説明

導電性ペーストおよび積層セラミック電子部品

【目的】焼成工程においてデラミネーションが発生せず、耐熱衝撃性と耐湿負荷特性とに優れる、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品を実現しようとすることで、より特定的には、このような積層セラミック電子部品における内部電極を形成するために有利に用いることができる導電性ペースト、および積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の導電性ペーストは、Niを主成分とする導電粉末と、有機ビヒクルと、Mg,CaおよびBaから選ばれる少なくとも1種を含み且つ有機酸金属塩,金属有機錯塩およびアルコキシドから選ばれる少なくとも1種からなる化合物Aと、を含有し、導電粉末の表面に、Alまたは/およびSiを含む加水分解性の反応基を有する化合物Bが、付着していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性ペーストおよび積層セラミック電子部品に関するもので、特に、積層セラミック電子部品の内部電極として有利に用いられる導電性ペーストおよび積層セラミックコンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品は、複数の積層されたセラミック層と、これらセラミック層間の特定の界面に沿って形成された少なくとも1つの内部電極と、を含む積層体を備えている。
【0003】このような積層セラミック電子部品において、一般に内部電極は、導電粉末ならびに有機ビヒクルを溶剤中に分散させた導電性ペーストを印刷し焼成することによって形成される。より詳細には、積層セラミック電子部品を製造するにあたり、焼成によりセラミック層となるセラミックグリーンシートの特定のものの上に、内部電極となるべき導電性ペーストを印刷して電極塗膜を形成した後、これら複数のセラミックグリーンシートを積層し、プレスで圧着した後に焼成することで、セラミック層の焼結と同時に内部電極の焼結が達成され、内部電極を備えるセラミック積層体が形成される。このとき、内部電極を構成する導電粉末の融点はセラミックの焼成温度より高いことを要する。導電粉末の融点がセラミックの焼成温度よりも低い場合、導電粉末は焼成途中で溶融して焼成後の内部電極に切れが生じ、カバレッジ低下の原因となる。したがって、内部電極を構成する導電粉末としては、Pt,Pd,W,Nb,Ni等が選択でき、加えて低コスト化を実現する場合、導電粉末としては卑金属であるNiが使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Niのような卑金属を内部電極として用いる積層セラミック電子部品において、セラミック層の薄層化および多層化が進むと、印刷形成された電極塗膜と生のセラミック層の焼成時における収縮の差や熱膨張率の差によって、内部電極とセラミック層との界面に残留応力が大きく生じ、この影響により積層セラミック電子部品の耐熱衝撃性が悪くなるという問題がある。また、高温・高湿下における信頼性、いわゆる耐湿負荷特性についても、セラミック層の薄膜化および多層化が進むと同様に悪くなるという問題が生じる。
【0005】また、セラミック層1層の厚みを薄くするのに伴い、内部電極の薄層化を図る必要があるが、そのためには内部電極を形成するための導電性ペースト中の導電粉末の粒径をより微細にする必要がある。しかしながら、導電粉末の粒径をより微細にすると、焼成時に導電粉末の焼結による内部電極の収縮がより低温で起きるため、デラミネーションを引き起こしやすいという問題が生じる。
【0006】後者の問題を解決するために、例えば、特公平7−56850号公報において、アルミノシリケート層によってNi内部電極とセラミック層とを接合した積層セラミックコンデンサが開示されている。しかし、この積層セラミックコンデンサは、前者の問題の改善、すなわち耐熱衝撃性の改善を考慮したものではない。
【0007】また、特開平8−259847号公報において、有機ケイ素化合物と水との反応生成物で被覆した金属粉を用いた導電性ペーストが開示されている。しかし、この導電性ペーストを積層セラミックコンデンサの内部電極用として用いると、ペースト中のケイ素とセラミックとが反応してセラミックの異常粒成長が起こり、前者の問題の改善、耐熱衝撃性の改善には効果がない。
【0008】本発明の目的は、焼成工程においてデラミネーションが発生せず、耐熱衝撃性と耐湿負荷特性に優れる導電性ペースト、ならびにこれを用いて内部電極が形成された積層セラミック電子部品を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の導電性ペーストは、Niを主成分とする導電粉末と、有機ビヒクルと、Mg,CaおよびBaから選ばれる少なくとも1種を含み且つ有機酸金属塩,酸化物粉末,金属有機錯塩およびアルコキシドから選ばれる少なくとも1種からなる化合物Aと、を含有し、導電粉末の表面に、Alまたは/およびSiを含む加水分解性の反応基を有する化合物Bが、付着していることを特徴とする。
【0010】また、本発明の導電性ペーストは、Niを主成分とする導電粉末と、有機ビヒクルと、を含有し、導電粉末の表面に、Mg,CaおよびBaから選ばれる少なくとも1種を含有して、かつ有機酸金属塩,金属有機錯塩およびアルコキシドから選ばれる少なくとも1種からなる化合物Aと、Alまたは/およびSiを含む加水分解性の反応基を有する化合物Bと、が付着していることを特徴とする。
【0011】また、上述の化合物Bの反応基は、アルコキシル基であることが好ましい。
【0012】また、上述の化合物Bは、アルコキシドであることが好ましい。
【0013】また、上述の化合物Bは、アルミニウムキレート化合物,アルミニウムアルコキシド,シランモノマー,シリコンアルコキシドから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0014】また、上述の化合物Bの付着量は、導電粉末100重量%に対してSiO2およびAl23換算で0.1〜5.0重量%であることが好ましい。
【0015】また、上述の化合物Aに含有するMg,CaおよびBaのMgO,CaOおよびBaO換算合計量に対する、上述の化合物Bに含有するSiのSiO2換算合計量のモル比は、0.5〜10.0であることが好ましい。また、上述の化合物Aに含有するMg,CaおよびBaのMgO,CaOおよびBaO換算合計量に対する、上述の化合物Bに含有するAlのAl23換算合計量のモル比は、0.5〜4.0であることが好ましい。
【0016】本発明の積層セラミック電子部品は、複数の積層されたセラミック層と、セラミック層間の特定の界面に沿って形成された内部電極とを含む、セラミック積層体とを備える、積層セラミック電子部品であって、内部電極は、本発明の導電性ペーストを焼成して形成されたものであることを特徴とする。
【0017】また、本発明の積層セラミック電子部品は、上述の積層体の端面上の互いに異なる位置に設けられる複数の端子電極をさらに備え、複数の内部電極は、何れかの端子電極に電気的に接続されているように形成されていることを特徴とする。
【0018】また、本発明の積層セラミック電子部品におけるセラミック層は、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体セラミックからなることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の導電性ペーストは、化合物Aと化合物Bを含み、少なくとも化合物Bは導電粉末の表面に加水分解により付着されていることを要する。そこで、導電粉末の表面に対して化合物Bを付着させる処理方法の一つの実施形態について、以下に説明する。なお、本発明の導電性ペーストおよび積層セラミック電子部品は、以下の一つの実施形態によって得られることに限定されない。
【0020】まず、導電粉末として、例えばNi粉末を準備する。なお、導電粉末としては、Niを主成分とするもの、例えばNiの他、Cu,Ag,Au,Pt,Pdおよびそれらの合金等を含有するものを適宜選択して用いることができる。なお、導電粉末の平均粒径については、特に限定はしないが、一般に導電粉末が微粒であると、導電粉末の焼結による内部電極の収縮がより低温で起こるため、デラミネーションを引き起こしやすいが、本発明によればこれを抑制することができることに鑑みて、導電粉末の平均粒径が10〜200nmであるとき、本発明の効果は顕著となる。
【0021】次いで、導電粉末をアルコール等の有機溶媒中へ分散させて、懸濁液を作製する。平均粒径が1μm未満の導電粉末を用いる場合には、分散を促進するために攪拌するのは有効であり、必要に応じて超音波式のホモジナイザー等の分散機を利用してもよい。
【0022】次いで、化合物Bを上述の懸濁液中に添加して分散させる。化合物Bは、Alまたは/およびSiを含む加水分解性の反応基を有することを要する。化合物Bは、具体的には、アルミニウムキレート化合物,アルミニウムアルコキシド,シランモノマー,シリコンアルコキシドから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、さらに具体的には、例えば、トリ−i−プロポキシアルミニウム,トリ−n−ブトキシアルミニウム,ジ−i−プロポキシアセトアルコキシアルミニウム,ジ−i−プロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム等のアルミニウムアルコキシド、ならびにテトラエトキシシラン,テトラメトキシシラン,メチルトリエトキシシラン,ジメチルエトキシシラン等のシリコンアルコキシド等が挙げられる。
【0023】次いで、懸濁液中に水を滴下し、化合物Bの加水分解を行う。加水分解反応の速い化合物Bを用いた場合は、滴下に際して必要に応じて水を有機溶媒で希釈した混合液、あるいはアミン類やカルボン酸類等のキレート剤を適量添加した混合液を用いることが好ましい。また、加水分解反応の遅い化合物Bを用いた場合には、水とともに鉱酸類あるいはアンモニア水等の加水分解触媒を適量添加した混合液を用いることが好ましい。
【0024】なお、化合物Bに加えて、化合物Aをも導電粉末に付着させる場合には、上述の化合物Bを懸濁液中に添加して分散させる際に、同じく化合物Aをも懸濁液中に添加して分散させる。化合物Aは、Mg,CaおよびBaから選ばれる少なくとも1種を含み且つ有機酸金属塩,金属有機錯塩およびアルコキシドから選ばれる少なくとも1種からなることを要する。
【0025】化合物Aは、具体的には、例えば、ギ酸マグネシウム,酢酸マグネシウム,乳酸マグネシウム,ステアリン酸マグネシウム,オクチル酸マグネシウム,ギ酸カルシウム,酢酸カルシウム,乳酸カルシウム,ステアリン酸カルシウム,オクチル酸カルシウム,ギ酸バリウム,酢酸バリウム,乳酸バリウム,ステアリン酸バリウム,オクチル酸バリウム等の有機酸金属塩、マグネシウムアセチルアセトネート,カルシウムアセチルアセトネート,バリウムアセチルアセトネート等の金属有機錯塩およびジ−n−ブトキシマグネシウム,ジエトキシマグネシウム,ジエトキシバリウム,ジトリプロポキシバリウム等のアルコキシド等が挙げられる。
【0026】なお、化合物Aをも導電粉末に付着させる場合の、付着形態は特に限定はしないが、例えば化合物Aがアルコキシド等の加水分解性の反応基を備える場合、化合物Aが加水分解して導電粉末に付着する。
【0027】次いで、ろ過,デカンテーション等によって溶媒と水の除去を行い、さらに乾燥させて、化合物Bの加水分解生成物、あるいはさらに化合物Aが付着した導電粉末が得られる。
【0028】なお、本発明の化合物Bの付着量は、導電粉末100重量%に対してSiO2およびAl23換算で0.1〜5.0重量%であることが好ましい。上述の付着量が0.1重量%以上であれば、内部電極とセラミック層との界面に生じる残留応力を低減させる効果が得られ易くなり、デラミネーションの発生をより確実に抑制し得る。他方、上述の付着量が5.0重量%以下であれば、このような導電性ペーストを印刷し焼成して得られる電極の耐熱衝撃性を改善させる効果が得られ易くなる。
【0029】また、本発明の化合物Aに含有するMg,CaおよびBaのMgO,CaOおよびBaO換算合計量に対する、本発明の化合物Bに含有するSiのSiO2換算合計量のモル比は、0.5〜10.0であることが好ましい。上述のモル比が0.5以上であれば、内部電極とセラミック層との界面に生じる残留応力を低減させる効果が得られ易くなり、デラミネーションの発生をより確実に抑制し得る。他方、上述のモル比が10以下であれば、このような導電性ペーストを印刷し焼成して得られる電極の耐熱衝撃性を改善させる効果が得られ易くなる。
【0030】また、本発明の化合物Aに含有するMg,CaおよびBaのMgO,CaOおよびBaO換算合計量に対する、本発明の化合物Bに含有するAlのAl23換算合計量のモル比は、0.5〜4.0であることが好ましい。上述のモル比が0.5以上であれば、内部電極とセラミック層との界面に生じる残留応力を低減させる効果が得られ易くなり、デラミネーションの発生をより確実に抑制し得る。他方、上述のモル比が4.0以下であれば、このような導電性ペーストを印刷し焼成して得られる電極の耐熱衝撃性を改善させる効果が得られ易くなる。
【0031】本発明の導電性ペーストの一つの形態としては、例えば上述した方法により表面に化合物Bが付着した導電粉末と、有機ビヒクルと、化合物Aと、を含有してなる。また、本発明の導電性ペーストの他の形態としては、例えば上述した方法により表面に化合物Aおよび化合物Bが付着した導電粉末と、有機ビヒクルと、を含有してなる。
【0032】なお、本発明の導電性ペーストの製造方法については、特に限定はしないが、従来より一般的な導電性ペーストの作製方法と同様に、例えば、導電粉末を有機ビヒクル中に分散させ混練して作製することができる。
【0033】また、本発明の導電性ペーストを作製するにあたり、化合物Aならびに化合物Bの付着処理を行った導電粉末をそのまま用いても良いが、必要に応じて、空気中あるいは窒素中において、さらに200〜800℃において熱処理を行ったものを用いても良い。
【0034】本発明の積層セラミック電子部品の一つの実施形態について、図1に基づいて詳細に説明する。すなわち、積層セラミック電子部品1は、セラミック積層体2と、内部電極3,3と、端子電極4,4と、めっき膜5,5とを備える。
【0035】セラミック積層体2は、例えば、BaTiO3を主成分とする誘電体材料からなるセラミック層2aが複数積層された生のセラミック積層体が焼成されてなる。
【0036】内部電極3,3は、セラミック積層体2内のセラミック層2a間にあって、複数の生のセラミック層2a上に本発明の導電性ペーストが印刷され、生のセラミック層と同時焼成されてなり、内部電極3,3のそれぞれの端縁は、例えば、セラミック積層体2の何れかの端面に露出するように形成されている。
【0037】端子電極4,4は、例えば、セラミック積層体2の端面に内部電極3,3の一端が露出している場合、これと電気的かつ機械的に接合されるように、端子電極形成用の導電性ペーストがセラミック積層体2の端面に塗布され焼付けられてなる。
【0038】めっき膜5,5は、例えば、SnやNi等の無電解めっきや、はんだめっき等からなり、端子電極上4,4上に少なくとも1層形成されてなる。
【0039】なお、セラミック積層体2の材料は、上述の実施形態に限定されることなく、例えばPbZrO3等その他の誘電体材料や、絶縁体、磁性体、半導体材料からなっても構わない。
【0040】また、本発明の積層セラミック電子部品の内部電極3の枚数は、上述の実施形態に限定されることなく、何層形成されていても構わない。
【0041】また、端子電極4,4は、通常、その材料となる導電粉末を含む導電性ペーストを焼成後のセラミック積層体2上に塗布して焼き付けることによって形成されるが、焼成前の生のセラミック積層体上に塗布して、セラミック積層体の焼成と同時に焼き付けることによって形成されるようにしても構わない。また、端子電極の形成一ならびに個数は、上述の実施形態に限定されない。
【0042】また、めっき膜5,5は、上述の実施形態に限定されることなく、必ずしも備えている必要はなく、また何層形成されていても構わない。
【0043】
【実施例】(実施例1)本実施例において、積層セラミック電子部品として、上述の図1に示すような構造の積層セラミックコンデンサを作製する。
【0044】まず、セラミック層を構成する非還元性誘電体セラミックとして、組成式{(Ba1-xCax)O}m(Ti1-yZry)O2で表され、m、xおよびyが、それぞれ、1.005≦m≦1.03、0.02≦x≦0.22、0<y≦1.20となるセラミックが得られるように、平均粒径0.3μmのセラミックの原料粉末を、秤量、混合および仮焼したものを用意し、これにポリビニルブチラール系バインダおよびエタノールなどの有機溶剤を加えて、ボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを調製した。しかる後、セラミックスラリーをドクターブレード方によりシート成形し、厚み5μmの矩形のセラミックグリーンシートを得た。
【0045】次いで、化学気相法によって作製したNi粉末100gを0.2リットルのエタノール中に分散させた懸濁液を、超音波式ホモジナイザーで分散処理した後、化合物Aである酢酸マグネシウムと、化合物Bであるテトラエトキシシランとを所定量準備し、これらを懸濁液へ溶解させ攪拌し、試料1〜15の混合懸濁液を得た。
【0046】次いで、ローラーポンプを用いて、試料1〜15の混合懸濁液に、純水10gとアンモニア水10gからなる混合液を滴下した後に12時間攪拌して、化合物Aである酢酸マグネシウムをNi粉末の表面に付着させ、加えて化合物Bであるテトラエトキシシランを加水分解させてNi粉末の表面に付着させ、これをデカンテーションによって固液分離し、沈殿物を120℃で12時間乾燥させて、表1に示したSiO2換算含有量,MgO換算含有量となるテトラエトキシシランの加水分解生成物ならびに酢酸マグネシウムが付着した試料1〜15の導電粉末を得た。
【0047】また、化合物Bであるテトラエトキシシランを懸濁液中に添加しないことを除いて、上述の試料1〜15と同様にして、化合物Aである酢酸マグネシウムのみをNi粉末の表面に付着させて、試料16〜18の導電粉末を得た。
【0048】次いで、試料1〜18の導電粉末42重量%と、エチルセルロース系有機バインダー6重部をテルピネオール94重量部に溶解して作製した有機ビヒクル44重量%と、テルピネオール14重量%とを加えて、ボールミル法により分散混合して、試料1〜18の導電性ペーストを得た。
【0049】そこで、各試料の、導電粉末100重量%に対する酸化物モル換算含有重量、SiO2/MgOのモル比について、表1にまとめた。
【0050】次いで、上述のセラミックグリーンシート上に、試料1〜18の導電性ペーストをスクリーン印刷し、内部電極を構成するための導電性ペースト膜を形成した。この時、スクリーンパターンの厚みを変更することによって、電極塗布厚(エックス線式膜厚計によるNi金属換算厚み)を0.5μmに調製した。
【0051】次いで、上述のセラミックグリーンシートを、導電性ペースト膜の引き出されている側が互い違いとなるように複数積層して得られたセラミック積層体を、窒素雰囲気中にて300℃の温度に加熱し、有機バインダーを燃焼させた後、H2−N2−H2Oガスからなる還元性雰囲気中において焼成して、試料1〜18のセラミック積層体を得た。なお、焼成工程にて1200℃で2時間保持し、昇温速度と冷却速度はともに200℃/hrとした。
【0052】次いで、試料1〜18のセラミック積層体の両端面に銀を含む導電性ぺーストを塗布し、N2−Air雰囲気中において800℃の温度で焼付けし、内部電極と電気的に接続された端子電極を形成した。次いで、上述の端子電極上にNiめっき層を形成し、さらに、このNiめっき層上に半田めっき層を形成して、試料1〜18の積層セラミックコンデンサを得た。なお、こうして得られた試料1〜18の積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅が1.6mm、長さが3.2mm、厚さが1.2mmであり、内部電極の厚みは0.7μm、内部電極間に介在する誘電体セラミック層の厚みは3μmで、有効誘電体セラミック層の総数は150個であった。
【0053】そこで、試料1〜18の積層セラミックコンデンサについて、デラミネーション発生率、比誘電率、加速寿命試験による平均故障時間を測定し、さらに評価を付して、これらを表1にまとめた。
【0054】なお、デラミネーション発生率は、各試料を100個ずつ作製し、長さ方向に直行する平面で切断して、樹脂で固めた状態で断面を研磨し、研磨断面を顕微鏡で観察することによって、クラックの有無を検査してこれを計数し、全数100個に対する発生割合を求めた。
【0055】また、加速寿命試験による平均故障時間は、150℃において10V/mmの直流電解を印可しながら、その絶縁抵抗の経時変化を測定し、絶縁抵抗が105Ωを下回った時点を故障とみなし、全数100個の故障に至る平均時間を求めた。
【0056】また、評価は、デラミネーション発生率が0%であり、比誘電率が比較例である試料17,18の積層セラミックコンデンサよりも高く、かつ平均故障時間が比較例である試料17,18の積層セラミックコンデンサよりも長い試料については、本発明の特に好ましい範囲内の試料として◎を付し、比誘電率のみ比較例である試料17,18の積層セラミックコンデンサより低い試料については、本発明の好ましい範囲内の試料として○を付し、比誘電率または平均故障時間が上述の◎○である試料と比較すると低い水準にあるが、比較例である試料17,18の積層セラミックコンデンサと比較して優れた効果を備える試料については、本発明の範囲内の試料として△を付し、比較例の試料については×を付した。
【0057】
【表1】


【0058】表1から明らかであるように、導電粉末100重量%に対して、化合物Bであるテトラエトキシシランを加水分解させてSiO2換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aである酢酸マグネシウムに含有するMgのMgO換算量に対する、化合物Bであるテトラエトキシシランに含有するSiのSiO2換算量のモル比が0.5〜10.0の範囲内である、試料2,3,6,7,10,11の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が何れも0%であり、比誘電率が3030〜3360であり、比較例である試料17の積層セラミックコンデンサの比誘電率2150と比較して十分に高く、かつ加速寿命試験の平均故障時間が73〜90時間であり、比較例である試料18の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して極めて長いことから、本発明の特に好ましい範囲内となった。
【0059】また、導電粉末100重量%に対して、化合物Bであるテトラエトキシシランを加水分解させてSiO2換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aである酢酸マグネシウムに含有するMgのMgO換算量に対する、化合物Bであるテトラエトキシシランに含有するSiのSiO2換算量のモル比が0.5を下回る、試料1,5,9の積層セラミックコンデンサは、比誘電率が1750〜2090であり、比較例である試料17の積層セラミックコンデンサの比誘電率2150と比較して僅かに劣るが、積層セラミックコンデンサの比誘電率としては許容可能な範囲内であり、またデラミネーション発生率は何れも0%であり、かつ加速寿命試験の平均故障時間が72〜76時間であり、比較例である試料18の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して極めて長いことから、本発明の好ましい範囲内となった。
【0060】また、導電粉末100重量%に対して、化合物Bであるテトラエトキシシランを加水分解させてSiO2換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aである酢酸マグネシウムに含有するMgのMgO換算量に対する、化合物Bであるテトラエトキシシランに含有するSiのSiO2換算量のモル比が10.0を上回る、試料4,8,12の積層セラミックコンデンサは、加速寿命試験の平均故障時間が27〜36時間であり、上述した本発明の特に好ましい範囲の試料2,3,6,7,10,11の積層セラミックコンデンサと比較すると短く劣るが、比較例である試料18の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して十分に長く、またデラミネーション発生率は何れも0%であり、かつ比誘電率が2380〜3110であり、比較例である試料17の積層セラミックコンデンサの比誘電率2150と比較して十分に高いことから、本発明の好ましい範囲内となった。
【0061】また、導電粉末100重量%に対して、化合物Bであるテトラエトキシシランを加水分解させてSiO2換算で7.0重量%付着させた試料13〜15の積層セラミックコンデンサは、比誘電率が1480〜1590であり、比較例である試料17の積層セラミックコンデンサの比誘電率2150と比較して劣り、また加速寿命試験の平均故障時間が20〜27時間であり、上述した本発明の特に好ましい範囲の試料2,3,6,7,10,11の積層セラミックコンデンサと比較すると短く劣るが、積層セラミックコンデンサの比誘電率としては許容可能な範囲内であり、また比較例である試料18の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して十分に長く、またデラミネーション発生率は何れも0%であることから、本発明の範囲内となった。
【0062】これに対して、化合物Bを加水分解させてNi粉末に付着させなかった、試料16〜18の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が55〜100%で高く劣り、加速寿命試験の平均故障時間は測定不能〜3時間で極めて低く劣った。なお、試料16の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が100%となったため、比誘電率ならびに平均故障時間を測定することができなかった。
【0063】(実施例2)化合物Aとしてオクチル酸カルシウムを、化合物Bとしてメチルトリエトキシシランを用いたことを除いて、実施例1と実質的に同様の製造方法によって試料19〜36の導電粉末を作製し、試料19〜36の積層セラミックコンデンサを作製した。なお、各試料の、導電粉末100重量%に対する酸化物モル換算含有重量、SiO2/CaOのモル比については、表2に示す通りである。
【0064】そこで、試料19〜36の積層セラミックコンデンサについて、デラミネーション発生率、比誘電率、加速寿命試験による平均故障時間を測定し、さらに評価を付して、これらを表2にまとめた。なお、各測定ならびに評価の方法は、実施例1と同様に行なった。
【0065】
【表2】


【0066】表2から明らかであるように、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるメチルトリエトキシシランをSiO2換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるオクチル酸カルシウムに含有するCaのCaO換算量に対する、化合物Bであるメチルトリエトキシシランに含有するSiのSiO2換算量のモル比が0.5〜10.0の範囲内である、試料20,21,24,25,28,29の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が何れも0%であり、比誘電率が3030〜3360であり、比較例である試料35の積層セラミックコンデンサの比誘電率2050と比較して十分に高く、かつ加速寿命試験の平均故障時間が73〜90時間であり、比較例である試料36の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して極めて長いことから、本発明の特に好ましい範囲内となった。
【0067】また、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるメチルトリエトキシシランをSiO2換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるオクチル酸カルシウムに含有するCaのCaO換算量に対する、化合物Bであるメチルトリエトキシシランに含有するSiのSiO2換算量のモル比が0.5を下回る、試料19,23,27の積層セラミックコンデンサは、比誘電率が1750〜2010であり、比較例である試料35の積層セラミックコンデンサの比誘電率2050と比較して僅かに劣るが、積層セラミックコンデンサの比誘電率としては許容可能な範囲内であり、またデラミネーション発生率は何れも0%であり、かつ加速寿命試験の平均故障時間が72〜76時間であり、比較例である試料18の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して極めて長いことから、本発明の好ましい範囲内となった。
【0068】また、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるメチルトリエトキシシランをSiO2換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるオクチル酸カルシウムに含有するCaのCaO換算量に対する、化合物Bであるメチルトリエトキシシランに含有するSiのSiO2換算量のモル比が10.0を上回る、試料22,26,30の積層セラミックコンデンサは、加速寿命試験の平均故障時間が27〜34時間であり、上述した本発明の特に好ましい範囲の試料20,21,24,25,28,29の積層セラミックコンデンサと比較すると短く劣るが、比較例である試料36の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して十分に長く、またデラミネーション発生率は何れも0%であり、かつ比誘電率が2900〜3380であり、比較例である試料17の積層セラミックコンデンサの比誘電率2050と比較して十分に高いことから、本発明の好ましい範囲内となった。
【0069】また、導電粉末100重量%に対して、化合物Bであるメチルトリエトキシシランを加水分解させてSiO2換算で7.0重量%付着させた試料31〜33の積層セラミックコンデンサは、比誘電率が1480〜1580であり、比較例である試料35の積層セラミックコンデンサの比誘電率2050と比較して劣り、また加速寿命試験の平均故障時間が20〜25時間であり、上述した本発明の特に好ましい範囲の試料20,21,24,25,28,29の積層セラミックコンデンサと比較すると短く劣るが、積層セラミックコンデンサの比誘電率としては許容可能な範囲内であり、また比較例である試料36の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して十分に長く、またデラミネーション発生率は何れも0%であることから、本発明の範囲内となった。
【0070】これに対して、化合物BをNi粉末に付着させなかった、試料34〜36の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が55〜100%で高く劣り、加速寿命試験の平均故障時間は測定不能〜3時間で極めて低く劣った。なお、試料34の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が100%となったため、比誘電率ならびに平均故障時間を測定することができなかった。
【0071】(実施例3)化合物Aとしてアセチルアセトナトバリウムを、化合物Bとしてビニルトリエトキシシランを用いたことを除いて、実施例1と実質的に同様の製造方法によって試料37〜54の導電粉末を作製し、試料37〜54の積層セラミックコンデンサを作製した。なお、各試料の、導電粉末100重量%に対する酸化物モル換算含有重量、SiO2/BaOのモル比については、表2に示す通りである。
【0072】そこで、試料37〜54の積層セラミックコンデンサについて、デラミネーション発生率、比誘電率、加速寿命試験による平均故障時間を測定し、さらに評価を付して、これらを表3にまとめた。なお、各測定ならびに評価の方法は、実施例1と同様に行なった。
【0073】
【表3】


【0074】表3から明らかであるように、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるビニルトリエトキシシランをSiO2換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるアセチルアセトナトバリウムに含有するBaのBaO換算量に対する、化合物Bであるビニルトリエトキシシランに含有するSiのSiO2換算量のモル比が0.5〜4.0の範囲内である、試料38,39,42,43,46,47の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が何れも0%であり、比誘電率が3010〜3360であり、比較例である試料53の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して十分に高く、かつ加速寿命試験の平均故障時間が73〜80時間であり、比較例である試料54の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して極めて長いことから、本発明の特に好ましい範囲内となった。
【0075】また、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるビニルトリエトキシシランをSiO2換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるアセチルアセトナトバリウムに含有するBaのBaO換算量に対する、化合物Bであるビニルトリエトキシシランに含有するSiのSiO2換算量のモル比が0.5を下回る、試料37,41,45の積層セラミックコンデンサは、比誘電率が1750〜2070であり、比較例である試料53の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して僅かに劣るが、積層セラミックコンデンサの比誘電率としては許容可能な範囲内であり、またデラミネーション発生率は何れも0%であり、かつ加速寿命試験の平均故障時間が72〜76時間であり、比較例である試料54の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して極めて長いことから、本発明の好ましい範囲内となった。
【0076】また、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるビニルトリエトキシシランをSiO2換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるアセチルアセトナトバリウムに含有するBaのBaO換算量に対する、化合物Bであるビニルトリエトキシシランに含有するSiのSiO2換算量のモル比が10.0を上回る、試料40,44,48の積層セラミックコンデンサは、加速寿命試験の平均故障時間が24〜36時間であり、上述した本発明の特に好ましい範囲の試料38,39,42,43,46,47の積層セラミックコンデンサと比較すると短く劣るが、比較例である試料54の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して十分に長く、またデラミネーション発生率は何れも0%であり、かつ比誘電率が2380〜2900であり、比較例である試料53の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して十分に高いことから、本発明の好ましい範囲内となった。
【0077】また、導電粉末100重量%に対して、化合物Bであるビニルトリエトキシシランを加水分解させてSiO2換算で7.0重量%付着させた試料49〜51の積層セラミックコンデンサは、比誘電率が1480〜1520であり、比較例である試料53の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して劣り、また加速寿命試験の平均故障時間が20〜25時間であり、上述した本発明の特に好ましい範囲の試料38,39,42,43,46,47の積層セラミックコンデンサと比較すると短く劣るが、積層セラミックコンデンサの比誘電率としては許容可能な範囲内であり、また比較例である試料54の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して十分に長く、またデラミネーション発生率は何れも0%であることから、本発明の範囲内となった。
【0078】これに対して、化合物BをNi粉末に付着させなかった、試料52〜54の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が59〜100%で高く劣り、加速寿命試験の平均故障時間は測定不能〜3時間で極めて低く劣った。なお、試料52の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が100%となったため、比誘電率ならびに平均故障時間を測定することができなかった。
【0079】(実施例4)化合物Aとしてオクチル酸マグネシウムを、化合物Bとしてトリイソプロポキシアルミニウムを用いたことを除いて、実施例1と実質的に同様の製造方法によって試料55〜72の導電粉末を作製し、試料55〜72の積層セラミックコンデンサを作製した。なお、各試料の、導電粉末100重量%に対する酸化物モル換算含有重量、Al23/MgOのモル比については、表2に示す通りである。
【0080】そこで、試料55〜72の積層セラミックコンデンサについて、デラミネーション発生率、比誘電率、加速寿命試験による平均故障時間を測定し、さらに評価を付して、これらを表4にまとめた。なお、各測定ならびに評価の方法は、実施例1と同様に行なった。
【0081】
【表4】


【0082】表4から明らかであるように、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるトリイソプロポキシアルミニウムをAl23換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるオクチル酸マグネシウムに含有するMgのMgO換算量に対する、化合物Bであるトリイソプロポキシアルミニウムに含有するAlのAl23換算量のモル比が0.5〜4.0の範囲内である、試料56,57,60,61,64,65の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が何れも0%であり、比誘電率が3130〜3480であり、比較例である試料71の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して十分に高く、かつ加速寿命試験の平均故障時間が72〜83時間であり、比較例である試料72の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して極めて長いことから、本発明の特に好ましい範囲内となった。
【0083】また、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるトリイソプロポキシアルミニウムをAl23換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるオクチル酸マグネシウムに含有するMgのMgO換算量に対する、化合物Bであるトリイソプロポキシアルミニウムに含有するAlのAl23換算量のモル比が0.5を下回る、試料55,59,63の積層セラミックコンデンサは、比誘電率が2050〜2120であり、比較例である試料71の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して僅かに劣るが、積層セラミックコンデンサの比誘電率としては許容可能な範囲内であり、またデラミネーション発生率は何れも0%であり、かつ加速寿命試験の平均故障時間が79〜81時間であり、比較例である試料72の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して極めて長いことから、本発明の好ましい範囲内となった。
【0084】また、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるトリイソプロポキシアルミニウムをAl23換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるオクチル酸マグネシウムに含有するMgのMgO換算量に対する、化合物Bであるトリイソプロポキシアルミニウムに含有するAlのAl23換算量のモル比が4.0を上回る、試料58,62,66の積層セラミックコンデンサは、加速寿命試験の平均故障時間が32〜41時間であり、上述した本発明の特に好ましい範囲の試料56,57,60,61,64,65の積層セラミックコンデンサと比較すると短く劣るが、比較例である試料72の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して十分に長く、またデラミネーション発生率は何れも0%であり、かつ比誘電率が2600〜3210であり、比較例である試料71の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して十分に高いことから、本発明の好ましい範囲内となった。
【0085】また、導電粉末100重量%に対して、化合物Bであるトリイソプロポキシアルミニウムを加水分解させてAl23換算で7.0重量%付着させた試料67〜69の積層セラミックコンデンサは、比誘電率が1680〜3120であり、比較例である試料71の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して試料69が劣り、また加速寿命試験の平均故障時間が22〜29時間であり、上述した本発明の特に好ましい範囲の試料56,57,60,61,64,65の積層セラミックコンデンサと比較すると短く劣るが、積層セラミックコンデンサの比誘電率としては許容可能な範囲内であり、また比較例である試料72の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して十分に長く、またデラミネーション発生率は何れも0%であることから、本発明の範囲内となった。
【0086】これに対して、化合物BをNi粉末に付着させなかった、試料70〜72の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が52〜100%で高く劣り、加速寿命試験の平均故障時間は測定不能〜3時間で極めて低く劣った。なお、試料70の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が100%となったため、比誘電率ならびに平均故障時間を測定することができなかった。
【0087】(実施例5)化合物Aとしてギ酸カルシウムを、化合物Bとしてジイソプロポキシアセトアルコキシアルミニウムを用いたことを除いて、実施例1と実質的に同様の製造方法によって試料73〜90の導電粉末を作製し、試料73〜90の積層セラミックコンデンサを作製した。なお、各試料の、導電粉末100重量%に対する酸化物モル換算含有重量、Al23/CaOのモル比については、表2に示す通りである。
【0088】そこで、試料73〜90の積層セラミックコンデンサについて、デラミネーション発生率、比誘電率、加速寿命試験による平均故障時間を測定し、さらに評価を付して、これらを表5にまとめた。なお、各測定ならびに評価の方法は、実施例1と同様に行なった。
【0089】
【表5】


【0090】表5から明らかであるように、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるジイソプロポキシアセトアルコキシアルミニウムをAl23換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるギ酸カルシウムに含有するCaのCaO換算量に対する、化合物Bであるジイソプロポキシアセトアルコキシアルミニウムに含有するAlのAl23換算量のモル比が0.5〜4.0の範囲内である、試料74,75,78,79,82,83の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が何れも0%であり、比誘電率が3130〜3280であり、比較例である試料89の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して十分に高く、かつ加速寿命試験の平均故障時間が72〜82時間であり、比較例である試料90の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して極めて長いことから、本発明の特に好ましい範囲内となった。
【0091】また、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるジイソプロポキシアセトアルコキシアルミニウムをAl23換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるギ酸カルシウムに含有するCaのCaO換算量に対する、化合物Bであるジイソプロポキシアセトアルコキシアルミニウムに含有するAlのAl23換算量のモル比が0.5を下回る、試料73,77,81の積層セラミックコンデンサは、比誘電率が2060〜2110であり、比較例である試料89の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して僅かに劣るが、積層セラミックコンデンサの比誘電率としては許容可能な範囲内であり、またデラミネーション発生率は何れも0%であり、かつ加速寿命試験の平均故障時間が何れも79時間であり、比較例である試料90の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して極めて長いことから、本発明の好ましい範囲内となった。
【0092】また、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるジイソプロポキシアセトアルコキシアルミニウムをAl23換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるギ酸カルシウムに含有するCaのCaO換算量に対する、化合物Bであるジイソプロポキシアセトアルコキシアルミニウムに含有するAlのAl23換算量のモル比が4.0を上回る、試料76,80,84の積層セラミックコンデンサは、加速寿命試験の平均故障時間が29〜40時間であり、上述した本発明の特に好ましい範囲の試料74,75,78,79,82,83の積層セラミックコンデンサと比較すると短く劣るが、比較例である試料90の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して十分に長く、またデラミネーション発生率は何れも0%であり、かつ比誘電率が2620〜3200であり、比較例である試料89の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して十分に高いことから、本発明の好ましい範囲内となった。
【0093】また、導電粉末100重量%に対して、化合物Bであるジイソプロポキシアセトアルコキシアルミニウムを加水分解させてAl23換算で7.0重量%付着させた試料85〜87の積層セラミックコンデンサは、比誘電率が1350であり、比較例である試料89の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して試料85が劣り、また加速寿命試験の平均故障時間が20〜28時間であり、上述した本発明の特に好ましい範囲の試料74,75,78,79,82,83の積層セラミックコンデンサと比較すると短く劣るが、積層セラミックコンデンサの比誘電率としては許容可能な範囲内であり、また比較例である試料90の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して十分に長く、またデラミネーション発生率は何れも0%であることから、本発明の範囲内となった。
【0094】これに対して、化合物BをNi粉末に付着させなかった、試料88〜90の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が54〜100%で高く劣り、加速寿命試験の平均故障時間は測定不能〜3時間で極めて低く劣った。なお、試料88の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が100%となったため、比誘電率ならびに平均故障時間を測定することができなかった。
【0095】(実施例6)化合物Aとしてアセチルアセトナトバリウムを、化合物Bとしてトリブトキシアルミニウムを用いたことを除いて、実施例1と実質的に同様の製造方法によって試料91〜108の導電粉末を作製し、試料91〜108の積層セラミックコンデンサを作製した。なお、各試料の、導電粉末100重量%に対する酸化物モル換算含有重量、Al23/BaOのモル比については、表2に示す通りである。
【0096】そこで、試料91〜108の積層セラミックコンデンサについて、デラミネーション発生率、比誘電率、加速寿命試験による平均故障時間を測定し、さらに評価を付して、これらを表6にまとめた。なお、各測定ならびに評価の方法は、実施例1と同様に行なった。
【0097】
【表6】


【0098】表6から明らかであるように、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるトリブトキシアルミニウムをAl23換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるアセチルアセトナトバリウムに含有するBaのBaO換算量に対する、化合物Bであるトリブトキシアルミニウムに含有するAlのAl23換算量のモル比が0.5〜4.0の範囲内である、試料92,93,96,97,100,101の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が何れも0%であり、比誘電率が3080〜3140であり、比較例である試料107の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して十分に高く、かつ加速寿命試験の平均故障時間が70〜83時間であり、比較例である試料108の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して極めて長いことから、本発明の特に好ましい範囲内となった。
【0099】また、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるトリブトキシアルミニウムをAl23換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるアセチルアセトナトバリウムに含有するBaのBaO換算量に対する、化合物Bであるトリブトキシアルミニウムに含有するAlのAl23換算量のモル比が0.5を下回る、試料91,95,99の積層セラミックコンデンサは、比誘電率が1520〜2110であり、比較例である試料107の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して僅かに劣るが、積層セラミックコンデンサの比誘電率としては許容可能な範囲内であり、またデラミネーション発生率は何れも0%であり、かつ加速寿命試験の平均故障時間が77〜85時間であり、比較例である試料108の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して極めて長いことから、本発明の好ましい範囲内となった。
【0100】また、導電粉末100重量%に対して、化合物BであるトリブトキシアルミニウムをAl23換算で0.1〜5.0重量%付着させ、かつ化合物Aであるアセチルアセトナトバリウムに含有するBaのBaO換算量に対する、化合物Bであるトリブトキシアルミニウムに含有するAlのAl23換算量のモル比が4.0を上回る、試料94,98,102の積層セラミックコンデンサは、加速寿命試験の平均故障時間が30〜36時間であり、上述した本発明の特に好ましい範囲の試料92,93,96,97,100,101の積層セラミックコンデンサと比較すると短く劣るが、比較例である試料108の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して十分に長く、またデラミネーション発生率は何れも0%であり、かつ比誘電率が2600〜3130であり、比較例である試料107の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して十分に高いことから、本発明の好ましい範囲内となった。
【0101】また、導電粉末100重量%に対して、化合物Bであるトリブトキシアルミニウムを加水分解させてAl23換算で7.0重量%付着させた試料103〜105の積層セラミックコンデンサは、比誘電率が1480〜3020であり、比較例である試料107の積層セラミックコンデンサの比誘電率2140と比較して試料103,104が劣り、また加速寿命試験の平均故障時間が18〜26時間であり、上述した本発明の特に好ましい範囲の試料92,93,96,97,100,101の積層セラミックコンデンサと比較すると短く劣るが、積層セラミックコンデンサの比誘電率としては許容可能な範囲内であり、また比較例である試料108の積層セラミックコンデンサの平均故障時間3時間と比較して十分に長く、またデラミネーション発生率は何れも0%であることから、本発明の範囲内となった。
【0102】これに対して、化合物BをNi粉末に付着させなかった、試料106〜108の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が59〜100%で高く劣り、加速寿命試験の平均故障時間は測定不能〜3時間で極めて低く劣った。なお、試料106の積層セラミックコンデンサは、デラミネーション発生率が100%となったため、比誘電率ならびに平均故障時間を測定することができなかった。
【0103】
【発明の効果】以上のように、本発明の導電性ペーストによれば、Niを主成分とする導電粉末と、有機ビヒクルと、Mg,CaおよびBaから選ばれる少なくとも1種を含み且つ有機酸金属塩,金属有機錯塩およびアルコキシドから選ばれる少なくとも1種からなる化合物Aと、を含有し、導電粉末の表面に、Alまたは/およびSiを含む加水分解性の反応基を有する化合物Bが、付着していることを特徴とすることで、例えば、積層セラミック電子部品の内部電極を形成するために用いられる場合に、焼成工程においてデラミネーションが発生せず、耐熱衝撃性と耐湿負荷特性に優れる積層セラミック電子部品が得られる効果がある。
【0104】また、同様に本発明の導電性ペーストによれば、Niを主成分とする導電粉末と、有機ビヒクルと、を含有し、導電粉末の表面に、Mg,CaおよびBaから選ばれる少なくとも1種を含有して、かつ有機酸金属塩,金属有機錯塩およびアルコキシドから選ばれる少なくとも1種からなる化合物Aと、Alまたは/およびSiを含む加水分解性の反応基を有する化合物Bと、が付着していることを特徴とすることで、例えば、積層セラミック電子部品の内部電極を形成するために用いられる場合に、焼成工程においてデラミネーションが発生せず、耐熱衝撃性と耐湿負荷特性に優れる積層セラミック電子部品が得られる効果がある。
【0105】また、導電粉末の主成分としてNiを用いることで、積層セラミック電子部品の低コスト化およびセラミック層の薄層化ならびに多層化に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一つの実施の形態の積層セラミックコンデンサを示す断面図である。
【符号の説明】
1 積層セラミック電子部品
2 セラミック積層体
2a セラミック層
3 内部電極
4 端子電極
5 めっき膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】 Niを主成分とする導電粉末と、有機ビヒクルと、Mg,CaおよびBaから選ばれる少なくとも1種を含み且つ有機酸金属塩,金属有機錯塩およびアルコキシドから選ばれる少なくとも1種からなる化合物Aと、を含有し、前記導電粉末の表面に、Alまたは/およびSiを含む加水分解性の反応基を有する化合物Bが、付着していることを特徴とする、導電性ペースト。
【請求項2】 Niを主成分とする導電粉末と、有機ビヒクルと、を含有し、前記導電粉末の表面に、Mg,CaおよびBaから選ばれる少なくとも1種を含有して、かつ有機酸金属塩,酸化物粉末,金属有機錯塩およびアルコキシドから選ばれる少なくとも1種からなる化合物Aと、Alまたは/およびSiを含む加水分解性の反応基を有する化合物Bと、が付着していることを特徴とする、導電性ペースト。
【請求項3】 前記化合物Bの反応基は、アルコキシル基であることを特徴とする、請求項1または2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】 前記化合物Bは、アルコキシドであることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の導電性ペースト。
【請求項5】 前記化合物Bは、アルミニウムキレート化合物,アルミニウムアルコキシド,シランモノマー,シリコンアルコキシドから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の導電性ペースト。
【請求項6】 前記化合物Bの付着量は、前記導電粉末100重量%に対してSiO2およびAl23換算で0.1〜5.0重量%であることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の導電性ペースト。
【請求項7】 前記化合物Aに含有するMg,CaおよびBaのMgO,CaOおよびBaO換算合計量に対する、前記化合物Bに含有するSiのSiO2換算合計量のモル比は、0.5〜10.0であることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の導電性ペースト。
【請求項8】 前記化合物Aに含有するMg,CaおよびBaのMgO,CaOおよびBaO換算合計量に対する、前記化合物Bに含有するAlのAl23換算合計量のモル比は、0.5〜4.0であることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の導電性ペースト。
【請求項9】 複数の積層されたセラミック層と、前記セラミック層間の特定の界面に沿って形成された内部電極とを含む、セラミック積層体とを備える、積層セラミック電子部品であって、前記内部電極は、請求項1〜8の何れかに記載の導電性ペーストを焼成して形成されたものであることを特徴とする、積層セラミック電子部品。
【請求項10】 前記積層体の端面上の互いに異なる位置に設けられる複数の端子電極をさらに備え、複数の前記内部電極は、何れかの前記端子電極に電気的に接続されているように形成されていることを特徴とする、請求項9に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】 前記セラミック層は、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体セラミックからなることを特徴とする、請求項9または10に記載の積層セラミック電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2002−25847(P2002−25847A)
【公開日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−204096(P2000−204096)
【出願日】平成12年7月5日(2000.7.5)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】