説明

導電性基板、導電性基板の製造方法、太陽電池、および表示装置

【課題】その比抵抗が問題となることがなく、他の機能層を積層するにあたり問題となる表面凹凸もなく、さらに製造が容易な導電性基板を提供する。
【解決手段】導電性基板を、三次元に伸びる複数の孔を有する多孔質層と、当該多孔質層上に形成された透明導電層と、から構成するとともに、前記多孔質層の少なくとも一部の孔に金属を充填し、当該金属が多孔質層の表面において前記透明導電層と接しているようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性基板およびその製造方法、さらには導電性基板を用いた太陽電池や表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置などに代表される各種表示装置や太陽電池などには、ITOやIZOなどの透明導電層が用いられている。
【0003】
しかしながら、これらの透明導電層の比抵抗は10-4〜10-3Ω・cmであり、銀や金などの金属の比抵抗の約1000倍程度の抵抗を示す。したがって、近年の各種表示装置や太陽電池に対する大型化の要請に応えようとした場合、当該透明導電層の抵抗によるロスが大きな問題となる。
【0004】
このような問題に対して、透明導電層の表面または裏面にメッシュ状の金属からなる補助電極を設けることが行われている(特許文献1参照)。しかしながら、メッシュ状の金属からなる補助電極を設けた場合、その表面には補助電極の厚さ分だけの凹凸が生じてしまい、この上に積層される各種機能層に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0005】
特許文献2には、いわゆる補助電極を設けた場合に生じる凹凸の問題を解決するために、透明導電層の表面に凹溝を設け、当該凹溝内に金属を充填させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−203681号公報
【特許文献2】特許第4479287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献2に開示されている技術によれば、透明導電層の導電性をいわゆる補助電極により補いつつ、その表面を平坦化することができるが、μmオーダーの透明導電層に凹溝を形成し、次いで当該凹溝に金属を充填させるのは困難であり、製造工程が煩雑となることからコスト高になってしまう。
【0008】
また、有機薄膜太陽電池や有機EL表示装置などはフレキシブル性を求められることがあるが、このような場合においてエッチングなどによってフレキシブルな透明導電層に凹溝を形成することは困難である。
【0009】
本発明はこのような状況においてなされたものであり、大型化した場合であってもその比抵抗が問題となることがなく、かつ他の機能層を積層するにあたり問題となる表面凹凸もなく、さらに製造が容易な、導電性基板およびその製造方法を提供するとともに、これを用いた太陽電池および表示装置を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための第1の発明は、三次元に伸びる複数の孔を有する多孔質層と、当該多孔質層上に形成された透明導電層と、を含み、前記多孔質層の少なくとも一部の孔には金属が充填されており、当該金属は、多孔質層の表面において前記透明導電層と接していることを特徴とする導電性基板である。
【0011】
また、上記の発明にあっては、前記多孔質層において、金属が充填されていない孔には樹脂が充填されており、当該樹脂は、多孔質層の表面において前記透明導電層と接していてもよい。
【0012】
上記課題を解決するための第2の発明は、三次元に伸びる複数の孔を有する多孔質層を用意し、当該多孔質層の表面に現れている孔に金属を充填し、その後、多孔質層の表面上に透明導電層を形成する、ことを特徴とする導電性基板の製造方法である。
【0013】
上記の発明にあっては、前記透明導電層を蒸着法により形成してもよい。
【0014】
上記課題を解決するための第3の発明は、対向する2枚の導電性基板と、その間に設けられる光電変換層とを有する太陽電池であって、前記2枚の導電性基板のうちの少なくとも一方の導電性基板は、三次元に伸びる複数の孔を有する多孔質層と、当該多孔質層上に形成された透明導電層と、を含み、前記多孔質層の少なくとも一部の孔には金属が充填されており、当該金属は、多孔質層の表面において前記透明導電層と接していることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するための第4の発明は、対向する2枚の導電性基板と、その間に設けられる発光層とを有する表示装置であって、前記2枚の導電性基板のうちの少なくとも一方の導電性基板は、三次元に伸びる複数の孔を有する多孔質層と、当該多孔質層上に形成された透明導電層と、を含み、前記多孔質層の少なくとも一部の孔には金属が充填されており、当該金属は、多孔質層の表面において前記透明導電層と接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、大型化した場合であってもその比抵抗が問題となることとがなく、表面が平坦であり、さらに製造が容易かつ安価な導電性基板を提供することができる。また、このような導電性基板を用いた太陽電池や表示装置も提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】導電性基板の概略断面図である。
【図2】導電性基板の別の態様を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の導電性基板、導電性基板の製造方法、さらには導電性基板を用いた太陽電池や表示装置について図面を用いて説明する。
【0019】
<導電性基板>
図1は、導電性基板の概略断面図である。
【0020】
図1に示すように、導電性基板1は、多孔質層2と透明導電層3を含んでおり、場合によっては、図示するように支持基板10上に形成されていてもよい。そして、当該多孔質層2は、三次元に延びる複数の孔4を有しており、この孔4の少なくとも一部の孔4Aには金属5が充填されており、当該金属5は多孔質層2の表面において前記透明導電層3と接している。還元すれば、多孔質層2における複数の孔4の中で、その表面において開口している孔の中の少なくとも一部の孔4Aには金属5が充填されており、当該金属5でそれぞれの孔4Aを満たすことにより、当該金属が多孔質層2の表面において透明導電層3と接している。このような導電性基板1によれば、透明導電層3のみでは比抵抗が大きく電気的なロスが大きくなってしまうところ、当該多孔質層2中に三次元に延びる複数の孔4Aに充填された金属5が電気的なパスを形成し、これがいわゆる補助電極として機能することで、導電性基板1全体の比抵抗を小さくすることができる。
【0021】
以下に、導電性基板1の各構成について詳細に説明する。
【0022】
<<多孔質層>>
多孔質層2は、三次元に延びる複数の孔4を有しており、この孔の中で表面に位置するものの全部または一部に金属5を充填することにより、当該金属5により3次元の電気的パスを形成し、透明導電層3の補助をする機能を有している。したがって、このような機能を奏し得る多孔質層であることが必要であり、当該観点から、その孔4は、少なくともその表面近傍においては均一、かつ三次元に存在していることが好ましい。
【0023】
なお、「三次元に延びる」とは孔4が多孔質層2の内部において、種々の方向に、換言すればランダムな方向に延びていることを意味している。また、「多孔質層2の表面」とは、前述のとおり、多孔質層2において、これに積層される透明導電層3との界面、およびその近傍のことを意味し、孔4が形成されている部分における孔の内部をも含むような意味ではない。さらに、多孔質層2における孔4に「金属を充填する」とは、厳密な意味で、当該孔4の容積通りに空隙なく金属を満たすことを意味するのみならず、多少の空隙がある状態で金属が満たされている場合や、孔4の開口部分から多少盛り上がった状態で金属が満たされている場合をも含む意味である。
【0024】
ここで、金属5が充填された状態における多孔質層2の表面抵抗値を1Ω/sq以下とすることにより、透明導電層3を充分に補助することができる。したがって、多孔質層2の密度、つまり空隙率や、孔4の平均孔径にあっては、金属5を充填した状態において表面抵抗値が1Ω/sq以下となる程度であることが必要であり、また、金属5を充填するにあっても、それにより表面抵抗値が1Ω/sq以下となるように充填すればよいこととなる。
【0025】
例えば、多孔質層2の孔4の平均孔径については、30nm以上であることが好ましい。孔4の平均孔径がこの値より小さいと、当該孔4の中に金属を充填せしめることが困難となり製造歩留まりが低下する場合があり、また、孔4が小さすぎる場合、充分な電気的パスを形成することができず、透明導電層3の補助が不十分となる可能性があるからである。ここで、「平均孔径」であることから、三次元に、還元すればランダムに延びる孔4の1つ1つに着目した場合に、1つの孔4の孔径が先端まで常に同一である必要はなく、場所場所において径が異なっていてもよい。
【0026】
なお、孔4の平均孔径は、全自動ガス吸着量測定装置(AUTOSORB−1−AG、ユアサアイオニクス株式会社製)を用い、キャリアガスとしてN2ガスを用い、測定温度77Kで測定することによって求めることができる。また、多孔質部材の平均孔径が200nmを超える場合は、水銀ポロシメーター(PoreMaster、ユアサアイオニクス)を用いて、平均孔径を求めることができる。
【0027】
また、多孔質層2は透明導電層3の補助をすることから、多孔質層2自身も透明であることが好ましい。そもそも透明導電層3は太陽電池や各種表示装置において、透明であることが要求される部分、具体的には太陽電池においては受光面側の電極として、各種表示装置においては表示面側の電極として用いられることが多いからである。
【0028】
このような多孔質層2の透明度にあっては、特に限定することはなく実用に耐え得る範囲で適宜採用可能であるが、例えば80%以上であることが好ましい。
【0029】
多孔質層2の厚さについても本発明は特に限定することはなく、上記透明度や導電性つまり電気的パスの形成具合を考慮して適宜設計可能であるが、例えば1〜100μm程度が好ましく、10〜50μmが特に好ましい。
【0030】
このような多孔質層2の材質にあっては、上記した種々の条件を満たすことができ、上記した作用効果を奏することが可能な材質であれば特に限定することはなく、多孔質層2自体の製造方法や導電性基板1の製造方法に対する適性があり、透明性や耐熱性、さらには機械的強度や、当該導電性基板と共に用いられる相手材との密着性等を考慮して、適宜選択することができる。具体的には、例えば、セルロース系樹脂、ポリビニル系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂などを挙げることができる。中でも、ポリビニル系樹脂に属するポリビニルアセタール系の樹脂、より具体的には、ポリビニルブチラール樹脂を用いてもよい。当該樹脂は、造膜性、塗布面への接着性、さらにはアルコール可溶性に優れており、したがって塗料やインク分野においてバインダー樹脂として広く用いられていることから入手が容易であり、また、上記の性質から、良溶媒と貧溶媒と混合する製法により多孔質層2を容易に製造することができるからである。
【0031】
このような多孔質層2そのものの製造方法については、特に限定することはなく、上記で説明した構成および性能を有する多孔質層2を製造可能な方法を適宜採用すればよい。たとえば、良溶媒と貧溶媒とを混合して多孔質層形成用塗工液とし、これを基板上に塗布し、その後乾燥させることにより多孔質層を形成する方法や、前記良溶媒と貧溶媒に代えて、高沸点溶媒と低沸点溶媒とを用いる方法を挙げることができる。また、樹脂中に発泡剤を混合して発泡させることにより多孔質層を形成する方法を用いてもよい。さらには、所定の溶剤に溶解する樹脂と溶解しない樹脂とを混合し、これを塗布、乾燥した後に、前記所定の溶剤を用いて「溶解する樹脂」のみを溶解せしめることにより多孔質層を形成する方法を用いてもよい。
【0032】
<<金属>>
上記のように、多孔質層2の表面に位置する孔4の全部もしくはその一部には金属5が充填されている。当該金属5は、多孔質層2の表面に形成される透明導電層3と接することでいわゆる補助電極として機能する。
【0033】
このような金属5の材質については特に限定されることはなく、多孔質層2の表面に形成された孔4の内部に充填可能であり、かつ補助電極として機能することができれば適宜採用することが可能である。具体的には、例えば、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、チタン(Ti)、アルミニウム合金、チタン合金およびニッケルクロム合金(Ni−Cr)等の導電性金属を挙げることができる。上述の導電性金属の中でも、電気抵抗値が比較的低いものが好ましい。このような導電性金属としては、Al、Au、Ag、Cu等が挙げられる。
【0034】
上記のように、金属5は、多孔質層2の表面に位置する孔4の必ずしもすべてに充填する必要はなく、図1に示すように、金属5が充填されていない孔があってもよいが、上述したように、多孔質層2全体として金属5による電気的パスを形成し補助電極として機能する程度に、具体的には、例えば、金属5を充填した状態における多孔質層2の表面抵抗値が1Ω/sq以下となるように充填されている必要がある。
【0035】
多孔質層2の孔4へ金属5を充填する方法については特に限定することはなく、金属5の種類などに応じて適宜選択することができる。例えば、金属5を充填するにあたり、ペースト状の金属ナノ粒子を用いてもよく、この場合、当該ペーストを多孔質層2の表面に塗布し、へらなどの余剰分を取り除いた後、乾燥させることにより金属を多孔質層2の孔4に充填することができる。
【0036】
また一方で、金属5を充填すべき孔4に対応したスクリーン版を用いたスクリーン印刷法により金属5を充填してもよく、さらには、同様の要領で、グラビア印刷法、オフセット印刷方法、フレキソ印刷法など、各種印刷方法によっても金属5を充填することができる。
【0037】
<<透明導電層>>
図1に示すように、透明導電層3は、多孔質層2において金属5が充填された孔4が存在する側の表面上に形成され、前記金属5と接することにより当該金属5によってその導電性が向上せしめられる層である。この透明導電層3については、特に限定されることはなく、従来から太陽電池や各種表示装置などで用いられてきた透明導電層、いわゆる透明電極を適宜用いることができる。本発明によれば、上記の多孔質層2の作用効果によりいかなる透明導電層であっても使用可能であると言える。
【0038】
具体的には、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O等を挙げることができる。
【0039】
透明導電層3の全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。透明導電層3の全光線透過率が上記範囲であることにより、透明導電層3にて光を十分に透過することができ、例えば太陽電池において用いられる場合には、光電変換層にて光を効率的に吸収することができるからである。
【0040】
なお、上記全光線透過率は、可視光領域において、スガ試験機株式会社製 SMカラーコンピュータ(型番:SM−C)を用いて測定した値である。
【0041】
このような透明導電層3のシート抵抗は、20Ω/sq以下であることが好ましく、中でも10Ω/sq以下、特に5Ω/sq以下であることが好ましい。シート抵抗が上記範囲より大きいと、例えば太陽電池において用いられる場合には、光電変換層で発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があるからである。
【0042】
なお、上記シート抵抗は、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の抵抗率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき、測定した値である。
【0043】
透明導電層3は、単層であってもよく、また異なる材料を用いて積層されたものであってもよい。
【0044】
透明導電層3の厚さとしては、単層である場合はその厚さが、複数層からなる場合はその全体の厚さが、0.1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、中でも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。厚さが上記範囲より薄いと、透明導電層3のシート抵抗が大きくなりすぎるからである。一方で、厚さが上記範囲より厚いと、全光線透過率が低下する可能性があるからである。
【0045】
なお、透明導電層3は、多孔質層2上に全面に形成されていてもよく、パターン状に形成されていてもよい。
【0046】
また、透明導電層3の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができ、とくに限定することはないが、たとえば蒸着法などを採用することができる。蒸着法によれば、多孔質層2の表面に金属5が充填されていない孔4が存在する場合であっても、当該孔4を透明導電層3となる樹脂で埋めながら透明導電層3を積層・形成することができるので、最終的に透明導電層3の表面を平坦にすることができる点で好ましい。
【0047】
<支持基板>
支持基板10は、上記の導電性基板1を支持するための基板であり、当該機能を奏し得ることができれば特に限定されることはないが、前述のとおり導電性基板1は透明性が求められる状況で使用されることが多いことから、当該支持基板10にあっても透明であることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリカーボネート樹脂(PC)などの透明樹脂フィルムが好適である。このような透明樹脂フィルムは、加工性に優れており、製造コスト低減や軽量化、割れにくいなどの特徴があり、曲面への適用もでき種々のアプリケーションへの適用可能性が広がるからである。
【0048】
このような支持基板10の厚さについても特に限定することはないが、例えば、10μm〜500μm程度であり、特に好ましい厚さは50μm〜300μmである。
【0049】
<導電性基板の別の態様>
図2は、導電性基板の別の態様を示す概略断面図である。
【0050】
図2に示すように、導電性基板1を構成する多孔質層2において、透明導電層3が形成される表面に開口しつつ金属5が充填されていない孔4Bには、樹脂6が充填されていてもよい。このように金属5を充填しない孔4Bにも樹脂6を充填しておくことにより、透明導電層3を形成する際に、その表面を平坦としておくことができ、その結果透明導電層3の表面を平坦化することができ、特に透明導電層3をコーティングなどにより形成する場合に有効である。
【0051】
ここで樹脂6については特に限定されることはなく、孔4Bを埋めることができればよいが、透明であることが好ましく、例えば、多孔質層2と同じ樹脂、つまりセルロース系樹脂、ポリビニル系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂などを挙げることができる。
【0052】
また、樹脂6の充填方法についても特に限定することはなく、金属5と同様、ペースト状の樹脂6を塗布しその後に乾燥する方法をはじめ、スクリーン印刷法など各種印刷方法を用いることができる。
【0053】
<太陽電池>
以上で説明した導電性基板1は、たとえば、対向する2枚の導電性基板と、その間に設けられる光電変換層とを有する太陽電池において、前記2枚の導電性基板のうちの少なくとも一方の導電性基板として好適に用いることができる。
【0054】
<表示装置>
また、以上で説明した導電性基板1は、対向する2枚の導電性基板と、その間に設けられる発光層とを有する表示装置であって、前記2枚の導電性基板のうちの少なくとも一方の導電性基板としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例と比較例とを用いて本発明をより具体的に説明する。
【0056】
(実施例1)
ポリビニルブチラール樹脂(電気化学工業(株)製:6000C)10g、良溶媒としてのメタノール90g、および貧溶媒としてのイオン交換水23.5gをそれぞれ準備し、メタノール中にポリビニルブチラール樹脂およびイオン交換水を攪拌しながら加えて多孔質層形成用塗工液を得た。次に、この塗工液を外形サイズ50mm角・膜厚125μmのPENフィルム基材の片面全面に、乾燥後の膜厚が35μmになるようにコンマコーターにて塗布した。塗膜を50℃で1分間乾燥させた後、さらに100℃で1分間乾燥させて多孔質層が形成されたPENフィルム基板を得た。次に、上記の多孔質層が形成されたPENフィルム基板上に、銀ナノ粒子ペースト(三ツ星ベルト(株)製:MDot−SLP)をスクリーン印刷法によりパターニング塗工し、多孔質層の孔の一部に銀ナノ粒子ペーストを充填してから、120℃で30分間乾燥させた。次に、上記多孔質層の孔において銀ナノ粒子ペーストを充填していない孔に、アクリル樹脂をスクリーン印刷によりパターニング塗工することで、当該孔にアクリル樹脂を充填した。次に、スパッタ法により厚み150nm、表面抵抗値60Ω/sqのITO層を形成し、本願の実施例1の導電性基板を得た。
【0057】
(比較例1)
外形サイズ50mm角・膜厚125μmのPENフィルム基材の片面全面に、スパッタリング法(成膜圧力:0.1Pa、成膜パワー:180W、時間:3分/12分/3分)にて厚み20nm/300nm/20nmでNi/Cu/Niを積層した。Ni/Cu/Ni膜の全面にドライフィルムレジスト(旭化成(株)製、サンフォートAQ−1558、ネガ型)を0.4kgf/cm2のラミネート圧、温度120℃にてラミネートし、所定の形状のフォトマスクを介してUV照射を行い、ドライフィルムレジスト上に所望の形状を転写した。その後、0.5wt%の炭酸ナトリウム水溶液中にてレジストの未露光部を除去し、所望の形状のレジスト画像を形成した。レジスト画像をマスクとして露出しているNi/Cu/Ni膜を塩化第2鉄溶液(45ボーメ)で液温50℃にてエッチングした。Ni/Cu/Ni膜をエッチングするために要した時間は、3秒であった。その後、2wt%の水酸化ナトリウム溶液を用いて液温50℃でレジスト除去を行い、所定の開口部を有するNi/Cu/Niの金属メッシュを形成した。次に、スパッタ法により厚み150nm、表面抵抗値60Ω/sqのITO層を形成し、比較例1の導電性基板を得た。
【0058】
(実施例2)
実施例1の導電性基板上に、導電性高分子ペースト(ポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸分散品)をスピンコート法にて成膜した後、100℃で10分間乾燥させ、バッファー層を形成した。次に、ポリチオフェン(P3HT:poly(3−hexylthiophene−2,5−diyl),Aldrich社製)とC60PCBM([6,6]−phenyl−C61−butyric acid methyl ester, Nano−C社製)をブロモベンゼンに溶解させ、固形分濃度1.4wt%の光電変換層用塗工液を準備した。次いで、光電変換層用塗工液を上記バッファー層上にスピンコート法にて塗布した後、100℃で10分間乾燥させて、光電変換層を形成した。次に、上記光電変換層上にカルシウムおよびアルミニウムを真空蒸着法にて形成して金属電極とし、本願の実施例2の有機薄膜太陽電池を得た。
【0059】
(比較例2)
比較例1の導電性基板を用い、実施例2と同様の方法により、比較例2の有機太陽電池を得た。
【0060】
(評価)
実施例1と比較例1の導電性基板の表面抵抗値および表面最大段差を評価した。その結果を以下の表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
なお、表面抵抗値の測定にあっては、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の低効率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき測定した値である。。また、表面最大段差の測定にあっては、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 プローブ顕微鏡(Nanopics1000)を用い、100μm×100μmの面積をタッピングモードで測定した値である。
【0063】
上記より、本願の実施例1の導電性基板は、比較例1の導電性基板に比べて表面抵抗値が低く、表面の段差も小さいことから、有機薄膜太陽電池などに有用であることは分かった。
【0064】
また、実施例2と比較例2の有機薄膜太陽電池について、ソーラーシミュレーターにより100mW/cm2、A.M.1.5Gの条件で太陽電池性能を評価した。その結果を以下の表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
上記より、本願の導電性基板を用いた本願の実施例2の有機薄膜太陽電池は、変換効率において比較例2の有機薄膜太陽電池に比べて優れていることが分かった。
【符号の説明】
【0067】
1・・・導電性基板
2・・・多孔質層
3・・・透明導電層
4・・・孔
5・・・金属
6・・・樹脂
10・・・支持基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元に伸びる複数の孔を有する多孔質層と、当該多孔質層上に形成された透明導電層と、を含み、
前記多孔質層の少なくとも一部の孔には金属が充填されており、当該金属は、多孔質層の表面において前記透明導電層と接していることを特徴とする導電性基板。
【請求項2】
前記多孔質層において、金属が充填されていない孔には樹脂が充填されており、当該樹脂は、多孔質層の表面において前記透明導電層と接していることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性基板。
【請求項3】
三次元に伸びる複数の孔を有する多孔質層を用意し、
当該多孔質層の表面に現れている孔に金属を充填し、
その後、多孔質層の表面上に透明導電層を形成する、ことを特徴とする導電性基板の製造方法。
【請求項4】
前記透明導電層を蒸着法により形成することを特徴とする請求項3に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項5】
対向する2枚の導電性基板と、その間に設けられる光電変換層とを有する太陽電池であって、
前記2枚の導電性基板のうちの少なくとも一方の導電性基板は、
三次元に伸びる複数の孔を有する多孔質層と、当該多孔質層上に形成された透明導電層と、を含み、
前記多孔質層の少なくとも一部の孔には金属が充填されており、当該金属は、多孔質層の表面において前記透明導電層と接していることを特徴とする、太陽電池。
【請求項6】
対向する2枚の導電性基板と、その間に設けられる発光層とを有する表示装置であって、
前記2枚の導電性基板のうちの少なくとも一方の導電性基板は、
三次元に伸びる複数の孔を有する多孔質層と、当該多孔質層上に形成された透明導電層と、を含み、
前記多孔質層の少なくとも一部の孔には金属が充填されており、当該金属は、多孔質層の表面において前記透明導電層と接していることを特徴とする、表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−243423(P2012−243423A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109849(P2011−109849)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】