説明

導電性ゴム組成物、導電性ゴム組成物の製造方法及び導電性ゴムローラ

【課題】本発明の目的は、カーボンブラックを充填した導電性ゴム組成物において、製造上の温度条件や放置時間の違いにより、導電性の変化する割合を小さくすることができる該導電性ゴム組成物及びこれを用いた導電性ゴムローラを提供することにある。
【解決手段】ゴム成分にカーボンブラックを充填した導電性ゴム組成物において、該導電性ゴム組成物のムーニー粘度(JIS K6300−1規格)測定値が、30≦ML1+4(100℃)≦60の範囲内であり、且つ、該導電性ゴム組成物のTHF不溶分をTG/DTAにて測定したとき、該不溶分中の存在比が、該ゴム成分が1.0に対して該カーボンブラックが2.5以上4.5以下であることを特徴とする導電性ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やレーザービームプリンタ等の画像形成装置に組み込まれる帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等の導電性ゴムローラの弾性体を形成するのに適した導電性ゴム組成物、その製造方法及び該ゴム組成物により製造された導電性ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、導電性ゴムは、電子導電系ゴムとイオン導電系ゴムの2つに分けられる。導電性充填材を分散させることによって得られる電子導電系ゴムは温湿度による環境依存性が小さく、原料ゴムに安価な材料が使用できるとういうメリットがある反面、導電性充填材の分散による電気抵抗のバラツキが大きいことが知られている。さらに、分散だけではなく、押出し、研磨等の加工方法、加工条件による電気抵抗の変化もあり、同一の電気抵抗の材料を使用しても、加工上のバラツキが電気抵抗のバラツキとなってしまう不具合もあった。一方、ゴム自体が導電性であるイオン導電系ゴムは、電気抵抗のバラツキは小さいが、材料費が高く、電気抵抗の環境依存性が大きい等の問題がある。例えば、ヒドリンゴムは低抵抗であり電気抵抗のバラツキが小さいが、材料費が高い。コスト面から鑑みて、安価な材料を用いることのできる電子導電系ゴムは有用であるが、抵抗バラツキを抑制することが重要なテーマであり、前述したように、加工条件でのバラツキを抑制することも必要とされている。
【0003】
該導電性ゴムローラの製造方法としては、ゴム材料をチューブ状に押出した後、加硫缶にて加熱加硫し、該ゴムチューブに芯金を圧入して、芯金に被覆して作製する方法、クロスヘッド押出し機で芯金にゴム材料を連続的に被覆押出する方法等がある。前者の製造方法は、バッチ生産となるため、コスト面において不利となる。一方、後者の製造方法では、連続熱風炉にて加硫できるため連続生産が可能となり、コスト面において有利となる。しかしながら、熱風炉内の熱媒体は空気であるため、該導電性ゴムローラの深さ方向に対する加熱ムラが生じやすい。
【0004】
また、導電性ゴムローラの研磨工程において、研磨量の違いにより導電性ゴムローラは導電性が変化することがある。例えば、導電性ゴム層の深さ方向に対する削り代の多いものと少ないものでは、削り代の多いものの方が研磨後の導電性は向上する。その理由は、加熱加硫工程における導電性ゴム層の深さ方向に対する加熱ムラが考えられる。
【0005】
そのような電子導電系ゴム組成物を弾性体とする導電性ゴムローラにおいて、電気抵抗のバラツキを制御する様々な工夫がされている。その方法として、互いに非相溶のアクリロニトリルブタジエンゴムとエチレンプロピレンジエンゴムを混合することで、海島構造を有した混合物を形成し、導電剤となるカーボンブラックを充填することで半導電性の混合物を得ることである。この方法において、導電剤となるカーボンブラックが海島構造の界面に偏在し、少量の導電剤で低い電気抵抗の混合物が得られ、電気抵抗の調整が比較的容易であるので、抵抗値のバラツキが抑制できる(特許文献1)。しかし、この方法では、導電剤が界面に偏在し、界面において均一に存在するように制御することは困難であると思われる。また、この方法では加熱加硫工程における電気抵抗の変化を制御することまでは考慮されていない。
【0006】
このようなことから、上記に示したような導電性ゴム組成物と導電性ゴムローラの電気抵抗のばらつきを小さくする材料や手法が望まれている。
【特許文献1】特開平11−45013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、カーボンブラックを充填した導電性ゴム組成物であって、製造上の温度条件や放置時間の違いにより生ずる導電性の変化が抑えられている導電性ゴム組成物を提供すること及びこれを用いた導電性ゴムローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ついに本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ゴム成分にカーボンブラックを充填した導電性ゴム組成物であって、該導電性ゴム組成物のムーニー粘度(JIS K6300−1:2001)が、30≦ML1+4(100℃)≦60の範囲内であり、かつ、該導電性ゴム組成物のTHF不溶分をTG/DTA測定において、該不溶分中のゴム成分に対して、カーボンブラック量が2.5質量倍以上4.5質量倍以下であることを特徴とする導電性ゴム組成物である。
【0010】
また、本発明は、ゴム成分が、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム及びエチレンプロピレンゴムから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする上記の導電性ゴム組成物である。
【0011】
さらに、本発明は、導電性ゴム組成物原料をゴム成分が硬化する温度より低い温度で混練りし、その後70乃至90℃の温度範囲に1乃至6時間置くことを特徴とする上記の導電性ゴム組成物の製造方法である。
【0012】
さらに、また、本発明は、芯金上に導電性ゴム層が形成された導電性ゴムローラであって、該導電性ゴム層が、上記の導電性ゴム組成物から形成されたものであることを特徴とする導電性ゴムローラである。
【0013】
また、本発明は、前記導電性ゴム層が、クロスヘッドダイのガイドを連続的に通過した芯金の外周上に導電性ゴム組成物がゴム押出し機により被覆された後、加熱加硫して形成されていることを特徴とする上記の導電性ゴムローラである。
【0014】
そして、本発明は、導電性ゴム層が、導電性ゴム組成物を芯金に被覆した後加熱加硫され、さらに研磨されていることを特徴とする上記の導電性ゴムローラである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、カーボンブラックを充填した導電性ゴム組成物及びこれを用いた導電性ゴムローラにおいて、製造上の温度条件や放置時間の違いがあっても、導電性の変化する割合が小さいものが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の形態につき詳細に説明する。
【0017】
本発明は、ゴム成分にカーボンブラックを充填した導電性ゴム組成物に関するものである。この導電性ゴム組成物は、JIS K6300−1:2001に規定されるムーニー粘度の測定値が、30≦ML1+4(100℃)≦60の範囲内であることが特徴である。また、該導電性ゴム組成物をTHFに曝した時に得られるTHF不溶分をTG/DTAにて含まれるゴム成分及びカーボンブラック分を測定したとき、該不溶分中のゴム成分に対してカーボンブラックが2.5質量倍以上4.5質量倍以下にあることも特徴とする。
【0018】
ムーニー粘度ML1+4(100℃)が30を下回る導電性ゴム組成物では、導電性ゴム組成物を加熱したときの導電性の変化が大きくなる。一方、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が60を越える導電性ゴム組成物を用いると、例えば、押出しなどの導電性ゴムローラの製造工程において、導電性ゴム組成物の加工が困難となることが多い。
【0019】
また、導電性ゴム組成物のTHF不溶分をTG/DTAにて測定したとき、不溶分ゴム成分に対してカーボンブラックが2.5質量倍より小さいとき、導電性ゴム組成物は加熱による導電性の変化が大きくなるので好ましくない。一方、4.5質量倍より大きいと導電性ゴム組成物の硬化物での電気抵抗が高くなりやすく、中抵抗領域用途の導電性ゴム組成物を得にくくなる。
【0020】
本発明の導電性ゴム組成物において、カーボンブラックの種類としては特に制限はないが、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等が使用可能である。また、カーボンブラックの平均一次粒子径(以下、特に断らない限り、「平均粒径」という)としても特に制限はないが、例えば、平均粒径20乃至60nmのものを使用するのが適当である。その理由としては、平均粒径が20nm未満の場合、ゴム材料への分散性が悪化することがあり、その結果、混練りでの加工性も悪化する。一方、平均粒径が60nmを超える場合、ゴム材料に添加した際に導電性を付与することが困難となることがある。
【0021】
本発明では、ゴム成分としては、導電性ゴム成形品の製造に用いられるゴム原料ならばいずれでも使用可能であるが、以下のゴムから選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム及びエチレンプロピレンゴム。これらゴムでは、カーボンブラックを添加したのち混練することで得られる導電性ゴム組成物は、温度と湿度による環境依存性が極めて少なく、容易に所望の中抵抗領域用途の導電性ゴム組成物を得ることができる。また、これらゴムは汎用ゴムとして一般的に使用されているゴムであり、安価な材料である。
【0022】
本願の導電性ゴム組成物の製造方法は、原料をゴム成分が硬化しない温度範囲で混練りした後70乃至90℃の温度範囲で1乃至6時間置く。
【0023】
ゴム組成物は、通常、ゴム成分に、各種添加剤、例えば、硬化剤、硬化促進剤、硬化調整剤、体質顔料(炭酸カルシウム、体質カーボン等)、増量剤などが配され、これをバンバリーミキサー、混練りロール等で混練されて製造される。この混練は、ゴム組成物が硬化しない温度で、すなわちゴム成分が硬化しない温度で行われる。本発明の導電性ゴム組成物は、カーボンブラックも配されていることが特徴であり、導電性はカーボンブラックが配されることにより達成されている。しかしながら、上記したようにカーボンブラックを配すると導電性が安定しないことが多く、本発明の導電性ゴム組成物の製造方法は、混練り後の熟成に特徴がある。
【0024】
導電性ゴム組成物原料の混練り後に熟成する温度を70乃至90℃の温度範囲で行うのは、70℃未満ではTHF不溶分中のゴム成分が不足し、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が30未満となりやすい。すなわち、THF不溶分をTG/DTAにて測定したとき、該不溶分中のゴム成分に対してカーボンブラックが2.5質量倍以上となりにくく、該導電性ゴム組成物の加熱による導電性の変化が大きく。一方、熟成温度を90℃超とした時、THF不溶分中のゴム成分が多くなりすぎるので、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が60超となり、押出しなどの導電性ゴムローラの製造工程において、導電性ゴム組成物の加工が困難となることが多い。
【0025】
導電性ゴム組成物原料を混練りした後の熟成時間は1〜6時間とすることにより、THF不溶分中のゴム成分の量が適正範囲にコントロールすることが可能となる。すなわち、該熟成時間が1時間未満では、THF不溶分中のゴム成分が不足し、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が30未満となりやすい。一方、6時間超では導電性ゴム組成物は架橋反応しやすい状態になり、一部が架橋することもあり、本発明にかかる導電性ゴム組成物が得にくい。
【0026】
上記したようにして製造された本発明の導電性ゴム組成物は、芯金の外周上に導電性ゴム層として使用して、好適である。以下に、本発明の導電性ゴム組成物を導電性ゴム層とする導電性ローラについて説明する。
【0027】
本発明の導電性ゴムローラは、芯金上に導電性ゴム層が形成された導電性ゴムローラであって、該導電性ゴム層が、上記導電性ゴム組成物から形成されたものであることを特徴とする。
【0028】
本発明の導電性ゴム組成物はカーボンブラックを使用した、中抵抗領域における導電性を容易に付与することができるものであり、中抵抗領域の電気抵抗が必要な導電性ゴムローラの導電性ゴム層の形成に好適に利用できる。
【0029】
本発明の導電性ゴムローラにおいて、その芯金としては特に制限はなく、例えば、鉄、銅及びステンレス等の金属、カーボン分散樹脂、金属又は金属酸化物分散樹脂等を用いることができる。特に、ステンレススチール、めっき処理した鉄、黄銅及び導電性プラスチック、アルミニウム、銅、鉄、又はこれらを含む合金等の良導体が好適である。
【0030】
本発明の導電性ゴムローラは、上記導電性ゴム組成物を用いて、例えば、以下のようにして製造することができる。芯金を収納した導電性ゴムローラの金型に導電性ゴム組成物を注入し、そこで加熱硬化する。導電性ゴム組成物をチューブ上に押し出し、所定長さに切断した後加熱硬化してゴムチューブを作成し、そのチューブに芯金を押し込む。なお、チューブ状で加熱硬化した場合は得られたチューブを所定長さに切断した後に芯金を押し込む。またはクロスヘッドダイを備えるゴム押出し機に、クロスヘッドダイのガイドに連続的に芯金を通過させて、その外周上に導電性ゴム組成物を被覆した後、加熱加硫して導電性ゴム層を形成する。なお、通常、導電性ゴム層を形成した後に、導電性ゴム層の形態を整えるために、研磨することが多い。
【0031】
本発明では、クロスヘッドダイを備えた押出し機による製造方法が以下の理由により好ましい。すなわち、連続的に芯金をクロスヘッド内に供給しながらゴムを被覆し押出した後、連続熱風炉にて加熱加硫するため連続生産が可能であり、コスト面において有利となる。なお、本発明の導電性ゴムローラは、上記導電性ゴム組成物を使用しているので、連続熱風炉内での加熱ムラが生じたとしても、研磨しても電気抵抗の変化が小さいので、製品間のムラが少なくてすむ。
【0032】
導電性ゴムローラの形状形成方法としては、例えば、金型を用いて成形する方法や研磨により形成させる方法があるが、研磨による方法は、砥石の形状を変化させることにより、様々な形状に対応可能であるというメリットがある。かつ、本発明の導電性ゴム組成物を用いることで、研磨工程において、研磨量の違いにより導電性ゴムローラの導電性が変化する不具合を抑制できるため、導電性ゴムローラの研磨による成形方法が好適に用いることができる。
【0033】
本発明の導電性ゴムローラは、そのままであるいは弾性層表面をトリミングして、静電方式の画像形成装置において、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等の導電性ローラとして使用できる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明ついて詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、以下において、特に断らない限り、「部」は「質量部」を表す。
【0035】
まず、以下の実施例、比較例で使用した資材について示す。
【0036】
・ゴム成分
N230SV:NBR「JSR N230SV」(商品名、JSR株式会社製)
N230SH:NBR「JSR N230SH」(商品名、JSR株式会社製)
EPDM501A:EPDM「エスプレンEPDM501A」(商品名、住友化学株式会社製)
BR150L:BR「UBEPOL−BR150L」(商品名、宇部興産株式会社製)
【0037】
・カーボンブラック
#7360SB:カーボンブラック「トーカブラック#7360SB」(商品名、東海カーボン株式会社製)
EC600JD:カーボンブラック「ケッチェンブラックEC600JD」(商品名、ケッチェン・インターナショナル株式会社製)
【0038】
・加硫剤、加硫促進剤
PMC:加硫剤(イオウ)「サルファックスPMC」(商品名、鶴見化学株式会社製)
DM:加硫促進剤「ノクセラーDM」(商品名、大内新興化学工業株式会社製)
TS:加硫促進剤「ノクセラーTS」(商品名、大内新興化学工業株式会社製)
【0039】
・その他
酸化亜鉛:酸化亜鉛2種(堺化学工業株式会社製)
ステアリン酸:ステアリン酸「ルナック」(商品名、花王株式会社製)
可塑剤:ゴム用可塑剤「アデカサイザーRS−700」(商品名、株式会社アデカ製)
【0040】
実施例1
〔導電性ゴム組成物の作製〕
ゴム成分として、N230SV 80部とN230SH 20部、カーボンブラックとして、#7360B 40部とEC600JD 5部を用い、酸化亜鉛5部、ステアリン酸1部及び可塑剤10部を加え、7リットルのニーダー中90℃で20分間混練りした。その後、PMC 1.5部、DM 1部及びTS 1部を加え、80℃の12インチオープンロールで混練して、未加硫状態の導電性ゴム組成物Aを得た。さらに、この導電性ゴム組成物Aを80℃で3時間置き、未加硫状態の導電性ゴム組成物A’を得た。
【0041】
得られた導電性ゴム組成物A’のムーニー粘度ML1+4(100℃)及びTHF不溶分中のカーボンブラック量を下記により測定した。結果を表1に示す。
【0042】
・ムーニー粘度ML1+4(100℃)
JIS K6300:2001に従って、ムーニー粘度測定器「ムーニービスコメーターSMV−201V」(商品名、株式会社島津製作所製)を用いて、ローターサイズL、測定温度100℃で測定した。
【0043】
・THF不溶分中のカーボンブラック量
導電性ゴム組成物A’5mg乃至10mgをTHF10mlに室温にて48時間浸漬した後、#400メッシュでろ過し、得られた残渣分を70℃乃至90℃で1時間乾燥して、THF不溶分を得た。次いで、このTHF不溶分を示差熱熱重量同時測定装置「TG/DTA6200」(商品名、セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、ゴム成分及びカーボン量を測定し、ゴム成分を1として規格化して、カーボンブラック量を求めた。なお、測定は下記の温度プログラムにて、測定間隔は0.5秒で行った。
STEP1:30乃至550℃(昇温速度20℃/分)、窒素ガス流量(300ml/分)
STEP2:550乃至300℃(降温速度20℃/分)、空気流量(300ml/分)
STEP3:300乃至800℃(昇温速度20℃/分)、空気流量(300ml/分)
STEP1の減量がゴム成分量に相当し、STEP2及び3での減量がカーボンブラック量に相当する。
【0044】
〔導電性ゴムローラの作製〕
押出し機として、シリンダー内直径が70mm、L/Dが20のベント式押出し機を用意した。押出し機の温調は、シリンダー、ヘッド、スクリュー共に80℃に調整した。また、スクリュー回転数は芯金の押出し速度に合わせ、8rpmに調整した。
【0045】
芯金として、両端部12mmを残し、加硫接着剤「メタロックU−20」(商品名、株式会社東洋化学研究所製)を予め塗布した直径6mm、長さ250mmの鉄製のものを使用した。
【0046】
上記で作成した導電性ゴム組成物A’を押出し機内に投入し、連続的に芯金をクロスヘッド内に供給しながらゴムを被覆した。ダイスはφ8.2mmのダイスを使用し、押出し時のゴムローラの目標外径を8.0mmとした。被覆されたゴムをカッターで切断し、160℃、60分熱風炉で加硫した後、芯金端部より12mmの位置からゴムを剥ぎとり、ゴムローラを作製した。研磨は砥石GC120(株式会社テイケン製)を使用し、砥石回転数2000rpm、ローラ主軸回転数400rpm、砥石移動速度10mm/minで行った。このようにして、外径7.8mmの導電性ゴムローラBを作製した。
【0047】
得られた導電性ゴムローラB1000本の電気抵抗を下記により測定し、その後、再び上記と同じようにしてさらに200μmを研磨にして、導電性ゴムローラB’を得、再び電気抵抗を測定した。これらの電気抵抗の測定値の平均値から桁差(対数表示)を求めた。これらの結果も表1に示す。
【0048】
・ローラの電気抵抗
得られた導電性ゴムローラを芯金端部より直流電圧を印加できる、内部抵抗1kΩの電気回路に組み込み、芯金両端部に荷重500gを加重し、導電性ゴムローラの回転速度30rpmにての電気抵抗を5秒間測定し、その平均値を当該試料の電気抵抗値とした。
【0049】
実施例2
ゴム成分として、N230SV 90部とN230SH 10部を用い、可塑剤を全く使用しない他は実施例1と同様にして、導電性ゴム組成物Aを得、以下実施例1と同様に導電性ゴムローラを作成した。また、導電性ゴム組成物A及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0050】
実施例3
ゴム成分として、N230SV 70部とN230SH 30部を用い、可塑剤を20部用した他は実施例1と同様にして、導電性ゴム組成物Aを得、以下実施例1と同様に導電性ゴムローラを作成した。また、導電性ゴム組成物A及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0051】
実施例4
ゴム成分として、N230SV 60部とN230SH 40部を用いた他は実施例1と同様にして、導電性ゴム組成物Aを得、以下実施例1と同様に導電性ゴムローラを作成した。また、導電性ゴム組成物A及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0052】
実施例5
ゴム成分として、N230SV 100部を用い、可塑剤を30部とした他は実施例1と同様にして、導電性ゴム組成物Aを得、以下実施例1と同様に導電性ゴムローラを作成した。また、導電性ゴム組成物A及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0053】
実施例6
ゴム成分として、EPDM501S 100部を用いた他は実施例1と同様にして、導電性ゴム組成物Aを得、以下実施例1と同様に導電性ゴムローラを作成した。また、導電性ゴム組成物A及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0054】
実施例7
ゴム成分として、BR150L 100部を用いた他は実施例1と同様にして、導電性ゴム組成物Aを得、以下実施例1と同様に導電性ゴムローラを作成した。また、導電性ゴム組成物A及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0055】
実施例8
ゴム成分として、N230SV 100部を用い、可塑剤を40部とし、カーボンブラック#7360SBを30部に減らした他は実施例1と同様にして、導電性ゴム組成物Aを得た。得られた導電性ゴム組成物Aを80℃で3時間置き、導電性ゴム組成物A’を得た。この導電性ゴム組成物A’を用い、以下実施例1と同様に導電性ゴムローラを作成した。得られた導電性ゴム組成物A’及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0056】
実施例9
実施例1と同様にして得られた導電性ゴム組成物Aを70℃で1時間置き、導電性ゴム組成物A’を得た。この導電性ゴム組成物A’を用い、以下実施例1と同様に導電性ゴムローラを作成した。得られた導電性ゴム組成物A’及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0057】
実施例10
実施例1と同様にして得られた導電性ゴム組成物Aを90℃で6時間置き、導電性ゴム組成物A’を得た。この導電性ゴム組成物A’を用い、以下実施例1と同様に導電性ゴムローラを作成した。得られた導電性ゴム組成物A’及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0058】
比較例1
ゴム成分として、N230SV 50部とN230SH 50部を用いた他は実施例1と同様にして、導電性ゴム組成物A’を得、以下実施例1と同様に導電性ゴムローラを作成した。また、導電性ゴム組成物A’及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0059】
比較例2
ゴム成分として、N230SV 100部を用い、可塑剤を50部とし、カーボンブラックEC600JDを3部に減らした他は実施例1と同様に導電性ゴムローラを得た。また、得られた導電性ゴム組成物A’及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0060】
比較例3
ゴム成分として、N230SV 100部を用い、可塑剤を全く使用せず、カーボンブラックとして#7360SB55部とBC600JD3部を用いる他は実施例1と同様にして、導電性ゴムローラを得た。また、導電性ゴム組成物A’及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0061】
比較例4
実施例8において得られた導電性ゴム組成物Aを用い、実施例1と同様にして、導電性ゴムローラを得た。用いた導電性ゴム組成物A及び得られた導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0062】
比較例5
実施例1と同様にして得られた導電性ゴム組成物Aを60℃で0.5時間置き、導電性ゴム組成物A’を得た。この導電性ゴム組成物A’を用い、以下実施例1と同様に導電性ゴムローラを作成した。得られた導電性ゴム組成物A’及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0063】
比較例6
実施例1と同様にして得られた導電性ゴム組成物Aを100℃で7時間置き、導電性ゴム組成物A’を得た。この導電性ゴム組成物A’を用い、以下実施例1と同様に導電性ゴムローラを作成した。得られた導電性ゴム組成物A’及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1に見られるように、導電性ゴム組成物のムーニー粘度ML1+4(100℃)が60より大であると、研磨量の異なるゴムローラの電気抵抗の桁差が極端に小さくなるが、押出し圧力が極端に上昇し、押出し加工性が悪化する(比較例1)。また、導電性ゴム組成物のムーニー粘度ML1+4(100℃)が30未満であると、研磨量の異なるゴムローラの電気抵抗の桁差が極端に大きくなる(比較例2)。
【0066】
THF不溶分のTG/DTA測定でカーボンブラック量が4.5より高くなると、研磨量の異なるゴムローラの電気抵抗の桁差が小さくなるが、ゴムローラの電気抵抗が高くなる(比較例3)。また、THF不溶分のTG/DTA測定でカーボンブラック量が2.5より低くなると、研磨量の異なるゴムローラの電気抵抗値の対数差が極端に大きくなる(比較例4)。
【0067】
また、実施例2、実施例3、比較例3及び比較例4から、THF不溶分のTG/DTA測定でカーボンブラック量が多い方が、導電性ゴムローラの電気抵抗が高くなるが、研磨量の異なるゴムローラ間では電気抵抗の桁差が小さくなることが分かる。
【0068】
実施例4、実施例5、比較例1及び比較例2から、ゴム組成物のムーニー粘度ML1+4(100℃)が高い方が研磨量の異なるゴムローラ間の電気抵抗の桁差が小さくなることが分かる。
【0069】
実施例8と比較例4から見られるように、同配合であっても、70乃至90℃で1乃至6時間置くことによって、THF不溶分のTG/DTA測定でカーボンブラック量が多くなり、研磨量の異なるゴムローラの電気抵抗値の対数差が小さくなることが分かる。
【0070】
実施例1、実施例9、実施例10、比較例5及び比較例6から見られるように、熟成温度及び熟成時間はそれぞれ70乃至90℃、1乃至6時間が好適であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分にカーボンブラックを充填した導電性ゴム組成物であって、
該導電性ゴム組成物のムーニー粘度(JIS K6300−1:2001)が、30≦ML1+4(100℃)≦60の範囲内であり、かつ、
該導電性ゴム組成物のTHF不溶分のTG/DTA測定において、該不溶分中のゴム成分に対して、カーボンブラック量が2.5質量倍以上4.5質量倍以下である
ことを特徴とする導電性ゴム組成物。
【請求項2】
ゴム成分が、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム及びエチレンプロピレンゴムから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴム組成物。
【請求項3】
導電性ゴム組成物原料をゴム成分が硬化する温度より低い温度で混練りし、その後70乃至90℃の温度範囲で1乃至6時間置くことを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
芯金上に導電性ゴム層が形成された導電性ゴムローラであって、該導電性ゴム層が請求項1又は2に記載の導電性ゴム組成物から形成されたものであることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項5】
前記導電性ゴム層が、クロスヘッドダイのガイドを連続的に通過した芯金の外周上に導電性ゴム組成物がゴム押出し機により被覆された後、加熱加硫して形成されていることを特徴とする請求項4に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項6】
導電性ゴム層が、導電性ゴム組成物を芯金に被覆した後に加熱加硫され、さらに研磨されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の導電性ゴムローラ。

【公開番号】特開2009−275082(P2009−275082A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126047(P2008−126047)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】