説明

導電性ローラの表面層形成製造装置およびそれを用いた導電性ローラの製造方法

【課題】グラビアロールを用いて、厚膜の導電性ローラ表面層を形成することのできる導電性ローラ表面層形成製造装置およびそれを用いた導電性ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】グラビアロール11の直径を、前記導電性ローラ1の直径の3.5〜7倍とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビアロールと導電性ローラの基体部との両方を回転させながら、グラビアロールおよび導電性ローラ基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部長さ方向に相対変位させて、グラビアロールの周面に汲み上げた塗料を、導電性ローラ基体部周上に塗布して導電性ローラの表面層を形成する導電性ローラ表面層形成製造装置およびそれを用いた導電性ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長さ方向両端部が軸支された導電性ローラの基体部を回転するワーク回転装置と、この導電性ローラに対して90度を含む所定角度で交差し、周面同士が接触もしくは近接する姿勢に配置されたグラビアロールと、このグラビアロールを回転させるグラビアロール回転装置と、導電性ローラの基体部をその軸線方向にグラビアロールに対して相対変位させる並進装置とを具え、グラビアロールと導電性ローラ基体部との両方を回転させながら、グラビアロールおよび導電性ローラ基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部長さ方向に相対変位させて、グラビアロールの周面に汲み上げた塗料を、導電性ローラ基体部周上に塗布して表面層を形成する導電性ローラ表面層形成製造装置は既に知られていて、この装置においては、塗料を汲み上げて導電性ローラの基体部に塗布するのに用いるアプリケーションロールとして、平坦なロールではなくグラビアロールを用いており(例えば特許文献1参照。)、このことによって、これを平坦なロールにした場合には、塗料の、粘度等の特性の変化や、わずかな塗布条件の変化により、アプリケーションロール上の塗料の膜厚さが変化してしまい、その結果、導電性ローラ表面層の膜厚がばらつき、高度な均一性が求められる導電性ローラにこの方法を用いた場合には、必要な表面層膜厚品質を確保することが難しいという問題を解消することができる。
【特許文献1】特開2006−088016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のグラビアロールは、その製作コスト等の理由により、その直径は、塗布対象となる導電性ローラの直径と同程度であり、このような場合に塗膜で表面層を形成しようとすると、導電性ローラの基体部上で塗布済みの塗料が大きく流動しないうちに大量の塗料をこの基体部上に運んで表面層を完成させる必要があり、このためには、グラビアロールの回転速度を高めて、基体上への塗料の運搬速度を上げる必要があった。そして、この速度がある限界を超えると、グラビアロールの回転中にグラビアロールで運搬中の塗料が遠心力によって飛散し、基体上への塗料の運搬速度を上げようとしたにもかかわらず、運搬速度は頭打ちになってしまい、表面層を形成することが難しかった。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、グラビアロールを用いて、導電性ローラ表面層を形成することのできる導電性ローラ表面層形成製造装置およびそれを用いた導電性ローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<1>は、長さ方向両端部が軸支された導電性ローラの基体部を回転するワーク回転装置と、この導電性ローラに対して90度を含む所定角度で交差し、周面同士が接触もしくは近接する姿勢に配置されたグラビアロールと、このグラビアロールを回転させるグラビアロール回転装置と、導電性ローラの基体部をその軸線方向にグラビアロールに対して相対変位させる並進装置とを具え、グラビアロールの周面に、25℃における粘度が10〜10000mPa・Sの塗料を供給しつつ、グラビアロールと導電性ローラ基体部との両方を回転させながら、グラビアロールおよび導電性ローラ基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部長さ方向に相対変位させて、グラビアロールの周面に汲み上げた塗料を、導電性ローラ基体部周上に塗布して表面層を形成する導電性ローラ表面層形成製造装置において、
グラビアロールの直径を、前記導電性ローラの直径の3.5〜7倍としてなる導電性ローラ表面層形成製造装置である。
【0006】
<2>は、<1>において、グラビアロールの周面に当接しもしくは近接して配置され、グラビアロールの周面上に汲み上げられた塗料の膜厚を規制するドクターブレードを設けるとともに、グラビアロールの直径を、前記導電性ローラの直径の3.5〜6倍としてなる導電性ローラ表面層形成製造装置である。
【0007】
<3>は、<1>もしくは<2>において、直径が8〜30mmの導電性ローラを形成する導電性ローラ表面層形成製造装置である。
【0008】
<4>は、<1>〜<3>のいずれかの導電性ローラ表面層形成製造装置を用いて前記表面層を形成する導電性ローラ製造方法において、グラビアロールの周面に、25℃における粘度が10〜10000mPa・Sの塗料を供給しつつ、グラビアロールと導電性ローラ基体部との両方を回転させながら、グラビアロールおよび導電性ローラ基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部長さ方向に相対変位させて、グラビアロールの周面に汲み上げた塗料を、導電性ローラ基体部周上に塗布して表面層を形成する導電性ローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
<1>によれば、グラビアロールの直径を、前記導電性ローラの直径の3.5〜7倍としたので、グラビアロールの回転速度をあげることなく、基体上への塗料の運搬速度を高めることができ、その結果、塗膜による表面層の形成が可能となる。グラビアロールの直径の、前記導電性ローラの直径に対する比を、3.5より小さくした場合には、塗料の運搬速度を確保するためにはグラビアロールを高速回転する必要が生じ塗料が飛散しやすくなり、一方、この比を7より大きくした場合には、グラビアロールに塗料を供給するための塗料タンクがグラビアロールの直径に応じて大きくなってしまい、この場合、塗料が、自身のポットライフより長い時間、タンク内にとどまってしまう可能性があり、特に、UV塗料の場合、硬化してしまう虞が生じる。
【0010】
<2>によれば、グラビアロールの周面に当接しもしくは近接して配置され、グラビアロールの周面上に汲み上げられた塗料の膜厚を規制するドクターブレードを設けたので、グラビアロール上の塗料の厚さを規制し、よって、導電性ローラの膜厚を均一にしやすくなるが、一方、グラビアロール自身がこのブレードによって削られる可能性があり、このような状況において、グラビアロールの直径を大きくした方が、同じ塗料の量を導電性ローラ上に塗布する際、グラビアロール回転速度を落とせる分だけ、グラビアロールの周面がブレードの接する回数を減らすことができ、好ましい。
【0011】
より具体的には、この直径が、導電性ローラの6倍を超えると、自重によるモータへの負荷増大や径大化に伴って設備が大型なものとなってしまい、一方、これを3.5倍未満とした場合には、ブレードによる周面の摩耗が急激に増加して、好ましくない。
【0012】
<3>によれば、直径が8〜30mmの導電性ローラを形成するのに用いるのが好ましく、導電性ローラの直径が8mm未満になると、塗布時に導電性ローラ自体がたわみ、均一な塗布ができなくなり、これが30mmを越えるとグラビアロール自体も大きくなり設備が大型になって問題である。
【0013】
<4>によれば、上記のようなグラビアロールを用いるので、上に説明した通りの効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。図1は、本発明に係る導電性ローラの製造装置によって製造される導電性ローラを示す断面図であり、図1(a)はその第一態様を示し、導電性ローラ1は、長さ方向両端で軸支される軸部2と、軸部2の周囲に配設された基体部3と、基体部3の周面を被覆する表面層4とからなり、軸部2は、鉄やステンレス等の金属、あるいは、プラスチックよりなり、基体部3から長さ方向外側に突出して設けられ、突出した部分が、画像形成装置のローラ軸支手段に軸支されるよう構成される。
【0015】
図1(b)は、導電性ローラの第二態様を示す断面図であり、導電性ローラ1Aは、軸部2A、基体部3、および表面層4よりなり、軸部2の代わりに軸部2Aを用いた点が第一態様と異なり、軸部2Aは、鉄やステンレス等の金属、あるいは、プラスチックよりなる中空のパイプで構成され、基体部3を同じ外径にしたままでその断面積の小さくする場合、このような中空の軸部2Aを好適に用いて、導電性ローラを軽量なものにすることができる。
【0016】
また、軸部2Aを基体部3の長さ方向外側に突出させて、軸部2と同様にその半径方向外側が支持されるよう構成することもできるが、図1(b)に示すように、パイプの半径方向内側の面が軸支されるようにしてもよく、この場合、軸部2Aを基体部3の長さ方向外側に突出させる必要はない。
【0017】
次に、本発明に係る実施形態の導電性ローラ表面層形成装置について、図2および図3を参照して説明する。図2は、塗料を塗布する装置を示す平面図、図3は、図2のA−A矢視に対応する断面を示す断面図であり、導電性ローラ表面層形成装置20は、導電性ローラ1を回転させながら走行するローラ移動台車21と、導電性ローラ1に塗料を供給して塗布するコータ10とで構成され、ローラ移動台車21は、導電性ローラ1をその長さ方向両端部で軸支するそれぞれの支持部材23、導電性ローラ1を所定の回転速度で回転させるモータ24、および、これらの支持部材23とモータ24とを搭載する走行ベース25よりなり、走行ベース25は、図示しない手段により、導電性ローラ1の長さ方向Mと平行に往復駆動される。
なお、図1に示した装置1においては、ローラ移動台車21を往復変位させる構成になっているが、この代わりに、コータ10を導電性ローラ1の長さ方向に往復変位させてもよく、あるいは両方を相互に離隔接近させてもよい。
【0018】
コータ10は、塗料を収容するタンク12と、この塗料を、タンク12から周面11aに載せて汲み上げ導電性ローラ1の基体部3の周面に塗布するグラビアロール11、グラビアロール11を軸支する支持部材13、グラビアロール11を回転駆動するモータ14、および、グラビアロール11の周面11a上の余分な塗料を掻き落とすドクターブレード16とを備えて構成される。
【0019】
ここで、本発明を構成する、導電性ローラの基体部3を回転するワーク回転装置と、導電性ローラの基体部をその軸線方向にグラビアロールに対して相対変位させる並進装置とは、本実施形態のローラ移動台車21によって具体化され、また、本発明の他の構成要素であるグラビアロール回転装置は、モータ14によって具体化されている。
【0020】
図4は、グラビアロール11を示す図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は、図4(a)のB−B矢視に対応する断面図である。グラビアロール11は、鉄等の金属よりなるロールで、長さ方向両端部11bで軸支されて回転する。塗料をタンク12から汲み上げこれを輸送する周面11aには、グラビア版となる凹部11cが形成されていて、周面11aによって汲み上げられた塗料は、ドクターブレード16により掻き落とされる。このように、グラビアロール11の塗料の輸送量を決定する支配的な因子は、その回転速度と凹部11cの総容積とであり、凹部11cのない平坦なロールで塗布する場合に対比して、精度の高いものとすることができる。
【0021】
また、凹部11cに保有した塗料を基体部3の周面に転写する際の転写率は、塗料の粘度にも影響されるものの、凹部11cの形状によって支配的に決定されるため、この点においても、平坦なロールに対比してより高精度な膜厚の表面層4を基体部3上に形成することができる。
【0022】
本発明の導電性ローラ表面層形成装置20は、その特徴として、グラビアロール11の直径Dが、導電性ローラ1の直径dの3.5〜7となるように構成されている。この直径Dが導電性ローラ1の直径dの3.5未満となると、塗膜の表面層を形成するためにはグラビアロール11の回転速度を上げる必要があるが、しかし、回転速度を上げると回転するグラビアロール11から汲み上げた塗料が飛散してしまい、結局は、塗膜を形成することができなくなってしまう。一方、グラビアロール11の直径が大きくなりすぎると、コスト的にも問題となるが、そのほか、直径Dが導電性ローラ1の直径dの7倍を超えると、タンク12の容量が、大きくなりすぎて、塗料のタンク内の滞留時間がその塗料のポットライフを超えてしまう可能性があり、これによって塗料がタンク12内で固化してしまうという問題が生じる。
【0023】
この直径Dは、導電性ローラ1の直径dの6倍以下とするのが、タンク12内での塗料の固化を一層確実に防止することができる点において好ましく、また、この直径Dを、導電性ローラ1の直径dの3.5倍以上とすることによって、グラビアロール11の回転速度をさらに低く抑え、このことによって、ドクターブレード16によるグラビアロール11の摩耗を低減し、グラビアロール11の取替周期を長くすることができる。
【0024】
図5は、基体部3に塗料を塗布する途中の状態を示す、導電性ローラの外形図であり、上記のように構成された塗布装置20を作動させると、塗料が塗布され、基体部3の周面に螺旋状の塗膜31を形成してゆくが、螺旋のピッチP(m)は、導電性ローラ基体部3のローラ長さ方向の送り速度v(m/s)をその軸心周りの回転速度ω(s-1)で除したもので表すことができ、螺旋塗膜31の幅Wは、導電性ローラ1の基体部3とグラビアロール11との交差角度θを変えて変化させることができ、交差角度θを小さくすることにより螺旋塗膜31の幅Wを大きくすることができる。そして、回転速度ωを大きくしもしくは送り速度vを小さくして螺旋塗膜31のピッチPを小さくし、かつ、最後の出来上がり膜厚に対する、1周分の膜厚を薄くし、その分、螺旋塗膜31のピッチPに対する螺旋塗膜31の幅Wを大きくすることによって、螺旋塗膜31の縁32における段差量を小さくすることができ、滑らかで均一な厚さの表面層4を形成することができる。
【0025】
螺旋の縁32における段差量を小さくするには、上記のほかに、グラビアロール11の周面と導電性ローラ基体部3の周面の間に隙間を設け、塗料が自然に流動できるようにすることも効果があり、この場合、グラビアロール周面11a上の塗料をドクダブレード16で掻き落とす際、隙間があっても導電性ローラに乗り移せるに足る最小限の膜厚の塗料を残すようドクダブレード16を設定するのが好ましい。ただし、隙間が100μm以上になると、ドクターブレード16で掻き落としたあとのグラビアロール11周面上の塗料膜厚を厚くしないと、塗料をグラビアロール周面11aから基体部3の周面に乗り移すことが難しくなり、グラビアロール11周面上の塗料膜厚を厚くなると、塗膜の厚さがばらつきやすくなる。
【0026】
また、導電性ローラ1の基体部3と、グラビアロール11との相対回転方向は、塗料に剪断力が加わる方向とするのが、塗装表面の平滑性を高めることができる点で好ましく、図2に例示したように、基体部3とグラビアロール11との、それらが接しもしくは近接する部分における周面速度の導電性ローラ接線方向成分が互いに反対向きになるよう設定するのが好ましい。
【0027】
ここで、対象とする導電性ローラおよび用いる塗料について以下に補足説明する。導電性ローラ1の基体部3としては、エラストマーに導電剤を添加して導電性を付与したものが用いられる。ここで使用し得るエラストマーには、特に制限はなく、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム等が例示され、これらを単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。本発明においては、これらのうち、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムが好ましく用いられる。また、これらと他のゴム材料との混合物もまた好ましく用いられる。特に、本発明においては、ウレタン結合を有する樹脂が好ましく用いられる。
【0028】
また、表面層4は、例えば、導電性ローラ1を帯電ローラとするような場合には、ナイロン、ポリエステル、ウレタン変性アクリル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂等、目的に応じて適宜な樹脂で形成することができるが、特に帯電ローラの表面平滑性や感光体等との低密着性などの観点からフッ素樹脂が好ましく用いられる。
【0029】
また、かかる表面層4において、その平滑性を確保したい場合には、水系樹脂が好ましく用いられる。水系樹脂としては、溶媒が水であれば、水溶性タイプ、エマルジョンタイプ、サスペンジョンタイプ等のいずれのタイプでもよいが、特にカルボキシル基、水酸基、アミノ基等の活性水素を持つアクリル系の温水可溶性樹脂が好ましい。アクリル樹脂は、従来、帯電ローラ用樹脂として一般的に用いられてきたウレタンやナイロン等に比べてかなり誘電率が小さいために静電容量も小さくなり、交流電圧印加による帯電ローラ/被帯電体間の電気的引力・反発力が低減化され、帯電音を低減化することができることから、特に好ましく用いられる。
【0030】
更に、この表面層4には、必要に応じて増粘剤、チクソトロピー性付与剤、構造粘性付与剤等の適宜な添加剤を必要に応じて適量添加することができ、この場合添加剤は無機系、有機系のいずれであってもよい。
【0031】
また、導電性ローラ1を現像ローラとするような場合には、表面層4を構成する樹脂として、架橋性樹脂が好適に用いられる。架橋性樹脂とは、熱,触媒,空気(酸素),湿気(水),電子線などにより自己架橋する樹脂あるいは架橋剤や他の架橋性樹脂との反応により架橋する樹脂をいう。このような架橋性樹脂の例としては、水酸基,カルボキシル基,酸無水物基,アミノ基,イミノ基,イソシアネート基,メチロール基,アルコキシメチル基,アルデヒド基,メルカプト基,エポキシ基,不飽和基等の反応基を持つフッ素樹脂,ポリアミド樹脂,アクリルウレタン樹脂,アルキッド樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂,シリコーン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,エポキシ樹脂,ポリエーテル樹脂,アミノ樹脂,アクリル樹脂,尿素樹脂等及びこれらの混合物を挙げることができる。これらの中で、フッ素樹脂,ポリアミド樹脂,アクリルウレタン樹脂,アルキッド樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂,シリコーン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,エポキシ樹脂,及びそれらの混合物が好ましく、特にアルキッド樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂及びそれらの混合物が、現像剤の帯電能、現像剤に対する非汚染性、他の部材との摩擦力低減、画像形成体に対する非汚染性などの点から好適である。
【0032】
上記架橋性樹脂には、必要に応じて触媒、架橋剤が用いられるが、触媒としては、例えば過酸化物やアゾ化合物などのラジカル触媒,酸触媒,塩基性触媒などが挙げられる。また、架橋剤は水酸基,カルボキシル基,酸無水物基,アミノ基,イミノ基,イソシアネート基,メチロール基,アルコキシメチル基,アルデヒド基,メルカプト基,エポキシ基,不飽和基等の反応基を1分子中に2個以上もつ化合物、例えば、ポリオール化合物,ポリイソシアナート化合物,ポリアルデヒド化合物,ポリアミン化合物,ポリエポキシ化合物等が挙げられる。この架橋性樹脂には、さらなる現像剤への帯電能の向上、他の部材との摩擦力低減、導電性付与などの目的で、所望により、荷電制御剤,滑剤,導電剤,その他の樹脂など、種々の添加剤を含有させることができる。
【0033】
上述の樹脂のうち、表面層4を塗布したあと乾燥工程が要らないという点において、電子線硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂を含有するものが好ましく、これらの樹脂は、電子線を照射し、もしくは、紫外線重合開始剤の存在下で紫外線を照射することにより硬化させることができる。
【0034】
電子線硬化型樹脂もしくは紫外線硬化型樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
さらに、これらの樹脂に特定の官能基を導入した変性樹脂を用いることもできる。また、樹脂層4の力学的強度、耐環境特性を改善するため、架橋構造を有するものを導入することが好ましい。
【0036】
上記の電子線硬化型樹脂もしくは紫外線硬化型樹脂のうち、特に、(メタ)アクリレートオリゴマーを含む(メタ)アクリレート系紫外線硬化型樹脂より形成された組成物が好適である。
【0037】
このような(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマー等、また、フッ素系、シリコーン系の(メタ)アクリルオリゴマーなどを挙げることができる。
【0038】
上記(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールとε−カプロラクトンの付加物等の化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により、あるいはポリイソシアネート化合物及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物をウレタン化することにより合成することができる。
【0039】
ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオール、イソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とをウレタン化することによって得ることができる。
【0040】
エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーの例としては、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物であればいずれでもよいが、中でもベンゼン環、ナフタレン環、スピロ環、ジシクロペンタジエン、トリシクロデカン等の環状構造を有し、かつグリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の反応生成物が好ましい。
【0041】
更に、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマーは、各々に対するポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール)と(メタ)アクリル酸との反応によって得ることができる。
【0042】
電子線硬化型もしくは紫外線硬化型の樹脂組成物には、必要に応じて粘度調整のために重合性二重結合を有する反応性希釈剤を配合する。このような反応性希釈剤としては、アミノ酸や水酸基を含む化合物に(メタ)アクリル酸がエステル化反応及びアミド化反応で結合した構造の、例えば、単官能、2官能または多官能の重合性化合物等を使用することができる。これらの希釈剤は、(メタ)アクリレートオリゴマー100重量部当たり、通常10〜200重量部用いることが好ましい。
【0043】
表面層4を構成する樹脂には、その導電性を制御する目的で導電剤が配合され、この導電材としては、先に述べたような、基材部3に含有させる導電剤と同じものを用いることができる。
【0044】
基体部3上に塗布される塗料としては、先に、表面層4を構成する樹脂として例示した樹脂を溶媒に溶かしこみ、もしくは無溶剤で調合したものを用いることができる。
【0045】
溶媒を用いる場合に、塗工液の調製に用いられる溶媒としては、例えばメタノール,エタノール,イソプロパノール,ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、イソプロピルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム,シクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アクリル塗料等の水系塗料及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0046】
本発明においては、25℃における粘度が10〜10000mPa・Sの塗料を用いる。このような高粘度の塗料を、ロールコータ式以外の塗装方法を用いて表面層4を形成することは難しく、例えば、スプレーにより表面層4を形成する方法は、このような高粘度の塗料を霧化することが難しく、一方、ディップ槽に収容した塗料を浸漬させて形成した場合に、粘度が高すぎて膜厚が極めて厚くなってしまい、実現がむつかしいからである。
【0047】
このような高粘度の塗料を用いる利点は、塗料が流動しにくいため、図6(a)に基体部表面近傍を断面図で示すように、基体部33の表面に露出した空隙セル34sを表面層37で埋めることなく均一な厚さの表面層36Aを形成して滑らかに基体部33を被覆することができ、もし、塗料の粘度が低い場合には、図6(a)に対応させた図6(b)に示すように、塗料は、表面に露出した空隙セル34sの中まで流動してこのセル34sを埋めてしまい、基体部33が具備すべき弾性特性や、表面層36が付与すべき導電特性を所望のものとすることができず、しかも、これらの特性が不均一になってしまう。
【0048】
さらに、粘度条件が10〜10000mPa・Sを満足するとともに、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を含有した塗料を用いて、表面層4を形成した場合、塗装直後にこれを瞬時に硬化させることにより、その流動を抑え、高粘度にしたことと同様の効果をもたらすことができる。そして、そもそも、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を含有した塗料を用いるのは、もしこれが熱硬化型の樹脂であった場合には必要となる大掛かりな乾燥設備を不要にするためであり、そのため、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を含有した塗料を用いる場合は、溶剤の量を極めて低く抑えたものが用いられ、このような場合には、同様な理由により、ロールコータ式の塗布方法を好適に用いることができる。
【実施例】
【0049】
異なる直径Dのグラビアロール有する、図2、3に示した構成の装置20を用いて導電性ローラ1を試作し、塗膜形成に必要なグラビアロール周速度における塗料の飛散状態、タンク内塗料の固化の有無、および、グラビアロール取替周期について検討した。結果を表1に示す。
試作条件は以下の通りである。なお、表1において、飛散状態の良否は、塗膜形成時に必要なグラビアロール周速度において、グラビアロールを収容可能な最小タンク外への飛散の有無、もしくは塗布中の導電性ローラへの塗料飛散による飛沫の有無で判定し、表1に、無しのものを○で、有りのものを×でそれぞれ表した。
タンク内塗料の固化の有無は、大きさの異なるそれぞれのグラビアロールを収容可能な最小タンクに塗料を一定の液面レベルを保ちながら貯留したときの塗料の固化の有無を目視で判定し、表1に、無しのものを○で、有りのものを×で、ゲル状のものを△でそれぞれ表した。また取り替え周期は、10μmの表面層を形成する際に取り替え周期までに形成された導電性ローラの本数で評価し、これが10,000本より多い場合を合格とし、それ以外を不合格とし、表1に、合格のものを○で、不合格のものを×で表した。
試作に用いた導電性ローラのサイズは、直径18mm、基体部の長さ250mm、軸部の直径8mm、表面層の厚さ0.005mm〜0.05mm、基体部の組成はウレタン材料であった。グラビアロールの表面性状は格子型、線数85本/インチ、深度122μmであった。試作に用いた塗料は紫外線硬化型で粘度100mPa・S、グラビアロールと導電性ローラとお傾斜角度45度、グラビアロールの回転速度72m/min、導電性ローラの回転速度45m/min、グラビアロールの回転方向は導電性ローラの回転方向に対して逆方向であった。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る現像ローラは、普通紙複写機、普通紙ファクシミリ機、レーザビームプリンタ、カラーレーザビームプリンタ、トナージェットプリンタなどの画像形成装置に帯電ローラ,現像ローラ,転写ローラ,給紙ローラ、トナー供給ローラ等として装着して好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る導電性ローラを示す断面図である。
【図2】導電性ローラの表面層を形成する塗装装置を示す平面図である。
【図3】図3のA−A矢視に対応する断面を示す断面図である。
【図4】グラビアロールを示す平面図および断面図である。
【図5】基体部に塗料を塗布する途中の状態を示す導電性ローラの外形図である。
【図6】発泡体よりなる基体部の表面近傍を示す断面図ある。
【符号の説明】
【0053】
1、1A 導電性ローラ
2、2A 軸部
3、3A 基体部
4、4A 表面層
10 コータ
11 グラビアロール
11a グラビアロールの周面
11b グラビアロールの両端部
11c グラビアロールの凹部
12 タンク
13 支持部材
14 モータ
16 ドクターブレード
20 塗布装置
21 ローラ移動台車
23 支持部材
24 モータ
25 走行ベース
31 螺旋塗膜
32 螺旋塗膜の縁
33 基体部
34 空隙セル
34s 表面に露出した空隙セル
36、36A 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向両端部が軸支された導電性ローラの基体部を回転するワーク回転装置と、この導電性ローラに対して90度を含む所定角度で交差し、周面同士が接触もしくは近接する姿勢に配置されたグラビアロールと、このグラビアロールを回転させるグラビアロール回転装置と、導電性ローラの基体部をその軸線方向にグラビアロールに対して相対変位させる並進装置とを具え、グラビアロールの周面に、25℃における粘度が10〜10000mPa・Sの塗料を供給しつつ、グラビアロールと導電性ローラ基体部との両方を回転させながら、グラビアロールおよび導電性ローラ基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部長さ方向に相対変位させて、グラビアロールの周面に汲み上げた塗料を、導電性ローラ基体部周上に塗布して表面層を形成する導電性ローラ表面層形成製造装置において、
グラビアロールの直径を、前記導電性ローラの直径の3.5〜7倍としてなる導電性ローラ表面層形成製造装置。
【請求項2】
グラビアロールの周面に当接しもしくは近接して配置され、グラビアロールの周面上に汲み上げられた塗料の膜厚を規制するドクターブレードを設けるとともに、グラビアロールの直径を、前記導電性ローラの直径の3.5〜6倍としてなる請求項1に記載の導電性ローラ表面層形成製造装置。
【請求項3】
直径が8〜30mmの導電性ローラを形成する請求項1もしくは2に記載の導電性ローラ表面層形成製造装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された導電性ローラ表面層形成製造装置を用いて前記表面層を形成する導電性ローラ製造方法において、グラビアロールの周面に、25℃における粘度が10〜10000mPa・Sの塗料を供給しつつ、グラビアロールと導電性ローラ基体部との両方を回転させながら、グラビアロールおよび導電性ローラ基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部長さ方向に相対変位させて、グラビアロールの周面に汲み上げた塗料を、導電性ローラ基体部周上に塗布して表面層を形成する導電性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−128460(P2010−128460A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306420(P2008−306420)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】