(株)製の商品名:カルボジライトEペレット、Bペレット等を好適に用いることができる。
【0045】
かかるカルボジイミド化合物の添加量としては、特に制限されるものではないが、基材100重量部に対し、好ましくは0.05〜30重量部であり、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲内である。
【0046】
さらに、本発明のベルトには、導電性を調整するために導電剤を配合する。かかる導電性剤としては、特に制限されるものではなく、公知の電子導電剤やイオン導電剤等を適宜用いることができる。
【0047】
このうち電子導電剤としては、具体的には例えば、ケッチェンブラック,アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラ−(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属および金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、カーボンウイスカー、黒鉛ウイスカー、炭化チタンウイスカー、導電性チタン酸カリウムウイスカー、導電性チタン酸バリウムウイスカー、導電性酸化チタンウイスカー、導電性酸化亜鉛ウイスカー等の導電性ウイスカー等が挙げられる。また、イオン導電剤としては、具体的には例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウ弗化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウ弗化水素酸塩、硫酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩等が挙げられる。
【0048】
また、高分子イオン導電剤としては、例えば、特開平9−227717号公報、特開平10−120924号公報、および、特開2000−327922号公報、特開2005−60658号公報等に記載されているものを用いることができるが、特に限定されない。
【0049】
具体的には、(A)有機ポリマー材料、(B)イオン導電可能なポリマーまたはコポリマー、および、(C)無機または低分子量有機塩、からなる混合物を挙げることができ、ここで、成分(A)は、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアミド6、ポリアミド12等のポリアミド、ポリウレタンまたはポリエステルであり、成分(B)は、オリゴエトキシ化アクリレートもしくはメタクリレート、芳香族環についてオリゴエトキシ化されたスチレン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテル尿素、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミドまたはポリエステル−エーテルブロックコポリマーであり、また、成分(C)は、無機または低分子量有機プロトン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛またはアンモニウム塩であり、好ましくは、LiClO、LiCFSO、NaClO、LiBF、NaBF、KBF、NaCFSO、KClO、KPF、KCFSO、KCSO、Ca(ClO、Ca(PF、Mg(ClO、Mg(CFSO、Zn(ClO、Zn(PFまたはCa(CFSO等である。
【0050】
これらの中でも、成分(B)として、ポリエーテルアミド成分、ポリエーテルエステルアミド成分またはポリエステル−エーテルブロックコポリマー成分を含有する高分子イオン導電剤が好適であり、さらに、これに加えて成分(C)として低分子イオン導電剤成分を含有することが好ましい。また、かかるポリエーテルアミド成分およびポリエーテルエステルアミド成分としては、ポリエーテル成分が(CH−CH−O)を含有し、ポリアミド成分がポリアミド12またはポリアミド6を含有するものが特に好ましく、さらに、成分(C)の低分子イオン導電剤成分としてはNaClOを含有する高分子イオン導電剤が特に好適である。かかる高分子イオン導電剤は、例えば、Irgastat(登録商標)P18およびIrgastat(登録商標)P22(共に、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・インコーポレーテッド製)として市場で容易に入手可能である。
【0051】
また、ポリオレフィンのブロックと、親水性ポリマーのブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合等を介して繰り返し交互に結合してなるブロック共重合体も、本発明における高分子イオン導電剤として好適に用いることができる。かかるポリオレフィンとしては、ポリマーの両末端にカルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を有するポリオレフィンが挙げられ、特には、ポリプロピレンおよびポリエチレンが好適である。
【0052】
また、親水性ポリマーとしては、官能基として水酸基を有するポリオキシアルキレン等のポリエーテルジオール、両末端カルボキシル基のポリアミドとポリエーテルジオールとから構成されるポリエーテルエステルアミド、ポリアミドイミドとポリエーテルジオールとから構成されるポリエーテルアミドイミド、ポリエステルとポリエーテルジオールとから構成されるポリエーテルエステル、ポリアミドとポリエーテルジアミンとから構成されるポリエーテルアミド等が使用でき、中でも、水酸基を有するポリオキシアルキレンが好ましい。例えば、両末端水酸基のポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレン(ポリプロピレングリコール)等である。
【0053】
本発明において高分子イオン導電剤として使用できるかかるブロック共重合体は、ペレスタット230,300,303(三洋化成(株)製)等として市場で容易に入手可能である。また、上記ブロック共重合体にリチウム化合物LiCFSOを含有させることで添加量を少なくしても帯電防止効果を維持する効果を得ることができ、かかるブロック共重合体とリチウム化合物との混合物として、サンコノールTBX−310(三光化学工業(株)製)が市販されている。
【0054】
本発明において、上記導電剤は、1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよく、例えば、電子導電剤とイオン導電剤とを組み合わせて用いることもでき、この場合、印加される電圧の変動や環境の変化に対しても安定して導電性を発現させることができる。
【0055】
特には、上記導電剤の中でも、カーボンブラックを用いることが好ましく、または、高分子イオン導電剤としてのポリエーテルエステルアミドと、カーボンブラックとを併用することが好ましい。後者の場合には、2種の導電剤の併用により、少量の添加量で所定の抵抗を得ることができ、弾性率の低下を防止することができるとともに、抵抗のバラツキや環境依存性が小さいベルトとすることができる。また、ポリエーテルエステルアミドは、本発明のベルトにおいて基材として用いるポリエステル系エラストマーと相溶性が良く、表面光沢性や耐屈曲性に大きな悪影響を及ぼすことがない。ポリエーテルエステルアミドは、例えば、ペレスタットNC6321(三洋化成(株)製)として、市場で容易に入手可能である。
【0056】
上記導電剤の配合量としては、電子導電剤については、基材100重量部に対し、通常100重量部以下、例えば1〜100重量部、特には1〜80重量部、とりわけ5〜50重量部である。また、イオン導電剤については、基材100重量部に対し、通常0.01〜10重量部、特には0.05〜5重量部の範囲である。さらに、高分子イオン導電剤については、基材100重量部に対し、通常1〜500重量部、好ましくは10〜400重量部である。特に、導電剤としてカーボンブラックを単独で用いる場合には、その添加量は、基材100重量部に対し5〜30重量部とすることが好ましい。また、ポリエーテルエステルアミドとカーボンブラックとを併用する場合には、基材100重量部に対し、ポリエーテルエステルアミドの添加量を5〜25重量部、カーボンブラックの添加量を5〜15重量部とすることができる。
【0057】
なお、導電性材料として高分子イオン導電剤を用いる場合には、基材樹脂と高分子イオン導電剤との相溶性を高めるために、相溶化剤を添加してもよい。
【0058】
また、本発明のベルトには、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の成分に加えて他の機能性成分を適宜添加することも可能であり、例えば、各種充填材、カップリング剤、酸化防止剤、滑剤、表面処理剤、顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、架橋剤等を適宜配合することができる。さらに、着色剤を添加して着色を施してもよい。
【0059】
本発明の導電性エンドレスベルトの総厚さは、転写搬送ベルトまたは中間転写部材等の形態に応じて適宜選定されるものであるが、好ましくは50〜200μmの範囲内である。また、その表面粗さとしては、好適には、JIS10点平均粗さRzで10μm以下、特に6μm以下、更には3μm以下とする。さらに、体積抵抗率としては、10Ω・cm〜1013Ω・cmの範囲内に調整することが好ましい。
【0060】
また、本発明の導電性エンドレスベルトには、図1に一点鎖線で示すように、図2の画像形成装置における駆動ローラ9または図3の駆動ローラ30などの駆動部材と接触する側の面に、該駆動部材に形成した嵌合部(図示せず)と嵌合する嵌合部を形成してもよく、本発明の導電性エンドレスベルトは、このような嵌合部を設け、これを駆動部材に設けた嵌合部(図示せず)と嵌合させて走行させることにより、導電性エンドレスベルトの幅方向のずれを防止することができる。
【0061】
この場合、前記嵌合部は、特に制限されるものではないが、図1に示すように、ベルトの周方向(回転方向)に沿って連続する凸条とし、これを駆動ローラ等の駆動部材の周面に周方向に沿って形成した溝に嵌合させるようにすることが好ましい。
【0062】
なお、図1(a)では、1本の連続する凸条を嵌合部として設けた例を示したが、この嵌合部は多数の凸部をベルトの周方向(回転方向)に沿って一列に並べて突設してもよく、また嵌合部を2本以上設けたり(図1(b))、ベルトの幅方向中央部に設けてもよい。更に、嵌合部として図1に示した凸条ではなく、ベルトの周方向(回転方向)に沿った溝を設け、これを前記駆動ローラ等の駆動部材の周面に周方向に沿って形成した凸条と嵌合させるようにしてもよい。
【0063】
本発明の導電性エンドレスベルトは、上記基材、フッ素系樹脂またはシリコーン系化合物および導電剤等を含む樹脂組成物の押出し成形により好適に製造することができ、具体的には例えば、二軸混練機により上記各種配合成分を含む樹脂組成物を混練し、得られた混練物を環状ダイスを使って押出し成形することにより製造することができる。または、静電塗装等の粉体塗装法、ディップ法または遠心注型法も好適に採用することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記の表1〜7中にそれぞれ示す配合にて、各実施例および比較例の導電性エンドレスベルトを作製した。下記表中の配合量は、いずれも重量部を示す。具体的には、各配合成分を二軸混練機により溶融混練して、得られた混練物を所定の環状ダイスを用いて押出機により押出すことで、内径220mm、厚み100μm、幅250mmの寸法を有する導電性エンドレスベルトを得た。混練・押出成形温度は、実施例13〜20,比較例6,7は250℃、それ以外は240℃であった。得られた各実施例および比較例のベルトにつき、下記の手順に従い、評価を行った。これらの結果を下記の表1〜7中に併せて示す。
【0065】
<引張弾性率の測定>
以下に示す条件にて、引張弾性率の測定を行った。
装置:(株)島津製作所製、引張試験機 EZ test(解析ソフト:Trappezium)
サンプル:短冊形状(長さ100mm×幅10mm×標準厚み100μm)
引張速度:5mm/sec
データサンプリング間隔:100msec
測定方法:0.5〜0.6%伸度での傾き(記載ある場合はJISに記載の接線法)
測定環境:室温(23±3℃、55±10%RH)
【0066】
<耐折れ回数>
各ベルトから長さ100mm、幅15mmの試験片を切り出し、東洋精機(株)製のMIT耐揉疲労試験機を用いて、折り曲げ速度175回/min、回転角度135度、引張荷重14.7N(1.5kgf)の条件で耐折り曲げ回数を測定した。結果は、比較例5を4000とする指数にて表示した。数値が大なるほど結果は良好である。
【0067】
<耐クリープ性>
各ベルトから長さ150mm、幅10mmの試験片を切り出し、長さ方向に100mm間隔の標線を記入して、長さ方向に荷重200gを付与した状態で、温度60℃、相対湿度85%の環境下に4時間放置した。放置前の標線間距離をL、放置後の標線間距離をLとしたときのクリープひずみを、下記式に従い求めた。評価結果は、クリープひずみが0.5%以下のものを○、0.5%を超えるものを×とした。なお、標線間距離の測定は、試験片を温度23℃、相対湿度50%の環境下に一時間以上放置した後、長さ方向に荷重200gを付与して行った。
クリープひずみ(%)={(L−L)/L}×100
【0068】
<体積抵抗の測定>
温度23℃、相対湿度50%にて、測定装置として、アドバンテスト(ADVANTEST)社製の、抵抗計R8340AにサンプルチャンバーR12704Aを接続したものを用いて、電圧500Vにて測定を行い、周方向に20mmピッチで20箇所測定した値の平均値を求めた。
【0069】
<光沢度>
(株)掘場製作所製のハンディ光沢計IG−320を使用して、各供試ベルトを、中間転写ベルトとして中間転写方式の画像形成装置に装着し、1万枚画像出力を行った後のベルト表面と、初期のベルト表面とにおける表面光沢度をそれぞれ測定した。
【0070】
【表1】

*1)ポリエステル系エラストマー:(1)ペルプレンE−450B,(2)ペルプレンEN−16000,(3)ペルプレンP−90B(いずれも東洋紡(株)製)
*2)PBT:(株)東レ製,トレコン1401CH2
*3)PBN:帝人化成(株)製,TQB−OT
*4)PVdF:ダイキン工業(株)製,ネオフロンVW410
*5)アクリル変性PTFE:三菱レイヨン(株),メタブレンA3000
*6)シリコーンマスターバッチ:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製 シリコーンコンセントレートBY27−009(PBTベース、シリコーンポリマー含有量50重量%)
*7)カルボジイミド化合物:日清紡績(株)製,カルボジライト
*8)カーボンブラック:電気化学工業(株)製,デンカブラック粒状
*9)ポリエーテルエステルアミド:三洋化成(株)製,ペレスタットNC6321
【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
【表6】

【0076】
【表7】

【0077】
上記表1〜7に示すように、各実施例のベルトにおいては、引張弾性率、耐折れ回数、耐クリープ性、体積抵抗並びに初期および耐久後の光沢度の各評価項目について、いずれも良好な結果が得られていることがわかる。これに対し、比較例1〜10のベルトはいずれも耐久後の光沢度が悪く、また、比較例3のベルトでは所定の抵抗値が得られず画像試験ができない結果となり、比較例4,9,10のベルトでは耐クリープ性が不十分であり、比較例5,8のベルトでは耐折れ性が不十分であり、比較例11はフッ素樹脂の添加量が少ないために耐久後の光沢度が悪く、比較例12は添加量が多いために表面性が悪化して光沢度が悪くなっており、結果として、いずれも所望のベルト性能を十分満足しないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施の形態に係る導電性エンドレスベルトの幅方向断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の一例としての転写搬送ベルトを用いたタンデム方式の画像形成装置を示す概略図である。
【図3】本発明の画像形成装置の他の例としての中間転写部材を用いた中間転写装置を示す概略図である。
【図4】本発明の画像形成装置のさらに他の例としての他の中間転写部材を用いた中間転写装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0079】
1、11、52a〜52d 感光体ドラム
2、7 帯電ロール
3 現像ロール
4 現像ブレード
5 トナー供給ロール
6 クリーニングブレード
8 除電ロール
9、30、55 駆動ローラ(駆動部材)
10 転写搬送ベルト
12 一次帯電器
13 画像露光
14、35 クリーニング装置
19 給紙カセット
20,50 中間転写部材
25 転写ローラ
26、53 記録媒体
29、61 電源
41、42、43、44 現像器
54a〜54d 第1現像部〜第4現像部
56 記録媒体送りローラ
57 記録媒体送り装置
58 定着装置
59 電源装置(電圧印加手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成体と記録媒体との間に配設され、駆動部材により循環駆動されて、前記画像形成体表面に形成されたトナー像を一旦自己の表面に転写保持し、これを記録媒体へと転写する中間転写部材用の導電性エンドレスベルトにおいて、
結晶融点210℃以上のポリエステル系エラストマーからなるか、または、該ポリエステル系エラストマーを主成分とし、熱可塑性ポリエステル系樹脂を49重量%以下にて含有する基材に対し、フッ素系樹脂またはシリコーン系化合物が添加されてなることを特徴とする導電性エンドレスベルト。
【請求項2】
静電吸着により保持した記録媒体を、駆動部材により循環駆動されて、複数種の画像形成体に搬送し、各トナー像を該記録媒体に順次転写するタンデム方式の転写、搬送用導電性エンドレスベルトにおいて、
結晶融点210℃以上のポリエステル系エラストマーからなるか、または、該ポリエステル系エラストマーを主成分とし、熱可塑性ポリエステル系樹脂を49重量%以下にて含有する基材に対し、フッ素系樹脂またはシリコーン系化合物が添加されてなることを特徴とする導電性エンドレスベルト。
【請求項3】
前記フッ素系樹脂またはシリコーン系化合物の添加量が、前記基材100重量部に対し、0.5〜10重量部の範囲内である請求項1または2記載の導電性エンドレスベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−299057(P2008−299057A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144852(P2007−144852)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】