説明

導電性ペーストの製造方法および積層セラミック電子部品の製造方法

【課題】分散性の優れた導電性ペーストの製造方法およびこれを用いた積層セラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】導電性金属粉末に有機バインダの一部と有機溶剤の一部とを加えて1次混合物を得る混合工程と、前記1次混合物を高せん断力をかけて固練りする1次分散工程と、その後、有機バインダの残部および有機溶剤の残部を加えて混合分散する2次分散工程と、その後、ロールミルにて分散する3次分散工程と、その後、有機溶剤を加えて粘度を調整する粘度調整工程とを備える導電性ペーストの製造方法であり、分散性の優れた導電性ペーストが得られ、この導電性ペーストを用いて積層セラミック電子部品を製造した場合には、均一で平滑性を有する導電性ペースト膜を形成することができるため、ショート不良の発生が少なく、優れた品質の製品を歩留まり良く製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品に用いられる導電性ペーストの製造方法、およびこれを用いた積層セラミック電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、代表的な積層セラミック電子部品である積層セラミックコンデンサにおいては、その小型化かつ大容量化を目的として、内部導電体層、セラミック誘電体層の薄層化および高積層化が進んでいる。例えば、積層セラミックコンデンサにおいて、そのセラミック誘電体層の厚みは1.0μm程度のものが実用化されようとしている。
【0003】
積層セラミックコンデンサの薄層化および高積層化を図るためには、内部導電体層の薄層化も重要な課題である。内部導電体層の薄層化のためには、内部導電体層となる乾燥後の導電性ペースト膜が平滑であることが必要であり、導電性ペーストに含まれる導電性金属粉末の高分散化が求められている。
【0004】
従来、導電性ペーストの作製において、導電性金属粉末を有機ビヒクルおよび有機溶剤に分散させる方法として、ボールミルや三本ロールを用いた方法が知られている。なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平6−309919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の上記のような、ボールミルや三本ロールを用いて導電性金属粉末を有機ビヒクルおよび有機溶剤に分散させる方法では、導電性金属粉末の凝集が強固である場合は、導電性金属粉末を十分に解砕し、均一に分散させることには限界があるという問題があった。凝集した導電性金属粉末が含まれる分散性の悪い導電性ペーストでは、導電性ペースト膜の表面の平滑性が低下する。すなわち、表面粗さRaが大きくなる。
【0006】
そのため、分散性の悪い導電性ペーストを用いて積層セラミックコンデンサを製造した場合には、導電性ペースト膜の凝集物による凸部がセラミックグリーンシートを貫通してしまい、ショート不良などの電気的な不良が増加し、歩留りを著しく低下させるという問題があり、積層セラミックコンデンサの薄層化および高積層化が困難である課題を有していた。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、積層セラミックコンデンサの薄層化および高積層化に適した分散性の優れた導電性ペーストの製造方法と、これを用いた積層セラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、導電性金属粉末と有機バインダと有機溶剤とを含む導電性ペーストの製造方法であって、導電性金属粉末に有機バインダの一部と有機溶剤の一部とを加えて1次混合物を得る混合工程と、前記1次混合物を高せん断力をかけて固練りする1次分散工程と、その後、有機バインダの残部および有機溶剤の残部を加えて混合分散する2次分散工程と、その後、ロールミルにて分散する3次分散工程と、その後、有機溶剤を加えて粘度を調整する粘度調整工程とを備える導電性ペーストの製造方法であり、これにより、導電性ペーストに含有される有機バインダおよび有機溶剤の含有量が少ない状態で、高せん断力をかけているため、2次粒子に応力がかかり、容易に1次粒子にまで解砕および分散することができる。また、高せん断力をかけて固練りする1次分散工程を行った後に、有機バインダの残部および有機溶剤の残部を加えて溶解・希釈して混合分散する2次分散工程と、ロールミルにて分散する3次分散工程を行うため、有機バインダの導電性金属粉末への吸着を促進させることが容易にできる。このため、よりいっそう分散性の優れた導電性ペーストが得られる。
【0009】
また、本発明は、セラミック成分と1種類以上の有機物からなるセラミックグリーンシートを作製する第1の工程と、導電性ペーストを用いて導電性ペースト膜を形成する第2の工程と、前記セラミックグリーンシートと前記導電性ペースト膜とを積層して積層体を作製する第3の工程と、前記積層体を焼成する第4の工程とを備える積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記導電性ペーストは、導電性金属粉末に有機バインダの一部と有機溶剤の一部とを加えて1次混合物を得る混合工程と、前記1次混合物を高せん断力をかけて固練りする1次分散工程と、その後、有機バインダの残部および有機溶剤の残部を加えて混合分散する2次分散工程と、その後、ロールミルにて分散する3次分散工程と、その後、有機溶剤を加えて粘度を調整する粘度調整工程とを経て作製したものを用いる積層セラミック電子部品の製造方法であり、これにより、導電性ペーストの分散性が高く、導電性ペースト中に凝集物がほとんど残存しないため、均一で平滑性を有する導電性ペースト膜を形成することができる。このため、導電性ペースト膜がセラミックグリーンシートを貫通してショート不良を発生することが少なく、優れた品質の製品を歩留まり良く製造することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性ペーストの製造方法によれば、分散性の優れた導電性ペーストが得られる。そして、この導電性ペーストを用いて積層セラミック電子部品を製造した場合には、導電性ペーストの分散性が高く導電性ペースト中に凝集物がほとんど残存しないため、均一で平滑性を有する導電性ペースト膜を形成することができる。このため、導電性ペースト膜がセラミックグリーンシートを貫通してショート不良を発生することが少なく、優れた品質の製品を歩留まり良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の導電性ペーストの製造方法と、これを用いた積層セラミック電子部品の製造方法について積層セラミックコンデンサの製造方法を例に詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における導電性ペーストの製造方法を示す工程図である。
【0013】
本発明の実施の形態1における導電性ペーストの製造方法について、図1を用いて以下に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施の形態1における導電性ペーストの製造工程は、少なくとも、導電性金属粉末に有機バインダの一部と有機溶剤の一部とを加えて1次混合物を得る混合工程と、前記1次混合物を高せん断力をかけて固練りする1次分散工程と、その後、有機バインダの残部および有機溶剤の残部を加えて混合分散する2次分散工程と、その後、ロールミルにて分散する3次分散工程と、その後、有機溶剤を加えて粘度を調整する粘度調整工程とを備える。
【0015】
以下に、実施の形態1における導電性ペーストの製造方法を、より具体的に説明する。
【0016】
〔実施例1〕
まず、混合工程として、導電性金属粉末として気相化学反応法により得られた平均粒径D50が0.4μmのニッケル粉末を用い、このニッケル粉末100重量部に対して、後述するセラミックグリーンシートに含まれるセラミック成分と実質的に同一の組成である平均粒径D50が0.2μmのチタン酸バリウムと添加物を含むセラミック粉末20重量部と、有機バインダとしてポリビニルブチラール3.0重量部と、有機溶剤としてブチルセロソルブ15.0重量部とを配合し混合して1次混合物を得た。
【0017】
次に、1次分散工程として、混合工程で得られた1次混合物を、分散装置としてプラネタリミキサを用いて、せん断速度200s−1で高せん断力をかけながら1時間固練りして1次分散ペーストを得た。
【0018】
次に、2次分散工程として、1次分散工程で得られた1次分散ペーストをプラネタリミキサに入れたまま、有機バインダとしてポリビニルブチラール9.0重量部と、有機溶剤としてブチルセロソルブ18.0重量部とを加えて、希釈、混合して2次混合物を1時間混合分散し、2次分散ペーストを得た。
【0019】
次に、3次分散工程として、2次分散工程で得られた2次分散ペーストを、分散装置として3本ロールを用いて分散し、3次分散ペーストを得た。
【0020】
次に、粘度調整工程として、3次分散工程で得られた3次分散ペーストに有機溶剤として酢酸nブチルを加えて所望の粘度に調整し、本実施の形態1における実施例1の導電性ペーストを作製した。
【0021】
〔実施例2〕
上記実施例1では、1次分散工程と2次分散工程において、分散装置としてプラネタリミキサを用いたが、プラネタリミキサに代えて1次分散工程と2次分散工程における分散装置としてニーダーを用い、その他は、実施例1と同様の方法および条件で、本実施の形態1における実施例2の導電性ペーストを作製した。
【0022】
〔実施例3〕
上記実施例1では、混合工程において、平均粒径D50が0.4μmのニッケル粉末を用いたが、平均粒径D50が0.4μmのニッケル粉末に代えて平均粒径D50が0.5μmのニッケル粉末を用い、その他は、実施例1と同様の方法および条件で、本実施の形態1における実施例3の導電性ペーストを作製した。
【0023】
一方、比較のために、以下の比較例の導電性ペーストを作製した。
【0024】
〔比較例1〕
まず、導電性金属粉末として気相化学反応法により得られた平均粒径D50が0.4μmのニッケル粉末を用い、このニッケル粉末100重量部に対して、平均粒径D50が0.2μmのチタン酸バリウムと添加物を含むセラミック粉末20重量部と、有機バインダとしてポリビニルブチラール12.0重量部と、有機溶剤としてブチルセロソルブ33.0重量部とを配合し混合して混合物を得た。
【0025】
次に、この混合物と直径5mmの玉石とを、ニッケル粉末100重量部に対して玉石500重量部の割合でボールミルに投入し、ボールミルを24時間回転させ分散処理を行った後、有機溶剤として酢酸nブチルを加えて所望の粘度に調整し、比較例1の導電性ペーストを作製した。
【0026】
〔比較例2〕
上記比較例1と同様に配合し混合して得られた混合物を、3本ロールミルにより分散処理を行った後、有機溶剤として酢酸nブチルを加えて所望の粘度に調整し、比較例2の導電性ペーストを作製した。
【0027】
〔比較例3〕
上記比較例1と同様に配合し混合して得られた混合物を、プラネタリミキサを用いて1時間混合分散した後、有機溶剤として酢酸nブチルを加えて所望の粘度に調整し、比較例3の導電性ペーストを作製した。
【0028】
〔比較例4〕
上記比較例1と同様に配合し混合して得られた混合物を、ニーダーを用いて1時間混合分散した後、有機溶剤として酢酸nブチルを加えて所望の粘度に調整し、比較例4の導電性ペーストを作製した。
【0029】
上記で作製した本実施の形態1における実施例1〜実施例3の導電性ペースト、および比較例1〜比較例4の導電性ペーストについて、分散性を評価した。評価は、下記の方法により行った。
【0030】
上記導電性ペーストそれぞれを、アルミナ基板上に所定のパターンでスクリーン印刷し乾燥して、厚みが約2.0μmの印刷塗膜を形成した。この印刷塗膜の表面を顕微鏡を用いて目視観察し、凝集物の長径により、5μm未満、5μm以上10μm未満、10μm以上に分けて、観察範囲の面積5mm2に見られた凝集物数の個数を数えた。また、この印刷塗膜の表面粗さRaを表面粗さ計を用いて測定した。その評価結果を(表1)に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
(表1)に示すように、本実施の形態1における実施例1、2および3の導電性ペーストを用いた印刷塗膜は、10μm以上の凝集物の残存がなく、10μm以下の凝集物があっても極めて少なく、また、表面粗さRaも0.1μm以下であり平滑な印刷塗膜が得られた。すなわち、導電性ペーストの分散性が格段に向上していることがわかる。上記したように、実施例1、2および3の導電性ペーストは、いずれも、導電性金属粉末に有機バインダの一部と有機溶剤の一部とを加えて1次混合物を得る混合工程と、この1次混合物を高せん断力をかけて固練りする1次分散工程と、その後、有機バインダの残部および有機溶剤の残部を加えて混合分散する2次分散工程と、その後、ロールミルにて分散する3次分散工程と、その後、有機溶剤を加えて粘度を調整する粘度調整工程を経て作製したものである。
【0033】
すなわち、高せん断力をかけて固練りする1次分散工程を行うことにより、導電性金属粉末を十分に解砕し、均一に分散させることができ、1次分散工程を行った後に2次分散工程と3次分散工程も行うことにより、有機バインダや分散剤といった有機物の導電性金属粉末への吸着を促進させることが容易にでき、より一層分散性の優れた導電性ペーストが得られたものと考えられる。
【0034】
なお、平均粒径D50が0.4μmのニッケル粉末を用いた実施例1および2に比較して、平均粒径D50が0.5μmのニッケル粉末を用いた実施例3は、やや凝集物数が多く、表面粗さRaもやや大きい。したがって、導電性金属粉末であるニッケル粉末の平均粒径D50は0.4μm以下であることが、より好ましいことがわかる。一般的に、平均粒径D50が小さな微粉末ほど凝集が生じ易くなるが、本実施の形態では、凝集の発生を抑制できるため、0.4μm以下、さらには0.2μm以下、0.1μm以下の微粉末に適している。
【0035】
一方、これら本実施の形態1における実施例に対して、ボールミル、三本ロールミルを用いた比較例1、2の導電性ペーストを用いた印刷塗膜は、凝集物数が非常に多く、表面粗さRaが非常に大きい。すなわち、ニッケル粉末とセラミック粉末とを2次粒子から1次粒子にまで解砕および分散することができず、導電性ペーストの分散性が悪いことがわかる。
【0036】
また、プラネタリミキサ、ニーダーを用いて混合分散した比較例3、4の導電性ペーストを用いた印刷塗膜もまた、凝集物数が多く、表面粗さRaが大きい。これは、ニッケル粉末とセラミック粉末は2次粒子から1次粒子へと解砕することは可能であるが、ニッケル粉末とセラミック粉末の表面に有機バインダを十分に吸着することができないため、1次粒子が再び凝集して凝集物になりやすく、導電性ペーストとして十分な分散性が得られなかったものと考えられる。
【0037】
なお、上記実施の形態1の実施例1、2および3では、混合工程において有機バインダは導電性金属粉末100重量部に対して全量12重量部のうち3重量部を添加し、2次分散工程において有機バインダは全量12重量部のうちの残部である9重量部を添加した例を示したが、本発明の重要な点は、混合工程において有機バインダを全量添加するのではなく、その一部を添加する点にある。混合工程においては有機バインダの量は導電性金属粉末100重量部に対して、0.5〜5.0重量部だけ添加することが好ましい。すなわち、有機バインダが0.5重量部未満では、後の1次分散工程において、ペーストの粘性発現が不十分となり、固練りすることができないという問題が生じる。また、5.0重量部を超えると、後の1次分散工程において、ペーストに糸引きが生じることとなり、高せん断力をかけて固練りすることができないという問題が生じる。
【0038】
また同様に、上記実施の形態1の実施例1、2および3では、混合工程において有機溶剤は導電性金属粉末100重量部に対して全量33重量部のうち15重量部を添加し、2次分散工程において有機溶剤は全量33重量部のうちの残部である18重量部を添加した例を示したが、本発明の重要な点は、混合工程において有機溶剤を全量添加するのではなく、その一部を添加する点にある。混合工程においては有機溶剤の量は導電性金属粉末100重量部に対して、5.0〜20.0重量部だけ添加することが好ましい。すなわち、有機溶剤が5.0重量部未満では、後の1次分散工程において、ペーストの粘度が高くなりすぎるため、十分に有機バインダおよび分散剤等を吸着させることができず、分散処理が不十分になるという問題が生じる。また、20.0重量部を超えると、後の1次分散工程において、ペーストの粘度が低下し、高せん断力をかけたとしても導電性金属粉末とセラミック粉末を十分に解砕および分散することができないという問題を生じる。また、有機バインダは、有機溶剤に溶解せしめて、溶液として添加することが好ましい。
【0039】
なお、1次分散工程と2次分散工程とにおいて、同一の分散機を用いることが好ましいが、分散させるべきペーストの粘度、分散機の生産性および特性を考慮して、異なる分散機が用いられてもよい。2次分散工程においては、有機バインダの残部および有機溶剤の残部を加えて希釈し、混合分散する。このように、有機バインダおよび有機溶剤を複数回に分けて添加することによって、導電性金属粉末とセラミック粉末の分散性が向上する。
【0040】
また、分散の効率を上げるために、分散剤等を適宜添加してもよい。分散剤の添加量は導電性金属粉末100重量部に対して0.1〜5.0重量部、好ましくは0.5〜3.0重量部添加する。また、チクソ剤、可塑剤、湿潤剤、消泡剤等を所望のペーストに合わせて適宜添加してもよい。
【0041】
なお、3次分散工程において、1次分散工程と2次分散工程で十分に解砕および分散することができたペーストをロールミルを使用して分散処理する。そのため、有機バインダの導電性金属粉末とセラミック粉末への吸着をさらに促進させることができ、よりいっそう分散性の極めて高いペーストが得られる。
【0042】
なお、上記実施の形態1の実施例1、2および3では、セラミック粉末を添加した例を示したが、添加しない場合でも同様の効果が得られる。セラミック粉末を添加する場合、セラミック粉末の平均粒径は、導電性金属粉末の平均粒径未満の粒径とすることが好ましく、導電性金属粉末の平均粒径の1/2以下であることがさらに好ましく、導電性金属粉末の平均粒径の1/4以下であることが特に好ましい。これにより、導電性ペースト膜の乾燥後の表面の平滑性を低下させないことができる。また、セラミック粉末の成分としては、導電性ペーストが用いられる積層セラミック電子部品のセラミックグリーンシートに含まれるセラミック成分と実質的に同一の組成のセラミック粉末を用いることが好ましい。これにより、積層セラミック電子部品におけるセラミック誘電体層と内部導電体層の焼成過程における収縮挙動の差によるデラミネーションなどの欠陥を防止することができる。
【0043】
なお、上記実施の形態1では、導電性金属粉末として、気相化学反応法により得られたニッケル粉末を用いたが、その他の公知の製造方法を用いて作製された導電性金属粉末を用いた場合にも同様の効果が得られる。導電性金属粉末は特に限定されることなく、Ni、Cu、Ag、Feまたはこれらの合金の導電性金属粉末を用いた場合にも同様の効果が得られる。
【0044】
なお、上記実施の形態1では、有機バインダとしてポリビニルブチラール樹脂を用いたが、溶剤成分と相溶性のあるものを選択して用いた場合にも同様の効果が得られる。このような有機バインダとしては、たとえば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、セルロース類、ポリアクリル酸エステル類などがある。また、これらの有機バインダは、単独あるいは複数のものの組み合わせで用いることができる。
【0045】
なお、上記実施の形態1では、有機溶剤として多価アルコール誘導体類のブチルセロソルブを用いたが、アルコール類、エステル類、ケトン類、炭化水素類などを用いた場合にも同様の効果が得られる。また、これらの溶剤は、単独または相溶性のあるものを複数組み合わせて適宜用いることができる。
【0046】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における積層セラミック電子部品の製造方法について、積層セラミックコンデンサの製造方法を例に以下に説明する。
【0047】
まず、固相反応法により得られたチタン酸バリウムと添加物を含むセラミック粉末、有機バインダとしてポリビニルブチラール、有機溶剤として酢酸nブチルとを所定量混合し、セラミックスラリーを得た。このセラミックスラリーを用いて、ドクターブレード法により、厚みが約2.5μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0048】
次に、上述した実施の形態1における実施例1の導電性ペーストを用いて、上記のセラミックグリーンシート上に、スクリーン印刷により厚みが2.0μmで所定のパターンの内部導電体層となる導電性ペースト膜を形成した。なお、内部導電体層となる導電性ペースト膜の寸法、形状および位置は、後の工程で切断、分離した時、個片の積層セラミックコンデンサが得られるように設定した。
【0049】
次に、この導電性ペースト膜が形成されたセラミックグリーンシート300枚を交互にずらして積層し、また、この上下に保護層として、セラミックグリーンシートを複数枚積層し積層体を得た。得られた積層体を加熱圧着して積層体グリーンブロックとした後、所定形状に切断、分離し積層体グリーンチップを得た。その後、積層体グリーンチップを、還元性雰囲気下で、最高温度1250℃で焼成し、焼結体を得た。得られた焼結体の内部導電体層が露出する両端面に外部電極を形成し、上述の実施の形態1における実施例1の導電性ペーストを用いた積層セラミックコンデンサを作製した。得られた積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅1.6mm、長さ3.2mmおよび厚さ1.6mmであった。
【0050】
また、上記と同様にして、上述の実施の形態1における実施例2、実施例3の導電性ペースト、および比較例1〜比較例4の導電性ペーストについても、それぞれについて、これらの導電性ペーストを用いた積層セラミックコンデンサを作製した。すなわち、用いた導電性ペーストが異なる7種の積層セラミックコンデンサを作製した。
【0051】
そして、上記の7種の積層セラミックコンデンサについて、評価した。評価は、7種の積層セラミックコンデンサそれぞれの試料の中から無作為に100個の試料を抜き取り、LCRメーターを用い、温度25℃、1kHzおよび1Vrmsの条件で電気特性を測定してショート不良の試料数を数え、ショート不良数とした。評価結果を(表2)に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
(表2)に示すように、実施例1、2および3の導電性ペーストを用いた積層セラミックコンデンサは、いずれも、比較例1〜4の導電性ペーストを用いた積層セラミックコンデンサに比べて、ショート不良数が極めて少なく良好な結果が得られた。そして、平均粒径D50が0.4μmのニッケル粉末を用いた実施例1および2の導電性ペーストを用いた積層セラミックコンデンサは、ショート不良が無く特に良好な結果が得られた。
【0054】
上述したように、実施例1、2および3の導電性ペーストは、いずれも、導電性金属粉末に有機バインダの一部と有機溶剤の一部とを加えて1次混合物を得る混合工程と、この1次混合物を高せん断力をかけて固練りする1次分散工程と、その後、有機バインダの残部および有機溶剤の残部を加えて混合分散する2次分散工程と、その後、ロールミルにて分散する3次分散工程と、その後、有機溶剤を加えて粘度を調整する粘度調整工程を経て作製したものである。
【0055】
このため、上述したように、実施例1、2および3の導電性ペーストは、いずれも比較例1〜4の導電性ペーストに比べて、分散性に極めて優れ、その印刷塗膜は、凝集物が極めて少なく平滑であるため、導電性ペースト膜の凝集物によるセラミックグリーンシートの貫通を生じることなく、ショート不良とならなかったものと考えられる。
【0056】
なお、上記実施の形態2では、積層セラミック電子部品の例として、積層セラミックコンデンサの製造方法について説明したが、積層セラミックコンデンサのほかに積層サーミスタ、積層バリスタ、積層インダクタなどの積層セラミック電子部品の製造においても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る導電性ペーストの製造方法とこれを用いた積層セラミック電子部品の製造方法は、分散性の優れた導電性ペーストが得られ、この導電性ペーストを用いて積層セラミック電子部品を製造した場合には、均一で平滑性を有する導電性ペースト膜を形成することができるため、導電性ペースト膜がセラミックグリーンシートを貫通してショート不良を発生することが無く、薄層化、高積層化が求められている積層セラミック電子部品の製造方法として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態1における導電性ペーストの製造方法を示す工程図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属粉末と有機バインダと有機溶剤とを含む導電性ペーストの製造方法であって、導電性金属粉末に有機バインダの一部と有機溶剤の一部とを加えて1次混合物を得る混合工程と、前記1次混合物を高せん断力をかけて固練りする1次分散工程と、その後、有機バインダの残部および有機溶剤の残部を加えて混合分散する2次分散工程と、その後、ロールミルにて分散する3次分散工程と、その後、有機溶剤を加えて粘度を調整する粘度調整工程とを備える導電性ペーストの製造方法。
【請求項2】
1次分散工程は、プラネタリミキサまたはニーダーのいずれかを用いて行う請求項1に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項3】
導電性金属粉末は、平均粒径D50が0.4μm以下のニッケル粉末である請求項1に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項4】
セラミック成分と1種類以上の有機物からなるセラミックグリーンシートを作製する第1の工程と、導電性ペーストを用いて導電性ペースト膜を形成する第2の工程と、前記セラミックグリーンシートと前記導電性ペースト膜とを積層して積層体を作製する第3の工程と、前記積層体を焼成する第4の工程とを備える積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記導電性ペーストは、導電性金属粉末に有機バインダの一部と有機溶剤の一部とを加えて1次混合物を得る混合工程と、前記1次混合物を高せん断力をかけて固練りする1次分散工程と、その後、有機バインダの残部および有機溶剤の残部を加えて混合分散する2次分散工程と、その後、ロールミルにて分散する3次分散工程と、その後、有機溶剤を加えて粘度を調整する粘度調整工程とを経て作製したものを用いる積層セラミック電子部品の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−351348(P2006−351348A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175942(P2005−175942)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】