説明

導電性パターンの形成方法および電子デバイス

【課題】 撥液処理を施すことなく、基板表面に細線化した導電性パターンを高い密着性を以って形成する方法を提供する。
【解決手段】 基板表面に金属と結合する基を持つ化合物層を形成する工程と、
前記化合物層を加熱しながら、前記化合物層表面に金属ナノ粒子分散インクをパターン状に塗布して金属ナノ粒子分散インク層を形成する工程と
前記金属ナノ粒子分散インク層を焼結する工程と
を含むことを特徴とする導電性パターンの形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性パターンの形成方法および電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラッシュメモリの大容量化が加速しておりNANDメモリチップの薄型化と多層化が求められている。NANDチップの薄型化が求められる中、多層化したNANDメモリチップの電極間をワイヤボンディング(以下W/Bと略す)で接続することが行われている。しかしながら、W/B技術はボンディングの荷重によりチップが割れてしまう可能性があること、ボンディングワイヤのネックの高さがチップの厚さを超えて薄膜化の障害になることが挙げられる。
【0003】
このような状況からW/Bの代替技術として導電性インクのインクジェット(以下I/Jと略す)によりチップの電極間を配線で接続する技術を検討されている。I/Jによる配線形成のメリットは、配線形成時にチップへの衝撃を緩和し、かつボンディングワイヤに比べて高さを抑えることができることである。
【0004】
I/Jによる配線形成において、配線の細線化が課題になっている。このため、例えば半導体基板の保護膜をフッ素系化合物で撥液処理することによりI/Jでの導電性インクの着弾の広がりを防いで、細線化した配線を形成することが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、保護膜に撥液処理を施すと、I/Jで形成した配線の保護膜表面に対する密着性が低下し、ピーリングテストで配線が剥離する課題を生じる。配線の密着性が低下すると、剥離による断線が懸念され、信頼性の低下要因となる。
【0006】
本発明は、撥液処理を施すことなく、基板表面に細線化した導電性パターンを高い密着性を以って形成する方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、互いにずらして積層された半導体チップの電極間を細線化した金属配線で相互に接続し、かつ各半導体チップの保護膜表面、および各半導体チップ間の段差に位置するスロープ表面に対して金属配線を良好に密着した電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の第1態様によると基板表面に金属と結合する基を持つ化合物層を形成する工程と、
前記化合物層を加熱しながら、前記化合物層表面に金属ナノ粒子分散インクをパターン状に塗布して金属ナノ粒子分散インク層を形成する工程と
前記金属ナノ粒子分散インク層を焼結する工程と
を含むことを特徴とする導電性パターンの形成方法が提供される。
【0009】
本発明の第2態様によると、表面に絶縁膜を有する基板と、前記基板の絶縁膜上に互いにずらして積層され、表面に電極および電極を除く表面領域に保護膜がそれぞれ形成された複数の半導体チップと、前記半導体チップ間の段差を含む部分に形成された樹脂、または金属酸化物粒子および結着樹脂を含むスロープと、前記段差で上下に隣接する半導体チップの電極間を前記スロープを横切って相互に接続する金属配線とを備えた電子デバイスであって、前記金属配線の形成は本発明の第1態様に記載の導電性パターンの形成方法によりなすことを特徴とする電子デバイスが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撥液処理を施すことなく、基板表面に細線化した導電性パターンを高い密着性を以って形成する方法を提供することができる。
【0011】
本発明は、互いにずらして積層された半導体チップの電極間を細線化した金属配線で相互に接続され、かつ各半導体チップの保護膜表面と各半導体チップ間の段差に位置するスロープ表面に対して金属配線を良好に密着した信頼性の高い電子デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係るNANDメモリ積層デバイスの製造工程を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係るNANDメモリ積層デバイスの製造工程を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係るNANDメモリ積層デバイスの製造工程を示す図である。
【図4】基板が載置されるステージ温度とインクジェット法によりAgナノ粒子含有インクを基板表面に噴射したときの着弾径の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。
【0014】
まず、基板表面に金属と結合する基を持つ化合物層を形成する。
【0015】
基板は、種々の材料のものを用いることができる。具体的には、シリコン基板、ガラス基板を挙げることができる。基板は、また種々の酸化物膜、樹脂膜(例えばポリイミド膜)のような保護膜が被覆されたものを用いることができる。
【0016】
化合物中の金属と結合する基は、例えばアミノ基、ウレイド基、メルカプト基またはカルボキシル基を挙げることができる。具体的な金属と結合する基を持つ化合物は、例えばアミノ基を有するシランカップリング剤,ウレイド基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤およびカルボキシル基を有するシランカップリング剤を挙げることができる。
【0017】
アミノ基を有するシランカップリング剤の例は、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−[N−アリル−N−(2−アミノエチル)]アミノプロピルトリメトキシシラン、P−[N−(2−アミノエチル)アミノメチル]フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノメチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1−(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサン、3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、8−アミノ−オクチルトリエトキシシラン、6−アミノ−ヘキシルトリエトキシシランを含む。
【0018】
ウレイド基を有するシランカップリング剤の例は、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシランを含む。
【0019】
メルカプト基(SH基)を有するシランカップリング剤の例は、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、α,ω−ビス(メルカプトメチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(メルカプトメチル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(メルカプトメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−メルカプトプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−メルカプトプロピル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−メルカプトメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、3−メルカプトプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランを含む。
【0020】
カルボキシル基を有するシランカップリング剤の例は、7−カルボキシ−ヘプチルトリエトキシシラン、5−カルボキシ−ペンチルトリエトキシシランを含む。
【0021】
これらの金属と結合する基を持つ化合物の中で、メルカプト基(SH基)を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0022】
金属と結合する基を持つ化合物層は、基板に予めUV照射を施した後、金属と結合する基を持つ化合物(例えば前記シランカップリング剤を溶媒に溶解した溶液)で基板を処理することにより形成することが好ましい。このような工程において、基板に例えば樹脂からなる保護膜が被覆されている場合、保護膜にUV照射を施すことにより保護膜表面にC−OH結合が増加し、金属と結合する基を持つ化合物(例えば前記シランカップリング剤を溶媒に溶解した溶液)で処理することによりシランカップリング剤のSi基がOH基(またはO基)を介して保護膜に結合する。このようなシランカップリング剤層は例えば単分子層として保護膜表面に形成される。
【0023】
また、基板に例えば段差を緩和するスロープ(金属酸化物および結着樹脂を含む)が形成されている場合、スロープにUV照射を施すことによりスロープ表面にOH基およびO基が増加し、金属と結合する基を持つ化合物(例えば前記シランカップリング剤を溶媒に溶解した溶液)で処理することによりシランカップリング剤のSi基がOH基およびO基を介してスロープに結合する。このようなシランカップリング剤層は例えば単分子層としてスロープ表面に形成される。
【0024】
なお、樹脂からなる保護膜表面にC−OH結合,スロープ表面にOH基およびO基を形成する手段はUV照射の他に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHと略す)のようなアルカリで処理する方法を採用することができる。
【0025】
次いで、金属と結合する基を持つ化合物層を加熱しながら、前記化合物層表面に金属ナノ粒子分散インクをパターン状に塗布して金属ナノ粒子分散インク層を形成する。
【0026】
金属ナノ粒子分散インクは、例えばAg、Auの金属ナノ粒子(一次粒子径:1〜10nm)、結着樹脂、分散剤および溶剤を含む組成を有する。金属ナノ粒子、結着樹脂および分散剤のような固形分は、溶媒中に10〜70重量%の範囲で分散されていることが好ましい。結着樹脂は、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂が用いられる。分散剤は、例えばアルコール、アルキルアミン等が用いられる。溶剤は使用する金属微粒子の種類によって適宜選択すればよく、例えば次のようなものを用いることができる。すなわち、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノールおよびテルピネオール等のアルコール類;エチレングリコールおよびプロピレングリコール等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトンおよびジエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルおよび酢酸ベンジル等のエステル類;メトキシエタノールおよびエトキシエタノール等のエーテルアルコール類;ジオキサンおよびテトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド類;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンおよびドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサンおよびトリメチルペンタン等の長鎖アルカン;シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタン等の環状アルカンのような常温で液体のものを適宜選択して使用すればよい。
【0027】
金属ナノ粒子分散インクの塗布は、例えばインクジェット法、エアロゾル塗布法により行うことができる。
【0028】
金属ナノ粒子分散インクの塗布時おいて、金属と結合する基を持つ化合物層を加熱することにより、化合物層上に前記インクを塗布した直後にインクの溶媒を揮発させてインクの粘度を高くできる。その結果、着弾するインクの広がり、つまりインクの着弾径の広がり、を抑制できるため、従来のような撥液処理を施すことなく、パターン状に形成された金属ナノ粒子分散インク層を細線化することが可能になる。例えば金属ナノ粒子分散インクの塗布時に基板をステージに載置、固定する場合、ステージを加熱することにより金属と結合する基を持つ化合物層を加熱することができる。図4にステージを加熱しつつ金属ナノ粒子分散インク(例えばAgナノ粒子含有インク)を塗布したときの、温度とインクの着弾径の関係を示す。Agナノ粒子含有インクの着弾径は、ステージ温度の上昇とともに小さくなる。このため、金属と結合する基を持つ化合物層の加熱温度は基板温度の測定で60℃以上にすることが好ましい。加熱温度の上限は、保護膜の耐熱温度、基板に実装される半導体チップへの熱的な悪影響を考慮して200℃、より好ましくは90℃にすることが望ましい。
【0029】
金属と結合する基を持つ化合物層表面に金属ナノ粒子分散インクをパターン状に塗布することにより、化合物層の基に金属ナノ粒子が結合する。すなわち、基板(例えば保護膜)に結合(密着)した化合物層の基に金属ナノ粒子を結合できるため、結果として金属ナノ粒子を含むインク層が基板の保護膜に良好に密着する。金属と結合する基を持つ化合物が例えばメルカプト基(SH基)を有するシランカップリング剤である場合、このシランカップリング剤層(単分子層)に金属ナノ粒子分散インクをパターン状に塗布すると、金属ナノ粒子はシランカップリング剤層のSH基に配位結合するため、金属ナノ粒子分散インク層が下地である保護膜に強固に結合する。
【0030】
次いで、前記金属ナノ粒子分散インク層を焼結する。
【0031】
焼結において、金属ナノ粒子分散インク層の結着樹脂、分散剤および溶媒が焼失、揮散し、残留した金属ナノ粒子が融着して導電性パターンが形成される。
【0032】
また、化合物層下に金属層(例えば配線、電極)が部分的に形成されている場合、前記焼結により金属層と金属ナノ粒子が相互拡散して互いに強固に結合する。
【0033】
このような焼結は、例えば大気雰囲気下で150〜250℃、より好ましくは190〜210℃の温度で行うことが好ましい。
【0034】
以上説明した第1実施形態によれば、基板表面に金属と結合する基を持つ化合物層を形成し、この化合物層を加熱しながら、前記化合物層表面に金属ナノ粒子分散インクをパターン状に塗布して金属ナノ粒子分散インク層を形成し、焼結することにより、撥液処理を施すことなく、基板表面に細線化した導電性パターンを高い密着性を以って形成することができる。
【0035】
次に、第2実施形態に係る電子デバイスについて説明する。
【0036】
第2実施形態に係る電子デバイスは、表面に絶縁膜を有する基板を備える。複数の半導体チップは、基板の絶縁膜上に互いに階段状にずらして積層されている。各々の半導体チップは、表面に電極が形成され、かつ電極を除く表面領域に保護膜が形成されている。スロープは、半導体チップ間の段差を含む部分に形成されている。スロープは、樹脂、または金属酸化物粒子および結着樹脂を含む。
【0037】
金属配線は、段差で上下に隣接する半導体チップの電極間をスロープを横切って相互に接続している。具体的には、金属配線は一端が上部側の半導体チップの電極に接続され、他端が下部側の半導体チップの電極に接続される。前記各電極間の金属配線部分は、上部側の半導体チップの保護膜表面、スロープ表面および下部側の半導体チップの保護膜表面に密着している。
【0038】
このような金属配線は、前述した第1実施形態で説明した導電性パターンの形成方法に基づいて形成される。
【0039】
すなわち、基板の絶縁膜上に積層された複数の半導体チップ表面および半導体チップ間の段差を含む部分に形成されたスロープ表面に金属と結合する基を持つ化合物層を形成する。金属と結合する基を持つ化合物は、第1実施形態で説明した例えばアミノ基を有するシランカップリング剤,ウレイド基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤およびカルボキシル基を有するシランカップリング剤を挙げることができる。金属と結合する基を持つ化合物層は、基板の絶縁膜上に積層された複数の半導体チップ表面および半導体チップ間の段差を含む部分に形成されたスロープ表面に予めUV照射を施した後、金属と結合する基を持つ化合物(例えば前記シランカップリング剤を溶媒に溶解した溶液)で処理することにより形成することが好ましい。このような工程において、半導体チップ表面の樹脂からなる保護膜にUV照射を施すことにより保護膜表面にC−OH結合が増加し、金属と結合する基を持つ化合物(例えば前記シランカップリング剤を溶媒に溶解した溶液)で処理することによりシランカップリング剤のSi基がOH基(またはO基)を介して保護膜に結合する。また、半導体チップ間の段差に形成された前記スロープにUV照射を施すことによりスロープ表面にC−OH結合、−O結合が増加し、金属と結合する基を持つ化合物(例えば前記シランカップリング剤を溶媒に溶解した溶液)で処理することによりシランカップリング剤のSi基がOH基およびO基を介してスロープに結合する。このようなシランカップリング剤層は例えば単分子層として保護膜表面に形成される。
【0040】
次いで、化合物層を加熱しながら、上部側の半導体チップの電極表面、上部側の半導体チップの保護膜表面、スロープ表面、下部側の半導体チップの保護膜表面および下部側の半導体チップの電極表面に第1実施形態で説明した例えばAg、Auの金属ナノ粒子(一次粒子径:1〜10nm)、結着樹脂、分散剤および溶剤を含む組成を有する金属ナノ粒子分散インクを例えばインクジェット法、エアロゾル塗布法により選択的に塗布して金属ナノ粒子分散インク層を形成する。このとき、半導体チップの保護膜およびスロープに結合(密着)した化合物層の基に金属ナノ粒子を結合され、結果として金属ナノ粒子を含むインク層が半導体チップの保護膜およびスロープに良好に密着する。金属と結合する基を持つ化合物が例えばメルカプト基(SH基)を有するシランカップリング剤である場合、このシランカップリング剤層(単分子層)に金属ナノ粒子分散インクを選択的に塗布すると、金属ナノ粒子はシランカップリング剤層のSH基に配位結合するため、金属ナノ粒子分散インク層が下地である半導体チップの保護膜およびスロープに強固に結合する。
【0041】
その後、金属ナノ粒子分散インク層を焼結して段差で上下に隣接する半導体チップの電極間を接続する金属配線を形成する。この工程において、半導体チップの電極に位置する金属ナノ粒子分散インク層中の金属ナノ粒子は電極材料(例えばAu,Al)と相互拡散して互いに強固に結合する。
【0042】
表面に絶縁膜を有する基板は、例えばインターポーザを使用できる。
【0043】
半導体チップは、例えばNANDメモリチップ、DRAMチップ、NORチップ、SRAMチップ、ロジックチップを用いることができる。
【0044】
基板と半導体チップの間の接着、および半導体チップ間の接着は、例えばエポキシ樹脂系接着剤で用いて行うことができる。
【0045】
各半導体チップ表面の電極は、例えばAu(具体的にはAu/Pd/Ni),Alにより形成される。
【0046】
各半導体チップ表面の保護膜は、例えばポリイミド樹脂により形成される。
【0047】
スロープの成分である樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。
【0048】
スロープの成分である金属酸化物は、例えばシリカ、アルミナ等を用いることができる。金属酸化物粒子は、例えば0.01〜1μmの平均粒径を有することが好ましい。スロープの他の成分である結着樹脂は、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。スロープは、半導体チップの段差付近に塗布し、加熱乾燥することにより形成できる。
【0049】
金属と結合する基を持つ化合物層の加熱温度は、半導体チップ表面の測定で80℃以上にすることが好ましい。半導体チップ表面温度は、例えば放射温度計で測定できる。加熱温度の上限は、保護膜の耐熱温度、半導体チップへの熱的な悪影響を考慮して200℃、より好ましくは100℃にすることが望ましい。
【0050】
以上説明した第2実施形態によれば、金属配線の形成を前述した第1実施形態の導電性パターンの形成方法に基づいて行うことによって、撥液処理を施すことなく、互いにずらして積層された半導体チップの電極間を細線化した金属配線で相互に接続でき、かつ各半導体チップの保護膜、および各半導体チップ間の段差を含む部分に位置するスロープに対して金属配線を良好に密着できる。その結果、半導体チップの電極間をワイヤボンディングで接続する従来技術のような半導体チップの割れ、ボンディングワイヤのネックの高さに起因する薄型化の制限を解消した信頼性の高い電子デバイスを得ることができる。
【0051】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0052】
(実施例1)
実施例1では、NANDメモリ積層デバイスを例にして説明する。製造工程を示す図1〜図3において、(a)は平面図、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図である。
【0053】
まず、表面に絶縁膜(図示せず)を有するインターポーザ1に例えば2つのNANDメモリチップ21、22を互いに階段状にずらして積層した。インターポーザ1と第1NANDメモリチップ21とはエポキシ樹脂接着剤層(図示せず)で接着し、第1、第2のNANDメモリチップ21、22間はエポキシ樹脂接着剤層3により接着した。第1、第2のNANDメモリチップ21、22はそれぞれ階段状にずらした左端付近の表面にAu/Pd/Niの3層構造を持つ複数の電極4がその左端に沿って形成され、各電極4を除く表面領域に例えばポリイミド樹脂からなる保護膜5が各電極4と面一になるように形成されている(図1図示)。
【0054】
次いで、加熱機構を有するステージ(図示せず)にインターポーザ1を載置し、インターポーザ1を80℃に加熱した後、第1、第2のNANDメモリチップ21、22の段差を含む部分に平均粒径0.05μmのシリカ粒子10重量%、ポリビニルアルコール0.1重量%を含む水溶性分散スラリーをインクジェットでスロープ状に塗布した。その後、インターポーザ1をステージからホットプレートに移し、200℃、10分間加熱することにより第1,第2のNANDメモリチップ21,22の間の段差を含む保護膜5にスロープ6を形成した(図2図示)。
【0055】
次いで、インターポーザ1上の第1、第2のNANDメモリチップ21、22表面およびスロープ6表面に照射強度10mJ/cm2のエキシマUVを1分間曝した。このとき、第1、第2のNANDメモリチップ21、22表面にOH基およびスロープ6表面にOH基とO基が形成された。つづいて、第1、第2のNANDメモリチップ21、22が積層されたインターポーザ1を2重量%濃度のメルカプトシランカップリング剤のエタノール溶液に浸漬し、引き上げた後にエアブローにより余分な溶液を吹き飛ばした。その後、インターポーザ1をステージからホットプレート上に移し、100℃で10分間加熱を施すことによりメルカプトシランカップリング剤の単分子層を形成した。再び、インターポーザ1をホットプレートからステージ上に移し、ステージをXY方向に移動させながら、チップ21の電極4表面からスロープ6を横切ってチップ22の電極4表面にAgナノ粒子分散インク(ハリマ化成社製:NPJ−S)をインクジェット塗布してAgナノ粒子分散インク層を形成した。メモリチップ21、22の残りの電極4間についても同様な操作を行ってAgナノ粒子分散インク層を形成した。このとき、ステージに付設した加熱機構により各チップ21、22の表面温度を85℃に加熱することによりAgナノ粒子分散インクの着弾径が最終のAg配線幅が70μmになるように制御された。これは、各メモリチップ21、22の表面温度、つまりメルカプトシランカップリング剤の単分子層の温度を85℃に加熱することによって、Agナノ粒子分散インク溶媒分がインクの着弾後に速やかに揮発し、インクの粘度が上昇して濡れ広がらないためである。なお、各メモリチップ21、22の表面温度は放射温度計で測定した。塗布後、インターポーザ1をステージからホットプレート上に移し、200℃で60分間加熱を施すことにより一端が第2のNANDメモリチップ22の電極4に接続され、他端が第1NANDメモリチップ21の電極4に接続され、さらに各電極4間の第2のNANDメモリチップ22の保護膜5表面、スロープ6表面および第1のNANDメモリチップ21の保護膜5表面に密着したAg配線7を形成し、NANDメモリ積層デバイスを得た(図3図示)。
【0056】
(比較例1)
実施例1と同様な方法によりインターポーザ上に積層した第1,第2のNANDメモリチップの間の段差を含む保護膜にスロープを形成した。つづいて、インターポーザ上の第1、第2のNANDメモリチップ表面およびスロープ表面に照射強度10mJ/cm2のエキシマUVを1分間曝した後、フッ素系シランカップリング剤(信越化学工業社製:KP−801M)に浸漬し、引き上げた後に10分間の自然乾燥を行った。ひきつづき、メモリチップが積層されたインターポーザをKP−801Mシンナーに浸漬して不要な残渣を除去した。エアブローで余分なシンナーを吹き飛ばした後、インターポーザをホットプレート上に移し、100℃で10分間加熱することによりで撥液層を形成した。インターポーザをホットプレートからステージ上に移し、ステージをXY方向に移動させながら、第2のNANDメモリチップの電極表面からスロープを横切って第1のNANDメモリチップの電極表面にAgナノ粒子分散インク(ハリマ化成社製:NPJ−S)をインクジェット塗布してAgナノ粒子分散インクを形成した。塗布後、インターポーザをステージからホットプレート上に移し、200℃で60分間加熱を施すことにより幅60μmのAg配線を形成し、NANDメモリ積層デバイスを得た。
【0057】
得られた実施例1のNANDメモリ積層デバイスに形成されたAg配線に対してピーリングテストを実施した。その結果、Ag配線の剥離は全く認められなかった。これは、NANDメモリ積層デバイス表面がメルカプトシランカップリング剤で修飾されたため、Agとメルカプト基とが配位結合して高い密着性が発現されたためである。
【0058】
これに対し、得られた比較例1のNANDメモリ積層デバイスに形成されたAg配線に対してピーリングテストを実施した。その結果、Ag配線が全て剥離した。これは、NANDメモリ積層デバイス表面が撥液性を示すフルオロシランカップリング剤で修飾されているため、Ag配線がNANDメモリ積層デバイス表面と十分に密着できず、剥離したものと考えられる。
【符号の説明】
【0059】
1…インターポーザ、21、22…NANDメモリチップ、4…電極、5…保護膜、6…スロープ、7…Ag配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に金属と結合する基を持つ化合物層を形成する工程と、
前記化合物層を加熱しながら、前記化合物層表面に金属ナノ粒子分散インクをパターン状に塗布して金属ナノ粒子分散インク層を形成する工程と
前記金属ナノ粒子分散インク層を焼結する工程と
を含むことを特徴とする導電性パターンの形成方法。
【請求項2】
前記化合物が金属と結合する基としてチオール基、アミノ基、カルボキシル基またはウレイド基を持つシランカップリング剤であり、かつ前記化合物層が単分子層であることを特徴とする請求項1記載の導電性パターンの形成方法。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子分散インクの塗布はインクジェット法によりなされることを特徴とする請求項1または2記載の導電性パターンの形成方法。
【請求項4】
表面に絶縁膜を有する基板と、前記基板の絶縁膜上に互いにずらして積層され、表面に電極および電極を除く表面領域に保護膜がそれぞれ形成された複数の半導体チップと、前記半導体チップ間の段差を含む部分に形成された樹脂、または金属酸化物粒子および結着樹脂を含むスロープと、前記段差で上下に隣接する半導体チップの電極間を前記スロープを横切って相互に接続する金属配線とを備えた電子デバイスであって、
前記金属配線の形成は、請求項1〜3いずれか記載の導電性パターンの形成方法によりなされることを特徴とする電子デバイス。
【請求項5】
前記半導体チップがNANDメモリチップであることを特徴とする請求項4記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−54214(P2012−54214A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198057(P2010−198057)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】