説明

導電性ロール

【課題】 発泡体のセルの微小化と低硬度を両立させ、転写効率に変化が少なく、かつ十分なニップ幅が得られる導電性ロールを提供する。
【解決手段】 芯金およびその外周面上に形成された導電性発泡体を備えた導電性ロールであって、前記導電性発泡体は、ゴム成分としてアクリロニトリル含有量が10〜20質量%であるアクリロニトリルブタジエンゴムを50〜85質量部、エチレンオキサイドが50モル%以上占めるエピクロルヒドリンゴムを15〜50質量部含むゴム組成物からなり、最大セル径が200μm以下、最小セル径が10μm以上で、かつショアE硬度が20〜50であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター、複写機、ファクシミリ、ATM等の電子写真装置の画像形成機構に使用される導電性ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、複写機またはファクシミリ等の電子写真装置の多くは、有害とされているオゾンの発生が非常に少ない接触帯電および接触転写方式を採用しており、中でも耐摩耗性や転写部の転写材搬送性に優れたロール状の部材が主流となっている。
このようなロール状の部材は、一般的に、SUSまたは鉄などからなる円柱状の芯金と、この芯金の外周面上に設けられた、カーボンまたはイオン導電剤等によりその抵抗値を1×10〜1×1010Ωに制御された導電層とから構成されている。
前記導電層は、通常少なくともその一部が弾性を有する材料で構成され、例えば、転写ロールとして用いたときに像担持体である感光体や中間転写体に対して確実にニップを形成することができるように形成されている。
【0003】
確実なニップの形成を可能にするための手法として、従来の導電性弾性ロールにおいては発泡体を用いることが多い。通常、発泡体の硬度は発泡体を形成するセルの大きさに依存しており、低硬度の発泡体はセル径が大きく、高硬度の発泡体はセル径が小さい。プリンターまたは複写機等の電子写真装置に用いられる導電性弾性ロールでは、確実にニップ幅を得るためにセル径の大きい低硬度な発泡体を用いることが多い。
しかし、セル径の大きな発泡体を用いる場合、導電性弾性ロールが感光体や中間転写体と接触する際の接触開始時および接触終了時において以下のような問題が起こりえる。
即ち、最表面のセルは表面側と芯金側とでセル径分の距離の差を持つが、セル径の大きな発泡体ほど前記距離が大きいため、接触前後で最表面の微少な領域における変化率が大きくなり、その結果、転写効率に差が生じることが多い。
具体的には、本来転写されなければならないトナーが転写されずに感光体表面や中間転写体表面に残ることになる。これまでは比較的径の大きな粉砕トナーが広く用いられていたため、転写されなかったトナーはクリーニングブレードやクリーニングブラシで掻き落とすことができるが、近年使用されてきている重合トナーは直径数ミクロンという真球に近い微少な球体であるため、クリーニングブレードと感光体や中間転写体との間にトナーが入り込みやすく、残留トナーを掻き取ることが困難になってきている。
そこで、クリーニングレスの観点から転写効率に優れた導電性弾性ロールが求められている。しかしながら、単にセル径を小さくするだけでは硬度が大きくなってしまい、十分なニップ幅は得られない。
このように、セルの微小化と低硬度を両立させることは困難であった。
【0004】
発泡体を用いた導電性弾性ロールにおいて、セル径と硬度の双方に着目した特許文献は少ない。
例えば、特開2002−287456号公報(特許文献1)には、「導電性支持体上にゴム層を有する導電性ゴムローラにおいて、該ゴム層がエチレンオキサイドを40モル%以上含有するエピクロルヒドリンゴム(A)と、アクリロニトリル含有量が20質量%以下であるアクリロニトリルブタジエンゴム(B)を特定の割合で含有する導電性ゴムローラ」において、発泡剤を添加剤として使用可能であることが記載されている(第(3)頁右欄第26〜28行)。
しかし、特許文献1では、発泡剤を使用してゴム層を発泡体としたときの硬度やセル径については全く記載されておらず、硬度とセル径とについての考慮がなされていない。
【0005】
また、特許第3469170号(特許文献2)には「EO比率が50モル%以上80モル%以下のエピクロルヒドリン系重合体からなるポリマーあるいは該エピクロルヒドリン系重合体とアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)との混合物からなるポリマーに、特定の割合で化学発泡剤及び発泡助剤を配合して発泡させた導電性ロール」が記載されている。
上記導電性ロールにおいては従来品にない低硬度を実現できているが、発泡体のセル径については検討されておらず、セル径を微小化することにより転写効率を向上させる余地がある。
【0006】
特開2003−105119号公報(特許文献3)には「エピクロルヒドリンゴムに発泡剤として4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)および老化防止剤、ハイドロタルサイトが特定の割合で配合されている導電性発泡ゴム組成物からなり、ショアE硬度が20〜50以下であり、最大セル径が100μm以下、最小セル径が10μm以上である導電性ロール」が記載されている。
しかし、前記導電性ロールにおいては加硫速度の遅いエピクロルヒドリンゴムを単独で使用していることから、発泡剤が4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)に限定されている。そのため、発泡剤に限定のない、少なくとも最も汎用されている発泡剤であるアゾジカルボンアミド(以下「ADCA」という)を使用できる、より利便性の高い技術を開発する余地がある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−287456号公報
【特許文献2】特許第3469170号
【特許文献3】特開2003−105119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、発泡体において、セルの微小化と低硬度を両立させ、転写効率に変化が少なく、かつ十分なニップ幅が得られる導電性ロールを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、芯金およびその外周面上に形成された導電性発泡体を備えた導電性ロールにおいて、
前記導電性発泡体は、ゴム成分としてアクリロニトリル含有量が10〜20質量%であるアクリロニトリルブタジエンゴム(以下、NBRという。)を50〜85質量部、エチレンオキサイドが50モル%以上占めるエピクロルヒドリンゴムを15〜50質量部含むゴム組成物から形成し、最大セル径が200μm以下、最小セル径が10μm以上で、かつショアE硬度が20〜50であることを特徴とする導電性ロールを提供している。
【0010】
本発明における導電性発泡体を構成するゴム組成物は、ゴム成分全体を100質量部とした場合にNBRを50〜85質量部含むものである。
エピクロルヒドリンゴム単独では加硫速度の遅いため、NBRをブレンドすることにより加硫速度を速めることができる。その結果、発泡剤の種類が限定されることなく、最も汎用されているADCAをはじめとする種々の化学発泡剤を使用できるようになる。
NBRの含有量が50質量部以上であるのは、NBRの含有量が50質量部未満であると、NBRによる加硫速度の促進効果が十分でなく、ブレンドゴムの加硫速度が遅くなるからである。
NBRの含有量が85質量部以下であるのは、NBRの含有量が85質量部を超えると、エピクロルヒドリンゴムの含有量が少なくなりすぎ、1×10〜1×1010Ω程度の電気抵抗を発揮できなくなるからである。
ゴム成分全体に対するNBRの含有量は、好ましくは50〜80質量部、特に、60〜80質量部がより好ましい。
【0011】
前記NBRとしては、アクリロニトリル含有量が10〜20質量%である低ニトリルNBRを用いている。このような低ニトリルNBRは、比較的電気抵抗値が低く、かつTgが低いため室温付近での粘弾性の温度依存性が小さいため、電気抵抗値の環境依存性を小さくすることができる。
より具体的には、アクリロニトリル含量が20質量%よりも多い場合、電気抵抗値の環境依存性が高くなる。一方で、アクリロニトリル含量が10質量%に満たない場合は、NBRの電気抵抗が高くなり易いため、導電性ロールの低抵抗化に支障が生じる。
【0012】
本発明における導電性発泡体を構成するゴム組成物は、ゴム成分全体を100質量部とした場合にエピクロルヒドリンゴムを15〜50質量部含んでいる。
エピクロルヒドリンゴムの含有量が15質量部以上であるのは、エピクロルヒドリンゴムの含有量が15質量部未満であると、1×10〜1×1010Ω程度の電気抵抗を発揮できなくなるからである。
エピクロルヒドリンゴムの含有量が50質量部以下であるのは、エピクロルヒドリンゴムの含有量が50質量部を超えると、加硫速度の遅いエピクロルヒドリンゴムの影響が大きくなり、ブレンドゴムの加硫速度が遅くなるからである。
ゴム成分全体に対するエピクロルヒドリンゴムの含有量は、好ましくは20〜50質量部、特に20〜40質量部が好ましい。
【0013】
前記エピクロルヒドリンゴムとしては、種々のエピクロルヒドリン系重合体を用いることができる。エピクロルヒドリン系重合体としては、例えばエピクロルヒドリン(ECO)単独重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド(EO)共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド(PO)共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル(AGE)共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体等が挙げられる。なかでも、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体を用いることが好ましい。
【0014】
本発明で用いるエピクロルヒドリンゴムにおいては、エチレンオキサイドが50モル%以上を占める。エピクロルヒドリンゴムのEO比率(エチレンオキサイドのエピクロルヒドリンゴムに対するモル%)の上限値は特に限定されないが、80モル%が好ましく、65モル%がより好ましい。
このEO比率は、EO比率が50モル%以上のエピクロルヒドリンゴムを用いる場合のほか、EO比率が違う複数のエピクロルヒドリンゴムをブレンドすることによって調整されたものでもよい。
【0015】
前記エピクロルヒドリンゴムのEO比率が50モル%以上とされるのは、エチレンオキサイド含量が大きくなるにしたがってエピクロルヒドリンゴムの電気抵抗は低抵抗になるため、EO比率が50モル%以下の場合には1×10〜1×1010Ω程度の電気抵抗を得るのにエピクロルヒドリンゴムの使用量が多くなり、コスト的に不利になるためである。また、エピクロルヒドリンゴムのEO比率が80モル%以下であることが好ましいのは、EO比率が80モル%を超える場合は、エチレンオキサイドの結晶化が進み不活性となりイオン導電性が損なわれ、抵抗が高くなる場合があるという理由からである。
【0016】
本発明の導電性発泡体においては、最大セル径が200μm以下、最小セル径が10μm以上であることを特徴としている。このように導電性発泡体におけるセル径を小さくすることにより、最表面のセルにおける表面側と芯金側の距離が小さくなるため、感光体等との接触前後で最表面の微少な領域における変化率を抑えることができ、その結果、転写効率に差が生じにくくなる。このように転写効率が向上する結果、転写されずに感光体表面や中間転写体表面に残る残留トナーの量が減り、近年導電性ロールに求められているクリーニングレスの要望に応えることができるようになる。
最小セル径を10μm以上としたのは、最小セル径が10μm以下であると、硬度が大きくなり確実なニップ幅が得られにくくなるか、または圧縮永久歪が大きくなりロール状にしたときの寸法変化が大きくなりすぎて実用に適さなくなる可能性が高いからである。 最大セル径は180μm以下であることがより好ましく、最小セル径は30μm以上であることがより好ましい。
なお、最大セル径および最小セル径は、下記実施例に記載してあるとおり、導電性発泡体の表面画像より求める。
【0017】
さらに、最大セル径と最小セル径との差が150μm以下であることが好ましい。セル径のばらつきが少ない方が硬度および電気抵抗のばらつきを抑えることができるからである。最大セル径と最小セル径との差は小さいほど好ましいが、通常は50μm以上である。
【0018】
本発明の導電性発泡体は、そのショアE硬度が20〜50であることを特徴としている。ショアE硬度を前記範囲としているのは、20未満であると柔らかすぎて圧縮歪みが大きくなりすぎるためである。一方、50を越えると硬すぎて剛直な感光体と接触した時の磨耗が大きく、かつ画像上の欠陥が発生し易いことによる。該ショアE硬度は好ましくは25〜45である。なお、ショアE硬度は下記実施例に記載の通りに測定する。
【0019】
さらに、本発明の導電性発泡体は、圧縮永久歪が30%以下であることが好ましい。圧縮永久歪の値が30%を越える場合は、ロールになったときの寸法変化が大きくなりすぎて実用に適さなくなる可能性が高い。圧縮永久歪は小さい方がよいが、通常は15%以上である。なお、圧縮永久歪は下記実施例に記載の通りに測定する。
【0020】
本発明の導電性発泡体を作製する際には、化学発泡剤を用いて発泡させることが特に好ましい。すなわち、導電性発泡体を構成するゴム組成物に化学発泡剤を混入した後に加硫時の熱により前記化学発泡剤から分解ガスを発生させ、発泡させる手法が好ましい。
化学発泡剤としては、例えばADCA、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)または5,5’−ビス−1H−テトラゾール(BHT)等が挙げられる。なかでも、ADCAを用いることが好ましい。
さらに、発泡剤の種類に応じて発泡助剤を用いてもよい。例えば化学発泡剤としてADCAを用いる場合、発泡助剤として尿素を用いることができる。
【0021】
化学発泡剤の添加量は、本発明の導電性発泡体において最大セル径が200μm以下、最小セル径が10μm以上となり、かつショアE硬度が20〜50となるように適宜選択している。例えば、化学発泡剤の添加量はゴム成分100質量部に対して20質量部未満であることが好ましく、4質量部以上20質量部未満であることがより好ましい。特に化学発泡剤としてADCAを用いる場合、ゴム成分100質量部に対するADCAの含有量をX質量部とすると、X<20とし、4≦X<20であることが好ましく、8≦X≦16であることがさらに好ましい。
【0022】
発泡助剤を添加する場合、発泡助剤の添加量は発泡剤の添加量に応じて適宜選択している。例えば、化学発泡剤としてADCAを用い、発泡助剤として尿素を用いる場合、ゴム成分100質量部に対するADCAの含有量をX質量部、尿素の含有量をY質量部としたとき、1≦X/Y≦3とし、1≦X/Y≦2であることが好ましく、1≦X/Y≦1.5であることがより好ましい。
【0023】
本発明の導電性ロールは、以下の方法で製造することができる。
上述した低ニトリルNBRおよびエピクロルヒドリンゴム等のゴム成分に、所望によりADCAに代表される化学発泡剤、尿素などの発泡助剤等の他の成分を加え、混練する。得られたゴム組成物を公知の方法で予備成形し、予備成形体を加硫する。この加硫は少なくとも2段階の温度で行うことが好ましい。より具体的には、加硫に際して5分以上同じ温度を維持している状態が少なくとも2回存在することが好ましい。
【0024】
加硫時の温度条件は、段階的に高い温度に設定することが好ましい。例えば、加硫時の温度設定を2段階とする場合は第1段階の温度<第2段階の温度とすることが好ましく、加硫時の温度設定を3段階とする場合は第1段階の温度<第2段階の温度<第3段階の温度とすることが好ましい。このとき各段階の温度の差は50℃以下であることが好ましく、10℃以上40℃以下であることが好ましい。
最終段階の温度がゴム組成物の加硫温度となるように、各段階の温度を設定することが好ましい。添加する加硫剤等の種類によって最適な温度を適宜選択すればよいが、例えば最終段階の温度を120〜200℃、好ましくは140〜180℃の間に設定する。
加硫時間も一概には言えず、最適な加硫時間を適宜選択すればよいが、ひとつの温度を5分以上継続することが好ましい。また、全体の加硫時間が10分以上120分以下であることが好ましく、10分以上60分以下であることがより好ましい。
【0025】
ついで、加硫した成形体に芯金を挿入し、研磨、カットして、導電性ロールを作製する。本発明で用いる芯金は特に限定されてないが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、SUSもしくは鉄等の金属製またはセラミック製等の芯金を用いることができる。
【0026】
本発明の導電性ロールはレーザービームプリンター、複写機、ファクシミリ、ATMなどのOA機器における電子写真装置の画像形成機構等に好適に用いることができる。
具体的には、トナー像を感光体から転写ベルトや用紙に転写するための転写ロールとして特に好適に用いられる。その他、本発明の導電性ロールは、感光ドラムを一様に帯電させるための帯電ロール、トナーを感光体に付着させるための現像ロール、トナーを搬送させるためのトナー供給ロール、転写ベルトを内側から駆動するための駆動ロール等として用いることもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の導電性ロールは、最大セル径が200μm以下、最小セル径が10μm以上と、微小なセルを有している。その上、本発明の導電性ロールは、ショアE硬度が20〜50と低硬度である。このように本発明の導電性ロールにおいてはセルの微小化と低硬度が両立されているので、十分なニップ幅が得られるとともに、感光体等との接触開始時および終了時における転写効率の変化が少ない。その結果として、例えば転写されずに感光体表面や中間転写体表面に残るトナーの量が少なくなる。特に近年使用されてきている重合トナーは上述したようにクリーニングしにくいことから、重合トナーを用いる画像形成装置において本発明の導電性ロールを用いればより高画質の画像が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の導電性ロールについて詳述する。
図1に示すように、本発明の導電性ロール10は、円筒状の導電性発泡体1の中空部に芯金2を圧入して取り付けている。芯金2としてはアルミニウム、アルミニウム合金、SUSまたは鉄等の金属製の芯金が好ましい。
【0029】
導電性発泡体1は、エピクロルヒドリンゴムおよびNBRのゴム成分に、発泡剤、発泡助剤、加硫剤、加硫促進剤および充填剤が添加されたゴム組成物からなる。
前記エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体を用いることが好ましい。エピクロルヒドリンゴムにおいては、EO比率が50%以上65%以下であることが好ましく、EO比率が50%以上60%以下であることがより好ましい。
前記エピクロルヒドリンゴムは、ゴム成分の総量を100質量部とすると25〜35質量部含まれていることが好ましく、30質量部含まれていることがより好ましい。
【0030】
前記NBRとしては、アクリロニトリル含有量が15〜20質量%であるNBRを用いることが好ましい。
前記NBRは、ゴム成分の総量を100質量部とすると65〜75質量部含まれていることが好ましく、70質量部含まれていることがより好ましい。
【0031】
前記発泡剤としては、ADCAを用いることが好ましい。発泡剤の添加量はゴム成分100質量部に対して8質量部以上16質量部以下が好ましい。
前記発泡助剤としては、尿素を使用することが好ましい。発泡助剤の添加量はゴム成分100質量部に対して6質量部以上12質量部以下が好ましい。
さらに、ゴム成分100質量部に対する発泡剤の含有量をX質量部、発泡助剤の含有量をY質量部としたとき、1≦X/Y≦1.5であることが好ましい。
【0032】
前記加硫剤としては、特に低電気抵抗を実現でき、かつ加硫速度と発泡速度のバランスが良くなる点から硫黄が好ましい。その他、加硫剤としては有機含硫黄化合物や過酸化物なども使用可能であり、これらを併用することも、これらと硫黄を併用することもできる。有機含硫黄化合物としては、例えばテトラエチルチウラムジスルフィドまたはN,N−ジチオビスモルホリンなどが挙げられる。過酸化物としてはジクミルペルオキシドまたはベンゾイルペルオキシド等を挙げることができる。
加硫剤の添加量は、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下が好ましく、1質量部以上3質量部以下がより好ましい。
【0033】
前記加硫促進剤としては、消石灰、マグネシア(MgO)もしくはリサージ(PbO)等の無機促進剤や以下に記す有機促進剤を用いることができる。有機促進剤としては、2−メルカプト・ベンゾチアゾールもしくはジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドもしくはジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系;チオウレア系等が挙げられ、これらを単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。なお、加硫促進剤は加硫剤の種類等に応じて配合しなくても良い。
加硫促進剤の添加量は、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下が好ましく、1質量部以上4質量部以下がより好ましい。
【0034】
さらに、加硫促進助剤を配合しても良く、加硫促進助剤としては亜鉛華等の金属酸化物;ステアリン酸、オレイン酸もしくは綿実脂肪酸等の脂肪酸;その他従来公知の加硫促進助剤が挙げられる。
【0035】
前記充填剤としては、シリカ、カーボン、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムまたは水酸化アルミニウム等の粉体を挙げることができる。充填剤を配合することにより機械的強度等を向上させることができる。充填剤の添加量はゴム成分100質量部に対し60質量部以下とすることが好ましく、50質量部以下とすることがより好ましい。
【0036】
本発明の導電性発泡体には、前記成分の他に、本発明の目的に反しない限り、受酸剤、軟化剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤または架橋剤等の添加剤を適宜配合してもよい。
なかでも、導電性発泡体を構成するゴム組成物には、ゴム成分100質量部に対し受酸剤を1質量部以上10質量部以下、好ましくは3質量部程度の割合で配合するのが好ましい。加硫阻害および感光体汚染を防止する効果を有効に発揮させるため受酸剤の配合量は約1質量部以上であることが好ましく、硬度の上昇を防ぐため受酸剤の配合量は約10質量部以下であることが好ましい。受酸剤としては、分散性にも優れることから特にハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましい。その他、受酸剤としては酸受容体として作用する種々の物質を用いることができる。
【0037】
本発明の導電性ロールの製造方法について、以下に述べる。
エピクロルヒドリンゴムおよびNBRのゴム成分に、発泡剤、発泡助剤、加硫剤、加硫促進剤、充填剤、所望によりその他の成分を添加し、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールなど公知の方法で混ぜ合わせる。混練温度および混練時間は適宜選択すればよいが、例えば80〜120℃の温度下1〜60分かけて行うことが好ましい。
得られたゴム組成物を公知の方法で予備成形し、予備成形体を加硫する。この加硫は2段階の温度で行うことが好ましい。具体的には、130℃以上150℃未満の温度で5〜20分、ついで150℃以上170℃以下の温度で5〜40分かけて加硫することが好ましい。第1段階の加硫温度と第2段階の加硫温度の差は10〜30℃であることが好ましい。特に、加硫は140℃で10分、160℃で20分行うことが好ましい。
ついで、加硫した成形体に芯金を挿入し、研磨、カットして、本発明の導電性ロールを作製する。
【0038】
本発明の導電性発泡体においては、最大セル径が180μm以下、最小セル径が30μm以上で、さらに最大セル径と最小セル径との差が150μm以下である。このようにセル径が小さいので転写効率に差が生じにくく、かつセル径のばらつきが少ないので硬度および電気抵抗のばらつきを抑えることができる。
本発明の導電性発泡体は、そのショアE硬度が25〜45である。このように低硬度であるため、十分なニップ幅を得ることができる。
【0039】
さらに、本発明の導電性発泡体は圧縮永久歪が30%以下である。圧縮永久歪の値が30%を越える場合は、ロールになったときの寸法変化が大きくなりすぎて実用に適さなくなる可能性が高い。圧縮永久歪は小さい方がよいが、通常は15%以上である。
本発明の導電性発泡体は、その電気抵抗値が1×10〜1×1010Ωであり、好ましくは1×10〜1×10Ωである。なお、電気抵抗値は下記実施例に記載の通りに測定する。
以上のような特徴を有する本発明の導電性ロールは、電子写真装置の転写ロールとして用いることが特に好ましい。
【0040】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
表1に記載の配合をニーダーに投入し、100℃で1〜20分程度混練りした後、ゴム混練装置より押し出し、予備成形体を得た。次いで、実施例1〜5および比較例1,3については、予備成形体を、140℃で10分、ついで160℃で20分と2段階で加硫した。比較例2については、予備成形体を、160℃で30分と1段階で加硫した。ついで、金属製のシャフト(φ6mm)を挿入し、研磨、カットして、シャフト径φ6mm、ロール外径φ12mm、ゴム長さ230mmの導電性ロールを作製した。
得られた導電性ロールについて、下記に示す試験を行った。
【0041】
表1中の上段の各配合の数値単位は質量部である。電気抵抗値の数値は(logΩ(常用対数値))であり、セル径の数値単位はμmである。
【0042】
【表1】

【0043】
表中の各成分については下記製品を用いた。
・エピクロルヒドリンゴム;日本ゼオン(株)製「hydrin T3106」(エチレンオキサイド−エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル(AGE)共重合体で、エチレンオキサイド(EO)の比率56モル%)
・NBR;日本ゼオン(株)製「ニッポール401LL」(アクリロニトリル含有量18%)
・充填剤1;HAFカーボン(東海カーボン(株)製「シースト3」)
・充填剤2;軽質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製)
・発泡剤;ADCA(永和化成工業(株)製「ビニホールAC#3」)
・発泡助剤;尿素(永和化成工業(株)製「セルペースト101」)
・加硫剤;粉末硫黄(鶴見化学工業(株)製)
・加硫促進剤1;大内新興化学工業(株)製「ノクセラ−DM」
・加硫促進剤2;大内新興化学工業(株)製「ノクセラ−TS」
【0044】
(電気抵抗値の測定)
温度23℃、相対湿度55%の環境下で、図2に示すように芯金2を通した導電性発泡体1をアルミドラム3上に当接搭載し、電源4の+側に接続した内部抵抗r(10kΩ)の導線の先端をアルミドラム3の一端面に接続すると共に電源4の−側に接続した導線の先端を導電性発泡体1の他端面に接続して通電を行った。芯金2の両端に500gずつの荷重Fをかけ、芯金2とアルミドラム3の間に1kVの電圧をかけながらアルミドラム3を回転させることで間接的に導電性発泡体1を回転させた。このとき1回転中に36回抵抗測定を行い、その平均値を求めた。
【0045】
(硬度の測定)
温度23℃、相対湿度55%の環境下で、ショアE硬度計を導電性ロールの中央部で垂直に固定し、左右の軸部に500gの荷重をかけ、5秒後に示す値を読みとった。
【0046】
(セル径の測定)
導電性発泡体の表面を100倍の倍率で写真に撮り、1cm四方のセル径を観察し、最大セル径と最小セル径を求めた。
【0047】
(圧縮永久歪の測定)
導電性発泡体を10mm幅で端面に平行にカットした試験片を用いて、JIS K 6262に記載の加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験方法に従い、測定温度70℃の温度下、圧縮率25%で22時間放置後の歪みを測定した。
【0048】
(転写効率の測定)
市販のレーザープリンター(キャノン(株)製「LBP5500」)に、前記で作製した導電性ロールを転写ロールとして装着した。
温度23℃、相対湿度55%の環境下で、イエロー100%の画出しを行い、その濃度を目視で判断した。画出しには「キャノンPBペーパー」を用いた。
従来品と比べて濃い場合を「○」とし、薄い場合を「×」とした。
【0049】
(総合評価)
前記測定および試験結果から、従来よりも各種の面で優れていた場合を「○」と、従来と同等あるいは劣る場合は「×」と評価した。
【0050】
実施例1〜5の導電性ロールにおいては、最大セル径が180μm以下、最小セル径が30μm以上とセルが微小であるため、転写効率に優れていた。また、硬度が26〜38と低く、確実なニップの形成が可能となる。さらに、圧縮永久歪も30%以下であり、寸法変化も少ない。
一方、比較例1および2の導電性ロールにおいては、最大セル径が200μmより大きく、転写効率において劣っていた。また、比較例3の導電性ロールにおいては、最小セル径が10μm未満であり、かつ圧縮永久歪も30%を超えており、実施例1〜5の導電性ロールに比して寸法安定性において劣ったものであった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の導電性ロールの概略図である。
【図2】導電性ロールの電気抵抗値の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 導電性発泡体
2 芯金
10 導電性ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金およびその外周面上に形成された導電性発泡体を備えた導電性ロールにおいて、
前記導電性発泡体は、ゴム成分としてアクリロニトリル含有量が10〜20質量%であるアクリロニトリルブタジエンゴム(以下、NBRという。)を50〜85質量部、エチレンオキサイドが50モル%以上占めるエピクロルヒドリンゴムを15〜50質量部含むゴム組成物から形成し、最大セル径が200μm以下、最小セル径が10μm以上で、かつショアE硬度が20〜50であることを特徴とする導電性ロール。
【請求項2】
前記導電性発泡体を構成するゴム組成物に、化学発泡剤としてアゾジカルボンアミドが、発泡助剤として尿素がさらに含まれ、ゴム成分100質量部に対するアゾジカルボンアミドの含有量をX質量部、尿素の含有量をY質量部としたとき、1≦X/Y≦3で、かつX<20である請求項1に記載の導電性ロール。
【請求項3】
前記導電性発泡体が、前記ゴム組成物を少なくとも2段階の温度で加硫することにより得られる請求項1または請求項2に記載の導電性ロール。
【請求項4】
前記導電性発泡体の圧縮永久歪が30%以下である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項5】
転写ロールとして用いられる請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の導電性ロール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−259131(P2006−259131A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75407(P2005−75407)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】